説明

コークスの熱間反応後粉率測定方法及びコークスの熱間反応後粉率測定装置

【課題】コークスが高炉内で受ける挙動をより的確に反映したコークスの熱間反応後粉率の測定方法および測定装置を提供する。
【解決手段】所定の粒度に粒度調整したコークスの所定量Aを反応容器内に装入し、反応容器内を所定の温度範囲を所定の昇温速度で加熱すると共に、当該所定の温度範囲において、該反応容器内にCOとCOの容量比率が高炉内ガスのそれと同じ範囲内にあるCOとCOとからなる反応ガスを一定流量で流し、かつ、反応容器内のコークに所定の大きさの衝撃エネルギーを与えながら、コークスと反応ガスとを反応させ、反応後に残留する粉コークスの重量Bから下式<1>により定義される熱間反応衝撃後残留粉率(%)を測定する。
熱間反応衝撃後残留粉率α(%)=(B/A)×100 <1>
但し、A:装入したコークスの重量(kg)
B:反応後に残留した粒径6mm未満の粉コークスの重量(kg)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コークスの熱間反応後粉率測定方法及びコークスの熱間反応後粉率測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高炉による銑鉄の製造においては、その上部から鉄鉱石や焼結鉱などの鉄源及び還元剤であるコークスなどを装入し、炉の下部の羽口から熱風を吹き込んで、生じた還元ガスにより鉄鉱石を還元し、溶解する一連の反応を行わせて銑鉄を製造するものである。還元剤として使用されるコークスの性状は高炉操業に直接影響を与えることから、所定のコークス品質を確保するために多大な関心が払われている。
このコークス品質の中でも、特にコークスの強度が重要である。コークスの強度が小さいと高炉内でコークスの粉化が起こり、還元ガスの適正な流通、溶融した銑鉄の円滑な流下などが阻害され、高炉操業上に大きなトラブルを引き起こすからである。
近年、高炉操業におけるコークスの機能に関連してコークスの熱間性状が重視されるようになり、コークスの高炉での挙動と関連して、コークスの反応性に関係する熱間での強度が注目されている。
【0003】
コークスは、複数種類の石炭(原料炭)を配合して配合炭とし、この配合炭をコークス炉に装入して乾留することによって製造されている。従って、コークスの品質を所要のものとするには、配合炭とする際の各種原料炭の配合比率の管理(配合管理)が基本となるが、コークスの強度の確保に関しては、この配合炭の配合管理のほかに、コークス炉での乾留温度、乾留時間、充填密度などコークス炉における操業管理、或いは石炭の粒度、水分、組成など原料炭の事前管理などがある。
【0004】
コークスの強度に関しては、ドラムインデックス(DI)があるが、これはコークスの一般的な強度であり、機械的な荷重に対する特性を表すものとして意味がある。
一方、高炉に装入後の挙動を考慮し、コークスの反応性を含めた強度を評価する方法として、熱間反応後強度(小型CO反応後強度、CSR)がある。これは、規定の条件下でCOと反応させた後の強度を測定するものであり、高炉操業におけるコークス品質の重要な指標であるとされている。
このCSRの測定方法は、特許文献1に記載されているように、所定の粒度範囲に試料調整されたコークス試料を1100℃の温度でCOガスと一定時間反応させ、反応後のコークス試料を特定の試験装置に装入し、一定回転数(例えば、600回転)回転させた後、目開き9.52mmの篩により篩い分け、篩上に残るコークス重量の、試験装置に投入した反応後のコークス試料の重量に対する割合を上記熱間反応後強度(小型CO反応後強度、CSR)としているものである。(以下、本明細書においては、この試験をCSR試験とも称する)
すなわち、CSRは、CO2ガスと反応させた後のコークスが、特定の試験装置での回転によっても破壊されることなく残留している割合を示しており、CO2反応後のコークス強度を示す指標とされている。
このCSRが高いほどコークス強度が大きいことであり、言い換えれば、CSRが低い場合は、CO反応後に粉の発生量が、多くなることを意味し高炉の操業にとって好ましくないということがいえる。
なお、上記試験において、CO反応後のコークス試料の重量のCO反応前のコークス試料の重量に対する割合をCO反応性(CO反応率、小型CO反応性、CRI)としている。
通常、このCRIとCSRとは、高度な一次の負の相関関係にあることから、CRIを制御することによってCSRを制御している。通常のコークスの製造において、複数の銘柄の原料炭からなる配合炭において、配合する石炭の銘柄や配合比率を変更するのは、このCRIを変更するものであり、これによってCSRを制御していることになる。
【0005】
【特許文献1】特開平4−256853号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、高炉操業では、現在、上述の熱間反応後強度CSRをコークス強度の管理指標の一つとして使用しているが、このCSRにおいても以下のような問題がある。
すなわち、CSRは、1100℃で一定時間反応させた後のコークス強度により評価するものであるが、実際には、コークスは、高炉内で温度条件が変化する中でCOと反応しながら衝撃を受ける。また、コークスは、温度条件によって反応形態が異なり、より高温下ではコークス表面に反応が集中し、一方、低温下ではコークスの内部まで反応が進行する状況となる。
表面の反応性を高めた高反応性コークスの場合でも、同様の状況であると考えられ、高反応性コークスであるがゆえに反応が表面から集中的に進行し、かえってコークスの内部にまで進行し難いという状況が考えられる。
また、強度が同じであっても、通常のコークスと高反応性コークスのように、反応性の異なるコークスが装入されて粉化した場合、粉化したコークスの反応性もそれぞれ異なるため、高炉内における粉コークスの蓄積度合いも異なるものと考えられる。従って、このように、反応温度やコークスの反応性の違いを含めたコークスの反応後の粉率を評価することが高炉操業上重要である。
しかしながら、上述のように、CSRでは、このような点を十分に反映した評価方法とはなっていない。
本発明は、反応する温度条件が変化し、かつCOと反応しつつ衝撃が加えられるというコークスが高炉内で受ける挙動をより的確に反映したコークスの熱間反応後粉率の測定方法およびその測定装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためなされたものであって、その要旨とするところは以下のとおりである。
(1)所定の粒度に粒度調整したコークスの所定重量Aを反応容器内に装入し、反応容器内を所定の温度範囲を所定の昇温速度で加熱すると共に、当該所定の温度範囲において、該反応容器内にCOとCOの容量比率が高炉内ガスのそれと同じ範囲内にあるCOとCOとからなる反応ガスを一定流量で流し、かつ、反応容器内のコークに所定の大きさの衝撃エネルギーを与えながら、コークスと反応ガスとを反応させ、反応後に残留する粉コークスの重量Bから下式<1>により定義される熱間反応衝撃後残留粉率(%)を測定することを特徴とするコークスの熱間反応後粉率の測定方法。
熱間反応衝撃後残留粉率α(%)=(B/A)×100 <1>
但し、 A:装入したコークスの重量(kg)
B:反応後に残留した6mm未満の粉コークスの重量(kg)
(2)前記装入するコークスの粒径を20±1mmとすることを特徴とする(1)記載のコークスの熱間反応後粉率測定方法。
(3)前記所定の温度範囲を、800〜1300℃とすることを特徴とする(1)または(2)記載のコークスの熱間反応後粉率測定方法。
(4)前記800〜1300℃の温度範囲の昇温速度を5〜15℃/sとすることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載のコークスの熱間反応後粉率測定方法。
(5)前記付与する衝撃エネルギーを2000〜4000Jとすることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載のコークスの熱間反応後粉率測定方法。
(6)前記反応ガスの組成をCO:0〜100容量%、CO:100〜0容量%とすることを特徴とする(1)〜(5)のいずれか1項に記載の熱間反応後粉率測定方法。
(7)コークス試料を収容し、反応ガスが通過可能な反応管と、該反応管を加熱する加熱装置と、反応管を支持し、かつ反応管に鉛直方向の衝撃を与える衝撃装置と、反応管に反応ガスを供給する反応ガス供給装置とを備えることを特徴とするコークスの熱間反応後粉率測定装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明のコークスの測定方法および測定装置によれば、高炉に装入されたコークスの挙動を、高炉内においてコークスが受ける反応や衝撃による磨耗などの状況変化をより精度よく反映した状況下で測定することができる。従って、本発明の測定方法により得られた熱間反応衝撃後粉率を指標として用いることにより、高炉内に装入されたコークスの挙動をより的確に管理することができ、より効率的に安定操業を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明者らは、装入されたコークスが高炉内で受けると考えられるi)反応温度が徐々に変化しながら反応が進行するという状況、および、ii)COと反応しつつ衝撃も加わるという状況、をより的確に反映したコークスの熱間反応後粉率の測定方法を検討した。
その結果、コークスが反応する温度範囲を所定の昇温速度で昇温させることにより、高炉内での反応温度が変化する状況を再現し、一方、反応容器に衝撃を加えることによってコークスに衝撃を付与し、COとコークスが衝撃を受けつつ反応するという状況を再現し、或いは更に、コークスと反応させる反応ガスの組成を高炉ガスのCOとCOの組成に近いものとして反応させ、反応後、装入したコークスの重量A(kg)に対する反応後の所定の粒径未満のコークス粉の発生重量B(kg)の比率を、熱間反応衝撃後粉率(α)(%)として評価することを見出したものである。
すなわち、αは、コークスを高炉内に装入した場合に、どの程度のコークスが粉として蓄積されるかということを示す指標である。本発明のコークスの熱間反応衝撃後粉率は、上述のように高炉に装入されたコークスの挙動をより実態に近い状態で反映させた指標であるといえる。以下、本発明の測定方法による粉率をCRS、後述する測定装置をCRS試験装置とも記す。
【0010】
図1は、上述の熱間反応衝撃後粉率αを測定するための装置の一例の構成を示す模式図であり、(a)は側面概要図、(b)は、装置の正面概要図である。
また、図2は、図1(b)の詳細断面図である。
図1(a)(b)および図2に示すように、この測定装置1は、コークス試料を収納しハン反応ガス反応させる反応容器としての反応管2と、反応管2を加熱する加熱装置3と、反応管を支持し、反応管に鉛直方向の衝撃を与える衝撃装置4と、反応管2に反応ガスを供給する反応ガス供給装置(図示しない)とから基本的に構成されている。
なお、図1(a)に示すように、電気系統制御装置23には、衝撃装置4のカム駆動装置22を備えるとともに、熱電対などの反応管内の測温手段(図示せず)の結果に基いて加熱装置3の出力、およびカム駆動装置22の回転数を制御する制御機能を有している。
【0011】
反応管2は、外反応管2aと内反応管2bとから構成されており、内反応管2bは外反応管2a内に収納され、両反応管2a,2bは、蓋体5により内反応管2aの外面と外反応管2bの内面との間に間隙15を有して固定されている。
外反応管2aは、底部6aを有し、頂部は上記蓋体5により閉塞されている。外反応管の側面には反応ガス供給装置(図示せず)からの反応ガスを導入するための反応ガス導入管7が設けられている。
【0012】
内反応管2bは反応ガスを導入するための通気孔8を備えた底部6bを有しており、その頂部は上述の蓋体5により閉塞されているが、蓋体5の内反応管の中央部に相当する位置には、反応後の反応ガスを排出する排気孔9が設けられており、この排気孔9は後述する連結体の排気管10に連結されている。
内反応管2b内には、その軸方向の中間部に試料コークス14を装入する試料室11が設けられている。試料室11と底部6bとの間には、通気孔8を有する隔壁13が設けられ、底部6bと隔壁13によって形成される空間には緩衝体12として機能するアルミナ球が装入されており、下部から供給された反応ガスが、反応室内に均一に供給されるようになっている。
【0013】
反応ガスは、反応ガス供給装置(図示しない)から反応ガス導入管7を経て内反応管と外反応管の間隙15に供給され、内反応管の底部6bの通気孔8から、緩衝体12の間を通って、試料室11に供給される。試料室11の試料コークス14と接触した後、蓋体5の排気孔9、後述する連結体の排気管10を経て系外に排出される。
【0014】
加熱装置3を収納する恒温槽16の上方には、連結体17と、弾性支持部18と、偏心カム体20とから構成される衝撃装置4が設けられており、反応管2は衝撃装置の連結体17に連結され衝撃装置の弾性支持部18に支持されている。
【0015】
連結体17は、その上部及び下部の側面から左右に水平方向に伸びる上下の桿体17u、17l、17u、17lを有し、連結体の上端部には平坦な頂面17aが形成され、下端部には反応管を接続支持するための接続部17bが形成されている。
【0016】
弾性支持部18は、対向して配置された断面コ字状の左右の支持体19、19と、この左右のそれぞれの支持体19、19に上下に対向して設けられた左右の上バネ18u,18uおよび下バネ18l、18lとから構成され、上記連結体17の左右の上部桿体17u,17u及び、左右の下部桿体17l,17lは、上バネ18u,18uの下端と下バネ18l、18lの上端との間で支持されている。
【0017】
連結体17の上方には、偏芯カム体20が設けられている。この偏芯カム体20の回転軸21は反応管2の管軸と直交する面上に配置され、カム駆動装置22に連結されている。偏芯カム体の外周面は連結体17の頂面17aに接触し、偏心カム体の回転動作により押し下げ量が変化するようになっている。
この押し下げ量の変化とバネの反発作用により、後述するように反応管に鉛直方向の衝撃を与え、試料コークスに衝撃エネルギーを与えることができる。
バネの弾性度、偏心カム体の偏心度は、付与する衝撃エネルギーの所要に応じて選択することができる。
【0018】
なお、連結体の接続部17bは、試料コークス14の装入や試験後のコークスの取り出しができるように、蓋体5に対して着脱自在としている。
また、加熱装置3は限定するものではないが、例えば、反応管の周囲に誘導加熱コイル或いは抵抗発熱体を配置することが好ましい。更に、反応管及び加熱装置を含む外周に、適切な断熱、保温手段を設けて、恒温槽16とし、反応温度を安定に保つためことが好ましい。
【0019】
内反応管、外反応管の内径、および長さは、装入したコークス試料が衝撃を受けた際に、移動できる空間を確保することも勘案して、それぞれ70mm、90mm、長さは880mm、910mmとすることが好ましい。すなわち、反応管の径を大きくしすぎると反応管の半径方向に温度分布が生じてしまうので好ましくなく、また、小さくしすぎると反応管の内側壁とコークスとの接触面におけるガス流れの影響が大きくなってしまう。このため、試料コークスの粒径を勘案し、コークス同士が半径方向に適度に接し、且つ温度分布が均一となるように、好ましくは、内反応管の内径を70mmとするものである。
また、反応管の長さは、短すぎると加熱領域と反応管の上面とが近接するため、反応装置の上部にある駆動装置や衝撃装置などへの熱影響が大きくなり、一方、長すぎると装置自体が大型化して装置の製作や運転に費用がかかりすぎることになる。このため880〜910mm程度とするのが好ましい。
【0020】
ここで、衝撃装置の衝撃動作について説明する。
衝撃装置4の偏芯カム体20がカム駆動装置22により図示の矢印の方向に回転すると、連結体の頂面17aが偏芯カム体の外周面Xの位置で接触し、徐々に連結体17を押し下げ、偏芯カムの最大径となる外周面Yの位置の時に最下位置まで押し下げる。このとき連結体17の下杆体17lは下バネ18lを押し下げ、一方、上杆体17uと上バネ18uの下端との間は間隙が形成される。次いで、偏芯カム体は最小径である外周面Zが連結体の頂面17aと接触する状態となるが、少なくとも偏芯カム体の外周面YとZの位置における半径差の分だけ、連結体は下バネ18lにより急激に鉛直上方に反発される。これによって連結体の接続部17bで連結されていた反応管2も急激に上方に移動し、反応管内に装入されているコークスに鉛直方向の衝撃を与えることになる。この上方への反発による衝撃は、上部にある上バネ18uに上杆体17uが接触することにより緩衝され、上下に反跳を繰り返して減衰し、偏心カム体が回転して再びXの位置で連結体17の頂面17aと接触する時点で停止する。
【0021】
試料に付与する衝撃エネルギーは、高炉炉内でコークスに加わる衝撃エネルギーを想定して決めればよく、特に限定するものではないが、前述のように、従来、コークスの熱間反応後粉率を測定する方法として、所定の粒度範囲に試料調整されたコークス試料を1100℃の温度でCOガスと一定時間反応させ、反応後のコークス試料を特定の試験装置(I型ドラム試験装置)に装入し、一定回転数回転させた後、所定の目開きの篩により篩い分け、篩上のコークスの、投入したコークスの反応後の重量に対する比率により熱間反応後強度を評価する方法(CSR試験)がある。
したがって、本発明の測定方法における衝撃エネルギーを、この従来のCSR試験のI型ドラムでの衝撃エネルギーと対応するように設定することも好ましい。
【0022】
すなわち、先ず、粒径を20±1mmに調整した試料コークスを2組準備し、この2組の試料コークスを同じ試験条件(反応温度:1100℃、反応ガス組成:CO:100%で、20l/min供給、反応時間:2時間)でCSR試験装置において反応させる。このCSR試験装置によって得られた反応後の2組の試料コークスを、1組はI型ドラムに、他の1組は本発明のCRS試験装置、但し、反応ガスの供給、加熱は行わない、に装入し、それぞれ所定の回転数(I型ドラム)、所定の衝撃付与回数(CRS試験装置)毎に試料を取り出し、10mm超、および6mm未満のコークスの重量を測定し、10mm超の塊率、および6mm未満の粉率を求める。
このようにI型ドラム及びCRS試験によって得られた各回転数、衝撃回数毎の塊率および粉率を対応させることによって図3に示すような関係を得ることができる。
【0023】
図3から判るように、I型ドラムの回転数と本発明の測定装置における衝撃回数(偏心カム体の回転数)との間には、一定の相関関係が得られ、評価する粒径によっても影響されない。従って、これらの関係を確認しておくことにより、本発明の評価方法において付与すべき衝撃エネルギー、言い換えれば、偏心カム体の回転数を設定することができる。
なお、これらの相関関係は、測定装置の衝撃装置のバネの弾性率、偏心カム体の偏心量、反応管の重量(反応管の重量、装入試料の重量など)などによっても左右されるので、測定装置に応じて予め求めておく必要がある。
【0024】
ところで、上述のように、衝撃エネルギーは、高炉内にてコークスが受ける衝撃エネルギーを想定して決定すればよいが、通常、2000〜4000(J/kg)と推定されているので、この範囲とすることが好ましい。
一方、上述の従来のCSR試験で使用されるI型ドラムは、1回転で与える衝撃エネルギーは11.1(J/kg)とされているので、180〜360回転程度に相当する。この回転数は、上述の図3の関係から、本発明のCRS測定装置では580〜1100回の衝撃に相当するエネルギーとなる。
【0025】
次に、上述の実施形態の測定装置を用いて本発明のコークスの熱間反応後粉率の測定方法について説明する。
本発明のコークスの熱間反応後粉率測定方法は、まず、所定の粒度に粒度調整した試料コークスを所定量A(kg)を内反応管2bに装入し、これを外反応管2a内に挿入した後、内外反応管の上端を蓋体5により閉じ、連結体17の接続部17bに接続する。
ここで、試料コークスの粒度や反応管への装入量は、特に限定するものではないが、粒度は通常使用される範囲の粒度とすればよく、また、装入量は反応管の大きさ、反応速度などを勘案して決めればよい。前述のように、従来の試験方法であるCSR試験との関連が判るようにする観点から好ましく、粒度は20±1mmであり、装入量は、200gである。
【0026】
次に、連結体17の上下の桿体17u,17lを衝撃装置の上下のバネ18u,18lの間に設置、連結体17と反応管2を下バネ18lで支持する共に、反応管を加熱装置3または恒温槽16内に装入する。このとき、偏芯カム体20の外周面は連結体17の頂部17aに接触しない位置としておくことが好ましい。
【0027】
加熱装置または恒温槽により、反応管内の温度を所定の測定開始温度に上昇させる。コークス試料を反応させる温度範囲は、高炉内でコークスが曝される温度に相当する範囲とすればよく、特に限定するものではないが、コークスの反応性を評価する際に採用されている800(開始温度)〜1300℃(終了温度)とすることが好ましい。
【0028】
次に、反応ガス導入管7にガス供給装置を接続する一方、排気孔を外部への排気管に接続し、反応管内が所定の開始温度に到達した後、所定の組成とした反応ガスを一定流量で反応管内に導入し、コークスと反応ガスとの反応を開始させる。
このとき、反応ガスの組成は、高炉内でコークスが接触する高炉ガス中のCOおよびCOの容積比率(%)に相当するものとすれば良い。通常の高炉操業での高炉ガス組成であるCO:100〜0容量%、CO:0〜100容量%とすることが好ましい。
また、反応ガスは一定流量で導入するが、高炉内でのガスの流量を想定して、20l/minとすることが好ましい。
なお、この温度範囲における昇温速度は、高炉内でのコークスの昇温速度を想定して設定すればよく、好ましくは、5〜15℃/minである。電気系統制御装置23により熱電対などの反応管内の測温手段(図示せず)の結果に基いて加熱装置の出力を調整して制御できる。
【0029】
このように、反応ガスを導入してコークス試料との反応を開始させると共に、さらに、カム駆動装置22を駆動させて偏芯カム体20を回転させ、反応管2に、すなわち反応管内のコークスに、所定の衝撃を与える。この付与する衝撃エネルギーは、高炉内でコークスに付与される衝撃エネルギーを想定したものであり、高炉の状況に応じて設定すればよいが、前述のように、CSR試験におけるI型ドラム試験機での結果との相関を考慮して設定することができ、例えば、本発明の測定装置における偏芯カム体の回転数を設定することが好ましい。この衝撃エネルギーは、コークスの反応開始から反応終了までの所定の温度範囲の間、すなわち昇熱期間中に付与されるが、この間においてほぼ均等な間隔で与えるようにすることが好ましい。たとえば、800℃〜1300℃の温度範囲を5℃/minで昇温し、この間に600回の衝撃エネルギーを与える場合は、600/100=6回/minの割合で衝撃を与えるよう測定装置の回転数を調整する。
【0030】
以上のように、所定のCOおよびCO容量分率を有する反応ガスを反応管に供給し、所定の衝撃を与えながら、上記所定の開始温度から終了温度までの温度範囲を所定の昇温速度で昇温させ、コークス試料と反応ガスを反応させる。反応終了後、冷却して反応管から残留しているコークスを取り出し、6mmの篩により、篩下、すなわち粒径が6未満の粉コークス量B(kg)を測定する。
発明者らは、各種のコークスについて熱間反応後の粒度分布を調査する中で、熱間反応後のコークスの粒度分布は、粒径が6mm未満の粉と9.52mm超の塊がほとんどであり、粒径6mm〜9.52mmの中間粒径のものはほとんど認められず、この中間粒径のものは、塊としてカウントしても結果の評価には殆ど影響しないことを知見しており、従って、篩目を6mmとし、6mm未満のものを粉コークスとして測定するものである。
上記A、Bによって、<1>に従って、熱間反応衝撃後粉率α(%)を得ることができる。
すなわち、装入されたコークスに対して、反応温度が変化し、衝撃が加わる中で、CO及びCOを含む混合ガスと反応するという状況が再現でき、このような状況下でのコークスの挙動をより的確に評価することができる。
【実施例】
【0031】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明する。
実施例
異なる品質のコークスA〜Fを20±1mmに粒度調整した後、200gを採取し、本発明のCRS装置にてCO:100%、20L/minで800〜1300℃の温度範囲において10℃/minの速度で昇温した後の熱間反応衝撃後粉率αについて評価した。また、昇温の際に与えた衝撃エネルギーは12回転/minで計600回転とした。なお、比較のため、従来のCSR試験も同様に行った。
A〜FのCSRおよびαの測定結果は、表1に示すとおりであり、図4に示した。これらの結果から、コークス反応性が異なり、またCSRが異なる値を持っていても、αがほぼ同一の値を示すものが存在することが確認できる。すなわち、高反応性でCSRが低いものであっても、最終的に高炉内に残留する粉コークスの量が少ないものが存在し、熱間反応衝撃後粉率αの概念によって高炉に装入するコークスの品質を評価することが重要であると言える。
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明のコークスの熱間反応後粉率測定装置の一実施形態の構成を示す模式図であり、(a)は側面概要図、(b)は、装置の正面概要図である。
【図2】図1(b)の詳細断面図である。
【図3】本発明の測定装置における衝撃付与回数とI型ドラム試験機の回転数との関係を示す図である。
【図4】実施例における各種コークスのCSRとα(%)との関連を示す図である。
【符号の説明】
【0033】
1 測定装置
2 反応管
2a 外反応管
2b 内反応管
3 加熱装置
4 衝撃装置
5 蓋体
6a 底部
6b 底部
7 反応ガス導入管
8 通気孔
9 排気孔
10 排気管
11 試料室
12 緩衝体(アルミナ球)
13 隔壁
14 試料コークス
15 間隙
16 恒温槽
17 連結体
17a 連結体の頂面
17b 連結体の接続部
17u 連結体の上桿体
17l 連結体の下桿体
18u 上バネ
18l 下バネ
19 支持体
20 偏芯カム体
21 回転軸
22 カム駆動装置
23 電気系統制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の粒度に粒度調整したコークスの所定重量Aを反応容器内に装入し、反応容器内を所定の温度範囲を所定の昇温速度で加熱すると共に、当該所定の温度範囲において、該反応容器内にCOとCOの容量比率が高炉内ガスのそれと同じ範囲内にあるCOとCOとからなる反応ガスを一定流量で流し、かつ、反応容器内のコークに所定の大きさの衝撃エネルギーを与えながら、コークスと反応ガスとを反応させ、反応後に残留する粉コークスの重量Bから下式<1>により定義される熱間反応衝撃後残留粉率(%)を測定することを特徴とするコークスの熱間反応後粉率の測定方法。
熱間反応衝撃後残留粉率α(%)=(B/A)×100 <1>
但し、A:装入したコークスの重量(kg)
B:反応後に残留した粒径6mm未満の粉コークスの重量(kg)
【請求項2】
前記装入するコークスの粒径を20±1mmとすることを特徴とする請求項1記載のコークスの熱間反応後粉率測定方法。
【請求項3】
前記所定の温度範囲を、800〜1300℃とすることを特徴とする請求項1または2記載のコークスの熱間反応後粉率測定方法。
【請求項4】
前記800〜1300℃の温度範囲の昇温速度を5〜15℃/sとすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のコークスの熱間反応後粉率測定方法。
【請求項5】
前記付与する衝撃エネルギーを2000〜4000Jとすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のコークスの熱間反応後粉率測定方法。
【請求項6】
前記反応ガスの組成をCO:0〜100容量%、CO:100〜0容量%とすることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱間反応後粉率測定方法。
【請求項7】
コークス試料を収容し、反応ガスが通過可能な反応管と、該反応管を加熱する加熱装置と、反応管を支持し、かつ反応管に鉛直方向の衝撃を与える衝撃装置と、反応管に反応ガスを供給する反応ガス供給装置とを備えることを特徴とするコークスの熱間反応後粉率測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−309672(P2007−309672A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−136338(P2006−136338)
【出願日】平成18年5月16日(2006.5.16)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】