説明

コンポスト製造装置

【課題】複数の発酵槽を配置して発酵と熟成の進行の順番を阻害しないようにして、迅速に良質な堆肥を製造できるコンポスト製造装置を提供する。
【解決手段】内部に発酵と熟成を行う複数の槽2、3、6、7を備え、該各々の槽の下方には空気供給口37、38、39、40を備えたコンポスト製造装置において、複数の槽2、3、6、7は各々発酵と熟成の進行の順位を有しており、該複数の槽2、3、6、7のうち順位が隣り合う槽間の仕切壁11、15は、コンポスト原料が空気攪拌によって互いの槽間を移動可能な高さを有しており、該複数の槽2、3、6、7のうち順位が2以上離れる槽間の仕切壁18は、コンポスト原料が空気攪拌によって短絡して移動出来ない高さを有していることを特徴とするコンポスト製造装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンポスト製造装置に関し、詳しくは、良質な完熟堆肥を製造できるコンポスト製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下水処理場や農村集落排水処理場などから発生した汚泥は、脱水処理した後、焼却されていたが、近年の資源リサイクル化の背景下で、コンポストとして農作物肥料や公園植物肥料などに再利用されている。
【0003】
特許文献1には、完熟した高品質のコンポストを簡単で且つ耐用性の高い設備でしかも低コストで製造できる有機性廃棄物のコンポスト化装置が提案されている。
【0004】
本出願人らは、この特許文献1に記載の技術を実用化に向けて研究を重ねる過程で、以下の課題があることがわかった。
【0005】
複数の発酵槽を設けた場合に、第1発酵槽、第2発酵槽、第3発酵槽、・・・・第n発酵槽というように順序よく発酵を行うことにより良質な完熟堆肥が得られる。
【0006】
特許文献1の技術では、空気攪拌により隣り合う発酵槽間で互いに混合するような方式を採用しているので、第1発酵槽と第2発酵槽の間の相互混合、第2発酵槽と第3発酵槽の間の相互混合、第3発酵槽と第4発酵槽の間の相互混合というように隣り合う槽間では相互混合されて、発酵が進行していくことになる。
【0007】
しかしながら、第1発酵槽と第3発酵槽が隣り合って設けられている場合に、相互に混合すると、発酵の順番を飛び越えてコンタミが起こり、未完熟の堆肥となったり、あるいは発酵速度が結果的に遅延する問題があった。
【特許文献1】特開2003−47941号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、複数の発酵槽を配置して発酵と熟成の進行の順番を阻害しないようにして、迅速に良質な堆肥を製造できるコンポスト製造装置を提供することにある。
【0009】
更に本発明の他の課題は、以下の記載によって明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題は、以下の各発明によって解決される。
【0011】
(請求項1)
内部に発酵と熟成を行う複数の槽を備え、該各々の槽の下方には空気供給口を備えたコンポスト製造装置において、
複数の槽は各々発酵と熟成の進行の順位を有しており、該複数の槽のうち順位が隣り合う槽間の仕切壁は、コンポスト原料が空気攪拌によって互いの槽間を移動可能な高さを有しており、該複数の槽のうち順位が2以上離れる槽間の仕切壁は、コンポスト原料が空気攪拌によって短絡して移動出来ない高さを有していることを特徴とするコンポスト製造装置。
【0012】
(請求項2)
複数の槽間の仕切壁は、高さ調整可能であることを特徴とする請求項1記載のコンポスト製造装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、複数の槽を配置して発酵と熟成が順次進行する構成になっており、その進行順位を阻害しないようにして、迅速に良質な堆肥を製造できるコンポスト製造装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面に基づいて説明する。
【0015】
図1は、本発明のコンポスト製造装置の一例を示す概略平面図であり、図2は図1のII−II線断面図、図3は図1のIII−III線断面図である。
【0016】
図1において、100はコンポスト製造装置本体である。コンポスト製造装置本体100の形態は特に限定されず、方形状又は円筒状のいずれでもよい。
【0017】
コンポスト製造装置本体100は、複数の槽1〜8を備えており、各槽1〜8はコンポスト製造を行うのに必要な槽であるが、数は必ずしも限定されない。
【0018】
図示の例では、槽1→槽2→槽3→槽4→槽5→槽6→槽7→槽8の順番(槽の各符号は順番も表している)で発酵と熟成が順次進行することを可能にしている。
【0019】
本発明において、複数の槽は、完熟堆肥が完成するまでに必要な槽であり、発酵と熟成を別々の槽で行ってもよく、一つの槽で発酵と熟成を行ってもよい。また発酵のみを複数の槽に分けて行ってもよい。
【0020】
コンポスト製造装置において発酵と熟成は、予備発酵、一次発酵、二次発酵等のようにコンポスト原料が完熟堆肥に向かい製品化されるように進行する。
【0021】
本発明で、複数の槽が各々発酵と熟成の進行の順位を有しているという意味は、例えば槽1→槽2→槽3→槽4→槽5→槽6→槽7→槽8のように順次発酵と熟成が進行し、完熟堆肥が製造されるということである。
【0022】
本発明で、複数の槽のうち順位が隣り合う場合というのは、複数の槽1〜8において、槽1と槽2、槽2と槽3、槽3と槽4、槽4と槽5、槽5と槽6、槽6と槽7、槽7と槽8のように順位が1だけ異なるような場合である。
【0023】
順位が隣り合う各槽間には仕切壁が設けられ、図示の例では、槽1と槽2には仕切壁10が設けられ、槽2と槽3には仕切壁11が設けられ、槽3と槽4には仕切壁12が設けられ、槽4と槽5には仕切壁13が設けられ、槽5と槽6には仕切壁14が設けられ、槽6と槽7には仕切壁15が設けられ、槽7と槽8には仕切壁16が設けられている。
【0024】
次に、複数の槽のうち順位が2以上離れる槽間にも仕切壁が設けられており、図示の例では、槽1と槽4の間には仕切壁17が設けられ、槽3と槽6の間には仕切壁18が設けられ、槽5と槽8の間には仕切壁19が設けられている。
【0025】
図2には、コンポスト製造装置本体100の内部構造が示されている。図2には、槽2、槽3、槽6、槽7が示されている。槽2と槽3の間の仕切壁11は、コンポスト原料が空気攪拌によって互いの槽間を移動可能な高さを有している。槽2と槽3の間は、複数の槽のうち順位が隣り合う場合である。コンポスト原料が空気攪拌によって互いの槽間を移動可能な高さというのは、コンポスト原料の界面(上面)と略同等から20cm程度までの高さをいう。この仕切壁11は高さ調整が可能なように構成されることが好ましい。
【0026】
槽3と槽6の間には仕切壁18が設けられ、該仕切壁18はコンポスト原料が空気攪拌によって短絡して移動出来ない高さを有している。コンポスト原料が空気攪拌によって短絡して移動出来ない高さというのは、槽3のコンポスト原料が槽6に短絡して移動出来なければよいので、高い方が好ましく、コンポスト製造装置本体100の天井101と仕切壁18の上端に数cm程度の隙間ができる程度でよい。隙間の存在によってコンポスト製造装置本体100内で発生する臭気成分等が移動でき、系外に除去出来る。この仕切壁18は高さ調整が可能なように構成されることが好ましい。
【0027】
槽6と槽7は、複数の槽のうち順位が隣り合う場合に該当するので、仕切壁15の高さは仕切壁11と基本的には同じ高さでよいが、本実施の形態では、未反応抑制板20を設けることが好ましい。この未反応抑制板20の形状は特に限定されないが、例えば図4に示すように、上方にバースクリーン200を設けることが出来る。バースクリーン200を設けると、粒子を通過させるが長いワラのようなものの通過を抑制でき選別的な通過抑制ができ、さらに目つまりした場合に清掃が容易である。バースクリーン200の目間隔は10〜20mm程度が好ましい。未反応抑制板20は傾斜させて配置することが好ましく、傾斜角度は0〜30°の範囲が好ましい
【0028】
なお、バースクリーン200に代えてパンチングメタルのような多孔板や網状体を用いることもできる。また未反応抑制板20は槽7と槽8の間に設けることもできる。
【0029】
槽2、槽3、槽6、槽7の底部には、所謂デッドスペースをなくしてコンポストの嫌気化を防止するために傾斜部21、22、23、24が設けられ、コンポスト製造装置本体100の下方は円錐状又は角錐状に形成されることが好ましい。
【0030】
傾斜部21、22、23、24の下方には空間部25、26、27、28が形成され、空間部25、26、27、28には各々ヒーター29、30、31、32が設けられている。
【0031】
ヒーター29、30、31、32は傾斜部21、22、23、24の裏面に固着しておくと熱伝導効果が向上して好ましい。
【0032】
本態様において、ヒーター29、30、31、32をコンポスト原料と直接接触しないように配置すると、ヒーター29、30、31、32の異常過熱による不測の火災発生を防止出来る。
【0033】
槽2、槽3、槽6、槽7の底部には、空気を導入するための1又は2以上の空気供給管33、34、35、36が各々配設され、圧力空気供給の為のコンプレッサー(図示せず)及び加温空気供給の為の送風機(図示せず)に接続されている。なお、空気供給管の本数は格別図示に限定されるわけでなく、送風量や送風圧等に応じて適宜増加することが出来る。また空気供給管33、34、35、36から空気供給口37、38、39、40を介して供給される空気は温度制御可能に構成されることが好ましく、良好なコンポストを製造する上では図示しないヒーターによって加熱された空気が供給されるように制御されることが好ましい。
【0034】
次に図3に基づいて他の系列の槽配置について説明する。
【0035】
図3において、41はコンポスト製造装置本体100の上部に設けられるコンポスト原料の導入口である。42はコンポスト製造装置本体100の上部に設けられる排気口であり、導入口41とは離れた位置に形成される。排気口42には図示しない自動開閉弁が設けられている。
【0036】
槽1と槽4、槽5と槽8は複数の槽のうち順位が2以上離れる槽間に該当するので、槽1と槽4の仕切壁17、槽5と槽8の仕切壁19はコンポスト原料が空気攪拌によって短絡して移動出来ない高さを有している。コンポスト原料が空気攪拌によって短絡して移動出来ない高さというのは、槽1のコンポスト原料が槽4に短絡して移動出来なければよいので高い方が好ましく、コンポスト製造装置本体100の天井101と仕切壁17の上端、天井101と仕切壁19の上端に、数cm程度の隙間ができる程度でよい。隙間の存在によってコンポスト製造装置本体100内で発生する臭気成分等が移動でき、系外に除去出来る。この仕切壁17、19は高さ調整が可能なように構成されることが好ましい。
【0037】
槽4と槽5の間の仕切壁13は、コンポスト原料が空気攪拌によって互いの槽間を移動可能な高さを有している。槽4と槽5の間は、複数の槽のうち順位が隣り合う場合である。コンポスト原料が空気攪拌によって互いの槽間を移動可能な高さは、コンポスト原料の界面(上面)と略同等から20cm程度までの高さが好ましい。この仕切壁13は高さ調整が可能なように構成されることが好ましい。
【0038】
槽1、槽4、槽5、槽8の底部には、所謂デッドスペースをなくしてコンポストの嫌気化を防止するために傾斜部50、51、52、53が設けられ、コンポスト製造装置本体100の下方は円錐状又は角錐状に形成されることが好ましい。
【0039】
傾斜部50、51、52、53の下方には空間部54、55、56、57が形成され、空間部54、55、56、57には各々ヒーター58、59、60、61が設けられている。
【0040】
ヒーター58、59、60、61は傾斜部50、51、52、53の裏面に固着しておくと熱伝導効果が向上して好ましい。
【0041】
本態様において、ヒーター58、59、60、61をコンポスト原料と直接接触しないように配置すると、ヒーター58、59、60、61の異常過熱による不測の火災発生を防止出来る。
【0042】
槽1、槽4、槽5、槽8の底部には、空気を導入するための1又は2以上の空気供給管62、63、64、65が各々配設され、図示しない圧力空気供給の為のコンプレッサー(図示せず)及び加温空気供給の為の送風機(図示せず)に接続されている。なお、空気供給管の本数は格別図示に限定されるわけでなく、送風量や送風圧等に応じて適宜増加することが出来る。また空気供給管62、63、64、65から空気供給口66、67、68、69を介して供給される加温空気は温度制御可能に構成されることが好ましく、良好なコンポストを製造する上では図示しないヒーターによって加熱された空気が供給されるように制御されることが好ましい。
【0043】
図3において、70は製品取出し口である。
【0044】
本発明のコンポスト製造装置において、槽1にコンポスト原料を導入し、加温空気を供給し(断続的)、切返しと発酵を行う。好気微生物の活発な活動を支援する意味でも切返しは重要である。
【0045】
また切返し強度はコンポスト原料がコンポスト製造装置本体1の上部天井に衝突しない範囲で任意に決定される。
【0046】
所定時間切返しを行った後、圧力空気供給を停止し、加温空気の連続的供給により乾燥・熟成を行う。この切返し、熟成を交互に行う。
【0047】
例えば槽1と槽2の間の仕切壁は低いので、空気攪拌によって槽1の原料の一部は槽2に移送され、その逆に槽2の原料の一部は槽1に移送され、互いに混合する現象が起きるため槽毎の熟成の差は生じない。
【0048】
槽2の原料は、順次槽3、槽4〜槽8に向かって送られ、半熟堆肥が完熟堆肥になるように発酵と熟成が進む。
【0049】
なお、槽1から槽2に送られた分は槽1で減量しているので、その分を導入口41から原料補給する。順次発酵が進むに従って各槽には原料、堆肥が満たされていく。
【0050】
本態様において、コンポスト原料は、下水処理場や農村集落排水処理場などから発生した汚泥を脱水した脱水汚泥、コンポスト化過程で得られる半熟堆肥、その他コンポスト原料となる物質(例えば炊事場から出る野菜・魚介などのくずのような家庭厨芥や産業厨芥、農産物芥、動物糞芥などの生物有機性廃棄物など)などが挙げられる。
【0051】
図1の態様において、槽の配列は図示に限定されず、図5のように上列右方向に発酵を進行させ、下段左方向に進行させると原料の導入口と製品取出し口を近接させることが出来る。この場合、槽1と槽8、槽2と槽7、槽3と槽6の間の仕切壁は高く形成する。また図6や図7の配列を採用することも出来る。図6の場合、槽1と槽8、槽3と槽8、槽4と槽7の間の仕切壁は高く形成する。図7の場合、槽1と槽4、槽1と槽8、槽5と槽8の間の仕切壁は高く形成する。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明のコンポスト製造装置の一例を示す概略平面図
【図2】図1のII−II線断面図
【図3】図1のIII−III線断面図
【図4】仕切壁の例を示す図
【図5】槽配置の他の例を示す図
【図6】槽配置の他の例を示す図
【図7】槽配置の他の例を示す図
【符号の説明】
【0053】
100:コンポスト製造装置本体
1〜8:槽
10、11、12、13、14、15、16:仕切壁
17、18、19:仕切壁
101:天井
20:未反応抑制板
200:バースクリーン
21、22、23、24:傾斜部
25、26、27、28:空間部
29、30、31、32:ヒーター
33、34、35、36:空気供給管
37、38、39、40:空気供給口
41:導入口
42:排気口
50、51、52、53:傾斜部
54、55、56、57:空間部
58、59、60、61:ヒーター
62、63、64、65:空気供給管
66、67、68、69:空気供給口
70:製品取出し口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に発酵と熟成を行う複数の槽を備え、該各々の槽の下方には空気供給口を備えたコンポスト製造装置において、
複数の槽は各々発酵と熟成の進行の順位を有しており、該複数の槽のうち順位が隣り合う槽間の仕切壁は、コンポスト原料が空気攪拌によって互いの槽間を移動可能な高さを有しており、該複数の槽のうち順位が2以上離れる槽間の仕切壁は、コンポスト原料が空気攪拌によって短絡して移動出来ない高さを有していることを特徴とするコンポスト製造装置。
【請求項2】
複数の槽間の仕切壁は、高さ調整可能であることを特徴とする請求項1記載のコンポスト製造装置。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−219332(P2006−219332A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−33637(P2005−33637)
【出願日】平成17年2月9日(2005.2.9)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【出願人】(500352856)株式会社創建 (2)
【Fターム(参考)】