説明

コーキング方法及びコーキングガン

【課題】狭いスペース内でも効率がよく確実なコーキングを行うことができる経済性に優れたコーキング方法を提供する。
【解決手段】筒状のカートリッジ本体93と、このカートリッジ本体93の先端部に設けたノズル97と、カートリッジ本体93内に配置したスライド底部と、を有し、カートリッジ本体93内にコーキング材を収容しているコーキングカートリッジ91を用いてコーキング作業を行う。コーキング材が少なくなったら、スライド底部よりも後側のカートリッジ本体93部分を切断する。切断したコーキングカートリッジ91に対応する長さのカートリッジ装着部5を備えた小型のコーキングガン1に、切断したコーキングカートリッジ91を装着してコーキング作業を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リフォーム工事などの建築工事で施工される、目地などの隙間をコーキング材で塞ぐコーキング方法及びこのコーキング方法に用いるコーキングガンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築工事では、気密性や防水性を確保するために、目地などの隙間にコーキング材を充填してこの隙間を埋めておく必要がある。隙間を埋めるこのようなコーキング方法には、例えば特許文献1や特許文献2に示されているように、前端部にノズル部を有し、内部にスライド底部が配置された筒状のカートリッジ本体内にコーキング材を収容したコーキングカートリッジをコーキングガンに取り付け、このコーキングガンを操作してスライド底部を前方にスライド移動させながらコーキングカートリッジのノズル部から目地などにコーキング材を放出するといった手法が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−213926号公報
【特許文献2】特開2004−308119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のコーキングカートリッジは300mm程度の長さを有し、未使用のコーキングカートリッジを装着したときにはピストンロッドが後方に長く突出するので、コーキングカートリッジを装着したコーキングガンの長さは例えば610mm程度にもなる。このような長いコーキングガンは取り回し性に劣るので、特に一般住宅のリフォーム工事の際に狭いスペース内で使用するには不便であり、しばしば、コーキングカートリッジのノズル部を充填対象の隙間個所に位置させることが難しくなってしまう。このような場合には、作業者の手で直接、コーキング材を隙間に塗ることとなるが、作業効率が悪いし、確実な気密性や防水性の確保も難しい。
【0005】
ここで、短いコーキングカートリッジと、この短いコーキングカートリッジを取り付けるための小型のコーキングガンとを用いれば、長いコーキングガンを用いる場合の不便さは解消するが、短いコーキングガンだけを使用すると、コーキングカートリッジを頻繁に取り換えなければならないので、かえって作業効率が低下する。したがって、小型のコーキングガンを用いる場合でも、長いコーキングガンを併用する必要がある。ところが、長いコーキングガンの場合には、コーキングカートリッジ内のコーキング材の残存量が少なくなるにつれて、ピストンロッドがロッド支持部よりも大きく前方に突出して延びるので、スライド底部の押圧時に、ピストンロッドの前端部、すなわち押圧ピストンが大きく軸振れしやすくなり、スライド底部をスムーズに前方にスライド移動させることが難しくなってしまう。したがって、長いコーキングカートリッジを使用すると、コーキング材を使い切らないうちに、コーキングカートリッジを廃棄することとなり、工事の材料コスト高につながる。また、そもそも、短いコーキングカートリッジを常に作業者が購入できるとも限らないし、購入できたとしてもこのような短いコーキングカートリッジは価格が高いおそれがある。
【0006】
そこで本発明は、狭いスペース内でも効率よく確実なコーキングを行うことができる経済性に優れたコーキング方法及びこのコーキング方法に用いることができるコーキングガンを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するための本発明のコーキング方法は、筒状のカートリッジ本体、このカートリッジ本体の前端部に設けられたノズル部及びこのカートリッジ本体内に配置されたスライド底部を有し、前記カートリッジ本体内にコーキング材が収容されているコーキングカートリッジを用いてコーキングを行うコーキング方法であって、前記スライド底部が前記カートリッジ本体の前方位置にスライド移動し、前記カートリッジ本体内の前記コーキング材の一部がすでに前記ノズル部から放出されている前記コーキングカートリッジを準備するカートリッジ準備工程と、前記カートリッジ準備工程で準備された前記コーキングカートリッジの前記カートリッジ本体の前記前方位置よりも後側を切断する切断工程と、後側が切断された前記カートリッジ本体(又は前記コーキングカートリッジ)に対応する長さのカートリッジ装着部、このカートリッジ装着部に装着された前記コーキングカートリッジの前記スライド底部を押して前方にスライド移動させる押圧ピストン及び手で支えるための把持部を備え、この把持部が把持部本体及び前記押圧ピストンを前進させるためのレバーを有しているコーキングガンを準備するガン準備工程と、前記切断工程で前記カートリッジ本体の後側が切断された前記コーキングカートリッジを前記カートリッジ装着部に装着し、前記把持部を握り前記レバーを操作して前記押圧ピストンを前進させ、この押圧ピストンで前記スライド底部を押して前方にスライド移動させることにより、前記ノズル部から前記コーキング材をコーキング個所に向けて放出する充填工程と、を備えるものである。ここでは、例えば280mm乃至300mm程度の長いコーキングカートリッジの使用が前提となる(カートリッジ本体の長さは、例えば210mm乃至230mm)。この長いコーキングカートリッジが大型のコーキングガンに装着され、例えば比較的広いスペースで目地などを埋めるために使用される。コーキングカートリッジ内のコーキング材が残り少なくなったら、例えば未使用時の3分の1程度になったら、コーキングカートリッジをコーキングガンから取り外し、コーキングカートリッジ又はカートリッジ本体のスライド底部よりも後側の部分を切断する。切断する個所は予め設定されているのが普通である。そして、後側が切断されたコーキングカートリッジを小型のコーキングガンに装着する。小型のコーキングガンは、後側が切断されたカートリッジ本体又はコーキングカートリッジに対応する長さのカートリッジ装着部と、このカートリッジ装着部に装着されたコーキングカートリッジのスライド底部を押して前方にスライド移動させる押圧ピストンと、コーキングガンを手で支えるための把持部と、を備え、この把持部が把持部本体及び押圧ピストンを前進させるためのレバーを有しているものである。例えば、切断されたときのカートリッジ本体又はコーキングカートリッジの長さは予め設定され(例えばカートリッジ本体の長さは90mm又は90mm程度、コーキングカートリッジの長さは160mm又は160mm程度)、カートリッジ装着部は、この予め設定された長さに対応する長さを有している。すなわち、例えば、予め設定された長さを越える又は大きく越える長さのコーキングカートリッジ又はカートリッジ本体を装着できないような短い長さ又は予め設定された長さに切断されたコーキングカートリッジ又はカートリッジ本体を装着するのに適した短い長さをカートリッジ装着部は有している。例えば、カートリッジ装着部は、切断前のコーキングカートリッジを装着できないように短く形成されている。小型のコーキングガンは、充填工程に先立って準備されていればよい。コーキングカートリッジは例えばプラスチック製であり、コーキング材はパテなどの樹脂材である。
【0008】
カートリッジ準備工程で準備されるコーキングカートリッジは、例えばコーキング作業に使用されたものである。
【0009】
把持部に、カートリッジ本体の前方位置(スライド底部がスライド移動した位置)よりも後側を切断する切断歯部材を設けておくことが好ましい。この切断歯部材は、把持部本体又はレバーに収容される収容位置と、把持部本体又はレバーから突出する又は引き出された切断位置とに変位可能、例えば一端部を中心として回転変位可能としておくことができる。そして、切断歯部材を切断位置に変位させ、この切断歯部材と把持部本体又はレバーとでカートリッジ本体を挟み付け、このカートリッジ本体を回転させることによりカートリッジ本体の後側を切断歯部材で切断する。
【0010】
また、本発明のコーキングガンは、筒状のカートリッジ本体、このカートリッジ本体の前端部に設けられたノズル部及びこのカートリッジ本体内に配置されたスライド底部を有し、前記カートリッジ本体内にコーキング材が収容されているコーキングカートリッジを装着し、前記ノズル部から前記コーキング材を放出させるコーキングガンであって、前記コーキングカートリッジ又は前記カートリッジ本体を装着するためのカートリッジ装着部と、このカートリッジ装着部に装着された前記コーキングカートリッジの前記スライド底部を押して前方にスライド移動させる押圧ピストンと、この押圧ピストンを支えるピストンロッドと、コーキングガンを手で支えるための把持部と、を備え、この把持部が、把持部本体及び前記ピストンロッドを作動させて前記押圧ピストンを前進させるレバーを有していて、前記カートリッジ装着部は、前方にスライド移動した前記スライド底部よりも後側が切断された前記カートリッジ本体(又は前記コーキングカートリッジ)に対応する長さを有し、前記把持部には、前記カートリッジ本体の前記スライド底部よりも後側を切断する切断歯部材が設けられているものである。ここでも、例えば300mm程度の長いコーキングカートリッジの使用が前提となる。この長いコーキングカートリッジが大型のコーキングガンに装着され、例えば比較的広いスペースで目地などを埋めるために使用される。長いコーキングカートリッジ内のコーキング材が残り少なくなったら、例えば未使用時の3分の1程度になったら、長いコーキングカートリッジを大型のコーキングガンから取り外し、長いコーキングカートリッジ又はカートリッジ本体のスライド底部よりも後側の部分を切断する。そして、後側が切断されたコーキングカートリッジを請求項4の発明の小型のコーキングガンに装着する。
【0011】
切断歯部材は、把持部本体又はレバーに収容される収容位置と、把持部本体又はレバーから突出する又は引き出された切断位置とに変位可能、例えば一端部を中心として回転変位可能としておくことができる。そして、切断歯部材を切断位置に変位させ、この切断歯部材と把持部本体又はレバーとでカートリッジ本体を挟み付け、このカートリッジ本体を回転させることにより前記カートリッジ本体の後側を切断歯部材で切断する。
【0012】
ところで、前方に移動したスライド底部を後方位置まで押し戻せば、カートリッジ本体内にコーキング材を収容して再びコーキングカートリッジとして使用することができる。カートリッジ本体が短ければ、スライド底部を傷めることなく押し戻すことが可能となる。そこで、押圧ピストンをピストンロッドの前端部に取り外し可能に取り付けておき、押圧ピストンを取り外したときに、ピストンロッドの前端部を、コーキングカートリッジのスライド底部を後端側に押し戻す押し戻し部として形成できるように構成しておく。具体的には、押圧ピストンを取り外し、ピストンロッドの前端部を、前端面が球面状(例えば曲率の小さな球面状)に形成された大径部(押し戻し部)として構成できるようにしておく。カートリッジ本体の前端面からはノズルを取り付けるための取り付け口部が突出している場合が多く、カートリッジ本体を前後が逆となるようにカートリッジ装着部に取り付けてレバーを操作することにより、ピストンロッドがこの取り付け口部からカートリッジ本体内に挿入され、大きな球面状の前端面がスライド底部を後端側に押すこととなる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のコーキング方法やコーキングガンを用いれば、コーキング作業に用いられた長いコーキングカートリッジの残りのコーキング材を有効に利用して必要個所にコーキング材を充填できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係るコーキング方法の実施に用いるコーキングガンの斜視図である。
【図2】コーキングガンの別の斜視図である。
【図3】コーキングガンの断面図である。
【図4】ストッパプレート個所の拡大図である
【図5】駆動プレート個所の拡大図である。
【図6】押圧ピストンの取り付け構造を示す図である。
【図7】押圧ピストンの前進動作を説明するための図である。
【図8】本発明に係るコーキング方法のカートリッジ準備工程及び切断工程を説明するための図である。
【図9】短いコーキングカートリッジの断面図である。
【図10】本発明に係るコーキング方法の充填工程を説明するための図である。
【図11】コーキングガンを用いてスライド底部をカートリッジ本体の後端側に押し戻す場合を概念的に説明する図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0016】
図1は本発明に係るコーキング方法の実施に用いるコーキングガンの斜め上側から見た斜視図、図2はコーキングガンの斜め下側から見た斜視図、図3はコーキングガンの把持部の内部構造を示すための断面図、図4はストッパプレートの機能を示すためのストッパプレート個所の拡大図、図5は駆動プレートの機能を示すための駆動プレート個所の拡大図、図6は押圧ピストンの取り付け構造を示し、押し戻し部の形状を示す図、図7はレバーの操作による押圧ピストンの前進動作を説明するための図である。
【0017】
コーキングガン1は、把持部3と、この把持部3に固定されたカートリッジ装着部5と、カートリッジ装着部5の後端部及び把持部3を貫通して延びるピストンロッド7と、ピストンロッド7の前端部に固定されてカートリッジ装着部5内に位置する深皿状の押圧ピストン9と、を備えている。
【0018】
把持部3は、把持部本体11と、この把持部本体11に揺動可能に取り付けられたレバー13と、を有し、このレバー13内には細長い切断歯部材15が揺動可能に収められている。把持部本体11は、一対の側壁部17及びこの一対の側壁部17を連結する後壁部19を有して断面コ字状に折り曲げ形成された枠体21を備えていて、それぞれの側壁部17の上側部前端には、外側に折り曲げて形成された取り付け部23が設けられ(一方側の取り付け部23のみ図示)、また、一対の側壁部17間の上側又は中間部上側にはレバー取り付けピン25が掛け渡されて取り付けられている。レバー13は、一対の側壁部27及びこの一対の側壁部27を連結する前壁部29を有して断面コ字状に折り曲げ形成された枠体31を備えていて、一対の側壁部27の上端部に設けられた取り付け孔(特に図示せず)にレバー取り付けピン25が通されることにより、レバー取り付けピン25を中心として揺動できる状態で把持部本体11に取り付けられている。レバー取り付けピン25には、トーションスプリング33のコイル部35が嵌められていて、このトーションスプリング33の一端側37は把持部本体11の後壁部19内面に押し付けられ、他端側39はレバー13の前壁部29内面に押し付けられている。したがって、レバー13は図1で時計回り方向に付勢され、側壁部27の上端部後側が把持部本体11の後壁部19内面に当接した状態に保持されている。なお、レバー13の一対の側壁部27間の上端側には作動ピン41が掛け渡されて取り付けられている。
【0019】
レバー13の一対の側壁部27間の上下方向又は長さ方向中間には切断歯取り付けピン43が掛け渡されて取り付けられていて、切断歯部材15の上端部に設けられた取り付け孔45にこの切断歯取り付けピン43をゆるく通すことにより、細長いプレート状の切断歯部材15が切断歯取り付けピン43を中心として揺動できる状態でレバー13に取り付けられている。切断歯部材15の後縁部には全長にわたって又はほぼ全長にわたってのこぎり歯47が形成されている。レバー13内には、切断歯取り付けピン43よりも下側で、弾性材製の保持部材49が一対の側壁部27によって圧縮された状態で固定されていて、この保持部材49はブロック状に形成されているが、幅方向中央を通って全長にわたって延びるスリット51が表面側から設けられている。切断歯部材15は、幅方向に自由に移動させたり傾斜させたりすることができるようにレバー13に取り付けられているが、保持部材49のスリット51に押し込むことにより、一対の側壁部27間の中央又はほぼ中央を通って延びる状態に保持される(図2の状態)。
【0020】
レバー13の先端部(下端部)には、レバー13の開口側を跨ぐようにコ字状のストッパ部材52が取り付けられている。ストッパ部材52は、レバー13の開口側を横切るように位置するストッパプレート部53及びこのストッパプレート部53の両側に折り曲げ形成された側部プレート部54を有し、この側部プレート部54がレバー13の側壁部27の外面に回転可能に接続されている。ストッパ部材52は、ストッパプレート部53の一端縁部55がレバー13の先端部に当接する作動位置(図1の実線で示す位置)から上方に90°を越えて回転させることができるように構成されていて(ある程度の回転抵抗を有して回転できるように構成されているので、ストッパ部材52は任意の回転位置に保持され得る)、ストッパプレート53部は、幅方向に対して傾斜して配置され、他端縁部56の幅方向中央に係合スリット(係合細溝)57を有している。ストッパ部材52が作動位置に回転しているとき、切断歯部材15は、先端部がストッパプレート部53の幅方向一端部に一致又は対応する状態では(図4の仮想線で示す切断歯部材15参照、保持部材49を弾性変形させることにより、切断歯部材15をこのような態勢とすることができる)、先端部がストッパプレート部53に引っ掛からずに自由に揺動できるようになっているが、先端部がストッパプレート部53の幅方向中間部や幅方向他端側に一致又は対応している状態では、先端部がストッパプレート部53に引っ掛かってしまうので、先端部がストッパプレート部53を通過するように揺動できないようになっている(図4の実線で示す切断歯部材15参照)。なお、ストッパ部材52を上方に回転させることにより、切断歯部材15が収容状態から突出することを確実に防止でき、また切断歯部材15の先端側ののこぎり歯47を覆うことができるので、安全性が向上する。
【0021】
したがって、切断歯部材15が保持部材49のスリット51に深く入り込み、レバー13内に完全に、ほぼ完全に又は大きく突出しないように収容された収容状態(ここでは、例えばストッパ部材52が上方に回転し、例えば切断歯部材15を押え付けている)のときに、ストッパ部材52を作動位置に回転させ、切断歯部材15の先端部をストッパプレート部53の幅方向一端部に寄せると、切断歯部材15をレバー13から突出した引き出し状態に揺動させることができる。引き出し状態での切断歯部材15は、先端部がストッパプレート部53の幅方向中間部や幅方向他端側に一致又は対応しているときには、先端部がストッパプレート部53の他端縁部56と係合するので(ここでは、ストッパ部材52は例えば作動位置に回転したままの状態となっている)引き出し状態に保持されるが、切断歯部材15の先端部をストッパプレート部53の幅方向一端部に寄せると、切断歯部材15を揺動させて収納状態とすることができる。
【0022】
カートリッジ装着部5は、把持部本体11の取り付け部23に固定された後方受け部59と、この後方受け部59と所定の間隔で配置された前方受け部61と、後方受け部59及び前方受け部61を連結する断面半円形の下側受け部63と、を備え、後方受け部59は、円板状底部65を有する有底環状体として形成され、前方受け部61は、U字状の先端壁67の外縁に沿って長さ方向部69を設けることにより形成されている。
【0023】
後方受け部59の円板状底部65の中央にはロッド孔(図示せず)が形成され、このロッド孔をゆるく貫通するようにピストンロッド7が配置されていて、ピストンロッド7の後方は、把持部本体11の後壁部19の上端側に形成された突出孔71をゆるく貫通して後方に突出している。ピストンロッド7には、把持部本体11内に位置するように柔軟な保持環73がきつく嵌められ、また、把持部本体11内に位置するように、かつ保持環73よりも後方となるように駆動プレート75がゆるく嵌められていて、さらに、保持環73と駆動プレート75との間に位置するように圧縮コイルスプリング77が嵌められている。したがって、駆動プレート75は把持部本体11の後壁部19の内面(具体的には後壁部19の突出孔71の内側の突出縁部)に押し付けられ、保持環73は後方受け部59の円板状底部65の外面に押し付けられている。駆動プレート75は、ピストンロッド7をゆるく通している駆動孔79を上端側に有し(図5参照)、下端側がレバー13の作動ピン41と接触又は接近している。なお、ピストンロッド7の後端部は、例えばベルトなどに引っ掛けることができるように鉤形に曲げられている。
【0024】
ピストンロッド7の前端部には、押圧ピストン9がカートリッジ装着部5内に位置するように取り付けられているが、ピストンロッド7の前端部は小径の雄ネジ部81として形成されていて、押圧ピストン7は、中央部に設けられた取り付け孔83に雄ネジ部81を通し、押圧ピストン9から突出する雄ネジ部81に、前端面が緩やかな球面状に形成された袋ナット85をねじ付けることにより、雄ネジ部81の付け根の段部と袋ナット85とで挟み付けられている(図6参照)。なお、袋ナット85は、ピストンロッド7よりも大径に形成されている。
【0025】
ここで、レバー13をトーションスプリング33のバネ力に抗して引くと、レバー13の作動ピン41に押されて駆動プレート75の下側が前方に移動する。駆動プレート75の上側は圧縮コイルスプリング77で後方に押されているので、駆動プレート75は下側に向かって前側に傾斜し、駆動プレート75の駆動孔79がピストンロッド7と係合する。レバー13をさらに引くと、作動ピン41に押されて駆動プレート79がピストンロッド7をともなって前方に移動し、ピストンロッド7の前端部に取り付けられている押圧ピストン9が前進する(図7a参照)。ピストンロッド7は、後方受け部59の円板状底部65の外面に押し付けられている保持環73内を通って前方に移動しているので、レバー13から引き力が解除され、レバー13がトーションスプリング33のバネ力により復帰し、駆動プレート73が圧縮コイルスプリング77のバネ力により復帰しても、保持環73によって前進した状態に保持される(図7b参照)。押圧ピストン9は、レバー13を引くたびに間欠的に前進する。なお、前方に移動したピストンロッド7は、押圧ピストン9が後方受け部59の円板状底部65に当接するまで引き戻すことができる。また、ピストンロッド7の作動構造としては、公知の種々の構成を採用することができる。
【0026】
図8は本発明に係るコーキング方法のカートリッジ準備工程及び切断工程を説明するための図、図9は短いコーキングカートリッジの断面図である。
【0027】
本発明に係るコーキング方法を実施するにはまず、280mm乃至300mm程度の長いコーキングカートリッジ91を例えば特許文献1や特許文献2に記載された大型のコーキングガンに装着してコーキング作業を行う。コーキングカートリッジ91は、筒状のカートリッジ本体93と、このカートリッジ本体93の前端部に設けられた取り付け口部95にネジ付けされたノズル97と、カートリッジ本体93内に配置された、カートリッジ本体93内を密封状態でスライドするスライド底部99と、を有し、カートリッジ本体93内にコーキング材101が収容されている(図9も参照)。スライド底部99は、例えば、円板状の底部本体と、この底部本体の外円縁部に形成された、カートリッジ本体93の内面上を密封状態で摺動する環状部と、を有している。したがって、大型のコーキングガンに装着してコーキング作業を行った後のコーキングカートリッジ91は、スライド底部99がカートリッジ本体93の前方位置に移動している(カートリッジ準備工程、図8a参照)。次に、切断歯部材15をレバー13から突出した引き出し状態とし、準備したコーキングカートリッジ91のスライド底部99よりも後側を、切断歯部材15と把持部本体11とで挟み付ける。このとき、切断歯部材15がストッパプレート部53の他端縁部56の係合スリット57内に嵌まり込むようにする。そして、矢印で示すようにコーキングカートリッジ91を回転させて、カートリッジ本体93のスライド底部99よりも後側を切断歯部材15で切断し(切断工程、図8b参照)、短いコーキングカートリッジ91を構成する(図9参照)。なお、切断工程が終了したら、切断歯部材15を収容位置に移動させてレバー13内に収容しておく。
【0028】
図10は本発明に係るコーキング方法の充填工程を説明するための図である。
【0029】
このようにして構成した短いコーキングカートリッジ91を、図10に示すように、予め準備しておいた本発明に係るコーキングガン1のカートリッジ装着部5に装着する。カートリッジ装着部5は、カートリッジ本体93の後側を切断した短いコーキングカートリッジ91を装着するように短く構成されている。コーキングカートリッジ1は、ノズル97を前方受け部61のU字状の前端壁67に嵌め込み、カートリッジ本体93を下側受け部63に収容するようにしてカートリッジ装着部5に装着される。ここでは、押圧ピストン9は、後方受け部59の円板状底部65と接触又は円板状底部65に接近している。カートリッジ装着部5には、カートリッジ本体93の長さ(取り付け口部95を除いたカートリッジ本体93の長さ)が、前方受け部61のU字状の前端壁67の内面と後方受け部59の円板状底部65の内面との間隔以下のコーキングカートリッジ91を装着することができるが、ここでのコーキングカートリッジ91のカートリッジ本体93の長さは、前方受け部61のU字状の前端壁67の内面と後方受け部59の円板状底部65の内面との間隔よりも短い。カートリッジ装着部5に短いコーキングカートリッジ91を装着したら、レバー13を引いて押圧ピストン9を間欠的に前進させ、スライド底部99を前側に移動してノズル97からコーキング材101を充填個所に放出する。
【0030】
図11はコーキングガン1を用いてスライド底部99をカートリッジ本体93の後端部に戻す場合を概念的に説明する図である。
【0031】
スライド底部99をカートリッジ本体93の前端部まで移動させ、収容されていたコーキング材101を使い切ったら、ピストンロッド7を後側に引き戻し、カートリッジ装着部5からコーキングカートリッジ91を取り外す。そして、袋ナット85をピストンロッド7の雄ネジ部81から取り外し、押圧ピストン9をピストンロッド7から抜き取り、袋ナット85を再び雄ネジ部81にネジ付ける。ここでは、この袋ナット85が押し戻し部を形成する。また、カートリッジ本体93の取り付け口部95からノズル97を取り外し、取り付け口部95が後側となるように、又は取り付け口部95内に袋ナット85又はピストンロッド7の前端部が入り込むようにして、カートリッジ装着部5にコーキングカートリッジ91を装着する。そして、レバー13を引いて袋ナット85を間欠的に前進させると、袋ナット85に押されてスライド底部99がカートリッジ本体93の後方に移動する。袋ナット85は取り付け口部95を通過するのに支障がない限度で大径に形成され、かつ前端面が曲率の小さい球面状となっているので、スライド底部99を傷付けることなく押し戻すことができる。スライド底部99がカートリッジ本体93の後端部まで押し戻されたら、ピストンロッドを後側に引き戻し、カートリッジ本体93をカートリッジ装着部5から取り外し、内部にコーキング材101を充填する。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明のコーキング方法及びコーキングガンは、例えば一般住宅のリフォーム工事で用いることができる。
【符号の説明】
【0033】
1 コーキングガン
3 把持部
5 カートリッジ装着部
9 押圧ピストン
11 把持部本体
13 レバー
91 コーキングカートリッジ
93 カートリッジ本体
95 取り付け口部(ノズル部)
97 ノズル(ノズル部)
99 スライド底部
101 コーキング材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のカートリッジ本体、このカートリッジ本体の前端部に設けられたノズル部及びこのカートリッジ本体内に配置されたスライド底部を有し、前記カートリッジ本体内にコーキング材が収容されているコーキングカートリッジを用いてコーキングを行うコーキング方法であって、
前記スライド底部が前記カートリッジ本体の前方位置に移動し、前記カートリッジ本体内の前記コーキング材の一部がすでに前記ノズル部から放出されている前記コーキングカートリッジを準備するカートリッジ準備工程と、
前記カートリッジ準備工程で準備された前記コーキングカートリッジの前記カートリッジ本体の前記前方位置よりも後側を切断する切断工程と、
後側が切断された前記カートリッジ本体に対応する長さのカートリッジ装着部、このカートリッジ装着部に装着された前記コーキングカートリッジの前記スライド底部を押して前方にスライド移動させる押圧ピストン及び手で支えるための把持部を備え、この把持部が把持部本体及び前記押圧ピストンを前進させるためのレバーを有しているコーキングガンを準備するガン準備工程と、
前記切断工程で前記カートリッジ本体の後側が切断された前記コーキングカートリッジを前記カートリッジ装着部に装着し、前記把持部を握り前記レバーを操作して前記押圧ピストンを前進させ、この押圧ピストンで前記スライド底部を押して前方にスライド移動させることにより、前記ノズル部から前記コーキング材をコーキング個所に向けて放出する充填工程と、を備えることを特徴とするコーキング方法。
【請求項2】
前記把持部には、前記カートリッジ本体の前記前方位置よりも後側を切断する切断歯部材が設けられている、ことを特徴とする請求項1記載のコーキング方法。
【請求項3】
前記切断歯部材は、前記把持部本体又は前記レバーに収容される収容位置と、前記把持部本体又は前記レバーから突出する切断位置とに変位可能であり、
前記切断歯部材を前記切断位置に変位させ、この切断歯部材と前記把持部本体又は前記レバーとで前記カートリッジ本体を挟み付け、このカートリッジ本体を回転させることにより前記カートリッジ本体の後側を切断する、ことを特徴とする請求項2記載のコーキング方法。
【請求項4】
筒状のカートリッジ本体、このカートリッジ本体の前端部に設けられたノズル部及びこのカートリッジ本体内に配置されたスライド底部を有し、前記カートリッジ本体内にコーキング材が収容されているコーキングカートリッジを装着し、前記ノズル部から前記コーキング材を放出させるコーキングガンであって、
前記コーキングカートリッジを装着するためのカートリッジ装着部と、このカートリッジ装着部に装着された前記コーキングカートリッジの前記スライド底部を押して前方にスライド移動させる押圧ピストンと、この押圧ピストンを支えるピストンロッドと、コーキングガンを手で支えるための把持部と、を備え、この把持部が、把持部本体及び前記ピストンロッドを作動させて前記押圧ピストンを前進させるレバーを有していて、
前記カートリッジ装着部は、後側が切断された前記カートリッジ本体に対応する長さを有し、
前記把持部には、前記カートリッジ本体の後側を切断する切断歯部材が設けられている、ことを特徴とするコーキングガン。
【請求項5】
前記切断歯部材は、前記把持部本体又は前記レバーに収容される収容位置と、前記把持部本体又は前記レバーから突出する切断位置とに変位可能であり、
前記切断歯部材を前記切断位置に変位させ、この切断歯部材と前記把持部本体又は前記レバーとで前記カートリッジ本体を挟み付け、このカートリッジ本体を回転させることにより前記カートリッジ本体の後側を切断できるように構成されている、ことを特徴とする請求項4記載のコーキングガン。
【請求項6】
前記押圧ピストンは前記ピストンロッドの前端部に取り外し可能の取り付けられていて、前記押圧ピストンを取り外すことにより、前記ピストンロッドの前端部を、前記コーキングカートリッジの前記スライド底部を後端側に押し戻す押し戻し部として形成できる、ことを特徴とする請求項4又は5記載のコーキングガン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−47422(P2013−47422A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−186238(P2011−186238)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(511210176)株式会社神奈川総合建築サービス (1)
【Fターム(参考)】