説明

コーティングカラー組成物及びそれを塗布した紙又は板紙

本発明は紙用及び/又は板紙用のコーティングカラー組成物に関する。コーティングカラー組成物は、顔料と、任意成分として、コーティング組成物に用いられる公知の添加物と、スチレンアクリレート共重合体を含み、平均粒径が100nm以下のバインダー代替物とからなる。また、本発明のコーティングカラー組成物を被覆した紙又は板紙に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティングカラー組成物に、また本書末尾に掲げた請求の範囲の各請求項の前文に記載された紙又は板紙に関する。また、本発明はスチレンアクリレート共重合体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
紙及び板紙には、種々の特性、中でも、強さ、印刷特性及び外観、例えば、平滑性及び光沢性を改良する目的で、様々なコーティングカラー塗料が塗布される。従来用いられているコーティング組成物には、主成分として顔料及びバインダーが含まれており、さらに補助バインダー、防腐剤、分散剤、消泡剤、潤滑剤、硬化剤、光学光沢剤のような添加物が含まれることがある。
【0003】
バインダーがコーティング組成物中で果たすべき役割は顔料の粒子同士を結合させ、また、顔料粒子を原紙に結合させることである。さらに、バインダーはコーティング組成物のレオロジー特性に影響を与えることがある。バインダーの中でも代表的な合成バインダーはブタジエン、スチレン、ビニルアセテート、ブチルアクリレート及びアクリル酸のモノマーを用いて合成したポリマーである。かかるポリマーの分散物は従来からラテックスバインダーと呼ばれているものであり、その粒径は約0.1〜0.2μmである。ラテックスバインダーは合成化合物配合物であることから、場合によっては、比較的高価である。従って、そのコーティング組成物の諸特性及び最終的に得られる塗工紙(コーテッドペーパー)の特性を損ねることなく、コーティング組成物のバインダーの使用量を最小限に抑えることが有利である。
【0004】
表面サイズ剤としてのスチレン/アクリレート共重合体はすでに知られている。例えば、米国特許第6,426,381号には表面サイズ処理に使用することができるスチレン/(メタ)アクリレート共重合体が記載されている。
【0005】
JP58/115196には、スチレンとアクリレートをデンプンの存在下でグラフト共重合させることによって製造される水溶性の紙力増強剤が開示されている。紙力増強剤は紙の強度及びサイズ度を改良するものとして記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6,426,381号
【特許文献2】特開昭58−115196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は従来技術の不利益を最小に抑えることができ、あるいは解消することさえもできるコーティングカラー組成物を提供することにある。
【0008】
また、本発明の目的は塗工紙(coated paper)又は塗工板紙(coated paperboard)の強度特性を改良するコーティングカラー組成物を提供することにある。
【0009】
本発明の更なる目的は、塗工紙の強度特性を低下させることなく、バインダーの使用量を減少することができるコーティングカラー組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような発明の目的は、特許請求の範囲の独立請求項に明記した下記の特徴事項を具備する方法及び装置を用いることにより達成できる。
【0011】
本発明に係る代表的な紙用及び/又は板紙用のコーティングカラー組成物は、
顔料、
任意成分として、コーティング組成物に用いられる公知の添加物、及び
スチレンアクリレート共重合体を含み、平均粒径が100nm以下(≦100nm)のバインダー代替物
を含むことを特徴とする。
【0012】
本発明に係る代表的な紙又は板紙は本発明に係るコーティングカラー組成物が塗布されている。
【発明を実施するための形態】
【0013】
今や、驚くべきは、スチレンとアクリレートとの共重合体から構成され、小さいある特定の粒径を有するバインダー代替物を使用することによって、コーティングカラー組成物に用いられてきた従来のラテックスバインダーの全部又はその一部を置換することができ、同時に、強度特性が改良された塗工紙を製造することもできることが発見されたことである。また、塗工紙の強度に大きく影響することなく、従来から用いられてきたバインダー使用量を低減することも可能である。バインダー代替物をコーティング組成物において、主たるバインダーとして、又は唯一のバインダーとして用いる場合には、表面強度特性が明らかに向上した塗工紙を製造することも可能である。その一方、従来から用いてきたバインダーの一部を当該バインダー代替物で代用する場合には、紙の強度特性を害することなく、全バインダーの使用量を容易に20〜30%減少させることができることが分かった。バインダー全体の使用量の減少を実現することは、当然、バインダーに関連するコストの削減を可能とすることになる。
【0014】
粒径の小さいスチレンアクリレート共重合体が最終的に得られる塗工紙の強度特性に効果をもたらすことは、驚くべきことである。かかる効果は表面積が増大したことによるものであると理論的制約を受けることなく推測できる。
【0015】
バインダー代替物として使用するスチレンアクリレート共重合体の合成はエチレン系不飽和モノマーを共重合させることによって行うことができる。スチレンモノマーの適切な例としては、スチレン及び置換されたスチレン、例えば、α−メチルスチレン又はビニルトルエン又はこれらの混合物が挙げられ、また、アクリレートモノマーの適切な例としては、C〜C−アルキルアクリレート、C〜C−アルキルメタクリレート又はこれらの混合物、例えば、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート又は2−ブチルアクリレート及びこれらに相当するブチルメタクリレート;メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、少なくとも2つの異性体ブチルアクリレートの混合物が好ましく、n−ブチルアクリレートとメチルメタクリレートとの混合物が特に好ましい。本発明の一つの最も好適な態様では、n−ブチルアクリレートとtert−ブチルアクリレートとの混合物を重合プロセスに使用している。2つのモノマーの混合物については、それらの混合比は10:90乃至90:10であってもよい。
【0016】
バインダー代替物はデンプンを含むスチレンアクリレート共重合体であることが好ましい。スチレンアクリレート共重合体の製造は米国特許第6,426,381号に記載の方法に準じて行うことができる。すなわち、デンプンの存在下でエチレン系不飽和モノマーのフリーラジカル乳化共重合で製造することができる。デンプンとしては適切な天然デンプンであればよく、例えば、ジャガイモ、米、トウモロコシ、ワクシーコーン、小麦、大麦(bariey)又はタピオカデンプンが挙げられ、ジャガイモデンプンが好ましい。アミロペクチン含有量が80%を超える(>80%)、好適には95%を超える(>95%)デンプンが有利である。デンプンはまた変性されたデンプンであってもよく、例えば、アニオン化デンプン、カチオン化デンプン又は分解デンプンであってもよい。アニオン化デンプンはカルボキシレート基又はフォスフェート基などのアニオン基を含み、一方、カチオン化デンプンは第4アンモニウム基などのカチオン基を有する。1グルコース単位当たり平均してデンプン中に存在するアニオン基/カチオン基の数を示す置換度(DS)は一般的には0.01〜0.20である。アニオン基及びカチオン基の双方を有する両性デンプンもスチレンアクリレート共重合体を製造する際に使用してもよい。分解デンプンはデンプンを酸化分解、熱分解、酸分解又は酵素分解することによって、好ましくは酸化分解することによって、得られる。酸化剤としては、次亜塩素酸塩、ペルオキソ二硫酸塩、過酸化水素又はこれらの混合物を用いることができる。分解デンプンの平均分子量(Mn)は一般的には500〜10000である。分子量は公知のゲルクロマトグラフィー法によって測定することができる。その固有粘度は、例えば、公知の粘度測定法により測定でき、一般的には0.05〜0.12dl/gである。
【0017】
本発明の一態様によれば、デンプンの代わりに、遊離のヒドロキシ基を有するその他の多糖類を使用して本発明に用いるスチレンアクリレートを得ることも可能である。多糖類には、例えば、アミロース、アミロペクチン、カラギーン(carrageen)、セルロース、キトサン、キチン、デキストリン、グアーガム(guarane)及びその他のガラクトマンナン、アラビアゴム、ヘミセルロース成分、及びプルランがある。上記列挙した多糖類のうちでデキストリンがより好ましく、この場合には、スチレンアクリレート共重合体はデキストリンを含むことになる。
【0018】
バインダー代替物は固形分含量が10〜50%、好ましくは20〜50%、さらに好ましくは21〜29%、最も好ましくは35〜40%の水性ポリマー分散液の形態で使用することができる。固形分の含有量が高いとコーティング組成物中の水の量を最小限に抑えることができるので有利である。
【0019】
本発明の一態様によれば、水分散液としてのバインダー代替物の平均粒径は少なくとも20nm、好ましくは少なくとも25nm、さらに好ましくは少なくとも30nm、さらにもっと好ましくは少なくとも35nm、最も好ましくは少なくとも40nmであり、かつ、90nm未満、好ましくは80nm未満、さらに好ましくは70nm未満、さらにもっと好ましくは60nm未満、最も好ましくは50nm未満である。通常、バインダー代替物の平均粒径は100nm未満(<100nm)である。本発明の一態様によれば、水分散液としてのバインダー代替物の平均粒径は、20〜100nm、好ましくは30〜80nm、さらに好ましくは40〜70nm、最も好ましくは60〜70nmの範囲にある。バインダー代替物の平均粒径は、例えば、マルヴァーン・ゼータマスター(Malvern Zetamaster)装置を使用して光子相関分光法により測定することができる。
【0020】
本発明の一態様によれば、コーティング組成物は、バインダー代替物の他に、ラテックスバインダーをも含む。本発明で使用できる代表的な合成ラテックスバインダーは当業界で知られているラテックスであり、例えば、スチレンブタジエン(SB)ラテックス、スチレンアクリレート(SA)ラテックス又はポリビニルアセテート(PVAc)ラテックスがある。ラテックスバインダーはコーティング組成物の主たるバインダーとして考えることができ、ラテックスバインダーの使用量は本発明のバインダー代替物を使用することによって削減される。
【0021】
本発明の一態様によれば、コーティング組成物は、バインダー代替物及び想定される主バインダーに加えて、デンプンバインダーも含みうる。当該デンプンはアニオンデンプン又はカチオンデンプンのいずれであってもよい。
【0022】
本発明に使用できる代表的な顔料としては炭酸カルシウム、カオリン、仮焼カオリン、タルク、二酸化チタン、石こう、チョーク、サチン白、硫酸バリウム、ケイ酸アルミニウムナトリウム、水酸化アルミニウム又はこれらの混合物のいずれかである。炭酸カルシウムは重質炭酸カルシウム(GCC)又は沈降性炭酸カルシウム(PCC)又はこれらの混合物であってもよい。顔料としては炭酸カルシウムが好ましい。コーティング組成物に使用する顔料の粒径D50は一般には5μm未満(<5μm)の範囲である。
【0023】
本明細書では、コーティングカラー混合物の組成を表すには、本技術分野の慣例のとおり、顔料の全量を100の値とし、その他の成分の量は顔料全体の量に対する量(pph)として算出している。全成分の割合は活性物質として記述する。
【0024】
本発明の一態様によれば、バインダー代替物は、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルアルコール(PVOH)、デンプン、カゼイン又はタンパク質のような、従来から用いられている補助バインダーとともに使用することができる。コーティング組成物中の補助バインダーの量は通常0.05〜3部である。デンプンを使用する場合には、その使用量は0.05〜12部、好ましくは0.1〜10部である。
【0025】
本発明に係るコーティングカラー組成物には、当該組成物の特性又は取扱性を改良するために、あるいは所望の機能性を組成物に付与するために、従来から用いられている添加物を少量加えることが可能である。想定される添加物としては、例えば、防腐剤、分散剤、消泡剤、潤滑剤、硬化剤、蛍光増白剤がある。添加剤の使用量は通常0〜3部である。
【0026】
本発明の一態様によれば、コーティングカラー組成物は、
100部の顔料、
0〜12部のバインダー、好ましくはラテックスバインダー、
1.5〜9部のバインダー代替物、及び
0〜3部の公知の添加物
を含み、バインダーとバインダー代替物との合計量は少なくとも5部である。
【0027】
本発明の他の態様によれば、コーティングカラー組成物は、
100部の顔料、
4〜12部のデンプン、
3〜6部のバインダー、好ましくはラテックスバインダー、
2〜4部のバインダー代替物、及び
0〜3部の公知添加物
を含む。
【0028】
本発明の別の態様によれば、コーティングカラー組成物は、
100部の顔料、
4〜5部のバインダー、
2〜3部のバインダー代替物、及び
0〜3部の公知添加物
を含む。
【0029】
本発明に係るコーティングカラー組成物は従来から用いられている方法で製造することができる。すなわち、顔料スラリーを分散物の形態のバインダー代替物と慣例のとおり加えられる想定される添加物と混合する。バインダー代替物に加えて、従来から用いられているバインダーを使用する場合には、当該バインダーも慣例どおりコーティングカラー組成物に加える。本発明に係るバインダー代替物を使用する場合には、現存する装置及び手順を用いることができるので、装置を大幅に改造する必要がないのである。
【0030】
本発明に係るコーティングカラー組成物の固形分含量は、一般に、60〜74%、好ましくは63〜72%、さらに好ましくは65〜71%であり、粘度は2500mPas未満(<2500mPas)であり、一般的には1000〜2000mPasである。粘度の測定はブルックフィールド粘度計、DV−II形式を用い、速度100rpmでスピンドル3又は4を用いて測定する。
【0031】
本発明の一態様によれば、コーティングカラー組成物は、紙又は板紙の表面上へ単一層又は多層の被覆層として塗布される。用いることのできる塗布方法にはブレード、ロッド、フィルム転送(film transfer)又はエアブラッシュ塗布法がある。塗布する被覆量(コート量)は好ましくは5〜30g/m/sideの範囲である。一つの塗布被覆層では、被覆量は一般的に5〜16g/m/side、さらに好ましくは6〜14g/m/side、最も好ましくは8〜12g/m/sideである。
【実施例】
【0032】
本発明の具体例を次の実施例により説明する。ただし、これら実施例は本発明を限定するものではない。
【0033】
アニオン化デンプンの存在下での、スチレンアクリレート共重合体を含むバインダー代替物の製造(一般的説明)
67gの酸化分解したジャガイモデンプン(Perfectamy(登録商標)A4692)を常に撹拌しながら還流冷却器が付いた2リットルの三つ口フラスコ内で脱イオン水536gに分散させる。85℃の温度まで加熱することによってデンプンを溶解させ、続いてFeSOx7HO(0.72mmol)の1%水溶液20.0g及び35%過酸化水素4.0gを連続して添加する。
【0034】
15分後にデンプンの分解が完了する。モノマーからなる溶液及び開始剤溶液を85℃で一定の供給量で90分の間で同時に、しかし、別個に計量する。モノマー溶液は86.6gのスチレン、43.3gのn−ブチルアクリレート及び43.3gのtert−ブチルアクリレートを含む。開始剤溶液は4.3gの過酸化水素(35%)及び127gの水を含む。重合反応は窒素雰囲気で行う。
【0035】
計量完了10分後、さらにtert−ブチルヒドロペルオキシド0.7gを添加して、その後活性化させる。そして、さらに60分間撹拌する。その後、室温まで冷却する。100μmフィルターでろ過する。pHは20%水酸化ナトリウム溶液で6に調整する。
【0036】
固形分が24.9%で濁度がA=0.380(1:10に希釈、660nm)の重合体分散物を得る。マルヴァーン・ゼータマスターを使って測定した、その平均粒径は61.3nmである。
【0037】
被覆試験
【0038】
比較試験
【0039】
表1に示すコーティングカラー組成物を使って市販のスチレンブタジエン及びスチレンアクリレート・ラテックスについて試験する。コーティングカラーを調製し、そして研究室用のコーティングとして使うために50%固形分まで希釈する。紙の試料にドローダウン(drawdown)被覆する。表面強さをIGT−装置(IGTテスティングシステムズ)で測定する。測定結果を表2にまとめる。
【0040】
【表1】

【0041】
【表2】

【0042】
上記2つの市販ラテックスは同様な表面強さの結果を与える。
【0043】
試験1
研究室規模の試験を行う。バインダー代替物1はアニオン化デンプンの存在下で重合させて得たスチレンアクリレート共重合体からなり、バインダー代替物2はカチオン化デンプンの存在下で重合させて得たスチレンアクリレート共重合体からなる。バインダー代替物1は上述した一般的説明に従って調製する。バインダー代替物1の固形分含量は24%であり、バインダー代替物2の固形分含量は25%である。市販のスチレンブタジエンをコーティング組成物の主バインダーとして使用する。コーティングカラー組成物にあっては、バインダー代替物の種類だけが変更されている。コーティングカラー組成物はディアフ(Diaf)研究室用溶解器を使って調製し、50%の固形分含量まで希釈する。コーティングカラー組成物を表1に示す。
【0044】
【表3】

【0045】
SBラテックスとバインダー代替物(4.5+3部)の混合物を使用する。試験したコーティングカラー組成物は、すべて、固形分含量が67%であり、ブルックフィールド(Brookfield)100粘度が約2000mPas以下である。静的保水値の測定を、ÅA‐GWR装置、型式4(製造元:DT−ペーパーサイエンス社)を使用し、時間30分圧力0.3バールの条件下で行った。静的保水値は参考例と同様なものである。
【0046】
このバインダー代替物を使用すると参考組成物と同様の高いせん断粘度をもつコーティングカラー組成物が得られる。紙試料にドローダウン(drawdown)被覆する。塗工紙(コーテッドペーパー)試料の表面強さの測定をIGT AIC2−5装置を用いて標準手順スキャン−ピー(SCAN−P)63:90に準じて行う。表面強さの測定結果を表2に示す。
【0047】
【表4】

【0048】
バインダー代替物を3部使用することによりSB−ラテックスの使用量を50%だけ減少することができ、その場合でも塗工紙試料は同様な表面強さを示すことが表2から分かる。
【0049】
試験2
オプチブレード(OptiBlade)コーターを用いバインダー代替物1を使用して試験を行う。原紙に予備コートする。塗布した被覆量(コート量)は11g/mである。別のバインダー組成物を表3に示す。これらコーティングカラー組成物はすべて、通常のコーティングカラー添加物(表には掲げていない)を同量で含有している。
【0050】
【表5】

【0051】
すべての組成物が何も問題なく塗布装置で取り扱うことができる。ブレード圧はすべての組成物について同程度である。参考組成物は最も低いブルックフィールド粘度を有している。
【0052】
試験組成物を被覆した紙試料のカレンダー仕上げをオプチロード・ツインライン(Optiload Twinline)で行う。カレンダー仕上げの速度は800m/min、ロール温度は120℃である。
【0053】
その後、塗工紙試料に対して5色(B、C、M、B、C)のカラー印刷を、一定の濃度、8000枚/時の速度でマン・ローランド(Man Roland)300印刷機を用いて行う。表4には印刷した紙試料を視覚評価した結果を示す。次の評価で等級づけを行う。1=非常に良好、2=良好、3=普通、4=悪い、5=非常に悪い
【0054】
【表6】

【0055】
紙試料についてのパイリング(piling)及び紙むけ(picking)についても解析した。その結果を表5に示す。等級づけは次のとおりである。0=良好、1〜3=不足なし、4=悪い、5=非常に悪い。全塗工紙試料は耐パイリング性が良好で、紙むけ特性が不足しないものであった。走行性(runnability)についても全試料が良好であった。
【0056】
【表7】

【0057】
印刷した紙試料の解析を行い、印刷試験からの平均的結果を表6にまとめた。
【0058】
【表8】

【0059】
上記結果は、印刷と紙の光沢性、平滑性、摩擦落ち(rub‐off)、C50%、M50%及びC100%上のまだら染め(mottling)の点で、参考試料とバインダー代替物1を含む試料とは顕著な相違はない。4部のSBラテックスと2部のバインダー代替物1を含む全バインダー含有量が最も少ない試料が参考試料よりも裏移り(set−off)試験で著しく速い結果を示す。
【0060】
IGT表面強さについての縦方向(MD)及び横方向(CD)の結果は表7にまとめている。
【0061】
【表9】

【0062】
この結果から、合成バインダー分の全量を9部から6部へと減少しても、印刷結果は依然として満足できるものであることが理解できる。
【0063】
試験3
バインダー代替物とデンプンとの両立性を試験する。カチオン化デンプンの存在下で重合させて得られたスチレンアクリレート共重合体を含むバインダー代替物1及びアニオン化デンプンの存在下で重合させて得られたスチレンアクリレート共重合体を含むバインダー代替物2について研究室試験を行う。バインダー代替物1の固形分含量は24%であり、バインダー代替物2の固形分含量は25%である。ここで使用したコーティングカラー組成物の配合を表8に示す。
【0064】
【表10】

【0065】
コーティングカラー組成物についての試験結果を表9にまとめる。組成物Aはバインダー代替物1を含んでおり、一方、組成物Bはバインダー代替物1を含んでいた。
【0066】
【表11】

【0067】
バインダー代替物1は参考例として使用するSBラテックスとコーティングカラー組成物に同様の粘度を付与する。バインダー代替物2を含むコーティングカラー組成物の粘度は参考組成物よりも高い値である。参考カラーは高せん断粘度が最も低い。バインダー代替物1はバインダー代替物2に比してコーティングカラー組成物に低い粘度を付与する。粘度の値は全ての試験コーティング組成物について良好であり、又は許容できるものである。
【0068】
本発明に係るコーティング組成物についての静的保水(WR)値は参考組成物についての静的保水(WR)値よりも良好であることが表9のデータから理解することができる。
【0069】
試験コーティング組成物を紙試料にドローダウン(drawdown)被覆する。表面強さを測定し、その結果を表10に表わす。
【0070】
【表12】

【0071】
試験したコーティングカラー組成物の表面強さは同等である。
【0072】
現時点で最も実際的なかつ好適な具体例と考えられるものについて本発明を説明したが、本発明を前述した具体例に限定してはならないことは理解すべきである。また、本発明は本願特許請求の範囲に規定する技術的範囲内で各種の変形例及び均等な技術的解決策をも包含することを意図している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料、
任意成分として、コーティング組成物に用いられる公知の添加物、及び
スチレンアクリレート共重合体を含み、平均粒径が100nm以下(≦100nm)のバインダー代替物
を含むことを特徴とする紙用及び/又は板紙用のコーティングカラー組成物。
【請求項2】
バインダー代替物の平均粒径が20〜100nmである請求項1に記載のコーティングカラー組成物。
【請求項3】
さらにラテックスバインダーを含む請求項1又は2に記載のコーティングカラー組成物。
【請求項4】
ラテックスバインダーがスチレンブタジエンラテックス、スチレンアクリレートラテックス又はポリビニルアセテートラテックスである請求項3に記載のコーティングカラー組成物。
【請求項5】
バインダー代替物が
(a)α−メチルスチレン又はビニルトルエン又はそれらの混合物のような、スチレンモノマー又は置換スチレンモノマーと
(b)C〜C−アルキルアクリレート、C〜C−アルキルメタクリレート、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート又はプロピルメタクリレートからなる群から選ばれたアクリレートモノマー
との共重合体である請求項1に記載のコーティングカラー組成物。
【請求項6】
バインダー代替物がデンプンを含むスチレンアクリレート共重合体である請求項1に記載のコーティングカラー組成物。
【請求項7】
100部の顔料、
0〜12部のバインダー、
1.5〜9部のバインダー代替物、及び
0〜3部の公知添加物
を含み、バインダーとバインダー代替物との合計量が少なくとも5部である請求項1に記載のコーティングカラー組成物。
【請求項8】
100部の顔料、
4〜12部のデンプン、
3〜6部のバインダー、好ましくはラテックスバインダー、
2〜4部のバインダー代替物、及び
0〜3部の公知添加物
を含む請求項1に記載のコーティングカラー組成物。
【請求項9】
100部の顔料、
4〜5部のバインダー、
2〜3部のバインダー代替物、及び
0〜3部の公知添加物
を含む請求項1に記載のコーティングカラー組成物。
【請求項10】
顔料が炭酸カルシウム、カオリン、仮焼カオリン、タルク、二酸化チタン、石こう、チョーク、サチン白、硫酸バリウム、ケイ酸アルミニウムナトリウム、水酸化アルミニウム又はこれらの混合物のいずれかである前記請求項のいずれかに記載のコーティングカラー組成物。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれかに記載のコーティングカラー組成物を被覆したことを特徴とする紙又は板紙。
【請求項12】
紙の上へ塗布したコーティングの被覆量が5〜30g/m/紙面の範囲である請求項11に記載の紙又は板紙。
【請求項13】
紙用又は板紙用コーティング組成物のバインダー代替物としての、平均粒径が100nm以下(≦100nm)のスチレンアクリレート共重合体の使用。
【請求項14】
該共重合体を固形分含量が10〜50%の水性分散物の形態で使用する請求項13に記載の使用。

【公表番号】特表2012−512969(P2012−512969A)
【公表日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541527(P2011−541527)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【国際出願番号】PCT/FI2009/051012
【国際公開番号】WO2010/070205
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(504186286)ケミラ オイ (18)
【Fターム(参考)】