説明

コンベヤーベルトを潤滑する方法

本発明は、コンベヤーベルトを潤滑する方法であって、少なくとも1種の脂肪酸を含有する潤滑剤濃縮物を乾式潤滑プロセスにおいて<4のpH値で使用する方法に関する。その後、>5のpH値を有する液体組成物を、潤滑剤濃縮物が先に適用されたコンベヤーベルトの表面に適用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンベヤーベルトを潤滑する方法であって、少なくとも1種の脂肪酸を含有する潤滑剤濃縮物を乾式潤滑プロセスにおいて4以下(≦4)のpH値で使用する方法に関する。その後、5以上(≧5)のpH値を有する液体組成物を、潤滑剤濃縮物が先に付与されたコンベヤーベルトの表面に付与する。
【背景技術】
【0002】
公知のコンベヤーベルト潤滑剤は、固体表面間、例えばガラスおよび金属間、またはプラスチックおよび金属間の良好な摺動接触が確保されなければならない用途において使用されている。これらの用途として、瓶の充填および搬送プラントが挙げられ、ベルト上でのボトルの問題のない搬送を確保するために、潤滑剤をコンベヤーベルトに適用する。多くの公知のシステムにおいて、石鹸、例えばカリ系の(カリウム系の)軟石鹸が潤滑剤として使用されている。これらの石鹸は、脂肪酸などの酸性抽出物およびアルカノールアミンまたはアルカリ性水酸化物などの塩基性抽出物から通常製造されている。このような石鹸系の潤滑剤は、通常約8〜12のアルカリ性のpH範囲内にあり、例えば、US−A5,391,308、US−A4,274,973またはUS−A3,336,225に開示されている。
【0003】
石鹸系潤滑剤の代替として、ある特定のアミン化合物を含む種々の合成コンベヤーベルト潤滑剤が用いられている。これらの合成潤滑剤は、例えば、EP−A−1690920に記載されており、リン酸トリエステルを含有する潤滑剤濃縮物が開示されている。この潤滑剤濃縮物は、さらなる成分としてアミンおよび酸を含有し、酸は、無機酸、例えば塩酸、硝酸もしくはリン酸、または有機酸、例えばギ酸、酢酸もしくはオレイン酸であってよい。アミンの存在に起因して、各潤滑剤のpH値は、通常6〜12の範囲内である。したがって、各潤滑剤は、使用される酸をその遊離形態では含有しない。
【0004】
これらのコンベヤーベルト潤滑剤は、濃縮物として一般に供給される。このような濃縮物の使用濃度(または使用溶液)は、摩擦要件および水のタイプに応じて、各濃縮物の水への典型的な希釈率0.2〜1.0重量%を適用することによって、通常は調製される。ごく0.1重量%未満の活性潤滑成分の使用濃縮物を有するこのような水性ベルト潤滑剤(水性使用溶液)は、長年にわたって満足に適用されてきた。このような水性使用溶液はまた、「湿式潤滑剤」としても公知である。
【0005】
WO01/23504は、そのような湿式潤滑プロセスであって、抗菌性潤滑剤組成物を用いて容器および/または容器用搬送システムを処理または潤滑するプロセスに関する。使用される潤滑剤組成物は、潤滑剤および抗菌有効量の第四級ホスホニウム化合物を含む。潤滑剤は、中和されていない脂肪酸(オレイン酸であってよい)を含む。
【0006】
US−A2004/0102334は、脂肪酸および中和剤、例えばアルカリ性金属水酸化物、尿素またはアルキルアミンを含む潤滑剤濃縮物に関する。潤滑剤は、5〜9の間のpH値を与えるためのpH緩衝剤を付加的に含有する。
【0007】
US−B6,288,012は、容器および搬送システムの潤滑のための非水性潤滑剤に関し、実質的に非水性の潤滑剤として、天然潤滑剤、石油潤滑剤、合成油、グリースおよび固体潤滑剤を挙げることができる。
【0008】
US−A4,420,518は、とりわけ、0〜50重量%の脂肪カルボン酸、例えば長鎖カルボン酸の混合物を含む、返却可能なガラス瓶をコーティングするための組成物に関する。しかし、この組成物は、コンベヤーベルトを潤滑する代わりにガラス瓶をコーティングするために使用される。
【0009】
US−A2005/0288191は、少なくとも1種の潤滑剤および少なくとも1種のPETボトル用保護剤、例えば、アルキルエーテルカルボン酸またはその塩を含むコンベヤー潤滑剤組成物に関する。使用される潤滑剤は、当業者に公知である、脂肪酸(例えば、オレイン酸)またはアルカノールアミンを含むいずれの潤滑剤であってもよい。
【0010】
EP−A1840196は、リン酸エステル、エーテルカルボキシレート、水、およびオレイン酸などのC〜C22脂肪酸、ならびに/またはC〜C22脂肪アルコールを含む搬送システム用潤滑剤組成物に関する。
【0011】
Kao Chemicals GmbH(エンメリヒ、ドイツ)は、潤滑剤濃縮物を、とりわけ、脂肪酸(約10重量%)を含有しかつアミンを含まない商品名AKYPO GENE CL 756で提供している。Kaoはまた、この潤滑剤濃縮物を湿式潤滑剤として使用する方法であって、濃縮物を8〜11%の間の濃度を有するコンベヤーベルト潤滑剤に希釈して、水性エマルジョンを形成する方法も提案している。このような希釈されたコンベヤーベルト潤滑剤は、水によって0.2〜0.4%までさらに希釈されて(水性使用溶液)、コンベヤーベルトに湿式潤滑剤として最終的に適用される。
【0012】
US−A5,723,418は、有効潤滑量のアミン、腐食抑制剤および界面活性剤を含有する潤滑剤濃縮物組成物に関する。約5〜10の範囲のpH値を得るために、この組成物に中和剤として脂肪酸が添加されていてよい。
【0013】
US−A5,399,274は、脂肪酸、アミノアルコールおよびリン酸エステルを含む、金属加工プロセスでの使用のための潤滑剤組成物に関する。使用される脂肪酸は、少なくとも約8のpHの潤滑剤を得るために、アミノアルコールで中和され、有機リン酸エステルによって複合体化される。潤滑剤は、粉末化された金属部分ならびに/または常套的な鉄および非鉄金属部分のサイジング、コイニングおよびマシニングに有用である。
【0014】
US−A2004/0241309は、例えば、油圧油または圧縮機油として有用な、改善された食品等級の潤滑剤に関する。潤滑剤は、少なくとも1種の植物油、少なくとも1種のポリアルファオレフィンおよび少なくとも1種の抗酸化剤を含む。
【0015】
US−A4,839,067は、カリ系の石鹸を湿式潤滑剤として用いるとき粘稠な堆積物および不快な臭気を形成することなくボトルのコンベヤーベルトを潤滑およびクリーニングするプロセスに関する。プロセスは、中和された第一級脂肪アミンの塩基を含む潤滑剤をコンベヤーベルトに適用する第1ステップを含む。潤滑剤は、酢酸によって6〜8のpH値に中和され得る。第2ステップは、コンベヤーベルトを、カチオンクリーニング剤(例えば、第四級アンモニウム化合物、例えば、アルキルジメチルベンジルアンモニウム)から選択される少なくとも1種のクリーニング剤および有機酸によってクリーニングする。このクリーニングステップを時々、例えば、毎日または毎週実施することができることが示されている。しかし、コンベヤーベルトからの汚れまたは堆積物の除去は、湿式潤滑プロセス自体(例えば、US−A4,839,067に記載の方法の第1ステップ)によって通常既に実施されており、なぜなら、使用される潤滑剤(使用溶液)の大部分が、各コンベヤーベルトの表面から落下するからである。落下する(流出する)液体は、通常、汚れまたは堆積物の大部分をコンベヤーベルトの表面から取り除く。
【0016】
しかし、上記の(殆ど水性である)潤滑剤はいずれも、乾式潤滑プロセスにおいては使用されていない。その大部分は、使用溶液、したがって湿式潤滑剤として使用されており、その一部は、異なる用途、例えば、油圧オイルにおいてなお使用されている。その大部分は、脂肪酸、例えば、オレイン酸を任意の成分または必須成分としてさえ含有していてよいが、脂肪酸は、付加成分、例えば、中和剤、アミン、または中性もしくはアルカリ性範囲にあるpH値をもたらす他のいずれかの成分に起因して、その中和された形態で通常存在する。
【0017】
一方で、これらの水性潤滑剤(湿式潤滑剤)の用途はまた、ユーザに、高い水使用率および比較的高い排出費用をも結果としてもたらした。さらに、これらの水性潤滑剤は、従来意図されたように用いられるとき、これらによって処理されたコンベヤートラック面から流出して、結果として化学薬品および水の浪費をもたらし、隣接する環境で作業しクリーニングを必要とする床または他の面で集まっている操作者に対して危険を構成し得る滑りやすい床面をもたらす。
【0018】
湿式潤滑剤を使用する上記の不利点を克服するために、WO01/07544には、コンベヤーベルトを潤滑するための液体組成物の、いわゆる「乾式潤滑剤」としての使用が開示されている。液体組成物は、(液体として)適用される各コンベヤーベルトの表面に残存し、したがってこの表面から流出しない乾式潤滑剤膜を製造するのに好適である。液体は、通常水相(最大で95重量%の水)であり、シリコーン油、または植物油、鉱物油およびこれらの混合物から選択される他の油をさらに含む。植物油は、ダイズ油、パーム油、オリーブ油またはヒマワリ油であってよい。液体組成物は、水でさらに希釈してもしなくても、コンベヤーベルト表面への連続適用に好適であり、所要の潤滑性を損失することなくコンベヤーベルト表面からの異物の偶発的な漏出を排除する。WO01/07577の実施例によると、コンベヤーベルトを、乾式潤滑条件下で一定時間操作した後に水でスプレーする。
【0019】
国際出願PCT/US2007/087143は、コンベヤーベルトを潤滑する方法であって、潤滑剤濃縮物を乾式潤滑プロセスにおいて乾式潤滑剤として使用する方法に関する。潤滑剤濃縮物は、少なくとも0.1重量%の少なくとも1種の遊離脂肪酸および少なくとも1種の腐食抑制剤を含有する。
【0020】
US−A2005/0059564は、コンベヤートラックまたはベルトを潤滑する組成物および方法に関し、潤滑剤組成物は、少なくとも約25重量%の脂肪酸を含有する。潤滑プロセスは、乾式潤滑として場合により実施され得る。一実施形態において、脂肪酸は、その遊離形態で存在していてよい。しかし、潤滑剤組成物は、必須成分、例えば、中和剤またはポリアルキレングリコールポリマーの存在を必要とする。中和剤成分、例えば、アミンまたはアルカリ性金属水酸化物が使用されるため、各pH値の中性またはアルカリ性の範囲への上昇が引き起こされる。結果として、各潤滑剤は、酸性範囲内では使用されず、いずれの脂肪酸もその遊離形態では含有しない。US−A2005/0059564と類似する開示をUS−B6,855,676において見出すことができる。
【0021】
US−B6,427,826、US−B6,673,753およびEP−A1308393は、乾式潤滑として場合により実施され得るさらなる潤滑方法に関する。種々のタイプの潤滑剤、例えば、水混和性シリコン材料または鉱物油をベースとする潤滑剤を使用することができる。潤滑剤は、脂肪酸、例えば、オレイン酸をさらに含有していてよい。EP−A1308393において、容器またはコンベヤーベルトを、水による、あるいは、例えば、1種もしくは複数の界面活性剤を含めた一般的もしくは改変された洗剤、アルカリ性源または水質調節剤を用いた処理によって、シリコン系潤滑剤から場合によりクリーニングすることができることがさらに示されている。
【0022】
しかし、上記文献内には、コンベヤーベルトを潤滑する場合による形態としての乾式潤滑プロセスがどこにも記載されておらず、脂肪酸による乾式潤滑を酸性範囲において実施した後に、塩基および脂肪酸を含有しかつ≧5のpH値を有する液体組成物を適用する方法が開示されている。
【0023】
湿式潤滑に対する乾式潤滑の方法の1つの主な利点は、潤滑に使用される各液体の体積の大幅な減少である。コンベヤーベルトの通常の乾式潤滑では、約1.5〜20mL/時間の各潤滑剤をコンベヤーベルトに(乾式潤滑剤として)適用する一方で、湿式潤滑の場合には、約10〜30L/時間の水性溶液を同じコンベヤーベルトに適用しなければならない。コンベヤーベルトにおいて使用される各液体潤滑剤の体積は、通常、1000〜10000倍異なる(湿式潤滑対乾式潤滑)。
【0024】
しかし、例えば、WO01/07544に記載されているような乾式潤滑方法はまた、いくつかの不利点も伴う。特に、植物油または特に鉱物油を含有する乾式潤滑剤の使用に起因して、いわゆる黒色化が、コンベヤーベルト上で運搬される容器の底面において観察される。この黒色化は、特に使用済みの容器を運搬/再充填する場合に容器表面に通常付着する汚れによって、またはコンベヤーベルト上で運搬される対象物から生じる例えばガラスもしくは金属の摩耗によって、引き起こされる場合が多い。コンベヤーベルトにおける汚れのさらなる源は、各(再)充填プロセスの間に容器内に充填されず、各容器の外面からコンベヤーベルト上に流れ落ちた液体分、例えば、ビールまたは砂糖含有飲料である。黒色化の問題は、乾式潤滑プロセスの場合においてのみ通常は起こり、湿式潤滑プロセスの間には起こらないが、これは、汚れの大部分が、流出する潤滑剤使用溶液によってコンベヤーベルトの表面から運び去られるからである。
【0025】
黒色化を回避するために汚れおよび植物油、または特に鉱物油の上記混合物をコンベヤーベルトから除去することは困難であるため、全コンベヤーベルトシステムを時々停止してさらなるクリーニングステップを実施しなければならない。このクリーニングは、油−汚れ−混合物が、特に鉱物油を使用している場合、通常の水性洗剤組成物によっては不十分にしか除去することができないため、界面活性剤を含有する強アルカリ性洗剤組成物を使用することによって通常実施される。使い古しの潤滑剤膜をコンベヤーベルトから完全に除去しないと、黒色化の問題が解決されない。加えて、新しい潤滑剤膜が不完全に形成されることで、運搬される対象物に関する問題が引き起こされる。クリーニング後に、容器の運搬に関するいずれの問題も有さずに全システムを操作することができるまで、各コンベヤーベルトに潤滑剤を十分に(再)適用するためにさらなる時間を費やさなればならない(いわゆる開始期)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【特許文献1】US−A5,391,308
【特許文献2】US−A4,274,973
【特許文献3】US−A3,336,225
【特許文献4】EP−A−1690920
【特許文献5】WO01/23504
【特許文献6】US−A2004/0102334
【特許文献7】US−B6,288,012
【特許文献8】US−A4,420,518
【特許文献9】US−A2005/0288191
【特許文献10】EP−A1840196
【特許文献11】US−A5,723,418
【特許文献12】US−A5,399,274
【特許文献13】US−A2004/0241309
【特許文献14】US−A4,839,067
【特許文献15】WO01/07544
【特許文献16】WO01/07577
【特許文献17】国際出願PCT/US2007/087143
【特許文献18】US−A2005/0059564
【特許文献19】US−B6,855,676
【特許文献20】US−B6,427,826
【特許文献21】US−B6,673,753
【特許文献22】EP−A1308393
【特許文献23】EP−B1444316
【特許文献24】US−A4,604,220
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
したがって、本発明の目的は、コンベヤーベルト用の新規の乾式潤滑方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0028】
上記目的を以下のステップを含むコンベヤーベルトを潤滑する方法によって達成する。
【0029】
a)少なくとも1種の脂肪酸を含有する潤滑剤濃縮物を乾式潤滑プロセスにおいて使用するステップであって、潤滑剤濃縮物のpH値が4以下(≦4)の範囲内である、ステップ。
【0030】
b)その後、液体組成物をコンベヤーベルトの表面に付与するステップであって、
液体組成物のpH値が5以上(≧5)sの範囲内であり、
液体組成物が成分a)として少なくとも1種の塩基を含有し、
液体組成物が成分b)として少なくとも1種の脂肪酸を含有する、ステップ。
【発明の効果】
【0031】
本発明による方法の主な利点は、乾式潤滑プロセス(ステップa)の間に(低摩擦によって)優れた潤滑性がコンベヤーベルトに与えられることにある。本発明のステップa)による乾式潤滑プロセスは、異なるタイプの潤滑剤濃縮物を使用する乾式潤滑プロセスと比較して、または対応する湿式潤滑プロセスと比較して改善された潤滑性を与える。加えて、コンベヤーベルトのエンジンの電力消費を、乾式潤滑プロセスにおいて、対応する湿式潤滑プロセスと比較して10〜20%低減することができる。
【0032】
本発明の方法によるステップb)によって、コンベヤーベルトの表面に付着した汚れ(運搬される容器の底面において黒色化を引き起こす)を容易に除去することができる。したがって、ステップb)は、一方ではクリーニング(洗浄)ステップとみなされなければならない。この洗浄は、乾式潤滑剤(脂肪酸)とステップb)の液体組成物の塩基成分とが石鹸を作り上げるため、非常に効果的である。塩基自身は潤滑特性を有しないか、または非常に制限されたわずかな潤滑特性を有するが、コンベヤーベルトからの潤滑剤および液体組成物に含まれる塩基から作製される石鹸は、優れた潤滑特性を有する。したがって、ステップb)はまた、洗浄および潤滑の組合せステップとしてみなすこともできる。石鹸は、化学反応生成物または、塩基および脂肪酸の付加物のどちらとしてもみなすことができる。この効果は、例えば鉱物油を乾式潤滑剤として使用する場合には観察され得ない。
【0033】
ステップb)において使用する液体組成物は、成分としての塩基だけでなく、さらなる成分としての少なくとも1種の脂肪酸も含有するため、ステップb)が実施される限り、液体組成物からコンベヤーベルト表面に新たな石鹸が常に供給される。このことは大きな利点である、なぜなら、石鹸は、コンベヤーベルトからの汚れ、および不完全なまたは損傷した乾式潤滑膜の速い除去を達成するだけでなく、連続した潤滑をコンベヤーベルトにさらに提供するからである。コンベヤーベルト表面からの汚れの除去は、液体組成物が、脂肪酸に対してモル過剰の塩基を含有するときにより速く起こる。したがって、優れた潤滑性は、後のクリーニング(洗浄)ステップb)の間、維持される。これは、運搬される容器の黒色化を回避するためにコンベヤーベルトから汚れを効果的に除去する際に、コンベヤーベルトの操作を中断する必要が全く無いことを意味している。したがって、このようなコンベヤーベルトを24/7−操作モード(毎日24時間、1週間7日間ずっと)で操作することができる。
【0034】
ステップb)によるクリーニングは非常に効果的であるため、ステップb)を非常に長い時間実施する必要はない。ステップa)による乾式潤滑に切り替えることは非常に容易である。このこともまた有利であり、なぜなら、ステップa)を、石灰石鹸の形成および細菌の成長に関連する問題を低減する酸性pH範囲で行うためである(以下を参照)。先に示したように、乾式潤滑プロセスはまた、潤滑性に関しても好ましい。
【0035】
油系、特に鉱物油系の乾式潤滑剤とは対照的に、本発明による脂肪酸含有潤滑剤濃縮物は、特に、脂肪酸、水および乳化剤を含有するエマルジョンとして使用されるとき、または脂肪酸の有機溶媒溶液として使用されるとき、水との優れた混和性を示す。
【0036】
本発明による方法の別の利点は、ステップa)において脂肪酸および腐食抑制剤を含有する潤滑剤濃縮物を使用するこれらの実施形態において、コンベヤーベルト、さらにはコンベヤー装置および/または運搬される対象物の腐食を低減することができることにある。これは、例えば、コンベヤーベルトがステンレス鋼でできていても、ブリキでできている対象物が運搬される場合である。脂肪酸と腐食抑制剤との組合せは、運搬される対象物において黒色化を低減するさらなる効果を有する。
【0037】
本発明による方法は、運搬される対象物またはコンベヤーベルトの材料の種類/性質に関わらず優れた潤滑性を与える。運搬される対象物は、部分的または完全にガラス、金属、カートン、またはプラスチック製であってよく、コンベヤーベルトは、部分的または完全に鋼またはプラスチック製であってよい。本発明による方法は、ステンレス鋼製コンベヤーベルト上での例えばガラス瓶の運搬に優れた潤滑性を与える。コンベヤーベルトにおいて充填される対象物、特に再充填される対象物の運搬は、運搬される対象物もコンベヤーベルト自身も部分的または完全にプラスチック製でない場合、これまではかなり複雑であった。本発明による方法は、ステンレス鋼製コンベヤーベルトにおける使用済みのガラス製対象物の運搬に改善された潤滑性を与える。
【0038】
脂肪酸を含有する潤滑剤濃縮物は、4以上(≦4)のpH値を有し、好ましくはpH1〜3の範囲内である。このことは、最新技術による多くの潤滑剤濃縮物(またはその各使用溶液)が中性またはアルカリ性の範囲内であるため、有利である。このような潤滑剤濃縮物は、さらなる添加物、例えば、中和剤(アミンまたはアルカリ性水酸化物)、キレート化剤、例えばEDTA、ポリマー、例えばポリアルキレングリコール、鉱物油、例えば、場合によりフッ素化されていてよいシリコン系油、または(水混和性)シリコーン材料を通常含有する。本発明による方法内で使用される潤滑剤濃縮物は、上記添加物をさらなる成分として含有する必要がない、なぜならこれらが不利点とも関連するからである。
【0039】
キレート化剤、例えばEDTAを用いて、コンベヤーベルトにおける石灰石鹸形成を抑制する。コンベヤーベルトにおける石灰石鹸の形成は、中性からアルカリ性の潤滑条件を使用することによって普通は起こる。石灰石鹸形成は、各コンベヤーベルトにおける潤滑を大幅に低減し、またはさらに停止するというマイナスの副作用を有する。キレート化剤、例えばEDTAの使用は、容易に生分解することができないというマイナスの副作用を有する。本発明のステップa)において使用される潤滑剤濃縮物は、pHスペクトルの酸性範囲内にあるため、石灰石鹸の形成が起こらない。加えて、潤滑剤濃縮物のむしろ低いpH範囲が生物静力学的効果を誘発し、細菌または食品および/もしくは飲料の寄生生物の成長が起こらない。脂肪酸に加えて別の酸、例えば酢酸を使用する場合、各潤滑剤濃縮物のさらなる安定化が得られる。
【0040】
特にガラス瓶の(再)充填および/または洗浄に関連して、コンベヤーベルトシステム用の潤滑剤の成分としてEP−A1308393に開示されているような(水混和性)シリコン材料を用いることが通常回避される。シリコン系油を含むこれらの(水混和性)シリコン材料は、ガラス製対象物に強く接着するというマイナスの副作用を有する。この対象物の洗浄ステップの間に、相当量の上記材料を、使用される洗浄液(通常は水性液体)によって各対象物の底面から除去する。洗浄される対象物は、各洗浄液内に通常は全体が配置されているため、シリコン材料もまた上記対象物の内部に運ばれる。上記対象物の外側からと同様に、各対象物の内側からシリコン材料を完全に除去することもまたかなり困難である。ガラス製の対象物(ボトル)の内側に付着しているシリコン材料は、このボトル内に充填される例えばビールの悪い風味を引き起こす。さらに、シリコン材料は、ビールの発泡安定性に非常に悪影響を及ぼす。ビールがその内部にシリコン材料を含有するボトルからガラス内に注入されるとき、各ビールは、非常に制限されたわずかな発泡挙動を示すか、または全く示さない。しかし、大部分の消費者は、良好かつ新鮮な性質の印として発泡したビールを摂取することを期待している。
【0041】
さらなる利点は、ステップa)において使用される、少なくとも1種の脂肪酸を含有する潤滑剤濃縮物を乾式潤滑剤および湿式潤滑剤の両方として使用することができることにある。このことは、同一のコンベヤーベルトシステムにおける両方の方法の組合せを可能にする。例えば、使用済みのガラス容器の再充填は、いくつかの個々のステップからなり、このガラス容器を、コンベヤーベルトにおいて、コンベヤーベルトに組み込まれた個々のセクションに運搬して、個々のステップ(セクション、例えば、ボトル洗浄、充填またはラベリング)を実施する。したがって、乾式潤滑剤を使用する個々のステップの一部を実施することができ、1または複数の個々のステップの間に、湿式潤滑剤を使用する。代替的には、部分または全コンベヤーベルトの潤滑を、湿式潤滑として一定時間間隔で(一時的に)実施することができる。消費者によって要求される場合、全システムの操作を、潤滑モードを乾式潤滑から湿式潤滑に、およびその逆に単に切り替えることによって継続することができる。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明に関連して用語「乾式潤滑剤」は、使用される潤滑剤が(ステップaにおいて)各コンベヤーベルトに、各潤滑剤が該当するコンベヤーベルトの表面に完全または少なくとも実質的のいずれかで残存するように、適用されることを意味する。実質的に残存するとは、使用された潤滑剤の10体積%以下が各コンベヤーベルトから流出(落下)していることを意味する。明確のために、乾式潤滑剤自体が液体、例えばエマルジョンまたは溶液として通常使用されることが示されている。上記乾式潤滑剤の適用に関するプロセス(方法)は、「乾式潤滑(プロセス)」として定義される。好ましくは、潤滑剤濃縮物を、本発明による乾式潤滑プロセスにおいて、(通常サイズが5〜20m、好ましくは約12mのコンベヤーベルトトラックあたり)1.5〜20mL/時間、特に約5mL/時間の割合で、各コンベヤーベルトに添加する。
【0043】
本発明に関連して用語「湿式潤滑剤」は、各潤滑剤が、コンベヤーベルトの表面上に、使用される潤滑剤または潤滑剤を含有する液体のうちの相当量が各コンベヤーベルトの表面から流出するように、適用されることを意味する。上記湿式潤滑剤の適用に関するプロセス(方法)は、「湿式潤滑(プロセス)」として定義される。好ましくは、液体使用量の少なくとも30体積%、より好ましくは少なくとも50体積%、特に少なくとも90体積%が流出する。好ましくは、潤滑剤を、湿式潤滑プロセスにおいて、(コンベヤーベルトトラック/通常サイズが5〜20m、好ましくは約12m、あたり)1.5〜20L/時間の割合で、各コンベヤーベルトに添加する。
【0044】
本発明に関連して用語「潤滑剤濃縮物」は、各潤滑剤が1種の脂肪酸または2種以上の脂肪酸の混合物を、好ましくは少なくとも0.1重量%の量で含有することを意味する。潤滑剤濃縮物は、少なくとも1種の腐食抑制剤、水、または有機溶媒を含めたさらなる成分を含有していてよく、結果として(脂肪酸およびさらなる成分の合計)計100重量%になる。
【0045】
本発明に関連して用語「(潤滑剤の)使用溶液」は、各潤滑剤に含まれる1種の脂肪酸または2種以上の脂肪酸の混合物の量が好ましくは0.1重量%未満、より好ましくは0.01重量%未満であることを意味する。通常、潤滑剤の使用溶液は、各潤滑剤濃縮物を溶媒、好ましくは水によって1000〜10000倍に希釈することによって得られる。
【0046】
本発明において、別途示さない限り、化合物が、(他の化合物と混合する前の)それぞれ純粋な形態の化学構造/名前によって言及されていることを示さなければならない。特にこれらを混合物において使用するとき、その化学構造は、例えば、各混合物のpH値の影響により変更される場合がある。例えば、脂肪酸は、その遊離(通常はプロトン化)形態で完全または部分的に存在し得る。これは、通常、酸性のpH範囲内、例えば≦4のpH値での場合である。しかし、脂肪酸はまた、その非プロトン化形態でも完全または部分的に存在し得る。これは、通常、中性またはアルカリ性のpH範囲内での場合であり、ここで、脂肪酸は、対応する塩に完全または部分的に移行するか、または化学反応が起こり得る。
続いて、本発明によるコンベヤーベルトを潤滑する方法を詳細に説明する。
【0047】
ステップa)。
(乾式潤滑プロセスにおいて)乾式潤滑剤として使用される潤滑剤濃縮物は、第1成分として少なくとも1種の脂肪酸を含有する。脂肪酸は、当業者に公知のいずれの脂肪酸であってもよい。好ましくは、脂肪酸は、C〜C22−脂肪酸、例えば、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸またはリノレン酸である。脂肪酸は、飽和脂肪酸、一不飽和脂肪酸または多価不飽和脂肪酸であってよい。好ましくは、各酸は、遊離脂肪酸として完全または部分的に使用される。
最も好ましくは、脂肪酸はオレイン酸である。
【0048】
本発明に関連して用語「遊離脂肪酸」は、各脂肪酸の酸性官能基(カルボン酸基)が、各潤滑剤の他のいずれかの成分によってブロックされていないか、またはこれと反応することを意味する。好ましくは、各潤滑剤は、各脂肪酸のカルボン酸基をブロックし得るおよび/またはこれと反応し得るいずれの対イオンをも含有しない。特に、各潤滑剤は、カルボン酸基の対イオンとして作用し得るいずれのカチオン性イオンまたは他のカチオン成分をも実質的に含有しない。加えて、各潤滑剤濃縮物は、好ましくは、いずれのアミンも含まない。
【0049】
潤滑剤濃縮物が、使用される(遊離)脂肪酸の酸性官能基をブロックし得る、またはこれと反応し得る他のいずれかの成分を含有するとき、本発明による潤滑剤濃縮物において使用される脂肪酸の量を、好ましくは少なくとも0.1重量%の(遊離)脂肪酸濃度を達成するレベルまで上昇させなければならない。組成物、例えば、潤滑剤濃縮物に含まれる(遊離)脂肪酸の量を検出するための方法は、当該技術分野において公知である。
【0050】
潤滑剤濃縮物は、少なくとも1種の脂肪酸または2種以上の脂肪酸の混合物を一般には少なくとも0.1重量%の量、好ましくは0.1〜25重量%の量、より好ましくは0.3〜5重量%の量で含有する。
【0051】
本発明のステップa)による乾式潤滑プロセスにおいて使用される潤滑剤濃縮物は、4以下(≦4)の範囲内、好ましくは3以下(≦3)の範囲内、より好ましくは1〜3、特に(約)2のpH値を有する。潤滑剤濃縮物がさらに希釈されると、例えば、乾式潤滑プロセスが湿式潤滑プロセスと組み合わされるとき、使用溶液(例えば、水で希釈された潤滑剤濃縮物)は、通常5.5〜7.5の範囲内、好ましくは7のpH値を有する。
【0052】
本発明の一実施形態において、0.1〜25重量%の少なくとも1種の脂肪酸および5〜95重量%の水、好ましくは脱イオン水、ならびに場合により少なくとも0.1重量%の腐食抑制剤を含有する潤滑剤濃縮物が使用される。
【0053】
潤滑剤濃縮物は、さらなる成分として、少なくとも1種の腐食抑制剤を含有していてよい。好ましい腐食抑制剤は、エチレンオキシド(EO)、例えば、オレイル−3EO−リン酸エステルから誘導されるフラグメントを含有し得るリン酸エステル(リン酸エステル)である。
【0054】
一般に、リン酸エステルは、式OP(OX)を有し、式中、Xは、独立してHまたはRであり、Rは、アリールまたはアルキル基を表し得る。好ましくは、リン酸エステルは、式(I)または(II)を有する少なくとも1種の化合物である。
【化1】

【化2】

【0055】
式中、Rは、アリールまたはアルキル基であり、nは、(互いに独立して)1〜10に等しくてよい。式(I)または(II)内において、Rは、2つ以上存在する場合は、同じ意味を有しても異なる意味を有してもよい。好ましくは、リン酸エステルは、いずれのイオン、例えば、NaまたはKも含有しない。アルキルは、例えばC〜C20−アルキルであってよく、アリールは、フェニルであってよい。本発明の一実施形態において、式(I/ジエステル)の少なくとも1種の化合物と式(II/モノエステル)の少なくとも1種の化合物との混合物が使用される。この混合物内のジエステル対モノエステルの比は、1:4〜4:1(重量%/重量%)、好ましくは約1:1(重量%/重量%)である。本発明の好ましい実施形態において、リン酸エステルは、式(I)による少なくとも1種のジエステルである。ジエステルは、最大で10重量%の各モノエステルを(副生成物として)含有していてよい。
【0056】
式(I)または(II)によるリン酸エステルの好ましい例は、(C16〜C18)−アルキル−O−5EO−リン酸エステル(モノ−およびジエステルの混合物)、(セチル−オレイル)−O−4EO−リン酸エステル(モノエステルとジエステルとの混合物)、(C12〜C14)−アルキル−O−4EO−リン酸エステル(モノエステルとジエステルとの混合物)、(C13〜C15)−アルキル−O−3EO−リン酸(C13〜C15)−アルキル−O−7EO−リン酸エステル、オレイル−O−4EO−リン酸エステル(モノエステルとジエステルとの混合物)、ラウリル−O−4EO−リン酸エステルおよびC17−アルキル−O−6EO−リン酸エステル(モノ−およびジエステルの混合物、好ましくは5.5:4.5の比)である。これらのリン酸エステルのうち、例えば、「(C16〜C18)」という用語は、各アルキル残基の鎖長がC16〜C18で変動し得ること、または各鎖長のこれらのアルキル残基の混合物が使用されることを意味する。同じことが、例えば、「(セチル−オレイル)」という用語に適用される。上記の好ましいリン酸エステルは、商品名Phospholan PE 65(Akzo Nobel)、Maphos 54P(BASF)、Maphos 74P(BASF)、Maphos 43T(BASF)、Maphos 47T(BASF)、Lubrhophos LB−400(Rhodia)、Lubrhophos RD−510(Rhodia)およびLakeland PAE 176(Lakeland)で市販されている。より好ましくは、式(I)または(II)によるリン酸エステルは、(C12〜C18)−アルキルフラグメントおよび3〜6のEO−フラグメントを含有する。
【0057】
好ましい腐食抑制剤のさらなる部類は、アルキルエーテルカルボン酸としても公知であり、1個もしくは複数のエーテル基またはその混合物を含有する飽和または不飽和カルボン酸であるアルコキシル化カルボン酸である。アルコキシル化は、好ましくはエトキシル化であり、各エトキシル化化合物が、エチレンオキシドから誘導される1種または複数のフラグメント(EO−フラグメント)を含有することを意味する。3EOは、各化合物がエチレンオキシドから誘導される3つのフラグメントを含有することを意味する。この定義はまた、下記または上記の化合物、例えば、アルコキシル化脂肪アルコール、アルコキシル化エステルまたはアルコキシル化リン酸エステルにも適用される。
【0058】
好ましいエトキシル化カルボン酸は、C〜C18−アルキルフラグメントおよび1〜6、好ましくは3〜6の、EO−フラグメントを含有する。C〜C18−アルキルは、各フラグメントが、示した範囲内でアルキル残基または少なくとも2種のアルキル残基の混合物を形成する4〜18個の炭素原子を含有することを意味する。通常、あと2種類の酸の混合物として、エトキシル化カルボン酸、例えば、(C16〜C18)−アキルエーテルカルボン酸が使用される。エトキシル化カルボン酸の好ましい例は、C12−アルキル−4EO−カルボン酸、(C16〜C18)−アルキル−2EO−カルボン酸、(C16〜C18)−アルキル−5EO−カルボン酸、(C16〜C18)−アルキル−10,5EO−カルボン酸または(C〜C)−アルキル−8EO−カルボン酸である。より好ましくは、エトキシル化カルボン酸は、C12−アルキル−4EO−カルボン酸である。エトキシル化カルボン酸は、例えば、Kao Chemicals GmbH(エンメリヒ、ドイツ)から商品名Akypo RLM 25、Akypo RO 20、Akypo RO 50、Akypo RO 90、Akypo RCO 105またはAkypo LF2で市販されている。本発明の好ましい一実施形態において、エトキシル化カルボン酸エステルは、(C12〜C18)−アルキル−フラグメントおよび3〜6のEO−フラグメントを含有する。例は、C12−アルキル−4EO−カルボン酸、または(C16〜C18)−アルキル−5EO−カルボン酸である。
【0059】
本発明の一実施形態において、腐食抑制剤は、少なくとも1種のリン酸エステルおよび少なくとも1種のアルコキシル化カルボン酸である。本発明の別の実施形態において、腐食抑制剤は、少なくとも1種のリン酸エステルである。本発明のさらなる実施形態において、腐食抑制剤は、少なくとも1種のアルコキシル化カルボン酸である。
【0060】
本発明において使用される潤滑剤濃縮物内に腐食抑制剤が存在することは、耐食性の付与、乳化効果、4以下(≦4)、好ましくは1〜3の範囲へのpH値の低下、およびさらには乾式潤滑プロセスの間の黒色化の低減という利点と関係する。
【0061】
潤滑剤濃縮物は、存在する場合、少なくとも1種の腐食抑制剤を一般には少なくとも0.1重量%の量、好ましくは0.1〜25重量%の量、より好ましくは0.1〜9.0重量%の量で含有する。
【0062】
脂肪酸、任意の腐食抑制剤および任意の水に加えて、潤滑剤濃縮物は、当業者に公知の1種もしくは複数のさらなる成分、例えば、界面活性剤、乳化剤、酸、例えば、強または弱有機酸、例えば、1個もしくは複数のエーテル基を含有する飽和もしくは不飽和カルボン酸、溶媒、または脂肪アルコールを含有していてよい。任意の成分ならびに腐食抑制剤は、これらが(遊離)脂肪酸のカルボン酸基の自由な利用可能性を妨害しないように選択される。任意の成分はまた、これらが互いに相溶性であるように、例えば混和性の点から選択される。
【0063】
好適な界面活性剤の例は、WO01/07544またはUS−B6,427,826に見出され得る。好ましい界面活性剤として、アルキルベンゼンスルホン酸、カルボン酸、アリシルホスホン酸、ならびにこれらのカルシウム、ナトリウムおよびマグネシウム塩、ポリブテニルコハク酸誘導体、シリコーン界面活性剤、フルオロ界面活性剤、ならびに油可溶化脂肪族炭化水素鎖に結合した極性基を含有する分子が挙げられる。先に示した好ましい界面活性剤は、安定かつ存在する場合、その酸性形態で使用され、塩としては使用されない。界面活性剤は、所望の結果を与える量で用いられる。この量は、組成物の全重量を基準にして、個々の成分について0〜約30、好ましくは約0.5〜約20重量%の範囲であり得る。
【0064】
乳化剤(エマルション化剤)は、当業者にも公知であり、(有機)溶媒または界面活性剤として使用することもできる化合物を含んでいてよい。本発明による好ましい乳化剤は、アルコキシル化脂肪アルコール、アルコキシル化エステル、場合によりアルコキシル化されている脂肪アルコールまたはリン酸エステルである。
【0065】
好ましい脂肪アルコールは、セチルアルコールまたはオレイルアルコール、特にセチルアルコール(1−ヘキサデカノール)である。アルコキシル化脂肪アルコールは、好ましくはエトキシル化脂肪アルコールである。乳化剤として好適なエトキシル化脂肪アルコールは、BASF AG(ルートヴィヒスハーフェン、ドイツ)から商品名Lutensol XLシリーズ(例えば、XL70)、Emulan EL、Emulan NP 2080、Emulan OC、Emulan OG、Emulan OP25、またはEmulan OUで市販されている。エトキシル化脂肪アルコールの好ましい例は、R=C1021でありかつx=4、5、6、7、8、9、10および14であるRO(CO)Hである。
【0066】
アルコキシル化エステルは、好ましくはエトキシル化エステルである。エトキシル化エステルは、1個または複数のエーテル基(EO−フラグメント)を対応するアルコールから誘導されるエステルフラグメント内に含有するカルボン酸のエステルである。好ましいエトキシル化エステルは、エトキシル化脂肪酸エステル、特に、BASF AGから商品名Emulan Aで市販されている、オレイン酸のエトキシル化エステルである。
【0067】
本発明の好ましい実施形態において、ステップa)で使用される潤滑剤濃縮物は、少なくとも1種の酸をさらに含有する。この酸は、先に示したような(遊離)脂肪酸の定義には該当しない。好ましくは、この酸は、アルコキシル化カルボン酸を含めた強または弱有機酸から選択される。
【0068】
より好ましくは、この酸は、弱有機酸、例えば、プロピオン酸、グリコール酸、グルコン酸、クエン酸、酢酸またはギ酸、特に酢酸である。潤滑剤濃縮物内に上記の(さらなる)酸が存在することにより、潤滑剤濃縮物のより低いpH値(≦4の範囲内)、好ましくは1〜3のpH値、特に(約)2のpH値へのより良好な調整を行う。上記の(さらなる)酸の濃度は、存在する場合、少なくとも0.1重量%の量、好ましくは0.1〜25重量%の量、より好ましくは0.1〜5.0重量%の量である。
【0069】
本発明の別の実施形態において、0.1〜25重量%の少なくとも1種の脂肪酸、0.1〜25重量%、好ましくは0.1〜9.0重量%の少なくとも1種の腐食抑制剤、0.1〜25重量%の量、好ましくは0.1〜5.0重量%の少なくとも1種の酸、ならびに5〜95重量%の水および/または少なくとも1種の有機溶媒を含有する潤滑剤濃縮物が使用される。好ましい有機溶媒は、グリコールエーテル、特に、商品名Dovanol DPMでDow Chemicalsから市販されているジプロピレングリコールメチルエーテルである。場合により、水と少なくとも1種の有機溶媒との混合物を使用することもできる。潤滑剤濃縮物が、有機溶媒を、好ましくは10重量%超で含有するとき、この濃縮物は、(透明な)溶液として、および/または非連続的に、コンベヤーベルト上に好ましくは適用される。
【0070】
本発明の好ましい実施形態において、0.1〜25重量%の少なくとも1種の脂肪酸、0〜95重量%の水、0.1〜95重量%の少なくとも1種の乳化剤、0〜25重量%の少なくとも1種の酸、0〜30重量%の少なくとも1種のさらなる成分、好ましくは界面活性剤、および0.1〜25重量%の少なくとも1種の腐食抑制剤を含有する潤滑剤濃縮物が使用される。好ましくは、潤滑剤濃縮物は、エマルジョンとして、および/または非連続的にコンベヤーベルト上に適用される。
【0071】
本発明の別の好ましい実施形態において、植物油、特にナタネ油、ダイズ油、パーム油、オリーブ油またはヒマワリ油の量が、20重量%未満、より好ましくは10重量%未満、なおより好ましくは5重量%未満、最も好ましくは1重量%未満である潤滑剤濃縮物が使用される。
【0072】
本発明の一実施形態において、いずれの中和剤も実質的な量で含有しない潤滑剤濃縮物が使用される。中和剤に関する実質的な量では、後に示す鉱物油、(水混和性)シリコン材料、錯化剤またはポリアルキレンポリマーと同様に、中和剤が、使用される潤滑剤濃縮物内に全く存在しないか、またはその濃度が、潤滑剤濃縮物の0.05重量%、好ましくは0.01重量%の量未満であることを意味する。中和剤(中和剤)の例は、アルカリ性金属水酸化物、例えば、水酸化カリウムおよび水酸化ナトリウム、アンモニア、緩衝剤、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、またはリン酸ナトリウム、アルキルアミン、例えば、第一級、第二級、第三級アミンまたはアルカノールアミン、およびアミン、例えば、脂肪アルキル置換アミンである。
【0073】
本発明の別の実施形態において、ポリアルキレングリコールポリマーを実質的な量で含有しない潤滑剤濃縮物が使用される。このようなポリアルキレングリコールポリマーとして、アルキレンオキシドのポリマー、またはその誘導体および混合物もしくは組合せが挙げられ、少なくとも1000〜約数十万の分子量を通常有する。このようなポリアルキレングリコールポリマーは、例えば、US−B6,855,676に開示されている。
【0074】
本発明の別の実施形態において、キレート化剤を実質的な量で含有しない潤滑剤濃縮物が使用される。特に、このようなキレート化剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)もしくはその塩、特に二ナトリウムもしくは四ナトリウム塩、イミノジコハク酸ナトリウム塩、トランス−1,2−ジアミノシクロヘキサン四酢酸一水和物、ジエチレントリアミン五酢酸、ニトリロ三酢酸のナトリウム塩、N−ヒドロキシエチレンジアミン三酢酸の五ナトリウム塩、N,N−ジペータ−ヒドロキシエチル)グリシンの三ナトリウム塩、またはグルコヘプトン酸ナトリウムのナトリウム塩である。
【0075】
本発明の別の実施形態において、いずれの鉱物油も実質的な量で含有しない潤滑剤濃縮物が使用される。本発明内の鉱物油はまた、シリコン系油、フッ素化油、および、商標「Krytox」でDuPont Chemicalsから入手可能であるフッ素化グリース、ならびに他の合成油も含む。
【0076】
本発明の別の実施形態において、いずれのシリコン材料も実質的な量で含有しない潤滑剤濃縮物が使用される。このシリコン材料は、通常、水混和性シリコン材料である。このようなシリコン材料は、アルキルおよびアリールシリコン、官能化シリコン、例えば、クロロシラン、アミノ−、メトキシ−、エポキシ−、およびビニル置換されたシロキサンならびにシラノールを含み、これらはエマルジョンとして存在していても粉末として存在していてもよい。このような(水混和性)シリコン材料は、例えば、EP−A1308393に、特に段落48に開示されている。
【0077】
ステップa)で使用される潤滑剤濃縮物は、当該技術分野において公知のように、例えば、個々の成分を任意の順序で混合することによって調製され得る。しかし、本発明による潤滑剤濃縮物はまた、少なくとも1種の脂肪酸(および腐食抑制剤)を含有する第1濃縮物を溶媒、例えば、水で希釈することによっても調製され得る。得られる混合物は、少なくとも0.1重量%の少なくとも1種の脂肪酸または2種以上の脂肪酸の混合物を好ましくは含有する。
【0078】
ステップb)。
ステップb)において使用される液体組成物を、コンベヤーベルトの表面に適用する。この液体組成物内に含まれる成分は、各液体組成物の個々の成分を共に混合した後に、液体組成物のpH値が5以上(≧5)の範囲内にあることを条件として、いずれの成分であってもよい。
【0079】
液体組成物は、成分a)として、少なくとも1種の塩基を含有する。好ましくは、塩基は、アルカノールアミン、アミン、アンモニア、アンモニア水酸化物、尿素、アルカリ性水酸化物、緩衝剤、脂肪アミン、アルコキシル化脂肪アミン、脂肪アミンオキシドまたはアルコキシル化脂肪アミンオキシドから選択される。
【0080】
アルコノールアミンは、好ましくはエタノールアミン、より好ましくはモノエタノールアミン(MEA)、アミンのジエタン(DEA)またはトリエタノールアミン(TEA)である。アルカリ性水酸化物(アルカリ性金属水酸化物)は、好ましくは水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウム、より好ましくは水酸化カリウムである。アンモニア(NH)およびアンモニア水酸化物(NHOH)は、水性液体として通常使用される。尿素の他に、当業者に公知の任意の安定な尿素誘導体を塩基として使用することもできる。
【0081】
用語アミンは、先に定義したアルカノールアミン、または後に示す脂肪アミン、アルコキシル化脂肪アミンまたはその各アミンオキシドと異なる任意のアミンを含む。アミンは、例えば、第一級、第二級または第三級アルキルアミン、または環式アミン、例えば、モルホリンであってよい。緩衝剤は、公知の緩衝剤、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、およびリン酸二水素ナトリウムであってよい。
【0082】
脂肪アミンは、当業者に公知のいずれの脂肪アミンであってもよい。アルコキシル化脂肪アミンは、各脂肪アミンから誘導され、ここで、各アルコキシル化化合物は、エチレンオキシドから誘導される1個または複数のフラグメント(EO−フラグメント)を含有する、好ましくはエトキシル化化合物である。各脂肪アミンまたはアルコキシル化脂肪アミンは、第一級、第二級または第三級アミンであってよい。(アルコキシル化)脂肪アミンは、8〜22個の間の炭素原子を有する飽和または不飽和の、分枝状または直鎖のアルキル基(C〜C22)である少なくとも1種の置換基を含有する。(アルコキシル化)脂肪アミンはまた、上記定義による2種以上の(アルコキシル化)脂肪アミンの混合物であってもよい。
【0083】
好ましくは、脂肪アミンは、式(III)による化合物である。
【化3】

【0084】
式中、Rは、8〜30個の間の炭素原子を有するアルキル基であり、Rは、水素、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基またはヒドロキシアルキル基であり、Rは、水素または2〜12個の炭素原子を有するアルキレン基であり、X(RがHでないとき)は、水素または親水基、例えば、−NH、−OR、−SO−(アミンアルコキシレート)、アミンアルコキシレートまたはアルコキシレートであり、Rは、水素または(C〜C18)−アルキルである。
【0085】
好ましいアルコキシル化脂肪アミンは、式(III)による化合物から誘導され、各化合物は、1個または複数のアルコキシレートフラグメント、好ましくは1個または複数の、エチレンオキシドから誘導されるフラグメント(エトキシレートフラグメントまたはEO−フラグメント)、より好ましくは1〜40個、最も好ましくは5〜25個の、エチレンオキシドから誘導されるフラグメントをさらに含有する。各アルコキシレートフラグメントは、任意の置換基R−R、好ましくは置換基R内に含まれていてよい。
【0086】
脂肪ミンオキシドまたはアルコキシル化脂肪アミンオキシドは、(第三級)窒素原子に結合した酸素原子をさらに有する第三級アミンである、先に示した脂肪アミンまたはアルコキシル化脂肪アミンからそれぞれ誘導されるいずれの化合物であってもよい。
【0087】
脂肪アミン(XまたはR=H)の例は:ジメチルデシルアミン、ジメチルオクチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、エチルオクチルアミンおよびこれらの混合物である。
【0088】
Xが−NHであるとき、好ましい例は、アルキルプロピレンアミン、例えば、N−ココ−1,3−ジアミノプロパン、N−オレイル−1,3−ジアミノプロパン、N−獣脂−1,3−ジアミノプロパンまたはこれらの混合物である。
【0089】
好ましいエトキシル化アミンの例は、エトキシル化獣脂アミン、エトキシル化ココナッツアミン、例えば、Ethomeen C15またはEthomeen C25(Akzo Nobel)として市販されており、例えば、1〜30のEO−フラグメントを含むココアミンエトキシレート、エトキシル化アルキルプロピレンアミン、およびこれらの混合物である。
【0090】
脂肪ミンオキシドの例は、獣脂ビス−(2−ヒドロキシエチル−)アミンオキシド、C14−アルキル(ジメチル)アミンオキシド、(C12〜C14)アルキル(ジメチル)アミンオキシドおよびこれらの混合物である。
【0091】
より好ましくは、塩基(成分a)は、アルカノールアミン、アンモニア水酸化物、アルカリ水酸化物、尿素、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、式(III)による脂肪アミン(式中、Xが−NHである)、または式(III)による脂肪ミンオキシド(式中、XがHであり、窒素原子に結合した酸素原子をさらに有する第三級アミンである)から選択される少なくとも1種の化合物である。
【0092】
なおより好ましくは、塩基(成分a)は、アルコノールアミン、水酸化アンモニウム、水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムから選択される少なくとも1種の化合物である。最も好ましくは、塩基は、モノエタノールアミン(MEA)、ジエタノールアミン(DEA)またはトリエタノールアミン(TEA)である。
【0093】
液体組成物は、成分a)を少なくとも2重量%の量、好ましくは2〜25重量%の量、より好ましくは4〜20重量%の量、最も好ましくは4〜15重量%の量で含有する。
【0094】
(ステップbで使用される)液体組成物は、成分b)として少なくとも1種の脂肪酸を含有する。脂肪酸は、当業者に公知のいずれの脂肪酸であってもよい。好ましくは、脂肪酸は、C〜C22−脂肪酸、例えば、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸またはリノレン酸である。脂肪酸は、飽和脂肪酸、一不飽和脂肪酸または多価不飽和脂肪酸およびこれらの混合物であってよい。最も好ましくは、脂肪酸はオレイン酸である。
【0095】
本発明のステップb)において使用される液体組成物のpH値により、脂肪酸(成分b)は、その非プロトン化形態で上記液体組成物内に通常完全にまたは少なくとも部分的に存在する。しかし、各脂肪酸は、液体組成物を調製するとき、その遊離形態で使用され得る。塩基(成分a)および脂肪酸(成分b)は、通常、化学反応をして、および/または互いの付加物を形成する。塩基および脂肪酸の反応生成物および/または付加物は、石鹸と考えることができ、これは、使用される脂肪酸が対応する塩に完全にまたは少なくとも部分的に移行していることを意味する。
【0096】
液体組成物は、成分b)を、少なくとも2重量%の量、好ましくは2〜30重量%の量、より好ましくは5〜25重量%の量、最も好ましくは8〜20重量%の量で含有する。
【0097】
本発明のステップb)において使用される液体組成物は、5以上(≧5)の範囲内、より好ましくは7以上(≧7)の範囲内、特に9〜13の範囲内のpH値を有する。
【0098】
本発明のステップb)において使用される液体組成物内に、成分a)(塩基)および成分b)(脂肪酸)が、液体組成物のpH値が5以上(≧5)の範囲内であるということを条件として、互いにいかなる比で存在していてもよい。塩基対脂肪酸のモル比の例は、0.63:1、2.4:1、4.0:1またはさらに25.0:1である。好ましくは、液体組成物は、脂肪酸に対してモル過剰の塩基を含有する。より好ましくは、塩基対脂肪酸のモル比は、2.0:1〜4.5:1(mol/mol)の範囲内である。
【0099】
本発明の実施形態において、ステップb)において使用される液体組成物は、水をさらに含有する。好ましくは、水はバランスとして使用され、このことは、水が、100重量%から各液体組成物の残りの成分の合計を引いた量で添加されることを意味している。液体組成物中の水の濃度は、存在する場合、0.1〜96重量%の量、より好ましくは20〜90重量%の量、最も好ましくは40〜80重量%の量である。
【0100】
ステップb)において使用される液体組成物は、塩基、脂肪酸および場合による水の他に、1種または複数のさらなる成分、例えば、界面活性剤、乳化剤、溶媒、ハイドロトロープ、腐食抑制剤、応力割れ抑制剤、カップリング剤、摩耗防止剤、抗菌剤、摩擦もしくは粘度調整剤、消泡剤、またはキレート化剤を含有していてよい。場合による成分は、これらが共に混合されるとき、5以上(≧5)の範囲の液体組成物のpH値を与えるように選択される。
【0101】
液体組成物は、一実施形態において、キレート化剤を含有していてよい。特に、このようなキレート化剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)もしくはその塩、特に二ナトリウムもしくは四ナトリウム塩、イミノジコハク酸ナトリウム塩、トランス−1,2−ジアミノシクロヘキサン四酢酸一水和物、ジエチレントリアミン五酢酸、ニトリロ三酢酸のナトリウム塩、N−ヒドロキシエチレンジアミン三酢酸の五ナトリウム塩、N,N−ジ(ベータ−ヒドロキシエチル)グリシンの三ナトリウム塩、またはグルコヘプトン酸ナトリウムのナトリウム塩である。
【0102】
一実施形態において、液体組成物は、少なくとも1種のハイドロトロープをさらに含有していてよい。ハイドロトロープは、当業者に公知であり、例えば、EP−B1444316またはUS−A4,604,220に開示されている。好ましくは、ハイドロトロープは、アニオンスルホネート、例えば、C〜C18アルカリールスルホネート、例えば、1−オクタンスルホネートのアルカリ金属塩、アルカリ金属アリールスルホネート、C〜C30アルカリールスルホネート、例えば、C〜C18アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、キシレンスルホン酸ナトリウム、クメンスルホン酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホネート、またはアリシル化ジフェニルオキシドジスルホネートである。より好ましくは、ハイドロトロープは、キシレンスルホン酸のナトリウム塩、またはクメンスルホン酸のナトリウム塩である。
【0103】
別の実施形態において、液体組成物は、少なくとも1種の応力割れ抑制剤(応力割れ抑制剤)をさらに含有していてよい。好ましくは、応力割れ抑制剤は、アルキルリン酸エステルまたはアルキルアリールリン酸エステルである。さらに、好適な応力割れ抑制剤は、ポリオキシエチレンデシルエーテルリン酸またはそのカリウム塩、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルリン酸またはそのカリウム塩、ポリオキシエチレンジノニルフェニルエーテルリン酸またはそのカリウム塩、およびこれらの混合物から選択される。
【0104】
別の実施形態において、液体組成物は、ステップa)で定義したように、少なくとも1種の腐食抑制剤をさらに含有していてよい。
【0105】
存在する場合、液体組成物は、キレート化剤、ハイドロトロープ、腐食抑制剤または応力割れ抑制剤を、それぞれ、≦30重量%の量、より好ましくは10〜30重量%の量、最も好ましくは15〜25重量%の量で含有する。しかし、液体組成物が、キレート化剤、ハイドロトロープ、腐食抑制剤および応力割れ抑制剤から選択される少なくとも3成分を含有しているときには、全成分の各個々の量の合計が、好ましくは≦40重量%である。
【0106】
本発明の一実施形態において、4〜20重量%の少なくとも1種の塩基、5〜25重量%の少なくとも1種の脂肪酸、40〜80重量%の水および0〜30重量%の少なくとも1種のキレート化剤、少なくとも1種のハイドロトロープ、少なくとも1種の腐食抑制剤、ならびに/または少なくとも1種の応力割れ抑制剤を含有する液体組成物が使用される。好ましくは、塩基は、脂肪酸に対して過剰モルで存在する。
【0107】
ステップb)において使用される液体組成物は、例えば、個々の成分を任意の順序で混合することによって、当該技術分野で公知のように調製され得る。
【0108】
ステップa)および/またはb)の操作モード:
本発明の方法は、当業者に既知の任意の従来のコンベヤーベルトシステム(ユニット)において使用することができる。コンベヤーベルトシステム、特にチェーンおよびトラックは、鋼、特にステンレス鋼、またはプラスチックなどの当該技術分野で公知の任意の材料で部分的または完全にできていてよい。このようなコンベヤーベルト(装置)は、例えば食品産業および/または飲料産業において、ボトルなどの容器のクリーニング、充填または再充填に広く使用される。通常、コンベヤーベルトシステムは、いくつかの個々のコンベヤーベルト(コンベヤーベルトセクション)を含有する。
【0109】
各コンベヤーベルトにおいて運搬される対象物は、これに関して使用される、当業者に公知の任意の対象物、例えば、容器、特にボトル、缶または段ボールであってよい。この対象物は、金属、ガラス、ボール紙またはプラスチックなどの任意の材料、好ましくはガラスまたはプラスチックから部分的または完全にできていてよい。好ましいプラスチック製品または容器は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)またはポリ塩化ビニル(PVC)からできている。
【0110】
本発明の一実施形態において、コンベヤーベルトは、部分的もしくは完全に鋼製、特にステンレス鋼製であり、および/またはコンベヤーベルトにおいて運搬される対象物は、部分的または完全にガラス製であり、特にガラスボトルである。本発明のこの実施形態は、このような対象物を充填、特に再充填するためのプロセスにおいて好ましくは使用される。
【0111】
本発明による方法においては、ステップa)において乾式潤滑剤として使用される潤滑剤濃縮物は、現状技術において公知の任意の方法によって各コンベヤーベルト上に適用され得る。WO01/07544には、潤滑剤濃縮物をコンベヤーベルトの(上部)表面上に適用することが可能な方法の概説が提供されている。適用装置として、スプレーノズル、計量ダイヤフラムポンプ、ブラシ適用装置、またはいわゆるフリッカーを使用することができる。潤滑剤濃縮物を、連続的に適用しても、好ましくは非連続的に適用してもよい。例えば、潤滑剤濃縮物を、運搬される対象物に応じて、コンベヤーベルト表面上に、5分ごと、20分ごと、またはさらに24時間ごとに非連続的に適用してもよい。
【0112】
本発明のステップb)において使用される液体組成物は、現状技術において公知の任意の方法によって、コンベヤーベルトの表面に適用され得る。通常、液体組成物は、湿式潤滑(プロセス)に相当する方法で実施される。これは、上記の液体組成物が、「(液体組成物の)使用溶液」に好ましくは希釈されることを意味する。通常、液体組成物の使用溶液は、各液体組成物を溶媒、好ましくは水で希釈することによって得られる。希釈倍率は、通常、50〜500の範囲内、好ましくは80〜150の範囲内、最も好ましくは(約)100である。
【0113】
結果として、使用溶液は、上記の液体組成物の個々の化合物を、希釈倍率で割った通常量、好ましい量、より好ましい量、またはなお最も好ましい量の各成分に等しい量で含有する。例えば、100の希釈倍率を有する使用溶液は、成分a)を、少なくとも0.02重量%の量、好ましくは0.02〜0.25重量%の量、より好ましくは0.04〜0.2重量%の量、最も好ましくは0.04〜0.15重量%の量で含有する。
【0114】
本発明の一実施形態において、ステップb)では、i)少なくとも0.02重量%、より好ましくは0.04〜0.2重量%の少なくとも1種の塩基、ii)少なくとも0.02重量%、より好ましくは0.05〜0.25重量%の少なくとも1種の脂肪酸、iii)0〜0.3重量%、より好ましくは0〜0.25重量%の少なくとも1種のキレート化剤、少なくとも1種のハイドロトロープ、少なくとも1種の腐食抑制剤および/または少なくとも1種の応力割れ抑制剤、ならびにiv)少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも95重量%の少なくとも1種の溶媒、好ましくは水を含有する液体組成物の使用溶液が使用される。好ましくは、塩基は、脂肪酸に対してモル過剰で存在する。
【0115】
これは、液体組成物またはその使用溶液が、コンベヤーベルトの表面に、液体組成物のかなりの量が各コンベヤーベルトの表面から流出するように、適用されることをさらに意味する。好ましくは、液体の適用量の少なくとも30体積%、より好ましくは少なくとも50体積%、特に少なくとも90体積%が流出する。好ましくは、液体組成物は、(通常サイズに応じてコンベヤーベルトトラックあたり)1.5〜20L/時間の比率で、各コンベヤーベルトに添加される。
【0116】
例えば、ステップb)の液体組成物(の使用溶液)は、自動投与システムによって適用され得る。典型的な使用濃度は、適用、水の硬度、および汚染の程度に応じて、0.6〜1.2%(w/w)(83〜167部の水に対して1部の液体組成物)である。好ましくは、これは、軟水の使用が勧められる、水の硬度が185mg/L未満の炭酸カルシウム(与えられる最大許容量は1.2%w/w)であるときの使用に推奨される。
【0117】
ステップb)は、コンベヤーベルトのクリーニングを行ってステップa)による操作者条件に起因する汚れをコンベヤーベルトの表面から除去するために実施される。さらに、本発明によるステップb)はまた、潤滑効果も与える。したがって、ステップb)は、コンベヤーベルトをクリーニングおよび(場合により)潤滑するために実施される。
【0118】
液体組成物は、コンベヤーベルトの表面に、例えば、スプレーノズルまたは当業者に公知である他のいずれかのポンプによって適用され得る。ステップb)を実施する操作時間に関する制限はない。好ましくは、ステップa)の操作時間は、ステップb)の操作時間を、より好ましくは少なくとも10倍、さらにより好ましくは少なくとも20倍、特に少なくとも40倍超える。
【0119】
本発明の一実施形態において、方法を連続的に実施し、ステップa)およびb)を交互に実施する。いずれの問題もなく、ステップa)とb)との間を数回切り替えることができ、ステップa)およびb)の操作の間隔は変動してよい。ステップb)をコンベヤーベルトシステムのいくつかのセクションにおいてのみ実施することもできる。
【0120】
一実施形態において、少なくとも1種の脂肪酸を含有する潤滑剤濃縮物を、本発明による方法のステップa)内で、コンベヤーベルト(システム)の少なくとも1つのセクションにおいて(のみ)乾式潤滑剤として使用する。この実施形態において、潤滑剤の使用溶液を、同じコンベヤーベルト(システム)の残りの(少なくとも1つの)セクションにおいて湿式潤滑剤として使用する。好ましくは、コンベヤーベルトの残りのセクションにおいて湿式潤滑剤として使用される潤滑剤の使用溶液は、少なくとも1種の脂肪酸および場合により腐食抑制剤を含有する潤滑剤濃縮物から調製される。より好ましくは、乾式潤滑剤として使用される潤滑剤濃縮物および湿式潤滑剤として使用される潤滑剤の使用溶液が、同じ潤滑剤濃縮物から調製される。
【0121】
本発明の別の実施形態において、水でのすすぎステップ(洗浄ステップ)を、コンベヤーベルト(システム)の個々のセクションの少なくとも1つまたはさらに全てにおいて(対して)、ステップb)に加えて一時的に実施し、ここで、潤滑剤濃縮物を乾式潤滑剤として適用する。すすぎステップをある一定時間、好ましくは10〜30分間実施する。その後、少なくとも1種の脂肪酸を含有する潤滑剤濃縮物を、対象物、例えば、ガラス瓶の運搬を(大幅に)中断するまたは妨げることなく、各コンベヤーベルト(セクション)上に乾式潤滑剤として再び適用することができる。
【0122】
上記実施形態は、コンベヤーベルトでの対象物の運搬に好ましくは使用され、コンベヤーベルトは、異なる操作ユニット(セクション)に組み込まれて、例えば、ボトル洗浄ステップ、選別ステップ、充填ステップ、ラベリングステップまたは包装ステップを実施する。好ましくは、上記実施形態は、特に、部分的または完全に鋼製、好ましくはステンレス鋼製であるコンベヤーベルトにおける、ガラス容器、特にガラス瓶の充填または再充填のプロセスにおいて使用される。
【0123】
好ましくは、コンベヤーベルトの個々のセクションが、脱ペレット化機、ボトル選別ユニット、ボトル洗浄機、充填ユニット、キャッピングユニット、ラベリングユニット、包装ユニット(領域)、クレートコンベヤーユニットおよび/またはボトルの電子検査領域に組み込まれても、接続されても、設置されてもよい。各セクション(ユニット)は、互いに任意の順序および/または数で接続されていてよい。
【0124】
より好ましくは、上記実施形態による一時的なすすぎステップまたは湿式潤滑が、脱ペレット化機(ユニット)とボトル洗浄機との間、脱ペレット化機とボトル選別ユニットとの間、ボトル選別ユニットとボトル洗浄機との間、および/または充填ユニットとラベリングユニットとの間で実施または使用される。
【0125】
本発明の別の実施形態において、コンベヤーベルトを潤滑する方法のステップa)は、潤滑剤の使用溶液を使用する各コンベヤーベルトの湿式潤滑と一時的に組み合わされる乾式潤滑プロセスにおいて、少なくとも1種の脂肪酸を乾式潤滑剤として含有する潤滑剤濃縮物を使用する各コンベヤーベルトシステムの潤滑について実施される。使用溶液は、好ましくは少なくとも1種の脂肪酸を含有する潤滑剤濃縮物の使用溶液である。一時的な湿式潤滑は、全コンベヤーベルト(システム)において、またはその一部(セクション)のみにおいて実施され得る。
以下の実施例は、本発明のより詳細な説明を提示する働きをする。
【0126】
実施例
以下、組成物の成分の全てのパーセント(%)−量を、別途示さない限り、重量パーセント(重量%)として表す。
実施例I ステップa)による乾式潤滑
1 トラックコンベヤー試験
1.1 潤滑性および耐久性の試験方法の説明
1.1.1 試験トラック
【0127】
試行をコンベヤーのパイロット設備において実施する。このパイロットコンベヤーは、ステンレス鋼製およびプラスチック製(アセタール)の試験トラックを含有する。
1.1.2 試験手順
以下の標準の試験手順を適用する:
1.あらゆる試行の前に、試験トラックに残留物が無いことを確認する。必要に応じて、トラックを酸性もしくはアルカリ性クリーナーおよび/またはアルコールでクリーニングして、先の試行によるいずれの微量の潤滑剤も除去する。
2.トラックを水ですすぎ(約10分)、Kleenexで乾燥する。
3.デジタルトラック搬送システムでプログラムを開始する。
4.2分後:10mLの各組成物を直接チェーン上にピペットで付与する。このプロセスは、チェーン全表面が処理されることを確実にするために、非常に注意深くかつゆっくりと行われなければならない。プラスチック生地またはブラシを用いて広げるのを助ける。
5.開始から20分後:水道水フラッシング(約8L/分)のスイッチを入れる。
6.10分すすいだ後:プログラムを停止する。
1.2 評価
【0128】
試行の間、6〜8個のボトルを試験トラックに配置する。牽引力(Fz)を、A/D変換器を用いて電子スケールによって常に測定する。測定値を最大で2kgに制限する。ボトルまたは缶の牽引力/重量の係数は、潤滑性(μ=FZ/FN)を表す摩擦係数を表す。このデータをMSエクセルに最終的に移動させて、値(μ)を望ましくない条件、例えば、重負荷または水での洗い流しに対して、潤滑剤の途中で読み出すことができる。
【0129】
2.試行
2.1.ステンレス鋼トラックにおけるガラス瓶
8.1kgの全重量を有する、8個のガラス瓶を用いて試験を実施する。
2.1.1.現状技術による濃縮物組成物
3.68%のN−オレイル−1,3−ジアムヌプロパン、3.6%の(C16〜18)アルキル(9EO)カルボン酸および6%のポリエチレングリコール(M=200)を軟水と共に合計して100%となるように含有する潤滑剤濃縮物1を調製する。95%のHOで希釈した5%のこの潤滑剤1を濃縮物Aとして使用し、5%のHOで希釈した95%のこの潤滑剤1を濃縮物Bとして使用する。
【0130】
(以下に列挙する)水中油型エマルジョンを20mLの小さいねじぶた付きガラス容器において成分を振とうすることによって調製する。
濃縮物C:50%のシリコーン油(Dow Corning 200)および50%のH
濃縮物D:95%のヒマワリ油および5%のH
濃縮物E:75%の鉱物油および25%のH
【0131】
2.1.2.本発明による濃縮物組成物
濃縮物1および2は、(遊離)脂肪酸としてオレイン酸を含有する。33%のオレイル−O−3EO−リン酸エステル、4%の(C16〜C18)−アルキル−5EO−カルボン酸、33%の(C16〜C18)−アルキル−2EO−カルボン酸、13%のオレイン酸、8%のセチルアルコール(1−ヘキサデカノール)および9%の(C〜C)−アルキル−8EO−カルボン酸を含有する潤滑剤濃縮物2を調製する。
濃縮物1:8%の潤滑剤2および92%のHO(2.1のpH値)
濃縮物2:100%の潤滑剤2
濃縮物3:5%のオレイン酸および95%のジプロピレングリコールメチルエーテル
【0132】
2.1.3.結果
以下の表1は、種々の時間段階での摩擦係数(μ)を示す。潤滑剤の適用を2分後に開始するので、10分および20分における値は潤滑性を示す。水でのフラッシングを20分後に開始すると、25分および30分は耐久性の指標である。(μ)>0.15の値は、不十分な潤滑性を示し、測定装置限界を超える。
【表1】

【0133】
本発明の濃縮物(1〜3)は、本発明のステップa)による乾式潤滑プロセスにおいて使用されるとき、従来技術(A〜E)と比較して、殆どの場合、摩擦の大幅な低下を示す。加えて、洗い流しの間(すすぎステップを20分後に開始する)により長く潤滑性が維持されるため、濃縮物1および2について性能が改善されていることが分かる。
【0134】
3.黒色化
【表2】

【0135】
黒色化を、先に示すいくつかの濃縮物について、項2.1において1〜5のスケールで評価し、1は黒色化が無いことを意味し、5は不合格を意味する。視覚的評価のために、潤滑剤濃縮物を適用し、コンベヤーを固定されたガラス瓶と共に30分間運転する。運転後、ボトルの底部をティッシュで拭き取り、ティッシュにおける黒色化の程度を評定する。これらの実験は、黒色化が乾式潤滑プロセスにおいて生じる深刻な問題であることを示す。
【0136】
実施例II ステップb)によるクリーニング
【表3】

【0137】
全てのクリーニング試行を、ステンレス鋼プレート(1.4301)を用いて実施する。汚染をシミュレートした2滴の試験溶液を、各プレートに等しく適用する。5gの濃縮物2(上記実施例Iの項2.1.2を参照)と0.2gの活性炭(コンベヤーベルトで運搬される対象物の汚れまたは摩擦によって引き起こされる黒色化をシミュレートする)との混合物を用いて試験溶液を調製する。プレートを表3に示した使用溶液に部分的に浸漬させる。使用溶液を、示した倍数での水による希釈によって、各液体組成物から得る。液体組成物を、示すような個々の成分を混合することによって得、水の添加によりバランスを取る(全体で100重量%)。
【0138】
使用溶液における接触時間は撹拌せずに20分である。検査前に全てのプレートを溶液から除去し、周囲温度で乾燥させる。この手順の後に、乾燥したプレートを残存する汚染および金属の自由表面について評価する。
【0139】
クリーニング結果を1〜5のスケールで評価し、1はいずれの残留物も含まないクリーンな表面を意味し、5は不合格のクリーニング結果を意味する。表3から、塩基および脂肪酸を含有する液体組成物が、従来技術の液体組成物と同一または非常に類似するクリーニング特性を有することが分かる(例えば、使用溶液3および2または7および6を参照)。
【0140】
実施例III ステップa)およびb)による乾式潤滑およびクリーニングの組合せ
以下の標準の試験手順を適用する:
1.あらゆる試行を行い、試験トラックに残留物が無いことを確認する。必要に応じて、トラックを酸性クリーナーおよび/またはアルコールでクリーニングして、先の試行によるいずれの微量の潤滑剤も除去する。
2.トラックを水ですすぎ(約10分)、Kleenexで乾燥する。
3.デジタルトラック搬送システムでプログラムを開始する。
4.2分後:10mLの濃縮物1を直接チェーン上にピペットで付与する。このプロセスは、チェーン全表面が処理されることを確実にするために、非常に注意深くかつゆっくりと行われなければならない。プラスチック生地またはブラシを用いて広げるのを助ける。
5.開始から10分後:ステップb)の液体組成物の使用溶液の恒久的な投与のスイッチを入れる。
6.開始から31分後:プログラムを停止する。
【表4】

【0141】
表4は、種々の時間段階での摩擦係数(μ)を示す。ステップa)を、濃縮物1および乾式潤滑条件を使用して2.1のpH値で10分間実施する。別途示さない限り、実施例Iの項1および2にしたがって実験を実施する。10分後、条件を本発明のステップb)によるクリーニング条件に切り替える。表4のステップb)において使用される使用溶液は、実施例IIで表3において使用した使用溶液に相当する。各使用溶液を5L/時間の割合でコンベヤーベルトに連続的にスプレーする。
【0142】
表4の実験は、本発明による塩基および脂肪を含有する液体組成物(使用溶液1、3、5および7)をステップb)において使用することによって、改善された、安定な潤滑性(より低いμ値)が得られることを実証している。これとは対照的に、塩基のみを含有するが脂肪酸を含有しない、従来技術による対応するクリーニング溶液(使用溶液2、4および6)を使用するときには、潤滑特性の低下が(経時的に)観察される。さらに、表4の実験は、ステップb)のクリーニング条件と比較して、乾式潤滑条件下でのステップa)においては、より良好な潤滑性が得られることを示している。
実施例IV ステップa)およびb)の交代順序
実施例IIIの標準の試験手順を長期試行に変更する:
1〜4.実施例IIIを参照。
5.追加の5mLの濃縮物1を30分後および55分後に添加する。
6.開始から70分後:ステップb)の液体組成物の使用溶液の恒久的な投与のスイッチを入れる。
7.開始から99分後:ステップb)の液体組成物の使用溶液の恒久的な投与のスイッチを切り、ステップa)に切り替える。
8.10mLの濃縮物1をチェーンに直接適用し、5mLのさらなる濃縮物1をそれぞれ110分後および130分後に適用する。
9.開始から180分後:プログラムを停止する。
【表5】

【0143】
表5は、ステップa)およびb)を交互に容易に実施できることを示す。ステップb)のクリーニング条件から本発明のステップa)の乾式潤滑条件に切り替えた後に、同レベルの大幅に低減された摩擦(より低いμ値;改善された潤滑性)を得る。別途示さない限り、実験を表4の実験(実施例III)にしたがって実施する。ステップa)においては濃縮物1を2.1のpH値で(実施例I、項2も参照)、ステップb)においては使用溶液5(実施例II、表3も参照)を使用する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のステップ:
a)少なくとも1種の脂肪酸を含有する潤滑剤濃縮物を乾式潤滑プロセスにおいて使用するステップであって、潤滑剤濃縮物のpH値が4以下(≦4)の範囲内である、ステップ、
b)その後、液体組成物をコンベヤーベルトの表面に付与するステップであって、液体組成物のpH値が5以上(≧5)の範囲内であり、液体組成物が成分a)として少なくとも1種の塩基を含有し、液体組成物が成分b)として少なくとも1種の脂肪酸を含有する、ステップ
を含む、コンベヤーベルトを潤滑する方法。
【請求項2】
潤滑剤濃縮物において、脂肪酸がオレイン酸である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
コンベヤーベルトが部分的もしくは完全に鋼製であり、および/または、コンベヤーベルトにおいて運搬される対象物が部分的もしくは完全にガラス製である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
潤滑剤濃縮物が、
0.1〜25重量%の少なくとも1種の脂肪酸、
0.1〜25重量%の少なくとも1種の腐食抑制剤、
0.1〜25重量%の少なくとも1種の酸、ならびに
5〜95重量%の水および/または少なくとも1種の有機溶媒
を含有する、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
潤滑剤濃縮物をコンベヤーベルト上にエマルジョンまたは溶液として付与する、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
腐食抑制剤が、式(I)もしくは(II)を有する少なくとも1種のリン酸エステル
【化1】

【化2】

[式中、Rは、アルキルまたはアルキルアリール基であり、nは、(互いに独立して)1〜10に等しくてよい]
ならびに/または(C〜C18)−アルキル−フラグメントおよび1〜6のEO−フラグメントを含有する少なくとも1種のエトキシル化カルボン酸である、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
ステップbにおける液体組成物において、塩基が、アルカノールアミン、アミン、アンモニア、アンモニア水酸化物、尿素、アルカリ性水酸化物、緩衝剤、脂肪アミン、アルコキシル化脂肪アミン、脂肪アミンオキシドまたはアルコキシル化脂肪アミンオキシドから選択される、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
ステップbにおける液体組成物が、脂肪酸に対してモル過剰の塩基を含有する、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
ステップbにおける液体組成物において、塩基が、モノエタノールアミン(MEA)、ジエタノールアミン(DEA)もしくはトリエタノールアミン(TEA)であり、および/または、脂肪酸がオレイン酸である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ステップb)を実施してクリーニングし、コンベヤーベルトを場合により潤滑する、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
ステップa)およびb)を交互に連続的に実施する、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
ステップa)の操作時間が、ステップb)の操作時間を少なくとも20倍超える、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
ステップa)において使用される潤滑剤濃縮物のpH値が1〜3の範囲内であり、および/または、ステップb)において使用される液体組成物のpH値が9〜13の範囲内である、請求項1乃至12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
ステップa)による潤滑を、湿式潤滑プロセスとして、一時的および/またはコンベヤーベルトの少なくとも1つのセクションにおいて実施する、請求項1乃至13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
液体組成物をステップb)において使用溶液として使用する、請求項1乃至14のいずれか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2011−515305(P2011−515305A)
【公表日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−502009(P2011−502009)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【国際出願番号】PCT/US2009/038196
【国際公開番号】WO2009/120751
【国際公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(398061050)ディバーシー・インコーポレーテッド (101)
【住所又は居所原語表記】8310 16th Street,Sturtevant,Wisconsin 53177−0902,United States of America
【Fターム(参考)】