説明

コーティング剤用表面調整剤

【課題】簡易な組成でコーティング剤に添加されて優れた表面調整効果を発現させ、そのコーティング剤で形成される塗装膜に色分かれ、残泡、レベリング不良、濡れ不良を生じさせず、その塗装膜へ十分な上塗り特性を付与する耐熱性のコーティング剤用表面調整剤を提供する。
【解決手段】コーティング剤用表面調整剤は、CH=C(R)−CO−O−R−R(Rは水素原子又はメチル基、Rは−(CH−で示されnを0〜4とする基、Rは炭素数1〜12のパーフルオロアルキル基)で表されるフッ素置換アルキル(メタ)アクリレートモノマー(A)の10〜80重量部と、N−ビニルアミドモノマー、N−ビニルイミドモノマー、N−ビニルカルバメートモノマー又は(メタ)アクリルアミドモノマーの窒素含有不飽和モノマー(B)の20〜90重量部とが共重合しており、それの重量平均分子量が3000〜100000である共重合物を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティング剤に含有させるものでそれの塗装膜をその表面張力の適度な調整により平滑にする耐熱性のコーティング剤用表面調整剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラスチック製品やプレートメタル製品やプリント基板等の被塗装物の表面をコーティング剤で塗装する際、得られたその塗装膜に、色分かれ、残泡、レベリング不良、濡れ不良を生じることがある。
【0003】
そこで、このような塗装膜の表面を綺麗で平滑にするために、ポリアルキル(メタ)アクリレートやポリアルキルビニルエーテルのようなアルキル系、ポリシロキサンのようなシリコーン系、フッ素樹脂のようなフッ素系の表面調整剤が、予めコーティング剤に添加される。
【0004】
焼付けや半田付けのような高温処理が施されないプラスチック製品は、アルキル系表面調整剤などを添加したコーティング剤で、塗装される。コーティング剤にアルキル系表面調整剤を添加させてもその表面張力をさほど低下させないため、得られた塗装膜の平滑性の効果が小さい。同じく高温処理が施されない建築用シーリング材や塗料として用いられる硬化型組成物へ添加されるシリコーン系表面調整剤として、例えば特許文献1に、塗料用レベリング剤及び/又は塗料用消泡剤であるシリコーン系重合体が、開示されている。一般にシリコーン系表面調整剤は、塗装膜の表面張力を極端に低下させるため、得られた塗装膜への上塗り特性や塗装膜の耐汚染性を低下させてしまう。
【0005】
一方、プレコートメタル製品は、焼付け用コーティング剤が塗布され、その塗装膜が250℃以上の高温で焼付けられて、焼付け被膜が形成されたものである。その焼付け被膜を平滑にするために、市販のシリコーン系やフッ素系の表面調整剤が予め焼付け用コーティング剤に添加されていても、その焼付け時に、表面調整剤が熱分解してしまう結果、その塗装膜表面上にハジキやブツを生じ、かえって塗装膜表面を乱してしまう。また、プリント基板は、半田付けすべきパターン以外に半田が付かないように、そこへ耐熱性コーティング剤であるソルダーレジストインキが、塗布されている。従来の表面調整剤がソルダーレジストインキに添加されていても、その半田付け時に、表面調整剤が熱分解してしまう結果、折角のソルダーレジストの機能が、阻害されてしまう。
【0006】
表面調整剤がコーティング剤の表面調整効果を十分に発現するためには、表面調整剤の有効成分分子が塗料表面に十分配向できるように、その分子の極性をコーティング剤中の塗料樹脂の極性よりも適度に低くしなければならない。塗料樹脂と表面調整剤との極性が同程度である所為で互いに完全に相溶してしまう場合、表面調整剤の有効成分分子が表面に僅かしか露出しないため、十分な表面調整効果が得られない。逆に、表面調整剤の極性が塗料樹脂よりも低すぎる場合には、表面調整剤の有効成分分子がコーティング剤内で凝集する結果、表面調整作用が不十分となってしまうばかりか、塗膜外観が損なわれてしまう。
【0007】
【特許文献1】特開平09−255754号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、簡易な組成でコーティング剤に添加されて優れた表面調整効果を発現させ、そのコーティング剤で形成される塗装膜に色分かれ、残泡、レベリング不良、濡れ不良を生じさせず、その塗装膜へ十分な上塗り特性を付与することができる耐熱性のコーティング剤用表面調整剤、及びそれを含有するコーティング剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するためになされた、特許請求の範囲の請求項1に記載されたコーティング剤用表面調整剤は、下記化学式(1)
CH=C(R)−CO−O−R−R ・・・(1)
(式(1)中、Rは水素原子又はメチル基、Rは−(CH−で示されnを0〜4とする基、Rは炭素数1〜12のパーフルオロアルキル基)で表されるフッ素置換アルキル(メタ)アクリレートモノマー(A)の10〜80重量部と、N−ビニルアミドモノマー、N−ビニルイミドモノマー、N−ビニルカルバメートモノマー及び(メタ)アクリルアミドモノマーから選ばれる少なくとも1種類の窒素含有不飽和モノマー(B)の20〜90重量部とが共重合しており、それの重量平均分子量が3000〜100000である共重合物を、含有していることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載のコーティング剤用表面調整剤は、請求項1に記載されたもので、該共重合物が、昇温されてそれの重量の10%を減量したときの温度を、280〜400℃とするものであることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載のコーティング剤用表面調整剤は、請求項1に記載されたもので、該共重合物が、その溶解性パラメーター値を8.0〜12.0とするものであることを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載のコーティング剤用表面調整剤は、請求項1に記載されたもので、該共重合物が、該フッ素置換アルキル(メタ)アクリレートモノマー(A)と、該窒素含有不飽和モノマー(B)と、スチレン、直鎖状又は環状の炭素数1〜12のアルキルビニルエーテル、及び直鎖状又は環状の炭素数1〜12のアルキル(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種類の窒素不含有不飽和モノマー(C)との共重合物であることを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の基材湿潤剤は、請求項1に記載のコーティング剤用表面調整剤からなることを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載のレベリング剤は、請求項1に記載のコーティング剤用表面調整剤からなることを特徴とする。
【0015】
請求項7に記載のコーティング剤は、請求項1に記載のコーティング剤用表面調整剤と、コーティング成分とが、含まれていることを特徴とする。
【0016】
請求項8に記載の塗装膜は、請求項7のコーティング剤が塗装されて硬化していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明のコーティング剤用表面調整剤は、水系、非水系の何れのコーティング剤にも添加されるもので、常温程度の低温から、250℃程度の焼付け温度や300〜400℃程度の半田付け温度のような高温までの広範な温度域で、優れた表面調整効果を発現させることができる。しかも高温特に焼付け温度や半田付け温度に曝されても分解しないので、耐熱性に優れている。
【0018】
この耐熱性のコーティング剤用表面調整剤は、プレコートメタル用塗料に添加した後、その塗料で塗装した塗装膜を高温で焼付ける場合や、半田付けしない部位を保護するソルダーレジストインキに添加した後、そのインキで塗装したインキ膜以外の部位を高温で半田付けする場合に、それらの外観や機能を阻害しない。
【0019】
このコーティング剤用表面調整剤は、コーティング剤を塗装して得られる塗装膜の表面張力を、低温から高温までの幅広い温度域で、適度に調整し、塗装膜の平滑性を向上させるのに有効である。その結果、塗装膜に、色分かれ、残泡、レベリング不良、濡れ不良を生じさせない。
【0020】
このコーティング剤用表面調整剤は、基材をコーティングする際にコーティング剤の濡れ性を向上させ、ハジキやピンホールを形成させない基材湿潤剤、又はその被膜の露出表面を平滑にしつつ均一な膜厚にしてムラやヘコやオレンジピールを形成させないレベリング剤としても、有用である。
【0021】
本発明のコーティング剤は、それに含まれている表面調整剤のために、撹拌したり塗布したりしたときの所謂、動的表面張力と、塗布後に静置したときの所謂、静的表面張力とが、減少したものとなっている。そのためこの表面調整剤を含んでいるコーティング剤によれば、優れた平滑性と、優れた上塗り特性とを有する塗装膜を得ることができる。
【0022】
本発明の塗装膜は、綺麗で平滑な仕上がりとなっている。そのうえ、それに上塗りする際にもむらにならず、塗装膜と上塗り層とが確りと密着して付されているので、いずれも剥がれ落ちず美的であって耐久性に優れている。
【発明を実施するための好ましい形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための好ましい形態について、詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態に限定されるものではない。
【0024】
本発明のコーティング剤用表面調整剤は、フッ素含有(メタ)アクリレートモノマー(A)と窒素含有不飽和モノマー(B)とのフッ素含有(メタ)アクリル系共重合物を、有効成分として含有したものである。
【0025】
この共重合物は、フッ素含有(メタ)アクリレートモノマー(A)の10〜80重量部と、窒素含有不飽和モノマー(B)の20〜90重量部とを、ラジカル重合開始剤存在下、溶媒中に滴下し、加熱してランダム重合させることによって、得られるものである。
【0026】
この共重合物は、モノマー(A)と、モノマー(B)とを、その順で、又は任意の順で、ブロック共重合開始剤存在下、別々に溶媒中に滴下し、加熱してブロック共重合させることによって、生成させてもよい。
【0027】
共重合物の重量平均分子量は、3000〜100000であると好ましい。その重量平均分子量が3000未満の場合、塗装膜の物性を低下させてしまう恐れがある。一方、その重量平均分子量が100000を超える場合、コーティング剤の粘度が高くなりすぎるために、取り扱い難くなってしまう。3000〜50000であると、なお一層好ましい。
【0028】
共重合物の耐熱性の指標として、共重合物が昇温されてそれの重量の10%を減量したときの加熱温度、即ち10%減量加熱温度が、280〜400℃であることが好ましい。具体的には10%減量加熱温度は、熱重量分析(TG)により、窒素雰囲気下、室温から10℃/分の昇温速度で試料である共重合体を加熱した時、試料重量が分解したり昇華したりして10%減少した時の温度を測定したものである。その10%減量加熱温度が280℃未満であると、プレコートメタル用塗料のような高温焼き付け塗料へコーティング剤用表面調整剤を添加し、それを基材に塗布して250℃前後で焼付けが施された場合や、ソルダーレジストインキへコーティング剤用表面調整剤を添加し、それをプリント基板に塗布して300〜500℃前後、好ましくは300〜400℃で半田付けが施された場合に、共重合物が熱分解を起こし、その分解物が塗膜やレジストの機能に悪影響を及ぼすために好ましくない。
【0029】
このような表面調整剤中の有効成分である共重合物の極性を表す方法として、溶解性パラメーター(SP値)が用いられる。SP値は分子構造から推算でき、いろいろな算出方法が提案されている。この中で、Fedorsの理論SP値は、共重合物の密度パラメーターが不要なため比較的簡単に求められることからよく用いられている。
【0030】
共重合物は、Fedors法による溶解性パラメーター値(SP値)が8.0〜12.0、好ましくは8.5〜9.5の範囲で好適である。
【0031】
Fedorsの理論SP値は、以下の式(1)から求められる。
【0032】
【数1】

(式(1)中Δe、Δvは、それぞれの原子又は原子団の蒸発エネルギー及びモル体積を表す。)
【0033】
共重合物のSP値が8.0未満では、溶媒への溶解性が悪くなる所為で、重合反応において共重合物が析出し生成が困難となる場合や、生成できたとしても溶解性が悪すぎるために共重合物が凝集し塗装膜の外観を損ねる恐れがある。一方12.0を超える共重合物を用いて形成された塗装膜では、塗液との相溶性が良すぎ、その表面に共重合物が配向しない為、十分な表面調整効果を得ることができない。
【0034】
フッ素置換アルキル(メタ)アクリレートモノマー(A)は、例えば下記化学式(1)
CH=C(R)−CO−O−R−R ・・・(1)
(式(1)中、Rは水素原子又はメチル基、Rは−(CH−で示されnを0〜4とする基、Rは炭素数1〜12で直鎖状、分岐鎖状、又は脂環状のパーフルオロアルキル基)で表されるフッ素含有アクリレート又はフッ素含有メタクリレートであり、より具体的には、トリフルオロメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロエチル(メタ)アクリレート、n−又はiso−パーフルオロプロピル(メタ)アクリレート、n−、iso−、sec−、又はtert−パーフルオロブチル(メタ)アクリレート、n−、tert−又はsec−パーフルオロアミル(メタ)アクリレート、パーフルオロネオペンチル(メタ)アクリレート、パーフルオロヘキシル(メタ)アクリレート、パーフルオロヘプチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロエチルヘキシル(メタ)アクリレート、パーフルオロノニル(メタ)アクリレート、n−又はiso−パーフルオロデシル(メタ)アクリレート、パーフルオロウンデシル(メタ)アクリレート、パーフルオロドデシル(メタ)アクリレート、トリフルオロメチルメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロエチルメチル(メタ)アクリレート、n−又はiso−パーフルオロプロピルメチル(メタ)アクリレート、n−、iso−、sec−、又はtert−パーフルオロブチルメチル(メタ)アクリレート、n−、tert−又はsec−パーフルオロアミルメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロネオペンチルメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロヘプチルメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルメチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロエチルヘキシルメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロノニルメチル(メタ)アクリレート、n−又はiso−パーフルオロデシルメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロウンデシルメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロドデシルメチル(メタ)アクリレート、トリフルオロメチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロエチルエチル(メタ)アクリレート、n−又はiso−パーフルオロプロピルエチル(メタ)アクリレート、n−、iso−、sec−、又はtert−パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、n−、tert−又はsec−パーフルオロアミルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロネオペンチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロヘプチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロエチルヘキシルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロノニルエチル(メタ)アクリレート、n−又はiso−パーフルオロデシルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロウンデシルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロドデシルエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロメチルプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロエチルプロピル(メタ)アクリレート、n−又はiso−パーフルオロプロピルプロピル(メタ)アクリレート、n−、iso−、sec−、又はtert−パーフルオロブチルプロピル(メタ)アクリレート、n−、tert−又はsec−パーフルオロアミルプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロネオペンチルプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロヘプチルプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルプロピル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロエチルヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロノニルプロピル(メタ)アクリレート、n−又はiso−パーフルオロデシルプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロウンデシルプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロドデシルプロピル(メタ)アクリレート、トリフルオロメチルブチル(メタ)アクリレート、パーフルオロエチルブチル(メタ)アクリレート、n−又はiso−パーフルオロプロピルブチル(メタ)アクリレート、n−、iso−、sec−、又はtert−パーフルオロブチルブチル(メタ)アクリレート、n−、tert−又はsec−パーフルオロアミルブチル(メタ)アクリレート、パーフルオロネオペンチルブチル(メタ)アクリレート、パーフルオロヘキシルブチル(メタ)アクリレート、パーフルオロヘプチルブチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルブチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロエチルヘキシルブチル(メタ)アクリレート、パーフルオロノニルブチル(メタ)アクリレート、n−又はiso−パーフルオロデシルブチル(メタ)アクリレート、パーフルオロウンデシルブチル(メタ)アクリレート、パーフルオロドデシルブチル(メタ)アクリレート、が挙げられる。フッ素置換アルキル(メタ)アクリレートモノマー(A)は、これらを単独で用いてもよく、複数組み合わせて用いてもよい。−Rは、炭素数1〜12、中でも炭素数4〜8であると特に好ましい。そのパーフルオロ基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。
【0035】
の炭素数が12を超えるパーフルオロアルキル基を有するフッ素含有(メタ)アクリレート(A)を用いた共重合物を含む表面調整剤を、紫外線硬化成分を含有する極性の高い被膜形成性コーティング剤に添加したとき、静的な表面張力を大きく低下させるため湿潤効果は高い。しかし、コーティング剤への相溶性が悪いため、表面調整剤が凝集を起こす結果、得られる塗装膜は、その表面が乱れ、また濁りを生じ外観が損なわれたものとなってしまう。さらに、Rの炭素数が12を超えるパーフルオロアルキル基を有するフッ素含有(メタ)アクリレートでは、その凝集力が強いために、不活性溶媒に溶解せず、生成が困難となる場合がある。
【0036】
また、フッ素置換アルキル(メタ)アクリレートモノマー(A)は、10〜80重量部用いられると好ましい。30〜60重量部であるとさらに好ましい。このモノマー(A)が10重量部未満である共重合物を用いて形成された塗装膜では、その表面での共重合物の配向力が小さい所為で、十分な表面調整効果を得ることができない。モノマー(A)が80重量部を超えると、溶媒への溶解性が悪くなる所為で、共重合物の生成が困難となってしまう。
【0037】
窒素含有不飽和モノマー(B)は、例えば、N−ビニルホルムアミド、N−ビニル−N−メチルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクトンのようなN−ビニルアミドモノマー、
N−ビニルオキサゾリドン、5−メチル−N−ビニルオキサゾリドンのようなN−ビニルカルバメート化合物、N−ビニルサクシンイミド、N−ビニルフタルイミドのようなN−ビニルイミドモノマー、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、アクリロイルモルフォリンのような(メタ)アクリルアミドモノマーが挙げられる。窒素含有不飽和モノマー(B)は、これらを単独で用いてもよく、複数組み合わせて用いてもよい。中でもアクリロイルモルフォリンであると、なお一層好ましい。
【0038】
また、窒素含有不飽和モノマー(B)は、20〜90重量部用いられると好ましい。このモノマー(B)が20重量部未満であると、モノマー(B)自体の溶媒への溶解性が悪くなる所為で、共重合物の生成が困難となってしまう。一方、モノマー(B)が90重量部を超える共重合物を用いて形成された塗装膜は、塗装膜表面への共重合物の配向力が小さくなり、その結果、所望の表面調整効果が得られないものとなってしまう。
【0039】
コーティング剤用表面調整剤は、フッ素含有(メタ)アクリレート(A)及び窒素含有不飽和モノマー(B)からなる共重合物を有効成分とする例を示したが、表面調整効果を阻害しない限り、これらモノマー(A)及び(B)と、さらに別なモノマー例えば窒素不含有不飽和モノマー(C)とが共重合した共重合物を含むものであってもよい。窒素不含有不飽和モノマー(C)として、スチレン、直鎖でも環状でもよい炭素数1〜12のアルキルビニルエーテル、又は直鎖でも環状でもよい炭素数1〜12のアルキル(メタ)アクリレートやテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートが挙げられる。窒素不含有不飽和モノマー(C)は、モノマー(A)及び(B)の合計100重量部に対して、1〜40重量部であると好ましく、1〜5重量部であるとさらに好ましい。
【0040】
共重合物を調製するのに用いられるラジカル重合開始剤は、一般にラジカル重合に用いられる開始剤であれば、特に限定されないが、例えば、過酸化物、アゾ化合物等を使用することができ、より具体的には、パーブチルD(日油(株)の商品名)、パーブチルO(日油(株)の商品名)、パーオクタO(日油(株)の商品名)が挙げられる。
【0041】
また、ブロック共重合開始剤は、例えば、2段分解型2官能開始剤が挙げられ、より具体的には、1,1−ビス−(tert−ブチルペルオキシ)−2−メチルシクロヘキサンが挙げられる。
【0042】
コーティング剤用表面調整剤は、この共重合物のみからなっていてもよく、必要に応じて添加剤を含有していてもよく、共重合物を不活性溶媒で溶解又は懸濁させたものであってもよい。
【0043】
不活性溶媒は、共重合物を溶解又は懸濁させることができるのもので、コーティング剤に混和できるものであると好ましい。具体的にはキシレン、トルエン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶剤;シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、カルビトール、ブチルカルビトール、ジエチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル系溶剤;酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸n−アミル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等のエステル系溶剤;n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、シクロヘキサノール、2−エチルヘキサノール、3−メチル−3−メトキシブタノール等のアルコール系溶剤が挙げられる。これらの溶剤を、単独で使用してもよく、複数種混合して使用してもよい。
【0044】
コーティング剤用表面調整剤は、水系コーティング剤、非水系コーティング剤の何れかに、基材湿潤剤、レベリング剤として、添加されてもよい。
【0045】
本発明のコーティング剤は、コーティング剤用表面調製剤と、コーティング剤成分とを、含有するものである。
【0046】
コーティング剤は、一般的なコーティング剤の調製に用いられる成分を、予め混合しておき、さらにコーティング剤用表面調製剤を添加し、混合して調製される。それらを同時に、又は任意の順で混合してもよい。
【0047】
コーティング剤中、コーティング剤用表面調整剤は、コーティング剤全量に対する固形分換算値で、0.01〜2.0重量%、好ましくは0.1〜1.0重量%となる程度、添加される。
【0048】
表面調整剤以外のコーティング剤調製成分は、特に限定されないが、例えば顔料・染料のような着色剤、樹脂、希釈溶媒、触媒、界面活性剤、レオロジーコントロール剤やハジキ防止剤などの機能付与性添加剤が挙げられる。
【0049】
樹脂は、アクリル系、ポリエステル系、ウレタン系、アルキッド系、エポキシ系、アミノ系等の樹脂が挙げられる。その樹脂は、例えば、加熱硬化型、UV(紫外線)硬化型、EB(電子線)硬化型、酸化硬化型、光カチオン硬化型、過酸化物硬化型、酸/エポキシ硬化型のような硬化方法で、それの触媒存在下、又は触媒非存在下で、硬化するものである。
【0050】
希釈溶剤は、一般的に用いられる有機溶剤であれば、特に限定されないが、例えば、キシレン、トルエン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶剤;シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、カルビトール、ブチルカルビトール、ジエチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル系溶剤;酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸n−アミル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等のエステル系溶剤;n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、シクロヘキサノール、2−エチルヘキサノール、3−メチル−3−メトキシブタノール等のアルコール系溶剤が挙げられる。これらの溶剤は、単独で使用されてもよく、混合して使用されてもよく、さらに水を混合して使用されてもよい。
【0051】
コーティング剤は、上記成分の他に、任意成分である各種機能付与性添加剤、例えば増感剤、帯電防止剤、消泡剤、分散剤、粘度調整剤等が、必要に応じ適量添加されたものであってもよい。
【0052】
本発明の塗装膜は、このコーティング剤を基材上に塗装した被膜が、硬化されたものである。
【0053】
基材は、特に限定されないが、プラスチック、ゴム、紙、木材、ガラス、金属、石材、セメント材、モルタル材、セラミックスなどの素材で形成されたもので、家電製品や自動車の外装材、日用品、建材が挙げられる。
【0054】
コーティング剤を塗装するには、例えば、スピンコート、スリットコート、スプレーコート、ディップコート、バーコート、ドクターブレード、ロールコート、フローコートなどの公知の方法により行うことが好ましい。
【0055】
このような塗装膜は、色分かれ、残泡、レベリング不良、濡れ不良を生じず、含浸性にも優れ、ムラ、ハジキ、ピンホールを形成しておらず、平滑で綺麗な仕上がりとなるうえ、上塗り特性にも優れる効果を奏する。このメカニズムは、必ずしも明らかでないが、以下の通りであると推察される。
【0056】
コーティング剤用表面調整剤中の共重合物が、フッ素置換アルキル基含有(メタ)アクリレートモノマー(A)と、窒素含有不飽和モノマー(B)と、必要に応じて窒素不含有不飽和モノマー(C)との共重合物であることに起因して、その表面調整剤を含んでいるコーティング剤は、表面調整剤により、それを撹拌したり塗布したりした後に静置する際に、表面張力が平衡に達するまでの時間を調整されるという特長を有する。
【0057】
コーティング剤を撹拌したり塗布したりしたとき、即ち新たな界面が流動的に次々と現れるときのその界面での動的な表面張力は、界面での共重合物分子の表面配向が制御されて整然と配列し広がって露出することとなる結果、小さくなっている。コーティング剤を塗布した後に静置すると、既に形成された界面での経時的に平衡に達したときの静的な表面張力も、小さくなっている。
【0058】
さらに、コーティング剤用表面調整剤中の共重合物が、塗布後の界面で、そのアルキル基同士や極性基同士の立体的・静電気的な反発を避けるように共重合物の主鎖の結合軸を回転し、また、フッ素置換アルキル基同士が互いにvan der Waals力により相互作用して寄付け合い整然と密な配列を形成した共重合物となっている。それを含む塗液であるコーティング剤は、フッ素置換アルキル基が液表面から密に整然と露出するから、その表面張力を極めて低下させ、消泡作用等を一層強くさせる。しかも、塗液から溶媒を揮発させたり硬化させたりして塗膜を形成させたとき、結合軸の自由な回転により、フッ素置換アルキル基が潜りこみ代わりに膜表面から親水性基が密に露出するといういわゆるフリップ−フロップ現象を起こす結果、撥水撥油性が発現せず、親水性物質への湿潤性が向上するので撥水痕を残さず耐汚染性に優れ、さらに上塗り適性も一層優れたものとなる。
【実施例】
【0059】
以下に、本発明を適用するコーティング剤用表面調整剤、それを基材湿潤剤又はレベリング剤として含有するコーティング剤、及びそれの塗装膜の実施例について、詳細に説明する。
【0060】
本発明を適用するコーティング剤用表面調整剤と、その表面調整剤を含有する非水系又は水系コーティング剤と、それを用いた塗装膜との調製例を、実施例1〜8に示す。また本発明を適用外のコーティング剤用表面調整剤と、その表面調整剤を含有する非水系又は水系コーティング剤と、それを用いた塗装膜との調製例を、比較例1〜9に示す。
【0061】
(実施例1)
還流冷却器、温度計、攪拌機及び滴下槽を備えた容器にキシレン150重量部を入れて、液温を110℃に保温した。窒素雰囲気下で、パーフルオロオクチルエチルメタクリレートであるライトエステルFM−108(共栄社化学(株)製の商品名)30重量部、アクリロイルモルフォリン50重量部、2−エチルヘキシルアクリレート20重量部、パーオクタO(日油(株)製の商品名)5重量部の混合溶液を約1時間かけてキシレンに滴下した。110℃で2時間反応させ、表面調整剤として、フッ素含有(メタ)アクリル系共重合物液を得た。Fedors法により求めた理論SP値は、9.5であった。得られたフッ素含有(メタ)アクリル系共重合物液について重量平均分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフ法によりポリスチレン換算した値で求めたところ、14000であった。また、得られたフッ素含有(メタ)アクリル系共重合物液を105℃で3時間かけ溶剤を乾燥させ、得られた加熱残分を熱重量分析(TG)により、10%減量加熱温度を求めたところ、308℃であった。
【0062】
次に、まず以下のようにしてコーティング剤の主剤を調製した。不揮発成分60%であるポリエステル樹脂のソルベッソ100−MIBK溶液のアルマテックスP646(三井化学(株)製の商品名)49.28g、酸化チタンとしてCR−95(石原産業(株)製の商品名)31.22g、シンナー(シクロヘキサノン)7.20g、及び直径1.5〜2.0mmのガラスビーズ200gを450mlのガラス瓶に加え、ペイントシェーカーにより1時間攪拌した。ガラスビーズを瀘別し、コーティング剤の主剤を調製した。
【0063】
得られたコーティング剤の主剤87.7gに、前記フッ素含有(メタ)アクリル系共重合物液を固形分換算で0.5重量%加え、ラボディスパーを用いて1400rpmで2分間混合した。これに対してn−ブチル化メラミン樹脂であるユーバン20SE60(三井化学(株)製の商品名)12.3gを加え、ラボディスパーを用いて1400rpmで1分間混合し非水系コーティング剤を調製した。
【0064】
その後、アルミ板にバーコーター#22を使用してコーティング剤を塗装し、260℃で60秒焼き付けを行うことにより硬化塗装膜を得た。
【0065】
(実施例2)
還流冷却器、温度計、攪拌機及び滴下槽を備えた容器にキシレン150重量部を入れて、液温を110℃に保温した。窒素雰囲気下で、ライトエステルFM−108(共栄社化学(株)製の商品名)40重量部、N−ビニルピロリドン45重量部、n−ブチルアクリレート15重量部、パーオクタO(日油(株)製の商品名)2重量部の混合溶液を約1時間かけてキシレンに滴下した。110℃で2時間反応させ、フッ素含有(メタ)アクリル系共重合物液を得た。Fedors法により求めた理論SP値は、9.5であった。得られたフッ素含有(メタ)アクリル系共重合物液について重量平均分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフ法によりポリスチレン換算した値で求めたところ、22000であった。また、得られたフッ素含有(メタ)アクリル系共重合物液を105℃で3時間かけ溶剤を乾燥させ、得られた加熱残分を熱重量分析(TG)により、10%減量加熱温度を求めたところ、318℃であった。
【0066】
次いで、実施例1の共重合物液に代えてこの共重合物液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、非水系コーティング剤を調製し、硬化塗装膜を得た。
【0067】
(実施例3)
還流冷却器、温度計、攪拌機及び滴下槽を備えた容器にキシレン150重量部を入れて、液温を110℃に保温した。窒素雰囲気下で、2−(パーフルオロブチル)エチルメタクリレート50重量部、アクリロイルモルフォリン50重量部、パーオクタO(日油(株)製の商品名)1重量部の混合溶液を約1時間かけてキシレンに滴下した。110℃で2時間反応させ、フッ素含有(メタ)アクリル系共重合物液を得た。Fedors法により求めた理論SP値は、9.4であった。得られたフッ素含有(メタ)アクリル系共重合物液について重量平均分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフ法によりポリスチレン換算した値で求めたところ、33000であった。また、得られたフッ素含有(メタ)アクリル系共重合物液を105℃で3時間かけ溶剤を乾燥させ、得られた加熱残分を熱重量分析(TG)により、10%減量加熱温度を求めたところ、315℃であった。
【0068】
次いで、実施例1の共重合物液に代えてこの共重合物液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、非水系コーティング剤を調製し、硬化塗装膜を得た。
【0069】
(実施例4)
還流冷却器、温度計、攪拌機及び滴下槽を備えた容器にキシレン150重量部を入れて、液温を110℃に保温した。窒素雰囲気下で、2−(パーフルオロブチル)エチルメタクリレート60重量部、アクリロイルモルフォリン37.5重量部、n−ブチルアクリレート2.5重量部、パーオクタO(日油(株)製の商品名)2重量部の混合溶液を約1時間かけてキシレンに滴下した。110℃で2時間反応させ、フッ素含有(メタ)アクリル系共重合物液を得た。Fedors法により求めた理論SP値は、9.1であった。得られたフッ素含有(メタ)アクリル系共重合物液について重量平均分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフ法によりポリスチレン換算した値で求めたところ、18000であった。また、得られたフッ素含有(メタ)アクリル系共重合物液を105℃で3時間かけ溶剤を乾燥させ、得られた加熱残分を熱重量分析(TG)を用いて10%減量加熱温度を求めたところ、304℃であった。
【0070】
次いで、実施例1の共重合物液に代えてこの共重合物液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、非水系コーティング剤を調製し、硬化塗装膜を得た。
【0071】
(実施例5)
還流冷却器、温度計、攪拌機及び滴下槽を備えた容器にMIBK150重量部を入れて、液温を110℃に保温した。窒素雰囲気下で、ライトエステルFM−108(共栄社化学(株)製の商品名)50重量部、N−ビニルピロリドン45重量部、イソブチルアクリレート5重量部、パーオクタO(日油(株)製の商品名)1重量部の混合溶液を約1時間かけてMIBKに滴下した。110℃で2時間反応させ、フッ素含有(メタ)アクリル系共重合物液を得た。Fedors法により求めた理論SP値は、9.3であった。得られたフッ素含有(メタ)アクリル系共重合物液について重量平均分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフ法によりポリスチレン換算した値で求めたところ、29000であった。また、得られたフッ素含有(メタ)アクリル系共重合物液を105℃で3時間かけ溶剤を乾燥させ、得られた加熱残分を熱重量分析(TG)を用いて10%減量加熱温度を求めたところ、313℃であった。
【0072】
次いで、ウレタンアクリレートUA−306H(共栄社化学(株)製の商品名)16重量部、n−ブチルアクリレート4重量部、光重合開始剤イルガキュア184(チバ・ジャパン(株)製の商品名)0.6重量部、希釈溶剤としてトルエンを79.4重量部に前記フッ素含有(メタ)アクリル共重合物液を固形分で0.5重量%加え、ラボディスパーを用いて1000rpmで2分間混合し、UV硬化型コーティング剤を調製した。
【0073】
その後、口径1.0mmで吐出圧3.5kg/cmのエアスプレーにより、温度25℃、湿度70%の条件下で試験紙にコーティング剤を塗装し、60℃で10分間乾燥させた後、80W高圧水銀灯活性エネルギー照射装置(日本電池製(株)製)を用いて600mJ/cm2の活性エネルギーを試験体との距離10cmで照射し、硬化塗装膜を得た。
【0074】
(実施例6)
還流冷却器、温度計、攪拌機及び滴下槽を備えた容器にMIBK150重量部を入れて、液温を110℃に保温した。窒素雰囲気下で、2−(パーフルオロブチル)エチルアクリレート70重量部、N,N−ジメチルアクリルアミド20重量部、スチレン10重量部、パーオクタO(日油(株)製の商品名)1重量部の混合溶液を約1時間かけてMIBKに滴下した。110℃で2時間反応させ、フッ素含有(メタ)アクリル系共重合物液を得た。Fedors法により求めた理論SP値は、8.5であった。得られたフッ素含有(メタ)アクリル系共重合物液について重量平均分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフ法によりポリスチレン換算した値で求めたところ、30000であった。また、得られたフッ素含有(メタ)アクリル系共重合物液を105℃で3時間かけ溶剤を乾燥させ、得られた加熱残分を熱重量分析(TG)により、10%減量加熱温度を求めたところ、301℃であった。
【0075】
次いで、実施例5の共重合物液に代えてこの共重合物液を用いたこと以外は、実施例5と同様にして、UV硬化型コーティング剤を調製し、硬化塗装膜を得た。
【0076】
(比較例1)
還流冷却器、温度計、攪拌機及び滴下槽を備えた容器にキシレン150重量部を入れて、液温を110℃に保温した。窒素雰囲気下で、ライトエステルFM−108(共栄社化学(株)製の商品名)5重量部、アクリロイルモルフォリン50重量部、2−エチルヘキシルアクリレート45重量部、パーオクタO(日油(株)製の商品名)2重量部の混合溶液を約1時間かけてキシレンに滴下した。110℃で2時間反応させ、共重合物液を得た。Fedors法により求めた理論SP値は、9.7であった。得られた共重合物液について重量平均分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフ法によりポリスチレン換算した値で求めたところ、20000であった。また、得られたフッ素含有(メタ)アクリル系共重合物液を105℃で3時間かけ溶剤を乾燥させ、得られた加熱残分を熱重量分析(TG)により、10%減量加熱温度を求めたところ、305℃であった。
【0077】
次いで、実施例1の共重合物液に代えてこの共重合物液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、非水系コーティング剤を調製し、硬化塗装膜を得た。
【0078】
(比較例2)
還流冷却器、温度計、攪拌機及び滴下槽を備えた装置にキシレン150重量部を入れて、液温を110℃に保温した。窒素雰囲気下で、アクリルモルフォリン50重量部、2−エチルヘキシルアクリレート50重量部、パーオクタO(日油(株)製の商品名)1重量部の混合溶液を約1時間かけてキシレンに滴下した。110℃で2時間反応させ、共重合物液を得た。Fedors法により求めた理論SP値は、9.8であった。得られた共重合物液について重量平均分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフ法によりポリスチレン換算した値で求めたところ、31000であった。また、得られたフッ素含有(メタ)アクリル系共重合物液を105℃で3時間かけ溶剤を乾燥させ、得られた加熱残分を熱重量分析(TG)により、10%減量加熱温度を求めたところ、312℃であった。
【0079】
(比較例3)
還流冷却器、温度計、攪拌機及び滴下槽を備えた容器にキシレン150重量部を入れて、液温を110℃に保温した。窒素雰囲気下で、2−(パーフルオロブチル)エチルアクリレート60重量部、繰り返し平均数が9であるメトキシポリエチレングリコール(9)モノメタクリレートであるライトエステル130MA(共栄社化学(株)製の商品名)37.5重量部、n−ブチルアクリレート2.5重量部、パーオクタO(日油(株)製の商品名)2重量部の混合溶液を約1時間かけてキシレンに滴下した。110℃で2時間反応させ、共重合物液を得た。Fedors法により求めた理論SP値は、8.8であった。得られた共重合物液について重量平均分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフ法によりポリスチレン換算した値で求めたところ、20000であった。また、得られたフッ素含有(メタ)アクリル系共重合物液を105℃で3時間かけ溶剤を乾燥させ、得られた加熱残分を熱重量分析(TG)により、10%減量加熱温度を求めたところ、235℃であった。
【0080】
次いで、実施例1の共重合物液に代えてこの共重合物液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、非水系コーティング剤を調製し、硬化塗装膜を得た。
【0081】
(比較例4)
還流冷却器、温度計、攪拌機及び滴下槽を備えた容器にキシレン150重量部を入れて、液温を110℃に保温した。窒素雰囲気下で、2−(パーフルオロブチル)エチルメタクリレート60重量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート37.5重量部、n−ブチルアクリレート2.5重量部、パーオクタO(日油(株)製の商品名)2重量部の混合溶液を約1時間かけてキシレンに滴下した。110℃で2時間反応させ、共重合物液を得た。Fedors法により求めた理論SP値は、11.0であった。得られた共重合物液について重量平均分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフ法によりポリスチレン換算した値で求めたところ、19000であった。また、得られたフッ素含有(メタ)アクリル系共重合物液を105℃で3時間かけ溶剤を乾燥させ、得られた加熱残分を熱重量分析(TG)により、10%減量加熱温度を求めたところ、244℃であった。
【0082】
次いで、実施例1の共重合物液に代えてこの共重合物液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、非水系コーティング剤を調製し、硬化塗装膜を得た。
【0083】
(比較例5)
還流冷却器、温度計、攪拌機及び滴下槽を備えた容器にキシレン150重量部を入れて、液温を110℃に保温した。窒素雰囲気下で、2−(パーフルオロブチル)エチルメタクリレート70重量部、N−ビニルピロリドン20重量部、ステアロキシポリエチレングリコール(9)モノメタクリレートであるブレンマーPSE−400(日油(株)製の商品名)10重量部、パーオクタO(日油(株)製の商品名)2重量部の混合溶液を約1時間かけてキシレンに滴下した。110℃で2時間反応させ、共重合物液を得た。Fedors法により求めた理論SP値は、8.7であった。得られた共重合物液について重量平均分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフ法によりポリスチレン換算した値で求めたところ、24000であった。また、得られたフッ素含有(メタ)アクリル系共重合物液を105℃で3時間かけ溶剤を乾燥させ、得られた加熱残分を熱重量分析(TG)により、10%減量加熱温度を求めたところ、247℃であった。
【0084】
次いで、実施例1の共重合物液に代えてこの共重合物液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、非水系コーティング剤を調製し、硬化塗装膜を得た。
【0085】
(比較例6)
還流冷却器、温度計、攪拌機及び滴下槽を備えた容器にMIBK150重量部を入れて、液温を110℃に保温した。窒素雰囲気下で、ライトエステルFM−108(共栄社化学(株)製の商品名)50重量部、2−エチルヘキシルアクリレート50重量部、パーオクタO(日油(株)製の商品名)1重量部の混合溶液を約1時間かけてキシレンに滴下した。110℃で2時間反応させ、共重合物液を得た。Fedors法により求めた理論SP値は、8.7であった。得られた共重合物液について重量平均分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフ法によりポリスチレン換算した値で求めたところ、32000であった。また、得られたフッ素含有(メタ)アクリル系共重合物液を105℃で3時間かけ溶剤を乾燥させ、得られた加熱残分を熱重量分析(TG)により、10%減量加熱温度を求めたところ、235℃であった。
【0086】
次いで、実施例1の共重合物液に代えてこの共重合物液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、非水系コーティング剤を調製し、硬化塗装膜を得た。
【0087】
(比較例7)
還流冷却器、温度計、攪拌機及び滴下槽を備えた容器にMIBK150重量部を入れて、液温を110℃に保温した。窒素雰囲気下で、2−(パーフルオロブチル)エチルメタクリレート90重量部、N−ビニルピロリドン10重量部、パーオクタO(日油(株)製の商品名)1重量部の混合溶液を約1時間かけてMIBKに滴下した。110℃で2時間反応させたが、反応途中で生成物がMIBKに不溶となり、フッ素含有(メタ)アクリレートは得られなかった。Fedors法により求めた理論SP値は、8.3であった。
【0088】
実施例1〜6及び比較例1〜6の各コーティング剤の物性を調べるため、塗液の静的表面張力及び動的表面張力、塗装膜の表面張力、平滑性の評価を行った。
【0089】
なお、比較のためブランク試験を行った。共重合物液を全く添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして非水系コーティング剤を調製したブランクA、実施例5と同様にしてUV硬化型コーティング剤を調製したブランクBについても、それぞれ塗液の静的表面張力及び動的表面張力、塗膜の表面張力及び平滑性の評価を行った。
【0090】
(塗液の静的表面張力の測定)
静的表面張力計K100MK2(クルス社製)により25℃にて白金板を用いたウィルヘルミー法にてコーティング剤の静的表面張力を測定した。
【0091】
塗液の静的表面張力は、ブランク試験の測定値を基準とし、3.0mN/m以上の低下の場合を○、1.0〜3.0mN/mの低下の場合を△、1.0mN/m未満の低下の場合を×とする3段階で評価した。その結果を表2に示す。
【0092】
(塗液の動的表面張力の測定)
動的表面張力計BP2(クルス社製)により25℃にて最大泡圧法にてコーティング剤の動的表面張力を測定した。測定結果を図1、2に示す。
【0093】
塗液の動的表面張力は、表面寿命が1000ms以下での表面張力がブランク試験の測定値を基準として、2.5mN/m以上の低下の場合を○、2.5mN/m未満の低下の場合を×とする2段階で評価した。その結果を表2に示す。
【0094】
(塗装膜の表面張力の測定)
塗装膜に標準液(ホルムアミド/エチレングリコールモノエチルエーテル)を綿棒を用いて塗布し、2秒間放置した後の状態を観察した。標準液はJIS K−6768:ポリエチレン及びポリプロピレンフィルムの濡れ性試験方法を参考にし、表1に示す換算値を用いた。標準液を塗布して2秒後にもなお標準液塗布時の状態を維持していた場合は、さらに表面張力の高い標準液を用いて同様の操作を繰り返した。一方、標準液を塗布して2秒後に全体的な収縮を生じた場合は、さらに表面張力の低い標準液を用いて同様の操作を繰り返した。これらの操作を繰り返し、塗装膜の表面を2秒間濡らした状態で維持することができる標準液の種類を選定し、その標準液の表面張力を塗装膜の表面張力とした。
【0095】
塗装膜の表面張力は、共重合物液を全く添加しないブランク試験の塗装膜の表面張力以上の場合を○、ブランク試験の塗装膜の表面張力より低い場合を×とする2段階で評価した。その結果を表2に示す。
【0096】
【表1】


【表2】

【0097】
(塗装膜の平滑性の測定)
塗装膜の平滑性を目視及びウェーブスキャン(BYK−Gardner社製)を用いて評価を行った。ウェーブスキャンによる測定方法は、単位面積当たりに一定の量の光源(レーザー)をあて、反射光の分散度を測定し平滑性評価を行うというものである。分散値が高い程、即ち縦軸の数値が高い程、平滑性が悪く、一方、分散値が低い程、平滑性が優れていることを示す。測定結果を図3、4に示す。
【0098】
Wa(走査波長0.1〜0.3mm)の分散値が10以下、Wb(走査波長0.3〜1mm)の分散値が15以下、Wc(走査波長1〜3mm)の分散値が15以下、Wd(走査波長3〜10mm)の分散値が15以下、We(走査波長10〜30mm)の分散値が15以下を合格値とし、合格した波長域の数が5つの場合を○、3〜4の場合を△、0〜2の場合を×とする3段階で評価した。その結果を表3に示す。
【0099】
【表3】

【0100】
表2、3及び図1〜4から明らかなとおり、実施例のコーティング剤は、ブランクと比べ塗液の静的表面張力及び動的表面張力ともに大きく低下しているが、塗膜の表面張力は同等又は上昇させている。それに対して、比較例のコーティング剤は、静的表面張力を大きく低下させるが、動的表面張力をあまり低下させていなかったり、静的、動的ともに表面張力を低下させているが、塗膜の表面張力も大きく低下させていたり、重合物の熱分解によりハジキを生じたり、塗膜に濁りが生じたりして塗装膜外観を乱していた。
【0101】
平滑性に関し、実施例のコーティング剤では、ブランク及び比較例と比べて、全ての波長域において平滑性が優れているという結果が得られた。
【0102】
(水系コーティング剤への適用)
以下、本発明を適用するコーティング剤用表面調整剤を含有する水系コーティング剤を調製した例を実施例7、8に示し、本発明を適用外のコーティング剤用表面調整剤を含有する水系コーティング剤を調製した例を比較例8〜9に示す。
【0103】
(実施例7)
還流冷却器、温度計、攪拌機及び滴下槽を備えた容器にソルフィット((株)クラレ製の商品名)150重量部を入れて、液温を110℃に保温した。窒素雰囲気下で、2−(パーフルオロブチル)エチルメタクリレート30重量部、N,N−ジメチルアクリルアミド60重量部、メチルメタクリレート10重量部、パーオクタO(日油(株)製の商品名)1重量部の混合溶液を約1時間かけてソルフィットに滴下した。110℃で2時間反応させ、フッ素含有(メタ)アクリル系共重合物液を得た。Fedors法により求めた理論SP値は、8.5であった。得られたフッ素含有(メタ)アクリル系共重合物液について重量平均分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフ法によりポリスチレン換算した値で求めたところ、16000であった。また、得られたフッ素含有(メタ)アクリル系共重合物液を105℃で3時間かけ溶剤を乾燥させ、得られた加熱残分を熱重量分析(TG)により、10%減量加熱温度をもとめたところ、305℃であった。
【0104】
次に、ビニル変性アルキド樹脂ウォーターゾールBCD3050(DIC(株)製の商品名)278.1重量部、酸化チタンテイカJR−600A(テイカ(株)製の商品名)300重量部、消泡剤アクアレン832(共栄社化学(株)製の商品名)0.3重量部、イオン交換水30重量部、及び直径1.5〜2.0mmのガラスビーズ300重量部を900mlガラス瓶に加え、ペイントシェーカーにより2時間攪拌し、その後、ウォーターゾールBCD3050(DIC(株)製の商品名)307.2重量部、メラミン樹脂サイメル370N(日本サイテックインダストリーズ(株)製の商品名)68.1重量部、アクアレン832(共栄社化学(株)製の商品名)0.3重量部を加えてレッドダウンしてガラスビーズを濾別した後、フォードカップ#4を用いて20秒/20℃にイオン交換水で希釈してコーティング剤を調製した。
【0105】
このコーティング剤に前記フッ素含有(メタ)アクリル共重合物液を固形分で0.5重量%を加え、1000rpmで5分間混合し、コーティング剤を調製した。
【0106】
口径1.0mmで吐出圧3.5kg/cmのエアスプレーにより、温度25℃、湿度70%の条件下でアルミ板にコーティング剤を塗装し、プレヒートを60℃で10分間行った後、140℃で20分間加熱し、硬化塗装膜を得た。
【0107】
(実施例8)
還流冷却器、温度計、攪拌機及び滴下槽を備えた容器にソルフィット((株)クラレ製の商品名)150重量部を入れて、液温を110℃に保温した。窒素雰囲気下で、トリフルオロエチルメタクリレートであるライトエステルM−3F(共栄社化学(株)製の商品名)65重量部、アクリロイルモルフォリン35重量部、パーオクタO(日油(株)製の商品名)1重量部の混合溶液を約1時間かけてソルフィットに滴下した。110℃で2時間反応させ、フッ素含有(メタ)アクリル系共重合物液を得た。Fedors法により求めた理論SP値は、9.3であった。得られたフッ素含有(メタ)アクリル系共重合物液について重量平均分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフ法によりポリスチレン換算した値で求めたところ、18000であった。また、得られたフッ素含有(メタ)アクリル系共重合物液を105℃で3時間かけ溶剤を乾燥させ、得られた加熱残分を熱重量分析(TG)により、10%減量加熱温度をもとめたところ、308℃であった。
【0108】
次いで、実施例7の共重合物液に代えてこの共重合物液を用いたこと以外は、実施例7と同様にして、水系コーティング剤を調製し、硬化塗装膜を得た。
【0109】
(比較例8)
還流冷却器、温度計、攪拌機及び滴下槽を備えた容器にソルフィット((株)クラレ製の商品名)150重量部を入れて、液温を110℃に保温した。窒素雰囲気下で、2−(パーフルオロブチル)エチルメタクリレート5重量部、アクリロイルモルフォリン95重量部、パーオクタO(日油(株)製の商品名)1重量部の混合溶液を約1時間かけてソルフィットに滴下した。110℃で2時間反応させたが、反応途中で生成物がソルフィットに不溶となり、フッ素含有(メタ)アクリレートは得られなかった。Fedors法により求めた理論SP値は、10.6であった。
【0110】
(比較例9)
還流冷却器、温度計、攪拌機及び滴下槽を備えた容器にソルフィット((株)クラレ製の商品名)150重量部を入れて、液温を110℃に保温した。窒素雰囲気下で、N,N−ジメチルアクリルアミド40重量部、ラウリルメタクリレート60重量部、パーオクタO(日油(株)製の商品名)1重量部の混合溶液を約1時間かけてソルフィットに滴下した。110℃で2時間反応させ、(メタ)アクリル系共重合物液を得た。Fedors法により求めた理論SP値は、8.8であった。得られたフッ素含有(メタ)アクリル系共重合物液について重量平均分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフ法によりポリスチレン換算した値で求めたところ、18000であった。また、得られたフッ素含有(メタ)アクリル系共重合物液を105℃で3時間かけ溶剤を乾燥させ、得られた加熱残分を熱重量分析(TG)により、10%減量加熱温度をもとめたところ、300℃であった。
【0111】
次いで、実施例7の共重合物液に代えてこの共重合物液を用いたこと以外は、実施例7と同様にして、水系コーティング剤を調製し、硬化塗装膜を得た。
【0112】
なお、比較のためブランク試験を行った。共重合物液を全く添加しなかったこと以外は、実施例7と同様にして水系コーティング剤を調製したブランクCについても、それぞれ塗液の静的表面張力及び動的表面張力、塗膜の表面張力及び平滑性の評価を行った。
【0113】
実施例7、8及び比較例9の各水系コーティング剤の物性を調べるため、塗液の静的表面張力及び動的表面張力、塗装膜の表面張力、平滑性の評価を、前記非水系コーティング剤の時と同様の方法で行い、合否の判断基準は以下のように行った。
【0114】
塗液の静的表面張力は、ブランク試験の測定値を基準として、15mN/m以上の低下の場合を○、10〜15mN/mの低下の場合を△、10mN/m未満の低下の場合を×とする3段階で評価した。その結果を表4に示す。
【0115】
塗液の動的表面張力は、表面寿命が1000ms以下での表面張力がブランク試験の測定値を基準として、10mN/m以上の低下の場合を○、10mN/m未満の低下の場合を×とする2段階で評価した。測定結果を図5に、評価の結果を表4に示す。
【0116】
塗装膜の表面張力は、非水系コーティング剤の場合と同様の判断基準で行った。結果を表4に示す。
【0117】
【表4】

【0118】
塗装膜の平滑性に関し、非水系コーティング剤の場合と同様の測定を行なった。測定結果を図6に示す。また、非水系コーティング剤の場合と同様の判断基準で評価を行った。結果を表5に示す。
【0119】
【表5】

【0120】
表4、5及び図5、6から明らかなとおり、実施例のコーティング剤はブランクと比べ塗液の静的表面張力及び動的表面張力ともに大きく低下しているが、塗膜の表面張力は同じもしくは上昇させている。
【0121】
それに対して、比較例のコーティング剤は静的、動的表面張力ともにあまり低下させていない。また、塗装膜の表面張力は、ブランクより低下している。
【0122】
平滑性に関し、実施例のコーティング剤は、ブランク及び比較例と比較して、全ての波長域において平滑性が優れるという結果が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本発明のコーティング剤用表面調整剤は、プラスチック製品を常温で塗装するのに用いる塗料、高温焼き付けを行うプレコートメタルに用いる塗料や、電子基板に保護のために塗布され半田付けに対する耐熱性が必要なソルダーレジストインキなどのコーティング剤に添加して用いられる。また、高速で高シェアのかかるスピンコート、スプレーコート、ディップコート、バーコート、ドクターブレード、ロールコート、フローコートなどに用いられるコーティング剤に添加して用いられる。また、この表面調整剤は、これらのコーティング剤中に、湿潤剤、レベリング剤として、添加される。
【0124】
この表面調整剤が添加されたコーティング剤は、塗装膜を形成するのに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】本発明を適用するコーティング剤と本発明を適用外のコーティング剤とである夫々の非水系塗液の動的表面張力の測定結果を示すグラフである。
【図2】本発明を適用する別なコーティング剤と本発明を適用外のコーティング剤とである夫々の非水系塗液の動的表面張力の測定結果を示すグラフである。
【図3】本発明を適用するコーティング剤と本発明を適用外のコーティング剤とである夫々の非水系塗液を用いて作製した塗装膜の平滑性の測定結果を示すグラフである。
【図4】本発明を適用する別なコーティング剤と本発明を適用外のコーティング剤とである夫々の非水系塗液を用いて作製した塗装膜の平滑性の測定結果を示すグラフである。
【図5】本発明を適用するコーティング剤と本発明を適用外のコーティング剤とである夫々の水系塗液の動的表面張力の測定結果を示すグラフである。
【図6】本発明を適用するコーティング剤と本発明を適用外のコーティング剤とである夫々の水系塗液を用いて作製した塗装膜の平滑性の測定結果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式(1)
CH=C(R)−CO−O−R−R ・・・(1)
(式(1)中、Rは水素原子又はメチル基、Rは−(CH−で示されnを0〜4とする基、Rは炭素数1〜12のパーフルオロアルキル基)で表されるフッ素置換アルキル(メタ)アクリレートモノマー(A)の10〜80重量部と、N−ビニルアミドモノマー、N−ビニルイミドモノマー、N−ビニルカルバメートモノマー及び(メタ)アクリルアミドモノマーから選ばれる少なくとも1種類の窒素含有不飽和モノマー(B)の20〜90重量部とが共重合しており、それの重量平均分子量が3000〜100000である共重合物を、含有していることを特徴とするコーティング剤用表面調整剤。
【請求項2】
該共重合物が、昇温されてそれの重量の10%を減量したときの温度を、280〜400℃とするものであることを特徴とする請求項1に記載のコーティング剤用表面調整剤。
【請求項3】
該共重合物が、その溶解性パラメーター値を8.0〜12.0とするものであることを特徴とする請求項1に記載のコーティング剤用表面調整剤。
【請求項4】
該共重合物が、該フッ素置換アルキル(メタ)アクリレートモノマー(A)と、該窒素含有不飽和モノマー(B)と、スチレン、直鎖状又は環状の炭素数1〜12のアルキルビニルエーテル、及び直鎖状又は環状の炭素数1〜12のアルキル(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種類の窒素不含有不飽和モノマー(C)との共重合物であることを特徴とする請求項1に記載のコーティング剤用表面調整剤。
【請求項5】
請求項1に記載のコーティング剤用表面調整剤からなることを特徴とする基材湿潤剤。
【請求項6】
請求項1に記載のコーティング剤用表面調整剤からなることを特徴とするレベリング剤。
【請求項7】
請求項1に記載のコーティング剤用表面調整剤と、コーティング成分とが、含まれていることを特徴とするコーティング剤。
【請求項8】
請求項7に記載のコーティング剤が塗装されて硬化していることを特徴とする塗装膜。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−132769(P2010−132769A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−309691(P2008−309691)
【出願日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(000162076)共栄社化学株式会社 (67)
【Fターム(参考)】