コーティングした織物
織物素地(22、22’)を含む織物材料(21、21’)は、織物素地(22、22’)の表面の少なくとも一部と、角質ヒドロゲルを除くヒドロゲル、ポリウレタン、塩化ポリビニル、ポリテトラフルオロエチレン、及び前記化合物の2つ以上の所望の組み合わせ、から成るグループから選択される少なくとも1つの化合物を含むコーティング(24、24’)とを有する。この織物材料(21、21’)は、人工椎間板(16、16’)用物質として、髄核(16、16’)、ケージ(16、16’)、椎体インプラント(16’’’’)、関節面代用物の置換物として、または椎体形成術または椎間板減圧術のチューブとして、特に用いられ得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面の少なくとも一部に被覆を行った織物素地を含む織物材料に関する。更に、本発明は、かかる織物材料の製造方法、特にインプラントである物品、及び該物品の使用(使用方法)に関する。
【背景技術】
【0002】
織物材料は、例えば、自動車構造、衣料産業、建設業界、及び、医学分野などの、多くの技術分野で用いられている。これに関連して、織物材料の技術的な適用性を、適切な織物繊維材料の選択によるより最近の使用に対する特定の要求、適切な補助材料の追加、及び適切な材料のコーティングの塗布、に用いることができる。対応する織物繊維材料を使用することにより、生体的適合性織物または吸収性織物を製造することが特に可能になる。このため、今日、織物材料は、例えば、衛生物品、フィルタ、包帯、搬送装置及び支持材、外科用縫合材料、並びにインプラントなどとして医学分野においても特に広い用途で用いられている。
【0003】
例えば、織物材料から作られるインプラントは、人工椎間板として、そして、椎体インプラントとして価値を示した。人間の脊椎は、23の椎間板を含む。23の椎間板は、皮質海綿様骨から成っている2つのそれぞれ隣接した椎体の間のクッションのように配置されている。巨視的に見ると、各椎間板は、一緒に機能的ユニットを形成する3つの異なる構成要素から成る。即ち、椎間板の中央に配置されたセミゼラチン質の核(髄核)と、核を取り巻く線維軟骨環(線維輪)と、2つの終板とである。2つの終板は、隣接する椎体にしっかりと接触し、核または線維輪の上面または底面にいずれの場合にも配列され、さらに硝子様軟骨から成る。これに関連して、終板は、柔らかい核を有する椎間板と、隣接する固い椎体との間の遷移帯を形成する。終板のうちの1枚が損なわれると、核組織は椎体に深く入りこむことができて、核は、圧力クッションとしてのその機能をもはや実行することができない。椎間板の破損によって、線維輪の破砕を介して髄核の枯渇を次々に引き起こすことがあり得る。そして、それによって神経節に対するまたは脊髄神経に対する圧締をもたらして、背中及び足の両方に激痛を生じさせる。
【0004】
椎間板損傷の治療のために、損傷の程度に従って、罹患椎間板が完全に除去されてインプラントに置換されるか、核が完全に椎間板から除去されて核置換術と呼ばれる対応するインプラントに置換されるか、または、髄核の一部が除去されてケージと呼ばれるインプラントに置換される。前記のインプラントの各々は、通常、織物材料でできている中空体から成っており、充てん材で満たされている。チタン織物などの人体組織と互換性を持つ高張力のワイヤ繊維または織物の繊維から成っていてかつ充てん材として適切な流体で満たされることができる、この種のインプラントは、例えば、EP 0 480 954 B1で公知である。
【0005】
インプラントは、例えば、角質ヒドロゲルなどの角質材料の層、及び任意で、例えばポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスチレンなどのポリマー層を含んでいる人工椎間板について、米国特許出願公開第2002/0029083 A1で公知である。
【0006】
医療分野の織物材料の別の重要なアプリケーションは、とりわけ粘性液体を人体に導入するホースで代表される。これについての例は、人体にすでに導入されたインプラントに充てん材を導入することができるホースで代表される。これについての更なる例は、骨粗鬆症の治療用の椎体形成術(vertebroplasty)である。この処理において、粘性骨セメントは、一端でカニューレに接続しているホースを介して多孔性骨に注入されて、内部の安定化のために骨を骨セメントで満たす。このために、骨セメントが高い粘性を有するという理由から、ホースを介して骨セメントの十分な搬送を確実にするために十分に大きい内径を有するホースを用いるべきである。さらに、ホースは、ホースから体内へ、例えば骨セメントなどの運ばれるべき材料の通過を避けるために、運ばれるべき材料に関して十分な不浸透性を有していなければならない。かかるホースが製造される現在公知の織物材料は、しかしながら、運ばれるべき材料に対して十分な不浸透性を有していない。公知の織物材料の摺動特性も、改良を必要とする。
【0007】
本開示の一態様に従って、織物材料が提供される。織物材料は、十分な摺動特性を有し、特に椎間板インプラントまたは椎体インプラントにおいて通常用いられる充てん材に関して十分に不浸透性であり、従って、医療分野において、椎体形成術用などのホース材料として、または核置換用などのインプラント材料として、有利に用いられることができる。更に、織物材料のほかにそのコーティングもまた、十分な生体安定性(biostability)を有していなければならない。
【0008】
本開示の一態様に従って、織物素地を含み、コーティングが該織物素地の表面の少なくとも一部に施されている織物材料が提供される。該コーティングは、ヒドロゲル、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン及び前述の化合物のうちの2つ以上の所望の組合せからなるグループから選択される化合物を含むかまたは、前記化合物のうちの1つから成っている。
【0009】
驚くべきことに、角質ヒドロゲルを除いたヒドロゲル、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン及び前述の化合物のうちの2つ以上の所望の組合せからなるグループから選択される化合物は、医療分野で用いられる骨セメントなどの充てん材に関して例外的な浸透性を有していて、更に、良い摺動特性によって特徴づけられるということが、本発明のフレームワーク内で見出されることができた。更に、これらの材料は、例外的な生体安定性のほかに再生可能な品質も有していて、これらの材料の製造において品質管理のための努力及び/または費用を適度に保つことができる。前述の理由のために、織物材料を、例えば、人工椎間板、髄核、ケージ椎体インプラントもしくは関節面置換物、または椎体形成術用などの医療用ホース材料などの、インプラント用の材料として用いることができることが有利である。
【0010】
本発明の意味におけるヒドロゲルは、水を含んでいるが、不水溶性であって、その分子は化学的にまたは物理的に三次元網目構造に結び付いている重合体として、関連する技術的文献と一致する。
【0011】
通常、織物素地の全表面の一部または全部は、前述の材料で覆われることができる。このために、織物素地の個々の繊維または、従って織物素地の繊維の少なくとも一部を覆うことも可能である。このため、織物素地を含んでいる織物材料が提案される。ここで、織物素地は繊維を含み、繊維のうちの少なくとも一部はコーティングを施され、コーティングは、合成ヒドロゲル、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、及び前記化合物のうちの2つ以上の所望の組合せからなるグループから選択される化合物を含むか、または上記の化合物のうちの1つから成る。合成コーティング材料の使用のために、対応する織物材料は、例外的な生体適合性だけでなく、再生可能な品質をも有していて、対応する材料の製造において品質管理のための努力及び/または費用を適度に保つことができる。
【0012】
合成ヒドロゲルが用いられるときに、本発明は、合成ヒドロゲルの化学的性質に関してまたはコーティングに含まれるヒドロゲルの数に関して限定されない。この点において、織物素地のコーティングは、合成ヒドロゲルまたは少なくとも2つの異なる合成ヒドロゲルを含んでもよい。コーティングは、少なくとも1つの合成ヒドロゲルに加えて他の補助材料及び添加物を含んでもよい。織物素地のコーティングが1つの合成ヒドロゲルまたは少なくとも2つの異なる合成ヒドロゲルから成っているときに、特に良い結果が得られる。かかる材料は、骨セメントなどの医療分野で通常用いられる充てん材に関する特に高い非浸透性だけでなく良い生体安定性も有する。
【0013】
本発明の理論の更なる展開において、織物素地のコーティングは、ビニル重合体に基づくヒドロゲルを含んでいること、または、特に、ビニル重合体に基づくヒドロゲルから成っているということが提案される。
【0014】
基本的には、この目的のために当業者にとって公知の全てのビニル重合体からのヒドロゲルを、織物素地のコーティング用に用いることができる。ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、及び前記化合物のうちの少なくとも2つの所望の混合物からなるグループから選択されるビニル重合体は、特に、この目的に適していると判明した。織物素地のコーティングが、ポリビニルアルコールヒドロゲルを含むとき、または特に、織物素地のコーティングがポリビニルアルコールヒドロゲルから成っているときに、特に良い結果が得られる。
【0015】
典型的な実施形態によれば、織物材料のコーティングは、ポリウレタン及び、特にポリカーボネートウレタンを含む。ポリカーボネートウレタンは、芳香族ハードセグメント及び脂肪族ハードセグメントの両方で構成されることができる。シリコン末端基グループを有するポリカーボネートウレタンは、同様に使用可能である。コーティングが、ポリウレタンまたはポリカーボネートウレタンで成っているときに、特に良い結果が得られる。特に、ポリカーボネートウレタンは例外的な生体安定性によって特徴づけられ、コーティング材料として特に適切である。
【0016】
60,000から500,000g/molまで、及び特に90,000から400,000g/molまでの重量平均分子量を有していて、ハードセグメントとソフトセグメントとの間の比率が20%/80%から60%/40%の間にあるべきポリカーボネートウレタンが、コーティング材料に特に適切である。
【0017】
織物材料の織物素地に施されるコーティングまたは個々の繊維または織物素地の個々の繊維または繊維の一部に施されるコーティングの厚さは、織物材料の最近の目的に特に依存する。0.5μmから200μmの間のコーティング厚さを有する織物材料によって、特に良い結果が得られる。本開示の更なる典型的な実施形態によれば、コーティングの厚さは、0.5μmから50μmの間及び特に0.5μmから10μmの間になる。十分な摺動特性に加えて、かかるコーティングも、医療セクターにおいて通常用いられる充てん材に関して高い非浸透性を有する。あまりに薄い層厚さについては、充てん材に関する織物材料の十分な非浸透性を実現できない。一方、あまりに厚い層厚さについては、時間がたてばコーティングが素地から完全にまたは少なくとも部分的に分離するという危険がある。
【0018】
特に、織物材料が医療分野で使用されなければならないときに、織物素地が生物学的適合性材料及び/または吸収性材料から成ることは有利であると判明した。このことは、織物素地が個々の生物学的適合性材料及び/または吸収性材料から成っている場合及び各々が生物学的適合性及び/または吸収性のある少なくとも2つの異なる材料の混合物から成っているという場合を含む。
【0019】
織物素地は、織物複合材、即ち、織られたり編まれたりした織物材料でもなくまた織布でもない形式、及び/または織製品、メリヤス製品または織布製品の形式で通常用いることができる。適当な織物複合材についての例として、フェルト材またはフリース材がある。織物素地が、織物材料において提供され、かつ布地、編地または織物繊維でできている織物から成っているときに、特に良い結果が得られる。織物素地が布地、編地、またはコーティングによって液密封止された織物繊維の織物から成るときに、特に良い結果が特に得られる。
【0020】
織物素地を形成している織物繊維の材料は、材料の指定された用途に依存して、自由に選択されることができる。織物材料の織物素地が、テレフタル酸ポリエチレン(PET)、ポリエーテルケトン(ポリエーテルケトン)(PEEK)、ポリメチルメタクリル酸(polymethyl methacrylates)(PMMA)、チタン(Ti)、コバルト/クロミウム合金(CoCr)、角質ヒドロゲルを除くヒドロゲル、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリオレフィン(polyolefines)、特にポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP)並びに、前述の化合物の2つ以上の所望の組み合わせ、からなるグループから選択される化合物でできているかまたは、前記の化合物のうちの1つの織物繊維をから成っている織物繊維を含むことは、特にホース材料としてのまたはインプラント材料としての指定された使用に有利であると特に判明した。かかる材料は、例外的な生体適合性によって特に特徴づけられる。PETは、この目的に特に適している。
【0021】
本開示の更なる主題は、織物材料、特に前述の織物材料の製造方法である。ここで、織物素地は、角質ヒドロゲルを除くヒドロゲル、特にポリカーボネートウレタンであるポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、及び上記の化合物のうちの2つ以上の所望の組合せから成るグループから選択される化合物で少なくとも部分的にコーティングされている。これは、全表面または織物素地の全表面が前述の化合物のうちの1つでコーティングされている場合、及び織物材料の表面の一部だけがかかる化合物でコーティングされているという場合を含む。後者の場合、それは織物素地の表面の隣接している対応してコーティングされている部分、またはお互いに空間的に分離されている織物素地の表面の複数の部分領域であり得る。
【0022】
該方法は、通常個々のコーティング技術に限定されない。織物素地に対するコーティングの塗布は、このために当業者にとって公知であるいかなる技術によっても行われることができる。
【0023】
特に、織物素地のコーティングは、例えば、織物素地を合成ヒドロゲル溶液及び、コーティングが角質ヒドロゲルを除くヒドロゲルを含むかまたはそれから成っているときに少なくとも1つの凍結融解サイクルにヒドロゲル溶液を与えられた素地のその結果生じた対象へ浸すことによって特に作られ得る。全表面または織物素地の全表面がヒドロゲルでコーティングされていなければならないときに、この方法は特に有利であると判明した。しかしながら、上記に説明した方法も、織物素地の部分的なコーティングだけに適している。コーティングされるべきでない表面部分については、この場合一致して対象とされる。織物素地の与えられた片側だけのコーティングでは、織物素地は、例えば、キャリア材料に塗られることができて、このキャリア材料はヒドロゲル溶液に浸されることができ、ヒドロゲルでおおわれているキャリアの人々に対向して配置される織物素地の表面だけがヒドロゲルでコーティングされる。
【0024】
コーティングされるべき織物素地が浸されるヒドロゲル溶液などの、ポリビニルアルコールヒドロゲルで織物素地をコーティングする場合、例えば、重量で濃度2%から40%、特に重量で5%から20%に加水分解されたポリビニルアルコールからなる水溶液であってもよい。この溶液は、例えば、ポリビニルアルコールの対応する量が95℃の対応する水分量で溶かされて、製造することができる。
【0025】
本発明はまた、実行されるべき凍結融解サイクルの数に関して制限されない。しかしながら、織物素地を少なくとも2つの凍結融解サイクル、そして、特に正確に2つの凍結融解サイクルまでコーティングの対象となすことは、有利であると判明した。個々の凍結融解サイクルの各々において、コーティングされた素地は、最初、0℃未満の温度で十分な時間インキュベートされて材料を凍らせる。凍結融解サイクルの凍結ステージの温度は、例えば、−1℃から−50℃の間、特に、−10℃から−20℃の間になり、凍結融解サイクルの凍結ステージの期間は、少なくとも8時間になる。凍結融解サイクル処理の目的は、ヒドロゲルの個々の分子同士の間の架橋を実現して、ヒドロゲルの耐久性を増すことである。
【0026】
本発明の更なる対象は、外部被覆、特に前述の織物材料からなる外部被覆を有している、特にインプラントである物品である。角質ヒドロゲルを除くヒドロゲル、特にポリカーボネートウレタンであるポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluorotheylene)、及び前記化合物のうちの2つ以上の所望の組合せ、から成るグループから選択される化合物を有する織物材料の織物素地のコーティングにより、かかる物品は、医療分野で通常用いられる充てん材に対する高い非浸透性によって、更に、優れた摺動特性及び例外的な生体安定性によって特徴づけられる。
【0027】
本発明の可能な実施形態に従って、物品はホースとして作られている。ヒドロゲルでコーティングされた織物素地の高い非浸透性及びその優れた生体適合性により、かかるホースは、例えば椎体形成術における骨セメントの導入などの、特に高粘性液体である液体を人体へ導入するのに例外的に適している。あるいは、物品は、例えば、リングとしてまたはバルーン形状に作られることもできる。
【0028】
通常、ホース、リングまたはバルーンは、両側でまたは少なくとも片側で、少なくとも1つのヒドロゲルでコーティングされていてもよい。特にヒドロゲルである前記のコーティングを用いて、両側でホースをコーティングするために、または物品の少なくとも内側をコーティングするために、人体への液体の導入用として提供されるときに、特に有利であると判明した。
【0029】
本開示の更なる可能な実施形態に従って、充てん材は、物品の被覆に含まれる。物品は、被覆によって、特にあらゆる面を包まれている。
【0030】
充てん材は、例えば、骨セメント、合成ヒドロゲル、及び/またはリンガー溶液であってもよい。本発明は、前述の材料のうちの1つに限定されない。
【0031】
その特性のために、例えば、骨セメント、合成ヒドロゲル、及び/またはリンガー溶液で満たされた物品は、人工椎間板、髄核の置換物、ケージ椎体インプラント、または関節面置換物として用いられることができる。
【0032】
これの代わりに、ホースとして作られた物品は、椎体形成術においてまたは椎間板減圧術(nucleoplasty)で用いられてもよい。
【0033】
この場合において開示される対象は、有利な実施形態及び添付の図面を参照して単に一例として以下に開示される。
【発明を実施する形態】
【0034】
図1に概略的に示された椎間板10は線維輪12を有し、線維輪12は、アモルファスベースの物質に組み込まれた高度に構造化されたコラーゲン繊維から成る。椎間板の核(髄核)14が位置している空洞は、線維輪12の中央にある。柔らかい核は、椎間板の全断面積のほぼ25から40%を占め、コラーゲンの低い割合を有するプロテオグリカン(proteoglycanes)を主として含む粘液物質から主として成っている。それぞれの椎体終板(図示せず)は、髄核の領域において椎間板10の上方及び下方に設けられている。該終板は、硝子様軟骨(hyaline cartilage mass)から成っていて、椎間板10を隣接する椎体(図示せず)から分離する。
【0035】
髄核は、図2に示した椎間板において除去されて、実質的にリング形状に作られたインプラント16で置換された。インプラント16の内部は、骨によってまたは骨置換物材料によって満たされた。かかるインプラントは、核の一部を置換するだけであって、通常ケージとも称される。
【0036】
バッグ形状のインプラント16’を有する椎間板10を図3に示す。この場合、核全体が椎間板10から除去されて、インプラント16’で置換された。図3から分かるように、インプラント16’は、インプラント16’用の充てん剤が導入されることができるホース部分18を有する。この充てん材は、例えば、骨セメント、ヒドロゲル、及び/またはリンガー溶液であってもよい。ホース部分18を介して充てん材をインプラント16へ導入することは、インプラント16’を患者へ挿入する前後に行われ得る。
【0037】
図4に示されるケージは2つのバー形状のインプラント16’’を有しているのに対して、図5に示される核置換物は、ホース部分18’を有するホース形状のインプラント16’’’から成っている。
【0038】
図6には、インプラント16’’’’が示され、インプラント16’’’’は、バッグ形状様であって、その外部被覆は、特にヒドロゲルコーティングである前記のコーティング材料のうちの1つを有する織物材料から成っている。このインプラント16’’’’は、それが椎間板を完全に置換することができるように成されている(人口椎間板)。インプラント16’’’’は、例えばリンガー溶液、ヒドロゲル及び/または骨セメントなどの充てん材をインプラント16’’’’に導入し得るホース部分18’’を有している。
【0039】
図7に示しかつ人工椎間板として適当なインプラント16’’’’’は、本体を有し、本体の横断面は、自然の椎間板に従って成形され、その上に、終板をシミュレートしている2つの高い部分が設けられるかまたは、それぞれの終板に対してその上側及びその下側でいずれの場合にも接続される。
【0040】
図8に、椎体20が図式的に示され、その中にインプラント16’’’’’’が嵌入される。このインプラント16’’’’’’の外部被覆も、ヒドロゲルでコーティングされた織物材料から成っていて、ホース部分18’’’を介して充てん材で満たされている。かかるインプラント16’’’’’’は、外傷性障害によってまたは骨粗鬆症によって生じたのであろうとなかろうと、例えば、椎体の破砕の場合に、用いることができる。
【0041】
図9に示される織物材料21は、実質的に円形の横断面を有する繊維22及び繊維表層に塗布されるコーティング24で成っているのに対して、図10に示した織物材料21’は複数の繊維22’を含み、繊維構造全体が、コーティング24を与えられている。
【0042】
本発明は、以下に、例を示すことによって説明されるが、これに限定されない。
〔実施例〕
各々4mmの内径及び各々100mmの長さを有する2つのホースが、動的脊柱安定化システムDynesys(登録商標)において用いられるコードの製造用に使われるようなPET織り繊維から製造された。コーティングの目的で、これらのホースは、その次に溶液に浸された。溶液は、重量で10%の濃度まで加水分解されたポリビニルアルコールを含み、ポリビニルアルコールの対応する量を95°Cの水に溶かすことによって製造され、織物素地のそれらの内面及び外面の両方をポリビニルアルコールを用いてホースをコーティングした。
【0043】
この方法でコーティングされたホースは、その後すぐに、2つの凍結融解サイクルの対象とされた。凍結融解サイクルにおいてホースは、3日間、−17℃で最初にインキュベートされ、続いて室温で5時間インキュベートされ、それによって、ホースは12時間、−17℃で再び凍結される前に融解され、続いて、室温で2時間インキュベートされた。このようにヒドロゲルでコーティングされたホースは、続いて2時間水の中で処理された。
【0044】
この方法で製造された2本のホースの各々は、機械的に60ml注射器の先端に固定された。
【0045】
その後、酸化ジルコニウム(SULCEM 3(登録商標))を含まないPMMAに基づく骨セメントが、注射器を介して2本のホースの各々へ導入された。骨セメントは、注射器へ導入される前に60秒間混合されて、気泡を除去するために更に30秒の間インキュベートされた。その後、セメントは注射器に満たされて、注射器及びホースを介して圧力下で運ばれた。
【0046】
骨セメントは、ホース材料によって外部に押し出される骨セメントなしに問題なく両方のホースで運ばれることができた。
【0047】
この例は、織物材料が医学分野で通常用いられる骨セメントなどの充てん材に関して例外的な非浸透性を有し、さらに十分な摺動特性を有して、それを介して高い粘性材料でさえ運ぶということを示す。
〔比較実施例〕
例1と同じ手順に続き、ポリビニルアルコールヒドロゲルでコーティングされた2つのホースの代わりに、PET織り繊維でできているがコーティングされていない2つの対応するホースが用いられた。
【0048】
コーティングしてないホースを介して骨セメントを運ぶことは不可能だった。骨セメントの流れは、それぞれ16m及び18m後で止まった。それ以上運ぶことは注射器で有効な力を増しても実現できなかった。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】自然のままの人間の椎間板の概略斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態に基づくインプラントを有する椎間板の概略斜視図である。
【図3】本発明の第2実施形態に基づくインプラントを有する椎間板の概略斜視図である。
【図4】本発明の第3実施形態に基づくインプラントを有する椎間板の概略斜視図である。
【図5】本発明の第4実施形態に基づくインプラントを有する椎間板の概略斜視図である。
【図6】本発明の第5実施形態に基づくインプラントの概略斜視図である。
【図7】本発明の第6実施形態に基づくインプラントの概略斜視図である。
【図8】本発明の第7実施形態に基づくインプラントを有する椎体の概略斜視図である。
【図9】本発明の第1実施形態に基づく織物材料の断面図である。
【図10】本発明の第2実施形態に基づく織物材料の断面図である。
【符号の説明】
【0050】
10 椎間板
12 線維軟骨環(線維輪)
14 核(髄核)
16 インプラント(ケージ)
16’ インプラント(髄核の置換物)
16’’ インプラント(ケージ)
16’’’ インプラント(髄核の置換物)
16’’’’ インプラント(人工椎間板)
16’’’’’ インプラント(人工椎間板)
16’’’’’’インプラント(椎体インプラント)
18から18’’’ホース(部分)
20 椎体
21、21’織物材料
22、22’繊維/素地
24、24’コーティング
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面の少なくとも一部に被覆を行った織物素地を含む織物材料に関する。更に、本発明は、かかる織物材料の製造方法、特にインプラントである物品、及び該物品の使用(使用方法)に関する。
【背景技術】
【0002】
織物材料は、例えば、自動車構造、衣料産業、建設業界、及び、医学分野などの、多くの技術分野で用いられている。これに関連して、織物材料の技術的な適用性を、適切な織物繊維材料の選択によるより最近の使用に対する特定の要求、適切な補助材料の追加、及び適切な材料のコーティングの塗布、に用いることができる。対応する織物繊維材料を使用することにより、生体的適合性織物または吸収性織物を製造することが特に可能になる。このため、今日、織物材料は、例えば、衛生物品、フィルタ、包帯、搬送装置及び支持材、外科用縫合材料、並びにインプラントなどとして医学分野においても特に広い用途で用いられている。
【0003】
例えば、織物材料から作られるインプラントは、人工椎間板として、そして、椎体インプラントとして価値を示した。人間の脊椎は、23の椎間板を含む。23の椎間板は、皮質海綿様骨から成っている2つのそれぞれ隣接した椎体の間のクッションのように配置されている。巨視的に見ると、各椎間板は、一緒に機能的ユニットを形成する3つの異なる構成要素から成る。即ち、椎間板の中央に配置されたセミゼラチン質の核(髄核)と、核を取り巻く線維軟骨環(線維輪)と、2つの終板とである。2つの終板は、隣接する椎体にしっかりと接触し、核または線維輪の上面または底面にいずれの場合にも配列され、さらに硝子様軟骨から成る。これに関連して、終板は、柔らかい核を有する椎間板と、隣接する固い椎体との間の遷移帯を形成する。終板のうちの1枚が損なわれると、核組織は椎体に深く入りこむことができて、核は、圧力クッションとしてのその機能をもはや実行することができない。椎間板の破損によって、線維輪の破砕を介して髄核の枯渇を次々に引き起こすことがあり得る。そして、それによって神経節に対するまたは脊髄神経に対する圧締をもたらして、背中及び足の両方に激痛を生じさせる。
【0004】
椎間板損傷の治療のために、損傷の程度に従って、罹患椎間板が完全に除去されてインプラントに置換されるか、核が完全に椎間板から除去されて核置換術と呼ばれる対応するインプラントに置換されるか、または、髄核の一部が除去されてケージと呼ばれるインプラントに置換される。前記のインプラントの各々は、通常、織物材料でできている中空体から成っており、充てん材で満たされている。チタン織物などの人体組織と互換性を持つ高張力のワイヤ繊維または織物の繊維から成っていてかつ充てん材として適切な流体で満たされることができる、この種のインプラントは、例えば、EP 0 480 954 B1で公知である。
【0005】
インプラントは、例えば、角質ヒドロゲルなどの角質材料の層、及び任意で、例えばポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスチレンなどのポリマー層を含んでいる人工椎間板について、米国特許出願公開第2002/0029083 A1で公知である。
【0006】
医療分野の織物材料の別の重要なアプリケーションは、とりわけ粘性液体を人体に導入するホースで代表される。これについての例は、人体にすでに導入されたインプラントに充てん材を導入することができるホースで代表される。これについての更なる例は、骨粗鬆症の治療用の椎体形成術(vertebroplasty)である。この処理において、粘性骨セメントは、一端でカニューレに接続しているホースを介して多孔性骨に注入されて、内部の安定化のために骨を骨セメントで満たす。このために、骨セメントが高い粘性を有するという理由から、ホースを介して骨セメントの十分な搬送を確実にするために十分に大きい内径を有するホースを用いるべきである。さらに、ホースは、ホースから体内へ、例えば骨セメントなどの運ばれるべき材料の通過を避けるために、運ばれるべき材料に関して十分な不浸透性を有していなければならない。かかるホースが製造される現在公知の織物材料は、しかしながら、運ばれるべき材料に対して十分な不浸透性を有していない。公知の織物材料の摺動特性も、改良を必要とする。
【0007】
本開示の一態様に従って、織物材料が提供される。織物材料は、十分な摺動特性を有し、特に椎間板インプラントまたは椎体インプラントにおいて通常用いられる充てん材に関して十分に不浸透性であり、従って、医療分野において、椎体形成術用などのホース材料として、または核置換用などのインプラント材料として、有利に用いられることができる。更に、織物材料のほかにそのコーティングもまた、十分な生体安定性(biostability)を有していなければならない。
【0008】
本開示の一態様に従って、織物素地を含み、コーティングが該織物素地の表面の少なくとも一部に施されている織物材料が提供される。該コーティングは、ヒドロゲル、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン及び前述の化合物のうちの2つ以上の所望の組合せからなるグループから選択される化合物を含むかまたは、前記化合物のうちの1つから成っている。
【0009】
驚くべきことに、角質ヒドロゲルを除いたヒドロゲル、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン及び前述の化合物のうちの2つ以上の所望の組合せからなるグループから選択される化合物は、医療分野で用いられる骨セメントなどの充てん材に関して例外的な浸透性を有していて、更に、良い摺動特性によって特徴づけられるということが、本発明のフレームワーク内で見出されることができた。更に、これらの材料は、例外的な生体安定性のほかに再生可能な品質も有していて、これらの材料の製造において品質管理のための努力及び/または費用を適度に保つことができる。前述の理由のために、織物材料を、例えば、人工椎間板、髄核、ケージ椎体インプラントもしくは関節面置換物、または椎体形成術用などの医療用ホース材料などの、インプラント用の材料として用いることができることが有利である。
【0010】
本発明の意味におけるヒドロゲルは、水を含んでいるが、不水溶性であって、その分子は化学的にまたは物理的に三次元網目構造に結び付いている重合体として、関連する技術的文献と一致する。
【0011】
通常、織物素地の全表面の一部または全部は、前述の材料で覆われることができる。このために、織物素地の個々の繊維または、従って織物素地の繊維の少なくとも一部を覆うことも可能である。このため、織物素地を含んでいる織物材料が提案される。ここで、織物素地は繊維を含み、繊維のうちの少なくとも一部はコーティングを施され、コーティングは、合成ヒドロゲル、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、及び前記化合物のうちの2つ以上の所望の組合せからなるグループから選択される化合物を含むか、または上記の化合物のうちの1つから成る。合成コーティング材料の使用のために、対応する織物材料は、例外的な生体適合性だけでなく、再生可能な品質をも有していて、対応する材料の製造において品質管理のための努力及び/または費用を適度に保つことができる。
【0012】
合成ヒドロゲルが用いられるときに、本発明は、合成ヒドロゲルの化学的性質に関してまたはコーティングに含まれるヒドロゲルの数に関して限定されない。この点において、織物素地のコーティングは、合成ヒドロゲルまたは少なくとも2つの異なる合成ヒドロゲルを含んでもよい。コーティングは、少なくとも1つの合成ヒドロゲルに加えて他の補助材料及び添加物を含んでもよい。織物素地のコーティングが1つの合成ヒドロゲルまたは少なくとも2つの異なる合成ヒドロゲルから成っているときに、特に良い結果が得られる。かかる材料は、骨セメントなどの医療分野で通常用いられる充てん材に関する特に高い非浸透性だけでなく良い生体安定性も有する。
【0013】
本発明の理論の更なる展開において、織物素地のコーティングは、ビニル重合体に基づくヒドロゲルを含んでいること、または、特に、ビニル重合体に基づくヒドロゲルから成っているということが提案される。
【0014】
基本的には、この目的のために当業者にとって公知の全てのビニル重合体からのヒドロゲルを、織物素地のコーティング用に用いることができる。ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、及び前記化合物のうちの少なくとも2つの所望の混合物からなるグループから選択されるビニル重合体は、特に、この目的に適していると判明した。織物素地のコーティングが、ポリビニルアルコールヒドロゲルを含むとき、または特に、織物素地のコーティングがポリビニルアルコールヒドロゲルから成っているときに、特に良い結果が得られる。
【0015】
典型的な実施形態によれば、織物材料のコーティングは、ポリウレタン及び、特にポリカーボネートウレタンを含む。ポリカーボネートウレタンは、芳香族ハードセグメント及び脂肪族ハードセグメントの両方で構成されることができる。シリコン末端基グループを有するポリカーボネートウレタンは、同様に使用可能である。コーティングが、ポリウレタンまたはポリカーボネートウレタンで成っているときに、特に良い結果が得られる。特に、ポリカーボネートウレタンは例外的な生体安定性によって特徴づけられ、コーティング材料として特に適切である。
【0016】
60,000から500,000g/molまで、及び特に90,000から400,000g/molまでの重量平均分子量を有していて、ハードセグメントとソフトセグメントとの間の比率が20%/80%から60%/40%の間にあるべきポリカーボネートウレタンが、コーティング材料に特に適切である。
【0017】
織物材料の織物素地に施されるコーティングまたは個々の繊維または織物素地の個々の繊維または繊維の一部に施されるコーティングの厚さは、織物材料の最近の目的に特に依存する。0.5μmから200μmの間のコーティング厚さを有する織物材料によって、特に良い結果が得られる。本開示の更なる典型的な実施形態によれば、コーティングの厚さは、0.5μmから50μmの間及び特に0.5μmから10μmの間になる。十分な摺動特性に加えて、かかるコーティングも、医療セクターにおいて通常用いられる充てん材に関して高い非浸透性を有する。あまりに薄い層厚さについては、充てん材に関する織物材料の十分な非浸透性を実現できない。一方、あまりに厚い層厚さについては、時間がたてばコーティングが素地から完全にまたは少なくとも部分的に分離するという危険がある。
【0018】
特に、織物材料が医療分野で使用されなければならないときに、織物素地が生物学的適合性材料及び/または吸収性材料から成ることは有利であると判明した。このことは、織物素地が個々の生物学的適合性材料及び/または吸収性材料から成っている場合及び各々が生物学的適合性及び/または吸収性のある少なくとも2つの異なる材料の混合物から成っているという場合を含む。
【0019】
織物素地は、織物複合材、即ち、織られたり編まれたりした織物材料でもなくまた織布でもない形式、及び/または織製品、メリヤス製品または織布製品の形式で通常用いることができる。適当な織物複合材についての例として、フェルト材またはフリース材がある。織物素地が、織物材料において提供され、かつ布地、編地または織物繊維でできている織物から成っているときに、特に良い結果が得られる。織物素地が布地、編地、またはコーティングによって液密封止された織物繊維の織物から成るときに、特に良い結果が特に得られる。
【0020】
織物素地を形成している織物繊維の材料は、材料の指定された用途に依存して、自由に選択されることができる。織物材料の織物素地が、テレフタル酸ポリエチレン(PET)、ポリエーテルケトン(ポリエーテルケトン)(PEEK)、ポリメチルメタクリル酸(polymethyl methacrylates)(PMMA)、チタン(Ti)、コバルト/クロミウム合金(CoCr)、角質ヒドロゲルを除くヒドロゲル、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリオレフィン(polyolefines)、特にポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP)並びに、前述の化合物の2つ以上の所望の組み合わせ、からなるグループから選択される化合物でできているかまたは、前記の化合物のうちの1つの織物繊維をから成っている織物繊維を含むことは、特にホース材料としてのまたはインプラント材料としての指定された使用に有利であると特に判明した。かかる材料は、例外的な生体適合性によって特に特徴づけられる。PETは、この目的に特に適している。
【0021】
本開示の更なる主題は、織物材料、特に前述の織物材料の製造方法である。ここで、織物素地は、角質ヒドロゲルを除くヒドロゲル、特にポリカーボネートウレタンであるポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、及び上記の化合物のうちの2つ以上の所望の組合せから成るグループから選択される化合物で少なくとも部分的にコーティングされている。これは、全表面または織物素地の全表面が前述の化合物のうちの1つでコーティングされている場合、及び織物材料の表面の一部だけがかかる化合物でコーティングされているという場合を含む。後者の場合、それは織物素地の表面の隣接している対応してコーティングされている部分、またはお互いに空間的に分離されている織物素地の表面の複数の部分領域であり得る。
【0022】
該方法は、通常個々のコーティング技術に限定されない。織物素地に対するコーティングの塗布は、このために当業者にとって公知であるいかなる技術によっても行われることができる。
【0023】
特に、織物素地のコーティングは、例えば、織物素地を合成ヒドロゲル溶液及び、コーティングが角質ヒドロゲルを除くヒドロゲルを含むかまたはそれから成っているときに少なくとも1つの凍結融解サイクルにヒドロゲル溶液を与えられた素地のその結果生じた対象へ浸すことによって特に作られ得る。全表面または織物素地の全表面がヒドロゲルでコーティングされていなければならないときに、この方法は特に有利であると判明した。しかしながら、上記に説明した方法も、織物素地の部分的なコーティングだけに適している。コーティングされるべきでない表面部分については、この場合一致して対象とされる。織物素地の与えられた片側だけのコーティングでは、織物素地は、例えば、キャリア材料に塗られることができて、このキャリア材料はヒドロゲル溶液に浸されることができ、ヒドロゲルでおおわれているキャリアの人々に対向して配置される織物素地の表面だけがヒドロゲルでコーティングされる。
【0024】
コーティングされるべき織物素地が浸されるヒドロゲル溶液などの、ポリビニルアルコールヒドロゲルで織物素地をコーティングする場合、例えば、重量で濃度2%から40%、特に重量で5%から20%に加水分解されたポリビニルアルコールからなる水溶液であってもよい。この溶液は、例えば、ポリビニルアルコールの対応する量が95℃の対応する水分量で溶かされて、製造することができる。
【0025】
本発明はまた、実行されるべき凍結融解サイクルの数に関して制限されない。しかしながら、織物素地を少なくとも2つの凍結融解サイクル、そして、特に正確に2つの凍結融解サイクルまでコーティングの対象となすことは、有利であると判明した。個々の凍結融解サイクルの各々において、コーティングされた素地は、最初、0℃未満の温度で十分な時間インキュベートされて材料を凍らせる。凍結融解サイクルの凍結ステージの温度は、例えば、−1℃から−50℃の間、特に、−10℃から−20℃の間になり、凍結融解サイクルの凍結ステージの期間は、少なくとも8時間になる。凍結融解サイクル処理の目的は、ヒドロゲルの個々の分子同士の間の架橋を実現して、ヒドロゲルの耐久性を増すことである。
【0026】
本発明の更なる対象は、外部被覆、特に前述の織物材料からなる外部被覆を有している、特にインプラントである物品である。角質ヒドロゲルを除くヒドロゲル、特にポリカーボネートウレタンであるポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluorotheylene)、及び前記化合物のうちの2つ以上の所望の組合せ、から成るグループから選択される化合物を有する織物材料の織物素地のコーティングにより、かかる物品は、医療分野で通常用いられる充てん材に対する高い非浸透性によって、更に、優れた摺動特性及び例外的な生体安定性によって特徴づけられる。
【0027】
本発明の可能な実施形態に従って、物品はホースとして作られている。ヒドロゲルでコーティングされた織物素地の高い非浸透性及びその優れた生体適合性により、かかるホースは、例えば椎体形成術における骨セメントの導入などの、特に高粘性液体である液体を人体へ導入するのに例外的に適している。あるいは、物品は、例えば、リングとしてまたはバルーン形状に作られることもできる。
【0028】
通常、ホース、リングまたはバルーンは、両側でまたは少なくとも片側で、少なくとも1つのヒドロゲルでコーティングされていてもよい。特にヒドロゲルである前記のコーティングを用いて、両側でホースをコーティングするために、または物品の少なくとも内側をコーティングするために、人体への液体の導入用として提供されるときに、特に有利であると判明した。
【0029】
本開示の更なる可能な実施形態に従って、充てん材は、物品の被覆に含まれる。物品は、被覆によって、特にあらゆる面を包まれている。
【0030】
充てん材は、例えば、骨セメント、合成ヒドロゲル、及び/またはリンガー溶液であってもよい。本発明は、前述の材料のうちの1つに限定されない。
【0031】
その特性のために、例えば、骨セメント、合成ヒドロゲル、及び/またはリンガー溶液で満たされた物品は、人工椎間板、髄核の置換物、ケージ椎体インプラント、または関節面置換物として用いられることができる。
【0032】
これの代わりに、ホースとして作られた物品は、椎体形成術においてまたは椎間板減圧術(nucleoplasty)で用いられてもよい。
【0033】
この場合において開示される対象は、有利な実施形態及び添付の図面を参照して単に一例として以下に開示される。
【発明を実施する形態】
【0034】
図1に概略的に示された椎間板10は線維輪12を有し、線維輪12は、アモルファスベースの物質に組み込まれた高度に構造化されたコラーゲン繊維から成る。椎間板の核(髄核)14が位置している空洞は、線維輪12の中央にある。柔らかい核は、椎間板の全断面積のほぼ25から40%を占め、コラーゲンの低い割合を有するプロテオグリカン(proteoglycanes)を主として含む粘液物質から主として成っている。それぞれの椎体終板(図示せず)は、髄核の領域において椎間板10の上方及び下方に設けられている。該終板は、硝子様軟骨(hyaline cartilage mass)から成っていて、椎間板10を隣接する椎体(図示せず)から分離する。
【0035】
髄核は、図2に示した椎間板において除去されて、実質的にリング形状に作られたインプラント16で置換された。インプラント16の内部は、骨によってまたは骨置換物材料によって満たされた。かかるインプラントは、核の一部を置換するだけであって、通常ケージとも称される。
【0036】
バッグ形状のインプラント16’を有する椎間板10を図3に示す。この場合、核全体が椎間板10から除去されて、インプラント16’で置換された。図3から分かるように、インプラント16’は、インプラント16’用の充てん剤が導入されることができるホース部分18を有する。この充てん材は、例えば、骨セメント、ヒドロゲル、及び/またはリンガー溶液であってもよい。ホース部分18を介して充てん材をインプラント16へ導入することは、インプラント16’を患者へ挿入する前後に行われ得る。
【0037】
図4に示されるケージは2つのバー形状のインプラント16’’を有しているのに対して、図5に示される核置換物は、ホース部分18’を有するホース形状のインプラント16’’’から成っている。
【0038】
図6には、インプラント16’’’’が示され、インプラント16’’’’は、バッグ形状様であって、その外部被覆は、特にヒドロゲルコーティングである前記のコーティング材料のうちの1つを有する織物材料から成っている。このインプラント16’’’’は、それが椎間板を完全に置換することができるように成されている(人口椎間板)。インプラント16’’’’は、例えばリンガー溶液、ヒドロゲル及び/または骨セメントなどの充てん材をインプラント16’’’’に導入し得るホース部分18’’を有している。
【0039】
図7に示しかつ人工椎間板として適当なインプラント16’’’’’は、本体を有し、本体の横断面は、自然の椎間板に従って成形され、その上に、終板をシミュレートしている2つの高い部分が設けられるかまたは、それぞれの終板に対してその上側及びその下側でいずれの場合にも接続される。
【0040】
図8に、椎体20が図式的に示され、その中にインプラント16’’’’’’が嵌入される。このインプラント16’’’’’’の外部被覆も、ヒドロゲルでコーティングされた織物材料から成っていて、ホース部分18’’’を介して充てん材で満たされている。かかるインプラント16’’’’’’は、外傷性障害によってまたは骨粗鬆症によって生じたのであろうとなかろうと、例えば、椎体の破砕の場合に、用いることができる。
【0041】
図9に示される織物材料21は、実質的に円形の横断面を有する繊維22及び繊維表層に塗布されるコーティング24で成っているのに対して、図10に示した織物材料21’は複数の繊維22’を含み、繊維構造全体が、コーティング24を与えられている。
【0042】
本発明は、以下に、例を示すことによって説明されるが、これに限定されない。
〔実施例〕
各々4mmの内径及び各々100mmの長さを有する2つのホースが、動的脊柱安定化システムDynesys(登録商標)において用いられるコードの製造用に使われるようなPET織り繊維から製造された。コーティングの目的で、これらのホースは、その次に溶液に浸された。溶液は、重量で10%の濃度まで加水分解されたポリビニルアルコールを含み、ポリビニルアルコールの対応する量を95°Cの水に溶かすことによって製造され、織物素地のそれらの内面及び外面の両方をポリビニルアルコールを用いてホースをコーティングした。
【0043】
この方法でコーティングされたホースは、その後すぐに、2つの凍結融解サイクルの対象とされた。凍結融解サイクルにおいてホースは、3日間、−17℃で最初にインキュベートされ、続いて室温で5時間インキュベートされ、それによって、ホースは12時間、−17℃で再び凍結される前に融解され、続いて、室温で2時間インキュベートされた。このようにヒドロゲルでコーティングされたホースは、続いて2時間水の中で処理された。
【0044】
この方法で製造された2本のホースの各々は、機械的に60ml注射器の先端に固定された。
【0045】
その後、酸化ジルコニウム(SULCEM 3(登録商標))を含まないPMMAに基づく骨セメントが、注射器を介して2本のホースの各々へ導入された。骨セメントは、注射器へ導入される前に60秒間混合されて、気泡を除去するために更に30秒の間インキュベートされた。その後、セメントは注射器に満たされて、注射器及びホースを介して圧力下で運ばれた。
【0046】
骨セメントは、ホース材料によって外部に押し出される骨セメントなしに問題なく両方のホースで運ばれることができた。
【0047】
この例は、織物材料が医学分野で通常用いられる骨セメントなどの充てん材に関して例外的な非浸透性を有し、さらに十分な摺動特性を有して、それを介して高い粘性材料でさえ運ぶということを示す。
〔比較実施例〕
例1と同じ手順に続き、ポリビニルアルコールヒドロゲルでコーティングされた2つのホースの代わりに、PET織り繊維でできているがコーティングされていない2つの対応するホースが用いられた。
【0048】
コーティングしてないホースを介して骨セメントを運ぶことは不可能だった。骨セメントの流れは、それぞれ16m及び18m後で止まった。それ以上運ぶことは注射器で有効な力を増しても実現できなかった。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】自然のままの人間の椎間板の概略斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態に基づくインプラントを有する椎間板の概略斜視図である。
【図3】本発明の第2実施形態に基づくインプラントを有する椎間板の概略斜視図である。
【図4】本発明の第3実施形態に基づくインプラントを有する椎間板の概略斜視図である。
【図5】本発明の第4実施形態に基づくインプラントを有する椎間板の概略斜視図である。
【図6】本発明の第5実施形態に基づくインプラントの概略斜視図である。
【図7】本発明の第6実施形態に基づくインプラントの概略斜視図である。
【図8】本発明の第7実施形態に基づくインプラントを有する椎体の概略斜視図である。
【図9】本発明の第1実施形態に基づく織物材料の断面図である。
【図10】本発明の第2実施形態に基づく織物材料の断面図である。
【符号の説明】
【0050】
10 椎間板
12 線維軟骨環(線維輪)
14 核(髄核)
16 インプラント(ケージ)
16’ インプラント(髄核の置換物)
16’’ インプラント(ケージ)
16’’’ インプラント(髄核の置換物)
16’’’’ インプラント(人工椎間板)
16’’’’’ インプラント(人工椎間板)
16’’’’’’インプラント(椎体インプラント)
18から18’’’ホース(部分)
20 椎体
21、21’織物材料
22、22’繊維/素地
24、24’コーティング
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティング(24、24’)が表面の少なくとも一部に施された織物素地(22、22')を含む織物材料(21、21)であって、
前記コーティング(24、24’)には、角質ヒドロゲルを除くヒドロゲルと、ポリウレタンと、ポリ塩化ビニルと、ポリテトラフルオロエチレンと、前記化合物のうちの2つ以上のいずれか所望の組合せと、からなるグループから選択される化合物を含まれることを特徴とする織物材料(21、21’)。
【請求項2】
前記織物材料(21、21’)は繊維(22、22’)で作られ、前記繊維(22、22’)の少なくとも一部には、コーティング(24、24’)が施され、前記コーティング(24、24’)は、合成ヒドロゲル、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、及び前記化合物のうちの2つ以上のいずれか所望の組合せから成るグループから選択される化合物を含むことを特徴とする請求項1記載の織物材料(21、21’)。
【請求項3】
前記コーティング(24、24’)は、合成ヒドロゲルまたは少なくとも2つの異なる合成ヒドロゲルから作られることを特徴とする請求項1または2記載の織物材料(21、21’)。
【請求項4】
前記コーティング(24、24’)は、ビニル重合体を含むかまたはそれから作られることを特徴とする請求項3記載の織物材料(21、21’)。
【請求項5】
前記ビニル重合体は、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、及びそれらのいずれか所望の混合物から成るグループから選択され、特にビニルアルコールであることを特徴とする請求項4記載の織物材料(21、21’)。
【請求項6】
前記コーティング(24、24’)は、ポリウレタン及び、特にポリカーボネートウレタンから作られることを特徴とする請求項1または2記載の織物材料(21、21’)。
【請求項7】
前記ポリカーボネートウレタンは、60,000から500,000g/mol及び、特に、90,000から400,000g/molの加重平均分子量を有することを特徴とする請求項6記載の織物材料(21、21’)。
【請求項8】
前記ポリカーボネートウレタンのハードセグメントとソフトセグメントとの間の比率は、20%/80%から60%/40%の間になることを特徴とする請求項6または7記載の織物材料(21、21’)。
【請求項9】
前記コーティング(24、24’)は、0.5μmから200μm、特に0.5μmから50μm、及び特に0.5μmから10μmの厚みを有することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1に記載の織物材料(21、21’)。
【請求項10】
前記織物素地(22、22’)は、生物学的適合性材料及び/または吸収性材料で作られることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1に記載の織物材料(21、21’)。
【請求項11】
前記織物素地(22、22’)は、織物繊維から作られる布地であることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1に記載の織物材料(21、21’)。
【請求項12】
前記織物素地(22、22’)は、前記コーティング(24、24’)によって液密封入される織物繊維の布地、編地、または、織物であることを特徴とする請求項11記載の織物材料(21、21’)。
【請求項13】
前記織物繊維は、テレフタル酸ポリエチレン、ポリエーテルケトン、ポリメチルメタクリル酸、チタン、コバルト/クロミウム合金、ヒドロゲル、ポリビニルアルコール、ポリオレフィン、特にポリエチレン及びポリプロピレン、並びに、前述の化合物の2つ以上の所望の組み合わせ、からなるグループから選択される化合物を含むことを特徴とする請求項11または12記載の織物材料(21、21’)。
【請求項14】
前記織物繊維は、テレフタル酸ポリエチレン、ポリエーテルケトン、ポリメチルメタクリル酸、チタン、コバルト/クロミウム合金、ヒドロゲル、ポリビニルアルコール、ポリオレフィン、特にポリエチレン及びポリプロピレン、並びに、前述の化合物の2つ以上の所望の組み合わせ、からなるグループから選択される化合物から成ることを特徴とする請求項11または12記載の織物材料(21、21’)。
【請求項15】
特に、請求項1乃至14のうちのいずれか1に記載の織物材料(21、21’)の製造方法であって、
織物素地(22、22’)は、角質ヒドロゲルを除くヒドロゲル、ポリウレタン、ポリカーボネートウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、及び上記化合物のうちの2つ以上のいずれか所望の組合せ、からなるグループから選択される化合物で少なくとも部分的にコーティングされていることを特徴とする方法。
【請求項16】
前記織物素地(22、22’)は、ヒドロゲル溶液に浸され、続いてコーティングのために少なくとも1つの凍結融解サイクルで処理され、特に2つの凍結融解サイクルで処理されることを特徴とする請求項15記載の方法。
【請求項17】
少なくとも1つの前記凍結融解サイクルは、凍結融解サイクルの凍結ステージの温度が、例えば、−1℃から−50℃の間、特に−10℃から−20℃の間の温度で少なくとも8時間の間のコーティングされた素地のインキュベーションと、1℃から50℃の間、特に20℃から30℃の間の温度で少なくとも1時間の間の次のインキュベーションと、を含むことを特徴とする請求項16記載の方法。
【請求項18】
外部被覆を有する、特にインプラントである物品であって、
前記外部被覆は、請求項1乃至14のいずれか1に記載の織物材料(21、21’)を含むことを特徴とする物品。
【請求項19】
前記織物材料は、ホース(18、18’、18’’、18’’’)として、リングとして、またはバルーン形状のものとして作られることを特徴とする請求項18記載の特にインプラントである物品。
【請求項20】
前記ホース(18、18’、18’’、18’’’)、リング、またはバルーンは、両側にまたは片側に、さらに特に内側にコーティングされていることを特徴とする請求項19記載の特にインプラントである物品。
【請求項21】
充てん材が前記被覆に含まれ、前記充てん材は、特に全ての面において前記被覆で囲まれることを特徴とする請求項18記載の特にインプラントである物品。
【請求項22】
前記充てん材は、骨セメント、ヒドロゲル、及び/またはリンガー溶液であることを特徴とする請求項21記載の特にインプラントである物品。
【請求項23】
人工椎間板(16’’’’、16’’’’’)として、髄核置換物として、ケージ(16、16’’)として、椎体インプラント(16’’’’’’)として、または椎体融合用または椎体再建用の関節面置換物として、の請求項21または22記載の物品の使用方法。
【請求項24】
椎体形成術または椎間板減圧術における請求項19または20記載の物品の使用方法。
【請求項1】
コーティング(24、24’)が表面の少なくとも一部に施された織物素地(22、22')を含む織物材料(21、21)であって、
前記コーティング(24、24’)には、角質ヒドロゲルを除くヒドロゲルと、ポリウレタンと、ポリ塩化ビニルと、ポリテトラフルオロエチレンと、前記化合物のうちの2つ以上のいずれか所望の組合せと、からなるグループから選択される化合物を含まれることを特徴とする織物材料(21、21’)。
【請求項2】
前記織物材料(21、21’)は繊維(22、22’)で作られ、前記繊維(22、22’)の少なくとも一部には、コーティング(24、24’)が施され、前記コーティング(24、24’)は、合成ヒドロゲル、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、及び前記化合物のうちの2つ以上のいずれか所望の組合せから成るグループから選択される化合物を含むことを特徴とする請求項1記載の織物材料(21、21’)。
【請求項3】
前記コーティング(24、24’)は、合成ヒドロゲルまたは少なくとも2つの異なる合成ヒドロゲルから作られることを特徴とする請求項1または2記載の織物材料(21、21’)。
【請求項4】
前記コーティング(24、24’)は、ビニル重合体を含むかまたはそれから作られることを特徴とする請求項3記載の織物材料(21、21’)。
【請求項5】
前記ビニル重合体は、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、及びそれらのいずれか所望の混合物から成るグループから選択され、特にビニルアルコールであることを特徴とする請求項4記載の織物材料(21、21’)。
【請求項6】
前記コーティング(24、24’)は、ポリウレタン及び、特にポリカーボネートウレタンから作られることを特徴とする請求項1または2記載の織物材料(21、21’)。
【請求項7】
前記ポリカーボネートウレタンは、60,000から500,000g/mol及び、特に、90,000から400,000g/molの加重平均分子量を有することを特徴とする請求項6記載の織物材料(21、21’)。
【請求項8】
前記ポリカーボネートウレタンのハードセグメントとソフトセグメントとの間の比率は、20%/80%から60%/40%の間になることを特徴とする請求項6または7記載の織物材料(21、21’)。
【請求項9】
前記コーティング(24、24’)は、0.5μmから200μm、特に0.5μmから50μm、及び特に0.5μmから10μmの厚みを有することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1に記載の織物材料(21、21’)。
【請求項10】
前記織物素地(22、22’)は、生物学的適合性材料及び/または吸収性材料で作られることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1に記載の織物材料(21、21’)。
【請求項11】
前記織物素地(22、22’)は、織物繊維から作られる布地であることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1に記載の織物材料(21、21’)。
【請求項12】
前記織物素地(22、22’)は、前記コーティング(24、24’)によって液密封入される織物繊維の布地、編地、または、織物であることを特徴とする請求項11記載の織物材料(21、21’)。
【請求項13】
前記織物繊維は、テレフタル酸ポリエチレン、ポリエーテルケトン、ポリメチルメタクリル酸、チタン、コバルト/クロミウム合金、ヒドロゲル、ポリビニルアルコール、ポリオレフィン、特にポリエチレン及びポリプロピレン、並びに、前述の化合物の2つ以上の所望の組み合わせ、からなるグループから選択される化合物を含むことを特徴とする請求項11または12記載の織物材料(21、21’)。
【請求項14】
前記織物繊維は、テレフタル酸ポリエチレン、ポリエーテルケトン、ポリメチルメタクリル酸、チタン、コバルト/クロミウム合金、ヒドロゲル、ポリビニルアルコール、ポリオレフィン、特にポリエチレン及びポリプロピレン、並びに、前述の化合物の2つ以上の所望の組み合わせ、からなるグループから選択される化合物から成ることを特徴とする請求項11または12記載の織物材料(21、21’)。
【請求項15】
特に、請求項1乃至14のうちのいずれか1に記載の織物材料(21、21’)の製造方法であって、
織物素地(22、22’)は、角質ヒドロゲルを除くヒドロゲル、ポリウレタン、ポリカーボネートウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、及び上記化合物のうちの2つ以上のいずれか所望の組合せ、からなるグループから選択される化合物で少なくとも部分的にコーティングされていることを特徴とする方法。
【請求項16】
前記織物素地(22、22’)は、ヒドロゲル溶液に浸され、続いてコーティングのために少なくとも1つの凍結融解サイクルで処理され、特に2つの凍結融解サイクルで処理されることを特徴とする請求項15記載の方法。
【請求項17】
少なくとも1つの前記凍結融解サイクルは、凍結融解サイクルの凍結ステージの温度が、例えば、−1℃から−50℃の間、特に−10℃から−20℃の間の温度で少なくとも8時間の間のコーティングされた素地のインキュベーションと、1℃から50℃の間、特に20℃から30℃の間の温度で少なくとも1時間の間の次のインキュベーションと、を含むことを特徴とする請求項16記載の方法。
【請求項18】
外部被覆を有する、特にインプラントである物品であって、
前記外部被覆は、請求項1乃至14のいずれか1に記載の織物材料(21、21’)を含むことを特徴とする物品。
【請求項19】
前記織物材料は、ホース(18、18’、18’’、18’’’)として、リングとして、またはバルーン形状のものとして作られることを特徴とする請求項18記載の特にインプラントである物品。
【請求項20】
前記ホース(18、18’、18’’、18’’’)、リング、またはバルーンは、両側にまたは片側に、さらに特に内側にコーティングされていることを特徴とする請求項19記載の特にインプラントである物品。
【請求項21】
充てん材が前記被覆に含まれ、前記充てん材は、特に全ての面において前記被覆で囲まれることを特徴とする請求項18記載の特にインプラントである物品。
【請求項22】
前記充てん材は、骨セメント、ヒドロゲル、及び/またはリンガー溶液であることを特徴とする請求項21記載の特にインプラントである物品。
【請求項23】
人工椎間板(16’’’’、16’’’’’)として、髄核置換物として、ケージ(16、16’’)として、椎体インプラント(16’’’’’’)として、または椎体融合用または椎体再建用の関節面置換物として、の請求項21または22記載の物品の使用方法。
【請求項24】
椎体形成術または椎間板減圧術における請求項19または20記載の物品の使用方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公表番号】特表2009−520888(P2009−520888A)
【公表日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−546262(P2008−546262)
【出願日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際出願番号】PCT/EP2006/012373
【国際公開番号】WO2007/076951
【国際公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(504339572)ツィンマー・ゲーエムベーハー (9)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際出願番号】PCT/EP2006/012373
【国際公開番号】WO2007/076951
【国際公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(504339572)ツィンマー・ゲーエムベーハー (9)
【Fターム(参考)】
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