説明

コークス炉の臭気管理方法

【課題】コークス炉からの悪臭の発生を検出して、これにより適切な消臭対策を可能とする、コークス炉の臭気管理方法を提供する。
【解決手段】コークス炉1a、1bから水平距離で200〜500m離れた地点を代表地点3a〜3dとして硫化水素(H2S)濃度、風向、風速、日射量及び放射収支量を測定し、該測定値から硫化水素の拡散パターンを求め、該拡散パターンから臭気漏洩の程度を判断し、該漏洩の程度に応じて消臭対策を行うコークス炉1a、1bの臭気管理方法を用いる。代表地点3a〜3dにおける硫化水素濃度を測定するための大気サンプリング位置を地表面から10〜20mの高さとすること、消臭対策が、判断した漏洩の程度に応じて噴霧量を決定した消臭剤のコークス炉1a、1bへの散布であること、代表地点3a〜3dを水平方向に異なる複数ヵ所設定することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コークス工場から漏れて大気中に拡散する臭気を検知し、消臭対策を行う、コークス炉の臭気管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コークスを乾留する際に発生するコークス炉ガスには、硫化水素(H2S)、アンモニア(NH3)や芳香族化合物等の悪臭を有する成分が含まれる。コークス炉ガスは従来から、密閉系で除塵されると共に、これらの有害成分を吸収、吸着等で除去し燃料ガスとして利用されてきた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献2には、コークス湿式消火設備で発生する排ガスが除塵充填層を通過する際に、除塵充填層にアルカリ剤を含むH2S中和剤を含有する洗浄冷却水を散布して処理する方法が記載されている。
【0004】
また特許文献3には、石炭装入時に、コークス炉の装入口から流出する排ガスに含まれるベンゼン等の芳香族化合物が大気中に放散されるのを防止することができるコークス炉の排ガス処理方法が記載されている。
【0005】
また特許文献4には、コークス炉炭化室窯口のドアとドアフレームとのシール部分の隙間から漏れるガス及びダストを、簡便な設備で且つ可動部の領域に侵入することなく効率よく回収することのできる集塵方法が記載されている。
【0006】
さらに特許文献5には、製鉄工場における臭気発生源や臭気原因の特定などの精度を向上させる方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭52−85202号公報
【特許文献2】特開平01−155931号公報
【特許文献3】特開2006−334451号公報
【特許文献4】特開2008−174575号公報
【特許文献5】特開2006−17467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
コークス炉からの悪臭の発生源は、炉蓋、装入口蓋からのガス漏れ、安水使用箇所など多岐および広範囲にわたり、またコークス炉からの臭気が複数の微量成分からなる複合臭であることにより、現実には、臭気を採取分析することにより発生源を特定することは難しい。
【0009】
また、季節や天候が変化し、周囲の気象条件の変化により、コークス炉の各設備近辺における悪臭成分の濃度が低くても、500m〜2000m離れた地域で相対的に高濃度の悪臭成分が検出される場合があり、従来の悪臭を測定する方法では、発生源での漏洩量の把握、発生源の特定が十分ではなく、中和剤等の消臭剤を過剰に散布する必要があった。
【0010】
したがって本発明の目的は、このような従来技術の課題を解決し、コークス炉からの悪臭の発生を検出して、これにより適切な消臭対策を可能とする、コークス炉の臭気管理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような課題を解決するための本発明の特徴は以下の通りである。
(1)コークス炉からの臭気を管理する区域内の代表地点にて、風向、風速、日射量及び放射収支量を測定し、前記風向、風速、日射量及び放射収支量、コークス炉と臭気観測地点との位置関係とから拡散による希釈度を求め、
コークス炉から水平距離で200〜500m離れた臭気観測地点にて、硫化水素(H2S)濃度を測定し、
前記拡散による希釈度と前記臭気測定地点の硫化水素濃度とからコークス炉からの臭気漏洩の程度を推定するコークス炉の臭気管理方法。
(2)代表地点がコークス炉から2000m以内である(1)に記載のコークス炉の臭気管理方法。
(3)前記臭気観測地点における硫化水素(H2S)濃度を測定するための大気サンプリング位置を地表面から10〜20mの高さとする(1)または(2)に記載のコークス炉の臭気管理方法。
(4)消臭対策として、前記コークス炉からの臭気漏洩の程度に応じてコークス炉へ散布する消臭剤の噴霧量を決定する、(1)〜(3)のいずれか1つに記載のコークス炉の臭気管理方法。
(5)前記臭気観測地点を水平方向に異なる複数ヵ所設定する(1)〜(4)のいずれか1つに記載のコークス炉の臭気管理方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、風向、風速、日射量・放射収支量等の環境の変化に影響されること無く、コークス炉における悪臭漏洩の発生を検出して悪臭漏洩の程度を把握可能とし、これにより、中和剤等の消臭剤を必要以上に散布することなく悪臭を防止し、消臭剤のコストを削減し、悪臭のレベルを低位に管理することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】分離カラムによるH2Sの分離例。
【図2】地上1m地点でのH2S濃度計算例のグラフ。
【図3】臭気発生源から250m地点でのH2Sの高さ方向濃度分布を示すグラフ。
【図4】本発明の一実施形態を示す概略図。
【図5】測定設備の一実施形態を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の第一のポイントは、コークス炉の悪臭の漏洩をH2S濃度を測定することで高感度に検出可能とすることである。
【0015】
コークス炉は、一般に1炉団の長さが300m前後にもなる巨大な石炭の乾留炉の集合体である。このように設備が巨大なため、コークス炉の数10m程度の近傍で悪臭の漏洩を検知しようとすると、1炉団あたり数10点の分析計が必要となり効率的ではない。従って、コークス炉からある程度はなれた地点で漏洩ガスを検知することが好ましく、特にコークス炉から水平距離で200〜500m離れた地点を臭気観測地点として漏洩ガスを検知することで、臭気観測地点が1点であってもコークス炉全体からの悪臭漏洩を検知可能であるので好ましい。臭気観測地点がコークス炉からの水平距離で500mよりも遠くなると、漏洩の検知が困難となるので好ましくない。
【0016】
本発明者らは、コークス炉ガスに含まれる、H2S、NH3や芳香族化合物等の悪臭成分のうち、H2Sの濃度を測定することで市販の半導体センサーでもっとも高感度にコークス炉からのガス漏洩を検知可能であることを見出した。表1に有害成分を分離除去する前のコークス炉ガスの臭気成分組成例を示す。悪臭成分のうちNH3は大気に対して軽いガスであり、SO2、芳香族化合物は重い成分である。H2Sは大気の平均分子量28.8に近いので風にのり遠くまで運ばれ易い。従って、コークス炉から漏洩したガスが大気で希釈された後のコークス炉から200〜500mの臭気観測地点にて、漏洩ガスを効率良く検知するには、H2S濃度を測定することが最適である。
【0017】
【表1】

【0018】
2Sの検出は、市販の半導体センサーを使用して行うことができるが、他の検出手段を適用することも可能である。検出感度は、20〜1000ppbのH2Sを測定できれば良く、10ppb以上のH2Sを測定できることがより好ましい。
【0019】
また、H2Sの検出の際に、図1に示す様に分離カラムを通した後のガスを測定することにより、H2Sを他の臭気成分と分離して選択的に検出することができるのでより好ましい。
【0020】
次に、本発明の第二のポイントは、コークス炉からの臭気を管理する区域内に代表地点を設け、代表地点で測定した風向、風速、日射量及び放射収支量から大気安定度を求め、さらに、大気安定度と、コークス炉と臭気観測地点との位置関係とから拡散による希釈度を求めることである。なお、風向、風速、日射量及び放射収支量を測定する代表地点は、硫化水素濃度を測定する臭気観測地点と同じ地点であっても良いが、異なる場所、例えば臭気の発生が問題となる地点の近傍で測定した値を用いることもできる。
【0021】
コークス炉からのガス漏洩ヵ所は、地上付近よりも、地上5〜10mの炭化室窯口や、石炭装入口である場合が少なくない。このような高所で臭気源となるガスが発生した場合、地上付近でのガス分析結果は、ガスの拡散パターンの影響を受ける。ガスの拡散パターンは以下に示す大気安定度で分類可能である。
【0022】
大気安定度は、風速と、日射量及び放射収支量から、例えば、表2に示す7段階の大気状態(安定度A〜G)に分類できる。日射量(SR)、放射収支量(RAD)は、通常日射計、放射収支計により、別々に測定されるが、地表が太陽光から受ける熱流束がプラスの場合が日射量であり、日射が少なく、地表が受ける熱流束がマイナス(地表から放散される熱流束がプラス)の場合が放射収支量である。
【0023】
【表2】

【0024】
表2において、Aが最も大気が不安定で、Gが最も安定な状態に分類される。日射量が大きい場合は、地表付近の大気が暖められ上昇気流が発生するので大気が不安定となる。逆に地表の大気温度が、上層に比べて低い場合は上昇気流が発生しないので安定側となる。また、風速が強いと上昇気流の有無によらず大気が攪拌されるので中程度の大気安定度となる。
【0025】
図2は、安定度B、D、Fの拡散パターンを示し、地上1m地点でのH2S濃度が発生源からの水平距離でどのように変るか計算による推定で比較した結果である。臭気観測地点を臭気の発生源からの距離250m地点とした場合、比較的大気安定度の低いB、Dの場合、H2S濃度は、10ppb以上測定されるが、大気安定度の高いFの場合では5ppb以下となるため検出困難な一方で、より離れた発生源からの距離700m地点付近では20ppbとより高濃度となることがわかる。
【0026】
そこで、臭気の発生源から250m地点でのH2Sの高さ方向濃度分布を実測した。結果を図3に示す。10〜20mの高さであれば大気安定度によらず、H2Sを十分に検知可能であり、臭気観測地点におけるH2S濃度を測定するための大気サンプリング位置を地表面から10〜20mの高さとすることが好ましいことが分かる。
【0027】
2Sの測定高さは、発生源から250mの比較的近い代表地点であれば10〜20mが好ましいが、発生源から500mを臭気観測地点とする場合は、図2に示すように地上1mであっても安定度D、Fの両方で検出可能である。安定度Bの場合は、拡散が激しく500m地点での検出は困難であるが、より遠い地点で高濃度となることは無いので、臭気対策としては許容できる。コークス炉からの臭気漏洩検知の点では、臭気観測地点が500mより遠くなると、漏洩の検知が困難となるので好ましくない。漏洩検知感度の点では、臭気観測地点はコークス炉から近いほうが、拡散による希釈度が低くより高濃度で検知できるが、臭気の隣接地への拡散防止の点では、200m以上離れれば1ヶ所の臭気観測地点で管理可能なので好ましい。200m未満では、2点以上の臭気観測地点が必要となる。
【0028】
さらに、本発明の第三のポイントは、拡散による希釈度からコークス炉からの臭気漏洩の程度を判断することである。
【0029】
図4に、2炉団のコークス炉1a、1bを持つコークス工場において臭気管理のために大気をサンプリングする臭気観測地点を複数個所設定する例を示す。
【0030】
この例では、コークス炉1a、1bの周辺のコークス工場2敷地内の4方4ヵ所の臭気観測地点3a〜3dに、大気をサンプリングしてH2S濃度を測定する測定設備を設けた。コークス炉団1aから各々250mの位置に、臭気観測地点3b、3cを、コークス炉団1bから各々250mの位置に、臭気観測地点3a、3dを設けている。また、臭気観測地点3cには、風向風速計8、日射計・放射収支計10を併設し、代表地点を兼ねることとした。臭気観測地点を複数ヵ所設け、測定したH2S濃度を風向を勘案して比較することにより、1a、1bのどちらのコークス炉団からの漏洩か判定できる。コークス炉団が複数ある場合に、漏洩があるコークス炉団を特定するには2ヵ所以上の臭気観測地点が必要であるが、4ヵ所以上設けることがより好ましい。臭気の隣接地への拡散防止の点では、コークス炉団の隣接地との境界側に1ヵ所臭気観測地点を設けることでも、隣接地での臭気の管理は可能である。臭気観測地点および代表地点3a〜3dで測定したデータは、サーバー4と、PC端末5とを備えた監視室6に送られる。H2Sの拡散による希釈度を求め、該拡散による希釈度からコークス炉からの臭気漏洩の程度を判断し、漏洩の程度に応じて消臭対策を行う。
【0031】
図5に臭気観測地点が代表地点を兼ねた場合の測定設備の設置例を示す。
【0032】
測定設備3は、地上約15m位置に大気サンプリング口7および風向風速計8を有し、地上の計器室9に分離カラムおよび半導体センサーを有するH2S分析装置を有している。日射計・放射収支計10は、計器室9よりも高い、地上約4mの高さに設置した。風向風速計8、日射計・放射収支計10は、近傍の建築物の影響を受けない高さに設置すれば良い。風向、風速、日射量及び/又は放射収支量は、風向風速計、日射計・放射収支計10を用いて、少なくとも1ヵ所の代表地点で測定すれば良い。
【0033】
必ずしも上記のようにH2S濃度と同じ場所で同時に測定する必要は無く、臭気を管理する区域内であって、コークス炉から2000m以内に風向風速計、日射計、放射収支計が設置されていれば、その地点を代表地点とし、その測定値を使用しても良い。その理由は、風向風速計、日射計、放射収支計の測定値は半径2000m以内であれば、どこで測っても測定値に大きな違いが無いことが経験的に、わかっているからである。
【0034】
測定した、H2S濃度、風向、風速、日射量及び/又は放射収支量はサーバー4に集められ、監視室6のPC端末5で解析を行い、PC端末5の画面に解析結果が表示される。より具体的には、コークス炉と臭気観測地点との位置関係と、風向風速計の測定値とから拡散の方向を求め、臭気発生源であるコークス炉団を特定し、コークス炉と臭気観測地点との位置関係と、風向風速計、日射計及び放射収支計の測定値からH2S(臭気)の拡散による希釈度を推定することで、H2S分析計の測定値と、拡散による希釈度とから、発生源のH2S濃度、すなわちコークス炉からの臭気漏洩の程度を推定する。
【0035】
さらに、臭気の漏洩の程度の推定値から、コークス炉に設置した、消臭剤噴霧器に直接、噴霧量の指示を送ることも可能である。
【0036】
推定したコークス炉からの臭気の漏洩の程度を元に、消臭対策(例えば消臭剤の噴霧量)を決定することが好ましい。漏洩の程度に応じて、必要最低限の消臭剤の噴霧で済むので、消臭剤の使用量を節約できる。また、拡散パターンを考慮することにより、住宅地、商業地でのH2S濃度と臭気観測地点でのH2S濃度との比率も予測できるので、コークス工場の近隣の住宅地、商業地での臭気指数を高精度に予測することが可能であり、近隣の住宅地、商業地での臭気指数が管理値を超えるような事態の発生を防止することができる。
【実施例1】
【0037】
本発明例として、製鉄所のコークス工場において、隣接地との境界側(コークス工場の北東(NE)側)に、コークス炉団から250mの距離の代表地点を兼ねた臭気観測地点を1ヵ所選定して、硫化水素(H2S)濃度を測定する測定設備を設置し、地上15m位置の大気を6分毎に採取し、分離カラムを通した大気中のH2S濃度を分析した結果を監視室のサーバーに転送し、蓄積した。一方で、コークス炉団から1000mの距離の、隣接地との境界側の地点で30分毎に風向、風速、日射量、放射収支量を測定し、前記サーバーに転送し、蓄積した。
【0038】
蓄積したデータを使って監視室のPC端末に、臭気観測地点(代表地点)のH2S濃度、風向および風速のトレンドグラフおよび大気安定度、H2Sの拡散による希釈度を表示し、さらに代表地点のH2S濃度が20ppb以上の場合に、コークス炉に噴霧する消臭剤の噴霧量のガイダンスを表示した。
【0039】
2Sの拡散による希釈度は、大気安定度、代表地点からコークス炉を見た方向と風向きのずれから決定した。
【0040】
ガイダンスの例を表3に示す。
【0041】
【表3】

【0042】
監視室のオペレータはPC端末の表示情報を元に、コークス炉への消臭剤の噴霧量を設定する操業を実施した。
【0043】
上記の操業を行う前の従来の操業を、比較例として以下に示す。コークス炉団から250mの距離の、隣接地との境界側の臭気観測地点1ヵ所において、地上1mでのH2S濃度を連続測定した結果をサーバーに転送し、蓄積した。一方で、コークス炉団から1000m離れた地点で30分毎に測定した、風向風速データも前記サーバーに転送し、蓄積した。蓄積したデータを使って監視室の端末に、臭気観測地点のH2S濃度、コークス炉団から1000m離れた地点の風向および風速のトレンドグラフを表示し、さらに臭気観測地点のH2S濃度が20ppb以上の場合に、H2Sガス漏洩の警告表示をした。監視室のオペレータは端末の表示情報とオペレータ個人の経験を元に、コークス炉の状況を確認した上で、コークス炉への消臭剤の噴霧量を設定する操業を実施した。
【0044】
また、コークス炉から500m、700m、1000mの距離の、近隣の住宅地、商業地に3ヵ所の臨時のH2S濃度測定点を決め、上記の本発明のコークス炉の臭気管理方法の実施前後で、H2S濃度を8時間毎に2ヶ月間測定し、近隣の住宅地、商業地での臭気抑制効果を検証した。
【0045】
本発明の実施前後に近隣の住宅地、商業地の3ヵ所の臨時のH2S濃度測定点でオフラインで測定した、各々549回(3ヶ所×3回/日×61日)のH2S濃度の測定結果および使用した消臭剤原単位を表4に比較して示す。
【0046】
【表4】

【0047】
表4によれば、本発明の適用後の本発明例において、コークス炉から500m、700m、1000m離れた近隣の住宅地、商業地の臨時のH2S濃度測定点でのH2S濃度が20ppb以上となった場合は評価した2ヶ月で皆無であった。一方、本発明の適用前の比較例においては近隣の住宅地、商業地の臨時のH2S濃度測定点で、H2S濃度が20ppb以上の測定回数は2ヶ月間に4回であった。4回の内3回は同じ日の同じ時間帯の500m、700m、1000m地点での測定値で、残りの1回は、別の日の500m地点の測定結果であった。住宅地、商業地で20ppb以上が観測されたうちの2回は、コークス炉から250m離れた臭気観測地点(代表地点)でのH2S濃度測定値は20ppb未満であった。本発明方法を用いない場合は、臭気観測地点での測定結果では、住宅地、商業地での臭気の発生を必ずしも防止できないことが分かる。
【0048】
さらに、本発明の適用前後で、コークス炉に噴霧する消臭剤の原単位は1.8cm3/tから1.3cm3/tに28%削減できた。
【0049】
以上のことから、本発明方法を用いることで、消臭剤の使用量が削減でき、コークス炉の近隣地域におけるH2S起因の悪臭レベルを低位に管理することが可能となることが明らかとなった。
【符号の説明】
【0050】
1(1a、1b) コークス炉
2 コークス工場
3 測定設備
(3a〜3d) 臭気観測地点(代表地点)
4 サーバー
5 端末
6 監視室
7 大気サンプリング口
8 風向風速計
9 計器室
10 日射計・放射収支計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コークス炉からの臭気を管理する区域内の代表地点にて、風向、風速、日射量及び放射収支量を測定し、前記風向、風速、日射量及び放射収支量、コークス炉と臭気観測地点との位置関係とから拡散による希釈度を求め、
コークス炉から水平距離で200〜500m離れた臭気観測地点にて、硫化水素(H2S)濃度を測定し、
前記拡散による希釈度と前記臭気測定地点の硫化水素濃度とからコークス炉からの臭気漏洩の程度を推定するコークス炉の臭気管理方法。
【請求項2】
代表地点がコークス炉から2000m以内である請求項1に記載のコークス炉の臭気管理方法。
【請求項3】
前記臭気観測地点における硫化水素(H2S)濃度を測定するための大気サンプリング位置を地表面から10〜20mの高さとする請求項1または請求項2に記載のコークス炉の臭気管理方法。
【請求項4】
消臭対策として、前記コークス炉からの臭気漏洩の程度に応じてコークス炉へ散布する消臭剤の噴霧量を決定する、請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載のコークス炉の臭気管理方法。
【請求項5】
前記臭気観測地点を水平方向に異なる複数ヵ所設定する請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載のコークス炉の臭気管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−35948(P2013−35948A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173562(P2011−173562)
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】