説明

コークス炉の排ガス処理方法及び処理設備

【課題】石炭装入時に、コークス炉の装入口から流出する排ガスに含まれるベンゼン等の芳香族化合物が大気中に放散されるのを防止することができるコークス炉の排ガス処理方法及び処理設備を提供すること。
【解決手段】コークス炉の炭化室の装入口から流出する排ガスに、加熱用排ガスを混合して加熱した後、バグフィルター式の集塵機により排ガス中の粉塵のほぼ全部および芳香族化合物の少なくとも一部を除去し、次いで活性炭充填層により排ガス中の芳香族化合物の残部を吸着除去することを特徴とするコークス炉の排ガス処理方法と、コークス炉ガス捕集手段と、コークス炉ガス捕集手段で捕集された排ガスを除塵処理するバグフィルター式の集塵機と、排ガス中の芳香族化合物を除去する活性炭吸着塔と、コークス炉の煙道からバグフィルター式の集塵機の上流側へのガス流路とを備えたことを特徴とするコークス炉の排ガス処理設備を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コークス炉から流出する排ガスに含まれるベンゼン等の芳香族化合物が大気中に放散されるのを防止することができるコークス炉の集塵排ガス処理方法に関するものであり、特に活性炭を用いるコークス炉の排ガス処理方法及び処理設備に関する。
【背景技術】
【0002】
コークス炉内で発生するコークス炉ガスは炉内に設置された上昇管を通って排ガス処理設備に送給され、粉塵を除去された後、脱硫処理を経て種々の用途に再利用される。このコークス炉ガス中には、芳香族成分が5〜10mg/Nm3含まれており、例えばコークス炉ガス中に含有されるベンゼン(BTX)は、化成工程により製品として回収され、各種の用途向けに販売されている。
【0003】
この芳香族成分が大気中に放散されることは、臭気発生の原因となるとともに、環境に悪影響を与える懸念がある。したがってコークス炉の炉蓋、装入口、煙突、集塵機等にはガス漏れ防止対策が行なわれている。これらの対策に加えて、さらに、脱硫処理の際の湿式脱硫処理設備の酸化装置から排出される排ガスに含まれる芳香族成分の分解および無害化も行なわれている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
特許文献1には、コークス炉から発生するコークス炉ガスを集塵して脱硫設備等で浄化する際に、芳香族成分である芳香族化合物(たとえばベンゼン等)を除去することができるコークス炉ガス処理における廃ガス浄化方法及び装置が開示されている。特許文献1に記載の技術は、コークス炉ガスの脱硫装置から排出する排ガスを触媒と反応させることで、芳香族化合物を分解除去するものである。
【0005】
上記のようにコークス炉においては芳香族化合物が炉蓋や装入口から漏れないように対策が採られ、脱硫処理時の排出ガスについても芳香族化合物が含有されないように配慮されているが、石炭装入時に開放された装入口からのコークス炉ガスの漏洩の問題が残されている。すなわち、装炭車を用いて装入口から炭化室内に石炭を装入する際に、装入口から流出する排ガスは上昇管に導入されず、大気中に放散されてしまう。
【0006】
このような芳香族成分が大気中に放散される問題を解決するために、装入口の周りを囲むように集塵フードを設置し、流出ガスを補足して処理するコークス炉装入車集塵装置が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2003−10641号公報
【特許文献2】特開平4−346810号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献2に記載の技術は、漏洩ガスを集塵して浄化した後は大気中に放散するものであり、放散されるガス中にも芳香族化合物がわずかながら含まれる結果となるものである。石炭装入時に開放された装入口からの排ガスの流出は発生量が多いため、特許文献1等に記載のような従来の排ガス処理方式で芳香族化合物を除去することはコスト高となり困難である。
【0008】
したがって本発明の目的は、このような従来技術の課題を解決し、石炭装入時に、コークス炉の装入口から流出する排ガスに含まれるベンゼン等の芳香族化合物が大気中に放散されるのを防止することができるコークス炉の排ガス処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題を解決するための本発明の特徴は以下の通りである。
(1)コークス炉の炭化室の装入口から流出する排ガスの処理方法であって、前記排ガスに加熱用排ガスを混合して加熱した後、バグフィルター式の集塵機により前記排ガス中の粉塵のほぼ全部および芳香族化合物の少なくとも一部を除去し、次いで活性炭充填層により前記排ガス中の芳香族化合物の残部を吸着除去することを特徴とするコークス炉の排ガス処理方法。
(2)排ガスがコークス炉に石炭を装入する際に流出した排ガスである場合には、前記排ガスを活性炭充填層に導入し、排ガスがコークス炉に石炭を装入していない時に流出した排ガスである場合には、活性炭充填層をバイパスすることを特徴とする(1)に記載のコークス炉の排ガス処理方法。
(3)コークス炉の炭化室の装入口から流出する排ガスの処理設備であって、前記排ガスを捕集するコークス炉ガス捕集手段と、該コークス炉ガス捕集手段で捕集された排ガスを除塵処理するバグフィルター式の集塵機と、該集塵機の下流側に設けられ、排ガス中の芳香族化合物を除去する活性炭吸着塔と、コークス炉の煙道から前記バグフィルター式の集塵機の上流側へのガス流路とを備えたことを特徴とするコークス炉の排ガス処理設備。
(4)集塵機と活性炭吸着塔との間に排ガス切替え装置を設け、排ガスが前記活性炭吸着塔をバイパス可能としたことを特徴とする(3)に記載のコークス炉の排ガス処理設備。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、コークス炉から流出する排ガスに含まれるベンゼン等の芳香族化合物が大気中に放散されるのをほぼ完全に防止することができ、また、安価に排ガス処理を行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明者は石炭を装入する際に、装入口から流出する排ガス中の芳香族化合物を除去する方法として下記(a)、(b)について検討した。
【0012】
(a)コークス炉の炭化室に石炭を装入する際に装入口から流出する排ガスは、通常、炭化室の上部を走行する装炭車集塵機(フード付)により装入口付近のガスが捕集され、そのガスは下流側に備えられたバグフィルター式の集塵機により除塵処理される。排ガス中の芳香族化合物は粉塵にもある程度付着するので、除塵処理のみでも排ガス中のベンゼン等の芳香族化合物をある程度除去することが可能である。さらに、バグフィルター式の集塵機に粉末活性炭を吹込むことによりこの除去効率は高くなる。しかし、芳香族化合物を完全に除去することは困難である。
【0013】
(b)排ガスから芳香族化合物を除去するために、活性炭を充填した活性炭充填層を有する活性炭吸着塔を用いることも有効である。排ガスが活性炭吸着塔の活性炭充填層を通過する過程で芳香族化合物が活性炭に吸着されて除去される。しかし、除去すべき芳香族化合物の量が多い場合には、多量の活性炭が必要となり、活性炭の単価が高いため、維持コストがかかる。また、コークス炉の排ガスに用いる場合には大規模な活性炭吸着塔を建設する必要があり、建設費も上昇する。さらに、排ガス中の粉塵濃度が高い場合は、活性炭吸着塔内の活性炭層の閉塞が発生し、運転ができなくなる。
【0014】
したがって、コークス炉の排ガスから芳香族化合物を十分に除去するためには、(a)、(b)の方法は単独で用いるとどちらも不十分である。これに対して本発明者はさらに検討を重ね、上記(a)、(b)の方法を組み合わせることで、芳香族化合物を十分に除去可能であることを見出した。すなわち、バグフィルター式の集塵機と、その後段に配置した活性炭吸着塔との組み合わせにより、コークス炉の炭化室の装入口から流出する排ガス中の芳香族化合物濃度をほぼ0とすることを可能としたものであり、コークス炉に石炭を装入する際に炭化室の装入口から流出する排ガスを、バグフィルター式の集塵機により前記排ガス中の粉塵のほぼ全部および芳香族化合物の少なくとも一部を除去し、次いで活性炭充填層により前記排ガス中の芳香族化合物の残部を吸着除去するコークス炉の排ガス処理方法である。
【0015】
バグフィルター式の集塵機の機能は、排ガス中に含まれる石炭の微粒子やタール分を除去することに加えて、芳香族化合物の一次除去を行なうものである。バグフィルター式の集塵機の除去効率は高いので、石炭の微粒子等の粉塵はほぼ全部(1mg/m3未満)除去できる。しかし、この段階ではまだ芳香族化合物の除去は十分ではない。また、バグフィルター式の集塵機は活性炭吹込み装置等を有し、芳香族化合物の除去率が低下した場合はバグフィルターに新たな粉末活性炭を付着させる方式のものを用いることもできる。
【0016】
活性炭吸着塔においては、排ガスが活性炭吸着塔内の活性炭層を通過する過程で芳香族化合物は活性炭に吸着される。前段として、バグフィルター式の集塵機により排ガス中の芳香族化合物の量が低下しているため、大規模な活性炭吸着塔設備を建設しなくとも排ガス中の芳香族化合物の量をほぼ0の状態にまで低下させることが可能である。また、バグフィルター式の集塵機により排ガス中の微粒子等が除去されているので、活性炭層の閉塞が発生し難く、長期間の排ガス処理操業を安定して行なうことが可能である。
【0017】
一方で、コークス炉炭化室の装入口から流出する排ガスは水分を含んでおり、排ガスの温度が低い場合は、排ガス中に含まれる水分が活性炭の表面で凝結する。この水分の凝結に起因して活性炭吸着塔の活性炭の細孔が覆われて、芳香族化合物の吸着を阻害し、芳香族化合物の除去率が低下する場合がある。この問題を解決するために、活性炭吸着塔で芳香族化合物の除去を行なう排ガスは加熱処理を行い、加熱により相対湿度を下げた後に活性炭吸着塔の活性炭層を通過させて芳香族化合物の除去を行なうことが望ましい。活性炭吸着塔での排ガスの温度は、60℃程度とすることが好ましい。
【0018】
このような排ガスの加熱を行なうためには、通常は排ガスの昇温のための熱風発生炉が必要となるが、このためには高価な昇温用の燃料が必要となり、排ガス処理のコストが上昇する。このようなコストの上昇を抑えるために、本発明では高温の廃ガス(コークス炉炭化室の装入口から流出する排ガス以外の廃ガスであり、以下「加熱用排ガス」と記載する。)利用について検討した。例えば、製鉄所では熱風炉や加熱炉を多数使用しているので、このような設備で発生する高温のガスを、コークス炉炭化室の装入口から流出する排ガスに混合して加熱を行なうこととした。
【0019】
加熱用排ガスは芳香族化合物やスス・粉塵等を含有している場合があり、装入口から流出する排ガスに混合されてそのまま吸着塔に流入されると、活性炭吸着塔内の活性炭層の閉塞が発生し、運転ができなくなる場合がある。そこで予め加熱用排ガスの粉塵等を除去する必要がありコスト高であるが、本発明では加熱用排ガスをバグフィルター式の集塵機の入り側において、炭化室の装入口から流出する排ガスに混合することで、この問題を解決した。加熱用排ガスをバグフィルター式の集塵機の入り側で、炭化室の装入口から流出する排ガスに混合すれば、加熱用排ガスは炭化室の装入口から流出する排ガスとともに除塵処理された後に吸着塔に流入させることができる。これにより、加熱用排ガスの事前処理は不要となる。
【0020】
加熱用排ガスとしては、200℃程度で、発生量が20000Nm3/h程度の高温のガスであれば用いることが可能であり、例えば、熱風炉で発生した余剰ガス、加熱炉の排ガス等を用いることができる。コークス炉煙道の高温排ガスを用いることが特に好ましい。コークス炉煙道の排ガスは200℃程度であり、発生量も十分であり、コークス炉の排ガス処理設備の最も近くで発生する排ガスであるため、熱効率も高く、ガス流路の設置費用も安価であり、低コストで利用できる。
【0021】
本発明は、コークス炉に石炭を装入する際に炭化室の装入口から流出する排ガスを捕集して、排ガスから芳香族化合を、活性炭により除去するものであるが、炭化室の装入口から流出する排ガスの捕集作業は、石炭装入のために装入口の蓋を取る前から開始して、排ガスの流出を防止することが望ましい。また同様に、コークス炉に石炭を装入した後しばらくの間は炭化室の装入口付近の排ガスの捕集作業を継続して排ガスの流出を防止することが望ましい。排ガスの捕集作業中に、石炭が高温の炭化室へ装入されるとベンゼン等の方向族化合物を含有する煙が多量に発生し、装入口から排ガスとして流出する。したがって、コークス炉に石炭を装入するとき以外の排ガス捕集時には排ガスには芳香族化合物はほとんど含まれていないため活性炭充填層による処理を行なう必要はなく、排ガスはそのまま放散することができる。すなわち、コークス炉から流出する排ガスを捕集して排ガスを表面に粉コークスを付着させたフィルターを有するバグフィルター式の集塵機に送給して排ガス中の粉塵および芳香族化合物の少なくとも一部を除去し、次いで、排ガスがコークス炉に石炭を装入する際に炭化室の装入口から流出する排ガスである場合には排ガスを活性炭充填層を通過させることで活性炭充填層に芳香族化合物を吸着させた後、排ガスを放散し、排ガスがコークス炉に石炭を装入していない時に炭化室の装入口から流出する排ガスである場合にはそのまま放散することが好ましい。
【0022】
活性炭吸着塔に充填する活性炭は、大きさが1〜8mm程度の粒状の活性炭を用いる。原料は特に限定されないが、比表面積が大きい程芳香族化合物の吸着量が多くなり、有利である。充填量は芳香族化合物の濃度や要求される寿命等に影響されるが、およそ1000〜5000h-1(空間速度)である。
【0023】
活性炭吸着塔で芳香族化合物を吸着した後の活性炭は再生処理を行い、再利用することが運転コスト上望ましい。再生処理は、無酸素雰囲気で加熱(600〜900℃)して、芳香族化合物を脱離させて行なう。この処理は、専用の施設で行なうことが必要なので、活性炭吸着塔は活性炭の交換が容易な構造とすることが好ましい。例えば、複数の活性炭層を備えた活性炭カートリッジを処理ガス量に合わせて複数台設け、活性炭吸着塔に着脱自在とする構造がある。
【0024】
本発明を図面を用いてより具体的に説明する。
【0025】
図1は本発明の一実施形態の概略を示す説明図である。コークス炉1に装炭車を用いて装入口から石炭を装入する際に、開放された装入口からコークス炉ガスが流出する。集塵フード等のコークス炉ガス捕集装置2を設置して、この流出ガスである排ガスが大気中に放散する前に吸引し、排ガスにコークス炉の煙道7のガスを加熱用排ガスとして混合した後、バグフィルター式の集塵機3に送給して排ガス中の粉塵を除去するとともに芳香族化合物の一部を除去する。このとき、定期的に粉末活性炭をバグフィルター式の集塵機3の上流側に吹き込み、フィルターに粉末活性炭を付着させ、芳香族化合物の除去率を安定させてもよい。加熱され、ほぼ全部の粉塵および一部の芳香族化合物が除去された排ガスは、活性炭吸着塔8に送給され、芳香族化合物が除去される。芳香族化合物(たとえばベンゼン等)が除去された排ガスは、大気中に放散される。コークス炉1への石炭の装入終了後は装入口が閉じられて芳香族化合物が流出しなくなるため、バグフィルター式の集塵機3から送給される排ガスは活性炭吸着塔8をバイパスして煙突5等から放散させることができる。
【0026】
次に、本発明のコークス炉の排ガス処理設備を説明する。
【0027】
コークス炉の排ガス処理設備は、コークス炉に石炭を装入する際に炭化室の装入口から流出する排ガスを捕集するコークス炉ガス捕集手段と、該コークス炉ガス捕集手段で捕集された排ガスを除塵処理するバグフィルター式の集塵機と、該集塵機の下流側に設けられ、排ガス中の芳香族化合物を除去する活性炭吸着塔と、コークス炉の煙道から前記バグフィルター式の集塵機の上流側へのガス流路を備えたものであり、集塵機と活性炭吸着塔との間に排ガス切替え装置を設け、該排ガス切替え装置から煙突へのガス流路を設けることが望ましい。
【0028】
このような本発明のコークス炉の排ガス処理設備を図1を用いて説明する。
【0029】
図1において、2はコークス炉1に石炭を装入する際に炭化室の装入口から流出する排ガスを捕集するコークス炉ガス捕集手段である。地上にはコークス炉ガス捕集手段2から排ガスが供給される表面に粉末活性炭を付着させたフィルターを有するバグフィルター式の集塵機3が設置されている。4は、排ガス通路内に活性炭を吹き込みバグフィルターに粉末活性炭を付着させるための活性炭吹込み装置である。コークス炉の煙道7からバグフィルター式の集塵機3の上流側排ガス通路にガス流路9が設けられている。集塵機3の下流側排ガス通路に、集塵機3を通過した排ガスを切替可能な排ガス切替え装置6を設け、排ガスを放散する煙突5と排ガス中の芳香族化合物を吸着処理する活性炭吸着塔8とに、排ガスを切替え可能としている。
【0030】
本発明によれば、活性炭吸着塔を使用することによりコークス炉から流出する排ガスに含まれるベンゼン等の芳香族化合物が大気中に放散されるのをほぼ完全に防止することができる。また、加熱用排ガスを用いて装入口から流出するコークス炉ガスを加熱するので、非常に低コストで排ガス処理を行なうことができる。
【実施例1】
【0031】
図1に示すものと同様の試験設備を用いてコークス炉の炭化室の装入口から流出する排ガスの処理の試験を行なった。装入口が閉じている時や、石炭装入時以外には排ガスは集塵後に煙突5から放出し、石炭装入時には排ガス切替え装置6を切り替えて活性炭吸着塔に排ガスを送り芳香族化合物の除去処理を行ない、排ガス中のベンゼンの除去率を測定した。ベンゼンの除去率は、活性炭吸着塔8の入口でのベンゼン濃度(活性炭吸着塔処理前のベンゼン濃度)に対する、活性炭吸着塔8の出口でのベンゼン濃度(活性炭吸着塔処理後のベンゼン濃度)の割合とした。装炭時に装入口から流出し、試験装置に吸引した排ガス量は0.7m3/min(標準状態)であり、活性炭吸着塔は5000h-1(空間速度)の規模のものを用いた。ガス流路9を煙道7に接続する替わりに、ガス流路9から、製鉄所内で発生した200℃のコークス炉の排ガスを0.2m3/min(標準状態)で装炭時に装入口から流出する排ガスに混合したところ、吸着塔8での排ガス温度は約60℃であった。
【0032】
図2に、活性炭吸着塔で使用した、活性炭吸着塔に自在に着脱できる活性炭カートリッジ10を示す。図2において矢印はガス流れを示している。ベンゼン濃度の測定結果を図3に示す。
【0033】
図3に示すように、活性炭吸着塔処理により排ガス中のベンゼンは完全に除去されることが分かった。
【実施例2】
【0034】
図1に示すものと同様の設備を用いてコークス炉の炭化室の装入口から流出する排ガスの処理を行なった。装炭時の排ガスの発生量は1200m3/min(標準状態)であった。排ガス中のベンゼン濃度は約20mg/m3(標準状態)であった。コークス炉の煙道の200℃の排ガスを250m3/min(標準状態)で装炭時に装入口から流出する排ガスに混合したところ、吸着塔8での排ガス温度は約60℃であった。バグフィルター式の集塵機3で排ガス処理を行なった後の排ガス中のベンゼン濃度を測定したところ、5〜10mg/m3(標準状態)程度であり、この段階ではベンゼンは十分に除去されていなかった。さらに活性炭吸着塔による排ガス処理を行なったところ、排ガス中のベンゼン濃度は0mg/m3(標準状態)であった。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施形態の概略を示す説明図。
【図2】活性炭吸着塔に取り付ける活性炭カートリッジの説明図。(a)斜視図、(b)ガス流れ方向に平行な方向での縦断面図。
【図3】活性炭吹込み量によるベンゼン除去率の変化を示すグラフ。
【符号の説明】
【0036】
1 コークス炉
2 コークス炉ガス捕集手段
3 集塵機
4 粉末活性炭吹込み装置
5 煙突
6 排ガス切替え装置
7 煙道
8 活性炭吸着塔
9 ガス流路
10 活性炭カートリッジ
11 活性炭層
12 ガス流入側面
13 ガス流出側面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コークス炉の炭化室の装入口から流出する排ガスの処理方法であって、前記排ガスに加熱用排ガスを混合して加熱した後、バグフィルター式の集塵機により前記排ガス中の粉塵のほぼ全部および芳香族化合物の少なくとも一部を除去し、次いで活性炭充填層により前記排ガス中の芳香族化合物の残部を吸着除去することを特徴とするコークス炉の排ガス処理方法。
【請求項2】
排ガスがコークス炉に石炭を装入する際に流出した排ガスである場合には、前記排ガスを活性炭充填層に導入し、排ガスがコークス炉に石炭を装入していない時に流出した排ガスである場合には、活性炭充填層をバイパスすることを特徴とする請求項1に記載のコークス炉の排ガス処理方法。
【請求項3】
コークス炉の炭化室の装入口から流出する排ガスの処理設備であって、前記排ガスを捕集するコークス炉ガス捕集手段と、該コークス炉ガス捕集手段で捕集された排ガスを除塵処理するバグフィルター式の集塵機と、該集塵機の下流側に設けられ、排ガス中の芳香族化合物を除去する活性炭吸着塔と、コークス炉の煙道から前記バグフィルター式の集塵機の上流側へのガス流路とを備えたことを特徴とするコークス炉の排ガス処理設備。
【請求項4】
集塵機と活性炭吸着塔との間に排ガス切替え装置を設け、排ガスが前記活性炭吸着塔をバイパス可能としたことを特徴とする請求項3に記載のコークス炉の排ガス処理設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−175589(P2007−175589A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−375561(P2005−375561)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】