説明

コーティング剤組成物及び該組成物を用いた高渇水性皮膜

【課題】撥水撥油性及び滑水性に優れ、さらに、それらの性能を長期に持続できる被膜を与えるコーティング組成物を提供する。
【解決手段】下記式(1)で示される含フッ素ケイ素化合物、
【化41】


[式中、Zは分岐を有していてよい、1〜40個のシロキサン単位を有する2価のポリオルガノシロキサン残基、Rは炭素数1〜4のアルキル基またはフェニル基、Xは互いに異なっていてよい加水分解性基、Qは酸素原子及び/又は窒素原子を含んでいてよい炭素数2〜12の2価の連結基、aは2又は3、bは1〜10の整数、yは1〜5の整数であり、Rfは下記式(2)で示される基
−Rf−(Q−W−Q−Rf1− (2)
(式中、Rfはパーフルオロポリエーテル残基、Wは分岐を有していてよく且つシルアルキレン基を有していてよい、1〜40個のシロキサン単位を有するポリオルガノシロキサン残基、及びQは上記と同様の基であり、それぞれ同じでも異なってもよく、qは0〜3の整数である。)]及び
アルコール、エステル、エーテル、ケトン、及びパーフルオロエーテルからなる群より選ばれる少なくとも一種の溶剤、
を含むコーティング剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に自動車、電車、船舶、航空機等の窓ガラス、高層ビルの窓ガラス、衛生陶器等の表面に、撥水撥油性と高滑水性とを与える、コーティング剤組成物及び該組成物を用いた皮膜に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、パーフルオロポリエーテル基含有化合物は、耐薬品性、潤滑性、離型性、撥水撥油性などを有する。その性質を利用して、磁気記録媒体の滑剤、精密機器の防油剤、離型剤、紙・繊維などの撥水撥油防汚剤、化粧料、保護膜など、幅広く利用されている。
【0003】
一方、ガラス、陶器、樹脂フイルムや布などのコーティング剤としてシランカップリング剤が良く知られている。シランカップリング剤は、1分子中に有機官能基と反応性シリル基(一般にはアルコキシシリル基)を有する。アルコキシシリル基は、空気中の水分などによって加水分解し、自己縮合反応をおこしてシロキサンとなり被膜を形成する。それと同時に、ガラスや樹脂などの表面と化学的・物理的に結合することによって、耐久性を有する強固な被膜となる。シランカップリング剤はこの性質を利用して各種基材表面のコーティング剤として幅広く利用されている。
【0004】
撥水性の耐久性を重視した、フルオロアルキル基含有シラン化合物を用いたガラスは、長期に撥水性を保持できるものの、滑水性が悪く、水滴の除去性に問題がある(特許文献1参照)。水滴の除去し易さは、水転落角、即ち、10μリットルの水滴を平面上に置いた後、該平面を徐々に傾け、水滴が滑り落ち始める傾斜角で評価することができる。
【0005】
車両用窓ガラスの用途において、フルオロアルキルトリクロロシランとシラノール末端ジメチルシロキサンの共重合物からなる滑水性コーティングが提案されている(特許文献2)。該初期の撥水性が100度程度であるが、摩耗後には100度以下となり、耐久性に問題がある。
【0006】
また、撥油性を重視した、パーフルオロエーテル基含有シラン化合物(特許文献3)を用いたガラスは、撥水撥油性が良く、油汚れがつきにくく拭き取りやすい。しかし、滑水性の点では十分とは言えず水転落角は10度以上であった。
【0007】
自動車、電車、船舶、航空機、高層ビルの窓ガラス等のガラス表面は、水転落角が低いことがのぞましい。水転落角が低い表面、以下「高滑水性の表面」という場合がある、では、水滴が付着しても、自然に落ちるか、風により容易に水滴が取り除かれ、メンテナンスにかかる時間や回数を短くすることができる。また、表面が撥油性であると、油や虫、動物等の排泄物等が付着しても、容易に拭き取ることができる。また、衛生陶器や流し、台所用品、汚水管等の用途では、汚れが付きにくく、拭き取りやすい性能が求められ、表面を撥水撥油性にすることがのぞましい。
【特許文献1】特開平10−59745号公報
【特許文献2】特開2002−12452公報
【特許文献3】特開2003−238577公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、撥水撥油性及び滑水性に優れ、さらに、それらの性能を長期に持続できる被膜、具体的には、撥水角が100度以上で、撥油角が60度以上で、水転落角が10度未満であり、摩耗によるこれらの性能の低下が小さい被膜、を形成することができるコーティング剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者は、鋭意検討を行った結果、下記式(1)で示されるパーフルオロポリエーテル-ポリシロキサン共重合体変性シランを主成分とする処理剤を用いて、二酸化ケイ素等の無機酸化物が被覆されたフイルムやガラス表面を処理して得られるコーティングは、パーフルオロポリエーテル変性シランが有する撥水撥油性、高耐久性の特徴を保持したまま、シロキサンが有する滑水性を同時に満たすことができることを知見し、本発明をなすに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、下記式(1)で示される含フッ素ケイ素化合物、
【化1】


[式中、Zは分岐を有していてよい、1〜40個のシロキサン単位を有する2価のポリオルガノシロキサン残基、Rは炭素数1〜4のアルキル基またはフェニル基、Xは互いに異なっていてよい加水分解性基、Qは酸素原子及び/又は窒素原子を含んでいてよい炭素数2〜12の2価の連結基、aは2又は3、bは1〜10の整数、yは1〜5の整数であり、Rfは下記式(2)で示される基
−Rf−(Q−W−Q−Rf1− (2)
(式中、Rfはパーフルオロポリエーテル残基、Wは分岐を有していてよく且つシルアルキレン基を有していてよい、1〜40個のシロキサン単位を有するポリオルガノシロキサン残基、及びQは上記と同様の基であり、それぞれ同じでも異なってもよく、qは0〜3の整数である。)]及び
アルコール、エステル、エーテル、ケトン、及びパーフルオロエーテルからなる群より選ばれる少なくとも一種の溶剤、
を含むコーティング剤組成物である。
【発明の効果】
【0011】
本発明のコーティング組成物から得られるコーティングは、水性および油性汚れがつきにくく拭き取りやすいのみならず、含フッ素ケイ素化合物の両末端が基材に強固に密着するため、長期に渡って上記特性を持続できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
下記式(1)で示される含フッ素ケイ素化合物、
【0013】
【化2】

は、加水分解性基Xを含む。従って、該化合物には、Xが加水分解したもの、及び、該加水分解物が互いに縮合した縮合物の形態ものも包含される。
【0014】
式(1)において、Rfは下記平均組成式(2)で示される基である。
−Rf−(Q−W−Q−Rf1− (2)
式中、Rfはパーフルオロポリエーテル残基、Wは分岐を有していてよく且つシルアルキレン基を有していてよい、1〜40個のシロキサン単位を有するポリオルガノシロキサン残基、及びQは上記と同様の基であり、それぞれ同じでも異なってもよく、qは0〜3の整数である。
【0015】
ここで、Rfは直鎖型、分岐型であるかは問わない。該パーフルオロポリエーテル構造としては、−C2jO−(式中、各単位のjは独立に1〜6の整数である。)の繰り返し単位を含むもので、例えば一般式−(Cj2jO)k−で示されるものなどが挙げられる。ここで、kは1〜500、好ましくは2〜400、より好ましくは10〜200の整数である。
【0016】
上記式で示される繰り返し単位−Cj2jO−としては、例えば下記の単位等が挙げられる。なお、上記パーフルオロアルキルエーテル構造は、これらの繰り返し単位の1種単独で構成されていてもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。
−CFO−
−CFCFO−
−CFCFCFO−
−CF(CF)CFO−
−CFCFCFCFO−
−CFCFCFCFCFCFO−
−C(CFO−
【0017】
特に下記単位で示される炭素数1〜4程度のパーフルオロエーテル基を繰返し単位とするパーフルオロポリエーテルである。
−CFO−
−CFCFO−
−CFCFCFO−
−CF(CF)CFO−
【0018】
また、上記式(1)において、2価のパーフルオロエーテル含有基Rfとしては、下記一般式(3)、(4)、(5)で示される基から選ばれるものが好ましい。
【0019】
【化3】


(式中、Yはそれぞれ独立にF又はCF基、rは2〜6の整数、dは1〜3の整数、m、nはそれぞれ0〜200の整数で、m+n=2〜200、sは0〜6の整数である。該一般式中の繰り返し単位の配列はランダムである。)
【0020】
【化4】


(式中、lは1〜200の整数、dは1〜3の整数である。)
【0021】
【化5】


(式中、YはF又はCF基、dは1〜3の整数、m、nはそれぞれ0〜200の整数で、m+n=2〜200である。該一般式中の繰り返し単位の配列はランダムである。)
【0022】
上記化学構造式中の繰り返し単位の合計は、1〜60、より好ましくは10〜50の範囲が好ましい。
【0023】
さらに式(2)において、Rf1が下記一般式(6)で示されるパーフルオロポリエーテル含有基であると、防汚性が良く、耐摩耗性が良い点で好ましい。
−CF(OC(OCFOCF− (6)
(式中、e=0〜50、f=1〜50及びe+f=2〜60の整数である。)
【0024】
式中、Qは酸素及び/又は窒素を含んでいてよい、Rf基とZ基、RfとZ、RfとWとを連結する2価の基であり、アミド、エーテル、エステル、アルキレン結合を含む基などが挙げられる。
【0025】
例えば下記の基があげられる。
【0026】
【化6】

【0027】
【化7】

【0028】
上記式(1)中、Zは分岐を有していてよい、シロキサン単位1〜40個を有する2価のポリオルガノシロキサン残基である。Zを有しない、Zが3価以上である、または、シロキサン単位が40を超えると、水転落角が10度を超える傾向がある。ここで、シロキサン単位には、R3/2SiO1/2(M単位)、RSiO(D単位)、R1/2SiO3/2(T単位)、及びSiO(Q単位)が包含され、但しRは有機基である。
【0029】
Zの例としては下記のものがあげられる。
【0030】
【化8】

【0031】
上記式(2)において、Wは分岐を有していてよく且つシルアルキレン基を有していてよい、シロキサン単位の数が1〜40個のポリオルガノシロキサン残基である。シロキサン単位の数が40を超えると、水転落角が10度を超える傾向がある。該ポリシロキサン残基としては、下記式(7)または(8)で示される基が挙げられる。ここで、Rは同一または異なってもよい炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基である。
【0032】
【化9】


ここで、gは1〜40の整数である。Rは同一または異なってもよい炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基である。
【0033】
【化10】


ここで、yは1〜5の整数、hおよびiは夫々1〜40の整数、但し、h+iは1〜40であり、Rは上記と同じである。
式(7)、(8)で表される残基として、例えば下記のものがあげられる。
【0034】
【化11】

【0035】
【化12】

【0036】
【化13】

【0037】
【化14】

【0038】
【化15】

【0039】
【化16】

【0040】
【化17】

【0041】
【化18】

【0042】
【化19】

【0043】
【化20】

【0044】
【化21】

【0045】
【化22】


ここで、Meはメチル基、Etはエチル基、Phはフェニル基を示す。
【0046】
式(1)中、Xは加水分解性基を表し、末端に1個以上有するがそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。その具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などの炭素数1〜10のアルコキシ基、メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基などの炭素数2〜10のオキシアルコキシ基、アセトキシ基などの炭素数1〜10のアシロキシ基、イソプロペノキシ基などの炭素数2〜10のアルケニルオキシ基、クロル基、ブロモ基、ヨード基などのハロゲン基などが挙げられる。中でもメトキシ基、エトキシ基、イソプロペノキシ基、クロル基が好適である。
【0047】
Rは、炭素数1〜4の低級アルキル基又はフェニル基で、具体的にはメチル基、エチル基、フェニル基などであり、中でもメチル基が好適である。aは2又は3であり、反応性、基材に対する密着性の観点から、3が好ましい。bは1〜10であり、基材への密着性と防汚性能との両立から1〜5が好ましい。
【0048】
本発明のコーティング剤組成物は、溶剤もしくは希釈剤を含む。このような溶剤としては、例えば、アルコール類(エチルアルコール、イソプロピルアルコールなど)、炭化水素系溶剤(石油ベンジン、ミネラルスピリッツ、トルエン、キシレンなど)、エステル系溶剤(酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチルなど)、エーテル系溶剤(ジエチルエーテル、イソプロピルエーテルなど)、ケトン系溶剤(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)が挙げられ、アルコール、エステル、エーテル、ケトン類等の極性溶媒を用いることが好ましく、溶解性、濡れ性、安全性などの点で、特にイソプロピルアルコール、メチルイソブチルケトンが好ましい。フッ素系溶剤も好ましく使用され、その例としては、フッ素化脂肪族炭化水素系溶剤(パーフルオロヘプタン等)、フッ素化芳香族炭化水素系溶剤(m-キシレンヘキサフロライド、ベンゾトリフロライド等)、フッ素化エーテル系溶剤[メチルパーフルオロブチルエーテル、パーフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)、エチルノナフルオロイソブチルエーテル、エチルノナフルオロブチルエーテル等]が挙げられ、中でも、溶解性、濡れ性等の点で、パーフルオロ溶剤が望ましく、特に、パーフルオロエーテル系溶剤が好適に用いられる。
【0049】
なお、上記溶剤は、1種を単独に用いても2種以上を混合するようにしてもよく、いずれにしても上記成分を均一に溶解させるものを用いることが好ましい。
【0050】
溶剤の使用量は特に制限されるものではなく、処理方法により最適濃度は異なるが、該組成物中の固形分量が0.05〜1質量%、特に0.1〜0.3質量%となる量を用いることが好ましい。固形分量は不揮発成分の質量を意味し、組成物が後述する硬化触媒等を含む場合には、式(1)の化合物とそれらの合計質量となる。
【0051】
上記コーティング剤組成物は、必要に応じて硬化触媒を添加することがのぞましい。有機チタン酸エステル、有機チタンキレート化合物、有機アルミニウム化合物、有機ジルコニウム化合物、有機スズ化合物、有機カルボン酸の金属塩、アミン化合物、及びその塩、4級アンモニウム化合物、アルカリ金属の低級脂肪酸塩、ジアルキルヒドロキシアミン、グアジニル基含有有機ケイ素化合物、無機酸、パーフルオロカルボン酸、パーフルオロアルコールなどが挙げられ、好ましくはパーフルオロカルボン酸が使用される。
【0052】
硬化触媒の添加量は触媒量であり、本発明の含フッ素ケイ素化合物及び/又はその部分加水分解縮合物100質量部に対して0.05〜5質量部、特に0.1〜1質量部であることが好ましい。
【0053】
このようにして得られたコーティング剤組成物を基材に施与する方法としては、刷毛塗り、ディッピング、スプレー、蒸着処理など公知の方法がある。
【0054】
また、施与したコーティング剤の処理温度は、施与方法によって最適な温度が異なるが、例えば刷毛塗りやディッピングの場合は、室温から40℃の範囲が望ましい。処理湿度としては、加湿下で行うことが反応を促進する上で望ましい。なお、上記処理条件は、材、硬化触媒等に応じて、適宜最適化することが望ましい。
【0055】
上記コーティング剤で処理される基材は特に制限されないが、基材としては、陶器、ガラス、フィルム等有機物表面上に形成された無機酸化物層、金属酸化物層、ハードコート層、シランカップリング層上など各種材質のものを用いることができる。撥水撥油剤処理用としては紙、布、金属、ガラス、プラスチック、セラミックなどのようなものが挙げられる。
【0056】
上記各種基材あるいは物品表面に形成される硬化被膜の膜厚は、基材の種類により適宜選定されるが、1nm〜50nm、好ましくは3nm〜20nmである。
【0057】
得られる被膜は、撥水撥油性であるだけでなく、高滑水性である。本発明において、滑水性は、後述するように水の転落角により評価した。斯かる特性は、水にさらされる事が多く、メンテナンスが容易でない用途、油脂や指紋、化粧品、日焼け止めクリーム、人や動物の排泄物、油等が付着し易い用途に有効であり、例えば自動車、電車、船舶、航空機等の窓ガラス、高層ビルの窓ガラス、ヘッドランプカバー、アウトドア用品、電話ボックス、屋外用の大型ディスプレイ、浴槽、洗面台のようなサニタリー製品、電気カミソリ、化粧道具、台所用建材、水槽、医療用機器等が挙げられる。
【実施例】
【0058】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0059】
[実施例1〜6]
化合物1〜6を、夫々、HFE−7200(住友3M社製)に溶解させ、0.2wt%溶液を調製し、該溶液に固形分に対して0.2wt%のパーフルオロカルボン酸を添加し、コーティング剤組成物を調製した。スライドガラスを、各組成物に10秒間浸漬後150mm/minの速度で引き上げ、室温(25℃、湿度40%)の雰囲気下で24時間放置し、硬化被膜を形成させた。
【0060】
[比較例1〜5]
化合物7〜11を、夫々、HFE−7200(エチルパーフルオロブチルエーテル、住友3M社製)に溶解させ、0.2wt%溶液を調製し、該溶液に、固形分に対して0.2wt%のパーフルオロカルボン酸を添加し、コーティング剤組成物を調製した。スライドガラスを処理剤に10秒間浸漬後150mm/minの速度で引き上げ、室温(25℃、湿度40%)の雰囲気下で24時間放置し、硬化被膜を形成させた。
【0061】
得られた硬化膜を、下記の試験法により評価した。
[撥水撥油性]
接触角計(協和界面科学社製A3型)を用いて、硬化皮膜の水接触角及びオレイン酸に対する接触角を測定した。
[水転落角]
接触角計(協和界面科学社製A3型)を用いて、硬化皮膜表面の水滴(10μリットル)の転落角を測定した。
【0062】
[摩耗試験]
ラビングテスター(新東科学社製)を用いて、以下の条件で不織布による擦りテストを行ない、耐摩耗性の評価を行った。試料と接触するテスターの先端部(1.5cm×1.5cm)に不織布(コットン)を8枚重ねて包み、輪ゴムで固定し、擦り材とした。
評価環境条件:25℃、湿度40%
移動距離(片道)4cm:
移動速度500cm/分:
荷重:1kg
擦り回数:6000回
[化合物1]
【0063】
【化23】


[化合物2]
【0064】
【化24】

[化合物3]
【0065】
【化25】


[化合物4]
【0066】
【化26】


[化合物5]
【0067】
【化27】


[化合物6]
【0068】
【化28】


[化合物7]
【0069】
【化29】


[化合物8]
【0070】
【化30】


(p/q=0.9 p+q≒45)

[化合物9]
【0071】
【化31】

【0072】
【化32】


(p/q=0.9 p+q≒45)

[化合物10]
【0073】
【化33】


[化合物11]
【0074】
【化34】

上記式において、p+qの値は平均値である。
【0075】
評価結果を表1に示す。
【0076】
【表1】

【0077】
実施例1〜6及び比較例1〜5は、何れも初期の水接触角が100度以上、オレイン酸接触角が60度以上であり、優れた撥水撥油性表面であった。一方、水転落角は、実施例では10度未満であり、優れた滑水性を示した。また、摩耗試験後においても10度未満の水転落角を保持していた。Zを有しない比較例1、2及びZが3価である比較例3は、水転落角が10度を超えた。Z又はWに該当する部分のシロキサン単位数が40を超える比較例4及び5は、水転落角が10度を超えた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で示される含フッ素ケイ素化合物、
【化1】


[式中、Zは分岐を有していてよい、1〜40個のシロキサン単位を有する2価のポリオルガノシロキサン残基、Rは炭素数1〜4のアルキル基またはフェニル基、Xは互いに異なっていてよい加水分解性基、Qは酸素原子及び/又は窒素原子を含んでいてよい炭素数2〜12の2価の連結基、aは2又は3、bは1〜10の整数、yは1〜5の整数であり、Rfは下記式(2)で示される基
−Rf−(Q−W−Q−Rf1− (2)
(式中、Rfはパーフルオロポリエーテル残基、Wは分岐を有していてよく且つシルアルキレン基を有していてよい、1〜40個のシロキサン単位を有するポリオルガノシロキサン残基、及びQは上記と同様の基であり、それぞれ同じでも異なってもよく、qは0〜3の整数である。)]及び
アルコール、エステル、エーテル、ケトン、及びパーフルオロエーテルからなる群より選ばれる少なくとも一種の溶剤、
を含むコーティング剤組成物。
【請求項2】
含フッ素ケイ素化合物の濃度が0.05〜1質量%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
式(2)において、Rf1が下記式(3)、(4)又は(5)で示される、請求項1または2に記載の組成物。
【化2】


(式中、Yはそれぞれ独立にF又はCF基、rは2〜6の整数、dは1〜3の整数、m、nはそれぞれ0〜200の整数でm+nは2〜200、sは0〜6の整数であり、該式中の各繰り返し単位の配列はランダムであってよい)
【化3】


(式中、lは1〜200の整数、dは1〜3の整数である。)
【化4】


(式中、YはF又はCF基、dは1〜3の整数、m、nはそれぞれ0〜200の整数、但しm+nは2〜200であり、式中の各繰り返し単位の配列はランダムであってよい)
【請求項4】
式(2)において、Rfが下記式(6)で示される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
−CF(OC(OCFOCF− (6)
(式中、eは0〜50、fは1〜50の整数、但しe+fは2〜60の整数である。)
【請求項5】
式(2)において、Wが下記式(7)又は(8)示される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【化5】


(式中、gは1〜40の整数であり、Rは同一または異なってもよい炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基である。)

【化6】


(式中、yは1〜5の整数、hおよびiは夫々1〜40の整数、但し、h+iは1〜40であり、Rは上述のとおりである)
【請求項6】
加水分解性基Xがアルコキシ基であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の組成物。
【請求項7】
硬化触媒をさらに含む請求項1〜6のいずれか1項記載の組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項記載の組成物から得られる硬化被膜を表面に供える物品。
【請求項9】
下記工程を含む、物品の表面に滑水性を付与する方法
(1)請求項1〜7のいずれか1項記載の組成物を該物品の表面に施与する工程、
(2)前記施与された組成物を、室温で硬化させる工程。

【公開番号】特開2009−30039(P2009−30039A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−168649(P2008−168649)
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】