説明

コーティングされた粒子およびコーティングされた粒子を含んでいるコーティング組成物

本発明は、架橋されたポリシロキサンコーティングと粒子とを含んでいるコーティングされた粒子、および当該コーティングされた粒子の製造方法に関する。さらに、本発明は、該コーティングされた粒子を使用して、物品の表面特性を改良する方法、および該コーティングされた粒子を含んでいる物質組成物、特にコーティング組成物に関する。本発明に従うと、ヒドロキシル官能基を持つ表面を有する粒子と、式(I)


(この式で、nは1〜25であり、各Rは同一のまたは異なった炭化水素基である。)に従うポリシロキサンジシラノールおよびコーティング架橋剤、好ましくは3または4のアルコキシ基を有するアルコキシシランの反応生成物を含んでいる架橋されたポリシロキサンコーティングと、を含んでいるコーティングされた粒子が提供され、該ポリシロキサンコーティングは、該粒子上の該ヒドロキシ官能基との反応によって該粒子表面に少なくとも部分的にグラフトされている。該コーティングされた粒子は、改良された表面特性を特にコーティング物に与えるために使用されることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子とポリシロキサンコーティングとを含んでいるコーティングされた粒子、および当該コーティングされた粒子の製造方法に関する。さらに、本発明は、該コーティングされた粒子を使用して、物品の表面特性を改良する方法、および該コーティングされた粒子を含んでいるポリマー組成物、特にコーティング組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、膜形成バインダー系(すなわち、架橋性樹脂および架橋剤)およびそのポリシロキサン上の有機置換基に結合された少なくとも1の反応性官能基を有するところの1以上のポリシロキサン、複数種の粒子、および該ポリシロキサンの任意の反応性官能基と反応性である1以上の官能基を含んでいる少なくとも1の硬化剤を含んでいるコーティング組成物を記載している。該ポリシロキサンの有機官能基(たとえば、アルキレンヒドロキシル基)は、該コーティング組成物の(1または複数の)架橋剤、たとえばアミノ樹脂およびポリイソシアネートと化学的に反応する。該コーティング組成物の硬化の際に、ポリシロキサン界面活性剤の存在の故に、該粒子はコーティングの表面に移行する。該コーティング組成物は、物品、たとえばオートバイ、自動車、列車、バス、トラック、および飛行機の仕上げ塗装のための、顔料非含有トップまたはクリアコーティング組成物に使用されて、高い耐擦傷性を提供する。特許文献2に述べられているように、この発明の欠点は、少なくとも1の反応性官能基を有するこのようなポリシロキサンのタイプが高コストであること、および不満足な再塗装特性の故に該コーティング組成物が酸系接着促進剤も含有しなければならないことが要求されることである。さらなる不利な点は、耐擦傷性を有意に改良するために該ポリシロキサンが比較的大量に要求されることがヘイズ(曇り)の生成の危険性が高いことを意味し、これはクリアコーティングでは特に望ましくないことである。
【特許文献1】国際公開第01/09260号パンフレット
【特許文献1】国際公開第03/011992号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、本発明の目的は、比較的安価に、クリアコーティングにヘイズを生成する恐れなく良好な耐擦傷性を提供する、特にコーティング組成物のための粒子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明に従うと、ヒドロキシル官能基を持つ表面を有する粒子と、式I

(この式で、nは1〜25であり、各Rは同一のまたは異なった炭化水素基である。)
に従うポリシロキサンジシラノールとコーティング架橋剤の反応生成物を含んでいる架橋されたポリシロキサンコーティングと、を含んでいるコーティングされた粒子が提供され、該ポリシロキサンコーティングは、該粒子上の該ヒドロキシ官能基との反応によって該粒子表面に少なくとも部分的にグラフトされている。
【発明の効果】
【0005】
本発明に従うコーティングされた粒子は、物品、たとえばオートバイ、自動車、列車、バス、トラック、および飛行機の仕上げ塗装における、顔料非含有トップコーティングまたはクリアコーティングを造るためのコーティング組成物へ使用されるための優れた特性を有することが発見された。金属の表面のみならず、プラスチック物品の表面も本発明に従うコーティング組成物でコーティングされることができることが発見された。ポリシロキサンジシラノールは比較的安価であり、良好な耐擦傷性を達成するために要求される該粒子上のポリシロキサンコーティングの量は比較的少なく、その故にコーティングされた粒子は比較的安価である。本発明に従うコーティングされた粒子のさらなる利点は、本発明に従うコーティングされた粒子を含んでいるコーティング組成物で、コーティングされた物品を再仕上げ塗装または再塗装することが、より容易であることである。より容易とは、従来技術とは対照的に、良好な修復性または第二のコーティングの接着を達成するために、別途の手段、予備処理またはコーティング組成物添加剤(たとえば、ボレート)が必要とされないことである。優れた再塗装性は、所望のレベルの耐擦傷性を達成するために必要とされる、コーティングされた粒子中のポリシロキサンコーティングの量が比較的少ないこと、およびコーティングされた粒子の量が比較的少ないことの故と考えられる。他の利点は、コーティングされた粒子が改良された加水分解安定性を有して、それが該コーティング粒子を含有するコーティング組成物の耐久性を改良することである。ポリシロキサンがナノ粒子上へとグラフトされていない特許文献1の従来技術と比較して、最終コーティングにヘイズが生じる恐れなく、耐擦傷性が改良される。
【0006】
欧州特許第0832947号は、(サイズが1ミクロン未満の)表面反応性無機微粒子の導入によって改良された乾燥耐擦傷性を有する膜形成バインダー系(すなわち、架橋性樹脂および架橋剤)を含有する自動車クリアコーティングを記載している。無機(粒子)相とポリマー相とを共有結合させる二元的な官能性を有する広範なアルコキシシランカップリング剤(たとえば、カルバメートまたはグリシドキシシラン)の一つを使用することによって、該微粒子、たとえばコロイドシリカの表面は反応性にされる。しかし、乾燥耐擦傷性の満足できる改良を達成するためには、ナノ粒子の高い充填量が要求され、これは高コストおよび脆さの原因となる不都合がある。さらに、これらの粒子によって耐洗車擦傷性は有意には改良されないことが見出された。
【0007】
欧州特許第0832947号とは対照的に、コーティング組成物の硬化の際に、本発明に従うコーティングされた粒子はコーティングの表面に移行することが発見された。この効果の故に、耐性の改良を達成するために、比較的少量のみのコーティングされた粒子がコーティング組成物中に必要である。
【0008】
欧州特許第0860478号は、増粘剤、強化フィラーまたは粉体流動性向上剤として使用するためにポリシロキサンによって表面変性された金属酸化物微粒子、特にヒュームドシリカを記載している。少なくとも部分的に凝集された一次固形ナノ粒子がまずシランカップリング剤中へ混合されそれと反応され、そして溶媒および副生成物の除去後、反応性末端基を有するオルガノポリシロキサンと反応されるプロセスで、該変性された粒子は製造される。該ポリシロキサンと該粒子との反応の際にコーティング架橋剤が存在しないので、該粒子は、架橋されたポリシロキサンコーティングを有していない。この従来技術の変性された粒子は、いくつかの理由からコーティング組成物への使用に適さない。事実、この従来技術の文献はこのような用途を記載していない。該従来技術のコーティングされた粒子上の架橋されていないコーティングは、非常に緻密というわけではなく、溶媒中で容易に膨潤し、レオロジー的に活性になることがある。さらに、該金属酸化物微粒子は容易に凝集するので、および該記載されたポリシロキサンの長さは典型的にはクリアコーティングへ適用するためには大きすぎるので、該従来技術の粒子は、ヘイズおよび/または比較的低い耐擦傷性の改良をもたらすだろう。
【0009】
欧州特許第1236773号は、Si含有有機化合物で表面変性された焼成粒子を記載している。該刊行物は多数の好適な様々なSi化合物を挙げており、オルガノシランおよびポリシロキサンが含まれている。欧州特許第1304361号は同様に、特定のシロキサンを有するシリカのコーティングを記載している。これらの刊行物における変性粒子の問題および不都合は、欧州特許第0860478号について上記したのと同様である。
【0010】
欧州特許第1046689号はポリジアルコキシシロキサン、反応性末端基を有するポリシロキサン、硬化触媒および硬化剤を含んでいるコーティング組成物並びに得られたコーティング物を記載している。透明な非濡れ性(撥水性)ポリシロキサンコーティング、たとえば自動車または飛行機の窓用のものを提供するために、該組成物は使用される。該組成物は任意的にコロイドシリカを含んでいてもよい。しかし、該刊行物はコーティングされた粒子については記載していない。ポリマー組成物、特にコーティング組成物における表面特性を改良するために、該コーティング組成物は使用されることができない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
原則的に、コーティング架橋剤はポリシロキサンジシラノール化合物を架橋するのに適した任意の化合物であることができ、たとえばボレート、チタネート、ホスフェートおよびシランである。コーティング架橋剤は、粒子表面上のヒドロキシル官能基およびポリシロキサンジシラノールのシラノール基の双方と反応して、該粒子表面上の該ヒドロキシ官能基にグラフトされている、密に架橋された緻密なポリシロキサンコーティング層をもたらすことができる。ポリシロキサンを架橋させて架橋されたポリシロキサンコーティングを形成する能力がある剤を、コーティング架橋剤は意味する。コーティング架橋剤は少なくとも三個の反応性基を有する分子を含んでいなければならないことを(二個の反応性基は直鎖の伸長をもたらすのみだろうから)、これは意味する。
【0012】
本発明に従うコーティングされた粒子において、コーティング架橋剤が[R'O]−Si−[R'']4−m(この式で、m=3または4、並びにR'およびR''は炭化水素基である。)の構造を有するアルコキシシランであるときに、非常に良好な結果が得られた。ポリシロキサンジシラノールに対する、および特に粒子が部分的に有機変性されたシリカ粒子であるときの粒子表面上のヒドロキシル基に対する、非常に良好な反応性を、該アルコキシシランは有する。さらなる利点は、該コーティング架橋剤がコーティングの無極性の性質を阻害しないことである。さらに、形成されたコーティングは加水分解に対して安定である。該アルコキシシランにおいて、炭化水素基R'およびR''は、好ましくは1〜8、好ましくは1〜4の炭素を有するアルキル基である。特に好まれるコーティング架橋剤は、テトラエトキシシラン(TEOS)またはトリエトキシ(若しくはメトキシ)メチル(若しくはエチル)シランである。3〜4の平均nおよび8.1〜12.3のOH重量%を有するポリジメチルシロキサンジシラノールが、Dow Corning(商標)4−7041 INT短鎖ジオールの商品名下にDow Corning社から商業的に入手できる。
【0013】
実際にはコーティング架橋剤は、しばしば様々な数の反応性基を有する分子の混合物であり、3〜4の反応性基を有するコーティング架橋剤分子およびまた1〜2の反応性基を有する分子も含んでいる。この場合、分子当たりの反応性基の平均数は2より多く、好ましくは2.5より多くなければならない。好ましくは、コーティング架橋剤は、しばしば2.5〜4のアルコキシ基の平均数を有する上記のアルコキシシランの混合物である。
【0014】
緻密な架橋されたコーティングを達成するために、ポリシロキサンジシラノールに対するコーティング架橋剤のモル比は、好ましくは2〜0.1、好ましくは1.5〜0.8、最も好ましくは1.2〜0.8である。
【0015】
好ましくは、本発明に従うコーティングされた粒子において、ポリシロキサンジシラノールは1〜10、好ましくは2〜5のシロキサン基の平均数nを有する。シロキサン基がポリシロキサン中にこのような少ない数であれば、コーティングにヘイズが生じる恐れは非常に低く、しかるにコーティング中の架橋効率および架橋密度がより高く、耐擦傷性改良効率がより高いことが発見された。より高い耐擦傷性改良効率とは、コーティングされた粒子がより少ない量で添加されても、ある改良が実現されることができることを意味する。好ましくは、本発明に従うコーティングされた粒子において、ポリシロキサンジシラノール上の炭化水素Rは疎水性基、たとえばアルキル、アリールまたはアラルキル基、好ましくは1〜4炭素原子を有するアルキルである。最も好ましくは、ポリシロキサンジシラノールはポリジメチルシロキサンジシラノールである。
【0016】
粒子表面上の全てのヒドロキシ基が、ポリシロキサンジシラノールまたはコーティング架橋剤のいずれかと反応するとは限らない。粒子表面上のヒドロキシ官能基は、好ましくはアルコールで部分的にエステル化されている。その利点は、コーティングされた粒子がより疎水性であり、より高い耐擦傷性改良効率を有することである。
【0017】
コーティングされた粒子においては、該粒子は好ましくは1〜400ナノメートルの平均直径を有するナノ粒子である。球形粒子の場合には直径、板状粒子の場合には厚さ、針状粒子の場合には断面直径が、可視光の最短波長である400nm未満でなければならないことを、平均直径は意味する。ナノ粒子は可視光では目に見えず、したがってクリアコーティングに使用されることができる。さらに、ナノ粒子はコーティングの表面により容易に移行し、そこにいればナノ粒子は耐擦傷性を提供するためにより効果的である。この観点から、粒子が1〜150ナノメートルの平均直径を有することがより好まれる。ナノ粒子はクラスター(凝集体)を形成することがある。このようなナノ粒子クラスターが目に見えるようになり、クリアコーティングにヘイズを生じさせることを防止するために、ナノ粒子が1〜50ナノメートルの平均直径を有することが最も好まれる。
【0018】
本発明の利点の一つは、コーティングされた粒子が比較的少ない量のポリシロキサンコーティングを含んでおり、それにもかかわらず良好な耐擦傷性改良効率を示すことである。典型的には、コーティングされた粒子中の粒子の重量割合は、当該粒子、コーティング架橋剤およびポリシロキサンの全重量に対する(任意的にアルコールでエステル化された)粒子の重量のパーセントとして定義された30〜99重量%である。50重量%超、好ましくは60重量%超、70重量%超においてさえ、ときには80重量%さえの粒子重量割合において、良好な結果が得られることができるだろう。良好な耐擦傷性改良効率を達成するために、小さい粒子はより多い量のコーティングを必要とすることが発見された。粒子が4〜50ナノメートルの平均直径を有し、かつ、その重量割合が50〜99重量%であるコーティングされた粒子を用いて、良好な結果が得られることができる。好ましくは、粒子は5〜40ナノメートルの平均直径を有し、かつ、コーティングされた粒子中の粒子の重量割合は50〜97重量%であり、最も好ましくは、粒子は5〜30ナノメートルの平均直径を有し、かつコーティングされた粒子中の粒子の重量割合は50〜95重量%である。
【0019】
好まれる実施態様では、ナノシリカ粒子を含んでいる本発明に従うコーティングされた粒子は、任意的に部分的にエステル化されたヒドロキシ官能基を持つ表面と、式I

(この式で、nは1〜25であり、各Rは1〜4炭素原子を有する、同一のまたは異なった炭化水素基である。)
に従うポリシロキサンジシラノールおよび[R'O]−Si−[R'']4−m(この式で、m=3若しくは4(または2.5〜4のアルコキシ基の平均数mを有するアルコキシシランの混合物)、並びにR'およびR''は炭化水素基である。)の構造を有するコーティング架橋剤としてのアルコキシシランの反応生成物を含んでいるポリシロキサンコーティングと、を有し、該ポリシロキサンコーティングは該粒子上の基との反応によって該粒子表面に少なくとも部分的にグラフトされており、該ポリシロキサンジシラノールに対する該コーティング架橋剤のモル比は2〜0.1であり、該粒子は4〜50ナノメートルの平均直径を有し、該コーティングされた粒子中の粒子の重量割合は(該コーティングされた粒子の全重量に対して)50〜99重量%であり、かつ、該ポリシロキサンジシラノール上の該炭化水素は1〜4炭素原子を有するアルキルである。
【0020】
本発明に従うコーティングされた粒子中の粒子は、その目的とされる用途を考慮して選択される。本発明に従うコーティングされた粒子は、該粒子を表面に持ってくるために使用されることができ、そこにあれば該粒子はより効果的であり、その故にクリアトップコーティングにヘイズを生じる恐れなく、該コーティングされた粒子のより効率的な(同じ効果レベルを得るために必要な量がより少ない)使用ができる。該粒子は、風化作用、磨耗、紫外線照射、酸化、泥汚れ、落書きに対してポリマーマトリックスを保護するための特性を有し、若しくはそのための化合物を含有することができ、または外部から接近される必要がある化合物、たとえば顔料若しくはレーザーマーキング化合物のようなマーキング化合物を含有することができる。反射を増加するための高い屈折率または反射を低減するための低反射を有する化合物を、該粒子は含有することができる。該粒子は有機性または無機性であることができる。耐擦傷性を改良するために、該粒子は好ましくは無機ナノ粒子であり、好ましくはシリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア、1のタイプの無機酸化物の核でその上に別のタイプの無機酸化物が堆積されているもの、これらの混成物および/または混合物、ガラス、鉱物粘土または合成粘土、ゼオライト並びにその粒子表面上にヒドロキシル基を有するところの有機粒子の群から選択される。本発明のコーティング組成物に適した無機ナノ粒子は、好ましくは本質的に無色であって、着色されないときに該コーティング組成物の光透過特性を著しく妨げないものである。
【0021】
コーティングの高い耐擦傷性および耐洗車性を得る観点から、コーティングされた粒子中の粒子は、好ましくはシリカ粒子である。シリカ粒子のさらなる利点は、加水分解に対して非常に安定である[Si−O−Si]結合によって、ポリシロキサンジシラノールがシリカ粒子に結合されていることである。ポリシロキサンジシラノールは、シリカ粒子上へと十分にグラフトされることが発見された。これは、特にシラノール基と炭素ヒドロキシル基との相対的に低い反応性と比較して、シラノール基が他のシラノール基に対して良好な反応性を有する故と考えられる。本発明の組成物のための無機ナノ粒子の特に好まれる種類は、約1〜約150ナノメートル(nm)、好ましくは約1〜約100nm、最も好ましくは約3.5〜約50nmの範囲にある平均粒子直径を有するシリカのゾルである。
【0022】
本発明は、さらに本発明に従うコーティングされた粒子を調製するための特に好まれる方法に関し、該方法では、高められた温度において、無極性有機コロイド分散物中の粒子と、
a)式I

(この式で、nは1〜25であり、各Rは同一のまたは異なった炭化水素基である。)
に従うポリシロキサンジシラノール、および
b)コーティング架橋基、好ましくは[R'O]−Si−[R'']4−mの構造を有するアルコキシシラン(この式で、m=3または4、並びにR'およびR''は同一のまたは異なった炭化水素基である。)
と、を反応させることによって、ポリシロキサンコーティングが粒子上へとグラフトされる。
【0023】
この方法の利点は、分散物中並びに/または得られたコーティング中に凝集およびそれに付随するヘイズを生じることなく、粒子が分散物中に非常に均一に分布していることである。
【0024】
無極性有機コロイド分散物(以下、「オルガノゾル」)中の有機変性された粒子は、商業的に入手できる。これが手に入らないときは、極性オルガノゾル、たとえばエタノール中のエトキシル化粒子分散物中の極性溶媒を無極性溶媒に、たとえば蒸留によって置き換えることによって調製されることができる。本発明に従う方法においては、無極性有機コロイド分散物中の有機変性された粒子は、好ましくは
a)水中に分散された粒子(以下、「アクアゾル」)を用意する段階、
b)該アクアゾルに有機反応物質を添加して、該粒子表面上のヒドロキシ官能基の少なくとも一部と反応させて、有機変性された粒子を形成する段階、
c)該有機変性された粒子に無極性有機溶媒を供給して、無極性有機コロイド分散物(以下、「オルガノゾル」)を生成する段階、および
d)段階b)および/若しくはc)の間に並びに/またはその後に、水を除去する段階
を含む方法で製造される。
【0025】
段階b)において、ナノ粒子は反応物質によってコロイド分散物の形に至らされる。好ましくは、該粒子表面上のヒドロキシ官能基はアルコール、好ましくは低級一価アルコール、好ましくはメタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノールで少なくとも部分的にエステル化される。親水性粒子は、このようにして疎水性粒子へ転化されて、有機媒体中の安定な分散物が生成される。
【0026】
このようなアルコール中コロイドシリカ分散物を調製する技術は知られている。アルコールへ水性シリカゾルを制御しながら添加し、好ましくはたとえばアルコールのヒドロキシル基と粒子上のヒドロキシル基、好ましくは該粒子がシリカの場合にはコロイドシリカのシラノール基(Si−OH)のヒドロキシル基との間の化学反応をある程度まで達成するのに少なくとも十分な高い温度における共沸蒸留によって水を同時に除去することによって、このようなコロイド分散物は調製されることができる。この生成物は時にはアルコゾルと呼ばれ、化学変性された表面を有する(シリカ)粒子を含有する。モノアルコールで部分的にエステル化する他の方法は、ジアルコキシケタール、たとえばジメトキシプロパンを使用して、ナノシリカアクアゾルをアルコールおよびケトンを液状担体として含んでいるオルガノゾルへと転化することである。
【0027】
段階c)において、無極性溶媒が供給され、これは好ましくは該反応物質(好ましくはアルコールおよび任意的に第二の低沸点反応物質)よりも高沸点である。好ましくは10重量%未満、好ましくは5重量%未満、より好ましくは2重量%未満の残留量まで、(極性)反応物質は好ましくは蒸留によって無極性溶媒と交換されて、極性反応物質と粒子上のヒドロキシ官能基またはコーティング架橋剤、特にアルコキシシラン基との間の望まれていない反応が防止される。
【0028】
好まれる無極性溶媒は、ケトン(たとえば、2−ヘプタノン)、ブチルアセテート、キシレンであり、全て適用された反応物質よりも高い温度で沸騰する。沸点の要件を考慮して、好ましくは最大でも4炭素原子を有するアルコールが使用される。エステル化されたナノシリカの良好な相容性、したがって良好なコロイド安定性を与えることを考慮して、さらに第二段階においてコロイド安定性を損なうことなくシロキサンおよびシランを用いたさらなる誘導体化を可能にすることを考慮して、無極性溶媒は選択される。このような文脈においては、2−ヘプタノンが非常に適した無極性溶媒であるようである。
【0029】
シリカのコロイドオルガノゾルに、ポリシロキサンジシラノール、好ましくはポリジメチルシロキサンジシラノールが、コーティング架橋剤、好ましくは上記のアルコキシシラン、および任意的に、高められた温度においてシラノール(Si−OH)とSi−アルコキシとの縮合反応を促進するための触媒、好ましくはジブチルスズジラウレートとともに添加される。該粒子、該コーティング架橋剤および該ポリシロキサンジシラノール間の反応は、好ましくは40〜150℃に該混合物を加熱しながら実施され、その間にアルコールが除去される。反応の終了時に、得られたコロイド分散物を濃縮するために、無極性溶媒の一部が除去されることができる。コーティングされた粒子の全重量当たりの粒子の重量割合は、少なくとも50%である。
【0030】
水性媒体中のシリカゾル(ヒドロゾル、アクアゾルまたはコロイドシリカとも呼ばれる。)は、たとえばアルカリ金属ケイ酸塩、通常ケイ酸ナトリウムの水性溶液を典型的には約8〜約9のpHまで酸で部分的に中和することによって調製されることができ、その結果、得られた溶液のナトリウム含有量は酸化ナトリウム当たり普通には約1重量パーセント未満である。幾分異なった、より低度に普通の手法は、水性ケイ酸ナトリウム溶液を十分な酸と反応させて、酸性ゾルとし、そして強酸性媒体中でナトリウム塩を沈殿させることを含む。この代替手法は、ポリケイ酸は約2のpHで一時的に安定であるという特性を利用しており、ケイ酸ナトリウムを中和するために使用される該酸のナトリウム塩が十分に不溶性であるならば、これは沈殿され分離されることができる。酸性ゾルから該塩が分離されると、該ゾルはアルカリ性にされて、コロイド粒子を成長させ、生成物を安定化させることができ、またはシリカ粒子を所望のサイズに成長させる他の公知の方法に用いられることができる。
【0031】
シリカのアクアゾルは、コロイドシリカとも呼ばれ、本発明に従うコーティングされたシリカ粒子を調製するための好まれる出発物質である。該コロイド分散物は、たとえばAkzo Nobel社によってBindzilおよびNyacolの商品名下に販売されている。とりわけNyacol 2034 DIは、本発明に卓越して適用可能であるようであった。このNyacol 2034 DIは、固形含有量34%およびpH2.5を有するナノシリカの乳白色のアクアゾルである。比表面積は180〜200m/gであり、粒子範囲は10〜20nmであり、平均直径16nmを有する。シリカ上にはシラノール基4.6個毎nmが期待されるので、シラノール基約1.45ミリモル/固形ナノシリカgがその表面に存在すると計算される。
【0032】
制御された粒子サイズの均一な球形シリカ粒子を有するシリカゾルは、適量の水およびアンモニアを含有するアルコール媒体中でテトラアルキルオルトケイ酸塩のような低級アルコキシシランを加水分解することによって調製されることもできる。この方法はStoberらによってJOURNAL OF COLLOID AND INTERFACE SCIENCE誌、第26巻、p.62〜69(1968年刊)に記載され、この開示は引用によって本明細書に取り込まれる。
【0033】
本発明は、さらに上記の方法によって得られることができるコーティングされた粒子、コーティングされた粒子のコロイド分散物、特にコーティングされたコロイドシリカ粒子分散物に関する。変性されたナノ粒子のコロイド分散物の特段の利点は、該粒子が凝集する恐れなく、コーティング組成物に容易に転換されることができることである。たとえば、好まれる実施態様では、コーティングされた粒子のコロイド分散物は、架橋性バインダーの溶液と「冷ブレンドされ」て、クリア〜乳白色の外観を有する長期安定なコロイド分散物にされる。この分散物は、期限までにさらに架橋剤、さらなる溶媒および添加剤を配合されて、コーティング組成物を形成することができる。
【0034】
本発明は、本発明に従うコーティングされた粒子をポリマー組成物に使用する方法にも関し、特にポリマー物質および本発明に従うコーティングされた粒子を含んでいるポリマー組成物に関する。該ポリマー物質は熱可塑性ポリマー(すなわち、架橋性ポリマーではない。)であることができるが、好ましくは膜形成特性を考慮すると架橋性ポリマーである。本発明は、より特にポリマーバインダー系、架橋剤、および本発明に従うコーティングされた粒子を含んでいるコーティング組成物に関する。
【0035】
ポリマーバインダー系は、好ましくは溶媒に媒体されたコーティング組成物であるが、任意的に架橋剤と一緒にされたポリマーバインダー物質の水性乳化物または分散物、または粉体状コーティング組成物であることもできる。特に、本発明は、クリアトップコーティング仕上げ塗料または再仕上げ塗料を造るための本質的に顔料を含んでいないクリアコーティング組成物に関する。本質的に顔料を含んでいないとは、(コーティング組成物中の全固形分当たり)10重量%未満、好ましくは5重量%未満、より好ましくは2重量%未満、最も好ましくは1重量%未満の顔料を意味する。
【0036】
本発明に従うコーティング組成物が、(コーティング中の固形分の全重量当たり)0.1〜20重量%のコーティングされた粒子を含んでいれば、良好な結果が得られることができる。好ましくは、該コーティング組成物は、本発明に従うコーティングされた粒子0.1〜15重量%、より好ましくは0.1〜10重量%、さらにより好ましくは0.1〜7重量%、最も好ましくは0.1〜5重量%を含んでいる。3重量%未満または2重量%未満さえの非常に少ない量において、良好な結果が得られることさえできる。
【0037】
膜形成バインダー系は、好ましくは架橋性樹脂および架橋剤を含有する。架橋性樹脂は、本質的に溶媒に基づいた有機コーティング組成物への使用に適した任意の架橋性樹脂であることができる。しばしばこのような架橋性樹脂は、「熱硬化性樹脂」と呼ばれる。本明細書で使用される「架橋性樹脂」の語は、熱をかけられると架橋される能力のある樹脂のみならず、熱をかけられなくても架橋される能力のある樹脂も包含することが意図される。このような架橋性樹脂の例は、ヒドロキシル基、カルバメート基、エポキシ基、カルボキシル基、酸無水物基およびこれらのいずれかの混合物から選択された1以上の官能基を有する一般的に知られた熱硬化性アクリルおよびポリエステルを含む。
【0038】
アクリル樹脂とは、アクリル酸およびメタクリル酸およびこれらのエステル誘導体、アクリルアミドおよびメタクリルアミド、並びにアクリルニトリルおよびメタクリルニトリルの一般的に知られた付加ポリマーおよびコポリマーを言う。
【0039】
ポリエステル樹脂は一般的に知られており、多価アルコールおよびポリカルボン酸を使用する慣用の技術によって調製される。さらに、ポリエステルは、脂肪酸または脂肪酸のグリセリド油で変性されたポリエステル(すなわち、慣用のアルキド樹脂)を包含することが意図される。
【0040】
好適な架橋性樹脂の非限定的な例は、アミノ樹脂(すなわち、1K配合物)および/またはポリイソシアネート架橋性コーティング(2K)組成物に慣用される任意のポリヒドロキシ基含有ポリマーである。
【0041】
特に好適なポリマー物質は、ポリオール、ペンダントのまたは末端のヒドロキシ官能基を有するヒドロキシ官能性アクリル樹脂、ペンダントのまたは末端のヒドロキシ官能基を有するヒドロキシ官能性ポリエステル樹脂、ヒドロキシ官能性ポリウレタン、ポリウレタン変性ポリエステルポリオール、ポリウレタン変性ポリアクリレートポリオール、およびこれらの混合物を包含する。ポリヒドロキシ基含有ポリマーは、分子当たり平均して少なくとも2の、好ましくは2超のヒドロキシ基を有する。好まれるポリヒドロキシ基含有ポリマーは、アクリルまたはポリエステルの骨格を有するものである。
【0042】
ポリヒドロキシ基含有ポリマーは、好ましくは少なくとも1,000〜約2,000,000の重量平均分子量を有する。普通には、重量平均分子量は2,000〜1,000,000、より好ましくは2,000〜800,000、最も好ましくは2,500〜100,000である。重量平均分子量は用途の要件に依存し、該分子量をそれに応じて変性する方法は当業者に知られている。
【0043】
好ましくは、コーティング組成物は20〜300mgKOH/ポリマーg、より好ましくは60〜200mgKOH/ポリマーgのヒドロキシ価を有するポリマーを含んでいる。このようなポリヒドロキシ含有ポリマーは商業的に入手できる。
【0044】
コーティング組成物は、エポキシ官能性バインダーおよび該エポキシ基と反応性のポリ酸架橋剤を含んでいることもできる。エポキシ樹脂は一般的に知られており、1より多い1,2−エポキシ基を有する化合物または化合物の混合物を言う。該ポリエポキシドは、飽和若しくは不飽和の、脂肪族、脂環式、芳香族またはヘテロ環式であることができる。
【0045】
コーティング組成物は、カルバメート官能性バインダーおよび該カルバメート基と反応性のメラミン架橋剤を含んでいることもできる。エチレン性不飽和モノマーとカルバメート官能性ビニルモノマー、たとえばメタクリル酸のカルバメート官能性アルキルエステルとを共重合することによって、カルバメート官能基はポリマーバインダー物質中へと取り込まれることができる。カルバメート樹脂およびその製品は一般に知られており、1より多いカルバメート基を有する化合物または化合物の混合物を言う。米国特許第3,479,328号は引用によって本明細書に取り込まれる。また、ヒドロキシル官能性アクリルポリマーは、イソシアン酸と反応されて、ペンダントのカルバメート基を与えることができる。同様に、ヒドロキシル官能性アクリルポリマーは、尿素と反応されて、ペンダントのカルバメート基を与えることができる。
【0046】
所望されれば、特に架橋性樹脂が活性水素官能基を有する熱硬化性樹脂を含んでいるときに、一般的に知られた架橋剤が本発明の組成物中に取り込まれることができる。当業者であれば正しく理解するように、架橋剤の選択は種々の因子、たとえば膜形成樹脂との相容性および膜形成樹脂上の官能基の特定のタイプ等に左右される。架橋剤の代表的な例は、保護されたおよび/または保護されていないジイソシアネート、ポリイソシアネート、ジエポキシド、アミノプラスト、トリスアルコキシカルボニルトリアジン、カルバメート、環状カーボネート基、および酸無水物基を含む。ヒドロキシ含有バインダーを有する1K(すなわち、1包装)配合物のためのこのような化合物の例は、(モノマー状またはポリマー状メラミン樹脂および部分的にまたは完全にアルキル化されたメラミン樹脂を包含する)メラミンホルムアルデヒド樹脂を含む。
【0047】
アミノプラストはイミノ基およびメチロール基を有し、ある場合にはメチロール基の少なくとも一部がアルコールでエ−テル化されて、硬化応答性が変えられる。任意の一価アルコールがこの目的のために用いられることができ、メタノール、エタノール、n−ブチルアルコール、イソブタノール、およびヘキサノールが包含される。たとえば、Setamine(商標)US 138 BB−70は、Nuplex Resins社からのブチル化されたホルムアルデヒド/メラミン樹脂である。さらなる有用な架橋剤は、メタノールを用いて少なくとも部分的にエ−テル化されたポリマー状メラミン、およびメタノール若しくはエタノールを用いた混合エ−テルまたは(イソ)ブタノールを用いた混合エ−テルである。2K(すなわち、2包装)配合物については、ポリイソシアネートが普通、適用される。たとえば、(Rhodia社からの)Tolonate HDT LVは商業的に入手できるポリイソシアネートである。
【0048】
コーティング組成物において、最も好まれるポリマーバインダーは、架橋剤、好ましくはイソシアネート、アミノプラストまたはメラミンと組み合わされたヒドロキシル官能性アクリルポリマーである。
【0049】
任意的に、コーティング組成物は、触媒、垂れ調節剤、紫外線吸収剤、流れ促進剤、膜形成改良剤、たとえば湿潤剤およびレベリング剤等のような他の添加剤を含んでいることができる。好まれる実施態様では、本発明に従うコーティング組成物は、さらに垂れ調節剤、好ましくはたとえば蘭国特許第7613121号および欧州特許第192304号に開示された(ポリ)イソシアネートとモノアミンとの反応生成物を含んでいる。本発明の好まれる実施態様では、本発明に従うコーティングされた粒子が垂れ調節剤、好ましくは(ポリ)イソシアネートとモノアミンとの反応生成物と一緒にされると、おそらくは非常に低いせん断条件下において粒子の易動度が低減される故に、得られたコーティング組成物の安定性(貯蔵寿命)が増加することが発見される。本発明に従うコーティングされた粒子を垂れ調節剤と混合すると、コーティングされた粒子について、および多分、垂れ調節剤についても、官能性および/または効率の低減が生じると予想されるかも知れないけれども、本発明に従うコーティングされた粒子は有利であることが発見された。何故ならば、本発明に従うコーティングされた粒子は垂れ調節剤、特に上述の(ポリ)イソシアネートとモノアミンとの反応生成物によって厳しくは妨害されないからである。
【0050】
コーティング組成物は、硬化反応を高めるための好適な公知の触媒または保護された触媒を含んでいてもよい。該触媒は該反応を速めるのに十分な量で存在する。コーティング組成物を形成する他の成分に添加されるときは、コーティング組成物を形成する該成分の樹脂固形分の全重量当たり0.1〜5.0重量%の範囲の量で、触媒は存在することができ、典型的には0.5〜1.5重量%の範囲の量で存在する。
【0051】
他の実施態様では、前述のコーティング組成物の形成の際に、付加的な成分が存在することができる。これらの付加的な成分は軟化剤、可塑剤、(たとえばByk Chemie社によって、たとえばByk 358の商品名下に販売されているポリアクリレートのような)レベリング助剤、チキソトロープ剤、排ガス剤、有機共溶媒、流れ調整剤、ヒンダードアミン光安定剤、酸化防止剤、紫外光吸収剤、着色剤または色合剤、および従来技術で慣用的な同様な添加剤、並びにこれらのいずれかの混合物を包含するが、これらに限定されず、コーティング組成物に含められることができる。コーティング組成物を形成する他の成分に添加されるときは、これらの付加的な成分は、コーティング組成物を形成する該成分の樹脂固形分の全重量当たり40重量%までの量で存在することができる。
【0052】
本発明のコーティング組成物は、十分に低粘性の液体状態にあって、たとえば容易なスプレーを可能にすることが望ましいので、該組成物は有機溶媒を含んでいてもよい。有用な有機溶媒の例は、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン、n−アミルアセテート、エチレングリコールブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、キシレン、n−ブチルアセテート、n−ブタノール、または芳香族炭化水素のブレンド、たとえばSolvesso 100を包含する。好ましくは60重量%未満、より好ましくは最大でも約50重量%の量で、溶媒は存在することができる。
【0053】
本発明のコーティング組成物は溶媒に基づいたコーティング組成物、水に基づいたコーティング組成物(たとえば、水に媒体された二次的乳化物)、若しくは固体粒子形態にあるもの、粉体状コーティング組成物、または粉体スラリー若しくは水性分散物の形態にあるものであることができる。本発明の硬化された組成物を形成するために使用される本発明の成分は、有機溶媒中に溶解されまたは分散されることができる。好適な粉体状クリアコートは、米国特許第5,663,240号に記載され、これは引用によって本明細書に取り込まれ、エポキシ官能性アクリルコポリマーおよびポリカルボン酸硬化剤を包含する。本発明のさらなるコーティング組成物は、溶媒に基づいていないが液体形態にあるコーティング組成物であることができ、たとえば紫外線硬化性アクリル化樹脂またはモノマーおよび過酸化物硬化性不飽和物(無水マレイン酸)に基づいたポリエステル/スチレンブレンドである。
【0054】
当該本発明に従うコーティング組成物は、高い膜硬さ、良好な鏡面仕上げ性、良好な耐水性および耐有機溶媒性、良好な耐久性、および良好な耐酸食性を有するクリアな膜を硬化後にもたらす。硬化されたクリア膜中における本発明に従うコーティングされた粒子の主要な利点は、少量のコーティングされた粒子を用いて、5重量%未満という低さでさえも、時には2重量%未満の非常に少量のコーティングされた粒子を用いてさえも、乾燥および/または湿潤耐擦傷性が有意に改良されることである。表面におけるナノ粒子の濃縮が、耐擦傷性への重要な役割を演じているようである。本発明に従うコーティングされた粒子はさらに、比較的安価なケイ素含有化合物(ポリジメチルシロキサンジシラノールおよび好ましくはテトラアルコキシシラン)から製造されることができる。追加の利点は、硬化されたコーティングを同じコーティング組成物で再塗装しても、液膜のはじき(dewetting)のような視認される問題を示さないことである。おそらくこれは、シリカに対するケイ素化合物の重量比が50%未満で、該ケイ素化合物がナノ粒子上に効果的にグラフトされた結果である。
【0055】
本発明に従う硬化性コーティング組成物は、コーティング、たとえば自動車コーティング、一般工業コーティング、焼付けエナメル、および木材塗装に有用である。鋳造成形組成物および接着剤組成物として、並びに光データ記憶装置のコーティングのためにも、これは使用可能である。とりわけ、本発明は当該コーティング組成物を、顔料を含んでいないトップコートまたはクリアコートとして物品、たとえばノブ、ハンドルおよびスイッチ等、オートバイ、自動車、列車、バス、トラック、並びに飛行機の外装品および内装品の仕上げ塗装および再仕上げ塗装に使用する方法に関する。また、顔料を含んでいる固形のトップコートに、該硬化性組成物は適用可能である。
【0056】
本発明の組成物は複合カラー・プラス・クリアコーティングの一部として、着色されたベースコート上のクリアおよび/または無色のコーティング組成物として施与可能である。このような複合コーティングは、その色の深みおよび液状つや出し仕上げの表面外観で人気がある。自動車コーティングの分野で、これは特に広く受け入れられている。
【0057】
本発明のコーティング組成物は、従来技術で周知の多数の手法のいずれかによって物品上にコーティングされることができる。これらは、たとえばスプレーコーティング、浸漬コーティング、ロールコーティングおよびカーテンコーティング等を含む。自動車車体パネルの場合、スプレーコーティングが好まれる。基板とコーティング組成物とを接触させた後、溶媒は部分的に蒸発を許されて、基板上に均一なコーティングが生成される。その後、該組成物は、コーティング層を硬化する条件に付されることができる。
【0058】
架橋化学反応のタイプおよび適用のタイプに応じて、種々の硬化方法が使用されることができる。たとえば、自動車の場合、コーティングされた物品を、主に放射熱源によってもたらされた高められた温度に曝露することによって、熱硬化が実施される。硬化温度はアミノプラストまたはポリイソシアネートおよび使用される官能性ポリマーに応じて様々であろうが、一般に70℃〜190℃、好ましくは110℃〜160℃、最も好ましくは125℃〜150℃の範囲にある。硬化時間は使用される特定の成分および物理的パラメータ、たとえば層の厚さに応じて様々であろうが、典型的な硬化時間は15〜60分間の範囲にある。ポリイソシアネートが架橋剤として大抵は使用される自動車の再仕上げ塗装の場合、強制乾燥条件、たとえば60℃で20〜60分間および周囲温度で7日間が通常の硬化条件である。
【0059】
本発明は、以下の非限定的な実施例によって詳細に説明される。
【0060】
電着鋼板または市販のプライマーおよび市販の濃青色ベースコートをコーティングされたQパネルに、コーティング組成物がスプレー塗布された。該ベースコートは、層の間に1分間のフラッシュオフを置いて2層で施与された。コーティング組成物は、5分間のフラッシュオフ後に、同様に2層で施与された。10分間のフラッシュオフ後に、完成した系が140℃で30分間焼付けされた。
【0061】
Dr.Lange光沢計LMG 070またはByk Haze−Gloss 4601光沢計(ISO 2813に準拠)を使用する慣用の様式で、光沢は測定された。光沢は光沢度(GU)で表され、ヘイズは曇度(HU)で表される。クリアコートの光沢は、いくつかあるパラメータ(たとえば、ゆず肌および凸凹模様)の中でとりわけバインダー・架橋剤系に依存する。ほとんどの実用的な目的のためには、架橋剤としてポリイソシアネートに基づいた2K系は85GU以上の20°光沢を有さなければならず、他方、メラミン架橋剤に基づいた1K系は普通、90GU以上の20°光沢を有する。クリアコートのヘイズは、できるだけ低くなければならない。ヘイズは40HU未満、より好ましくは20HU未満、最も好ましくは15HU未満でなければならない。
【0062】
耐洗車性は、Renault規格RNUR 2204−C.R.PO N°2204に従う小型洗車装置を用いて測定された。この試験では、コーティングされたパネルが10分間、商業的洗車で使用されているものと同様な回転洗車ブラシに付される。この操作の間、仏国パリ、Prolabo社からの酸化アルミニウムペーストDurmax 24Hのスラリーが、パネル全面に連続的にスプレーされる。光沢の損失が、耐洗車性の尺度としてとられる。観察された光沢損失は以下のように、すなわち観察された光沢損失=(初期光沢−最終光沢)/初期光沢*100%と定義される。初期光沢は、硬化されたコーティングの洗車試験前の光沢と定義される。最終光沢は、硬化されたコーティングの洗車試験後の光沢と定義される。Byk Gardner社からのヘイズ光沢測定器を使用するISO 2813に従って、光沢は測定された。洗車試験と光沢損失測定との間の経過時間は、約1〜3時間であった。洗車試験と光沢測定との間、全サンプルは室温で保存された。
【0063】
乾燥条件下の耐擦傷性を測定するために、Rota Hub法が独国、Bayer社によって開発された。Byk−Gardner社からの反射率形を用いて、光沢のデータは得られた。擦傷試験のパラメータは以下のものである。すなわち、XおよびY方向の速度V/V=15/15mm/分、回転速度w=5.0U/秒、ディスク直径r=35mm、研磨物質:コピー紙。擦傷前後で、20°光沢は測定される。
【0064】
乾燥条件下の耐研磨性または耐擦傷性は、クロックメータを使用しても試験された。50mm×50mm正方形の3M社研磨紙(グレード281Q、9ミクロン)が、同様のサイズのフェルト上に該研磨紙の研磨面が外側を向くように置かれた。この二つの正方形が研磨試験器の指上に取付けられた。環状クランプが使用されて、二つの正方形が指上に固定された。試験前に試験表面の20°光沢が測定され、次に試験表面が10回の二重研磨に付された。試験後、研磨された領域の20°光沢が、研磨試験器の研磨動作と平行な方向に測定された。耐研磨性は光沢保持パーセントとして表される。
【0065】
一価アルコールでエステル化されたナノシリカのコロイド分散物
【0066】
準備A.2−ヘプタノン中のメチル−ナノシリカ
【0067】
16nmの平均直径を有するコロイドシリカ34重量%を水中に含有するNyacol2034 DIの200gが、ジメトキシプロパン900gと混合され、室温で一晩撹拌された。翌日、ほとんどクリアな溶液が、アセトンおよびメタノールを留去することによって室温で減圧下に濃縮されて、最後に300gの塊となった。2−ヘプタノン250gを添加した後、アセトンおよびメタノールが該塊からさらに除去されて、最後に300gの重量に達した。最終回としてヘプタノン250gが次いで添加され、該塊は減圧およびいくらかの加熱下に濃縮されて、乳白色の分散物300gとなった。140℃で1時間後に認められた固形分含有量は23.40%であった。乾燥されたメチル−シリカの炭素含有量は、元素分析によって0.94%であると測定され、これはシラノール基がメトキシ−ケイ素基へと部分的に転化されたことを示す。
【0068】
準備B.2−ヘプタノン中のブチル−ナノシリカ
【0069】
Nyacol2034 DIの100gが、エタノール300gおよびn−ブタノール200gと一緒にされた。30℃で減圧下の共沸蒸留によって、該混合物から水が除去されて、最後にコロイド分散物の塊150gに到達した。ヘプタノン250gが次に添加され、該塊は再度150gまで濃縮された。もう一度同じ操作が実施されて、(140℃で1時間後の)固形分含有量22.7%を有する、2−ヘプタノン中のブチル−シリカの青みがかったコロイド分散物が得られた。乾燥されたメチル−シリカの炭素含有量が、元素分析によって1.5%であると測定され、これはシラノール基がブトキシ−ケイ素基へと部分的に転化されたことを示す。
【0070】
準備C.2−ヘプタノン中のブチル−ナノシリカ
【0071】
Nyacol(商標)XP071DI(ナノシリカ37.8%のアクアゾル)210gが、エタノール600gおよびn−ブタノール400gと一緒にされた。50℃で不活性窒素雰囲気(5リットル/時)下の減圧(180ミリバール)下の共沸蒸留によって、混合物から水が除去されて、最後にコロイド分散物の塊478gに到達した。次にヘプタノン300gが添加され、物質315gが約60ミリバールで再度留去された。もう一度ヘプタノン300gが添加され、物質363gが約40ミリバールで留去された。溶液がろ過されて、(125℃で1時間後の)固形分含有量18.9%を有する、2−ヘプタノン中のブチル−シリカのクリアな浅黄色のコロイド分散物が得られた。
【0072】
準備D.2−ヘプタノン中のブチル−ナノシリカ
【0073】
Nyacol(商標)XP073DI(ナノシリカ38.7%のアクアゾル)210gが、エタノール600gおよびn−ブタノール400gと一緒にされた。50℃で不活性窒素雰囲気(5リットル/時)下の減圧(180ミリバール)下の共沸蒸留によって、混合物から水が除去された。715gが留去された後、ヘプタノン300gが添加され、物質340gが約60ミリバールで再度留去された。もう一度ヘプタノン300gが添加され、物質396gが約40ミリバールで留去された。溶液がろ過されて、(125℃で1時間後の)固形分含有量22.2%を有する、2−ヘプタノン中のブチル−シリカのクリアな浅黄色のコロイド分散物が得られた。
【0074】
α,Ω−シラノール末端ポリジメチルシロキサン(=PDMS)およびテトラアルコキシシランのブレンドで変性されたナノシリカのコロイド分散物
【0075】
実施例AA PDMSおよびテトラエトキシシランでグラフトされたメチル−ナノシリカ
【0076】
準備Aで造られたメチル−ナノシリカ生成物120gが、Dow Corning(商標)DC 4−7041短鎖ジオール(すなわち、平均n3〜4およびOH重量%8.1〜12を有するポリジメチルシロキサンジシラノール)5.48g、テトラエトキシシラン(コーティング架橋剤)3.40gおよびジブチルスズジラウレート(触媒)の2−ヘプタノン中2%溶液3.0gと混合された。45℃で一晩加熱後、該アルコールおよび部分的に該2−ヘプタノンを留去することによって、混合物は濃縮された。ろ紙上でろ過後、変性されたナノシリカのコロイド分散物98gが得られた。(140℃で1時間後の)固形分含有量は30.9%であった。
【0077】
実施例BB PDMSおよびテトラエトキシシランでグラフトされたブチル−ナノシリカ
【0078】
準備Bで造られたブチル−ナノシリカ生成物119.1gが、Dow Corning(商標)DC 4−7041短鎖ジオール5.48g、テトラエトキシシラン3.41g、2−ヘプタノン0.9gおよびジブチルスズジラウレートの2−ヘプタノン中2%溶液3.0gと混合された。混合物は撹拌され、130℃〜135℃で約2時間加熱された。それから該混合物は80℃まで冷却され、エタノールおよび部分的に該2−ヘプタノンが80℃で減圧下に除去された。冷却後、該物質はろ紙上でろ過されて、いくらかの固形物質が除去され、変性されたナノシリカのクリアなコロイド分散物96gが得られた。(140℃で1時間後の)固形分含有量は31.2%であった。
【0079】
α,Ω−シラノール末端ポリジメチルシロキサン(PDMS)およびメチルトリアルコキシシランのブレンドで変性されたナノシリカのコロイド分散物
【0080】
実施例EE.PDMSおよびメチルトリメトキシシランでグラフトされたブチル−ナノシリカ
【0081】
準備Cで造られたブチル−ナノシリカ生成物130.6gが、Dow Corning(商標)DC 4−7041短鎖ジオール5.31g、メチルトリメトキシシラン2.90gおよびジブチルスズジラウレートの2−ヘプタノン中1.8%溶液2.8gと混合された。混合物は不活性窒素雰囲気(5リットル/時)下に撹拌され、125℃で約1時間加熱された。それから該混合物は75℃まで冷却され、エタノールおよび部分的に該2−ヘプタノンが60℃で70ミリバールの減圧下に除去された。冷却後、該物質はろ紙上でろ過されて、いくらかの固形物質が除去され、変性されたナノシリカのクリアな浅黄色のコロイド分散物89.7gが得られ、(125℃で1時間の)固形分含有量28.9%を有していた。
【0082】
実施例FF.PDMSおよびテトラエトキシシラン(TEOS)でグラフトされたブチル−ナノシリカ(ブチル−ナノシリカ:(PDMS+TEOS)の比=75:25)
【0083】
実施例Dで造られたブチル−ナノシリカ生成物128.0gが、Dow Corning(商標)DC 4−7041短鎖ジオール7.2g、テトラエトキシシラン2.26gおよびジブチルスズジラウレートの2−ヘプタノン中2.2%溶液3.22gと混合された。混合物は不活性窒素雰囲気(5リットル/時)下に撹拌され、125℃で約1時間加熱された。それから該混合物は75℃まで冷却され、エタノールおよび部分的に該2−ヘプタノンが60℃で70ミリバールの減圧下に除去された。冷却後、該物質はろ紙上でろ過されて、いくらかの固形物質が除去され、変性されたナノシリカのクリアな浅黄色のコロイド分散物95gが得られ、(125℃で1時間の)固形分含有量31.0%を有していた。
【0084】
実施例GG.PDMSおよびテトラエトキシシランでグラフトされたブチル−ナノシリカ(ブチル−ナノシリカ:(DC 4−7041+TEOS)の比=90:10)
【0085】
実施例Dで造られたブチル−ナノシリカ生成物115.0gが、Dow Corning(商標)DC 4−7041短鎖ジオール1.73g、テトラエトキシシラン1.08gおよびジブチルスズジラウレートの2−ヘプタノン中2.2%溶液3.22gと混合された。混合物は不活性窒素雰囲気(5リットル/時)下に撹拌され、125℃で約1時間加熱された。それから該混合物は75℃まで冷却され、エタノールおよび部分的に該2−ヘプタノンが60℃で70ミリバールの減圧下に除去された。冷却後、該物質はろ紙上でろ過されて、いくらかの固形物質が除去され、変性されたナノシリカのクリアな浅黄色のコロイド分散物88gが得られ、(125℃で1時間の)固形分含有量29.5%を有していた。
【0086】
実施例HH.Aldrich社からのα,Ω−シラノール末端ポリジメチルシロキサンおよびTEOSでグラフトされたブチル−ナノシリカ
【0087】
(140℃で1時間後の)固形分含有量23.9重量%を有する、準備Bに記載されたように造られたMAK中のブチル−ナノシリカ48.12gが、Aldrich社製PDMS(すなわち、Mn700、平均n約7を有し、粘度30cStを持つ無色の液体であるポリジメチルシロキサンジシラノール)1.38g、テトラエトキシシラン(沸点=165℃)0.53g、2−ヘプタノン11.88gおよびジブチルスズジラウレートの2−ヘプタノン中2%溶液1.14gと混合された。混合物は撹拌され、120〜125℃で約2時間加熱された。それから該混合物は80℃まで冷却され、エタノールおよび部分的に該2−ヘプタノンが80℃で減圧下に除去された。冷却後、該物質はろ紙上でろ過されて、いくらかの固形物質が除去され、変性されたナノシリカのクリアなコロイド分散物40gが得られた。(140℃で1時間後の)固形分含有量は29%であった。
【0088】
比較実験CC.粒子なしでのα,Ω−シラノール末端ポリジメチルシロキサン(=PDMS)とテトラアルコキシシランとの反応生成物
【0089】
比較例CC
【0090】
2−ヘプタノン120gが、Dow Corning(商標)DC 4−7041短鎖ジオール5.48g、テトラエトキシシラン3.41gおよびジブチルスズジラウレートの2−ヘプタノン中2%溶液3.0gと混合された。混合物は撹拌され、130〜135℃で約2時間加熱された。それから該混合物は80℃まで冷却され、エタノールおよび部分的に該2−ヘプタノンが80℃で減圧下に除去された。冷却後、ポリジメチルシロキサン反応生成物のクリアな溶液93.1gが得られ、(140℃で1時間後の)固形分含有量3.0%を有することが認められた。
【0091】
比較実験DD.カルバメート官能性シランで処理されたナノシリカのコロイド分散物(米国特許第5,853,809号の実施例1)
【0092】
比較実験DD
【0093】
2−ヘプタノン7g中のヒドロキシプロピルカルバメート(すなわち、Huntsman社からのCarbalink HPC)59gを、3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン124g、2−ヘプタノン96gおよびジブチルスズジラウレートの2−ヘプタノン中4%溶液2gの40℃に加熱された混合物へ滴下することによって、カルバメートシランカップリング剤がまず造られた。添加が終わった後、該混合物はさらに40℃で2時間および60℃で3時間撹拌されて、最後にイソシアネート転化率が99%であると確認された。メタノール7gが最後に添加されて、何らかの残留イソシアネート基が殺された。カルバメートシランカップリング剤の固形分含有量は48%であった。
【0094】
準備Aで調製されたオルガノゾル100g、2−ヘプタノン100gおよび該カルバメートシランカップリング剤溶液4.8gが一緒にされ、80℃で一晩撹拌された。クリアなコロイド分散物の固形分含有量は12.3gであることが認められた。
【0095】
該得られた分散物107.3gがSetalux(商標)1760 VB−64の26.56gと混合されてクリアな溶液とされ、その後減圧下の蒸発によって濃縮されて、Setalux(商標)1760の17gおよびカルバメート化ナノシリカ13.2gを双方とも固形分基準で含有するクリアな予混合溶液62.6gとされた。
【実施例】
【0096】
[実施例1]
塗料配合物のために、Nuplex Resins社からのポリアクリレートポリオールSetalux(商標)1760 VB−64の136.72g、Nuplex Resins社からのブチル化ホルムアルデヒド/メラミン樹脂Setamine(商標)US 138 BB−70の53.57g、MAK(メチルアミルケトン)41gおよびByk(商標)−331(シリコーン界面活性剤)のMAK中10%溶液0.63gから、最初に予混合物が造られた。
【0097】
予混合物46.4gに、Byk(商標)−358(ポリアクリレートレベリング剤)およびMAK5.60gが添加されて、何らのナノシリカも有さない参照配合物が、固形分含有量48%でもたらされた。
【0098】
予混合物46.4gに、Byk(商標)−358の0.12gおよび実施例AAのコロイド分散物10.30gが添加されて、固形分含有量48%を含んでおり、固形分全量当たりナノシリカ10%の量を有する配合物とされた。
【0099】
市販のプライマーおよび市販の濃青色ベースコートをコーティングされたQパネル上へとコーティング組成物がスプレーされた。ベースコートは、層の間に1分間のフラッシュオフを置いて2層で施与された。コーティング組成物は、5分間のフラッシュオフ後、同様に2層で施与された。10分間のフラッシュオフ後、完成した系が140℃で30分間焼付けされた。耐洗車性は上記のRenault法に従って測定された。その結果が表1にまとめられている。
【表1】

【0100】
ナノシリカ10%を有する硬化されたクリアコートの断面の透過型電子顕微鏡写真(TEM)は、コーティングされた基板の空気側表面にその粒子が濃縮されていることを示している。コーティングされた粒子が濃縮されている表面域は、(コーティングされた表面から垂直に測定されて)2ナノメートル〜約50nmの厚さを有する。また、SIMSを用いて得られたSiの断面曲線は、該濃縮を示している。
【0101】
比較実験2
【0102】
比較実験DDの予混合物38.67gが、Setamine US−138 BB−70の6.44g、Byk−358の2−ヘプタノン中10%溶液の0.68gおよびByk−331の2−ヘプタノン中10%溶液の0.45gと混合された。全固形分当たりのカルバメート化ナノシリカ固形分の重量%は19%であった。固形分当たりのSetaluxとSetamineとの重量比は、それぞれ70対30である。
【0103】
参照として、Setalux(商標)1760 VB−64の43.76gがSetamine US−138 BB−70の17.14g、Byk−358の2−ヘプタノン中10%溶液の1.46g、Byk−331の2−ヘプタノン中10%溶液の0.90g、ブチルグリコールアセテート5gおよびSolvesso16gと混合された。
【0104】
実施例1に記載されたように、膜および洗車の実験が行われた。結果が表2にまとめられている。
【表2】

【0105】
ポリマー網状組織の一部であるアミノ樹脂との反応を可能にするカップリング剤で化学変性されたナノシリカを、米国特許第5,853,809号に従って調製された物質(比較実験DD)は含有する。このようなナノシリカを使用することによって乾燥耐擦傷性は改良されうるけれども、この経路はより良好な耐洗車擦傷性をもたらさないことが、この提示された結果から明らかである。TEMによる検討は、硬化された膜全体に粒子が均一に分かれていることを示している。
【0106】
[実施例3]
Setalux 1770(商標)VS−70の133.33g、Setamine(商標)US138 BB−70の57.20g、Nacure(商標)5225(King Industries社からのアミンで保護された強酸)2.67gおよび2−ヘプタノン83.20gから、第一の予混合物が造られた。Setalux 1770(商標)VS−70の100g、2−ヘプタノン50g、実施例BBの分散物38g、Setamine(商標)US138 BB−70の42.8gおよびNacure(商標)5225の2gを、予混合物Bは含んでいる。
【0107】
予混合物Aが使用されて、予混合物Bとともに、実施例BBに従って調製されたコーティングされたナノシリカ0〜5%を含有する1包装配合物が造られた。組成およびRota Hub法に従う乾燥耐擦傷性の結果については表を見よ。実施例1についてと同じ様式で、膜は施与され硬化された。結果が表3にまとめられている。
【表3】

【0108】
乾燥および湿潤条件下に本質的に高い耐擦傷性を元々有するSetalux 1770(商標)1包装クリアコーティングは、本発明に従うコーティングされたナノシリカわずか1%で完全に耐擦傷性にされることができることを、表3の結果は示す。表面へのナノシリカの濃縮は、TEMおよびSEMを用いてここでも見られる。
【0109】
[実施例4]
Setalux 1903(商標)BA−75は、自動車再仕上げ塗装用の2包装系でポリイソシアネートとともにほとんどの場合に施与されるポリアクリレートポリオールである。
【0110】
実施例BBの変性されたナノシリカ65.7gに、2−ヘプタノン27gおよびSetalux(商標)1903 BA−75の240gが添加されて、固形分含有量60%を有する青みがかった、クリアな予混合物溶液が得られた。
【0111】
該予混合物10gに、ブチルアセテート1g、Byk−358の2−ヘプタノン中10%溶液0.4g、ジブチルスズジラウレート(DBTL)のブチルアセテート中1%溶液0.26gおよび最後にRhodia社からのTolonate(商標)HDT LV(すなわち、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート)2.64gが添加された。ヒドロキシ基およびイソシアネート基のモル量は等量であった。全シリカ当たりのナノシリカ含有量は6.9%であった。
【0112】
厚さ90ミクロンの膜がQパネルおよびガラス板上に引かれ、室温で10分間のフラッシュの後、60℃で30分間およびその後室温で1週間処理された。膜はクリアであり、耐洗車擦傷性はシリカを有さない参照物に認められたものよりも良好であった。
【0113】
比較実験5A、5Bおよび5C
【0114】
比較実験では、3の異なった組成物から造られた膜が、実施例4で造られた膜と比較された。膜がQパネルおよびガラス板上に引かれ、室温で10分間のフラッシュの後、60℃で30分間およびその後室温で1週間処理された。組成および分析結果が表4に提示される。
【表4】

【0115】
Dow Corning(商標)DC 4−7041短鎖ジオール(すなわち、PDMS)とTEOSとのブレンドを用いたブチル−ナノシリカのグラフト変性反応は、良好な外観および表面へのシリカの濃縮をもたらすことを、該実験は示す。PDMSとTEOSとの反応生成物、すなわちコーティング組成物中に粒子がないものは、不良な濡れ性および濁り性を有するコーティングをもたらすことを、比較実験5Aは示し、別途にブチル−ナノシリカ粒子が存在してさえもそうである(比較実験5B)。PDMSおよびTEOSとのブチル−ナノシリカの配合物は、クリアな膜をもたらすが、表面への粒子の濃縮はなく、耐擦傷性の改良もない。
【0116】
[実施例6]
実施例EE、FFおよびGGのコーティングされたコロイドシリカ分散物を使用して、グラフトされたシリカ0.5%および/または1.0%を含有する1Kおよび2K塗料配合物が調製された。1K配合物の場合、Setalux(商標)1760 VB−64の82.0gがメチルアミルケトン(MAK)11.7gで希釈され、実施例EE、FFおよびGGのコーティングされたコロイドシリカのある量が混ぜ込まれた。次に、Setamine(商標)US 138 BB−70の32.1gが添加され、Byk(商標)−310のMAK中10%溶液0.38gが続いて添加された。この配合物は、DIN カップ4で28秒のスプレー粘度までMAKで薄められた。このクリアコートは、青色の溶剤型ベースコート上にスプレーされ、140℃で24分間硬化された。
【0117】
2K配合物の場合、Setalux(商標)1769 VV−65の72.1gがメチルアミルケトン21.5gで希釈され、実施例EE、FFおよびGGのコロイドシリカの適当量が混ぜ込まれた。次に、Byk(商標)−310のMAK中10%溶液0.38gが添加され、Tinstab(商標)BL 277のブチルアセテート中1%溶液0.68gが続いて添加された。スプレーの直前に、Desmodur(商標)N3390の725.2g、Solvesso(商標)100の82.7gおよびメトキシプロピルアセテート82.7gからなる硬化剤溶液31.25gが添加された。このクリアコートは、青色の溶剤型ベースコート上にスプレーされ、140℃で24分間硬化され、そして試験前に室温で7日間乾燥された。クロックメータ試験によって得られた光沢保持率の結果が表5にまとめられている。
【表5】

【0118】
特許請求の範囲に従うシリカナノ粒子のグラフトされたコーティング変性が、クロックメータ試験における改良された光沢保持率(GR[%])を得るために必須であることを、実施例6は示す。
【0119】
[実施例7]
固形分6.3gを含有するSetalux(商標)1770の9g、2−エトキシエチルプロピオネート0.9gおよび実施例HHに従って調製されたAldrich/TEOSでコーティングされたナノシリカのMAK中29%分散物0.32gが混合された。それからSolvesso 100の1gおよびSetamine US138の3.86gが添加され、全体が混合された。さらにSolvesso 100の2gおよびNacure 5225の0.18gが混ぜ込まれた。クリアな配合物は(固形分当たり)コーティングされたシリカ1重量%を含有し、120ミクロンの濡れた層厚さでガラス上に引かれた。通常の10分間のフラッシュオフおよび140℃における30分間の焼付け後に、これはクリアなコーティングをもたらした。
【0120】
実施例7のコーティング組成物において、(n=7を有するポリシロキサンを含んでいる)実施例HHに従うコーティングされたナノシリカ3.5%が使用されるならば、曇った膜が得られる。コーティングされたシリカ1%についても、実施例HHにおけるよりも多い量のAldrich/TEOSが使用されると、曇った膜が同様に得られることがある。
【0121】
ポリシロキサンの長さが増加するに従い、コーティングされた粒子中のポリシロキサンの量が増加するに従い、およびコーティング組成物中のコーティングされた粒子の量が増加するに従い、コーティングのヘイズは増加する傾向があることを、該実施例は示す。
【0122】
Dow Corning/TEOSでグラフトされたナノシリカよりもAldrich/TEOSのナノシリカの方が、Siの濃縮が約30%低いことを、Qパネル上に施与された1%のクリアな膜についてのTOF−SIMS分析は明らかにした。これらの観察から、Dow Corning(商標)DC 4−7041短鎖ジオールは、これより大きいn値を有するAldrich製品と比較して優れた性能を有することが結論される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロキシル官能基を持つ表面を有する粒子と、式I

(この式で、nは1〜25であり、各Rは同一のまたは異なった炭化水素基である。)
に従うポリシロキサンジシラノールとコーティング架橋剤の反応生成物を含んでいる架橋されたポリシロキサンコーティングと、を含んでいるコーティングされた粒子であって、該ポリシロキサンコーティングが、該粒子上の該ヒドロキシ官能基との反応によって該粒子表面に少なくとも部分的にグラフトされている、コーティングされた粒子。
【請求項2】
コーティング架橋剤が、[R'O]−Si−[R'']4−mの構造を有するアルコキシシランであり、この式で、m=3または4、並びにR'およびR''が炭化水素基である、請求項1に従うコーティングされた粒子。
【請求項3】
コーティング架橋剤が、2.5〜4のアルコキシ基の平均数を有するアルコキシシランの混合物である、請求項2に従うコーティングされた粒子。
【請求項4】
ポリシロキサンジシラノールに対するコーティング架橋剤のモル比が2〜0.1である、請求項1〜3のいずれか1項に従うコーティングされた粒子。
【請求項5】
粒子が、1〜400ナノメートルの平均直径を有する、請求項1〜4のいずれか1項に従うコーティングされた粒子。
【請求項6】
コーティングされた粒子中の粒子の重量割合が、30〜99重量%(該コーティングされた粒子の全重量に対する重量パーセント)である、請求項1〜5のいずれか1項に従うコーティングされた粒子。
【請求項7】
粒子が4〜50ナノメートルの平均直径を有し、かつ、コーティングされた粒子中の粒子の重量割合が50〜99重量%である、請求項1〜6のいずれか1項に従うコーティングされた粒子。
【請求項8】
粒子が、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニアおよびこれらの混成物、ガラス、鉱物粘土または合成粘土、ゼオライト、並びに粒子表面上にヒドロキシル基を有するところの有機粒子の群から選択される、請求項1〜7のいずれか1項に従うコーティングされた粒子。
【請求項9】
粒子がシリカ粒子であり、ポリシロキサンジシラノールが、[Si−O−Si]結合によって該シリカ粒子に結合されている、請求項1〜8のいずれか1項に従うコーティングされた粒子。
【請求項10】
ポリシロキサンジシラノールが、1〜10のシロキサン基の平均数nを有する、請求項1〜9のいずれか1項に従うコーティングされた粒子。
【請求項11】
粒子表面上のヒドロキシ官能基が、アルコールで部分的にエステル化されている、請求項1〜10のいずれか1項に従うコーティングされた粒子。
【請求項12】
ポリシロキサンジシラノール上の炭化水素が、1〜4炭素原子を有するアルキルである、請求項1〜11のいずれか1項に従うコーティングされた粒子。
【請求項13】
任意的に部分的にエステル化されたヒドロキシ官能基を持つ表面を有するナノシリカ粒子と、式I

(この式で、nは1〜25であり、各Rは1〜4炭素原子を有する、同一のまたは異なった炭化水素基である。)
に従うポリシロキサンジシラノールと[R'O]−Si−[R'']4−m(この式で、m=3または4、並びにR'およびR''は炭化水素基である。)の構造を有するコーティング架橋剤としてのアルコキシシランの反応生成物を含んでいるポリシロキサンコーティングと、を含んでいる粒子であって、該ポリシロキサンコーティングが該粒子上の該ヒドロキシ官能基との反応によって該粒子表面に少なくとも部分的にグラフトされており、該ポリシロキサンジシラノールに対する該コーティング架橋剤のモル比が2〜0.1であり、該粒子が4〜50ナノメートルの平均直径を有し、該コーティングされた粒子中の粒子の重量割合が(該コーティングされた粒子の全重量に対して)50〜99重量%であり、かつ、該ポリシロキサンジシラノール上の炭化水素が1〜4炭素原子を有するアルキルである、本発明に従うコーティングされた粒子。
【請求項14】
無極性有機コロイド分散物(「オルガノゾル」)中の有機変性された粒子を、
a)式I

(この式で、nは1〜25であり、各Rは同一のまたは異なった炭化水素基である。)
に従うポリシロキサンジシラノール、および
b)[R'O]−Si−[R'']4−mの構造を有するアルコキシシラン(この式で、m=3または4、並びにR'およびR''は同一のまたは異なった炭化水素基である。)
と反応させることによって、架橋されたポリシロキサンコーティングが粒子上へとグラフトされる、請求項1〜13のいずれか1項に従うコーティングされた粒子の調製方法。
【請求項15】
a)水中に分散された粒子(以下、「アクアゾル」)を用意すること、
b)該アクアゾルに有機反応物質を添加して、該粒子表面上のヒドロキシ官能基の少なくとも一部と反応させて、有機変性された粒子を形成すること、
c)該有機変性された粒子に無極性有機溶媒を供給すること、および
d)段階b)および/若しくはc)の間に並びに/または後に、水を除去すること
によって、オルガノゾルが調製される、請求項14に従う方法。
【請求項16】
有機反応物質がアルコールであり、かつ、該アルコールが無極性溶媒によって置き換えられる、請求項15に従う方法。
【請求項17】
アルコキシシランが、2.5〜4のアルコキシ基の平均数mを有する、請求項14〜16のいずれか1項に従う方法。
【請求項18】
ポリシロキサンジシラノールに対するアルコキシシランのモル比が2〜0.8である、請求項14〜16のいずれか1項に従う方法。
【請求項19】
請求項14〜18のいずれか1項に従う方法によって得られることができる、コーティングされた粒子のコロイド分散物。
【請求項20】
請求項1〜13のいずれか1項に従うコーティングされた粒子または請求項19に従うコロイド分散物を、ポリマー組成物の製造のために使用する方法。
【請求項21】
ポリマー物質および請求項1〜13のいずれか1項に従うコーティングされた粒子を含んでいるポリマー組成物。
【請求項22】
ポリマーバインダーおよび請求項1〜13のいずれか1項に従うコーティングされた粒子を含んでいるコーティング組成物。
【請求項23】
請求項1〜13のいずれか1項に従うコーティングされた粒子を(全コーティング固形分の重量に対して)0.1〜15重量%含んでいる、請求項22に従うコーティング組成物。
【請求項24】
クリアトップコーティング仕上げ塗料または再仕上げ塗料を造るためのクリアコーティング組成物である、請求項23に従うコーティング組成物。
【請求項25】
垂れ調節剤、好ましくは(ポリ)イソシアネートとモノアミンとの反応生成物をさらに含んでいる、請求項22〜24のいずれか1項に従うコーティング組成物。
【請求項26】
請求項19に従うコーティングされた粒子のコロイド分散物が、ポリマーバインダーの溶液とブレンドされる、請求項22〜24のいずれか1項に従うコーティング組成物の製造方法。

【公表番号】特表2008−539292(P2008−539292A)
【公表日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−508215(P2008−508215)
【出願日】平成18年4月25日(2006.4.25)
【国際出願番号】PCT/EP2006/061826
【国際公開番号】WO2006/114420
【国際公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【出願人】(505396349)ヌプレクス レジンズ ビー.ブイ. (13)
【Fターム(参考)】