説明

コンベヤ装置、コンベヤチェーン、及びチェーンリンク

本発明は、ガイドローラ(2)間で回転する無端コンベヤ要素を有するコンベヤ装置(1)に関する。無端コンベヤ要素には搬送対象物(5)を搬送するための受容装置(4)が設けられている。コンベヤ装置は、さらに動力供給ラインを有する。無端コンベヤ要素は、互いに蝶番連結されたチェーンリンク(7)を有するコンベヤチェーン(3)である。各チェーンリンクには動力供給ラインの一部が設けられており、隣接するチェーンリンク(7)におけるこれら一部同士は互いに接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、それぞれ請求項1、15、16のプレアンブルに基づくコンベヤ装置、コンベヤチェーン、及びチェーンリンクに関する。
【背景技術】
【0002】
進行方向を変えるための複数のガイドローラ間で回転する無端コンベヤベルトを備え、このコンベヤベルトにワークピース受容装置が取り付けられた構成のコンベヤ装置は、国際公開第2008/104404号により公知である。このコンベヤ装置では、コンベヤベルトと同期回転する無端の動力供給ラインが、コンベヤベルトと別体に設けられている。このような公知のコンベヤ装置の問題点は、メンテナンス及び修理が大変なことである。すなわち、コンベヤベルトに欠陥が見つかると、コンベヤベルト全体を交換しなければならず、そのためにはコンベヤ装置を完全に分解しなければならない。
【0003】
一方、例えば独国特許出願公開第19957009号明細書に記載されているように、互いに蝶番連結されたチェーンリンクからなる無端コンベヤチェーンの形態を有するコンベヤ装置も、公知である。しかし、このようなコンベヤチェーンは、ガイドローラの周りを回転するようには構成されておらず、また、動力供給ラインを一体に備えることがない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2008/104404号
【特許文献2】独国特許出願公開第19957009号明細書
【発明の概要】
【0005】
本発明はこのような状況に鑑みて考案されたものであり、本発明の目的は、それぞれ請求項1、15、及び16のプレアンブルに基づくコンベヤ装置、コンベヤチェーン、及びコンベヤリンクを提供することである。これらのコンベヤ装置、コンベヤチェーン、及びコンベヤリンクは、メンテナンスが容易であり、様々な搬送長さに応じた修理を行うことができるものである。この目的は、それぞれ請求項1、15、及び16に記載された特徴によって達成することができる。
【0006】
本発明によれば、無端コンベヤ要素を有するコンベヤ装置が提供される。この無端コンベヤ要素には、搬送対象物を搬送するための受容装置が設けられている。当該コンベヤ装置は、さらに動力供給ラインを有する。コンベヤ要素は、互いに蝶番連結されたチェーンリンクを有するコンベヤチェーンであり、各チェーンリンクには動力供給ラインの一部が設けられている。隣接するチェーンリンクにおける、動力供給ラインの一部同士は互いに接続されている。
【0007】
コンベヤ要素を、チェーンリンクを互いに蝶番連結させたコンベヤチェーンとして構成し、各チェーンリンクが動力供給ラインの一部を構成するようにしたことにより、従来のコンベヤベルトに比べて多くの利点が得られる。
【0008】
具体的には、修理やメンテナンスを行うためにコンベヤベルト全体を分解する必要は無く、修理又はメンテナンスが必要なチェーンリンクだけをコンベヤチェーンから外せばよい。従って、コンベヤ装置において、メンテナンスや修理に関係が無い部分は、組み立てた状態のままとすることができる。これは時間及び費用の節約に資する。
【0009】
さらに、このコンベヤ装置は、簡単な方法で、様々な搬送長さに柔軟に対応させることができる。すなわち、従来の方法では決まった長さのコンベヤベルトをそれぞれ個別に製造する必要があったのに対し、本発明によるコンベヤチェーンでは、チェーンリンクを足したり減らしたりすることによって、様々な長さのコンベヤチェーンを製造することができる。このように融通性が増したことに加えて、実質的なコスト削減も実現できる。すなわち、コンベヤベルト全体を交換する構成では、この使用済みのコンベヤベルトがまったく使えなくなるのに対して、本発明では、使用可能なチェーンリンクを引き続き利用することができる。
【0010】
さらに、本発明に基づくコンベヤ装置は、コンベヤベルトに比べて機械的荷重容量が大きい。特に、コンベヤベルトの両端の接続部分に相当するような機械的に弱い部分が存在しない。また、個々のチェーンリンクは、特に金属、プラスチック、あるいは複合材料などの、高荷重に耐えうる材料によって形成することができる。
【0011】
機械的接続が強いため、機械的荷重容量が大きいにもかかわらず、例えば6m/sまでの速度や10m/s2までの加速度においても高い精度を実現でき、ころ軸受によって、安定して且つ正確にコンベヤチェーンをガイドすることができる。
【0012】
動力供給ラインは、好ましくは個々のチェーンリンクを通って延びる構成とし、コンベヤチェーンのどの箇所においても引き出すことができる。この動力供給ラインを介することにより、電源からの電気エネルギー、又は、圧縮空気、真空、気体、液体、油圧液あるいは作動液などの流体による機械的エネルギーが、より好ましくはガイドローラの箇所において、コンベヤチェーンに供給される。また、いずれのチェーンリンクにおいてもこのエネルギーを取り出すことができる。特に、チェーンリンクがどのような位置にあっても、複数のチェーンリンクあるいはすべてのチェーンリンクにおいて、エネルギーを取り出すことができる。これは、動力供給ラインが、複数のチェーンリンクにわたって延び、より好ましくは、コンベヤチェーン全体にわたって延びているからである。このエネルギーを利用して、搬送対象であるワークピース用の受容装置、例えば吸引ノズルやグリッパー、を作動させ、あるいは制御することができる。
【0013】
動力供給ラインは、圧縮空気、ガス、作動液等の媒体のロスや、汚染、あるいは異物の混入を避けるために、実質的に密閉状態となるように構成する。従って、好ましくは、動力供給ラインは、個々のチェーンリンクにおいて、当該チェーンリンクを貫通する部分として構成され、具体的には、チェーンリンク内に形成された孔あるいはその他の中空部からなる通路として構成される。あるいは、チェーンリンクに一体的に組み込まれた管状部材として構成してもよいし、電気エネルギーを利用する場合には、チェーンリンクに一体的に設けられたケーブルであってもよい。このような実施形態の構造は、良好な費用効率で容易に製造可能であり、また、高い安定性と気密性を有しているので、メンテナンスも簡単である。なお、動力供給ラインは、少なくとも一部を、チェーンリンクに取り付けた通路として構成することもでき、この場合には、例えば管状部材やケーブルを用いることが可能である。
【0014】
好ましくは、各チェーンリンクは、先行するチェーンリンクに対する接続ポイント及び後続するチェーンリンクに対する接続ポイントを有し、チェーンリンクにおける動力供給ラインの一部が、一方の接続ポイントから他方の接続ポイントまで延びる構成とされる。このような実施形態によれば、個々のチェーンリンクの内部に動力供給ラインの中断部分や接続ポイントが存在しないため、高い密閉性を実現でき、外的影響から確実に保護することができる。
【0015】
チェーンリンクは、一端に軸アーム部を、他端に軸取り付け部を有しており、各チェーンリンクの軸アーム部が、隣接するチェーンリンクの軸取り付け部に対して枢動可能に係合することにより、チェーンを形成している。これにより、軸周りの運動、特に、搬送方向に交差しガイドローラの回転軸に平行な軸周りの運動を許容する連結が実現する。
【0016】
各チェーンリンクにはさらに通路を設けることができる。この通路は、動力供給ラインの一部を構成し、1つの軸アーム部から軸取り付け部まで延び、当該軸取り付け部における、隣接するチェーンリンクの軸アーム部に面する端面内において終結、すなわちつながる構成とされる。このような通路は、チェーンリンク内に孔を設けることによって、良好な費用効率で簡単に形成でき、圧縮空気、ガス、又は作動液などの媒体の高圧下での搬送、あるいは、ケーブル又はケーブル部分の受容に適している。
【0017】
また、他方の軸アーム部から軸取り付け部まで延び、当該軸取り付け部における、この他方の軸アーム部に対応する端面内で終結する通路をチェーンリンクにさらに設けることにより、別の動力供給ラインをコンベヤチェーン内に形成することもできる。この場合、これら2つの動力供給ラインは独立して別個に構成することができ、例えば一方の通路には作動液を、他方の通路には圧縮空気又は電気を通すなど、異なる形態の動力の供給に用いることができる。
【0018】
2つのチェーンリンクの軸ピンによる蝶番連結は、良好な費用効率で簡単に実現でき、機械的な安定も得られる。1つの軸ピンが1つの軸アーム部を通って軸取り付け部の内部まで延び、もう1つの軸ピンがもう1つの軸アーム部を通って、軸取り付け部における反対側の対向端部まで延びる構成とすることができる。
【0019】
軸ピンがピン通路を有し、このピン通路が、軸取り付け部に面する端面に一端がつながり、軸ピンの側面に他端がつながる構成とすれば、1つのチェーンリンクにおける動力供給ラインの一部を、隣接するチェーンリンクにおける対応する動力供給ラインの一部に簡単に接続することができる。この場合のピン通路は、軸ピンの端面に設けた孔と側面に設けた孔の合計2つの孔によって、機械的に簡単な方法で形成することができる。2つの独立した動力供給ラインがコンベヤチェーン内に延びる構成の場合、1つの軸ピンを一方の動力供給ラインに、もう1つの軸ピンを他方の動力供給ラインに割り当てることができる。
【0020】
別の実施形態においては、少なくとも2つのチェーンリンク、より好ましくはすべてのチェーンリンクが、接続要素によって自在継手状に互いに連結される。この場合、コンベヤチェーンのチェーンリンクは、互いに対して、複数の軸周りに蝶番状に枢動可能である。
【0021】
本実施形態におけるコンベヤチェーンは、空間内にあらゆる経路を形成するよう配置することができる。例えば、角を曲がる経路とすることができる。また、ワークピースを積み重ねた状態から例えば水平に取り出して角度を持って渡す必要がある場合には、傾斜した経路とすることもできる。
【0022】
接続要素は、1つの通路又は2つの別個の通路を有する構成とすることができる。
【0023】
最も単純な構成においては、接続要素は、接続要素本体部分から略十字状に延出する4個の接続アームを有する。あるいは、4個の接続アームによって十字状に形成される。対向する2つの接続アームを1つのチェーンリンクに接続し、同じく対向する残りの2つの接続アームを隣接するチェーンリンクに接続する。この接続は、例えば、対応する孔に封止状に挿入することによって行われる。
【0024】
動力供給ラインが1つの場合、1つの通路が4個の接続アームすべての内部に延びる構成とすることができる。動力供給ラインが2つの場合、一方の通路が隣接する2つの接続アーム内に延び、他方の通路が残りの2つの接続アーム内に延びる構成とすることができる。
【0025】
好ましくは、接続アームの側面には通路口が設けられており、接続アームが挿入された状態で、当該通路口は接続アームを受容するチェーンリンクに設けられた通路の通路口に接続されている。チェーンリンクは接続アームに対して枢動可能でなければならないので、この通路口は例えばスリット状に形成されるが、孔であってもよい。
【0026】
また、このようなコンベヤ装置のためのコンベヤチェーンも提供される。このコンベヤチェーンは、相互接続された複数のチェーンリンクを有し、これらチェーンリンクの少なくとも2つには、それぞれ動力供給ラインの一部が設けられており、これら一部同士は互いに接続されている。
【0027】
また、コンベヤ装置のコンベヤチェーンのためのチェーンリンクも提供される。このチェーンリンクには動力供給ラインの一部が設けられており、上述のように、又はコンベヤ装置あるいはチェーンに関連させて以下に述べるように、様々な形状とすることができる。それぞれの特徴は、単独で又は任意に組み合わせて、コンベヤチェーン及びコンベヤ装置とは別個に、個々のチェーンリンクに適用することができる。
【0028】
チェーンリンクは複数の部品によって構成することができる。特に、チェーンリンクは、上側シェル及び下側シェルからなる構成とし、上側シェル及び下側シェルの対向面に、通路又は動力供給ラインの一部又は通路を構成する凹部を設けることもできる。場合によっては、上側シェルと下側シェルとの間に、中間部又は中間構造体をサンドイッチ状に挟むこともできる。
【0029】
コンベヤチェーンは、同一のチェーンリンクによって形成することも、異なるチェーンリンクによって形成することも可能である。動力供給ラインは、無端状とすることもできる。
【0030】
本発明のさらなる特徴は、以下に添付図面を参照して例示する実施形態の説明によって、より理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1a.1b.1c】それぞれ、コンベヤ装置の上面図、側面図、及びその部分拡大図である。
【図2a.2b.2c】他の実施形態によるコンベヤ装置の、それぞれ上面図、側面図、及びその部分拡大図である。
【図3a.3b.3c】他の実施形態によるコンベヤ装置の、それぞれ上面図、側面図、及びその部分拡大図である。
【図4a】連続する3つのチェーンリンクの断面図である。
【図4b】図4aの中央のチェーンリンクのみを示す側面図である。
【図4c】コンベヤチェーンの一部を示す側面図である。
【図4d】図4cのA−A断面図である。
【図5】チェーンリンクの他の実施形態を示す説明図である。
【図6a.6b】それぞれコンベヤチェーンの他の実施形態を示す説明図である。
【図6c.6d.6e.6f】他の実施形態によるコンベヤ装置の、それぞれ、曲げた状態の上面図、真っすぐな状態の上面図、真っすぐな状態の側面図、別の方向に曲げた状態の側面図、である。
【図6g.6h】図6c〜6fに示した実施形態によるチェーンリンクの、それぞれ、横断面図及び縦断面図である。
【図7a】接続要素の断面図である。
【図7b】他の接続要素の上面図である。
【図7c.7e】当該接続要素の2つの側面図である。
【図7d】図7cのA−A断面図である。
【図8a.8b】ガイドローラの近傍におけるチェーン部分を示す、それぞれ側面図及び上面図である。
【図9】コンベヤチェーンの偏倚状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1に示すコンベヤ装置は、無端コンベヤ要素によって構成されている。無端コンベヤ要素は、この場合は2つのガイドローラ2間で回転し、搬送する物品を受容するための受容装置4を備えるコンベヤチェーン3として構成されている。受容装置4は、ワークピース5(例として1つだけ図示)を受容可能であり、搬送方向6すなわちコンベヤチェーン3が回転する方向に沿って、これらのワークピースを搬送する。
【0033】
搬送は、ワークピースを水平に載置した状態又は吊り下げた状態で行うことができる。例えば回路基板、金属板、ガラス板、窓ガラス、自動車部品、電子部品など、様々なワークピース5を搬送することができる。ワークピース5は必ずしも平らな形状である必要はなく、いかなる形状であってもよい。
【0034】
図1に示す実施形態においては、受容装置4は吸引カップとして示されている。これらは、真空を形成することにより、ワークピースを吸引によって確実に保持する。ワークピース5は、適所において、例えば自動車の窓である場合にはこれらを積み重ねた状態から、受容装置4によって受け取られる。そして、搬送方向6に沿って搬送され、目的地に供給される。この場合、これらの受容装置4は個別に制御可能とし、例えば真空を形成することによりワークピース5を受け取り、必要な場合には例えばワークピースの方向に撓むことによりワークピースを受け取り、目的地でワークピースを放すことができるように構成することが、より好ましい。
【0035】
図1cに示すように、コンベヤチェーン3は、互いに蝶番連結されたチェーンリンク7からなる。この場合のチェーンリンク7は、平らな本体部及びジョイント部8を有する構成として例示されている(図1a参照)。図示の実施形態では、コンベヤチェーン3は2つのガイドローラ2の周りに架け渡されており、この実施形態においては、個々のチェーンリンクが少なくともガイドローラ2の回転軸に実質的に平行な方向に運動可能となるように、ジョイント部8が構成されている。
【0036】
図示の実施形態においては、一例として、1つおきのチェーンリンクに受容装置4が設けられている。一方、受容装置4が設けられていないチェーンリンクには、例えば電子制御要素9を設ける。この場合、各受容装置4に1つの電子制御要素9が割り当てられ、この電子制御要素が、少なくともワークピース5の受け取り及びワークピース5の引き渡しに関して、当該受容装置4を制御することができる。場合によっては、受容装置4同士の間隔を更にあけてもよい。1つの電子制御要素9が、複数の受容装置4を制御するための制御ロジックを有する構成とすることもでき、これにより、チェーンリンクのいくつかを何も備えていない構成としたり、あるいは、図示の制御要素9に代えて受容装置4を設けたりすることもできる。
【0037】
少なくとも1つのガイドローラ2の外周には歯がつけられており、これがコンベヤチェーン3と係合することにより、ガイドローラ2の回転駆動によってコンベヤチェーン3が搬送方向に駆動される構成となっている。
【0038】
図2に示す実施形態においては、受容装置4は機械式グリッパー(把持装置)として構成されている。このような機械式グリッパーは、圧縮空気やガスにより、あるいは、液圧式又は電気的手段により、作動させることができる。
【0039】
図3に示す実施形態においては、受容装置4は電磁石である。
【0040】
チェーンリンク7の一例の構造及び接続を図4aに示す。
【0041】
図示の例における各チェーンリンク7は、一端に2つの軸アーム部10を、他端に軸取り付け部11を、有している。1つのチェーンリンク7の軸取り付け部11に対して、隣接するチェーンリンク7の軸アーム部10が枢動可能に係合している。チェーンリンク7の蝶番連結を実現するために、各軸アーム部10は、当該軸アーム部を貫通する軸孔12を有している。軸孔12と整列するように、各軸取り付け部11の所定の位置に2つのヘッド孔13が形成されている。すなわち、軸取り付け部11における、一方の軸アーム部10に隣接する端面、及び、他方の軸アーム部10に隣接する端面に、それぞれ1つずつのヘッド孔13が形成されている。これらのヘッド孔13には、例えばニードル軸受などの軸受ブシュ14を挿入することができる。
【0042】
2つのチェーンリンク7を前後に隣接させて配置し、この際に、一方のチェーンリンク7の双方の軸アーム部10が他方のチェーンリンク7の軸取り付け部11に対して係合し且つ軸孔12がヘッド孔13と整列するようにすれば、軸ピン15を嵌めこむことによって蝶番連結を実現することができる。これを実現するためには、第1の軸ピン15を1つの軸アーム部10及び軸取り付け部11の軸受ブシュ14に挿入し、もう1つの軸ピン15を他方の軸アーム部10及び対応するもう一方の軸受ブシュ14に挿入する。次に、例えばピンを用いて、又はクランプにより、あるいはグラブねじなどのねじを用いた接続により、これら軸ピン15を軸アーム部10に対して固定する。この結果、軸ピン15と軸アーム部10とが固定ユニットを形成し、チェーンリンク7は、軸ピン15を介して、軸受ブシュ14内で軸ピンの軸心16周りに枢動可能となる。なお、すべての実施形態において、この接続を逆にすることもできる。すなわち、軸ピン15と軸取り付け部11とが固定ユニットを形成し、軸アーム部10内の軸ブシュ内で枢動可能とすることもできる。
【0043】
チェーンリンク7は、組み合わさった状態で動力供給ラインを形成する。この動力供給ラインは、コンベヤチェーン3全体にわたって延びていることが好ましく、少なくともその一部にわたって延びる。チェーンリンク7内における、動力供給ラインの部分は、適宜、軸孔12、これ以外の3つの孔17、18、19、及びヘッド孔13を通って形成されている。孔17は、軸孔12に交差する方向に、軸アーム部10に沿って延びるが、これを貫通しない。孔17は軸孔12と交差するため、軸孔12と孔17との間には接続部が形成される。孔18は、チェーンリンク7の中間部において、孔17に交差する方向に、チェーンリンク7のほぼ中央まで延びている。孔19は、孔13に対する接続部を構成しており、孔13に交差する方向に延びている。このように、チェーンリンク7内を通って軸孔12とヘッド孔13とを繋ぐ通路が形成されている。孔17、18、19の端部は、適宜、シール20によってシールされている。このように、動力供給ラインは、隣接するチェーンリンク7を通って矢印21に沿って延びている。
【0044】
軸ピン15は、例えばオーリング22として構成したシールによって、軸受ブシュ14に対してシールされる。また、軸ピン15を軸孔12に対してシールすることも可能である。ただし、軸ピン15と軸孔12との相対移動が意図されておらず、軸ピン15が正確に嵌合する寸法を有している場合、あるいは、軸ピンがクランプ状に軸孔12に挿入されている場合には、このようなシールは必ずしも必要ではない。
【0045】
バルブ開口23は、通路内のいかなる位置に設けてもよく、この開口を介して、圧縮空気、ガス、作動液などの媒体が通路に供給される。バルブ開口23は、通常は閉じており、ガイドローラ2の箇所で充填装置と係合した時にのみ開く構成とすることが望ましい。このように、ガイドローラ2を介して通路に媒体が充填され、充填状態が維持される。
【0046】
通路内の媒体は、受容装置4を作動させるために用いられる。こうして、1つのチェーンリンク7内の通路部分から、当該チェーンリンク7のベンチュリノズルに圧縮空気を送ることができ、このベンチュリノズルが圧縮空気から真空を形成し、この真空を利用して吸引カップを作動させ、吸引カップが真空によりワークピース5を保持する構成とすることができる。受容装置4がグリッパーとして構成されている場合においても、例えば作動液などの通路内の媒体から動力を得ることができる。受容装置4が電磁石などによって構成される場合は、動力供給ラインは、実際上、機械的動力ではなく電力を送給する。電力供給のために、チェーンリンク内の上記通路あるいは通路部分にケーブルを配置することもできる。
【0047】
さらに、チェーンリンク7は、ケーブル通路24を有していてもよい。ケーブル通路24は、好ましくは、チェーンリンク7の側部に配置される。図4cも参照。なお、同図はチェーンリンク7の他の実施形態を示す図である。このケーブル通路24にケーブル25を通すことができる。この場合、これらのケーブル25を、通路開口26(図4c参照)を介して、又は外側に露出させて、チェーンリンク7に設けられた電子制御要素9まで到達させることにより、電子制御要素に対して電力あるいは電気信号を送ることができる。この場合、ケーブル25は電力供給ラインを構成し、これをコンベヤチェーン3全体にわたって無端状に配置することができる。このケーブルとしては、例えば二線式バス、より好適には、ASIバスが用いられる。正極等の第1の極性を有するケーブル25を一方のケーブル通路24に設け、接地等の第2の極性を有するケーブル25を他方のケーブル通路25に設けることもできる。これら2本のケーブル25を介して、電子制御要素を作動させるための電力を供給することができる。さらに、より好ましくは、これら2本のケーブル25を介して、電子制御要素に対するデジタル信号送信、及び、場合によっては電子制御要素からのデジタル信号受信も行うことができる。この場合の信号の伝達は、周知の方法により、例えばガイドローラ2の箇所における接続ピンを介して行われ、この接続ピンが、接触面27(図4a参照)あるいは接続孔28(図4d参照)に係合する構成とされる。
【0048】
図4aに示した実施形態と、図4c及び図4dに示した実施形態とは、通路の数が異なる。図4aの実施形態では2つの通路が設けられている一方、図4dの実施形態では通路が1つしか設けられていない。
【0049】
図4aにおける第1通路は、矢印21に沿って延びている。第2通路は、第1通路とは独立して矢印29に沿って延びている。この第2通路は、第1の動力供給ラインとは独立した第2の動力供給ラインとして構成してもよく、そのためには、バルブ開口も同様に設ける必要がある。図示の例においては、シール30を設けることにより、矢印29方向のチェーンリンク7間の連通を阻止している。この場合、シール30は、チェーンリンク7に設けた装置による制御のもとで通路を連通状態とするように構成されていることが好ましい。
【0050】
図4bには1つの通路だけを例示している。孔19は、好ましくは中央に設けられ、孔17を介して両方の軸孔12に接続されている。
【0051】
図5は、他の実施形態に基づく1つのチェーンリンク7を示している。バルブ31は、図5bでは逆止め弁として構成されており、これが通路内に設けられている。これにより、ガイドローラ2の箇所において通路に媒体を供給できる構成とされている。
【0052】
この例では、接続部32がバルブ開口23からチェーンリンク表面まで延び、例えばベンチュリノズル内(図5c参照)につながっている。このベンチュリノズルは、吹きつけられた圧縮空気から、好ましくは制御のもとで、受容装置4用の真空を形成する。
【0053】
図6は、本発明の他の実施形態を示している。これらの実施形態では、2つの軸各々において枢動可能とすることにより自在継手状の連結が行われている。
【0054】
この連結を行うため、各チェーンリンク7の両端のそれぞれには、2つの軸アーム部32又は33が設けられており、これら2種類の軸アーム部の軸心は互いに垂直である。チェーンリンクは、これら2つの軸心周りに枢動可能に連結されており、その結果、コンベヤチェーンは必ずしも直線状にガイドする必要は無く、曲線状にもガイドすることができる。
【0055】
図6a及び図6bは、2つの異なる実施形態を示している。これらは、広い範囲の変位を可能とするチェーンリンクを備えるものである。
【0056】
図6cは、コンベヤチェーン表面に交差する軸周りにコンベヤチェーンを曲げ、これにより、例えばカーブに沿ってコンベヤチェーンをガイドできる構成とした実施形態を示す。図6dは、このコンベヤチェーンの直線部分を示している。図6eは図6dの側面図である。図6fは、図6dの状態から曲げられた状態を示している。このように、図6cに示した曲げ方向に交差する方向にも、コンベヤチェーンを任意に曲げることができる。図6cおよび図6fに示した曲げ状態をを任意に組み合わせることもできる。
【0057】
この構成において、隣接するチェーンリンク7は、接続要素34を介して自在継手状に互いに連結される。このような連結を行うため、接続要素34は、適宜4個の接続アーム35を有しており、これらの接続アームは略十字状に延び、軸アーム部23、33に設けられた孔36に挿入可能である。
【0058】
この場合の接続要素34は、接続通路37(図7a参照)を有する。より好ましくは、この接続通路は、4個の接続要素34すべての内部まで延びている。この実施形態は、図4dのように、1つの動力供給ラインを備えたコンベヤチェーン3に適している。図4aのように2つの動力供給ラインが設けられている場合には、接続要素は2つの別個の接続通路37を有する構成とすることができる。この場合、一方の接続通路が2つの隣接する接続アーム内に延び、他方の接続通路が残りの2つの接続アーム内に延びる構成とすることが、より好ましい。
【0059】
各接続通路37は、通路口38内につながっている。通路口は各接続アーム35の側面に設けられており、各接続アームを受容するチェーンリンク7に設けられた通路口に連結可能である(図7b〜7e参照)。
【0060】
コンベヤチェーン3が向きを変える様子を図8に示す。好ましくは、ガイドローラ2は、歯39あるいは凹部40を有しており、これらがコンベヤチェーン3と係合する。好ましくは、ガイドローラ2は、1つ又は2つ以上の歯車を含む。こうして、電動機等によるガイドローラ2の回転によって、コンベヤチェーン3が搬送方向6に移動する。上記係合は、実際上は、例えば軸ピン15又は接続要素34などの、チェーンリンク間の接続領域において実現されるが、チェーンリンクを適当に設計することによってチェーンリンクの本体において実現することも可能である。
【0061】
ガイドローラ2との接触中は、回転伝達方式により周知の方法で動力がコンベヤチェーン3に送られる。この際に、接続ピンによって接触面27あるいは接続孔28に対する電気的接続を実現することができ、動力供給ラインに対する媒体供給は、バルブ31を介して行うことができる。
【0062】
図9は、例えば1つ又は2つのガイドレールとして構成された横ガイド40によって、チェーンリンク7が偏倚する構成を示している。この構成は、例えば受容装置4をワークピース5の方向に偏倚させることによりワークピース5を受け取ったり放したりするのに有利である。
【0063】
チェーンリンクは、一体品として、通路又は通路部を構成する孔を有するように作製することができる。また、製造及びメンテナンスを容易にするために、チェーンリンクを複数の部品によって構成することもできる。例えば、チェーンリンクは、上側シェル及び下側シェルを備える構成や、本体上に上側シェルおよび下側シェルのいずれか一方あるいは双方を備える構成、又は、上側シェルと下側シェルとの間に中間構造層を備える構成とすることができる。通路又は通路部は、上側シェル、下側シェル、本体部、あるいは中間構造層内に形成することができる。個々の部品は、ねじ止め又は接着あるいはその他の手段によって、適宜取り外し可能に互いに接続してもよい。
【符号の説明】
【0064】
1 コンベヤ装置
2 ガイドローラ
3 コンベヤチェーン
4 受容装置
5 ワークピース
6 搬送方向
7 チェーンリンク
8 ジョイント部
9 電子制御要素
10 軸アーム部
11 軸取り付け部
12 軸孔
13 ヘッド孔
14 軸受ブシュ
15 軸ピン
16 軸ピン軸心
17,18,19 孔
20 シール
21 矢印
22 オーリング
23 バルブ開口
24 ケーブル通路
25 ケーブル
26 通路開口
27 接触面
28 接続孔
29 矢印
30 シール
31 バルブ
32,33 軸アーム部
34 接続要素
35 接続アーム
36 孔
37 接続通路
38 通路口
39 歯
40 凹部
41 ガイド
【図1a−1b−1c】

【図2a−2b−2c】

【図3a−3b−3c】

【図4a−4b】

【図4c−4d】

【図5a−5b−5c】

【図6a−6b】

【図6c−6d】

【図6e−6f−6g−6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送対象物(5)を搬送するための受容装置(4)が設けられた、ガイドローラ(2)間で回転する無端コンベヤ要素と、動力供給ラインと、を有する、コンベヤ装置(1)であって、
前記コンベヤ要素は、互いに蝶番連結された複数のチェーンリンク(7)を含むコンベヤチェーン(3)であり、各チェーンリンクには前記動力供給ラインの一部が設けられており、隣接するチェーンリンク(7)における前記動力供給ラインの前記一部同士は互いに接続されている、コンベヤ装置。
【請求項2】
前記動力供給ラインの前記一部は、前記各チェーンリンク(7)上、又は前記各チェーンリンク内に設けられている、請求項1に記載のコンベヤ装置。
【請求項3】
前記各チェーンリンク(7)は、先行するチェーンリンク(7)に接続するための第1の接続ポイント、及び、後続するチェーンリンク(7)に接続するための第2の接続ポイントを有しており、前記動力供給ラインの前記一部は、前記第1の接続ポイントから前記第2の接続ポイントまで延びている、請求項1又は2に記載のコンベヤ装置。
【請求項4】
一のチェーンリンク(7)は、一端に2つの軸アーム部(10)を、他端に軸取り付け部(11)を有しており、前記一のチェーンリンク(7)の前記軸アーム部(10)は、隣接するチェーンリンク(7)の軸取り付け部(11)に対して係合する、請求項1〜3のいずれか1つに記載のコンベヤ装置。
【請求項5】
前記一のチェーンリンク(7)には、前記2つの軸アーム部(10)のうちの一方の軸アーム部から前記軸取り付け部(11)まで延びるとともに、前記軸取り付け部(11)における前記一方の軸アーム部(10)に対応する端面内につながる通路が設けられており、当該通路が、前記一のチェーンリンク(7)内における前記動力供給ラインの前記一部を構成している、請求項4に記載のコンベヤ装置。
【請求項6】
前記一のチェーンリンク(7)には、前記2つの軸アーム部(10)のうちの他方の軸アーム部から前記軸取り付け部(11)まで延びるとともに、前記軸取り付け部(11)における前記他方の軸アーム部(10)に対応する端面内につながる追加の通路がさらに設けられており、前記追加の通路が、別の動力供給ラインの一部を構成している、請求項5に記載のコンベヤ装置。
【請求項7】
前記2つの軸アーム部(10)の少なくとも一方は、軸ピン(15)によって前記隣接するチェーンリンクの前記軸取り付け部(11)に蝶番連結されている、請求項4〜6のいずれか1つに記載のコンベヤ装置。
【請求項8】
前記軸ピン(15)には、ピン通路が形成されており、このピン通路は、その一端が、前記軸ピンにおける軸取り付け部(11)に面する端面につながる一方、その他端が、前記軸ピンの側面につながる構成とされており、前記ピン通路は、前記一のチェーンリンク(7)の前記動力供給ラインの前記一部を、前記隣接するチェーンリンク(7)における対応する動力供給ラインの一部に接続している、請求項7に記載のコンベヤ装置。
【請求項9】
隣接するチェーンリンク(7)同士が、接続要素(34)によって自在継手状に互いに連結されている、請求項1〜8のいずれか1つに記載のコンベヤ装置。
【請求項10】
前記接続要素(34)は、1つの接続通路(37)又は2つの別個の接続通路を有する、請求項9又は10に記載のコンベヤ装置。
【請求項11】
前記接続要素(34)は、略十字状に延びる4個の接続アーム(35)を有する、請求項9に記載のコンベヤ装置。
【請求項12】
1つの接続通路(37)が4個の接続アーム(35)すべての内部に延びている、請求項11に記載のコンベヤ装置。
【請求項13】
1つの接続通路が隣接する2つの接続アーム内に延びており、別の接続通路が残りの2つの接続アーム内に延びており、上記接続通路のそれぞれが、2つの動力供給ラインのうちの1つにおける一部を構成している、請求項11に記載のコンベヤ装置。
【請求項14】
接続アーム(35)の側面には通路口(38)が設けられており、当該通路口は、接続アーム(35)を受容するチェーンリンク(7)に設けられた通路の通路口(38)に接続されている、請求項11〜13のいずれか1つに記載のコンベヤ装置。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1つに記載のコンベヤ装置のためのコンベヤチェーン。
【請求項16】
請求項1〜14のいずれか1つに記載のコンベヤ装置のコンベヤチェーンのためのチェーンリンク。
【請求項17】
複数の部品によって構成されている、請求項16に記載のチェーンリンク。
【請求項18】
上側シェル、下側シェル、本体、および/又は中間構造体を有する、請求項17に記載のチェーンリンク。
【請求項19】
プラスチックにより形成されている、請求項16〜18のいずれか1つに記載のチェーンリンク。

【図7a】
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【図7b−7c−7d−7】
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【図8a−8b】
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【図9】
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【公表番号】特表2012−516821(P2012−516821A)
【公表日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−546720(P2011−546720)
【出願日】平成22年2月3日(2010.2.3)
【国際出願番号】PCT/EP2010/000661
【国際公開番号】WO2010/089101
【国際公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(511186767)
【氏名又は名称原語表記】POLMAN, Eckhard
【住所又は居所原語表記】Hochstrasse 125, 47665 Sonsbeck, GERMANY
【Fターム(参考)】