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コーティング材、部材、部材の製造方法及び鏡の製造方法
説明

コーティング材、部材、部材の製造方法及び鏡の製造方法

【課題】透明性を要求される部材において致命傷となる皮膜の白濁化を防止しつつ、簡単な製造プロセス、製造管理により、かつ親水性に優れる親水性皮膜を備えた部材を提供する。
【解決手段】分子内に1個以上のイオン性官能基と1個以上の重合性官能基を有する化合物(A)と、分子内に1個以上の重合性官能基を有する化合物(B)と、前記化合物(A)と前記化合物(B)の相分離進行を遅延させることができる揮発性の化合物(C)とを備えることを特徴とする基材4表面にコーティングされる親水性皮膜を形成する材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親水性皮膜を形成するコーティング材、防曇性及び防汚性に優れた親水性皮膜を備えた部材、及びその製造方法に係り、特に透明性を要求される水まわりなどの基材に好適な親水性皮膜を形成する材料、親水性皮膜を備えた部材、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鏡の表面が結露すると、微細な水滴が光を乱反射するために曇りが発生して像が視認できなくなる。この弊害は、一般家庭においては浴室、洗面所等で顕著に見られる。鏡の曇りを防止する手段として、基材表面に親水性の皮膜を形成することが従来行われている。一方で、親水性材料は、表面に付着した疎水性汚れを散水等によって浮き上がらせて除去するセルフクリーニング性(防汚性)を有することが知られている。このように、水まわり材料表面の親水化は、防曇性及び防汚性において、極めて高い効果が期待できる。
【0003】
基材表面の親水化手法として、従来から、非反応性の界面活性剤を含む親水性組成物を基材表面に塗工する方法が行われている(特許文献1)。この方法は、塗工後の初期においては親水効果が発揮されるものの、処理面を払拭すれば親水性が低下してしまう、すなわち親水持続性に欠けるものであった。また、親水性のポリマーからなる親水性組成物を、基材表面に塗工する方法(特許文献2)もあるが、表面が軟らかく傷つきやすい、または親水性が不十分で、防曇材料及び防汚材料として使用するには十分とは言えないものであった。また、親水性無機粒子を基材表面に塗布する方法もあるが(特許文献3)、水まわり環境で使用する場合、水垢等の汚れが固着して清掃しても除去できなくなり親水性が低下してしまう、すなわち親水持続性に欠けるものであった。
【0004】
表面硬度に優れ、親水性及びその持続性に優れる親水性皮膜を形成する手法として、反応性を有する界面活性剤と(メタ)アクリレートの重合体からなる親水性皮膜(特許文献4)が開示されている。また、スルホン酸基及び/またはスルホン酸塩基を有する化合物と(メタ)アクリロイル基を有する化合物とを共重合して得られる重合体からなる親水性皮膜(特許文献5)についても開示されている。
【0005】
これら特許文献4、5に記載の重合性官能基とイオン性官能基を有し親水性を示す親水性成分と(メタ)アクリロイル基を有する主骨格成分との重合体からなる親水性皮膜は、水まわり基材の親水化において高い性能を発揮し、かつ十分な耐久性を有する。しかしながら、皮膜の白濁を抑制することが極めて難しく、鏡等の写像性を利用する基材や壁材等の意匠性を利用する基材など、皮膜の透明性が要求される基材への適応が困難であるという問題があった。
【0006】
これら特許文献4、5に記載の従来技術の問題について、詳細に説明する。特許文献4、5に記載されている親水性成分は優れた親水性を示す反面、イオン性官能基による凝集力が強いため、非親水性である主骨格成分中で析出しやすい。親水性成分が析出した状態で重合させた場合、皮膜の親水性が不十分、もしくは皮膜が白濁するといった問題が起こる。このため、従来技術において親水性を有しかつ透明な膜を得るためには、親水性成分と主骨格成分を溶媒に溶解させた状態で基材に塗布し、その後、溶媒揮発過程で親水性成分と主骨格成分を分離、つまり相分離させることによって、親水性成分の析出を抑制しつつ、その濃度が、皮膜の表面側で基材側より高くなるように制御する必要がある。
この溶媒揮発による相分離を利用した親水性皮膜形成における問題について、図1及び図7に基づいて説明する。図1は、親水性皮膜形成過程における皮膜中成分の分布を表す概念図である。図7は、溶媒揮発に伴う親水性皮膜を形成するコーティング材の状態変化と透明な親水性皮膜を得るための工程を示す概念図である。従来技術においては、溶媒揮発に伴って起こる皮膜を形成するコーティング材成分の相分離速度が速いため、図1中のII状態から、わずか数秒程度で図1中のIII状態に移行するものであった。すなわち、相分離進行による親水性発現から透明な皮膜としては使いものにならない白濁状態になるまでの時間が極めて短時間であった。また、溶媒が残留すると、ワキなどの塗膜欠陥や耐薬品性低下などの物性低下を引き起こすため、大部分の溶媒が揮発した後に基材上のコーティング材を硬化させなければならないという別の制約もあった。したがって、透明な親水性皮膜を得るためには、図7に示すように親水性発現から白濁開始の間、かつ大部分の溶媒揮発の後、というごくわずかな時間内に硬化反応を開始する必要があり、その製造管理は極めて困難であった。そのため、水まわり部材など安価で大量に製造する必要のある商品への適応においては、品質の安定、製造コスト低減などの観点から更なる改善が必要であった。
【0007】
【特許文献1】特開2006−257244号公報
【特許文献2】特開2007−332174号公報
【特許文献3】特許第4165014号公報
【特許文献4】特開平11−140109号公報
【特許文献5】特開2009−73923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、透明性が要求される部材において致命傷となる皮膜の白濁化を防止しつつ、簡単な製造プロセス、製造管理により、親水性に優れ、かつ水まわりでの使用において十分な親水性を有する親水性皮膜を備えた部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、基材表面に親水性皮膜を形成するコーティング材であって、分子内に1個以上のイオン性官能基と1個以上の重合性官能基を有する化合物(A)と分子内に1個以上の重合性官能基を有する化合物(B)と、前記化合物(A)と前記化合物(B)の相分離進行を遅延させることができる揮発性の化合物(C)とを備えることを特徴とする。
【0010】
本発明において、好ましくは、前記化合物(C)は、揮発するとともに、前記化合物(A)と前記化合物(B)とともに硬化して共重合体と成り得ることを特徴とする。
【0011】
本発明において、好ましくは、前記化合物(C)の揮発作用によって前記親水性皮膜の表面側で親水性発現させる一方で、前記化合物(C)が全て揮発することなく、前記親水性皮膜の基材側で残った状態で前記化合物(A)と前記化合物(B)とともに硬化して共重合体となり得るように構成されていることを特徴とする。
【0012】
本発明において、好ましくは、前記化合物(B)に含まれる前記重合性官能基はアクリロイル基もしくはメタクリロイル基であり、前記化合物(B)は3個以上のアクリロイル基もしくはメタクリロイル基を有し、かつ(分子量)/(重合性官能基数)が1000以下であることを特徴とする。
【0013】
本発明において、好ましくは、前記化合物(C)は分子内に1個の重合性官能基、及び1個以上の親水基を有する、分子量500以下の化合物であることを特徴とする。
【0014】
本発明において、好ましくは、基材に親水性皮膜が形成されてなる部材であって、前記親水性皮膜は、分子内に1個以上のイオン性官能基と1個以上の重合性官能基を有する化合物(A)と、分子内に1個以上の重合性官能基を有する化合物(B)と、前記化合物(A)と前記化合物(B)の相分離進行を遅延させることができる揮発性の化合物(C)からなる共重合体であって、前記化合物(A)は前記親水性皮膜の表面側の方が前記親水性皮膜の基材側より多く含まれており、前記化合物(C)は、前記化合物(A)と前記化合物(B)とともに硬化して共重合体となることを特徴とする。
【0015】
本発明において、好ましくは、前記化合物(C)は、前記親水性皮膜の基材側に残って共重合体になっているとともにドメインが存在するよう構成されていることを特徴とする。
【0016】
本発明において、好ましくは、前記ドメインのサイズは、10nm−20μmであることを特徴とする。
【0017】
本発明において、好ましくは、基材に親水性皮膜が形成されてなる部材の製造方法であって、前記親水性皮膜は、分子内に1個以上のイオン性官能基と1個以上の重合性官能基を有する化合物(A)と、分子内に1個以上の重合性官能基を有する化合物(B)と、前記化合物(A)と前記化合物(B)の相分離進行を遅延させることができる揮発性の化合物(C)からなる共重合体であって、前記化合物(A)と前記化合物(B)と前記化合物(C)からなるコーティング材を前記基材表面に塗布する塗布工程と、前記塗布工程後に前記化合物(C)の揮発作用によって前記化合物(A)の濃度が表面側で高くなるように前記化合物(A)と前記化合物(B)の相分離を遅延させながら進行させる加熱乾燥工程と、前記加熱乾燥工程後に活性エネルギー線又は熱の少なくともいずれか一つを与えることによって前記コーティング材を硬化させる硬化工程を備え、前記硬化工程は、前記化合物(C)が前記親水性皮膜の基材側に残った状態であるとともに、その濃度が前記化合物(C)の揮発作用により前記親水性皮膜の表面側の濃度が前記親水性皮膜の基材側の濃度より低くなっている状態で、かつ前記化合物(A)の濃度は前記親水性皮膜の表面側が前記親水性皮膜の基材側より高くなっている状態で、前記化合物(C)が、前記化合物(A)と前記化合物(B)とともに硬化して共重合体となるように前記硬化工程の開始及び、工程条件が設定されていることを特徴とする。
【0018】
本発明において、好ましくは、前記加熱乾燥工程は、前記化合物(C)の揮発が加熱によりコントロールされ、前記硬化工程は、前記加熱乾燥工程とは異なる方法である活性エネルギー線照射によりコントロールされることを特徴とする。
【0019】
本発明において、好ましくは、親水性皮膜が形成されてなる基材としての鏡の製造方法であって、前記親水性皮膜は、分子内に1個以上のイオン性官能基と1個以上の重合性官能基を有する化合物(A)と、分子内に1個以上の重合性官能基を有する化合物(B)と、前記化合物(A)と前記化合物(B)の相分離進行を遅延させることができる揮発性の化合物(C)からなる共重合体であって、前記化合物(A)と前記化合物(B)と前記化合物(C)からなるコーティング材を前記鏡表面に塗布する塗布工程と、前記塗布工程後に前記化合物(C)の揮発作用によって前記化合物(A)の濃度が前記親水性皮膜の表面側で高くなるように前記化合物(A)と前記化合物(B)の相分離を遅延させながら進行させる加熱乾燥工程と、前記加熱乾燥工程後に活性エネルギー線又は熱の少なくともいずれか一つを与えることによって前記親水性皮膜を形成する材料を硬化させる硬化工程を備え、前記硬化工程は、前記化合物(C)が前記親水性皮膜の基材側に残った状態であるとともに、その濃度が前記表面側の揮発作用により前記親水性皮膜の表面側が前記親水性皮膜の基材側より低くなっている状態で、かつ前記化合物(A)の濃度は前記親水性皮膜の表面側が前記親水性皮膜の基材側より高くなっている状態で、前記化合物(C)が、前記化合物(A)と前記化合物(B)とともに硬化して共重合体となるように前記硬化工程の開始及び、工程条件が設定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、化合物(A)と化合物(B)の相分離進行を遅延させる化合物(C)を、皮膜中に残留させた状態で硬化させて親水性皮膜を得ることができる。このことにより、親水性発現から白濁開始までの時間が十分に長く、かつその時間内であれば任意のタイミングで硬化反応を開始できるため、透明な親水性皮膜を容易に得ることができる。したがって、良好な親水性と透明性が両立した皮膜を安定して生産することが可能になり、透明性が要求される鏡や浴室壁などの水まわり部材においても、親水性に優れる親水性皮膜を備えた部材を提供できるという実用上優れた効果を奏することができるものである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0022】
(コーティング材の構成)
本発明で提供されるコーティング材(皮膜を形成する材料)は、分子内に1個以上のイオン性官能基と1個以上の重合性官能基を有する化合物(A)と、分子内に1個以上の重合性官能基を有する化合物(B)と、化合物(A)と化合物(B)の相分離進行を遅延させることができる揮発性の化合物(C)の混合物である。
【0023】
(化合物(A))
本発明の化合物(A)は、分子内に1個以上のイオン性官能基と1個以上の重合性官能基を有する化合物である。イオン性官能基として、スルホニル基、カルボニル基、ホスホニル基、アミノ基及びそれらの塩からなる官能基のうち少なくともいずれか一種を有し、重合性官能基として、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基のうち少なくともいずれか一種類を有する。また、化合物(A)の分子量は1500以下である。化合物(A)として、2種類以上の化合物を併用することもできる。
【0024】
化合物(A)としては、市販の化合物または合成した化合物を用いることができる。市販の化合物としては、例えば、2−(メタクリロイルオキシ)エチルスルホン酸ナトリウム塩、2−(メタクリロイルアミノ)プロピルトリメチルアンモニウムクロリド、フタル酸モノ2−(メタクリロイルオキシ)エチル、メタクリル酸エチルトリメチルアンモニウムクロリド、2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムメチルスルファート、アクリルアミドターシャリーブチルスルホン酸、アクリルアミドターシャリーブチルスルホン酸ナトリウム、ビニルスルホン酸、ビニルスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸ナトリウム、メタリルスルホン酸ナトリウム、p−スチレンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレン‐1−(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸アンモニウム等が使用できる。
【0025】
(化合物(B))
本発明の化合物(B)は、分子内にアクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基からなる群のうち少なくとも1種以上の重合性官能基を有する。より好ましくは、重合性官能基として、アクリロイル基またはメタクリロイル基を含有する。化合物(B)として、2種類以上の化合物を併用することもできる。
【0026】
本発明においては、重合性官能基を一つ有する単官能化合物である化合物(C)を皮膜中に残留させた状態(コーティング材中に含まれる化合物(C)を全て揮発させない状態)で硬化させる。このため、皮膜中に化合物(C)に由来する成分を含有しない場合に比べて、アルカリ性洗剤や酸性洗剤等によって、親水性皮膜が劣化しやすくなり、その結果親水持続性が低下する。例えば、表1の比較例2では、化合物(C)に由来する成分を含有しないため、洗剤浸漬前の接触角に対する洗剤浸漬後の接触角の上昇、すなわち洗剤による親水性皮膜の劣化が少ない。一方で、表1の実施例6では、化合物(C)に由来する成分を含有するため、洗剤による親水性皮膜の劣化が起こっている。
【0027】
化合物(C)に由来する成分を含有することによる親水性皮膜の劣化を抑制するため、化合物(B)として、3個以上の重合性官能基を有し、かつ(分子量)/(重合性官能基数)が1000以下の化合物を1種類以上含有することがさらに好ましい。表1の実施例7において、化合物(B)として、3個の重合性官能基を有し、かつ(分子量)/(重合性官能基数)=99である多官能化合物PEMPを添加すると、多官能化合物を添加していない実施例6と比較して、洗剤による親水性皮膜の劣化を抑制することができる。
【0028】
化合物(B)として、好ましい化合物としては、アクリロイル基またはメタクロイル基を3個以上有するモノマーもしくはオリゴマーが挙げられる。具体的には、例えば、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が挙げられる。
【0029】
化合物(B)として、より望ましくは、分子内に水酸基、もしくはエチレングリコール鎖を1個以上有する化合物を含有させる。具体的には、例えば、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート等が挙げられる。
【0030】
化合物(A)、化合物(B)としては、予め化合物(A)、(B)が混合された市販の重合性複合化合物を用いることもできる。
【0031】
(化合物(C))
本発明の化合物(C)は、分子内に1個の重合性官能基及び1個以上の親水性官能基を有する、分子量500以下の化合物である。親水性官能基としては、及びヒドロキシル基、アミド基、モノホリノ基から選択される官能基を少なくとも1種以上有することが好ましい。具体的には、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルホリン、N−ビニルホルムアミドのうち少なくともいずれか1つを含む。
【0032】
化合物(C)は、分子量500以下と低分子量であるため、加熱乾燥工程において揮発させることができる。コーティング材を基材に塗布した後、化合物(C)を揮発させていくと、化合物(C)を含むことで相溶化していた化合物(A)と化合物(B)の相分離が起こる。さらに、化合物(C)が揮発するときに、化合物(C)がコーティング材の表面側に移動することに伴い、化合物(A)が一緒にコーティング材の表面側に移動する。この化合物(A)の表面濃度が十分に高くなった状態でコーティング材を重合させると、親水性の皮膜を得ることができる。具体的には、表2の実施例2に示すように、加熱乾燥工程における加熱時間を、化合物(C)及び溶媒の揮発が十分に進んだ条件、すなわち希釈剤である化合物(C)の揮発割合が十分に高い条件にすることによって、親水性の皮膜を得ることができる。
また、化合物(C)に由来する成分が親水性皮膜の基材側に含まれる状態になるようにコーティング材を重合させることによって、化合物(A)の析出を抑制することができ、その結果透明な親水性皮膜を得ることができる。具体的には、表2の実施例2の加熱乾燥時間が10〜60分の条件に示されるように、化合物(C)を全て揮発させない状態、すなわち化合物(C)に由来する成分が親水性皮膜に含まれる状態になるようにコーティング材を重合させると、透明な親水性皮膜を得ることができる。一方で、表2の実施例2の加熱乾燥時間が180分の条件に示されるように、化合物(C)の大部分を揮発させた状態、すなわち化合物(C)に由来する成分が親水性皮膜中に含まれない状態になるようにコーティング材を重合させると、白濁した親水性皮膜となる。
さらに、化合物(C)の揮発速度は溶媒と比べて遅いため、化合物(C)の揮発作用よる化合物(A)と化合物(B)の相分離速度は、溶媒による場合と比べて遅くなる。例えば、表2に示すように、実施例2の希釈剤揮発速度は比較例2と比べて遅く、このため、化合物(A)と化合物(B)の相分離進行に伴って起こる親水性発現及び白濁開始までの時間が長くなる。したがって、透明な親水性皮膜を容易に得ることが可能になる。
【0033】
化合物(A)、(B)、(C)の配合比は、親水性皮膜に要求される物性、及び製造条件等に応じて適宜決定することができるが、好ましくは硬化物換算で化合物(A)が0.01〜30重量%、化合物(B)が5〜90重量%、化合物(C)が5〜90重量%となるように配合する。より好ましくは、化合物(A)が0.1〜10重量%、化合物(B)が10〜90重量%、化合物(C)が10〜80重量%となるように配合する。
【0034】
(皮膜中での化合物(A)の分布)
本発明に係わる実施の形態を図3に基づいて説明する。図3は、親水性皮膜の断面構造を示す模式図である。本発明における親水性皮膜は、図3中の1に示す化合物(A)由来の成分が多く含まれる表面側の上層と、図3中の2に示す化合物(A)由来の成分が表面側の上層に比べて少なく含まれる基材側の下層から構成される。表面側の上層の範囲(d)は、親水性皮膜の表面から100nm以下の範囲である。一方、基材側の下層は表面側の上層を除く範囲である。化合物(A)由来の成分は、表面の濃度が、基材側の下層の濃度に対して1.1倍以上になるように分布している。
【0035】
親水性皮膜における化合物(A)由来の成分濃度は、化合物(A)に含有されるいずれかの原子を、X線光電子分光(XPS)分析に測定することによって求められる。例えば、化合物(A)がイオン性官能基としてスルホン酸基を有する場合、硫黄(S)原子濃度を測定すればよい。XPS分析による深さ方向の原子濃度分析は、親水性皮膜をイオンエッチングしながら測定する方法、もしくは最表面及びサンドペーパー等で研磨した研磨面について測定する方法などがある。イオンエッチングにより測定する場合、エッチング速度は、SiOをスパッタ処理したときの速度と同等と仮定して、SiO換算値として示される。表面からの深さをDとすると、Dの値はスパッタ時間とスパッタ速度(SiO換算値)から算出される。イオンエッチングにより測定する場合、具体的には、表3に示すような測定結果が得られ、表面からの深さをDとすると、Dが100nm以下の範囲におけるS濃度は、Dが100nm以上の範囲におけるS濃度に比べて高くなっていることがわかる。
【0036】
(下層中のドメイン)
本発明の親水性皮膜は、化合物(C)由来の成分が下層に残って化合物(A)、(B)と共重合体になることにより、図3中の3に示すように、親水性皮膜の基材側の下層中にドメインが存在する。ドメインのサイズは、皮膜の膜厚、化合物(C)の配合比等により変化するが、実用的な条件で親水性皮膜を形成させた場合、ドメインの長軸方向の長さ(l)が10nm〜20μmの範囲となる。ドメインは、親水性皮膜断面を研磨して鏡面にした状態で、走査型電子顕微鏡(SEM)により観察することにより確認される。
【0037】
ドメインには、化合物(B)に由来する成分が多く含まれており、基材側の下層(図3中の2に示す部分)には、化合物(C)に由来する成分が多く含まれている。このことは、化合物(C)に由来する成分の含有量が多い場合には、化合物(C)に由来する成分の含有量が少ない場合と比較して、親水性皮膜断面におけるドメイン部分の総面積、すなわち図3中の3部分の総面積が減少し、ドメイン周囲に存在する基材側の下層の面積、すなわち図3中の2部分の面積が増加することから推察される。ドメイン及び親水性皮膜の基材側の面積についても、上記の方法によって確認される。
【0038】
本発明に用いられる親水性皮膜が形成される基材に限定はなく、親水性及び透明性が要求される部位に用いられる任意の基材を利用することができる。水まわりにおいて透明性が要求される基材としては、窓材、鏡、浴室扉材、シャワーブース壁材等の透明性による機能を利用する基材と壁材、床材、カウンター材等の基材の色や模様などの意匠を利用する基材が挙げられる。
【0039】
密着性向上や耐薬品性向上等を目的として基材と親水性皮膜の間にプライマー層又は中間層等を設けてもよい。このとき、親水性皮膜の塗布工程から加熱乾燥工程の間に、プライマー層成分が親水性皮膜材(コーティング材)中に溶出すると親水性皮膜が白濁するため、溶出成分のない皮膜をプライマー層又は中間層として用いる。具体的には、皮膜中で架橋反応する材料をプライマー層又は中間層材料として用い、親水性皮膜材塗布工程の前に、プライマー層又は中間層皮膜中における架橋反応を終了させておく。
【0040】
(親水性皮膜の製造方法)
本発明に係わる実施の形態を図1及び図2に基づいて説明する。図2は、化合物(C)の揮発に伴う親水性皮膜材の状態変化と透明な親水性皮膜を得るための工程を示す概念図である。本発明における親水性皮膜材は、化合物(C)の揮発によって、親水性皮膜の表面層で親水性を発現させる。このとき、化合物(C)の揮発による化合物(A)、(B)の相分離速度は遅いため、図1中のII状態が長時間維持される。また、親水性皮膜材においては、化合物(C)が全て揮発することなく、下層で残った状態で化合物(A)と化合物(B)とともに重合できる。このため、化合物(C)の揮発中であっても、図1中のII状態において、任意のタイミングで硬化させることができる。したがって、図2に示すように、良好な親水性と透明性が両立された親水性皮膜を容易な管理条件により得ることができる。例えば、表2の実施例2では、化合物(C)の揮発による親水性発現から白濁開始までの時間は1時間程度あり、この時間内であれば、いずれのタイミングで硬化させても透明な親水性皮膜が得られる。一方で、表2の比較例2では、親水性発現と白濁開始がほぼ同時に起こるため、透明な親水性皮膜が得られるような製造管理は困難である。
【0041】
親水性皮膜が形成された部材を製造する工程は、化合物(A)、(B)、(C)を含む親水性皮膜材を基材表面に塗布する塗布工程と、化合物(C)の揮発とともに化合物(A)の濃度が表面側の上層で高くなるように化合物(A)と化合物(B)の相分離を進行させる加熱乾燥工程と、加熱乾燥工程中に実行される活性エネルギー線又は熱を与えることにより親水性皮膜を重合させる硬化工程から成る。
【0042】
(塗布工程)
本発明に用いられる親水性皮膜材を基材に塗布する方法に限定はなく、ハケ塗り、スプレーコート、ディップコート、スピンコート、カーテンコートなどの通常の方法によって行われる。塗膜厚さは、十分な親水性と耐摩耗性を有し、かつクラックを発生させず良好なる基材との密着性を発現させるためには、0.1〜300μmの範囲、好ましくは1〜100μmの範囲、より好ましくは3〜50μmの範囲であることが望ましい。
【0043】
(加熱乾燥工程)
本発明における皮膜材が親水性を発現するためには、化合物(C)を揮発させる必要がある。化合物(C)の揮発は室温でも起こりうるが、加熱することが好ましい。加熱方式は、赤外線または熱風等により加熱する公知の方法を用いることができる。加熱温度は、通常室温〜200℃の範囲、好ましくは35〜150℃の範囲であることが望ましい。
【0044】
加熱時間は、親水性発現後から白濁開始前の期間であれば、任意に設定できる。加熱時間が短すぎる、すなわち化合物(C)の揮発が不十分な条件では、親水性が十分に発現せず、皮膜は撥水性となる。一方で、加熱時間が長すぎる、すなわち化合物(C)が大部分揮発する条件では、化合物(A)と化合物(B)の相分離が過剰となり皮膜の白濁が起こる。最適な加熱時間範囲は、化合物(C)の濃度、塗膜厚み、加熱温度、雰囲気湿度等により異なる。生産性を考慮した場合、最適な加熱時間範囲のうち、より短時間となる条件を選択することが好ましい。
【0045】
(硬化工程)
硬化工程は、親水性発現後から皮膜の白濁開始前の期間に開始される。硬化方式としては、熱硬化、活性エネルギー線硬化、または熱硬化と活性エネルギー線硬化との組み合わせが選択される。熱硬化を行う場合は、開始剤として熱重合開始剤が用いられる。また、活性エネルギー線硬化の場合、放射線としては、400〜800nmの可視光、400nm以下の紫外線、及び電子線が挙げられ、通常、装置が高価な電子線よりも、比較的に安価な紫外線または可視光線が好ましく用いられる。紫外線または可視光線を利用して活性エネルギー線硬化を行う場合は、光重合開始剤が用いられる。重合開始剤は、硬化物換算で0.01〜20重量%、好ましくは1〜10重量%の範囲で添加することが好ましい。
【0046】
基材に塗布された皮膜を硬化させる手段としては、熱硬化を行う場合は、赤外線または熱風等により加熱する公知の方法を用いることができる。一方で、活性エネルギー線硬化を行う場合は、紫外線、電子線、放射線等の活性エネルギー線を照射する公知の方法を用いることができる。紫外線を用いる場合、紫外線発生源としては、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、ガリウムランプ、メタルハライドランプ、紫外線レーザー、太陽光等の紫外線などが挙げられる。照射雰囲気は空気でもよいし、窒素、アルゴン等の不活性ガスでもよい。
【0047】
(溶媒)
基材への濡れ性を高めるため、溶媒を含有することもできる。溶媒の種類は化合物(A)、(B)、(C)及び重合開始剤が溶解するものであれば特に限定されないが、アルコール類、エーテル類、ケトン類、エステル類、炭化水素類などの有機溶媒、及び水が利用できる。これらを単独で使用、または、2種類以上併用してもよい。
【0048】
(任意成分)
本発明に用いられる親水性皮膜材には、任意成分として、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、染料、顔料、レベリング剤、消泡剤、増粘剤、沈降防止剤、帯電防止剤、分散剤等の各種添加剤を含有させることができる。
【実施例】
【0049】
以下の実施例によって本発明を更に詳細に説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0050】
(実施例1〜8及び比較例1〜2)
表1に示した成分を種々の割合で混合して、親水性皮膜材を調製した。得られた各皮膜材を、100×100mmサイズのアクリル板に、バーコーター#12を用いて塗布し、80℃の熱風乾燥炉にて、表1に記載の時間加熱乾燥を行った。その後、高圧水銀ランプを備えた紫外線硬化装置(ANUP4154、パナソニック電工)にて、積算光量1000mJ/cmとなるように、紫外線を照射して親水性皮膜材を硬化させた。
得られた各親水性皮膜について、親水性皮膜材の調合、及びそれぞれの親水性皮膜の親水性、透明性、及び親水持続性の評価結果を表1に示す。
【表1】

【0051】
(親水性評価)
得られた親水性皮膜の親水性について、接触角計を用いて、水滴接触角を測定した。
【0052】
(透明性評価)
得られた親水性皮膜の透明性について、ヘイズメーターを用いてヘイズを測定した。
【0053】
(親水持続性評価)
実施例6、実施例7、及び比較例2で得られたサンプルを、アルカリ性洗剤に48時間浸漬し、続いて酸性洗剤に48時間浸漬した。洗剤浸漬後のサンプルについて、蒸留水で十分にすすいだ後、水滴接触角を測定した。
【0054】
表1において、略号は以下の意味を示す。
A−1:2−(メタクリロイルオキシ)エチルスルホン酸ナトリウム
SA3:ノストラSA3(固形分80wt%、三井化学)
PEMP:ペンタエリスリトールトリアクリレート
A−GLY−9E:エトキシ化グリセリントリアクリレート(EO9mol)
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
HEA:2−ヒドロキシエチルアクリレート
HPMA:2-ヒドロキシプロピルメタクリレート
NVF:N−ビニルホルムアミド
HCPK:1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン
【0055】
(希釈剤の揮発割合の算出)
実施例2及び比較例2の親水性皮膜材を100×100mmサイズのアクリル板に、バーコーター#12を用いて塗布し、60℃の熱風乾燥炉にて、表2に記載の時間加熱乾燥を行った。各加熱乾燥時間における、希釈剤の揮発割合を式(1)より算出した。希釈剤は、実施例2では化合物(C)と溶媒であり、比較例2では溶媒のみである。
式(1)を用いた計算のために、塗布直後及び加熱乾燥後の親水性皮膜材重量を測定した。親水性皮膜材重量は、親水性皮膜材が塗布された状態のアクリル板の重量からアクリル板のみの重量を引いた値とした。また、実施例2においては、塗布直後の親水性皮膜材重量の48%を塗布直後の化合物(C)重量、また9.6%を塗布直後の溶媒重量とした。比較例2においては、塗布直後の親水性皮膜材重量の57.6%を塗布直後の溶媒重量とした。
化合物(C)及び溶媒の揮発割合を表2に示す。

(希釈剤の揮発割合[%])
=(揮発量[g])/(塗布直後の親水性皮膜材中の希釈剤重量[g])
={(塗布直後の親水性皮膜材重量[g])−(加熱乾燥後の親水性皮膜材重量[g])}/
{(塗布直後の親水性皮膜材中の化合物(C)重量[g])+(塗布直後の親水性皮膜材中の溶媒重量[g])}
…(1)
【0056】
実施例2及び比較例2の親水性皮膜材を100×100mmサイズのアクリル板に、バーコーター#12を用いて塗布し、60℃の熱風乾燥炉にて、表2に記載の時間加熱乾燥を行った。高圧水銀ランプを備えた紫外線硬化装置(ANUP4154、パナソニック電工)にて、積算光量1000mJ/cmとなるように、紫外線を照射して親水性皮膜材を硬化させた。
得られた親水性皮膜について、実施例1〜8、比較例1〜2と同様の方法で親水性及び透明性を測定した。親水性については、水滴接触角が0〜30°の範囲を○、30〜40°の範囲を△、40°より高い範囲を×として評価した。透明性については、ヘイズが0〜1.0%の範囲を○、1.0〜2.0%の範囲を△、2.0%より高い範囲を×として評価した。結果を表2に示す。

【表2】

【0057】
(化合物(A)濃度の測定)
実施例2の親水性皮膜の炭素(C)、酸素(O)、硫黄(S)原子の深さ方向の濃度分布について、X線光電子分光(XPS)分析装置を用いて分析を行った。化合物(A)に由来する原子濃度の深さ方向の分布を、表3に示す。
【表3】

【0058】
(ドメインの観察)
実施例2、8及び比較例2で得られた親水性皮膜サンプルをカットし、断面を紙やすり(480番及び2000番、10000番)で研磨して鏡面状態にした後、白金蒸着を行った。得られたサンプルの断面について、走査型電子顕微鏡(S−800、日立製作所)を用いて、加速電圧5kVの条件にて観察を行った。結果を図4、図5、図6に示す。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】親水性皮膜形成過程における皮膜材成分の分布を表す概念図。
【図2】化合物(C)揮発に伴う親水性皮膜材の状態変化と透明な親水性皮膜を得るための工程を示す概念図。
【図3】親水性皮膜の断面構造を示す模式図。
【図4】実施例2の親水性皮膜断面の走査型電子顕微鏡像。
【図5】実施例8の親水性皮膜断面の走査型電子顕微鏡像。
【図6】比較例2の親水性皮膜断面の走査型電子顕微鏡像。
【図7】従来技術における、溶媒揮発に伴う親水性皮膜材の状態変化と透明な親水性皮膜を得るための工程を示す概念図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材表面に親水性皮膜を形成するコーティング材であって、
分子内に1個以上のイオン性官能基と1個以上の重合性官能基を有する化合物(A)と
分子内に1個以上の重合性官能基を有する化合物(B)と、
前記化合物(A)と前記化合物(B)の相分離進行を遅延させることができる揮発性の化合物(C)とを備えることを特徴とするコーティング材。
【請求項2】
前記化合物(C)は、揮発するとともに、前記化合物(A)と前記化合物(B)とともに硬化して共重合体と成り得ることを特徴とする請求項1記載のコーティング材。
【請求項3】
前記化合物(C)の揮発作用によって前記親水性皮膜の表面側で親水性発現させる一方で、
前記化合物(C)が全て揮発することなく、前記親水性皮膜の基材側で残った状態で前記化合物(A)と前記化合物(B)とともに硬化して共重合体となり得るように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のコーティング材。
【請求項4】
前記化合物(B)に含まれる前記重合性官能基はアクリロイル基もしくはメタクリロイル基であり、
前記化合物(B)は3個以上のアクリロイル基もしくはメタクリロイル基を有し、
かつ(分子量)/(重合性官能基数)が1000以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のコーティング材。
【請求項5】
前記化合物(C)は分子内に1個の重合性官能基、及び1個以上の親水基を有する、分子量500以下の化合物であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のコーティング材。
【請求項6】
基材に親水性皮膜が形成されてなる部材であって、
前記親水性皮膜は、
分子内に1個以上のイオン性官能基と1個以上の重合性官能基を有する化合物(A)と、
分子内に1個以上の重合性官能基を有する化合物(B)と、
前記化合物(A)と前記化合物(B)の相分離進行を遅延させることができる揮発性の化合物(C)
からなる共重合体であって、
前記化合物(A)は前記親水性皮膜の表面側の方が前記親水性皮膜の基材側より多く含まれており、
前記化合物(C)は、前記化合物(A)と前記化合物(B)とともに硬化して共重合体となることを特徴とする部材。
【請求項7】
前記化合物(C)は、前記親水性皮膜の基材側に残って共重合体になっているとともにドメインが存在するよう構成されていることを特徴とする請求項6記載の部材。
【請求項8】
前記ドメインのサイズは、10nm−20μmであることを特徴とする請求項7に記載の部材。
【請求項9】
基材に親水性皮膜が形成されてなる部材の製造方法であって、
前記親水性皮膜は、
分子内に1個以上のイオン性官能基と1個以上の重合性官能基を有する化合物(A)と、
分子内に1個以上の重合性官能基を有する化合物(B)と、
前記化合物(A)と前記化合物(B)の相分離進行を遅延させることができる揮発性の化合物(C)からなる共重合体であって、
前記化合物(A)と前記化合物(B)と前記化合物(C)からなるコーティング材を前記基材表面に塗布する塗布工程と、
前記塗布工程後に前記化合物(C)の揮発作用によって前記化合物(A)の濃度が表面側で高くなるように前記化合物(A)と前記化合物(B)の相分離を遅延させながら進行させる加熱乾燥工程と、
前記加熱乾燥工程後に活性エネルギー線又は熱の少なくともいずれか一つを与えることによって前記コーティング材を硬化させる硬化工程を備え、
前記硬化工程は、前記化合物(C)が前記親水性皮膜の基材側に残った状態であるとともに、その濃度が前記化合物(C)の揮発作用により前記親水性皮膜の表面側の濃度が前記親水性皮膜の基材側の濃度より低くなっている状態で、かつ前記化合物(A)の濃度は前記親水性皮膜の表面側が前記親水性皮膜の基材側より高くなっている状態で、前記化合物(C)が、前記化合物(A)と前記化合物(B)とともに硬化して共重合体となるように前記硬化工程の開始及び、工程条件が設定されていることを特徴とする部材の製造方法。
【請求項10】
前記加熱乾燥工程は、前記化合物(C)の揮発が加熱によりコントロールされ、
前記硬化工程は、前記加熱乾燥工程とは異なる方法である活性エネルギー線照射によりコントロールされることを特徴とする請求項9記載の部材の製造方法。
【請求項11】
親水性皮膜が形成されてなる基材としての鏡の製造方法であって、
前記親水性皮膜は、
分子内に1個以上のイオン性官能基と1個以上の重合性官能基を有する化合物(A)と、
分子内に1個以上の重合性官能基を有する化合物(B)と、
前記化合物(A)と前記化合物(B)の相分離進行を遅延させることができる揮発性の化合物(C)からなる共重合体であって、
前記化合物(A)と前記化合物(B)と前記化合物(C)からなるコーティング材を前記鏡表面に塗布する塗布工程と、
前記塗布工程後に前記化合物(C)の揮発作用によって前記化合物(A)の濃度が前記親水性皮膜の表面側で高くなるように前記化合物(A)と前記化合物(B)の相分離を遅延させながら進行させる加熱乾燥工程と、
前記加熱乾燥工程後に活性エネルギー線又は熱の少なくともいずれか一つを与えることによって前記親水性皮膜を形成する材料を硬化させる硬化工程を備え、
前記硬化工程は、前記化合物(C)が前記親水性皮膜の基材側に残った状態であるとともに、その濃度が前記表面側の揮発作用により前記親水性皮膜の表面側が前記親水性皮膜の基材側より低くなっている状態で、かつ前記化合物(A)の濃度は前記親水性皮膜の表面側が前記親水性皮膜の基材側より高くなっている状態で、前記化合物(C)が、前記化合物(A)と前記化合物(B)とともに硬化して共重合体となるように前記硬化工程の開始及び、工程条件が設定されていることを特徴とする鏡の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図7】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−236950(P2012−236950A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−108363(P2011−108363)
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】