説明

コーティング剤

【課題】塗膜強度・基盤密着性/造膜性のバランスを有し、且つ造膜助剤非含有でも造膜する重合体水性分散液の製造方法、重合体水性分散液及びコーティング剤を提供すること。
【解決手段】イソプレンと(メタ)アクリル酸エステル系単量体とを必須成分とする単量体類を共重合して得られる合成樹脂エマルジョン(A)を含有するコーティング用樹脂組成物であって、前記合成樹脂エマルジョン(A)中のイソプレン含有率が、合成樹脂エマルジョン(A)の固形分の0.5〜10重量%であることであることを特徴とするコーティング用樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合体水性分散液の製造方法、重合体水性分散液及びコーティング剤に関するものであり、更に詳しくは、イソプレンと(メタ)アクリル酸エステル系単量体とを必須成分とする単量体類を共重合して得られるポリマーを含有するコーティング剤、接着剤、繊維加工剤、紙加工剤、インキ等、特にコーティング剤に有用な重合体水性分散液に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、エチレン性不飽和単量体を乳化重合して得られるエマルジョン樹脂はコーティング剤、接着剤、繊維加工剤、紙加工剤、インキ用等各種工業用途にて実用化されており、幅広く利用されている。中でもエマルジョン塗料は溶剤系塗料と比べて安全性、コスト面で優位性が高いことから、広く用いられている。しかし、エマルジョン塗料は造膜性が悪いことから、一般的に高沸点有機溶剤を造膜助剤として用いられており、エマルジョン塗料でありながら、有機溶剤が塗料中に2〜15重量%程度含まれているのが現状である。
かかる状況下、環境保護の観点から有機溶剤を含まないエマルジョン塗料が望まれている。この要求を満足するための第一段階としては造膜助剤非含有でも造膜するエマルジョン樹脂の開発が不可欠である。造膜助剤非含有で造膜させるためにはエマルジョン樹脂を軟質化することにより、達成することができる。しかし、エマルジョン樹脂を軟質化すると塗膜強度が低下し、基盤に対する密着性が低下する。
【0003】
そこで、塗膜強度及び基盤密着性を保持しつつ造膜助剤非含有で造膜するエマルジョン樹脂の開発が急務である。
【0004】
例えば、硬質エマルジョンと軟質エマルジョンをブレンドすることにより、塗膜強度・基盤密着性と造膜性を兼ね備えたエマルジョンが得られる旨が報告されている(例えば、特許文献1参照。)。しかし、この方法では塗膜強度・基盤密着性/造膜性のバランスは十分ではなく更なる改良が必要である。
【0005】
【特許文献1】特開平5−112758号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、塗膜強度・基盤密着性/造膜性のバランスを有し、且つ造膜助剤非含有でも造膜する重合体水性分散液の製造方法、重合体水性分散液及びコーティング剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、イソプレンと(メタ)アクリル酸エステル系単量体とを必須成分とする単量体類を共重合して得られる合成樹脂エマルジョン(A)を含有するコーティング用樹脂組成物であって、前記合成樹脂エマルジョン(A)中のイソプレン含有率が、合成樹脂エマルジョン(A)の固形分の0.5〜10重量%であることであることを特徴とするコーティング用樹脂組成物を使用することで、ガラス転移温度(Tg)が、例えば、従来の合成樹脂エマルジョンの場合と同程度であるときに、最低増膜温度(MFT)が従来の合成樹脂エマルジョンの場合に比べ、低くできることを見出し、これにより、塗膜強度(Tgが高いほうが強度は高い。)・基盤密着性/造膜性(MFTが低いほうが有利。)のバランスを有し、且つ造膜助剤非含有であっても、比較的低温で造膜するコーティング用樹脂組成物を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
即ち、本発明は、イソプレンと(メタ)アクリル酸エステル系単量体とを必須成分とする単量体類を共重合して得られる合成樹脂エマルジョン(A)を含有するコーティング用樹脂組成物であって、前記合成樹脂エマルジョン(A)中のイソプレン含有率が、合成樹脂エマルジョン(A)の固形分の0.5〜10重量%であることであることを特徴とするコーティング用樹脂組成物を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、塗膜強度・基盤密着性/造膜性のバランスを有し、且つ造膜助剤非含有でも、比較的低温で、造膜する重合体水性分散液のコーティング用樹脂組成物、コーティング剤を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の詳細について説明する。本発明のコーティング用樹脂組成物は、イソプレンと(メタ)アクリル酸エステル系単量体とを必須成分とする単量体類を共重合して得られる合成樹脂エマルジョン(A)を含有するコーティング用樹脂組成物であって、前記合成樹脂エマルジョン(A)中のイソプレン含有率が、合成樹脂エマルジョン(A)の固形分の0.5〜10重量%であることであることが必須であり、それ以外の(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、種々の組み合わせが可能である。前記(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、特に制限されるものではなく、如何なるものでも用いることができる。具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、β−(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、アミノエチル(メタ)アクリレート、N−モノアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、N,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、2−アジリジニルエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは、1種または2種以上の混合物として用いることができる。
【0011】
これらの中でも、塗膜を軟質にするには、単量体として、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、メタアクリル酸ラウリル等を用いることが好ましい。
【0012】
また、これらの中でも、塗膜を硬質にするには、単量体として、メタクリル酸メチル、メタアクリル酸−t−ブチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸イソブチル、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等を用いることが好ましい。
【0013】
イソプレンと(メタ)アクリル酸エステル系単量体とを必須成分とする単量体類以外にも、前記以外のその他のエチレン性不飽和単量体を必要に応じて併用することができる。前記以外のその他のエチレン性不飽和単量体としては、一般にラジカル重合反応に用いることができるものであれば特に制限はなく、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ビニルブチラート、バーサチック酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、アミルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル等のビニルエーテル類;(メタ)アクリロニトリル等のニトリル基含有エチレン性不飽和単量体;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルアニソール、α−ハロスチレン、ビニルナフタリン、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート等の芳香族環を有するビニル化合物等が挙げられる。なお、これらの1種または2種以上の混合物を使用することができる。
【0014】
また、前記以外のその他のエチレン性不飽和単量体としては、更に、官能基を有するエチレン性不飽和単量体も用いることが可能で、例としては、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−イソプロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等のメチロールアミド基またはそのアルコキシ化物含有重合性単量体;ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリイソプロポキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン及びその塩酸塩等のシリル基含有重合性単量体;(メタ)アクリロイルイソシアナート、(メタ)アクリロイルイソシアナートエチルのフェノール或いはメチルエチルケトオキシム付加物等のイソシアナート基及び/またはブロック化イソシアナート基含有重合性単量体;2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−2−オキサゾリン等のオキサゾリン基含有重合性単量体;(メタ)アクリルアミド、N−モノアルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有重合性単量体;アクロレイン、ジアセトン(メタ)アクリルアミド等のカルボニル基含有重合性単量体等が挙げられる。
【0015】
前記の単量体類の中でも、重合性炭素−炭素2重結合を2個以上有する化合物、例えば、多官能(メタ)アクリル酸エステル類やジビニルベンゼン等を用いると、塗膜の弾性率、破断強度、ゲル分率を高くすることができる。
【0016】
なお、イソプレンの含有量を固定した場合、例えば、イソプレン/アクリル酸ブチル/メチルメタクリレート=10/40/50(重量比)にしたり、イソプレン/アクリル酸−2−エチルヘキシル/ブチルメタクリレート=10/30/60(重量比)としたりすれば、塗膜の硬さ(弾性率)を同じにできるので、前記の単量体の添加量を適宜調整すれば、フィルムの硬さを制御できる。
【0017】
その他のエチレン性不飽和単量体として、乳化重合時の安定性、エマルジョンの貯蔵安定性を向上させることを目的として、得られるエマルジョン被膜の耐水性を低下しない範囲で、スルホン酸基および/またはサルフェート基(および/またはその塩)、リン酸基および/またはリン酸エステル基(および/またはその塩)を含有するエチレン性不飽和単量体を併用することができる。そのようなその他の不飽和単量体としては、例えば、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸等のビニルスルホン酸類またはその塩、アリルスルホン酸、2−メチルアリルスルホン酸等のアリル基含有スルホン酸類またはその塩、(メタ)アクリルアミド−t−ブチルスルホン酸等の(メタ)アクリルアミド基含有スルホン酸類またはその塩、リン酸基を有する「アデカリアソープPP−70、PPE−710」(旭電化工業(株)製)等が挙げられ、これらの1種または2種以上の混合物を使用することができる。
【0018】
本発明のコーティング剤の製造方法は特に制限されるものではなく如何なる重合方法でもかまわない。一例を挙げると、溶液重合法、乳化重合法、塊状重合法、分散重合法等が挙げられる。この中でも耐久性、生産性の観点から乳化重合法が好ましい。
【0019】
乳化重合法で使用する乳化剤は、乳化重合で使用されているものであれば如何なるものでも用いることができる。代表的なものをあげると、アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキル硫酸塩類類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルスルホン酸塩類、ジアルキルスルホサクシネートの塩類等のアニオン乳化剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体等のノニオン乳化剤などが挙げられる。勿論、これらに限定されるものではなく、乳化重合時に用いることが出来る乳化剤であれば上記骨格に限定せず、如何なるものでも用いることが出来、また、これらを複数種併用することも可能である。
【0020】
更に、一般的に「反応性乳化剤」と称される重合性不飽和基を分子内に有する乳化剤を使用することも出来る。反応性乳化剤の具体例としては、ビニルスルホン酸ソーダ、アクリル酸ポリオキシエチレン硫酸アンモニウム、メタクリル酸ポリオキシエチレンスルホン酸ソーダ、ポリオキシエチレンアルケニルフェニルスルホン酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルケニルフェニル硫酸ソーダ、ナトリウムアリルアルキルスルホサクシネート、メタクリル酸ポリオキシプロピレンスルホン酸ソーダ等のアニオン系反応性乳化剤、ポリオキシエチレンアルケニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンメタクリロイルエーテル等のノニオン系反応性乳化剤などが挙げられる。
【0021】
また、一般的に市販されている反応性乳化剤、例えば、アクアロンHS−10、ニューフロンティアA−229E〔以上、第一工業製薬(株)製〕、アデカリアソープSE−3N、SE−5N、SE−10N、SE−20N、SE−30N〔以上、旭電化工業(株)製〕、AntoxMS−60、MS−2N、RA−1120、RA−2614〔以上、日本乳化剤(株)製〕、エレミノールJS−2、RS−30〔以上、三洋化成工業(株)製〕、ラテムルS−120A、S−180A、S−180〔以上、花王(株)製〕等のアニオン型反応性乳化剤、アクアロンRN−20、RN−30,RN−50,ニューフロンティアN−177E〔以上、第一工業製薬(株)製〕、アデカリアソープNE−10、NE−20,NE−30、NE−40〔以上、旭電化工業(株)製〕、RMA−564,RMA−568,RMA−1114〔以上、日本乳化剤(株)製〕、NKエステルM−20G、M−40G、M−90G、M−230G〔以上、新中村化学工業(株)製〕等のノニオン型反応性乳化剤等、乳化重合反応に使用できるものであれば、何等問題なく、如何なるものでも用いることができる。勿論、これらを複数種併用することも可能である。
【0022】
乳化重合法で製造する場合、一般的に行われている乳化重合の手法により反応を行うことが出来る。例えば、エチレン性不飽和単量体100重量部あたり、ラジカル重合開始剤0.1〜10重量部用い、水性媒体50〜10000重量部使用して40〜90℃で重合することができる。また、上記開始剤と還元剤0.1〜10重量部併用するレドックス重合にても行うことが出来る。この際、鉄イオンや銅イオン等の多価金属塩イオンを生成する化合物を促進剤として併用することも可能である。
【0023】
上記反応で用いることが出来るラジカル重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩類、アゾビスイソブチロニトリル及びその塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)等のアゾ系開始剤、過酸化水素、ターシャリーブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の過酸化物系開始剤等が挙げられる。また、これらラジカル開始剤と併用可能な還元剤としてはナトリウムスルホオキシレートホルムアルデヒド、ピロ亜硫酸ソーダ、L−アスコルビン酸等が挙げられる。また、メルカプタン類、アルコール系有機溶剤、脂肪族系有機溶剤、芳香族系有機溶剤等を分子量調整剤として併用することも可能である。また、水性媒体としては、水以外にアルコール類等の水溶性溶剤と併用することも可能である。但し、有機溶剤を使用した場合、重合の後に脱溶剤等の工程を行い、有機溶剤量を低減することが好ましい。
【0024】
本発明に係るコーティング剤は、イソプレンと(メタ)アクリル酸エステル系単量体とを必須成分とする単量体類を共重合して得られる合成樹脂エマルジョン(A)を含有するコーティング用樹脂組成物であって、前記合成樹脂エマルジョン(A)中のイソプレン含有率が、合成樹脂エマルジョン(A)の固形分の0.5〜10重量%である。イソプレンの含有率が、0.5%未満の場合は、イソプレンの添加効果はほとんど発揮されない。また、イソプレンの含有率が、10%を超える場合は、合成樹脂エマルジョン(A)の最低造膜温度(MFT)と共にガラス転移温度(Tg)も下がるため、塗膜強度・基盤密着性/造膜性のバランスが悪くなり好ましい結果を与えない。
本発明に係るコーティング剤は、造膜助剤が非含有でも造膜し、且つ塗膜強度・基盤密着性/造膜性のバランスが良好であることから、各種用途への展開が可能である。例えば、コーティング剤、接着剤、繊維加工剤、紙加工剤、インキ等が挙げられるが、この中でもコーティング剤として展開することが有用である。即ち、コーティング剤の場合、一般的に造膜助剤及び凍結防止剤として揮発性有機溶剤を用いるが、本発明に係る重合体水性分散液をビヒクルとして用いることにより、これら揮発性有機溶剤を用いなくても造膜性、低温安定性良好なコーティング剤を得ることができるため、コーティング剤中の揮発性有機溶剤の含有率を1重量%以下にすることができる。また、コーティング剤は造膜助剤等の揮発性有機溶剤を用いない他は一般的に製造されている方法と同じ方法で製造することができる。ここで言う揮発性有機溶剤としては、沸点が250℃以下の有機溶剤が好ましい。即ち、顔料、充填剤、骨材、分散剤、湿潤剤、増粘剤及び/またはレオロジーコントロール剤、消泡剤、防腐剤、防バイ剤、pH調整剤、防錆剤などをそれぞれの目的に応じて選択、組み合わされ、通常の方法でコーティング剤とされる。
【実施例】
【0025】
以下、実施例を用いて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例の範囲に限定されるものではない。なお、以下に示す実施例及び比較例において、部または%は、特に断りのない限り重量基準である。
【0026】
(基盤への密着性評価方法)コーティング剤を、基板上(ガラス、PET)にスピンコート法により塗工した後、120℃で10分間乾燥し、厚さ2μmの均一な塗膜を形成した。得られたサンプルについて、碁盤目試験により密着性を測定した。評価は、縦横10mmの基盤目(縦10個x横10個=計100個)の残存数により、以下のとおり評価した。 ◎:5未満、○:5以上10未満、△:10以上15未満、×:15以上。
【0027】
(塗膜強度の評価方法) 塗膜強度の違いを、以下の2種類(K法、L法)の塗膜の耐削れ性評価試験で評価した。
[K法] フイルムを1インチ幅にスリットし、径5mmの固定ピン(材質:ステンレス、表面粗度:Raが0.017μmのもの)に塗布面を接触させて15m/min.の速度で90m走行させた後に固定ピンに付着した削れ粉の量を観察して下記のランク付けを行う。A:殆ど堆積して無い、B:多少堆積している、C:かなりの量堆積している
【0028】
[L法]幅20mmのフイルムの塗布面と紙面を接触させ100g荷重下で摩擦した時の塗布面の損傷を観察して下記のランク付けを行う。
A:損傷小、B:損傷中程度、C:損傷大
【0029】
実施例1
窒素置換した撹拌機付オートクレーブにイオン交換水108部及びラテムルE−118E(花王製)を有効成分として1.6部を仕込み、表1に示す組成の単量体100部及び過硫酸アンモニウム0.3部を加えて撹拌しながら70℃〜90℃の温度範囲で7時間、重合率99.8%迄乳化重合を行なった後、水蒸気蒸留による未反応単量体の除去、濃縮及び25重量%アンモニア水の添加によるpH調整を行い固形分48.4%のコーティング剤[A−1]を得た。
【0030】
実施例2
イソプレン及びアクリル酸ブチルの使用量を表1に示す量にした以外は実施例1と同様にして固形分48.8%のコーティング剤[A−2]を得た。
【0031】
実施例3
イソプレン及びアクリル酸ブチルの使用量を表1に示す量にした以外は実施例1と同様にして固形分48.2%のコーティング剤[A−3]を得た。
【0032】
実施例4
イソプレン、アクリル酸ブチル及びメタクリル酸メチルの使用量を表1に示す量にした以外は実施例1と同様にして固形分48.8%のコーティング剤[A−4]を得た。
【0033】
比較例1
窒素置換した撹拌機付オートクレーブにイオン交換水108部及びラテムルE−118E(花王製)を有効成分として0.4部を仕込み、表2に示す組成の単量体100部及び過硫酸アンモニウム0.3部を加えて撹拌しながら70℃〜90℃の温度範囲で7時間、重合率99.7%迄乳化重合を行なった後、水蒸気蒸留による未反応単量体の除去、濃縮及び25重量%アンモニア水の添加によるpH調整を行い固形分48.8%のコーティング剤[B−1]を得た。
【0034】
比較例2
イソプレン、アクリル酸ブチル及びメタクリル酸メチルの使用量を表2に示す量にした以外は実施例1と同様にして固形分48.8%のコーティング剤[B−2]を得た。
【0035】
【表1】

【0036】
【表2】






【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソプレンと(メタ)アクリル酸エステル系単量体類とを必須成分とする単量体類を共重合して得られる合成樹脂エマルジョン(A)を含有するコーティング用樹脂組成物であって、前記合成樹脂エマルジョン(A)中のイソプレン含有率が、合成樹脂エマルジョン(A)の固形分の0.5〜10重量%であることであることを特徴とするコーティング用樹脂組成物。
【請求項2】
前記(メタ)アクリル酸エステル系単量体類が、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、及びメタアクリル酸ラウリルからなる群から選ばれる1種以上の単量体である請求項1記載のコーティング用樹脂組成物。
【請求項3】
前記(メタ)アクリル酸エステル系単量体類が、メタクリル酸メチル、メタアクリル酸−t−ブチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸イソブチル、アクリロニトリル、及びメタアクリロニトリルからなる群から選ばれる1種以上の単量体である請求項1記載のコーティング用樹脂組成物。
【請求項4】
更に、前記(メタ)アクリル酸エステル系単量体類として、重合性炭素−炭素2重結合を2個以上有する化合物を併用する請求項2又は3記載のコーティング用樹脂組成物。
【請求項5】
重合性炭素−炭素2重結合を2個以上有する化合物がエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジアリルフタレート、ジビニルベンゼン、及び、アリル(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる1種以上の化合物である請求項4記載のコーティング用樹脂組成物。


【公開番号】特開2007−284611(P2007−284611A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−115578(P2006−115578)
【出願日】平成18年4月19日(2006.4.19)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】