説明

コーティングに関連した多成分の水媒介性コーティング組成物、および方法

【課題】コーティングに関連した多成分の水媒介性コーティング組成物、および方法の提供。
【解決手段】第1成分および第2成分を含む多成分の水媒介性コーティング組成物が、開示され、その第1成分およびその第2成分は、その組成物の基材への適用の前に一緒に混合される。上記第1成分は、(i)ポリカーボネート−ポリウレタンポリマーと(ii)5,000以下の数平均分子量を有するアクリルポリオールとの水性分散物を含む。上記第2成分は、上記アクリルポリオールの官能基および/または上記ポリカーボネート−ポリウレタンポリマーの官能基と反応性である官能基を有する材料を含む。このような組成物から形成されるコーティング、およびこのような組成物によって少なくとも部分的にコーティングされた基材もまた、開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、第1成分および第2成分を含む多成分の(multi−component)水媒介性(waterborne)コーティング組成物に関連し、その第1成分およびその第2成分は、その組成物の基材への適用の前に一緒に混合される。上記第1成分は、(i)ポリカーボネート−ポリウレタンポリマーと(ii)5,000以下の数平均分子量を有するアクリルポリオールとの水性分散物を含む。上記第2成分は、上記アクリルポリオールの官能基および/または上記ポリカーボネート−ポリウレタンポリマーの官能基と反応性である官能基を有する材料を含む。本発明はまた、このような組成物から形成されるコーティング、およびこのような組成物によって少なくとも部分的にコーティングされた基材に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景情報)
コーティング組成物の環境影響(例えば、それらの適用の間における空気中への揮発性有機物の放出に関連する影響)を減少させることは、進行中の研究および近年における開発の領域となっている。したがって、関心は、低レベルの揮発性有機化合物を含むコーティング組成物(「低VOCコーティング組成物」)において増加している。
【0003】
特定の市場(例えば、消費家電市場)において、他の基材の中でもとりわけ、プラスチック基材(例えば、アクリロニトリルブタジエンスチレンおよび/またはポリカーボネートから構成される基材)に保護コーティングおよび装飾コーティングを適用することが、望ましい。しかし、このようなコーティングのこれらの型の基材への適用に関連している1つの懸案事項は、上記コーティングの上記基材への適切な付着を達成することである。いくつかの場合において、適切な付着は、上記基材を化学的に「エッチング」する溶媒を利用する溶媒媒介性(solventborne)コーティングを使用し、それによりその基材のポリマー鎖とそのコーティング中のポリマー鎖との物理的なもつれを引き起こすことによって達成される。しかし、このようなコーティング組成物は、環境に配慮した低VOCコーティング組成物を達成するという要望と不適合である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プラスチック基材への適用に適したコーティング組成物において望ましい他の特性は、耐湿性および硬度である。耐湿性は、水に対する曝露後にインタクトでありかつ傷のない状態を維持するコーティングの能力の尺度であるが、より硬いコーティングは、引っ掻き傷(scratching)および損傷(marring)に対して、より抵抗性である。プラスチック基材への適用に適した水媒介性コーティング組成物を提供することが望ましく、その水媒介性コーティング組成物は、このような基材に対する良好な付着特性を示し得る一方で、十分な耐湿特性および硬度特性を有する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の要旨)
特定の観点において、本発明は、多成分の水媒介性コーティング組成物に関する。これらのコーティング組成物は、(a)(i)ポリカーボネート−ポリウレタンポリマーと、(ii)5,000以下の数平均分子量を有するアクリルポリオールとを含む水性分散物を含む第1成分;ならびに(b)上記アクリルポリオールの官能基および/または上記ポリカーボネート−ポリウレタンポリマーの官能基と反応性である官能基を有する材料を含む第2成分を含む。
【0006】
本発明はまた、このような組成物から堆積されたコーティングによって少なくとも部分的にコーティングされた基材、基材をこのような組成物によって少なくとも部分的にコーティングするための方法、およびこのような組成物から堆積された少なくとも1つのコーティング層を含む多成分複合コーティングによって少なくとも部分的にコーティングされた基材に関する。
【0007】
他の観点において、本発明は、ポリカーボネート−ポリウレタンポリマーの水性分散物を含む多成分の水媒介性コーティング組成物に関し、ここで上記組成物が、プラスチック基材の少なくとも一部上に堆積され、そして硬化される場合に、上記組成物は、上記基材に付着するコーティングを産生し、上記付着は、従来的な多成分の溶媒媒介性ポリウレタン含有コーティング組成物が、同じ条件下で適用された場合に同じ基材に付着することと、少なくとも同程度である。
例えば、本願発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
(a)(i)ポリカーボネート−ポリウレタンポリマーと、(ii)5,000以下の数平均分子量を有するアクリルポリオールとを含む水性分散物を含む第1成分;ならびに
(b)該アクリルポリオールの官能基および/または該ポリカーボネート−ポリウレタンポリマーの官能基と反応性である官能基を有する材料を含む第2成分;
を含む、多成分の水媒介性コーティング組成物。
(項目2)
前記組成物は、低VOC組成物である、項目1に記載のコーティング組成物。
(項目3)
前記ポリカーボネート−ポリウレタンポリマーは、脂肪族ポリカーボネート−ポリウレタンポリマーを含む、項目1に記載のコーティング組成物。
(項目4)
前記ポリカーボネート−ポリウレタンポリマーは、ヒドロキシ官能性カーボネート含有材料とポリイソシアネートとの反応から調製され、該ヒドロキシ官能性カーボネート含有材料は、炭酸またはその誘導体と、ジオールとの反応生成物を含む、項目1に記載のコーティング組成物。
(項目5)
前記ジオールは、ヘキサン−1,6−ジオールを含む、項目4に記載のコーティング組成物。
(項目6)
前記第1成分は、5500psiの引張り強さおよび400%の破断伸びを有する脂肪族ポリカーボネート−ポリウレタンポリマーの水性分散物を含む、項目1に記載のコーティング組成物。
(項目7)
前記アクリルポリオールは、
(a)2重量%〜50重量%の重合可能なヒドロキシ含有エチレン性不飽和材料;
(b)40重量%〜98重量%の、ヒドロキシル基とカルボン酸基とを実質的に含まない重合可能なエチレン性不飽和材料;ならびに
(c)0.5重量%〜10重量%の、カルボン酸基を含む重合可能なエチレン性不飽和材料;
を含む重合可能な不飽和材料の組み合わせから調製される、項目1に記載のコーティング組成物。
(項目8)
前記アクリルポリオールは、1グラムのポリマーあたり2mg KOH〜50mg KOHのヒドロキシル数を有する、項目1に記載のコーティング組成物。
(項目9)
前記アクリルポリオールは、1,000〜3,000の数平均分子量を有する、項目1に記載のコーティング組成物。
(項目10)
前記アクリルポリオールは、1〜5の多分散度を有する、項目1に記載のコーティング組成物。
(項目11)
前記第1成分は、5重量%〜30重量%の前記ポリカーボネート−ポリウレタンポリマーおよび30重量%〜90重量%の前記アクリルポリオールを含み、該重量%は、該第1成分中の樹脂固形物の重量に基づく、項目1に記載のコーティング組成物。
(項目12)
前記アクリルポリオールの官能基および/または前記ポリカーボネート−ポリウレタンポリマーの官能基と反応性である官能基を有する前記材料は、水溶性ポリイソシアネートまたは水分散性ポリイソシアネートを含む、項目1に記載のコーティング組成物。
(項目13)
前記アクリルポリオールの官能基および/または前記ポリカーボネート−ポリウレタンポリマーの官能基と反応性である官能基を有する前記材料は、前記コーティング組成物中に、該組成物中の樹脂固形物の総重量に基づいて15重量%〜40重量%の量で存在する、項目1に記載のコーティング組成物。
(項目14)
前記水性分散物は、有機溶媒をさらに含む、項目1に記載のコーティング組成物。
(項目15)
前記有機溶媒は、ブチルカルビトールアセテートを含む、項目14に記載のコーティング組成物。
(項目16)
項目1に記載のコーティング組成物によって少なくとも部分的にコーティングされた、基材。
(項目17)
前記基材は、プラスチック基材を含む、項目16に記載の基材。
(項目18)
前記プラスチック基材は、アクリロニトリルブタジエンスチレンおよび/またはポリカーボネートから選択される材料を含む、項目17に記載の基材。
(項目19)
項目1に記載のコーティング組成物から堆積された少なくとも1つのコーティング層を含む多成分複合コーティングによって少なくとも部分的にコーティングされた、基材
(項目20)
ポリカーボネート−ポリウレタンポリマーの水性分散物を含む多成分の水媒介性コーティング組成物であって、ここで該組成物が、プラスチック基材の少なくとも一部上に堆積され、そして硬化される場合に、該組成物は、該基材に付着するコーティングを産生し、該付着は、従来的な多成分の溶媒媒介性ポリウレタン含有コーティング組成物が、同じ条件下で適用された場合に同じ基材に付着することと、少なくとも同程度である、多成分の水媒介性コーティング組成物。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(発明の実施形態の説明)
以下の詳細な説明のために、本発明は、明示的にそうでないことが特定されていない限り、種々の代替となるバリエーションおよび手順を想定する場合があることが、理解されるべきである。さらに、いずれかの作業例における場合、またはそうでないことが記載されている場合を除き、本明細書および特許請求の範囲で使用される、例えば、成分の量を示す全ての数値は、全ての場合において用語「約」により修飾されるものと理解されるべきである。従って、特にそうでないことが特定されていない限り、本明細書(特許請求の範囲を含む)に記載される数値パラメータは、本発明によって得られる所望の特性に依存して変動し得る概数である。最低限、かつ特許請求の範囲の範囲に対する均等論の適用を制限しようとするわけではなく、各数値パラメータは、少なくとも、報告された有効数字の数に鑑みて、そして通常の丸め技術を適用することによって解釈されるべきである。
【0009】
本発明の広い範囲を示す数値範囲および数値パラメータは概算値であるが、特定の例において示される数値は、可能な限り正確に報告される。しかし、あらゆる数値は、本質的に、それらの各試験の測定値において見出される標準偏差から必然的に生じる一定の誤差を含む。
【0010】
また、本明細書に記載されるあらゆる数値範囲は、それに包含される全ての下位範囲を含むことが意図されることも、理解されるべきである。例えば、「1〜10」という範囲は、記載された最小値である1と、記載された最大値である10との間(かつこれらの最大値および最小値を含む)の全ての下位範囲(すなわち、1以上の最小値および10以下の最大値を有する)を包含することが、意図される。
【0011】
本出願において、特にそうでないことが記載されない限り、単数形の使用は複数形を含み、そして複数形は、単数形を包含する。例えば、そして限定されないが、この適用は、「アクリルポリオール(an acrylic polyol)」を含むコーティング組成物に言及する。「アクリルポリオール(an acrylic polyol)」へのこのような言及は、1種のアクリルポリオールを含むコーティング組成物および1種より多いアクリルポリオールを含むコーティング組成物を包含することが、意味される。さらに、この適用において、「または」の使用は、そうでないことが特に記載されない限り、「および/または」を意味し、特定の場合においては、「および/または」が明確に使用され得る。
【0012】
先に示される通り、本発明の特定の実施形態は、「多成分」のコーティング組成物に関する。本明細書中で使用される場合、用語「多成分」は、別々に保存または梱包され、次いで基材に適用する前に一緒に混合された2種以上の成分を、コーティング組成物が含むことを、意味する。本発明の特定の実施形態において、上記多成分のコーティング組成物は、2種の成分からなる。
【0013】
先に示される通り、本発明の特定の実施形態は、「水媒介性」コーティング組成物に関する。本明細書中で使用される場合、用語「水媒介性」は、コーティング組成物のための溶媒またはキャリア流体が、第一にまたは主に、水を含むことを意味する。例えば、特定の実施形態において、上記キャリア流体は、少なくとも80重量%が水である。
【0014】
本発明の特定の実施形態は、「低VOC」コーティング組成物であるコーティング組成物に関する。本明細書中で使用される場合、用語「低VOC組成物」は、組成物が、1ガロンのその組成物あたり3ポンド以下の揮発性有機化合物を含むことを、意味する。特定の実施形態において、本発明のコーティング組成物は、1ガロンのそのコーティング組成物あたり1ポンド以下の揮発性有機化合物を含む。本明細書中で使用される場合、用語「揮発性有機化合物」とは、少なくとも1個の炭素原子を有し、そして、組成物の乾燥および/または硬化の間にその組成物から放出される化合物をいう。「揮発性有機化合物」の例としては、アルコール類、ベンゼン類、トルエン類、クロロホルム類、およびシクロヘキサン類が挙げられるが、これらに限定されない。
【0015】
先に示される通り、本発明のコーティング組成物の特定の実施形態は、ポリカーボネート−ポリウレタンポリマー(いくつかの場合において、脂肪族ポリカーボネート−ポリウレタンポリマー)を含む水性分散物を含む。本明細書中で使用される場合、用語「水性分散物」とは、有機成分が分散相中で粒子であって、連続相全体にわたって分布している系をいい、その連続相は、水を含む。本明細書中で使用される場合、用語「有機成分」は、水性分散物中に存在する全ての有機種(あらゆるポリマー、およびあらゆる有機溶媒を含む)を包含することが、意味される。本明細書中で使用される場合、用語「ポリカーボネート−ポリウレタンポリマー」は、ポリマー骨格中に反復するウレタン基、
【0016】
【化1】

と反復するカーボネート基、
【0017】
【化2】

とを含むポリマーを含むことが、意味される。
【0018】
当業者によって認識されるように、このようなポリマーは、ヒドロキシ官能性カーボネート含有材料とポリイソシアネートとの反応から調製され得る。適切なヒドロキシ官能性カーボネート含有材料は、炭酸またはその誘導体と、ジオールとの反応生成物を含む。適切なジオールの例としては、エチレングリコール、プロパン−1,2−ジオールおよびプロパン−1,3−ジオール、ブタン−1,4−ジオールおよびブタン−1,3−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール、オクタン−1,8−ジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ビス−ヒドロキシメチルシクロヘキサン、2−メチル−プロパン−1,3−ジオール、2,2,4−トリメチルペンタン−1,3−ジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールおよびテトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール類、ジブチレングリコール、ポリブチレングリコール類、ビスフェノールAおよびテトラブロモビスフェノールAが挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、上記ジオール成分は、40重量%〜100重量%のヘキサンジオール(例えば、ヘキサン−1,6−ジオール)および/あるいは末端ヒドロキシル基に加えてエーテル基またはエステル基を含むヘキサンジオール誘導体(例えば、1モルのヘキサンジオールと1モル以上のカプロラクトンとの反応によって得られた生成物))を含む。
【0019】
特定の実施形態において、上記ヒドロキシ官能性カーボネート含有材料は、実質的に直鎖状であるが、いくつかの場合において、所望される場合、そのヒドロキシ官能性カーボネート含有材料は、多官能性成分(polyfunctional component)(例えば、低分子量ポリオール類(例えば、グリセロール、トリメチロールプロパン、ヘキサン−1,2,6−トリオール、ブタン−1,2,4−トリオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、キニトール(quinitol)、マンニトールおよびソルビトール、メチルグリコシドおよび1,4,3,6−ジアンヒドロヘキシトール(dianhydrohexitol)))の組み込みによって分枝状にされ得る。
【0020】
任意の種々の適切なポリイソシアネートのいずれもが、本発明のコーティング組成物において利用されるポリカーボネート−ポリウレタンポリマーを形成するために使用され得る。適切なポリイソシアネートとしては、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−メチレン−ビス−(シクロヘキシルイソシアネート)、p−フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4−ジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、トリフェニルメタン−4,4’,4’’−トリイソシアネート、1,2,4−ベンゼントリイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート、メタ−α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、およびパラ−α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0021】
本発明のコーティング組成物における使用に適切であるこのようなポリカーボネート−ポリウレタンポリマーの水性分散物は、市販されている。このような製品の例は、Bayer MaterialScience AG、Pittsburgh、PennsylvaniaからBayhydrol(登録商標)の商品名で入手可能である製品を含み、それとしては、Bayhydrol 121(水およびn−メチル−2−ピロリジン中の脂肪族ポリカーボネート−ポリウレタンのアニオン性分散物であり、6700psiの引張り強さおよび150%の破断伸びを有する)、Bayhydrol 123(水およびn−メチル−2−ピロリジン中の脂肪族ポリカーボネート−ポリウレタンポリマーのアニオン性分散物であり、6000psiの引張り強さおよび320%の破断伸びを有する)、およびBayhydrol LS 2952(水のみの中の脂肪族ポリカーボネート−ポリウレタンポリマーのアニオン性分散物であり、5500psiの引張り強さおよび400%の破断伸びを有する)が挙げられる。いくつかの場合において、このような水性分散物は、有機溶媒を実質的に含まないか、またはいくつかの場合において、有機溶媒を完全に含まない(例えば、Bayhydrol LS 2952を用いる場合である)。本明細書中で使用される場合、用語「実質的に含まない」は、議論される材料が、仮に存在するとしても、偶発的な不純物として存在することを意味する。換言すれば、その材料は、上記組成物の特性に影響を及ぼさない。本明細書中で使用される場合、用語「完全に含まない」は、上記材料が全く存在しないことを意味する。
【0022】
先に示される通り、本発明のコーティング組成物の特定の実施形態は、アクリルポリオールを含む水性分散物を含む。本発明における使用に適したアクリルポリオールとしては、種々の重合可能な不飽和材料の付加重合によって作製されるものが挙げられ、その不飽和材料のうちの少なくとも1つは、重合可能なヒドロキシ含有エチレン性(ethylenically)不飽和材料である。本発明のコーティング組成物に含まれるアクリルポリオールの調製における使用に適切であるこのような材料の例は、ヒドロキシアルキルアクリレートおよびヒドロキシアルキルメタクリレート(エチレングリコールおよびプロピレングリコールのアクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルが挙げられる)などのビニルモノマーである。これらのアクリレートおよびメタクリレートは、しばしば、そのアルキル基中に2個〜6個の炭素原子を有する。不飽和酸(例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸など)のヒドロキシ含有エステルおよび/またはヒドロキシ含有アミドもまた、適切である。
【0023】
特定の実施形態において、上記重合可能なヒドロキシ含有エチレン性不飽和材料は、上述の材料のうちの2つ以上の混合物を含む。特定の実施形態において、このような混合物としては、材料のうちの少なくとも1つが第一級水酸基を含む(例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートおよび1−ブチル(メタ)アクリレート)、材料の混合物が挙げられる。本明細書中で使用される場合、用語「(メタ)アクリレート」は、アクリレートおよびメタクリレートの両方を含むことが、意味される。特定の実施形態において、このような混合物は、重合可能なヒドロキシ含有エチレン性不飽和材料の総重量に基づいて少なくとも2重量%の、第一級水酸基を含む材料を含む。
【0024】
特定の実施形態において、上記アクリルポリオールを調製するために使用される重合可能なヒドロキシ含有エチレン性不飽和材料の量は、そのアクリルポリオールを調製するために使用されるモノマーの組み合せの合計の重量に基づいて、2重量%〜50重量%(例えば、20重量%〜30重量%)の範囲である。
【0025】
特定の実施形態において、本発明のコーティング組成物中に存在するアクリルポリオールはまた、ヒドロキシル基およびカルボン酸基を実質的に含まない重合可能なエチレン性不飽和材料、またはいくつかの場合において、ヒドロキシル基およびカルボン酸基を完全に含まない重合可能なエチレン性不飽和材料から作製される。本発明のコーティング組成物に利用されるアクリルポリオールの調製における使用に適切であるこのような材料の例は、ビニルモノマー(例えば、エステル化する基の中に1個〜6個の炭素原子を有するアルキル、シクロアルキル、またはアリールアクリレートおよびメタクリレート)である。特定の例としては、メチルメタクリレートおよびn−ブチルメタクリレートが挙げられる。他の適切な材料としては、ラウリルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、およびシクロヘキシルメタクリレートが挙げられる。しばしば含まれる芳香族ビニルモノマーは、スチレンである。使用され得る他の材料は、エチレン性不飽和材料(例えば、モノオレフィン炭化水素およびジオレフィン炭化水素、有機酸および無機酸の不飽和エステル、不飽和酸のアミドおよびエステル、ニトリル、ならびに不飽和酸)である。このようなモノマーのの例としては、1,3−ブタジエン、アクリルアミド、アクリロニトリル、α−メチルスチレン、α−メチルクロロスチレン、酪酸ビニル、酢酸ビニル、塩化アリル、ジビニルベンゼン、イタコン酸ジアリル、シアヌル酸トリアリル、およびその混合物が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、上記アクリルポリオールを調製するために使用される、ヒドロキシル基およびカルボン酸基を含まない重合可能なエチレン性不飽和材料の量は、そのアクリルポリオールを調製するために使用されるモノマーの組み合せの合計の重量に基づいて、40重量%〜98重量%(例えば、60重量%〜80重量%)の範囲である。
【0026】
特定の実施形態において、本発明のコーティング組成物中に存在するアクリルポリオールはまた、カルボン酸基を含む重合可能なエチレン性不飽和材料から作製される。実質的に、任意の不飽和酸官能性モノマー(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、および不飽和ジカルボン酸(例えば、マレイン酸)の半エステル)が、使用され得る。特定の実施形態において、上記アクリルポリオールを調製するために使用される、カルボン酸基を含む重合可能なエチレン性不飽和材料の量は、そのアクリルポリオールを調製するために使用されるモノマーの組み合せの合計の重量に基づいて、0.5重量%〜10重量%(例えば、2重量%〜4重量%)の範囲である。
【0027】
特定の実施形態において、上に記載されるアクリルポリオールは、(a)2重量%〜50重量%(例えば、20重量%〜30重量%)の重合可能なヒドロキシ含有エチレン性不飽和材料と;(b)40重量%〜98重量%(例えば、60重量%〜80重量%)の、ヒドロキシル基およびカルボン酸基を含まない重合可能なエチレン性不飽和材料と;(c)0.5重量%〜10重量%(例えば、2重量%〜4重量%)の、カルボン酸基を含む重合可能なエチレン性不飽和材料とを含む重合可能な不飽和材料の組み合わせから合成され得る。
【0028】
特定の実施形態において、上記アクリルポリオールは、周知の電位差測定技術によって決定される場合、2〜50(例えば、20〜30)の範囲のヒドロキシル数を有するか、またはいくつかの場合において、1グラムのポリマーあたり5mg KOH〜250mg
KOHを有する。特定の実施形態において、上記アクリルポリオールは、1グラムのポリマー固体あたり0.070〜1.400ミリ当量の酸(例えば、1グラムのポリマー固体あたり0.250〜0.550ミリ当量)を含む。
【0029】
先に示される通り、本発明のコーティング組成物の特定の実施形態において、上記アクリルポリオールは、比較的低い分子量のアクリルポリオールであり、すなわち、そのアクリルポリオールは、5,000以下(例えば、500〜4000、またはいくつかの場合において、1000〜3000)の数平均分子量を有し、その分子量は、ポリスチレンを標準として使用するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定される。特定の実施形態において、このようなアクリルポリオールはまた、1〜7(例えば、1〜5、またはいくつかの場合において、1〜4)の多分散指数(polydispersity index)を有する。本明細書中で使用される場合、用語「多分散指数」とは、ポリスチレンを標準として使用するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定されるようなポリマーの数平均分子量(Mn)によって除算した、重量平均分子量(Mw)をいう。
【0030】
特定の実施形態において、水性分散物は、上記アクリルポリオールを含んで形成される。このような水性分散物を作製するための適切な方法は、本明細書中で実施例に記載される。特定の実施形態において、上記アクリルポリオールを含む水性分散物は、まず有機溶媒においてアクリルポリマーを調製し、次いで水中に分散させることによって調製されるが、その分散の前に、そのアクリルポリオール上の酸基は、アルカリ性材料(例えば、アミン)によって中和される。この目的のために使用され得る適切なアミンとしては、アルカノール鎖、アルキル鎖、およびアリール鎖中に2個〜18個の炭素原子を含むジアルカノールアミン、トリアルカノールアミン、アルキルアルカノールアミン、およびアリールアルカノールアミンが挙げられるが、これらに限定されない。特定の例としては、N−エチルエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−フェニルエタノールアミンおよびジイソプロパノールアミンが挙げられる。ヒドロキシル基を含まないアミン(例えば、トリアルキルアミン、ジアミンおよび混合アルキル−アリールアミン)もまた、適切であり、そして置換基がヒドロキシル以外である置換アミンもまた、使用され得る。これらのアミンの特定の例は、トリエチルアミン、メチルエチルアミン、2−メチルプロピルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジココアミン(dicocoamine)、ジフェニルアミン、N−メチルアニリン、ジイソプロピルアミン、メチルフェニルアミンおよびジシクロヘキシルアミンである。また、環構造を有するアミン(例えば、モルホリン、ピペリジン、N−メチルピペラジンおよびN−ヒドロキシエチルピペラジン)が、使用され得る。アンモニアもまた、使用され得、そしてアンモニアは、この適用の目的のために、アミンであるとみなされる。
【0031】
特定の実施形態において、上記水性分散物の連続相は、専ら水を含むが、しかし、いくつかの実施形態において、有機溶媒もまた、例えば、分散されるポリマーの粘度を低下させること補助するために、(分散相の部分として)その水性分散物中に存在し得る。例えば、特定の実施形態において、上記水性分散物は、その水性分散物の総重量に基づく重量%で、20重量%まで(例えば、5重量%まで)、またはいくつかの場合において、2重量%までの有機溶媒を含む。上記水性分散物の有機成分中に組み込まれ得る適切な溶媒の例は、キシレン、ケトン(例えば、メチルアミルケトン、メチルイソアミルケトン、および/またはメチルイソブチルケトン)、および/またはアセテート(例えば、n−ブチルアセテート、t−ブチルアセテート、および/またはブチルカルビトールアセテート)である。
【0032】
先に示される通り、本発明のコーティング組成物は、先に記載されたポリカーボネート−ポリウレタンポリマーと先に記載されたアクリルポリオールとを含む水性分散物を含む第1成分を含む。本明細書中の実施例は、このような分散物を作製するための適切な方法を記載する。特定の実施形態において、上記水性分散物は、上に記載されるように調製され得る上記アクリルポリオールを含む水性分散物と、先に記載される市販の製品の1つ以上を含み得る上記ポリカーボネート−ポリウレタンポリマーを含む水性分散物とを混合することによって調製される。本発明の特定の実施形態において、上記第1成分中に存在するポリカーボネート−ポリウレタンポリマーの量は、その第1成分の樹脂固形物に基づいて5重量%〜50重量%(例えば、15重量%〜30重量%)の範囲である。本発明の特定の実施形態において、上記第1成分中に存在するアクリルポリオールの量は、その第1成分の樹脂固形物に基づいて30重量%〜95重量%(例えば、60重量%〜80重量%)の範囲である。
【0033】
先に示される通り、本発明の多成分コーティング組成物はまた、上記アクリルポリオールの官能基および/または上記ポリカーボネート−ポリウレタンポリマーの官能基と反応性である官能基を有する材料を含む第2成分を含む。このような材料は、本明細書中で「硬化剤」または「架橋剤」と称され得る。
【0034】
適切な硬化剤の非限定的な例としては、例えば、水溶性または水分散性であるように適合しているポリイソシアネートが挙げられる。このような材料は、市販されており、そしてそれらとしては、例えば、Desmodur(登録商標)XP 2410(ヘキサメチレンジイソシアネートに基づく脂肪族ポリイソシアネート樹脂)、およびBayhydrol(登録商標)VP LS 2319、水に分散した脂肪族ポリイソシアネート樹脂)、Bayhydur(登録商標)302(ヘキサメチレンジイソシアネートに基づく水分散性ポリイソシアネート樹脂)、Bayhydur(登録商標)VP LS 2150(イソホロンジイソシアネートに基づく水分散性ポリイソシアネート)、およびBayhydur(登録商標)XP 7165(ヘキサメチレンジイソシアネートに基づく、溶媒を含まない水分散性ポリイソシアネート)が挙げられ、その全ては、Bayer MaterialScience AGから市販されている。Rhodocoat(登録商標)WT 1000、WT 2092、WT 2102、XWT 2104(これらの全ては、Rhodia Corporationから市販されている脂肪族ポリイソシアネートに基づく水分散性ポリイソシアネート樹脂である)もまた、適切である。
【0035】
特定の実施形態において、上記アクリルポリオールの官能基および/または上記ポリカーボネート−ポリウレタンポリマーの官能基と反応性である官能基を有する材料は、上記コーティング組成物中に、その組成物中の樹脂固形物の総重量に基づいて15重量%〜40重量%(例えば、20重量%〜30重量%)の量で存在する。
【0036】
本発明のコーティング組成物は、上に記載される成分に加えて、種々の他の補助材料を含み得る。所望される場合、他の樹脂性材料が、上述の樹脂と組み合せて利用され得る。本発明のコーティング組成物の特定の実施形態は、表面活性剤(例えば、任意の周知のアニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤または非イオン性界面活性剤)または分散剤を含む。
【0037】
本発明のコーティング組成物は、無機性粒子および/または無機性−有機性粒子(例えば、シリカ、処理したアルミナ(例えば、α−酸化アルミニウムとして公知であるシリカ処理したアルミナ)を含むアルミナ、炭化ケイ素、ダイヤモンド粉末、立方晶窒化ホウ素、および炭化ホウ素)をさらに含み得る。
【0038】
特定の実施形態において、上記粒子は、上記コーティング組成物に組み込む前に1ミクロン〜10ミクロン、または1ミクロン〜5ミクロンの範囲の平均粒子径を有する、無機性粒子を含む。他の実施形態において、上記無機性粒子は、フィルム形成組成物に組み込む前に1ミクロン〜5ミクロンの範囲の平均粒子径を有する酸化アルミニウムを含む。
【0039】
特定の実施形態において、このような無機性粒子は、上記組成物に組み込む前に、1ナノメートル〜1000ナノメートル未満(例えば、1ナノメートル〜100ナノメートル、またはいくつかの場合において、5ナノメートル〜50ナノメートル、またはなお他の場合において、5ナノメートル〜25ナノメートル)の範囲の平均粒子径を有し得る。これらの材料は、本発明の特定の実施形態において、上記コーティング組成物の総重量に基づいて30重量%まで(例えば、0.05重量%〜5重量%、またはいくつかの場合において、0.1重量%〜1重量%、またはなお他の場合において、0.1重量%〜0.5重量%)を構成し得る。
【0040】
上記コーティング組成物はまた、例えば、上記硬化剤と、上記アクリルポリオールおよび/または上記ポリカーボネート−ポリウレタンポリマーとの間の硬化反応を加速させるための触媒を含み得る。適切な触媒の例としては、有機錫化合物(例えば、ジブチル錫ラウレート、酸化ジブチル錫およびジブチル錫ジアセテート)が挙げられる。使用される場合、上記触媒は、しばしば、上記コーティング組成物中に存在する樹脂固形物の総重量に基づいて、0.1重量%〜5.0重量%、またはいくつかの場合において、0.5重量%〜1.5重量%の範囲の量で存在する。
【0041】
他の添加成分(例えば、可塑剤、界面活性剤、揺変剤、抗ガッシング剤(anti−gassing agent)、流動制御剤(flow controller)、抗酸化剤、UV吸収体および当該分野において従来的な同様の添加剤)が、本発明の組成物に含まれ得る。使用される場合、これらの成分は、しばしば、樹脂固形物の総重量に基づいて約40重量%までの量で存在する。
【0042】
本発明のコーティング組成物はまた、特定の実施形態において、色効果および/または光学的効果、あるいは不透明度を提供するために1種以上の顔料またはフィラーを含むように処方され得る。このような着色コーティング組成物は、下で考察されるように、例えば、下塗りとしてか、またはカラー−プラス−クリア(color−plus−clear)系における着色ベースコーティング組成物としてか、または単一コーティング(monocoat)のトップコートとして、多成分複合コーティングにおける使用に適切であり得る。
【0043】
本発明のコーティング組成物の固体成分は、しばしば、そのコーティング組成物の総重量に基づいて20重量%〜75重量%、または30重量%〜65重量%、または40重量%〜55重量%の範囲である。
【0044】
本発明のコーティング組成物を作製するための適切な方法は、実施例に記載される。コーティング組成物を基材に適用する前に、上記第1成分および上記第2成分は、一緒に混合される。特定の実施形態において、本発明のコーティング組成物は、8時間(例えば、4時間)までの可使時間を有する。本明細書中で使用される場合、用語「可使時間」とは、コーティング組成物がコーティング可能であるために十分な流動可能を維持する時間の長さをいう。
【0045】
本発明のコーティング組成物は、種々の基材(木材、金属、ガラス、紙、メーソンリー表面、泡状物、およびプラスチック(とりわけ、エラストマー基材を含む)が挙げられる)に適用され得る。いくつかの場合において、本発明のコーティング組成物は、特に、プラスチック基材への適用に適切である。本明細書中で使用される場合、用語「プラスチック基材」は、注入または反応成形(reaction molding)、シート成形または他の類似するプロセス(それらのプロセスによって、部品が形成される)において使用される任意の熱可塑性または熱硬化性の合成材料(例えば、とりわけ、アクリロニトリルブタジエンスチレン(「ABS」)、ポリカーボネート、熱可塑性エラストマー、ポリウレタン、および熱可塑性ポリウレタンなど)を含むことが、意図される。結果として、本発明はまた、本発明のコーティング組成物から堆積されたコーティングによって少なくとも部分的にコーティングされた基材に関する。上記組成物は、はけ塗り、浸漬、フローコーティング、噴霧などを含む従来の手段によって適用され得る。通常の噴霧技術およびエアスプレーのための装置、ならびに手動の方法または自動の方法のいずれかが、使用され得る。
【0046】
本発明のコーティング組成物を上記基材に適用した後、その組成物は、その基材上に実質的に連続したフィルムを形成するために合体させられる。代表的に、そのフィルム厚さは、0.01ミル〜20ミル(約0.25ミクロン〜508ミクロン)(例えば、0.01ミル〜5ミル(0.25ミクロン〜127ミクロン))の厚さ、またはいくつかの場合において、0.1ミル〜2ミル(2.54ミクロン〜50.8ミクロン)の厚さである。上記フィルムは、水および/または揮発性有機化合物(存在する場合)などの物質を、加熱によってまたは空気乾燥期間によってそのフィルムから追い出すことによって、上記基材の表面上に形成される。いくつかの場合において、加熱は、任意のその後に適用されるコーティングが上記組成物を溶解することなく上記フィルムに適用され得ることを確実にするために十分に短い期間にわたってのみ行われる。適切な乾燥条件は、特定の組成物および基材に依存するが、一般に、約68°F〜250°F(20℃〜121℃)の温度における約1分間〜5分間の乾燥時間が、適切である。上記コーティング組成物の1回より多いコーティングが、最適な外見を達成するために適用され得る。コーティングの間において、先に適用されたコーティングは、フラッシュ(flash)され得る(すなわち、約1分間〜20分間にわたって周囲条件に曝され得る)。
【0047】
本発明のコーティング組成物は、単一のコーティング、透明トップコーティング、2層系におけるベースコーティング、または多層系のうちの1つ以上の層(透明トップコーティング組成物、着色剤層およびベースコーティング組成物が挙げられる)としてか、あるいは下塗り層(primer layer)として使用され得る。
【0048】
特定の実施形態において、本発明のコーティング組成物は、少なくとも1つの着色ベースコートまたは有色ベースコート、および少なくとも1つの透明トップコートを含む多成分複合コーティング(例えば、「カラー−プラス−クリア」コーティング系)の部分として使用され得る。結果として、本発明はまた、少なくとも1つのコーティング層が本発明のコーティング組成物を含む組成物から堆積される多成分複合コーティングに関する。特定の実施形態において、このような多成分複合コーティングの層の全ては、本発明のコーティング組成物を含む組成物から堆積される。
【0049】
例えば、特定の実施形態において、着色ベースコーティングが堆積されるコーティング組成物は、本発明のコーティング組成物を含み得る。このような実施形態において、カラー−プラス−クリア系における透明トップコートのコーティング組成物は、コーティング用途において有用である任意の組成物(例えば、とりわけ、自動車OEM用途、自動車再仕上げ用途、産業用コーティング用途、建築用コーティング用途、電気コーティング用途、粉末コーティング用途、コイルコーティング用途、および航空宇宙用コーティング用途において代表的に使用されるもの)を含み得る。透明トップコートのコーティング組成物は、代表的に、樹脂性結合剤を含む。特に有用な樹脂性結合剤としては、例えば、とりわけ、アクリルポリマー、ポリエステル(アルキドを含む)、およびポリウレタンが挙げられる。
【0050】
先に示される通り、本発明のコーティング組成物の特定の実施形態は、プラスチック基材への望ましい付着を示すコーティングを提供し得る。したがって、上述の記載から明らかとなるはずであるように、本発明はまた、ポリカーボネート−ポリウレタンポリマーの水性分散物を含む多成分の水媒介性コーティング組成物に関し、ここで上記組成物が、プラスチック基材の少なくとも一部上に堆積され、そして硬化される場合に、上記組成物は、上記基材に付着するコーティングを産生し、上記付着は、従来的な多成分の溶媒媒介性ポリウレタン含有コーティング組成物が、同じ条件下で適用された場合に同じ基材に付着することと、少なくとも同程度である。本明細書中で使用される場合、コーティングが、別のコーティングと「少なくとも同程度に基材に付着する」ことが記載されるとき、それは、そのコーティングが、それが比較されるべきコーティングによって示される付着特性と同じかまたはそれより優れている付着特性(本明細書中で実施例に記載されるように測定される)を示すことを、意味する。本明細書中で使用される場合、用語「従来的な多成分の溶媒媒介性ポリウレタン含有コーティング組成物」とは、媒体固形物(30重量%〜45重量%の固形物)の溶媒媒介性である2成分ウレタン単一コーティング(例えば、SPECTRACRON(登録商標)SPU 5000 XPM Seriesコーティングのような、PPG Industries,Inc.、Pittsburgh、Pennsylvaniaから市販されているもの)をいう。本明細書中で使用される場合、コーティングが別のコーティングと「同じ条件下で」適用されることが記載されるとき、それは、コーティング組成物が、(i)そのコーティング組成物が比較されるべき組成物と同じかまたは同様のフィルム厚さにて基材上に堆積され、そして(ii)それが比較されるべき組成物と同じかまたは同様の硬化条件(例えば、硬化温度、湿度、および時間)下で硬化されることを、意味する。
【0051】
以下の実施例は、本発明を例示するものであるが、これらの実施例は、その詳細に本発明を限定するとは見なされない。特に記載がない限り、以下の実施例ならびに本明細書全体における全ての部および割合は、重量によるものである。
【実施例】
【0052】
(実施例1:アクリルポリオール分散物の調製)
還流冷却器と、ステンレス鋼撹拌器と、N導入口とを備えた12Lのガラス製反応容器中に、360gのAromatic 100および180gのDowanol PMを導入し、そして加熱して還流した。第2の容器において、1416gのメチルメタクリレートと、661gのスチレンと、73gのα−メチルスチレンダイマーと、165gのブチルメタクリレートと、518gのブチルアクリレートと、840gのヒドロキシエチルメタクリレートとの一次モノマー混合物を、調製した。第3の容器において、90gのDowanol PnB中の251gのLupersol 270の開始剤溶液を、調製した。その開始剤溶液を、上記反応容器中に、一定速度にて3時間35分にわたってポンプで注入した。開始剤溶液の添加を開始した5分後、上記一次モノマー混合物を、上記反応器中に、一定速度にて2時間にわたってポンプで注入した。第4の容器において、242gのメチルメタクリレートと、189gのスチレンと、340gのヒドロキシエチルメタクリレートと、113gのアクリル酸との二次モノマー混合物を、調製した。上記一次モノマー溶液の添加が完了した場合に、上記二次モノマー混合物を、上記反応容器中に、1時間にわたって一定速度にてポンプで注入した。上記二次モノマー供給物および上記開始剤溶液の添加を完了した後、その反応物を、還流にて30分間保持した。この保持期間の後、その反応物を、100℃まで冷却した。100℃において、136gのジメチルエタノールアミンと、68gのトリエタノールアミンと、614gの純水とのアミン溶液を、20分間にわたって滴下漏斗(addition funnel)から上記反応容器に滴下した。上記アミン溶液の添加を完了し、そして15分間にわたって混合した後、4905gの純水を、激しい撹拌(high agitation)の下で添加した。その反応物を、40℃まで冷却し、そしてこの温度条件にて一晩混合し続けた。その樹脂分散物を、25ミクロンフィルターを通して濾過した。得られたアクリル分散物は、8.5のpH、42.4%の固体含有量、1650オングストロームの平均粒子径、および100センチポイズの粘度を有した。
【0053】
(実施例2:コーティング組成物の調製)
サンプル1およびサンプル2を、表1に示した成分および量(グラム)を使用して調製した。上記サンプルを、以下の通りに調製した。上記第1成分の材料を、一緒に秤量し、そして約5分間にわたって約500rpmにて処理した。上記第2成分の材料を、一緒に秤量し、そして約5分間にわたって約500rpmにて処理した。その2つのプレミックスを、適用の直前に、撹拌しながら2分間にわたって一緒に混合した。
【0054】
【表1】

Sparkle Silver 3500(Silberline Manufacturing Companyから市販されているアルミニウムフレーク)に基づく淡彩ペースト。使用したペーストの量は、仕上げコーティングについての顔料の総重量 対 結合剤の重量の比が0.17〜1.00であるような量であった。
BYK Chemieによって供給されたポリエーテル改変ポリシロキサン消泡剤。
Dow Chemical Companyによって供給されたn−ブトキシプロパノール。
Dow Chemical Companyによって供給されたジエチレングリコールブチルエーテルアセテート。
【0055】
(実施例3:試験基材)
実施例2から得たサンプル1およびサンプル2ならびに溶媒媒介性コーティングを、種々のプラスチック基材に適用した。上記溶媒媒介性コーティングは、PPG Industries,Inc.から市販されているSPECTRACRON(登録商標)XPM 60360Sであった。それらのコーティングを、ITW Industrial Finishingから市販されている従来のBinksモデル61スプレーガンを使用して適用した。それらのコーティングを、約20ミクロンのフィルム厚さまで適用し、そしてその着色したパネルを、周囲温度にて10分間にわたって放置して脱水した。上記パネルを、次いで、60℃にて30分間にわたって焼いた。次いで、上記パネルを、周囲条件下で7日間にわたって放置した。次いで、上記パネルを、試験した。その結果を、表2に示す。
【0056】
【表2】

硬度を、Konig Pendulum Hardnessテスターを使用し、ASTM D4366に従って測定した。
MEK抵抗性を、ASTM D4752に従って測定した。
付着を、ASTM D3359に従ってを測定した。
GE Advanced Materialsから市販されているLEXAN EXL
1414ポリカーボネート樹脂。
Dow Chemical Companyから市販されているDow Magnum
344アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂。
GE Advanced Materialsから市販されているCYCOLOY IP 1000ポリカーボネート/アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンアロイ。
PolyOne Corporationから市販されているMP101 Platinum DK2234塩化ポリビニル。
湿潤後の付着を、付着試験前に4日間にわたって98%の湿度および60℃にて条件付けたパネルにおいて、ASTM D3359に従って測定した。
【0057】
表2において見られ得るように、本発明のコーティング組成物を含むサンプル1を、付着、硬度、および耐湿性に関して、上記溶媒媒介性コーティングと少なくとも同様であった。
【0058】
上の説明において開示した概念から逸脱することなく本発明に対して改変がなされ得ることは、当業者によって容易に理解される。このような改変は、特に添付の特許請求の範囲で明記されない限り、特許請求の範囲に含まれると見なされるべきである。したがって、本明細書に詳述した特定の実施形態は、単に例示するものであり、添付の特許請求の範囲全体に相当する本発明およびそのあらゆる均等物の適用範囲を限定するものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載された発明。

【公開番号】特開2012−41558(P2012−41558A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−259381(P2011−259381)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【分割の表示】特願2008−531202(P2008−531202)の分割
【原出願日】平成18年9月11日(2006.9.11)
【出願人】(599087017)ピーピージー インダストリーズ オハイオ,インコーポレイテッド (267)
【Fターム(参考)】