説明

コークス製造方法

【課題】廃棄プラスチックをコークス製造原料として利用しつつも、コークスの充分な強度を確保する。
【解決手段】廃棄プラスチックを油化還元した残渣からなるケミカルコークスを、石炭に混合したものを原料炭とする際に、原料炭の全体量に対するケミカルコークスの混合率を5質量%未満に設定し、この原料炭を用いてコークスを製造する。望ましくは、原料炭の全体量に対するケミカルコークスの混合率を2質量%以下に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コークス製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、再生不可能な廃棄プラスチックは、焼却、又は埋め立てにより処理されるが、焼却処理費用のコストアップ、埋め立て処分場の枯渇、地球温暖化対策、CO排出など、多くの問題を抱えている。
特許文献1の従来技術では、予め減容処理を行った廃棄プラスチックを石炭の一部に添加してブリケット化してケミカルコークスを形成し、このケミカルコークスを残りの石炭に混合したものをコークス炉に装入し、コークスを製造することを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−336312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の従来技術のように、廃棄プラスチックをコークスの製造に利用する場合、石炭に混合する廃棄プラスチックの割合が大き過ぎると、コークスの強度が低下する可能性がある。
本発明の課題は、廃棄プラスチックをコークス製造原料として利用しつつも、コークスの充分な強度を確保することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係るコークス製造方法は、廃棄プラスチックを油化還元した残渣からなるケミカルコークスを、石炭に混合したものを原料炭とする際に、原料炭の全体量に対するケミカルコークスの混合率を5質量%未満に設定し、この原料炭を用いてコークスを製造することを特徴とする。
本発明の一態様に係るコークス製造方法は、原料炭の全体量に対するケミカルコークスの混合率を2質量%以下に設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一態様に係るコークス製造方法によれば、原料炭の全体量に対するケミカルコークスの混合率を5質量%未満に設定することで、コークスの充分な強度を確保することができる。また、原料炭の全体量に対するケミカルコークスの混合率を2質量%以下に設定することで、より確実にコークスの充分な強度を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】ヤードでの混合について説明した図である。
【図2】配合槽での混合について説明した図である。
【図3】混合率と強度の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本実施形態について説明する。
本実施形態では、廃棄プラスチックを油化還元した残渣からなるケミカルコークスを石炭に混合したものを原料炭とし、この原料炭を用いてコークスを製造する。
先ず、ケミカルコークスについて説明する。
廃プラスチックとは、自動車関係においては、ウレタン、断熱材(PP+ガラス繊維40質量%)、ダッシュボード、コンソールボックス等があり、他には、PETボトル、ビニール、発泡スチロール等がある。
そして、上記のような廃棄プラスチックを粉砕してから油化還元によって分解し、その残渣を回収することで成形される。なお、気化したガスを冷却して抽出したオイルは、ナフサとして利用できる。
ケミカルコークスの分析データを下記に示す。
【0009】
【表1】

【0010】
本実施形態では、原料炭を用いてコークスを製造する際、原料炭の全体量に対するケミカルコークスの混合率を5質量%未満に設定する。望ましくは、原料炭の全体量に対するケミカルコークスの混合率を2質量%以下に設定する。
【0011】
次に、石炭に対するケミカルコークスの混合について説明する。
図1は、ヤードでの混合について説明した図である。
ヤードには、銘柄の異なる複数の石炭が銘柄ごとに積み付けしてあるが、夫々の裾野部分など、銘柄の異なる石炭同士が混ざり合ってしまう部分ができてしまい、それを混炭1と称している。本実施形態では、図1に示すように、先ずこの混炭1に対してケミカルコークス2をダンプ等で搬送する(荷下ろし)。そして、ホイールローダ等によって山状に集積する際に、偏石混炭1にケミカルコークス2が混合され、ケミカルコークス2の偏りが抑制される。以下、ケミカルコークス2が混合されたものを混炭3と表記する。そして、混炭3をリクレーマ等によって払い出す。
【0012】
図2は、配合槽での混合について説明した図である。
払い出された混炭3は、配合槽4へと供給され、この配合槽4からコンベヤ5上に混炭3や他の銘柄の石炭(A、B、C、…)が所定の配合率で排出され、粉砕機へと搬送される。この粉砕処理により、混炭3と他の銘柄の石炭とが撹拌され、さらにケミカルコークス2の偏りが抑制される。
ケミカルコークスにおける粉砕前の粒度分布と、ケミカルコークスにおける粉砕後の粒度分布の一例を下記に示す。
【0013】
【表2】

【0014】
上記のように、ヤードでの混合、及び配合槽での混合により、ケミカルコークスの混合率を確実に低減してゆく。そして、最終的に原料炭の全体量に対するケミカルコークスの混合率が5質量%未満となるように設定する。望ましくは、原料炭の全体量に対するケミカルコークスの混合率を2質量%以下となるように設定する。こうして混炭3と他の銘柄の石炭とを混合したものを用いてコークスを製造する。
【実施例1】
【0015】
次に、コークス強度について説明する。
下記の条件に基づいてコークス強度を分析した。
80kg電気炉乾留炉
石炭粒度:−3mm80質量%
石炭水分:8質量%
乾留温度:1100℃×20hr
消化方式:湿式
コークス分析:シャッター2m×2回後
ドラム強度(DI150/6、15、50)
石炭に対するケミカルコークスの混合率ごとのコークス強度を下記に示す。
【0016】
【表3】

【0017】
図3は、混合率と強度の関係を示すグラフである。図中の(a)はドラム強度DI150/6での結果であり、(b)はドラム強度DI150/50での結果である。
全体量に対するケミカルコークスの混合率が5質量%だと、コークス強度が大きく低下することが分る。したがって、全体量に対するケミカルコークスの混合率を5質量%未満にすることで、コークスの充分な強度を確保することができる。また、望ましくは全体量に対するケミカルコークスの混合率を2質量%以下にすることで、より確実にコークスの充分な強度を確保することができる。
【符号の説明】
【0018】
1 混炭
2 ケミカルコークス
3 混炭(混炭1+ケミカルコークス2)
4 配合槽
5 コンベヤ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄プラスチックを油化還元した残渣からなるケミカルコークスを、石炭に混合したものを原料炭とする際に、前記原料炭の全体量に対する前記ケミカルコークスの混合率を5質量%未満に設定し、前記原料炭を用いてコークスを製造することを特徴とするコークス製造方法。
【請求項2】
前記原料炭の全体量に対する前記ケミカルコークスの混合率を2質量%以下に設定することを特徴とする請求項1に記載のコークス製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−95875(P2013−95875A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241346(P2011−241346)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】