説明

コーティング剤およびそれを用いて形成させた被膜、フィルム

【課題】ビスフェノールA骨格を有するポリアリレート樹脂を特定の非ハロゲン系有機溶媒に溶解したものであって、溶液安定性が良好であるコーティング剤を提供する。
【解決手段】ポリアリレート樹脂と有機溶媒からなるコーティング剤であって、前記ポリアリレート樹脂が、二価フェノール成分としての2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−プロパンと、芳香族ジカルボン酸成分としてのテレフタル酸、イソフタル酸およびオルトフタル酸とから構成され、芳香族ジカルボン酸成分に占めるオルトフタル酸の含有量が0.5〜30モル%であり、テレフタル酸およびイソフタル酸の含有量がそれぞれ10モル%以上であって、前記有機溶媒が環状エーテル、環状アミド、直鎖状アミドまたはシクロアルカノンから選ばれたものであるコーティング剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアリレート樹脂のコーティング剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ビスフェノールAを骨格に含むポリアリレート樹脂のフィルムは、耐熱性や透明性が高いことから、電気・電子、自動車、機械等の分野に幅広く用いられている。一般に、ポリアリレート樹脂のフィルムは、有機溶媒を用いた流延法により作製されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、ビスフェノールA、テレフタル酸およびイソフタル酸からなるポリアリレート樹脂を塩化メチレンに溶解したコーティング剤を用いて、流延法により製膜することが開示されている。
【0004】
しかしながら、塩化メチレンやクロロホルムといったハロゲン系有機溶媒は、近年、環境や人体への影響を懸念して使用が避けられており、非ハロゲン系有機溶媒への転換が求められている。ところが、特許文献1に記載されたようなビスフェノールA、テレフタル酸およびイソフタル酸からなるポリアリレート樹脂は、非ハロゲン系有機溶媒への溶解性に乏しく、安定なコーティング液を得ることが困難である。
【0005】
特許文献2には、ポリアリレート樹脂の二価フェノール成分としてビスフェノールAとは異なる化合物を用いることにより、非ハロゲン系有機溶媒へ可溶化し、コート液として利用することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−269214号公報
【特許文献2】特開2003−313491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、より安価で耐熱性や機械的物性に有利なビスフェノールAを用いたポリアリレートを非ハロゲン系有機溶媒に溶解させて、安定なポリマー溶液を得ることは出来ていなかった。
【0008】
本発明は、ビスフェノールA骨格を有するポリアリレート樹脂を特定の非ハロゲン系有機溶媒に溶解したものであって、溶液安定性が良好であるコーティング剤を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、前記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、上記目的が達成されることを見出し、本発明に到達した。すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
【0010】
(1)ポリアリレート樹脂と有機溶媒からなるコーティング剤であって、前記ポリアリレート樹脂が、二価フェノール成分としての2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−プロパンと、芳香族ジカルボン酸成分としてのテレフタル酸、イソフタル酸およびオルトフタル酸とから構成され、芳香族ジカルボン酸成分に占めるオルトフタル酸の含有量が0.5〜30モル%であり、テレフタル酸およびイソフタル酸の含有量がそれぞれ10モル%以上であって、前記有機溶媒が環状エーテル、環状アミド、直鎖状アミドまたはシクロアルカノンから選ばれたものであるコーティング剤。
(2)有機溶媒の沸点が50〜170℃である(1)記載のコーティング剤。
(3)有機溶媒が、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、シクロヘキサノンおよびシクロペンタノンより選ばれた少なくとも1種類である(1)または(2)記載のコーティング剤。
(4)(1)〜(3)いずれかに記載のコーティング剤を用いて形成させた被膜。
(5)(1)〜(3)いずれかに記載のコーティング剤を用いて形成させたフィルム。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、長期間にわたって、溶液粘度が安定であるコーティング剤を提供することができる。また、本発明のコーティング剤を用いれば、流延法により、透明で、耐熱性が高く、均一な厚みの被膜やフィルムを作製することができる。本発明の被膜やフィルムは、金属材料の腐食防止被膜、金属基板のエッチングマスク、コンデンサ、振動板、光ディスクやプリント基板等の絶縁膜等に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のコーティング剤は、ポリアリレート樹脂と有機溶媒から構成される。
【0013】
本発明で用いるポリアリレート樹脂は、二価フェノール成分と芳香族ジカルボン酸成分から構成され、二価フェノール成分は2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン(ビスフェノールA)、芳香族ジカルボン酸成分はテレフタル酸、イソフタル酸およびオルトフタル酸から構成される。
【0014】
芳香族ジカルボン酸成分において、テレフタル酸とイソフタル酸は、いずれも10モル%以上含有させる必要があり、20モル%以上含有させることが好ましく、30モル%以上含有させることがより好ましい。テレフタル酸またはイソフタル酸の含有比率が、いずれかでも10モル%未満の場合、溶解性が低下するので好ましくない。
【0015】
また、芳香族ジカルボン酸成分において、オルトフタル酸は0.5〜30モル%含有させることが必要であり、10〜20モル%含有させることが好ましい。オルトフタル酸の含有量が0.5モル%未満の場合、経時で増粘するので好ましくない。一方、オルトフタル酸の含有量が30モル%を超える場合、耐熱性が低下するので好ましくない。
【0016】
なお、二価フェノール成分および芳香族ジカルボン酸成分には、本発明の効果を損なわない範囲で、他の二価フェノールや他の芳香族ジカルボン酸を含有してもよい。
【0017】
ポリアリレート樹脂のインヘレント粘度は、0.30〜1.70とすることが好ましく、0.50〜1.70とすることがより好ましい。インヘレント粘度を0.30〜1.70とすることで、ハンドリングよく、均一な被膜やフィルムを作製することができる。
【0018】
ポリアリレート樹脂のインヘレント粘度の制御方法は、特に限定されるものではないが、例えば、後述する製造方法において用いる末端封止剤または酸ハライドの添加量を制御する方法が挙げられる。
【0019】
ポリアリレート樹脂を製造する方法としては、界面重合法、溶液重合法等が挙げられる。界面重合法は溶液重合法と比較すると、反応が速いため、酸ハライドの加水分解を抑えることができ、結果として高分子量のポリマーを得ることができる。
【0020】
界面重合法としては、二価カルボン酸ハライドを水と相溶しない有機溶媒に溶解させた溶液(有機相)を、二価フェノール、末端封止剤、酸化防止剤および重合触媒を含むアルカリ水溶液(水相)に混合し、50℃以下の温度で1時間〜8時間撹拌しながら重合反応をおこなう方法が挙げられる。
【0021】
有機相に用いる溶媒としては、水と相溶せずポリアリレート樹脂を溶解する溶媒が好ましい。このような溶媒としては、塩化メチレン、クロロホルム等が挙げられ、製造上使用しやすいことから、塩化メチレンが好ましい。
【0022】
水相に用いるアルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等の水溶液が挙げられる。
【0023】
末端封止剤としては、一価フェノール、一価酸クロライド、一価アルコール、一価カルボン酸等が挙げられる。一価フェノールとしては、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、p−tert−ブチルフェノール、o−フェニルフェノール、m−フェニルフェノール、p−フェニルフェノール、o−メトキシフェノール、m−メトキシフェノール、p−メトキシフェノール、2,3,6−トリメチルフェノール、2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノール、2−フェニル−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−フェニル−2−(2−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−フェニル−2−(3−ヒドロキシフェニル)プロパン等が挙げられ、一価酸クロライドとしては、ベンゾイルクロライド、安息香酸クロライド、メタンスルホニルクロライド、フェニルクロロホルメート等が挙げられ、一価アルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ドデシルアルコール、ステアリルアルコール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール等が挙げられ、一価カルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、オクタン酸、シクロヘキサンカルボン酸、安息香酸、トルイル酸、フェニル酢酸、p−tert−ブチル安息香酸、p−メトキシフェニル酢酸等が挙げられる。これらの中でも、反応性と熱安定性の点から、p−tert−ブチルフェノールが好ましい。
【0024】
酸化防止剤としては、ハイドロサルファイトナトリウム、L−アスコルビン酸、エリソルビン酸、カテキン、トコフェノール、ブチルヒドロキシアニソール等が挙げられ、速やかに水溶することからハイドロサルファイトナトリウムが好ましい。
【0025】
重合触媒としては、トリブチルベンジルアンモニウムハライド、テトラブチルアンモニウムハライド、トリメチルベンジルアンモニウムハライド、トリエチルベンジルアンモニウムハライド等の第四級アンモニウム塩や、トリブチルベンジルホスホニウムハライド、テトラブチルホスホニウムハライド、トリメチルベンジルホスホニウムハライド、トリエチルベンジルホスホニウムハライド等の第四級ホスホニウム塩が挙げられる。中でも、高分子量で低カルボキシル価のポリマーを得ることができる点で、トリブチルベンジルアンモニウムハライド、テトラブチルアンモニウムハライド、トリブチルベンジルホスホニウムハライド、テトラブチルホスホニウムハライドが好ましい。
【0026】
本発明に用いる有機溶媒は、環状エーテル、環状アミド、直鎖状アミドまたはシクロアルカノンから選ばれたものであることが必要である。環状エーテル、環状アミド、直鎖状アミドまたはシクロアルカノンは、化合物中に非共有電子対を有し、それらが本願発明に規定する特定組成のポリアリレート樹脂の溶解性に寄与していると思われる。
【0027】
有機溶媒の沸点は、50〜170℃のものを用いることが好ましく、50〜100℃のものがより好ましい。有機溶媒の沸点が50℃未満の場合、乾燥中に気泡が発生したりすることがあり、透明な被膜を得ることが難しくなる。有機溶媒の沸点が170℃を超えると、所定の乾燥条件で、十分な乾燥ができないことがある。
【0028】
環状エーテルとしては、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン等が挙げられ、環状アミドとしては、N−メチル−2−ピロリドンが挙げられ、直鎖状アミドとしては、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等が挙げられ、シクロアルカノンとしては、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
【0029】
中でも、汎用性の点から、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンが好ましく、沸点が低く、溶解性に優れている点から、テトラヒドロフランがより好ましい。
【0030】
コーティング剤の固形分濃度は、7〜35質量%とすることが好ましく、12〜25質量%とすることがより好ましい。固形分濃度が7質量%未満の場合、大量の溶媒を用いることになり、環境への負荷が増大したり、溶媒乾燥や溶媒回収のコストが増加したりする。一方、固形分濃度が35質量%を超えると、ポリアリレート樹脂が溶け残る場合がある。
【0031】
なお、コーティング剤には、必要に応じて、滑剤、顔料、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の添加剤を含有させてもよい。
【0032】
本発明のコーティング剤は、公知のコーティング方法で基材に塗布することができ、その後、乾燥工程に付されてポリアリレート被膜を形成することができる。
【0033】
乾燥方法は特に限定されないが、効率よく溶媒を除去するためには加熱乾燥することが好ましい。乾燥温度や乾燥時間はポリアリレート樹脂の物性や塗布基板の組み合わせにより適宜選択される。経済性を考慮した場合、乾燥温度は40〜150℃とすることが好ましく、40〜100℃とすることがより好ましく、乾燥時間は1〜30分とすることが好ましく、3〜15分とすることがより好ましい。なお、必要に応じて、室温で自然乾燥してもよい。
【0034】
本発明のコーティング剤を用いて、基材フィルム上にポリアリレート被膜を形成させ、基材フィルムから剥離させることで、フィルムを作製することができる。
【0035】
本発明のコーティング剤は、長期間にわたって溶液粘度が安定しており、例えば、25±1℃で1ヶ月経過した後の溶液粘度は、溶解直後の溶液粘度に対して1.20倍以内とすることができる。
【0036】
また、本発明のコーティング剤はチキソ性が低く濃度斑がない。そのため、本発明のコーティング剤を用いれば、均一な厚みの被膜やフィルムを容易に作製することができる。本発明において、「均一な厚みである」とは、ランダムに測定したフィルムの厚みのうち最大値と最小値の差が、平均の厚みに対して5%以内であることをいう。
【0037】
本発明のポリアリレート樹脂コーティング剤から得られる被膜は、金属材料の腐食防止被膜に用いることができ、また、その被膜にパターン加工を施して金属基板のエッチングマスクとして用いることができる。また、本発明のポリアリレート樹脂コーティング剤から得られるフィルムは、コンデンサ、振動板、光ディスクやプリント基板等の絶縁膜に用いることが可能である。
【実施例】
【0038】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0039】
(1)インヘレント粘度
ポリアリレート樹脂を1,1,2,2−テトラクロロエタンに溶解し、濃度1g/dlの試料溶液を作製した。続いて、ウベローデ型粘度計を用い、25℃の温度にて試料溶液および溶媒の落下時間を測定し、以下の式を用いてインヘレント粘度を求めた。
インヘレント粘度=ln[(試料溶液の落下時間/溶媒のみの落下時間)/樹脂濃度(g/dl)]
【0040】
(2)溶液粘度、溶液粘度変化率
固形分15質量%のポリアリレート樹脂コーティング剤の溶液粘度を、溶解直後と25±1℃で1ヵ月静置した後それぞれについて、東機産業株式会社VCH−400により、25℃±1℃で測定した。溶解直後と静置1ヵ月後の溶液粘度の値から下記式により溶液粘度変化率を算出した。
溶液粘度変化率(倍)=静置1ヵ月後の溶液粘度/溶解直後の溶液粘度
【0041】
(3)厚みの均一性
(2)で得られた溶解直後のコーティング剤をガラス板上に流延塗布し、減圧下、120℃で、24時間乾燥し、10μmの厚みになるようにフィルムを作製した。静置1ヵ月後のコーティング剤についても同様にフィルムを作製した。
それぞれのフィルムについて、HEIDENHAIN社製厚み計MT12Bにより、ランダムに30箇所厚みを測定した。平均の厚みに対する最大値と最小値の差の割合を、以下の基準で評価した。
○:5%未満
×:5%以上
【0042】
(4)引張強度
(3)で作製した厚さが10μmのフィルムを用いて、JIS K−2318に準拠して、インテスコ社製引張圧縮試験機により、破断点での引張強度を測定した。
【0043】
(5)光線透過率
(3)で作製した厚さが10μmのフィルムを用いて、日本電色工業社製濁度計NDH2000を用い、全光線透過率を測定した。
【0044】
(6)ガラス転移温度
(3)で作製した厚さが10μmのフィルム15mgをサンプルとし、DSC(示差走査熱量測定)装置(パーキンエルマー社製DSC7)を用いて昇温速度10℃/分の条件で測定をおこない、得られた昇温曲線中のガラス転移に由来する2つの折曲点の温度の中間値を求め、これをガラス転移温度とした。ガラス転移温度が175℃以上であれば、耐熱性が高いと判断した。
【0045】
実施例1
攪拌装置を備えた反応容器中に、ビスフェノールA20.60質量部、末端封止剤としてp−tert−ブチルフェノール0.11質量部、アルカリとして水酸化ナトリウム8.60質量部、重合触媒としてベンジル−トリ−n−ブチルアンモニウムクロライド0.30質量部、酸化防止剤としてハイドロサルファイトナトリウム0.10質量部を仕込み、水620質量部に溶解した(水相)。これとは別に、塩化メチレン300質量部に、テレフタル酸クロライド(TPC)6.5質量部と、イソフタル酸クロライド(IPC)6.5質量部と、オルトフタル酸クロライド(OPC)1.4質量部を溶解した(有機相)。(ビスフェノールA:TPC:IPC:OPC=100:47:47:6(モル比))水相をあらかじめ攪拌しておき、有機相を水相中に強攪拌下で添加し、15℃で4時間、界面重合法で重合をおこなった。この後、攪拌を停止し、水相と有機相をデカンテーションして分離した。水相を除去した後、塩化メチレン200質量部、純水1000質量部と酢酸1質量部を添加して反応を停止し、15℃で30分間攪拌した。その後、有機相を純水で10回洗浄し、有機相をメタノール中に添加してポリマーを沈殿させ、分離・乾燥後、ポリアリレート樹脂を得た。
【0046】
得られたポリアリレート樹脂をテトラヒドロフランに、固形分濃度15質量%で混合した。
【0047】
実施例2〜12、比較例1〜7
表1に示すように、ポリアリレート樹脂の樹脂組成と有機溶媒を変更する以外は、実施例1と同様にコーティング剤を得た。
【0048】
表1に、用いたポリアリレート樹脂の樹脂組成および有機溶媒および、コーティング剤とフィルムの評価結果を示した。
【0049】
【表1】

【0050】
実施例1〜12のコーティング剤は、環状エーテル、環状アミド、直鎖状アミドまたはシクロアルカノンに溶解したものであって、1ヶ月にわたって、溶液粘度が安定で、溶液安定性が良好であった。また、溶解直後、1ヶ月静置後のいずれのコーティング剤を用いた場合にも、耐熱性で、透明性が高く、均一な厚みのフィルムを作製することができた。
【0051】
比較例1は、用いたポリアリレート樹脂の芳香族ジカルボン酸成分にオルトフタル酸を含有させていなかったため、経時的な増粘が確認された。1ヶ月後にはプリン状になっており、溶液粘度が測定できなかった。また、溶解直後のコーティング液を用いても、均一な厚みのフィルムを作製することができなかった。
比較例2は、用いたポリアリレート樹脂の芳香族ジカルボン酸成分のオルトフタル酸の含有量が多かったため、フィルムのガラス転移温度が低く、耐熱性が低かった。
比較例3〜6は、用いたポリアリレート樹脂の芳香族ジカルボン酸成分のテレフタル酸とイソフタル酸の含有量のいずれかが少なかったため、テトラヒドロフランに溶解させることができなかった。
比較例7は、有機溶媒として環状エーテル、環状アミド、直鎖状アミドまたはシクロアルカノンを用いていなかったため、溶解しなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアリレート樹脂と有機溶媒からなるコーティング剤であって、前記ポリアリレート樹脂が、二価フェノール成分としての2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−プロパンと、芳香族ジカルボン酸成分としてのテレフタル酸、イソフタル酸およびオルトフタル酸とから構成され、芳香族ジカルボン酸成分に占めるオルトフタル酸の含有量が0.5〜30モル%であり、テレフタル酸およびイソフタル酸の含有量がそれぞれ10モル%以上であって、前記有機溶媒が環状エーテル、環状アミド、直鎖状アミドまたはシクロアルカノンから選ばれたものであるコーティング剤。
【請求項2】
有機溶媒の沸点が50〜170℃である請求項1記載のコーティング剤。
【請求項3】
有機溶媒が、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、シクロヘキサノンおよびシクロペンタノンより選ばれた少なくとも1種類である請求項1または2記載のコーティング剤。
【請求項4】
請求項1〜3いずれかに記載のコーティング剤を用いて形成させた被膜。
【請求項5】
請求項1〜3いずれかに記載のコーティング剤を用いて形成させたフィルム。

【公開番号】特開2013−18943(P2013−18943A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−155770(P2011−155770)
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】