説明

コーティングされた光ファイバーおよび照射硬化可能な樹脂組成物

【課題】増加する光ファイバー延伸速度で適用可能であるのに十分高い硬化速度を有する組成物を提供する。
【解決手段】コーティングされた光ファイバーにおいて、内部一次コーティングが、または単一コーティングの少なくとも一部が、ランベルト−ベールの法則を満たすように選択される厚さを有する毛管膜として施与されそして100W中圧水銀ランプによって硬化されるときに約4.4mJ/cm2の用量に暴露された後に少なくとも約54%の反応した二重結合不飽和の割合を有する照射硬化可能な組成物から製造され、あるいは、外部一次コーティングでは上記と同一条件での暴露された後に少なくとも約56%の反応した二重結合不飽和の割合を有する照射硬化可能な組成物であり、さらに、少なくとも2つの遊離ラジカル光開始剤の光開始剤パッケージを含む照射硬化可能な組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化されたコーティングの黄変性能を低下させることなく改善された硬化速度を有する照射硬化可能な組成物から製造された硬化されたコーティングを含むコーティングされた光ファイバーに関する。特に、本発明の照射硬化可能な組成物は、広範囲の適用、例えばコーティングおよび/またはバインダーにおける使用のために調製され得る液状の硬化性組成物である。特に、これらの硬化性組成物は、ファイバーオプティクスの製造などにおける多くの適用において有利であるところの比較的速い硬化速度を提供する。ファイバーオプティクスの製造では、製造速度故に、急速に硬化され得る一次コーティング(内部一次コーティングとも言う)、二次コーティング(外部一次コーティングとも言う)、マトリックス物質、括束(bundling)物質(それらは全て透明でありまたは着色され得る)、および/またはインクを使用することが望ましい。
【背景技術】
【0002】
光ファイバーの製造では、ガラスファイバーの保護および強化のために、ガラスファイバーの延伸直後に樹脂コーティングが施与される。一般には、2つのコーティングが施与される。すなわち、ガラス表面上に直接コーティングされる可撓性樹脂(低い弾性率および低いTg)の軟質一次コーティング層および一次コーティング層の上に付与される硬質樹脂(比較的高い弾性率および比較的高いTg)の二次コーティング層である。しばしば、認識目的のために、着色剤(例えば顔料および/または染料)を含む硬化性樹脂であるインクがファイバーにさらにコーティングされ、または二次コーティングが着色された二次コーティング(すなわち着色剤を含む)であり得る。
【0003】
いくつかのコーティングされた(および所望によりインク付与された)光ファイバーは、互いに束ねられていわゆる光ファイバーリボンを形成することができる。例えば、4または8のコーティングされた(および所望によりインク付与された)光ファイバーが、一平面上に配置されかつバインダーによって固定されて、矩形の断面を有するリボン構造が製造される。いくつかの光ファイバーを結合して光ファイバーリボン構造を製造するための上記バインダー物質は、リボンマトリクッス物質と呼ばれる。また、いくつかの光ファイバーリボンをさらに結合してマルチコア光ファイバーリボンを製造するための物質を括束物質と言う。
【0004】
光ファイバーのためのコーティング物質(保護目的または識別目的)として使用される硬化性樹脂に関して今日要求される最も重要な特性の1つは、なおも完全に硬化されながら、現在使用されている増加する光ファイバー延伸速度で適用可能であるのに十分高い硬化速度を有することである。さらに、この改善された硬化速度は、硬化されたコーティングの化学的および機械的特性を犠牲にすることなく得られるべきである。現在、光ファイバーおよび光ファイバーアッセンブリの製造では、製造ラインがどのくらい速く操作され得るかに関する制限の1つがコーティングおよび/またはバインダーの硬化速度である。したがって、より速い硬化速度を有するコーティングおよび/またはバインダーを開発することが望ましい。
【0005】
高い硬化速度を有することの他に、コーティングは好ましくは、多くの他の要件、特に、長時間にわたって及び広い温度範囲にわたっても物理的変化をほとんど示さないことと、熱および光に対して許容可能な耐性を有すること(したがって、許容可能なエージング特性、例えば低い黄変度を示すこと)、加水分解、油および化学物質(例えば酸およびアルカリ)に対して許容可能な耐性を有すること、相対的に少量の湿気および水のみを吸収すること、光ファイバーに悪影響を及ぼす水素ガスをほとんど産生しないことなど、をも満たすべきである。
【0006】
工業では、コーティングファイバーを高速で製造することを可能にするその速い硬化ゆえに、紫外線などの照射に暴露されると硬化する樹脂が好ましい。これらの照射硬化可能な樹脂組成物の多くでは、反応末端基(例えば、アクリレートまたはメタクリレート官能性(本明細書では、(メタ)アクリレート官能性と言う))およびポリマー基幹を有するウレタンオリゴマーが使用される。一般に、これらの組成物は、反応性希釈剤、光開始剤および所望により適する添加剤をさらに含み得る。
【0007】
国際特許出願公開WO98/00351から、2つの水素引抜き遊離ラジカル光開始剤および1つのα−開裂ホモリチック遊離ラジカル光開始剤の混合物、特に1.5重量%のベンゾフェノン、増感剤ジエチルアミンを有する0.5重量%のベンジルおよび0.7重量%のIrgacure 651の混合物を使用することが公知である。
【0008】
光開始剤パッケージは市販されている。例えば、Esacure KTO 46(ベンゾフェノン誘導体、酸化ホスフィン型光開始剤およびオリゴマー状α−ヒドロキシアセトフェノンから成る)およびEsacure KIP 100F(70%のオリゴマー状α−ヒドロキシアセトフェノンおよび30%のジメチルヒドロキシアセトフェノンの混合物)である。
【0009】
しかし、今まで、公知の照射硬化可能な組成物は、種々の量での光開始剤の組み合わせを含むものも共に、得られる硬化されたコーティングの機械的およびエージング特性と組み合わせて、硬化速度に関して満足な特性を付与するものではない。さらに、多量の光開始剤の使用は、比較的多量の抽出物(extractable)、硬化されたコーティングの経時的黄変、および他の望ましくない特性などの欠点をしばしば生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、コーティングの機械的特性およびエージング特性を損なうことなく速い硬化速度を示す液状の硬化性樹脂組成物から製造された硬化されたコーティングを含むコーティングされた光ファイバーを提供することである。特に、相対的に低い黄変を有する硬化されたコーティングを含むコーティングされた光ファイバーが好ましい。本発明の更なる目的は、改善された硬化速度を有する照射硬化可能な組成物および照射硬化可能な組成物の硬化速度を高める方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、単一の保護コーティング、または内部一次コーティングおよびその上に施与された外部一次コーティングの組み合わせを有し、所望により続いてその上に施与される着色されたコーティングを有するガラス光ファイバーを含むコーティングされた光ファイバーを提供する。ここで、内部一次コーティングが、または単一コーティングの少なくとも一部が、毛管膜として施与されそして100W中圧水銀ランプによって硬化されるときに約4.4mJ/cm2の用量に暴露された後に少なくとも約54%の反応した二重結合不飽和の割合(%RDU)、好ましくは反応したアクリレート不飽和の割合(%RAU)を有する照射硬化可能な組成物から製造され、あるいは、外部一次コーティングが、100W中圧水銀ランプによって毛管膜として硬化されるときに約4.4mJ/cm2の用量に暴露された後に少なくとも約56%の反応した二重結合不飽和の割合(%RDU)、好ましくは反応したアクリレート不飽和の割合(%RAU)を有する照射硬化可能な組成物から製造される。
【0012】
本発明によれば、上記コーティングの少なくとも1つが、100W中圧水銀ランプによって毛管膜として硬化されるときに約4.4mJ/cm2の用量に暴露された後に少なくとも約56%の反応したアクリレート不飽和の割合を有する照射硬化可能な組成物から製造される。
さらに、本発明は、
(A)オリゴマー、
(B)反応性希釈剤、および
(C)各々の光開始剤の吸収スペクトルの和であるところのメタノール中の総吸収スペクトルが下記の通りであるところの、少なくとも2つの遊離ラジカル光開始剤の光開始剤パッケージ、ここで、該総吸収スペクトルは、280nm(λ1)〜320nm(λ2)の範囲において、少なくとも約600lmol-1cm-1のモル吸光係数εの最小値を有する
を含む照射硬化可能な組成物を提供する。
【0013】
本発明は、
(A)オリゴマー、
(B)反応性希釈剤、および
(C)少なくとも3つの遊離ラジカル光開始剤、ここで
(i)光開始剤の少なくとも1つが、240nm〜360nmの範囲での2つの吸収最大の差Δmax(1ij)=(λmax1j−(λmax1iが少なくとも約15nmであるアセトニトリル中での吸収スペクトルを有し、かつ(ii)光開始剤の少なくとも2つ(1および2)を考慮するとき、280nm〜320nmの範囲での光開始剤1のアセトニトリル中での吸収スペクトルの吸収最大(λmax1と光開始剤2のアセトニトリル中での吸収スペクトルの吸収最大(λmax2との差Δmax(12)=(λmax2−(λmax1が少なくとも約5nmである
を含む照射硬化可能な組成物をも提供する。
【0014】
さらに、本発明は、
(A)オリゴマー、
(B)反応性希釈剤、および
(C)少なくとも4つの異なる光開始剤(C1)、(C2)、(C3)および(C4)
を含む、光ガラスファイバー用の照射硬化可能なコーティング組成物を提供する。
【0015】
驚いたことに、本発明のコーティングされた光ファイバーは、極めて高いライン速度で製造されたとしても、良好な特性を有する。ところが、他のコーティングされた光ファイバーは、劣った品質を有する。特に、本発明に従う照射硬化可能な組成物は、機械的特性および黄変特性(初期の黄変および老化黄変を包含する)を実質的に劣化させることなく改善された硬化速度が得られ得るように光開始剤の組み合わせおよび量を選択することにより従来の組成物の欠点の全てを克服する。
【0016】
組成物は、基体に施与され、そして硬化される。本発明の組成物は、好ましくは、着色されたまたは未着色の光ファイバー単一保護コーティング、一次(または内部一次)コーティング、二次(または外部一次)コーティングまたは関連した光ファイバー保護物質(例えばマトリックスまたは括束物質)として使用するために設計される。そのような光ファイバーコーティングは、慣用の適用と区別するところの、それ自体の独特の性能要件の組を有する。
【0017】
最後に、本発明は、硬化されたコーティングおよび照射硬化可能な組成物の硬化速度を高める方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、吸光係数と波長とのグラフを示す。
【図2】図2は、反応したアクリレート不飽和の割合(%)と暴露時間とのグラフを示す。
【図3】図3は、ベースライン法を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の改善されたコーティングされた光ファイバーを得る際の重要な要素は、改善された硬化速度を有する本発明の照射硬化可能なコーティング組成物の使用である。したがって、説明はさらに、照射硬化可能なコーティング組成物に関する。オリゴマー、反応性希釈剤および他の成分(例えば剥離添加剤、着色剤および他の慣用の添加剤)の混合物が、特性を調整して所与の適用のための設計基準を達成するために使用され得る。
【0020】
本発明の重要な特徴は、経時的および/または種々のエージング条件下での黄変に対して実質的により高い感度を導入することなく改善された硬化速度を示す組成物を作ることができることである。ファイバーオプティックコーティングに属性的に要求される黄変に関する対処または改善を行いながら改善された硬化速度を得ることが好ましい。何らかの特定の理論に縛られることを望まないが、一実施態様では、これは、オリゴマー、モノマー(反応性希釈剤)、光開始剤、および安定剤の独特の組み合わせおよび最適化の結果であると考えられる。本発明者らは、更なる製造実験の後、改善された硬化速度を有する本発明の照射硬化可能なコーティング組成物を生じる、改善された、オリゴマー/モノマー/光開始剤の組み合わせを最初に見出した。
【0021】
本発明の好ましい1つの実施態様では、種々の吸収スペクトルを有する比較的少量の種々の光開始剤が存在することにより本発明の改善が得られると考えられる。開始剤の種々の吸収特性は、入射光の総吸収を改善し得る。しかし、最大性能を与える光開始剤の正確な比率は、各適用に関して実験的に測定することによって決定されなければならない。本発明者らは、更なる実験の後、改善された硬化速度を有する照射硬化可能なコーティング組成物を与える本発明の改善された光開始剤パッケージを最初に見出した。
【0022】
本発明の内部一次コーティング組成物に関しては、オリゴマーおよびモノマーパッケージを選択し、かつ要求される比較的高い硬化速度が達成されるように光開始剤パッケージを改善することが好ましい。
【0023】
次に、本発明のコーティングされた光ファイバーおよび照射硬化可能な組成物をより詳細に説明する。
【0024】
本発明の一実施態様では、コーティングされた光ファイバーが、単一の保護コーティング、または内部一次コーティングおよびその上に施与された外部一次コーティングの組み合わせを有し、所望により続いてその上に施与される着色されたコーティングを有するガラス光ファイバーを含む。ここで、上記コーティングの少なくとも1つは、100W中圧水銀ランプによって毛管膜として硬化されるときに約4.4mJ/cm2の用量に暴露された後に少なくとも約56%の反応した二重結合不飽和の割合(%RDU)、好ましくは反応したアクリレート不飽和の割合(%RAU)を有する照射硬化可能な組成物から製造される。本発明のアクリレートに基づくコーティングの場合、反応した不飽和結合の合計割合(%)をカバーするために、%RAUの用語がさらに使用される。アクリレート不飽和以外の不飽和が存在しない場合は、%RAUが反映される。組成物に他の不飽和、例えばビニルエーテル不飽和が存在する場合は、与えられた%RAUが、アクリレートおよびビニルエーテル起源の両方からの反応した不飽和の合計割合をカバーする。驚いたことに、本発明の照射硬化可能な組成物は、非常に少量のUV用量を施与した後に高い%RAUを達成する。
【0025】
%RAUを決定するために、照射硬化可能な組成物が、FTIR(フーリエ変換赤外線)装置における2つの石英板の間に液体として施与される(本明細書では毛管膜と言う)。これは、空気中の酸素からの実質的な表面阻害がないことを意味するが、少量の溶解した酸素がサンプル中になおも存在し得る。照射硬化可能な組成物の毛管膜は、厚さ「I」を有する。厚さは、ランベルト−ベールの法則(式(1)を参照)を満たすように選択され、組成物の(アクリレート)不飽和の正味の吸光度Aが1.2より下、好ましくは1.0〜1.2Aの範囲であるべきであることを意味する。
【0026】
【数1】


ここで、I0およびIは各々、入射光および透過光の強度であり、lは吸収溶液の路長(cm)であり、cは濃度(モル/リットル)である。log10I0/Iは吸光度(absorbance)または光学密度と言う。したがって、アクリレート結合の濃度「c」および組成物の「ε」に応じて、毛管膜は種々の厚さを有し得る。毛管膜の厚さは、好ましくは、約0.01〜150ミクロン、より好ましくは約10〜約100ミクロン、さらにより好ましくは約20〜約75ミクロン、特に好ましくは約30〜約60ミクロン、最も好ましくは約40〜約50ミクロンである。照射硬化可能な組成物の毛管膜は次いで、100W中圧水銀ランプによってUV硬化され、一方、「アクリレートピーク」下での表面または面積(未反応アクリレート不飽和の割合という)がリアルタイムFTIRで測定される。「アクリレートピーク」として、アクリレート不飽和吸収を除いて妨害する追加の吸収を示さないところの或る波長でのリアルタイムFTIRにおけるピークが選択される。好ましくは、810cm-1で強い吸収を示す他の化合物が存在しないとき、810cm-1でのピークが選択される。100W中圧水銀ランプを使用するとき、コーティング面積上のエネルギーは、約22mWに調整される。時間の経過にわたって、または適用される硬化用量の関数としてのピーク表面の減少は、硬化速度の指標を与える。この方法は、「試験方法」のところでより詳細に説明される。
【0027】
適する組成物は、4.4mJ/cm2の用量に暴露された後に少なくとも約56%、好ましくは少なくとも約57%、より好ましくは少なくとも約58%、特に好ましくは少なくとも約60%、最も好ましくは少なくとも約66%の反応したアクリレート不飽和の割合を有する組成物を包含する。一般には、4.4mJ/cm2の用量に暴露された後の反応したアクリレート不飽和の割合が約95%以下である。しかし、約90%以下の%RAUも許容可能である。
【0028】
好ましい外部一次コーティング組成物は、2.9mJ/cm2の用量に暴露された後に少なくとも約49%、好ましくは少なくとも約52%、より好ましくは少なくとも約54%、特に好ましくは少なくとも約56%、最も好ましくは少なくとも約62%の反応したアクリレート不飽和の割合を有する組成物を包含する。一般には、2.9mJ/cm2の用量に暴露された後の反応したアクリレート不飽和の割合が約95%以下である。しかし、約85%以下の%RAUも許容可能である。
【0029】
好ましい内部一次コーティング組成物は、2.9mJ/cm2の用量に暴露された後に少なくとも約26%、好ましくは少なくとも約30%、より好ましくは少なくとも約40%、特に好ましくは少なくとも約42%、最も好ましくは少なくとも約55%の反応したアクリレート不飽和の割合を有する組成物を包含する。一般には、2.9mJ/cm2の用量に暴露された後の反応したアクリレート不飽和の割合が約95%以下である。しかし、約85%以下の%RAUも許容可能である。
【0030】
さらに好ましい実施態様では、本発明のコーティングされた光ファイバーが、比較的高い硬化速度に加えて良好な経時的黄変性能を示す少なくとも1つの硬化された内部一次コーティングまたは少なくとも1つの硬化された外部一次コーティングを含む。
【0031】
比較的少量の黄変を有する好ましい内部一次コーティングは、ガラス板上に500ミクロン厚さの層として施与されそして0.2m3/分のN2下で1.0J/cm2で硬化されるときで、かつその後その上に外部一次コーティングが施与されそして硬化されるときに低い強度の蛍光下で8週間エージングした後に約30未満の色変化ΔEを示す照射硬化可能な組成物から製造されるコーティングである。より好ましくは、低い強度の蛍光下で8週間エージングした後の色変化ΔEが約20以下、特に好ましくは約15以下、最も好ましくは約10以下である。上記の黄変試験を行なうためのサンプル調製物(「試験方法」のところに記載されているように、ガラス板上に500ミクロン厚さの層として施与することによる)は、%RAUを測定するためのサンプル調製物(例えば毛管膜)とは異なる。
【0032】
比較的少量の黄変を有する好ましい外部一次コーティングは、ガラス板上に500ミクロン厚さの層として施与されそして0.2m3/分のN2下で1.0J/cm2で硬化されるときに低い強度の蛍光下で8週間エージングした後に約20未満の色変化ΔEを示す照射硬化可能な組成物から製造されるコーティングである。より好ましくは、低い強度の蛍光下で8週間エージングした後の色変化ΔEが約17以下、特に好ましくは約15以下、最も好ましくは約10以下である。
【0033】
別の黄変試験によれば、本発明の比較的少量の黄変を有する好ましい外部一次コーティングは、ガラス板上に500ミクロン厚さの層として施与されそして0.2m3/分のN2下で1.0J/cm2で硬化されるときに約125℃の温度で8週間エージングした後に約75未満の色変化ΔEを示す照射硬化可能な組成物から製造されるコーティングである。より好ましくは、約73未満、特に好ましくは約70未満である。
【0034】
本発明の別の実施態様では、特定の光開始剤パッケージ、特に下記(A)〜(C)を含む改善された硬化速度を有する照射硬化可能な組成物を使用することにより良好な結果が得られた。
(A)オリゴマー、
(B)反応性希釈剤、および
(C)各々の光開始剤の吸収スペクトルの和であるところのメタノール中の総吸収スペクトルが下記の通りであるところの、少なくとも2つの遊離ラジカル光開始剤の光開始剤パッケージ、ここで、該総吸収スペクトルは、280nm(λ1)〜320nm(λ2)の範囲において、少なくとも約525 lmol-1cm-1のモル吸光係数εの最小値を有する。好ましくは、モル吸光係数の最小値が少なくとも約600 lmol-1cm-1、より好ましくは少なくとも約900 lmol-1cm-1、最も好ましくは少なくとも約1,000 lmol-1cm-1である。εの最小値は、好ましくは約50,000 lmol-1cm-1未満、より好ましくは約20,000 lmol-1cm-1未満である。
【0035】
さらに、本発明の硬化性組成物において使用される光開始剤(Ci)の混合物の総吸収スペクトルは、モル吸光係数の平均値によっても特徴付けられ得る。好ましくは、メタノール中での光開始剤(Ci)の総吸収スペクトルは、280nm(λ1)〜320nm(λ2)の範囲において少なくとも約980 lmol-1cm-1のεの平均値によって特徴付けられる。より好ましくは、εの平均値が少なくとも約1,200 lmol-1cm-1、特に好ましくは少なくとも約1,600 lmol-1cm-1、最も好ましくは少なくとも約2,200 lmol-1cm-1である。総吸収スペクトルのεの平均値は好ましくは、約60,000 lmol-1cm-1未満、より好ましくは約30,000 lmol-1cm-1未満である。光開始剤パッケージが高すぎるモル吸光係数を有するとき、あまり厚くない膜が硬化され得る。
【0036】
好ましくは、光開始剤パッケージの総吸収スペクトルが、280〜320nmの範囲においてピークまたは肩を示す。これは、実施例1および2ならびに比較例Aの照射硬化可能な組成物において使用される光開始剤パッケージのメタノール中での吸収スペクトルを示す図1に見ることができる。
【0037】
本発明の更なる実施態様では、最適化された硬化速度を有する照射硬化可能な組成物が下記(A)〜(C)を含む。
(A)オリゴマー、
(B)反応性希釈剤、および
(C)少なくとも3つの遊離ラジカル光開始剤、ここで
(i)光開始剤の少なくとも1つが、240nm〜360nmの範囲での2つの吸収最大の差Δmax(1ij)=(λmax1j−(λmax1iが少なくとも約15nmであるアセトニトリル中での吸収スペクトルを有し、かつ(ii)光開始剤の少なくとも2つ(1および2)を考慮するとき、280nm〜320nmの範囲での第一の光開始剤1のアセトニトリル中での吸収スペクトルの吸収最大(λmax1と第二の光開始剤2のアセトニトリル中での吸収スペクトルの吸収最大(λmax2との差Δmax(12)=(λmax2−(λmax1が少なくとも約5nmである
を含む。
【0038】
λmaxは、曲線に対する接線が水平軸と平行であるところの曲線上の点であると理解される。
【0039】
好ましくは、差Δmax(1ij)が少なくとも約17nm、より好ましくは少なくとも約18nm、特に好ましくは少なくとも約20nm、最も好ましくは少なくとも約22nmである。好ましくは、差Δmax(12)が少なくとも約6nm、より好ましくは少なくとも約8nm、特に好ましくは少なくとも約9nm、最も好ましくは少なくとも約10nmである。
【0040】
本発明の更なる実施態様では、光ガラスファイバー用の照射硬化可能なコーティング組成物が
(A)オリゴマー、
(B)反応性希釈剤、および
(C)少なくとも4つの異なる光開始剤(C1)、(C2)、(C3)および(C4)
を含む。
【0041】
本発明の照射硬化可能な組成物は実質的に溶媒を含まない。これは、組成物が貯蔵されおよび/または適用されるとき、重合反応において共反応性でない有機溶媒を5重量%未満、好ましくは2重量%しか含まないことを意味する。これらの溶媒は、硬化の前、硬化中、または硬化の後に蒸発しなければならず、あるいは蒸発するであろう。特定の好ましい実施態様では、非反応性溶媒の量が約0.5重量%未満である。
【0042】
照射硬化可能な組成物は好ましくは、90重量%より多い照射硬化可能な成分を有する。
【0043】
照射硬化可能な組成物は、照射硬化可能なオリゴマーおよび照射硬化可能な希釈剤を含む。成分の各々は、モノまたはポリ官能性であり得る。ポリは2以上の官能性を意味する。一般には、照射硬化可能な成分の官能性は12以下である。成分の少なくとも1つに関する好ましい官能性は平均して1.8〜4である。
【0044】
希釈剤およびオリゴマーは、本明細書では、各々比較的低いおよび比較的高い粘度を有する化合物を示すために使用される。オリゴマーは一般に、約400以上の分子量および約1.2以上の平均官能性、好ましくは約1.8〜4の平均官能性を有する。
【0045】
反応性希釈剤は、オリゴマーの粘度より低い粘度を有する。高い粘度を有するオリゴマーが使用される場合、希釈剤は約700までの分子量を有し得る。
【0046】
(A)オリゴマー
一般に、光ファイバーコーティング物質は、オリゴマーとして、アクリレート基、ウレタン基および基幹を含むウレタンアクリレートオリゴマーを含む。基幹は、ジイソシアネートおよびヒドロキシアルキルアクリレートと反応したポリオールから誘導される。しかし、ウレタンを含まないエチレン性不飽和オリゴマーも使用され得る。
【0047】
適するポリオールの例は、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、アクリルポリオールおよび他のポリオールである。これらのポリオールは、個々にまたは2以上を組み合わせて使用され得る。これらのポリオールにおける構造単位の重合法に関して特に制限はない。ランダム重合、ブロック重合、またはグラフト重合のいずれも許容され得る。
【0048】
ポリエーテルポリオールの例として、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール−エチレングリコールコポリマー、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール、ポリヘプタメチレングリコール、ポリデカメチレングリコール、および、2以上のイオン重合可能な環式化合物の開環共重合によって得られるポリエーテルジオールが挙げられる。ここで、イオン重合可能な環式化合物の例としては、環式エーテル、例えばエチレンオキシド、イソブテンオキシド、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、3−メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、トリオキサン、テトラオキサン、シクロヘキセンオキシド、スチレンオキシド、エピクロロヒドリン、イソプエレンモノオキシド、ビニルオキセタン、ビニルテトラヒドロフラン、ビニルシクロヘキセンオキシド、フェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、およびグリシジルベンゾエートが挙げられる。2以上のイオン重合可能な環式化合物の組み合わせの具体例は、二成分コポリマーを製造するための組み合わせ、例えばテトラヒドロフランおよび2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランおよび3−メチルテトラヒドロフラン、ならびにテトラヒドロフランおよびエチレンオキシド;三成分コポリマーを製造するための組み合わせ、例えばテトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランおよびエチレンオキシドの組み合わせ、テトラヒドロフラン、ブテン−1−オキシドおよびエチレンオキシドの組み合わせなどを包含する。これらのイオン重合可能な環式化合物の開環コポリマーは、ランダムコポリマーまたはブロックコポリマーのいずれでもよい。
【0049】
これらのポリエーテルポリオールには、例えばPTMG1000、PTMG2000(三菱化学(株)製)、PEG#1000(日本油脂(株)製)、PTG650(SN)、PTG1000(SN)、PTG2000(SN)、PTG3000、PTGL1000、PTGL2000(保土谷化学(株)製)、PEG400、PEG600、PEG1000、PEG1500、PEG2000、PEG4000、PEG6000(第一工業製薬(株)製)およびPluronics(BASF製)の商標で市販されている製品が包含される。
【0050】
ポリエステルポリオールの例としては、多価アルコールおよび多塩基酸を反応させて得られるポリエステルジオールが挙げられる。多価アルコールの例として、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、テトラメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオールなどが挙げられる。多塩基酸の例としては、フタル酸、二量体酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマル酸、アジピン酸、セバシン酸などが挙げられる。
【0051】
これらのポリエステルポリオール化合物は、MPD/IPA500、MPD/IPA1000、MPD/IPA2000、MPD/TPA500、MPD/TPA1000、MPD/TPA2000、KurapolA−1010、A−2010、PNA−2000、PNOA−1010およびPNOA−2010(クラレ(株)製)の商標で市販されている。
【0052】
ポリカーボネートポリオールの例として、ポリテトラヒドロフランのポリカーボネート、ポリ(ヘキサンジオールカーボネート)、ポリ(ノナンジオールカーボネート)、ポリ(3−メチル−1,5−ペンタメチレンカーボネート)などが挙げられる。
【0053】
これらのポリカーボネートポリオールの市販製品として、DN−980、DM−981(日本ポリウレタン工業(株)製)、Priplast3196、3190、2033(Unichema製)、PNOC−2000、PNOC−1000(クラレ(株)製)、PLACCEL CD220、CD210、CD208、CD205(ダイセル化学工業(株)製)、PC−THF−CD(BASF製)などが挙げられる。
【0054】
0℃以上の融点を有するポリカプロラクトンポリオールの例として、ε−カプロラクトンおよびジオール化合物の反応によって得られるポリカプロラクトンジオールが挙げられる。ここで、ジオール化合物の例として、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,2−ポリブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−ブタンジオールなどが挙げられる。
【0055】
これらのポリカプロラクトンポリオールの市販製品として、PLACCEL240、230、230ST、220、220ST、220NP1、212、210、220N、210N、L230AL、L220AL、L220PL、L220PM、L212AL(以上、ダイセル化学工業(株)製)、Rauccarb107(Enichem製)などが挙げられる。
【0056】
他のポリオールの例として、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ポリオキシエチレンビスフェノールAエーテル、ポリオキシプロピレンビスフェノールAエーテル、ポリオキシエチレンビスフェノールFエーテル、ポリオキシプロピレンビスフェノールFエーテルなどが挙げられる。
【0057】
これらの他のポリオールとして、分子中にアルキレンオキシド構造を有するもの、特にポリエーテルポリオールが好ましい。特に、ポリテトラメチレングリコールを含むポリオールおよびブチレンオキシドとエチレンオキシドとのコポリマーグリコールが特に好ましい。
【0058】
これらのポリオールのヒドロキシル価から誘導される低められた数平均分子量は通常、約50〜約15,000、好ましくは約1,000〜約8,000である。
【0059】
オリゴマーのために使用されるポリイソシアネートの例として、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチルフェニレンジイソシアネート、4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、1,6−ヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ビス(2−イソシアナト−エチル)フマレート、6−イソプロピル−1,3−フェニルジイソシアネート、4−ジフェニルプロパンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、リシンイソシアネートなどが挙げられる。これらのポリイソシアネート化合物は、個々に、または2以上を組み合わせて使用され得る。好ましいポリイソシアネートは、イソホロンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネートおよび2,6−トリレンジイソシアネートである。
【0060】
オリゴマーに使用されるヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートの例は、(メタ)アクリル酸およびエポキシから誘導される(メタ)アクリレートならびにアルキレンオキシドを含む(メタ)アクリレート、特に、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレートおよび2−ヒドロキシ−3−オキシフェニル(メタ)アクリレートを包含する。アクリレート官能基の方がメタクリレートより好ましい。
【0061】
ウレタン(メタ)アクリレートの製造に使用されるポリオール、ポリイソシアネートおよびヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートの比は、グリコールに含まれるヒドロキシル基の1当量に関して、ポリイソシアネートに含まれる約1.1〜約3当量のイソシアネート基およびヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートに含まれる約0.1〜約1.5当量のヒドロキシル基が使用されるように決定される。
【0062】
これら3成分の反応において、ウレタン化触媒、例えば銅ナフテネート、コバルトナフテネート、亜鉛ナフテネート、ジ−n−ブチルスズジラウレート、トリエチルアミン、およびトリエチレンジアミン−2−メチルトリエチレンアミンが通常、反応体の総量の約0.01〜約1重量%の量で使用される。反応は、約10〜約90℃、好ましくは約30〜約80℃の温度で行なわれる。
【0063】
本発明の組成物において使用されるウレタン(メタ)アクリレートの数平均分子量は好ましくは、約1,200〜約20,000、より好ましくは約2,200〜約10,000の範囲である。ウレタン(メタ)アクリレートの数平均分子量が約100未満である場合、樹脂組成物は、固化する傾向にある。他方、数平均分子量が約20,000より大きい場合、組成物の粘度が高くなり、組成物の取扱が困難になる。内部一次コーティングのために特に好ましいのは、約2,200〜約5,500の数平均分子量を有するオリゴマーである。
【0064】
ウレタン(メタ)アクリレートは、樹脂組成物の総量の約10〜約90重量%、好ましくは約20〜約80重量%の量で使用される。組成物が光ファイバーのコーティング物質として使用されるとき、優れたコーティング性ならびに硬化されたコーティングの優れた可撓性および長期信頼性を確実にするために、約20〜約80重量%の範囲が特に好ましい。
【0065】
使用され得る他のオリゴマーは、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポシキ(メタ)アクリレート、ポリアミド(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシ基を有するシロキサンポリマー、(メタ)アクリル酸とグリシジルメタクリレートおよび他の重合可能なモノマーのコポリマーとの反応によって得られる反応性ポリマーなどを包含する。特に好ましくは、ビスフェノールAに基づくアクリレートオリゴマー、例えばアルコキシル化ビスフェノールA−ジアクリレートおよびジグリシジル−ビスフェノールA−ジアクリレートである。
【0066】
上記化合物のほかに、他の硬化可能なオリゴマーまたはポリマーが、液状硬化性樹脂組成物の特性が悪影響を受けない程度に、本発明の液状硬化性樹脂組成物に添加され得る。
【0067】
好ましいオリゴマーは、ポリエーテルに基づくアクリレートオリゴマー、ポリカーボネートアクリレートオリゴマー、ポリエステルアクリレートオリゴマー、アルキドアクリレートオリゴマーおよびアクリレート化アクリル酸オリゴマーである。より好ましくは、そのウレタン含有オリゴマーである。さらにより好ましくは、ポリエーテルウレタンアクリレートオリゴマーおよび上記ポリオールのブレンドを使用するウレタンアクリレートオリゴマーであり、特に好ましくは、脂肪族ポリエーテルウレタンアクリレートオリゴマーである。「脂肪族」とは、完全に脂肪族のポリイソシアネートが使用されることを意味する。しかし、ウレタンを含まないアクリレートオリゴマー、例えばウレタンを含まないアクリレート化アクリル酸オリゴマー、ウレタンを含まないポリエステルアクリレートオリゴマーおよびウレタンを含まないアルキドアクリレートオリゴマーも好ましい。
【0068】
(B)反応性希釈剤
適する反応性希釈剤を以下に例示する。
分子中に1つの重合可能なビニル基を含有する重合可能な単官能性ビニルモノマーおよび分子中に2以上の重合可能なビニル基を含有する重合可能な多官能性ビニルモノマーなどの重合可能なビニルモノマーが本発明の液状硬化性樹脂組成物に添加され得る。
【0069】
重合可能な単官能性ビニルモノマーの具体例として、ビニルモノマー、例えばN−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、ビニルイミダゾール、およびビニルピリジン;脂環式構造を含有する(メタ)アクリレート、例えばイソボルニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、およびシクロヘキシル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート、4−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレートt−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、t−オクチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、7−アミノ−3,7−ジメチルオクチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、セチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、下記式(2)〜(4)によって示されるアクリレートモノマーが挙げられる。
【0070】
【化1】


[式中、R7は水素原子またはメチル基であり、R8は2〜6、好ましくは2〜4の炭素原子を有するアルキレン基であり、R9は水素原子または1〜12の炭素原子を含む有機基または芳香族環であり、rは0〜12、好ましくは1〜8の整数である。]
【0071】
【化2】


[式中、R7は上記で定義した通りであり、R10は2〜8、好ましくは2〜5の炭素原子を有するアルキレン基であり、qは1〜8、好ましくは1〜4の整数である。]
【0072】
【化3】


[式中、R7、R10およびqは上記で定義した通りである。]
【0073】
重合可能な単官能性ビニルモノマーの市販されている製品の例としては、Aronix M102、M110、M111、M113、M117(東亜合成(株)製)、LA、IBXA、Viscoat #190、#192、#2000(大阪有機化学工業(株)製)、Light Acrylate EC−A、PO−A、NP−4EA、NP−8EA、M−600A、HOA−MPL(Kyoeisha Chemical製)、KAYARAD TC110S、R629、R644(日本化薬(株)製)などが挙げられる。
【0074】
重合可能な多官能性ビニルモノマーの例としては、以下のアクリレート化合物が挙げられる。すなわち、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリオキシエチル(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、エチエレンオキシドまたはプロピレンオキシドのビスフェノールAへの付加化合物であるジオールのジ(メタ)アクリレート、エチエレンオキシドまたはプロピレンオキシドの水素化ビスフェノールAへの付加化合物であるジオールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルへの(メタ)アクリレートの付加によって得られるエポキシ(メタ)アクリレート、ポリオキシアルキレンビスフェノールAのジアクリレート、およびトリエチレングリコールジビニルエーテルである。
【0075】
重合可能な多官能性ビニルモノマーの市販製品の例は、Yupimer UVSA1002、SA2007(三菱化学(株)製)、Viscoat #195、#230、#215、#260、#335HP、#295、#300、#700(大阪有機化学工業(株)製)、Light Acrylate 4EG−A、9EG−A、NP−A、DCP―A、BP−4EA、BP−4PA、PE−3A、PE−4A、DPE−6A(Kyoeisha Chemical製)、KAYARAD R−604、DPCA−20、−30,−60、−120、HX−620、D−310、D−330(日本化薬(株)製)、Aronix M−208、M−210、M−215、M−220、M−240、M−305、M−309、M−315、M−325(東亜合成(株)製)などを包含する。
【0076】
これらの重合可能なビニルモノマーは、樹脂組成物の総量の約10〜約70重量%、好ましくは約15〜約60重量%の量で使用される。量が約10重量%未満である場合、組成物の粘度が高すぎてコーティング性が損なわれる。量が約70重量%を超えると、高められた硬化収縮だけでなく、硬化された生成物の不十分な靭性をも生じ得る。
【0077】
好ましい反応性希釈剤は、アルコキシル化アルキル置換されたフェノールアクリレート、例えばエトシキル化ノニルフェノールアクリレート、ビニルモノマー、例えばビニルカプロラクタム、イソデシルアクリレート、およびアルコキシル化ビスフェノールジアクリレート、例えばエトキシル化ビスフェノールAジアクリレートである。
【0078】
(C)光開始剤
本発明の組成物の液状硬化性樹脂組成物が照射によって硬化されるとき、光重合開始剤が使用される。
【0079】
本発明の好ましい実施態様では、光開始剤(Ci)が遊離ラジカル光開始剤である。
【0080】
遊離ラジカル光開始剤は一般に、開始ラジカルが生成されるところの方法に応じて2つの群に分けられる。式(5)に示すように、照射時に単分子結合開裂を受ける化合物を、I型またはホモリチック光開始剤という。
【0081】
【化4】

【0082】
官能基の性質および分子中におけるカルボニル基に対するその位置に応じて、カルボニル基に隣接する結合で(α−開裂)、β−位の結合で(β−開列)、または特に弱い結合の場合(C−S結合またはO−O結合など)には遠隔位置のどこかで断片化(fragmentation)が起こり得る。光開始剤分子中の最も重要な断片化は、アルキルアリールケトン中のカルボニル基とアルキル残基との間の炭素−炭素結合のα−開裂であり、これはノーリッシュI型反応として知られる。
【0083】
励起状態の光開始剤が第二の分子(共開始剤COI)と相互作用して、式(6)によって示される二分子反応においてラジカルを生じる場合、その開始系をII型光開始剤と言う。一般に、II型光開始剤のための2つの主な反応経路は、励起された開始剤による水素引抜きまたは光誘導された電子移動、およびその後の断片化である。二分子水素引抜きはジアリールケトンの典型的な反応である。光誘導される電子移動は、化合物の特定の群に限定されないより一般的な方法である。
【0084】
【化5】

【0085】
適するI型のホモリチック遊離ラジカル光開始剤の例は、ベンゾイン誘導体、メチロールベンゾインおよび4−ベンゾイル−1,3−ジオキソラン誘導体、ベンジルケタール、α,α−ジアルコキシアセトフェノン、α−ヒドロキシアルキルフェノン、α−アミノアルキルフェノン、アシルホスフィンオキシド、ビスアシルホスフィンオキシド、アシルホスフィンスルフィド、ハロゲン化アセトフェノン誘導体などである。適するI型の光開始剤の市販例は、Irgacure 651(ベンジルジメチルケタールすなわち2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタノン、Ciba-Geigy製)、Irgacure 184(活性成分として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、Ciba-Geigy製)、Darocur 1173(活性成分として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、Ciba-Geigy製)、Irgacure 907(2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、Ciba-Geigy製)、Irgacure 369(活性成分として2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン、Ciba-Geigy製)、Esacure KIP150(ポリ{2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパン−1−オン}、Fratelli Lamberti製)、Esacure KIP100F(ポリ{2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパン−1−オン}と2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンとの混合物、Fratelli Lamberti製)、Esacure KTO46(ポリ{2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパン−1−オン}、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドおよびメチルベンゾフェノン誘導体の混合物、Fratelli Lamberti製)、アシルホスフィンオキシド、例えばLucirin TPO(2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、BASF製)、Irgacure 819(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド、Ciba-Geigy製)、Irgacure 1700(ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシドおよび2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンの25:75%混合物、Ciba-Geigy製)などである。また、I型光開始剤の混合物も使用され得る。着色された(例えば、顔料で着色された)系の場合、ホスフィンオキシド型光開始剤およびIrgacure 907が好ましい。
【0086】
適するII型(水素引抜き)光開始剤の例は、芳香族ケトン、例えばベンゾフェノン、キサントン、ベンゾフェノンの誘導体(例えば、クロロベンゾフェノン)、ベンゾフェノンおよびベンゾフェノン誘導体(例えば、Photocure 81、4−メチルベンゾフェノンおよびベンゾフェノンの50/50混合物)、ミヒラー・ケトン、エチルミヒラー・ケトン、チオキサントンおよびQuantacure ITX(イソプロピル チオキサントン)などの他のキサントン誘導体、ベンジル、アントラキノン(例えば、2−エチルアントラキノン)、クマリンなどである。これらの光開始剤の化学誘導体および組み合わせも使用され得る。
【0087】
II型光開始剤は一般に、アミン相乗剤とともに使用される。好ましくは、アミン相乗剤は、モノマー3級アミン化合物、オリゴマー(ポリマー)3級アミン化合物、重合性アミノアクリレート化合物、重合したアミノアクリレート化合物およびそれらの混合物から成る群から選択される。
【0088】
アミン相乗剤は、3級アミン化合物、例えばアルカノール−ジアルキルアミン(例えば、エタノール−ジエチルアミン)、アルキルジアルカノールアミン(例えば、メチルジエタノールアミン)、トリアルカノールアミン(例えば、トリエタノールアミン)、およびエチレン性不飽和アミン官能性化合物、例えばアミン官能性ポリマー化合物、共重合可能なアミンアクリレートなどを包含し得る。エチレン性不飽和アミン化合物は、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート(例えば、ジエチルアミノエチルアクリレート)またはN−モルホリノアルキル(メタ)アクリレート(例えば、N−モルホリノエチルアクリレート)をも包含し得る。
【0089】
好ましくは、存在する光開始剤の総量が、コーティング組成物の総量に対して約0.1重量%〜約20.0重量%である。より好ましくは、総量が少なくとも約0.5重量%、特に好ましくは少なくとも約1.0重量%、最も好ましくは少なくとも約2.0重量%である。さらに、総量は好ましくは、約15.0重量%未満、より好ましくは約10.0重量%未満、特に好ましくは約6.0重量%未満である。
【0090】
好ましくは、光開始剤(Ci)の各々が夫々に、少なくとも約0.03重量%、より好ましくは少なくとも約0.05重量%、特に好ましくは少なくとも約0.1重量%、最も好ましくは少なくとも約0.15重量%の量で存在する。さらに、各光開始剤(Ci)は夫々に、好ましくは、約10.0重量%以下、より好ましくは約5.0重量%以下、特に好ましくは約4.0重量%以下、最も好ましくは約2.5以下の量で存在する。
【0091】
個々の光開始剤の量(Ci)と光開始剤の総量(C)との比Ci:Cは好ましくは、約50%以下、より好ましくは約45%以下、特に好ましくは約40%以下、最も好ましくは約30%以下である。比Ci:Cは好ましくは、少なくとも約2%、より好ましくは少なくとも約5%、特に好ましくは少なくとも約10%である。
【0092】
化合物(Ci)の少なくとも2つがホモリチック遊離ラジカル開始剤であり、好ましくは少なくとも3つ、より好ましくは少なくとも4つ、特に好ましくは全ての化合物(Ci)がホモリチック遊離ラジカル開始剤であるのが好ましい。さらに、化合物(Ci)の少なくとも2つがα−開裂ホモリチック遊離ラジカル開始剤であるのが好ましく、より好ましくは少なくとも3つ、特に好ましくは少なくとも4つ、最も好ましくは全ての化合物(Ci)がα−開裂型である。
【0093】
本発明の1つの好ましい実施態様では、光開始剤の少なくとも1つが、リン、硫黄または窒素原子を含有する。さらに好ましくは、光開始剤パッケージが、リン原子を含有する光開始剤および硫黄原子を含有する光開始剤の少なくとも1つの組み合わせを含む。
【0094】
本発明の別の好ましい実施態様では、光開始剤(Ci)のいずれもオリゴマー状の光開始剤でなく、より好ましくは、本発明の照射硬化可能な組成物がオリゴマー状の光開始剤を含有しない。
【0095】
本発明のさらに別の好ましい実施態様では、化合物(Ci)の少なくとも1つがオリゴマー状またはポリマー状の光開始剤である。改善された硬化速度を示すことの他に、少なくとも1つのポリマー状の光開始剤(Ci)を含む該コーティング組成物は、硬化すると、別の被覆層、例えばかかる組成物の表面に施与さたマトリックスまたは括束物質または他の何らかの物質からの改善された剥離特性をさらに示す。
【0096】
オリゴマー状光開始剤は、照射するとラジカルを発生する複数の照射吸収性基を包含する。好ましくは、オリゴマーは、3以上、より好ましくは5〜100の照射吸収性基を含み、少なくとも800g/モルの分子量を有する。特に、オリゴマー状光開始剤は、アリール基、好ましくはアリールケトン基を含み得る。
【0097】
適するオリゴマー状の光開始剤は、2以上のモノマー単位、好ましくは3〜50のモノマー単位から構成される基幹を有する。オリゴマーのモノマー単位は、スチレン、好ましくはα−メチルスチレンを包含する種々のモノマーのいずれかを含み得る。オリゴマー状の基幹は、ポリエステル、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリシロキサンおよび/またはポリアクリレート単位を包含する適する何らかのポリマー単位を含み得る。特に、オリゴマー状光開始剤は,フェニルヒドロキシアルキルケトン基、好ましくはフェニルα−ヒドロキシアルキルケトン基を含有するオリゴマーを包含し得る。例えば、オリゴマー状の光開始剤は、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル(4−(1−メチルビニル)フェニル)−1−プロパノンおよび2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノンのオリゴマーを包含し得る。オリゴマー状の光開始剤は、Esacure KIP 100F(Sartomer製)を包含し得る。
【0098】
(D)添加剤
光ファイバーにおける伝送損を引き起こすところの水素ガスの発生を防ぐために、本発明の液状硬化性樹脂組成物にアミン化合物を添加することができる。使用され得るアミンの例として、ジアリルアミン、ジイソプロピルアミン、ジエチルアミン、ジエチルヘキシルアミンなどが挙げられる。
【0099】
本発明の上記成分に加えて、種々の添加剤、例えば酸化防止剤、UV吸収剤、光安定剤、シランカップリング剤、コーティング表面改善剤、熱重合抑制剤、均染剤、界面活性剤、着色剤、保存剤、可塑剤、滑剤、溶媒、フィラー、エージング防止剤および湿潤性改善剤を、必要に応じて液状硬化性樹脂組成物に使用することができる。酸化防止剤の例は、Irganox 1010、1035、1076、1222(Ciba Specialty Chemicals製)、Antigene P、3C、FR、Sumilizer GA-80(住友化学(株)製)などを包含し、UV吸収剤の例は、Tinuvin P、234、320、326、327、328、329、213(Ciba Specialty Chemicals製)、Seesorb 102、103、110、501、202、712、704(Sypro Chemical製)などを包含し、光安定剤の例は、Tinuvin 292、144、622LD(Ciba Specialty Chemicals製)、Sanol LS770(Sankyo製)、Sumisorb TM-061(住友化学工業(株)製)などを包含し、シランカップリング剤の例は、アミノプロピルトリエトキシシラン、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、およびメタクリルオキシプロピルトリメトキシシランおよび市販の製品、例えばSH6062、SH6030(Toray-Dow Corning Silicone製)およびKBE903、KBE603、KBE403(信越化学(株)製)を包含し、コーティング表面改善剤の例は、シリコーン添加剤、例えばジメチルシロキサンポリエーテルおよび市販の製品、例えばDC-57、DC-190(Dow Corning製)、SH-28PA、SH-29PA、SH-30PA、SH-190(Toray-Dow Corning Silicone製)、KF351、KF352、KF353、KF354(信越化学(株)製)およびL-700、L-7002、L-7500、FK-024-90(日本ユニカ(株)製)を包含する。
【0100】
照射硬化可能な組成物に関する記載は、着色された単一組成物、内部一次組成物もしくは外部一次組成物、インク組成物または着色されたマトリックスもしくは括束物質のいずれかである着色された組成物にも当てはまる。着色剤は顔料または染料であり得る。顔料は顔料で着色される光ファイバーコーティングでの使用に適する何らかの顔料であり得る。好ましくは、顔料が小さい粒子の形状でありかつUV照射に耐えることができる。
【0101】
顔料は、例えばUllmans Encyclopedia of Industrial Chemistry, 第5版、Vol.A22, VCH Publishers (1993), 第154〜155頁に開示されている慣用のまたは有機の顔料であり得る。その完全な開示は、引用することにより完全に本明細書に組み入れられる。顔料は、例えば組成物が着色された二次コーティング、インクコーティングまたはマトリックス物質であるかどうかに基づいて選択され得る。インクコーティングは典型的にはより多量に顔料で着色される。
【0102】
適する着色剤の一般の組は、中でも、無機の白色顔料;黒色顔料;、鉄酸化物;クロム酸化物グリーン;鉄ブルーおよびクロムグリーン;バイオレット顔料;ウルトラマリン顔料;ブルー、グリーン、イエローおよびブラウン金属の組み合わせ;クロム酸鉛およびモリブデン酸鉛;カドミウム顔料;チタン顔料;パール顔料;金属顔料;モノアゾ顔料、ジアゾ顔料;ジアゾ縮合形顔料;キナクリドン顔料、ジオキサジンバイオレット顔料;バット顔料;ペリレン系顔料;チオインジゴ顔料;フタロシアニン顔料;およびテトラクロロインドリノン;アゾ染料;アントラキノン染料;キサンテン染料;およびアジン染料を包含する。蛍光顔料も使用され得る。
【0103】
好ましくは、顔料は約1μm以下の平均粒径を有する。市販の顔料の粒径は、必要ならば、挽くことにより低下され得る。顔料は好ましくは、約1〜約10重量%の量で存在し、より好ましくは約3〜約8重量%の量である。
【0104】
十分に色が安定であるならば、顔料の代わりに、染料を使用することもできる。反応性染料が特に好ましい。適する染料は,ポリメチン染料、ジおよびトリアリールメチン染料、ジアリールメチン染料のアザ類似物、アザ(18)アヌレン(または天然染料)、ニトロおよびニトロソ染料、アザ染料、アントラキノン染料および硫黄染料を包含する。これらの染料は、その技術分野において周知である。
【0105】
これらの添加物は全て、光ファイバーコーティングにおいて使用されるときに添加剤に関して通常である量で、本発明に従う組成物に添加され得る。
【0106】
物理的特性
本発明の液状硬化性樹脂組成物の粘度は通常、約200〜約20,000cPの範囲、好ましくは約2,000〜約15,000の範囲である。
【0107】
本発明の照射硬化可能な組成物は、単一のコーティング、内部一次コーティング、外部一次コーティング、マトリックス物質または括束物質(以上は全て、着色され得、またはされ得ない)、またはインクとして使用されるべく調製され得る。特に、本発明の照射硬化可能な組成物は、硬化後に組成物が0.1MPaと低い弾性率および2,000MPa以上と高い弾性率を有するように調製され得る。低い方の範囲の弾性率、例えば0.1〜10MPa、好ましくは0.1〜5MPa、より好ましくは0.5MPa以上3MPa未満の弾性率を有する組成物は、典型的には、ファイバーオプティクスのための内部一次コーティングに適する。これに対して、外部一次コーティング、インクおよびマトリックス物質に適する組成物は一般に、50MPaより上の弾性率を有し、外部一次コーティングは、特には100MPaより高く1,000MPaまでの弾性率を有する傾向にあり、マトリックス物質は特には、軟質マトリックス物質の場合は約50MPa〜約200MPaであり、硬質マトリックス物質の場合は約200MPa〜約1500MPaである傾向にある。本発明の照射硬化可能な組成物は、硬化後の組成物が−70℃〜30℃のTgを有するように調製され得る。Tgは、2.5%の伸びでのDMA曲線におけるタンジェントデルタのピークとして測定される。
【0108】
これらの物質の伸びおよび引張強度も、特定の使用のための設計基準に応じて最適化され得る。光ファイバーにおける内部一次コーティングとして使用するために調製された照射硬化可能な組成物から形成された硬化されたコーティングの場合、破断時の伸びが典型的には65%より大きく、好ましくは80%より大きく、より好ましくは破断時の伸びが少なくとも110%、より好ましくは少なくとも150%であるが、典型的には400%以下である。外部一次コーティング、インクおよびマトリックス物質のために調製されたコーティングの場合、破断時の伸びが典型的には6%〜100%であり、好ましくは10%より大きい。
【0109】
動的機械的分析(DMA)によって決定されるタンジェントデルタのピークとして測定されるガラス転移温度(Tg)は、用途の詳細に応じて最適化され得る。ガラス転移温度は、内部一次コーティングとしての使用のために調製された組成物の場合、10℃〜−70℃以下、より好ましくは0℃より下であり得る。外部一次コーティング、インクおよびマトリックス物質としての使用のために設計された組成物の場合、10℃〜120℃以上、より好ましくは30℃より上であり得る。
【実施例】
【0110】
以下の実施例は、本発明の特定の実施態様として、その実施および利点を説明するために示される。実施例は説明のためであり、本発明を限定するものではない。
【0111】
照射硬化可能なコーティング組成物は、表1、2、4、5および6に示す成分の混合物から調製された。これらの成分を以下に記載する。
オリゴマー1はウレタンアクリレートに基づくポリエーテルである。
オリゴマー2はウレタンアクリレートに基づくポリエステルである。
オリゴマー3はエポキシアクリレートオリゴマーである。
オリゴマー4はウレタンアクリレートに基づくアルキドである。
オリゴマー5はウレタンアクリレートオリゴマーに基づく脂肪族ポリエーテル−ポリカーボネートであり、4000のMwを有し、2−ヒドロキシエチルアクリレート、イソホロンジイソシアネート、および等量の、ポリプロピレングリコールジオールおよび10〜15重量%ポリエーテル/85〜90重量%ポリカーボネートのコポリマージオールから誘導される。
オリゴマー6はウレタンアクリレートに基づく脂肪族ポリエーテル−ポリカーボネートであり、3000のMwを有し、オリゴマー5と同様の成分から誘導される。
【0112】
環式モノアクリレート1は、アルコキシル化環式モノアクリレート反応性希釈剤である。
環式モノアクリレート2は、環式モノアクリレート反応性希釈剤である。
Lucirin TPOは、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニエルホスフィンオキシド(BASF製)である。
Irgacure 819は、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(Ciba-Geigy製)である。
Irgacure 184は、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(Ciba-Geigy製)である。
Darocur 1173は、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(Ciba-Geigy製)である。
Irgacure 907は、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン(Ciba-Geigy製)である。
Irgacure 1700は、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシドおよび2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンの25:75%混合物(Ciba-Geigy製)である。
Irganox 1035は、チオジエチレンビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ)ヒドロシンナメートである。
Tinuvin 622は、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールを有するジメチルスクシネートポリマーである。
A-189は、1−プロパンチオール、3−(トリメトキシシリル)である。
【0113】
使用された試験法を以下に記載する。
【0114】
【表1】

【0115】
表から分かるように、組成物を4.4mJ/cm2の用量に暴露したとき、本発明の外部一次コーティング組成物は、比較例Aに示される外部一次コーティング対照組成物より少なくとも5%高い%RAUを有する。好ましくは、組成物を4.4mJ/cm2の用量に暴露したとき、本発明の組成物の%RAUが、比較例Aに示される対照組成物よりも少なくとも10%高く、より好ましくは少なくとも15%、特に好ましくは少なくとも22%高い。
【0116】
約2.9mJ/cm2の用量に暴露したとき、本発明の組成物は、比較例Aに示される対照組成物よりも少なくとも5%高い%RAUを有する。好ましくは、約2.9mJ/cm2の用量に暴露したとき、本発明の%RAUが比較例Aの%RAUよりも少なくとも10%高く,より好ましくは少なくとも15%高く、特に好ましくは少なくとも17%高い。
【0117】
【表2】

【0118】
【表3】

【0119】
表3は、実施例1、2、3および比較例Aの外部一次コーティング組成物の光開始剤パッケージのメタノール中での吸収スペクトルの280〜320nmにおける最小および平均の吸光係数ε(lモル-1cm-1)をそれぞれ示す。
【0120】
図1は、実施例1および2ならびに比較例Aの外部一次コーティング組成物の光開始剤パッケージのメタノール中での吸収スペクトルを各々示す。この図1は、本発明に従う光開始剤パッケージの場合、280〜320nmの範囲における吸収スペクトルにおいてピークまたは肩を明らかに示す。
【0121】
図2は、実施例1、2、3および比較例Aの照射硬化可能な組成物のFTIR硬化挙動を示す。これらのFTIR硬化曲線は、%RAU(反応したアクリレート転化率)対UV光暴露時間を示す。図2は、本発明の組成物が、従来のもの(比較例A)よりも速く硬化し、非常に短い暴露時間後は特にそうであることを明らかに示す。これは、比較例Aと比較してFTIR曲線の初期の傾斜がはるかに急であることから明らかである。
【0122】
【表4】


実施例4の外部一次コーティング組成物は、比較例Aの外部一次コーティング組成物と比較して硬化速度において80%の増加を有する。
【0123】
【表5】

【0124】
【表6】

【0125】
試験方法
硬化速度FTIR試験(%RAU)
紫外線硬化されたコーティングの相対的硬化速度は、FTIR透過法を使用して決定され得る。その方法は、紫外線光に暴露したときに二重結合の低下によって硬化するコーティング系に適用され得る。
【0126】
装置
フーリエ変換赤外線(FTIR)分光光度計(Nicolet 60SX)または同等の装置が使用される。装置パラメーターは次の通りである。TGS検出器、4cm-1解像、および10の走査が各スペクトルのために共に加えられる。
赤外線分光法は今周知であり、赤外線スペクトルを得るために、任意の赤外線分光計が使用され得る。
水銀UVランプ(100W、Oriel Corp. #6281)または同等のものが使用される。照射の制御された短いパルスを生じ得る別のUVランプ系が代用され得る。
【0127】
サンプルの調製
きれいなNaCl透過窓の表面にテフロン(登録商標)スペーサーを置く。使い捨てのガラスピペットの先端を使用して、完全に混合されたコーティングの小滴を、NaClディスクの中央に置く。第2のNaClディスクを、コーティングがスペーサーの端まで均一に広がるように、かつ気泡がコーティング中に存在しないように、コーティング滴の頂部に注意して置く。
【0128】
装置のセットアップ/標準化
UVランプのスイッチを入れ、FTIRのスイッチを入れる。IRビーム路にサンプルがない状態でバックグランドのスペクトルを集める。
【0129】
サンプルの分析法
コーティング系の最初の分析のために、標準法に従って、どのコーティング系に関してもコーティング厚さが一定であることを確実にする。照射硬化可能な組成物が、FTIR装置における2つの水晶板の間に液体として施与される(本明細書では毛管膜という)。
【0130】
毛管膜の厚さは、ランベルト−ベールの法則(式(1)を参照)を満たすように選択され、その正味の吸光度Aが1.2より下、好ましくは1.0〜1.2Aの範囲にあるべきであることを意味する。本発明に従うコーティングの場合、一定の厚さを達成するために、50ミクロンのスペーサーが使用される。従って、ピーク最小からピーク最大までの不飽和バンドの正味の吸光度が測定される。ピーク最大は、1.0〜1.2Aの範囲にあるべきである。正味の吸光度は、 ピーク最小に依存する。アクリレート化学に基づくコーティングの場合、妨害する追加の吸収を示さないところの、或る波長でのリアルタイムFTIRにおけるピークが選択される。アクリレートに基づくほとんどのコーティングの場合、810cm-1でのアクリレート不飽和バンドおよび795cm-1付近の最小でのベースラインが使用される。この工程が3回繰り返され、3つの吸光度の値の平均が正味の吸光度とされる。この平均された値が特定のコーティング系の今後の全ての分析のための標的吸光度として使用される。この値は、不飽和含量の相違故に各コーティング系に関して恐らく異なる。次いで、不飽和バンドの正味の吸光度が、正味の吸光度の上記の平均された値の±0.05Aになるまで、取り外し可能なセルホルダーねじを締めることによりコーティング厚さを調整する。正味の吸光度の値が安定するまで(コーティングは平衡に達するまでに2、3分を要し得る)、スペクトルを右から右へ集める。
【0131】
次いで、0.05〜5秒の範囲で暴露時間を変えることにより、未硬化の液状サンプルの赤外線スペクトルおよび硬化されたサンプルの赤外線スペクトルを得る。暴露時間は、コーティング系に依存して変わり得る。例えば、速く硬化する系は、より短い暴露時間を要する。未硬化の液状サンプルのためのアクリレート不飽和吸光度の正味のピーク面積が測定される。アクリレートに基づくほとんどのコーティングの場合、約810cm-1での吸光度が使用されるべきである。しかし、コーティングがシロキサンまたは、810cm-1またはその付近で強く吸収する他の成分を含む場合、別のアクリレート吸光度ピークが使用され得る。約1410cm-1および1635cm-1での吸光度が十分であることが分かった。正味のピーク面積は、ピークの両側の吸光度最小に対して接するベースラインを引くところの周知のベースライン法を使用して測定され得る。ベースラインの上でありかつピークの下の面積が正味のピーク面積である。図3は、ベースライン法の代表を示し、不飽和バンドの下の正味の面積がどのように決定されるかを示す。
【0132】
次いで、参照面積が決定される。液状サンプルが硬化されるとき、参照吸光度は強度において変化すべきでない。多くの調製物が、参照吸光度として使用され得る約780〜約750cm-1の範囲における吸光度を有する。参照吸光度の正味のピーク面積が測定される。サンプルおよび参照の両方が、各暴露時間に関して3回測定される。
【0133】
計算
未硬化の液状サンプルに関するアクリレート吸光度と参照吸光度との比は、下記式(7)を使用して決定される。
【0134】
L=AAL/ARL (7)
ここで、AALはアクリレート吸光度の正味のピーク面積(アクリレートバンドの下)であり、ARLは参照吸光度の正味のピーク面積であり、RLは液状サンプルに関する面積比である。
【0135】
硬化されたサンプルに関するアクリレート吸光度と参照吸光度との比は、下記式(8)を使用して決定される。
【0136】
C=AAC/ARC (8)
ここで、AACはアクリレート吸光度の正味のピーク面積であり、ARCは参照吸光度の正味のピーク面積であり、RCは硬化されたサンプルに関する面積比である。
【0137】
反応したアクリレート不飽和の割合(%RAU)としての硬化度は, 下記式(9)を使用して決定される。
【0138】
%RAU=[(RL−RC)x100%]/RL (9)
コーティング組成物中に他の反応性不飽和が存在する場合、例えばオリゴマーまたは反応性希釈剤中にビニルエーテル不飽和が存在するならば(例えば、ビニルカプロラクタムまたはビニルピロリドンが存在する場合)、測定されるのは、反応した二重結合不飽和の総割合(%RDU)である。
【0139】
本発明の目的の場合、%RAUは、%RDUとも関係して使用される。
【0140】
平均%RAUは、サンプルおよび参照の両方に関して各暴露時間の3回の分析に関して決定される。次いで、暴露時間がサンプルおよび参照の両方の%RAUに対してプロットされる。
【0141】
暴露時間対%RAUプロットを得るために使用されるデータの精度は、プロットの経過に亘って変わる。曲線が急でないところの暴露時間では、平均値の±2%(絶対値)の値が許容され得る。曲線が非常に急なところの暴露時間では、平均値の±7%(絶対値)の値が許容され得る。
【0142】
黄変試験
硬化された膜の色エージング挙動(デルタE)は、Radtech Europe 93 Conference ProceedingsでのD.M. Szumによる「UV硬化されたインクの色変化に対するUV硬化されたコーティングおよびインクバインダーの寄与の測定」と題する文献(1993年5月2〜6日に開催されたRadtech Europe Conferenceで発表された論文)に開示されている慣用の方法によって測定された。上記文献の完全な開示が、引用することにより本明細書に組み入れられる。この文献は、3層のサンプルに対して行われた測定を開示している。ところが、本発明のサンプルは単層であった。測定は、数学的操作、FMC−2を含む。
【0143】
黄変測定は、約2x2インチ平方の膜サンプルを用いて行われた。色測定データは、Macbeth Color Eye 7000-Aから得られた。比色計が較正され、下記のパラメータに設定された。
光源:D65
色差:CIElab
方式:反射率
測定の範囲:Large Area View
鏡面成分:含める(SCI)
UVフィルター:含める
観測者:10
バックグランド:白の較正基準
【0144】
経時的デルタE(ΔE)
i)低い強度の蛍光下
内部一次コーティングに関するΔEの評価
ΔE値は、対象の組成物の色がどのくらい安定であるかの指標である。ΔE低強度蛍光試験は、0.2m3/分のN2下、1.0J/cm2でガラス上において、内部一次コーティングとして調製された500ミクロン厚さの本発明の照射硬化可能な組成物を硬化することにより調製された(%RAU試験におけるような「毛管膜」ではない)、3サンプルの平均(全てガラス上で測定)を使用する。次いで、比較例Aの75ミクロン厚さの基準外部一次コーティングが、同じ条件下で内部一次コーティングの上に硬化された。低強度蛍光エージングは、温度制御されていない部屋で、サンプルから約3mの位置にある、6〜8フィート長さの60ワットPhillips Econ-O-Watt蛍光球下で行われる。
【0145】
弱いデルタE(ΔE)の値(色変化の度合)が、上記したパラメーター設定を有するMac Beth Color Eye 7000-A上で測定された。
【0146】
表1および3に示すΔEの値は、低強度蛍光下で8週間貯蔵した後に得られた値である。
【0147】
外部一次コーティングに関するΔEの評価:
内部一次コーティングに関して上記したものと同じ試験条件であるが、サンプルは、0.2m3/分のN2下、1.0J/cm2でガラス上において500ミクロン厚さの本発明の照射硬化可能な組成物を硬化することにより外部一次コーティングとして調製された。
【0148】
ii)125℃下
125℃の温度でサンプルを8週間貯蔵した後にΔE値を得た。サンプルの調製および試験条件は、i)に記載したものと同じである。
【0149】
iii)85℃下
85℃の温度でサンプルを8週間貯蔵した後にΔE値を測定した。サンプルの調製および試験条件は、i)に記載したものと同じである。
【0150】
iv)85%RHおよび85℃下
85%の相対湿度および85℃の温度でサンプルを8週間貯蔵した後にΔE値を測定した。サンプルの調製および試験条件は、i)に記載したものと同じである。
【0151】
吸収スペクトル
UV分光光度計はPerkin-Elmer Lambda 9である。光開始剤のサンプルを、種々の濃度でメタノール中の溶液として実験した。実施例1は1.51x10-4の濃度であり、実施例2は3.33x10-4の濃度であり、実施例3は1.41x10-4の濃度であり、比較例Aは3.24x10-4の濃度である。全てのサンプルを、参照ビームにおけるメタノールを用いて、1.0cmの石英セル中で実験した。走査速度は120nm/分であり、スリット幅は5μmであった。吸収スペクトルは吸光度対波長λとして示され、吸光度Aからモル吸光係数ε対波長λのスペクトルが誘導される。
【0152】
モル吸光係数εは、各化合物の特性であり、或る波長での化合物に関して一定の値である。吸光係数は、メタノール中での光開始剤パッケージの吸収スペクトルの或る波長での吸光度から計算された。これは、ランベルト−ベールの法則から計算された。ランベルトの法則は、吸収された入射光の画分は光源の強度と無関係であることを述べている。ベールの法則は、吸収が、吸収性分子の数に比例することを述べている。これらの法則から、残りの変数が、式(10)によって示されるランベルト−ベールの法則を与える。
【0153】
【数2】


ここで、I0およびIは各々、入射光および透過光の強度であり、lは吸収溶液の路長(cm)であり、cは濃度(モル/リットル)である。log10I0/Iは吸光度または光学密度と言う。
【0154】
明細書全体にわたって、吸収スペクトルおよび特性は、ε、λmaxおよび吸光度によって定義される。波長λmaxは、吸光度の最大が達成されるところの波長を定義する。
【0155】
図1は、実施例1および2ならびに比較例Aの光開始剤パッケージのメタノール中での吸収スペクトルを示す。特に、吸光係数(上記したように吸光度から計算される)が波長に対してプロットされる。吸光係数は、サンプルの濃度に依存しない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一の保護コーティング、または内部一次コーティングおよびその上に施与された外部一次コーティングの組み合わせを有し、所望により続いてその上に施与される着色されたコーティングを有するガラス光ファイバーを含むコーティングされた光ファイバーにおいて、内部一次コーティングが、または単一コーティングの少なくとも一部が、ランベルト−ベールの法則を満たすように選択される厚さを有する毛管膜として施与されそして100W中圧水銀ランプによって硬化されるときに約4.4mJ/cm2の用量に暴露された後に少なくとも約54%の反応した二重結合不飽和の割合を有する照射硬化可能な組成物から製造され、あるいは、外部一次コーティングが、ランベルト−ベールの法則を満たすように選択される厚さを有する毛管膜として施与されそして100W中圧水銀ランプによって硬化されるときに約4.4mJ/cm2の用量に暴露された後に少なくとも約56%の反応した二重結合不飽和の割合を有する照射硬化可能な組成物から製造されるところのコーティングされた光ファイバー。
【請求項2】
内部一次コーティングまたは単一コーティングの少なくとも1つが、該毛管膜として施与されそして100W中圧水銀ランプによって硬化されるときに約4.4mJ/cm2の用量に暴露された後に少なくとも約56%の反応したアクリレート不飽和の割合を有する照射硬化可能な組成物から製造される、請求項1記載のコーティングされた光ファイバー。
【請求項3】
コーティング組成物の少なくとも1つが、該毛管膜として施与されそして硬化されるとき、約4.4mJ/cm2の用量に暴露された後に少なくとも約60%の反応した二重結合不飽和の割合を達成する、請求項1または2記載のコーティングされた光ファイバー。
【請求項4】
コーティング組成物の少なくとも1つが、該毛管膜として施与されそして硬化されるとき、約4.4mJ/cm2の用量に暴露された後に少なくとも約66%の反応した二重結合不飽和の割合を達成する、請求項3記載のコーティングされた光ファイバー。
【請求項5】
内部一次コーティング組成物が、または単一コーティング組成物の少なくとも一部が、該毛管膜として施与されそして硬化されるとき、約2.9mJ/cm2の用量に暴露された後に少なくとも約26%の反応した二重結合不飽和の割合を達成し、または外部一次コーティング組成物が、該毛管膜として施与されそして硬化されるとき、約2.9mJ/cm2の用量に暴露された後に少なくとも約49%の反応した二重結合不飽和の割合を達成する、請求項1〜4のいずれか1項記載のコーティングされた光ファイバー。
【請求項6】
内部一次コーティング組成物が、または単一コーティング組成物の少なくとも一部が、該毛管膜として施与されそして硬化されるとき、約2.9mJ/cm2の用量に暴露された後に少なくとも約30%の反応した二重結合不飽和の割合を達成し、または外部一次コーティング組成物が、該毛管膜として施与されそして硬化されるとき、約2.9mJ/cm2の用量に暴露された後に少なくとも約52%の反応した二重結合不飽和の割合を達成する、請求項1〜5のいずれか1項記載のコーティングされた光ファイバー。
【請求項7】
内部一次コーティング組成物が、または単一コーティング組成物の少なくとも一部が、該毛管膜として施与されそして硬化されるとき、約2.9mJ/cm2の用量に暴露された後に少なくとも約40%の反応した二重結合不飽和の割合を達成し、または外部一次コーティング組成物が、該毛管膜として施与されそして硬化されるとき、約2.9mJ/cm2の用量に暴露された後に少なくとも約54%の反応した二重結合不飽和の割合を達成する、請求項1〜6のいずれか1項記載のコーティングされた光ファイバー。
【請求項8】
毛管膜が約0.01〜約150ミクロンの厚さを有する、請求項1〜7のいずれか1項記載のコーティングされた光ファイバー。
【請求項9】
毛管膜が約10〜約100ミクロンの厚さを有する、請求項1〜7のいずれか1項記載のコーティングされた光ファイバー。
【請求項10】
毛管膜が約40〜約50ミクロンの厚さを有する、請求項1〜8のいずれか1項記載のコーティングされた光ファイバー。
【請求項11】
組成物が少なくとも2つの光開始剤を含む、請求項1〜10のいずれか1項記載のコーティングされた光ファイバー。
【請求項12】
光開始剤が遊離ラジカル型光開始剤である、請求項11記載のコーティングされた光ファイバー。
【請求項13】
硬化された内部一次コーティングが、ガラス板上に500ミクロン厚さの層として施与されそして0.2m3/分の窒素(N2)下で約1.0J/cm2の用量で硬化されるところの照射硬化可能な組成物から製造されるときで、かつその後その上に外部一次コーティングが施与されそして硬化されるときに、低い強度の蛍光下で8週間エージングした後に約30未満の色変化ΔEを示す、請求項1〜12のいずれか1項記載のコーティングされた光ファイバー。
【請求項14】
硬化された内部一次コーティングが、低い強度の蛍光下で8週間エージングした後に約20未満の色変化ΔEを示す、請求項13記載のコーティングされた光ファイバー。
【請求項15】
外部一次コーティングが、ガラス板上に500ミクロン厚さの層として施与されそして0.2m3/分の窒素(N2)下で約1.0J/cm2の用量で硬化されるところの照射硬化可能な組成物から製造されるとき、低い強度の蛍光下で8週間エージングした後に約20未満の色変化ΔEを示す、請求項1〜13のいずれか1項記載のコーティングされた光ファイバー。
【請求項16】
外部一次コーティングが、約125℃の温度で8週間エージングした後に約75未満の色変化ΔEを示す、請求項15記載のコーティングされた光ファイバー。
【請求項17】
硬化された外部一次コーティングが、低い強度の蛍光下で8週間エージングした後に約10未満の色変化ΔEを示す、請求項15記載のコーティングされた光ファイバー。
【請求項18】
(A)オリゴマー、(B)反応性希釈剤、および(C)各々の光開始剤の吸収スペクトルの和であるところのメタノール中の総吸収スペクトルが下記の通りであるところの、少なくとも2つの遊離ラジカル光開始剤の光開始剤パッケージ、ここで、該総吸収スペクトルは、280nm(λ1)〜320nm(λ2)の範囲において、少なくとも約525lmol-1cm-1のモル吸光係数εの最小値(εmin)を有し、または280nm(λ1)〜320nm(λ2)の範囲において、少なくとも約980lmol-1cm-1のεの平均値(εav)を有する、を含む照射硬化可能な組成物。
【請求項19】
280nm(λ1)〜320nm(λ2)の範囲における光開始剤(Ci)のメタノール中での総吸収スペクトルが、少なくとも約600lmol-1cm-1のεの最小値(εmin)または少なくとも約1200lmol-1cm-1のεの平均値(εav)を有する、請求項18記載の照射硬化可能な組成物。
【請求項20】
光開始剤パッケージの総吸収スペクトルが、280nm〜320nmの範囲においてピークまたは肩を示す、請求項18〜19のいずれか1項記載の照射硬化可能な組成物。
【請求項21】
(A)オリゴマー、(B)反応性希釈剤、および(C)少なくとも3つの遊離ラジカル光開始剤、ここで(i)光開始剤の少なくとも1つが、240nm〜360nmの範囲での2つの吸収最大の差Δmax(1ij)=(λmax1j−(λmax1iが少なくとも約15nmであるアセトニトリル中での吸収スペクトルを有し、かつ(ii)光開始剤の少なくとも2つ(1および2)を考慮するとき、280nm〜320nmの範囲での光開始剤1のアセトニトリル中での吸収スペクトルの吸収最大(λmax1と光開始剤2のアセトニトリル中での吸収スペクトルの吸収最大(λmax2との差Δmax(12)=(λmax2−(λmax1が少なくとも約5nmであるを含む照射硬化可能な組成物。
【請求項22】
光開始剤の少なくとも1つがリン、硫黄または窒素原子を含む、請求項18〜21のいずれか1項記載の照射硬化可能な組成物。
【請求項23】
光開始剤パッケージが、リン原子を含有する光開始剤と硫黄原子を含有する光開始剤との少なくとも1つの組み合わせを含む、請求項18〜22のいずれか1項記載の照射硬化可能な組成物。
【請求項24】
(A)オリゴマー、(B)反応性希釈剤、および(C)少なくとも4つの異なる光開始剤(C1)、(C2)、(C3)および(C4)を含む、光ガラスファイバー用の照射硬化可能なコーティング組成物。
【請求項25】
化合物(C)の総量が、コーティング組成物の総量に対して約0.10〜約20.0重量%である、請求項18〜24のいずれか1項記載の照射硬化可能なコーティング組成物。
【請求項26】
化合物(C1)、(C2)、(C3)および(C4)が各々、コーティング組成物の総量に対して約0.03〜約10.0重量%の量で存在する、請求項24〜25のいずれか1項記載の照射硬化可能なコーティング組成物。
【請求項27】
化合物(Ci)が遊離ラジカル光開始剤である、請求項18〜26のいずれか1項記載の照射硬化可能なコーティング組成物。
【請求項28】
化合物(Ci)の少なくとも2つが、ホモリチック遊離ラジカル光開始剤である、請求項27記載の照射硬化可能なコーティング組成物。
【請求項29】
化合物(Ci)の少なくとも2つが、α−開裂ホモリチック遊離ラジカル光開始剤である、請求項27記載の照射硬化可能なコーティング組成物。
【請求項30】
(C)が、リン原子を含有する光開始剤と硫黄原子を含有する光開始剤との少なくとも1つの組み合わせを含む、請求項29記載の照射硬化可能なコーティング組成物。
【請求項31】
化合物(Ci)の少なくとも1つがオリゴマーである、請求項30記載の照射硬化可能なコーティング組成物。
【請求項32】
化合物(C)が、コーティング組成物の総量に対して夫々に0.05〜4.0重量%の量で存在する5つの異なるα−開裂ホモリチック遊離ラジカル光開始剤(C1)〜(C5)を含む、請求項18〜31のいずれか1項記載の照射硬化可能なコーティング組成物。
【請求項33】
各光開始剤(Ci)が、コーティング組成物の総量に対して0.1〜2.5重量%の量で存在する、請求項32記載の照射硬化可能なコーティング組成物。
【請求項34】
(A)がウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーである、請求項18〜33のいずれか1項記載の照射硬化可能なコーティング組成物。
【請求項35】
硬化されるときのコーティングが内部一次コーティングである、請求項18〜34のいずれか1項記載の照射硬化可能なコーティング組成物。
【請求項36】
組成物が、ランベルト−ベールの法則を満たすように選択される厚さを有する毛管膜として施与されそして100W中圧水銀ランプによって硬化されるとき、約4.4mJ/cm2の用量に暴露された後に少なくとも約54%の反応した二重結合不飽和の割合を有する、請求項35記載の照射硬化可能な内部一次コーティング組成物。
【請求項37】
硬化されるときのコーティングが外部一次コーティングである、請求項18〜34のいずれか1項記載の照射硬化可能なコーティング組成物。
【請求項38】
組成物が、ランベルト−ベールの法則を満たすように選択される厚さを有する毛管膜として施与されそして100W中圧水銀ランプによって硬化されるとき、約4.4mJ/cm2の用量に暴露された後に少なくとも約56%の反応した二重結合不飽和の割合を有する、請求項37記載の照射硬化可能な外部一次コーティング組成物。
【請求項39】
硬化されるときのコーティングがマトリックスまたは括束物質である、請求項18〜34のいずれか1項記載の照射硬化可能なコーティング組成物。
【請求項40】
組成物が着色されている、請求項35〜39のいずれか1項記載の照射硬化可能なコーティング組成物。
【請求項41】
組成物が、280〜320nmの範囲においてその放射の少なくとも6%を有するランプによって硬化される、請求項18〜40いずれか1項記載の組成物から誘導された硬化されたコーティング。
【請求項42】
コーティング組成物の総量に対して夫々に0.3〜1.5重量%の量で存在する3以上の遊離ラジカル光開始剤を組み合わせることにより照射硬化可能な組成物の硬化速度を増加させる方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−136426(P2012−136426A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−31968(P2012−31968)
【出願日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【分割の表示】特願2001−575521(P2001−575521)の分割
【原出願日】平成13年4月5日(2001.4.5)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】