説明

コーティング材の製造方法およびコーティング材

【課題】バルーン粒子の浮力を利用して高断熱性および減菌性に優れたコーティング材を得ることのできる製造方法及び、施工コストに優れたコーティング材の製造方法を提供する。
【解決手段】比重が1未満のセラミック系またはガラス系のバルーン粒子6に、水および水溶性樹脂8を混錬して一次混錬物を得る第1混錬工程と、第1混錬工程で得られた一次混錬物に、比重が1を超える光触媒材料10を混錬して二次混錬物11を得る第2混錬工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高断熱性、減菌性、防汚性等の各性能に優れたコーティング材の製造方法と、同製造方法によって得られるコーティング材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネルギ、地球温暖化、都市のヒートアイランド対策、CO2排出量削減等を目的として、建物の屋上に緑化設備を施工したり、建物の屋根や外壁に耐熱、遮熱塗料を塗布し、これによって建物内部の温度を下げ、冷房に必要な電力費用の削減を図る技術が普及している。
【0003】
前者の建物の屋上に緑化設備を施工する例としては、屋上に防水シートを敷設し、その上に緑化基盤を並べるものなどが知られている(例えば特許文献1参照)。後者の耐熱、遮熱塗料としては、ガラス系やシラス系のセラミック材料を主原料としたものが知られている(例えば特許文献2参照)。
【0004】
一方、近年、鶏舎や家畜舎等において、鶏インフルエンザ等のウイルス感染予防の必要性が増大しており、抗菌性、減菌性に優れたコーティング剤の開発が叫ばれている。抗菌性等を発揮する塗料としては、酸化チタンを配合したものが知られている(例えば特許文献3参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2004−89005号公報
【特許文献2】特開2001−192281号公報
【特許文献2】特開平10−81840号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、緑化設備の例では、施工、維持管理の費用が高いという問題がある。耐熱、遮熱塗料の例では、熱伝導率の高いガラス系・シリカ系のセラミック材料を主材料とするため、断熱効果を得るために、4〜8回程度の重ね塗りが必要とされ、施工費用が高くなる問題がある。
【0007】
酸化チタン配合の塗料の場合には、酸化チタンの比重が1を越えるため、酸化チタンをセラミック粒子や溶剤と一緒に混錬させた場合、セラミック粒子に比べて酸化チタンが沈降して、塗布層の表層部に酸化チタンが浮上せず、溶剤の皮膜が表層部にコーティングされることもあって、塗布後の抗菌、減菌作用を十分に発揮できない課題があった。
【0008】
本発明者は、比重が1を越えるチタン化合物に代表される光触媒材料や比重が1を超えるカリウムに代表される空気触媒材料を混錬物の表層部に浮上させることに成功し、高断熱性および減菌性に優れたコーティング材を製造することができた。また、その施工コストにも優れていることを確認した。
【0009】
よって、本発明は、高断熱性および減菌性に優れたコーティング材を得ることのできる製造方法を提供すること、また、施工コストに優れたコーティング材の製造方法を提供することを目的としている。
【0010】
さらに、本発明は、同製造方法によって得られるコーティング材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明に係る請求項1記載のコーティング材の製造方法は、比重が1未満のセラミック系またはガラス系のバルーン粒子に、水および水溶性樹脂を混錬して一次混錬物を得る第1混錬工程と、第1混錬工程で得られた一次混錬物に、比重が1を超える光触媒材料を混錬して二次混錬物を得る第2混錬工程とを含むことを特徴とする。
【0012】
第1混練工程において、比重が1未満のセラミック系またはガラス系のバルーン粒子に、水および水溶性樹脂を混錬することによって、バルーン粒子が水溶液中に攪拌分散し、個々のバルーン粒子の周囲に水溶性樹脂がコーティングされる。そして、第2混練工程において、第1混練工程で得られた一次混練物に、比重が1を超える光触媒材料を混練することによって、個々のバルーン粒子の周囲にコーティングされた水溶性樹脂がバインダーとなって、個々のバルーン粒子に各光触媒材料が均等にかつ確実に結合する。そして、個々のバルーン粒子の浮力によって、個々のバルーン粒子に結合された比重が1を超える光触媒材料が混練物の表層部に浮上する。ここで、光触媒材料は、チタン化合物に代表され、光触媒作用により、減菌等の各機能を発揮する。比重が1を超える光触媒材料としては、酸化チタンやチタンアパタイト等がある。
【0013】
比重が1を超える光触媒材料は、その重さによって沈降し、従来では混練物の表層部に浮上しなかったのに対し、個々のバルーン粒子の浮力を利用して混練物の表層部に浮上させバルーン粒子およびそれら触媒物質を表面に並べて露出させることができる。これにより、コーティング材の施工時に光触媒材料が表層部に浮上して、施工されたコーティング材層の表層部に互いに結合された状態のバルーン粒子と光触媒材料が並ぶコーティング材を製造することができる。
【0014】
コーティング材層の表層部にバルーン粒子と光触媒材料が並ぶから、主としてバルーン粒子が発揮する高断熱性、光触媒材料が紫外線の照射を受けて発揮する抗菌性、減菌性の各機能を同時に発揮する。冬季においては、高い保温機能を発揮する。また、コーティング材層の乾燥後は、樹脂がバルーン粒子とそれら触媒物質の結合状態を強固に保持して、コーティング材層の耐久性を発揮し、さらに、水溶性樹脂を用いて、有機溶剤を使用しないから、従来のように有機溶剤が表層に表出して、光触媒材料のもつ本来の機能を阻害しない。
【0015】
光触媒材料を表層に並べることができるから、光触媒作用を十分に発揮した高い防汚性を発揮する。
【0016】
本発明に係る請求項2記載のコーティング材の製造方法は、前記第1混錬工程において、バルーン粒子100重量%に対し、水10〜55重量%、水溶性樹脂10〜80を混錬することを特徴とする。
【0017】
本発明に係る請求項3記載のコーティング材の製造方法は、前記第2混錬工程において、一次混錬物100重量%に対し、光触媒材料1〜80重量%を混錬することを特徴とする。
【0018】
本発明に係る請求項4記載のコーティング材の製造方法は、前記光触媒材料が酸化チタンであることを特徴とする。
【0019】
酸化チタン(TiO)は、ウイルスや汚れに対し、光触媒効果によって減菌性・防汚性を発揮し、酸化チタンがコーティング層の表層部に均等に並ぶことによって、酸化チタン本来の減菌性・防汚性を十分発揮させることができる。したがって、鶏舎や畜舎、住宅、食品工場、病院等の建築物の屋根、外壁等にコーティング材を塗布施工することで、ウイルスの侵入を阻止し、また、建物の汚れを防ぐことができる。
【0020】
本発明に係る請求項5記載のコーティング材の製造方法は、前記光触媒材料がチタンアパタイトであることを特徴とする。
【0021】
チタンアパタイトは、カルシウムアパタイトの一部がチタンによって置換され、たとえば、Ca10(PO(OH)で表されるカルシウムヒドロキシアパタイトにおけるカルシウムの一部がチタンによって置換されたCaTi(PO(OH)で表される。
【0022】
チタンアパタイトは、浮遊しているウイルスを積極的に引き寄せて吸着し、減菌させる。チタンアパタイトがコーティング材層の表層部に均等に並ぶことによって、その吸着減菌性能が十分に発揮される。また、防汚性も発揮される。したがって、鳥舎や畜舎、住宅、食品工場、病院等の建築物の床や内壁等にコーティング材を塗布施工することで、空気中のウイルスを引き付けて、吸着減菌させることができる。
【0023】
本発明に係る請求項6記載のコーティング材の製造方法は、前記光触媒材料の代わりに比重が1を超える空気触媒材料を用いることを特徴とする。
【0024】
比重が1を超える空気触媒材料は、その重さによって沈降し、従来では混練物の表層部に浮上しなかったのに対し、個々のバルーン粒子の浮力を利用して混練物の表層部に浮上させバルーン粒子およびそれら触媒物質を表面に並べて露出させることができる。これにより、コーティング材の施工時に空気触媒材料が表層部に浮上して、施工されたコーティング材層の表層部に互いに結合された状態のバルーン粒子と空気触媒材料が並ぶコーティング材を製造することができる。空気触媒材料は、一次混錬物100重量%に対し、1〜80重量%を混錬する。
【0025】
コーティング材層の表層部にバルーン粒子と空気触媒材料が並ぶから、主としてバルーン粒子が発揮する高断熱性、空気触媒材料が紫外線の照射を受けることなく発揮する抗菌性、減菌性の各機能を同時に発揮する。
【0026】
本発明に係る請求項7記載のコーティング材の製造方法は、前記空気触媒材料がカリウムであることを特徴とする。
【0027】
カリウム(カリウム40)は、空気中に浮遊するウイルスや汚れに対し、空気触媒効果によって減菌性・防汚性を発揮し、比重が1を超えるカリウムをコーティング層の表層部に均等に並ばせることによって、カリウムの減菌性・防汚性を十分発揮させることができる。表層部のカリウムは、空気中の水分子と反応し、過酸化水素を発生し、過酸化水素から生成されたヒドロキシルラジカルと空気中の酸素の反応によって、スーパーオキシドイオンが生成される。スーパーオキシドイオンの強酸化力によって、紫外線反応によらない空気触媒反応によって、室内や暗所内の減菌・菌の抑制作用が24時間得られる。したがって、鶏舎や畜舎、住宅、食品工場、病院等の建築物の内壁等に、表層部にカリウムが並ぶコーティング材を塗布施工することで、室内や暗所に浮遊するウイルスを減菌し、抑制し、建物の汚れを防ぐことができる。
【0028】
本発明に係る請求項8記載のコーティング材の製造方法は、前記バルーン粒子の平均空孔率が20%以上であることを特徴とする。
【0029】
バルーン粒子の平均空孔率が20%以上であることにより、熱伝導性が低くなり、高断熱性を発揮する。平均空孔率は60%以上であることがより望ましい。従来のガラス系等のバルーン粒子が平均空孔率10%以下で、高断熱性を得るために4〜8層重ね塗りして施工していたのに対し、1〜2層のコーティング材層を施工するだけで、十分な高断熱性および減菌性を発揮でき、施工コストの低減化を図ることができる。
【0030】
本発明に係る請求項9記載のコーティング材の製造方法は、前記バルーン粒子が球状体であることを特徴とする。
【0031】
バルーン粒子が球状体であることにより、施工時に液状のコーティング材が伸延しやすく、したがって、現場施工しやすい。また、コーティング材層を薄く形成できて、施工コストを低減化できる。
【0032】
本発明に係る請求項10記載のコーティング材の製造方法は、前記バルーン粒子が酸化アルミニウムであることを特徴とする。
【0033】
バルーン粒子が酸化アルミニウム(Al)であることにより、ガラス系・シラス系のバルーン粒子に比較し、バルーン形状が不定形になりにくく、安定した形状のバルーン粒子が得られる。なお、酸化アルミニウムのバルーン粒子は、約1400℃の高温下で酸化アルミニウムを焼成して得られ、空孔率20%以上の球状のバルーン粒子が安定して得られる。
【0034】
本発明に係る請求項11記載のコーティング材は、請求項1ないし請求項9のいずれか一項に記載の製造方法によって製造されたものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0035】
以上説明したように、本発明に係るコーティング材の製造方法によると、比重が1未満のセラミック系またはガラス系のバルーン粒子に、水および水溶性樹脂を混錬して一次混錬物を得る第1混錬工程と、第1混錬工程で得られた一次混錬物に、比重が1を超える光触媒材料を混錬して二次混錬物を得る第2混錬工程とを含むことにより、第2混錬工程において、バルーン粒子の浮力を利用して、バルーン粒子に結合させた比重が1を超える光触媒材料を混錬物の表層部に浮上させて、バルーン粒子および光触媒材料を均等に表層部に並べることができ、これによって、高断熱性、減菌性ともに優れたコーティング材を製造することができるという優れた効果を奏する。
【0036】
また、第2混練工程で光触媒材料の代わりにカリウムに代表される空気触媒材料を混練することにより、比重が1未満のバルーン粒子の浮力を利用して、バルーン粒子と結合させた比重が1を超える空気触媒材料を混練物の表層部に浮上させて、バルーン粒子および空気触媒材料を均等に表層部に並べることができ、これによっても、高断熱性、空気触媒による減菌性に優れたコーティング材を製造することができる。
【0037】
また、1〜2層程度塗布するだけで上記各機能を発揮させることができるので、施工コストにも優れるという効果を奏する。
【0038】
さらには、本発明に係る製造方法によって得られるコーティング材によると、上に述べた高断熱性、減菌性ともに優れたコーティング層を建物の屋根や内外の壁に容易に施工することができる効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
本発明を実施するための第1の実施形態を図1ないし図6を参照して説明する。図1において、1は混練装置である。
【0040】
混練装置1は、有底筒形の容器2の底部付近に円板状の攪拌板3が水平に配置され、この攪拌板3は垂直軸4によって支持され、駆動モータ5によって回転駆動され、容器2内に投入された各材料を攪拌し、混錬できるようになっている。
【0041】
(第1混練工程)
まず、図1(A)に示すように、第1混練工程において、セラミック系バルーン粒子6、水7、水溶性樹脂8の各材料を容器2内に投入し、駆動モータ5によって攪拌板3を回転させ、各材料を混練し、一次混錬物9を得る。各材料の配合割合は、セラミック系バルーン粒子100重量部に対し、水50重量部、水溶性樹脂50重量部とする。
【0042】
なお、セラミック系バルーン粒子100重量部に対し、水は10〜55重量部のうちから、水溶性樹脂は10〜80重量部のうちから、それぞれ適宜選択することができる。
【0043】
容器2内で攪拌板3を回転させることにより、セラミック系バルーン粒子6が水溶液中に攪拌分散し、図2に示すように、個々のバルーン粒子6の周囲に水溶性樹脂8がコーティングされる。また、水平な円板状の攪拌板3を用いて攪拌するから、セラミック系バルーン粒子6の破損や潰れが防止される。
【0044】
セラミック系バルーン粒子6は、粒径20ミクロン〜60ミクロン、平均空孔率20%以上、比重0.8以下の酸化アルミニウム(Al)の球状体からなる。酸化アルミニウムは、約1400℃の高温で焼成されることによって球体形状で平均空孔率20%以上のバルーン粒子が安定して得られる。なお、水溶性樹脂8としては、アクリル樹脂などが用いられる。
【0045】
(第2混練工程)
次に、図1(B)に示すように、第2混練工程において、第1混練工程で得られた容器2中の一次混練物9に、比重が1を超える光触媒材料である酸化チタン10を投入し、継続して攪拌板3を回転させ、混練し、二次混練物(コーティング材)11を得る。配合割合は、一次混練物100重量部に対し、酸化チタン30重量部である。
【0046】
なお、一次混錬物100重量部に対し、酸化チタンは1〜80重量部のうちから適宜選択することができる。
【0047】
後の第2混練工程において、酸化チタン10を投入することによって、図3に示すように、一次混練物9中の、個々のバルーン粒子6の周囲にコーティングされた水溶性樹脂8がバインダーとなって、個々のバルーン粒子6の周囲に各酸化チタン10が均等にかつ確実に結合する。また、個々のバルーン粒子・酸化チタン結合体12が互いに結合して、ユニットUを構成する場合もある。そして、図4に示すように、個々のバルーン粒子6の浮力によって、個々のバルーン粒子・酸化チタン結合体12が、あるいは個々のバルーン粒子・酸化チタン結合体12の複合ユニットUが、2次混練物11の表層部Aに浮上する。
【0048】
酸化チタン(TiO)は、比重が1を超える(比重3.0〜3.9)ので、その重さによって混練後に沈降し、従来では混練物の表層部に浮上しなかったのに対し、個々のバルーン粒子6の浮力を利用してニ次混練物11の表層部に浮上させることができる。これにより、図5に示すように、コーティング施工時に表層部に酸化チタン10が並んで表面に露出するコーティング材層13を施工することができる。なお、図5中、符号14は接着部である下層部、符号15は外壁を示している。
【0049】
図6は、本発明のコーティング材の製造方法によって製造されたコーティング材を建物20の屋根21および外壁22に施工した構造を示している。
【0050】
図6に示すように、建物20の屋根21にコーティング材層13を1〜2層施工することにより、高断熱性を発揮し、太陽光の輻射熱から建物20を防護できる。例えば施工なしの屋根に比べて屋根上の温度を最大で30℃程度低下させることができ、建物内の温度をほぼ一定に保つことができる。また、外壁22にコーティング材層13を1〜2層施工することで、コーティング材層13の表面に付着したウイルスを酸化チタン10の紫外線照射による光触媒効果で減菌させることができる。さらに、冬場は屋根21および外壁22のコーティング材層13の高断熱性能によって、高い保温機能を発揮する。
【0051】
次に、本発明の第2の実施形態について、図7を参照して説明する。本実施形態においては、第2混練工程において、酸化チタン10の代わりに、別の光触媒材料であるチタンアパタイトを投入する。
【0052】
(第1混練工程)
第1混練工程においては、第1の実施形態と同様に、図7(A)に示すように、セラミック系バルーン粒子6、水7、水溶性樹脂8の各材料を容器2内に投入し、各材料を混練し、一次混練物9’を得る。各材料の配合割合は、セラミック系バルーン粒子100重量部に対し、水50重量部、水溶性樹脂50重量部とする。ここでも、セラミック系バルーン粒子6として、粒径20ミクロン〜60ミクロン、平均空孔率20%以上、比重0.8以下の酸化アルミニウム(Al)の球状体を用いる。
【0053】
(第2混練工程)
第2混練工程において、図7(B)に示すように、第1混練工程で得られた容器2中の一次混練物9’に、チタンアパタイトを投入して、継続して攪拌板3を回転させ、混練し、二次混練物(コーティング材)17を得る。配合割合は、一次混練物100重量部に対し、チタンアパタイト30重量部である。チタンアパタイトの配合量は、一次混錬物100重量部に対し、1〜80重量部の間で適宜選択できる。
【0054】
第2混練工程において、チタンアパタイトを投入することによって、一次混練物9’中の、個々のバルーン粒子6の周囲にコーティングされた水溶性樹脂8がバインダーとなって、個々のバルーン粒子6に各チタンアパタイトが均等にかつ確実に結合する。そして、図8に示すように、個々のバルーン粒子6の浮力によって、個々のバルーン粒子6に、バルーン粒子・チタンアパタイト結合体として、あるいはそれらの複合ユニットとして結合されたチタンアパタイト16が二次混練物17の表層部A’に浮上する。
【0055】
チタンアパタイトは、カルシウムアパタイトの一部がチタンによって置換されたもので、たとえば、Ca10(PO(OH)で表されるカルシウムヒドロキシアパタイトにおけるカルシウムの一部がチタンによって置換されたCaTi(PO(OH)で表されるものが用いられる。チタンアパタイトは、比重が1を超える(比重2.0〜3.9)ので、酸化チタンと同様に、個々のバルーン粒子6の浮力を利用して2次混練物17の表層部A’に浮上させることができる。これにより、図9に示すように、コーティング施工時にチタンアパタイト16が浮上して、表面にチタンアパタイト16が露出して並ぶコーティング材層18を施工することができる。
【0056】
図6に示す建物20の内壁23や床24にチタンアパタイト16が表面に露出して並ぶコーティング材層17を1〜2層施工し、表面に露出して並ぶチタンアパタイト16により、空気中に浮遊するウイルスを効果的に引き付けて吸着し、減菌させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明に係るコーティング材の製造方法は、工場・倉庫・公共施設・一般住宅・乗用車・バス・コンテナ等に施工可能なコーティング材の製造方法として、利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】第1の実施形態を示すもので、(A)(B)は本発明に係るコーティング材の製造手順を示す説明図、
【図2】第1混錬工程において、個々のバルーン粒子の周囲に水溶性樹脂がコーティングされる様子を示す説明図、
【図3】第2混錬工程において、個々のバルーン粒子の周囲に酸化チタンが結合された様子を示す説明図、
【図4】個々のバルーン粒子の浮力によって、酸化チタンも二次混錬物の表層部に浮上した様子を示す説明図、
【図5】コーティング材層の施工状態を示す断面図、
【図6】コーティング材層が施工された建物の断面図、
【図7】第1の実施形態を示すもので、(A)(B)は本発明に係るコーティング材の製造手順を示す説明図、
【図8】個々のバルーン粒子の浮力によって、酸化チタンも二次混錬物の表層部に浮上した様子を示す説明図、
【図9】コーティング材層の施工状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0059】
1 混錬装置
2 容器
3 攪拌板
4 垂直軸
5 駆動モータ
6 セラミック系バルーン粒子
7 水
8 水溶性樹脂
9,9’ 一次混錬物
10 酸化チタン(光触媒材料)
11,17 二次混錬物(コーティング材)
12 バルーン粒子・酸化チタン結合体
13,18 コーティング材層
14 下層部(接着部)
15,22 外壁
16 チタンアパタイト(光触媒材料)
20 建物
21 屋根
23 内壁
24 床
U バルーン粒子・酸化チタン結合体の複合ユニット


【特許請求の範囲】
【請求項1】
比重が1未満のセラミック系またはガラス系のバルーン粒子に、水および水溶性樹脂を混錬して一次混錬物を得る第1混錬工程と、第1混錬工程で得られた一次混錬物に、比重が1を超える光触媒材料を混錬して二次混錬物を得る第2混錬工程とを含むことを特徴とするコーティング材の製造方法。
【請求項2】
前記第1混錬工程において、バルーン粒子100重量%に対し、水10〜55重量%、水溶性樹脂10〜80を混錬することを特徴とする、請求項1記載のコーティング材の製造方法。
【請求項3】
前記第2混錬工程において、一次混錬物100重量%に対し、前記光触媒材料1〜80重量%を混錬することを特徴とする、請求項1又は請求項2記載のコーティング材の製造方法。
【請求項4】
前記光触媒材料が酸化チタンであることを特徴とする、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のコーティング材の製造方法。
【請求項5】
前記光触媒材料がチタンアパタイトであることを特徴とする、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のコーティング材の製造方法。
【請求項6】
前記光触媒材料の代わりに比重が1を超える空気触媒材料を用いることを特徴とする、請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載のコーティング材の製造方法。
【請求項7】
前記空気触媒材料がカリウムであることを特徴とする、請求項6記載のコーティング材の製造方法。
【請求項8】
前記バルーン粒子の平均空孔率が20%以上であることを特徴とする、請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載のコーティング材の製造方法。
【請求項9】
前記バルーン粒子が球状体であることを特徴とする、請求項1ないし請求項8のいずれか一項に記載のコーティング材の製造方法。
【請求項10】
前記バルーン粒子が酸化アルミニウムであることを特徴とする、請求項1ないし請求項9のいずれか一項に記載のコーティング材の製造方法。
【請求項11】
請求項1ないし請求項10のいずれか一項に記載の製造方法によって製造されるコーティング材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−79221(P2009−79221A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2008−249368(P2008−249368)
【出願日】平成20年9月27日(2008.9.27)
【出願人】(508130661)スターハード株式会社 (7)
【Fターム(参考)】