説明

コーティングフィルムの製造方法

【課題】 本発明にあっては、十分な表面硬度を有し、且つ、カールの少ないコーティングフィルムを提供することを課題とする
【解決手段】 透明基材上にコーティング層を備えるコーティングフィルムの製造方法であって、紫外線硬化型のコーティング層形成材料を備える塗工液を透明基材上に塗布し塗膜を形成する工程と、前記透明基材上に形成された塗工液からなる塗膜にパルス状の紫外線を照射し、コーティング層を形成する工程とを備えることを特徴とするコーティングフィルムの製造方法とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明基材上にコーティング層を備えるコーティングフィルムに関する。本発明のコーティングフィルムは、液晶表示装置(LCD)、陰極管表示装置(CRT)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)などのディスプレイや、家電製品などのタッチパネル、ガラス等の表面保護フィルムに好適である。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示装置(LCD)に代表される各種ディスプレイ表面に、プラスチックフィルムからなる透明基材フィルムにコーティング層を形成したコーティングフィルムを設け、ディスプレイ表面の表面を保護することが提案されている。
【0003】
コーティングフィルムに設けられるコーティング層としては、硬質で傷つきにくいことが要求され、コーティング層形成材料しては電離放射線硬化型の材料が用いられ、電離放射線硬化型材料を含む塗工液を透明基材上に塗布し、電離放射線を照射することにより硬質のコーティング層が形成される。
【特許文献1】特開2006−106427号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電離放射線硬化型材料としては紫外線硬化型材料を用いることができ、紫外線硬化型材料を備える塗膜に紫外線を照射することによりコーティング層を形成することができる。透明基材上にあるコーティング液からなる塗膜に紫外線を照射してコーティング層を形成する場合にあっては、紫外線のエネルギーによって透明基材にしわが発生することやコーティング層が硬化時に収縮することにより製造されるコーティングフィルムにカールが発生する。
【0005】
製造されたコーティングフィルムは、他の部材と貼り合わされディスプレイ表面に設けられる。カールしたコーティングフィルムは、次工程での貼り合わせ工程において他の部材と貼り合わせる際に不良を発生しやすいという問題が発生する。したがって、コーティングフィルムにおいては、コーティング層が十分な表面硬度を有するだけでなく、カールの少ないコーティングフィルムとすることが望まれる。
【0006】
本発明にあっては、十分な表面硬度を有し、且つ、カールの少ないコーティングフィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために請求項1に係る発明としては、透明基材上にコーティング層を備えるコーティングフィルムの製造方法であって、紫外線硬化型のコーティング層形成材料を備える塗工液を透明基材上に塗布し塗膜を形成する工程と、前記透明基材上に形成された塗工液からなる塗膜にパルス状の紫外線を照射し、コーティング層を形成する工程とを備えることを特徴とするコーティングフィルムの製造方法とした。
【0008】
また、請求項2に係る発明としては、前記紫外線硬化型の塗工液が、該塗工液のコーティング層形成材料100重量部に対しウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを25重量部以上100重量部以下備えることを特徴とする請求項1記載のコーティングフィルムの製造方法とした。
【0009】
また、請求項3に係る発明としては、前記コーティング層の膜厚が5μm以上20μm以下であることを特徴とする請求項1または請求項2記載のコーティングフィルムの製造方法とした。
【0010】
また、請求項4に係る発明としては、前記、透明基材がトリアセチルセルロースフィルムからなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のコーティングフィルムの製造方法とした。
【発明の効果】
【0011】
本発明のコーティングフィルムの製造方法を用いることにより、コーティング層が十分な表面硬度を有し、且つ、カールの少ないコーティングフィルムを製造することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1に本発明のコーティングフィルムの説明断面図を示した。
本発明のコーティングフィルムは、透明基材1上にコーティング層2を積層してなる。本発明のコーティングフィルムはコーティング層が十分な表面硬度を有し、ディスプレイ表面に好適に用いられる。本発明のコーティングフィルムには、必要に応じて、コーティング層上に反射防止性能、帯電防止性能、防汚性能、防眩性能、電磁波シールド性能、赤外線吸収性能、紫外線吸収性能、色補正性能等を有する機能層を設けてもよい。これらの機能層としては、反射防止層、帯電防止層、防汚層、防眩層、電磁波遮蔽層、赤外線吸収層、紫外線吸収層、色補正層等が挙げられる。なお、これらの機能層は単層であってもかまわないし、複数の層であってもかまわない。例えば、反射防止層にあっては、低屈折率層単層から構成されても構わないし、低屈折率層と高屈折率層の繰り返しによる複数層から構成されていても構わない。また、機能層は、防汚性能を有する反射防止層というように、1層で複数の機能を有していても構わない。
【0013】
次に、本発明のコーティングフィルムの製造方法について示す。本発明にあっては、ウレタン(メタ)アクリレート材料を含む紫外線硬化型のコーティング層形成材料を備える塗工液を透明基材上に塗布し塗膜を形成する工程と、前記透明基材上に形成されたコーティング液からなる塗膜にパルス状の紫外線を照射し、コーティング層を形成する工程とを備えることを特徴とする。
【0014】
本発明者は、透明基材上の塗工液からなる塗膜に対して紫外線照射しコーティング層を形成する工程において、パルス状の紫外線を照射することにより、製造されるコーティングフィルムがカールの少ないコーティングフィルムとなることを発見し、本発明に至った。
【0015】
通常、紫外線硬化型材料を硬化するランプとしては高圧水銀ランプ、無電極ランプなどがある。高圧水銀ランプは365nmを主波長とし、254nm、303nm、313nmの紫外光を効率よく発光する。入力(W)が多くとれるため放射照度も大きいという特徴を有する。また、無電極ランプはマイクロ波エネルギーによってランプバルブ内部の発光物質を励起させてプラズマとし、光エネルギーに転換している。電極が無いことで、光安定性・低熱性・長寿命ではあるという特徴を有する。
【0016】
しかしながら、高圧水銀ランプや無電極ランプを用いて透明基材上にあるコーティング液からなる塗膜を硬化させた場合、製造されるコーティングフィルムはカールの大きいものとなる。この傾向は、特に透明基材としてトリアセチルセルロースを用いた場合に顕著となる。
【0017】
本発明においては、塗工液からなる塗膜にパルス状の紫外線を照射し硬化させることにより、製造されるコーティングフィルムはカールの少ないものとなる。パルス状の紫外線を照射する手段としては、キセノン(クセノン)フラッシュランプ、パルスドキセノンランプを使用することができる。
【0018】
キセノンフラッシュランプ、パルスドキセノンランプはUV領域からIR(赤外)領域までの連続発光である。半値幅が100μ秒程度でパルスで発光をすることができる。これらキセノンフラッシュランプ、パルスドキセノンランプのエネルギーは50J以上150J以下が好ましく、さらには50J以上120J以下が好ましい。またショット数は4以上10以下が好ましく、さらには4以上7以下が好ましい。
【0019】
キセノンフラッシュランプ、パルスドキセノンランプのエネルギーが50Jに満たない場合、透明基材上にある塗膜を十分硬化することができず、得られるコーティング層は十分な表面硬度を有することができないことがある。また、キセノンフラッシュランプ、パルスドキセノンランプのエネルギーが150Jを超えるような場合、カールが発生してしまうことがある。また、キセノンフラッシュランプ、パルスドキセノンランプのショット数を3以下とした場合には、得られるコーティング層は十分な表面硬度を有することができないことがある。また、キセノンフラッシュランプ、パルスドキセノンランプのショット数を10以上とした場合にはカールが発生してしまうことがある。
【0020】
本発明に用いられる紫外線硬化型のコーティング層形成材料を含む塗工液としては、紫外線硬化型材料としてウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを好適に用いることができる。コーティング層形成材料として、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを用いることにより、十分な表面硬度を有し、且つ、柔軟性やゴム弾性といったウレタン樹脂の特徴を有し、フィルム基材への追随性が良好で屈曲性に優れるコーティング層を得ることができる。
【0021】
前記ウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、単官能のウレタン(メタ)アクリレート、2官能のウレタン(メタ)アクリレート、3官能のウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられるが、中でも、2官能のウレタン(メタ)アクリレートおよび/または3官能のウレタン(メタ)アクリレートが好ましく、末端に(メタ)アクリロイル基を有する2官能のウレタン(メタ)アクリレートおよび/または末端に(メタ)アクリロイル基を有する3官能のウレタン(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0022】
前記2官能のウレタン(メタ)アクリレートおよび/または3官能のウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、ポリオールと、ジイソシアネート化合物と、水酸基含有モノ(メタ)アクリレート化合物とを反応して得られるもの等が挙げられる。
【0023】
また、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、重量平均分子量が1000〜10000のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを用いることが好ましく、さらには、重量平均分子量1200〜8000のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを用いることが好ましい。重量平均分子量が1000以下のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを用いた場合には、硬化収縮の度合いが大きくなり硬化後のコーティングフィルムのカールの度合いが大きくなってしまうことがある。一方、重量平均分子量が10000以上のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを用いた場合には、該ウレタン(メタ)アクリレート材料を溶媒に溶解または分散させて塗工液化することが困難となることがある。
【0024】
本発明においては、コーティング層形成材料100重量部に対し、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは25重量部以上100重量部以下であることが好ましい。ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが25重量部に満たない場合、十分な表面硬度を有し、且つ、フィルム基材への追随性が良好で屈曲性に優れるコーティング層を有するコーティングフィルムとすることができなくなってしまうことがある。
【0025】
また、コーティング層形成材料としては、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの他にラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物を用いることができる。また、ウレタンアクリレートオリゴマーに上記の範囲内でラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物を含有させ、コーティング層形成材料とすることもできる。ラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物としては、ウレタン(メタ)アクリレート以外の(メタ)アクリレート、ビニルエーテル化合物等が挙げられる。
【0026】
前記(メタ)アクリレートとしては、例えば、単官能の(メタ)アクリレート、2官能の(メタ)アクリレート、3官能以上の(メタ)アクリレート等が挙げられるが、単官能の(メタ)アクリレートおよび2官能の(メタ)アクリレートを用いた場合、得られるコーティング層のプラスチックフィルムへの追随性が良好で屈曲性に優れるため特に好ましい。
【0027】
前記単官能の(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、N−ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリールアクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、
【0028】
フェノキシ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロハイドロゲンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルテトラヒドロハイドロゲンフタレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2−アダマンタンおよびアダマンタンジオールから誘導される1価のモノ(メタ)アクリレートを有するアダマンチルアクリレートなどのアダマンタン誘導体モノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0029】
前記2官能の(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートなどのジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0030】
前記3官能以上の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス2−ヒドロキシエチルイソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の3官能以上の(メタ)アクリレート化合物;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンヘキサ(メタ)アクリレート等の3官能以上の多官能(メタ)アクリレートや、これら(メタ)アクリレートの一部をアルキル基やε−カプロラクトンで置換した多官能(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0031】
また、本発明においては、塗工液に必要により光重合開始剤を添加することができる。本発明に用いることができる光重合開始剤としては各種のものが使用でき、例えば、ベンゾフェノン、ベンジル、ミヒラーケトン、チオキサントンまたはアントラキノン等の水素引き抜きによってラジカルを発生するタイプの化合物等が挙げられる。これらの化合物は、メチルアミン、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、トリブチルアミン等の第三アミンと併用するのが一般的である。
【0032】
また、別のタイプの光重合開始剤としては、例えば、分子内開裂によってラジカルを発生するタイプの化合物等が挙げられる。具体的には、例えば、ベンゾイン、ジアルコキシアセトフェノン、アシルオキシムエステル、ベンジルケタール、ヒドロキシアルキルフェノン、ハロゲノケトン等が挙げられる。
【0033】
また、必要により、光重合開始剤と併用して、ハイドロキノン、ベンゾキノン、トルハイドノキノンまたは、パラターシャリーブチルカテコールの如き重合禁止剤類などを添加することもできる。
【0034】
また、本発明にあっては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、レベリング剤、界面活性剤、スリップ剤、消泡剤等の添加剤も必要に応じて塗工液に添加しても良い。
【0035】
また、本発明の塗工液としては、必要に応じてコーディング形成材料を溶媒に溶解または分散させることができる。溶媒としては、トルエン、シクロヘキサノン、アセトン、ケトン、エチルセロソルブ、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルイソブチルケトン、イソプロパノール、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2−ブタノン、テトラヒドロフラン、ニトロメタン、1,4−ジオキサン、ジオキソラン、N−メチルピロリドン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジクロロメタン、トリクロロメタン、トリクロロエチレン、エチレンクロライド、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、N,N−ジメチルホルムアミド、クロロホルムなどを使用でき、またこれらの混合溶媒を使用することができる。また溶剤の量はとくに限定されない。
【0036】
本発明に用いられる透明基材としては、ガラスやプラスチックフィルムなどを用いることができる。プラスチックフィルムとしては適度の透明性、機械強度を有していれば良い。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、トリアセチルセルロース(TAC)、ジアセチルセルロース、アセチルセルロースブチレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、シクロオレフィンポリマー、ポリイミド、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)等のフィルムを用いることができる。中でも、液晶表示装置の前面にコーティングフィルムを用いる場合、トリアセチルセルロース(TAC)は光学異方性がないため、好ましく用いられる。
【0037】
本発明のコーティングフィルムの製造方法にあっては、ウェットコーティング法により、透明基材の少なくとも片面に塗工液が塗布され、透明基材上に塗膜が形成される。
【0038】
ウェットコーティング法としては、ディップコーティング法、スピンコーティング法、フローコーティング法、スプレーコーティング法、ロールコーティング法、グラビアロールコーティング法、エアドクターコーティング法、プレードコーティング法、ワイヤードクターコーティング法、ナイフコーティング法、リバースコーティング法、トランスファロールコーティング法、マイクログラビアコーティング法、キスコーティング法、キャストコーティング法、スロットオリフィスコーティング法、カレンダーコーティング法、ダイコーティング法等を用いることができる。
【0039】
塗工液が塗布されることにより形成された透明基材上の塗膜は、パルス状の紫外線を照射させることにより、硬化しコーティング層となる。このとき、パルス状の紫外線を照射する前に、塗液に含まれる溶媒を除去するための乾燥工程を設けてもよい。乾燥手段としては加熱、送風、熱風などが例示される。
【0040】
先ほども示したが、透明基材上の塗布膜にパルス状の紫外線を照射する手段としては、キセノン(クセノン)フラッシュランプ、パルスドキセノンランプを使用することができる。
【0041】
なお、本発明にあっては、紫外線照射後のコーティング層の膜厚は5μm以上20μm以下であることが好ましい。コーティング層の膜厚が20μmを超えるような場合、派する上の紫外線照射によって透明基材上の塗膜を効率的に硬化させることができなくなってしまうことがある。コーティング層の膜厚が5μmに満たない場合、十分な表面硬度を有するコーティング層とすることができなくなることがある。また、塗工液を透明基材上に吐付した直後の塗膜の湿潤膜厚は5〜30μmであることが好ましい。
【0042】
以上により、本発明のコーティングフィルムは形成される。
【実施例】
【0043】
以下に実施例および比較例を挙げて本発明について具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0044】
(塗工液(H−1)の調整)
紫光 UV−7605B(日本合成化学社製)100重量部、イルガキュア184(チバガイギー社製)4重量部、酢酸メチル50重量部、2−ブタノン50重量部を混合し、塗工液(H−1)を調液した。
(塗工液(H−2)の調整)
UN−3320HC(根上工業株式会社製)100重量部、イルガキュア184(チバガイギー社製)4重量部、酢酸メチル50重量部、2−ブタノン50重量部を混合し、塗工液(H−2)を調液した。
【0045】
(実施例1)
透明基材として、厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルムを用い、トリアセチルセルロースフィルム上にバーコーターにて塗工液を塗布し塗膜を形成した。トリアセチルセルロースフィルム上の塗膜を乾燥させて塗膜に含まれる溶媒分を除去した後、パルスドキセノンランプ(岩崎電気株式会社製)を用い、塗膜を硬化させ、コーティングフィルムを作製した。このとき、(表1)に示したように、塗工液として塗工液(H−1)、塗工液(H−2)を用い、それぞれの塗工液についてコーティング層の膜厚が2種類となるようにコーティングフィルムを作製し、計4種類のコーティングフィルムを作製した。そして、照射するパルスドキセノンランプのエネルギーを変化させコーティングフィルムを作製した。
【0046】

【表1】

【0047】
そして、得られたコーティングフィルムについて、以下に示した方法にて評価をおこなった。評価結果については(表1)に示した。
・コーティング層の膜厚:膜厚測定器(モデル;205−0020、FILMETORICS社製)で測定した。
・鉛筆硬度:コーティングフィルムのコーティング層に対し、JIS K 5400に準拠し、500g加重で測定した。
・カール:10×10cmに切ったコーティングフィルムのエッジの浮き上がりで評価した。○;浮き上がりが2cm未満、△;浮き上がりが2cm以上、×;浮き上がりが筒状である。
・密着度:コーティングフィルムのコーティング層に対し、碁盤目の切り込み(1枡の大きさ1mm×1mm、10枡×10枡=100枡)を入れ、セロハン粘着テープによる剥離試験を実施した。数値は残存数で示した(100:塗膜剥がれ無し、0:すべて剥離)。
【0048】
(実施例2)
(実施例1)のパルスドキセノンランプに換えてクセノンフラッシュランプ(ウシオ電機株式会社製)を用い、(実施例1)と同様にしてコーティングフィルムを作製した。このとき、(表2)に示したように、塗工液として塗工液(H−1)、塗工液(H−2)を用い、それぞれの塗工液についてコーティング層の膜厚が2種類となるようにコーティングフィルムを作製し、計4種類のコーティングフィルムを作製した。そして、照射するクセノンフラッシュランプのエネルギーを変化させコーティングフィルムを作製した。
【0049】

【表2】

【0050】
(比較例1)
(実施例1)のパルスドキセノンランプに換えて紫外線照射装置(岩崎電気株式会社 F600V−10、パワー80%、搬送速度15m/min)を用い、(実施例1)と同様にしてコーティングフィルムを作製した。このとき(表3)に示したように、塗工液として塗工液(H−1)、塗工液(H−2)を用い、それぞれの塗工液についてコーティング層の膜厚が2種類となるようにコーティングフィルムを作製し、計4種類のコーティングフィルムを作製した。そして、得られたコーティングフィルムについて、(実施例1)と同様に、コーティング層の膜厚、鉛筆硬度、カール、密着度について評価した。評価結果については(表2)に示した。
【0051】

【表3】

【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】図1は本発明のコーティングフィルムの説明断面図である。
【符号の説明】
【0053】
1 透明基材
2 コーティング層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材上にコーティング層を備えるコーティングフィルムの製造方法であって、
紫外線硬化型のコーティング層形成材料を備える塗工液を透明基材上に塗布し塗膜を形成する工程と、
前記透明基材上に形成された塗工液からなる塗膜にパルス状の紫外線を照射し、コーティング層を形成する工程と
を備えることを特徴とするコーティングフィルムの製造方法。
【請求項2】
前記紫外線硬化型の塗工液が、該塗工液のコーティング層形成材料100重量部に対しウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを25重量部以上100重量部以下備えることを特徴とする請求項1記載のコーティングフィルムの製造方法。
【請求項3】
前記コーティング層の膜厚が5μm以上20μm以下であることを特徴とする請求項1または請求項2記載のコーティングフィルムの製造方法。
【請求項4】
前記、透明基材がトリアセチルセルロースフィルムからなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のコーティングフィルムの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−229538(P2008−229538A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−74556(P2007−74556)
【出願日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】