説明

コーティング材料、その製造方法および光学物品

【課題】
表面硬度が高くて耐擦傷性に優れ、しかも低屈折率のコーティング材料、その製造方法および前記コーティング材料を用いた光学物品を提供する。
【解決手段】
(A)パーフルオロ基を有する化合物、(B)平均粒子径が40〜100nmの内部に空隙を有するシリカ微粒子、および(C)平均粒子径が5〜30nmの多孔質シリカ微粒子を含んでなり、コーティング後に得られる被膜の屈折率が1.365以下であるコーティング材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐擦傷性に優れた低屈折率のコーティング材料、その製造方法および前記コーティング材料を用いた光学物品に関するものであり、特に反射防止膜、反射防止フィルム、反射防止板、光学フィルター、光学レンズ、ディスプレイ等の光学物品、より具体的には、例えばCRT、LCD、PDP、EL、FEDなど各種ディスプレイの前面板やリアプロジェクション用スクリーン等の光学分野に有用な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
低屈折率のコーティング材料は、反射防止膜として、レンズ、光学部品、コンピュータやテレビ等の画像表示装置において、外光や蛍光灯などの光源の写り込みを低減し、視認性を向上させるために用いられ、可視光の反射を低減している。
【0003】
反射防止の技術としては、基材の表面を屈折率の小さい透明被膜で被覆することにより、反射率を小さくする方法(例えば、特許文献1参照)、および基材に高屈折率層を形成し、その上層に低屈折率層を形成することにより、より効果的な反射防止をする方法(例えば、特許文献2参照)が知られている。
【0004】
また、近年では、光学物品の大型化、大面積化が進み、光学フィルムにウェットコーティング法による反射防止膜の加工が多く行われており、さらに低屈折率化する試みも検討されている。例えば、フッ素含有有機ポリシロキサンを用いた反射防止物品(例えば、特許文献3参照)や、低屈折率の有機物質を溶媒に溶解した後、基板に低屈折率の有機物質をコーティングして優れた反射防止特性を示す方法(例えば、特許文献4、5参照)が知られている。
【0005】
さらにまた、近年では、各種樹脂よりも低い屈折率を有する内部に空隙を有するシリカ微粒子をマトリックス材料である有機材料中に分散させて得られるコーティング膜形成塗料を塗布し、乾燥、硬化することによって低屈折率の透明被膜を形成する技術(例えば、特許文献6、7、8、9参照)が知られている。すなわち、より低屈折率を実現するためには、内部に空洞を有するシリカ微粒子を多く導入することが試みられているのである。
【0006】
しかしながら、上述した従来の方法では、低屈折率性と表面硬度の両立には限界があり、低屈折率に効果がある中空粒子を多く入れると表面硬度が著しく低下していた。また、中空粒子の添加量を少なくすると低屈折率性が不十分であり、反射防止膜として用いたときに目標とする低反射率が達成されないという問題があった。多孔質シリカのみを用いる場合、粒子径の大きなものでは低屈折率の効果が示されるものの、ヘイズ値が高くなりディスプレイの視認性向上には必ずしも有効ではなかった。一方、粒子径を小さくしたものでは微細孔の開口径が比較的大きくなり、マトリックス樹脂で埋めてしまうことにより低屈折率の効果が示されないという問題があった。
【0007】
したがって、このようなシリカ微粒子を多く含むコーティング剤については、その改良技術が強く求められているのが実情である。
【特許文献1】特公昭62−58634号公報
【特許文献2】特開昭63−81033号公報
【特許文献3】特公平6−98703号公報
【特許文献4】特開平4−355401号公報
【特許文献5】特開平6−18705号公報
【特許文献6】特開2002−79616号公報
【特許文献7】特開2004−83307号公報
【特許文献8】特開2004−258267号公報
【特許文献9】特開2005−283872号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果達成されたものである。
【0009】
したがって、本発明の目的は、表面硬度が高くて耐擦傷性に優れ、しかも低屈折率のコーティング材料、その製造方法および前記コーティング材料を用いた光学物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記の問題点を解決するために鋭意検討した結果、平均粒子径が5〜30nmの多孔質シリカとマトリックス樹脂の組み合わせでは得られなかった低屈折率性が、驚くべきことに、平均粒子径が40〜100nmの内部に空隙を有するシリカ微粒子と併用することによって、さらに低屈折率化可能であることを見出し、本発明に到達した。
【0011】
すなわち、上記目的を達成するために本発明によれば、(A)パーフルオロ基を有する化合物、(B)平均粒子径が40〜100nmの内部に空隙を有するシリカ微粒子、および(C)平均粒子径が5〜30nmの多孔質シリカ微粒子を含んでなり、コーティング後に得られる被膜の屈折率が1.365以下であることを特徴とするコーティング材料が提供される。
【0012】
なお、本発明のコーティング材料においては、
前記(A)パーフルオロ基を有する化合物が、下記一般式(1)および(2)で表される有機ケイ素化合物および/またはその加水分解物および/またはその縮合物から得られるポリシロキサンであること、
−Si(R3−a ・・・(1)
(式中、Rは炭素数3〜12のフッ素を有する有機基、Rは炭素数1〜4の炭化水素基、Xは加水分解性基であり、aは0または1である。)
b−SiRcY4−(b+c)・・(2)
(式中、R、Rは各々アルキル基、アルケニル基、アリール基、またはエポキシ基、グリシドキシ基、アミノ基、メタクリルオキシ基、あるいはシアノ基を有する炭化水素基、Yは加水分解性基であり、bおよびcは0または1であり、(b+c)は1または2である。)
前記(B)シリカ微粒子が、コア−シェル構造を有する中空シリカであること、
前記(C)多孔質シリカ微粒子の空隙率が20〜90%であること、および
さらに(D)アルミニウムキレート化合物を含有する硬化触媒を含んでなること
が、いずれも好ましい条件として挙げられる。
【0013】
また、本発明の上記コーティング材料の製造方法は、前記(A)パーフルオロ基を有する化合物の一部または全部が加水分解された状態で、前記(B)シリカ微粒子および/または(C)多孔質シリカ微粒子を混合して、それぞれのシラノール基の一部を縮合せしめる塗液調合工程を有することを特徴とする。
【0014】
さらに、本発明の光学物品は、上記コーティング材料を透明基材の少なくとも一方の表面に低屈折率層として積層したこと、および少なくとも一方の表面に、屈折率が1.5〜2.0であり、かつ表面抵抗が1×1010Ω/□以下の高屈折率層を設けた被膜付き透明基材の前記高屈折率層面に、上記のコーティング材料を積層したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、以下に説明するとおり、表面硬度が高くて耐擦傷性に優れ、しかも低屈折率のコーティング材料、その製造方法および前記コーティング材料を用いた光学物品を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に本発明について具体的に説明する。
【0017】
本発明のコーティング材料は、(A)パーフルオロ基を有する化合物、(B)平均粒子径が40〜100nmの内部に空隙を有するシリカ微粒子、および(C)平均粒子径が5〜30nmの多孔質シリカ微粒子を含む有機物と無機物が混合されたことを特徴とするものである。
【0018】
本発明で用いる(A)パーフルオロ基を有する化合物としては、種々のものが適用可能であり、例えば、アクリル樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、アリル樹脂、マレイミド樹脂、ホスファゼン樹脂、フッ素樹脂、ブチラール樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、塩化ビニル樹脂などが挙げられ、場合により、光重合性の組成物を併用することも好ましく行うことができる。熱硬化性を有する低屈折率層として用いられるマトリックス樹脂は、加熱により三次元架橋する性質を有していることが必要である。さらに、低屈折率層を設けた後に光重合を行う場合は、光重合に必要な光の透過率が10%以上の材料が好ましく用いられる。三次元架橋としては、共有結合、イオン性結合、水素結合など、種々の結合様式を取り得るが、その中でも水、酸素などの環境に対する安定性の面から共有結合によって架橋されていることが好ましい。共有結合による架橋としては、熱安定性の観点から(チオ)ウレタン架橋、メラミン架橋、(メタ)アクリル架橋、ポリシロキサン架橋などが挙げられるが、その中でも特に表面硬度、反射防止性向上の観点から、ポリシロキサン架橋が好ましい。特にポリシロキサン架橋においては、表面硬度、可とう性などの観点から、2乃至3官能性有機シラン化合物が好ましく用いられる。その有機基としては、低屈折率付与が容易であるという観点から、脂肪族系有機基を有しており、さらに表面硬度向上の観点からはエポキシ基、(メタ)アクリロイル基などの反応性有機基や、メチル基、エチル基などの炭素数が1〜3のアルキル基、さらには反応性は低いが低屈折率付与可能な有機基としてビニル基などを挙げることができる。また、より低屈折率化を可能とする意味から、少なくともポリシロキサン成分の一部がフッ素含有有機ポリシロキサンであることがより好ましい。かかる、ポリシロキサン形成の出発物質としては、有機アルコキシシラン、有機アシロキシシラン、有機ハロゲンシランなどの各化合物をそのまま用いてもよいが、より低温での架橋を達成するためには、各化合物を加水分解して用いることが好ましい。パーフルオロ基を有するシロキサン化合物の例としては、下記一般式(1)および(2)で表される有機ケイ素化合物および/またはその加水分解物および/またはその縮合物から得られるものが好ましい。
【0019】
−Si(R3−a ・・・(1)
(式中、Rは炭素数3〜12のフッ素を有する有機基、Rは炭素数1〜4の炭化水素基、Xは加水分解性基であり、aは0または1である。)
b−SiRcY4−(b+c)・・(2)
(式中、R、Rは各々アルキル基、アルケニル基、アリール基、またはエポキシ基、グリシドキシ基、アミノ基、メタクリルオキシ基、あるいはシアノ基を有する炭化水素基、Yは加水分解性基であり、bおよびcは0または1であり、(b+c)は1または2である。)。
【0020】
パーフルオロ基を有するポリシロキサンとしては、例えば、トリフルオロエチルトリメトキシシラン、トリフルオロエチルトリエトキシシラン、トリフルオロエチルトリプロポキシシラン、トリフルオロエチルトリイソプロポキシシラン、トリフルオロエチルトリブトキシシラン、トリフルオロエチルトリアセトキシシラン、トリフルオロプロピルトリクロロシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、トリフルオロプロピルトリプロポキシシラン、トリフルオロプロピルトリイソプロポキシシラン、トリフルオロプロピルトリアセトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシエトキシシラン、トリフルオロプロピルメチルジメトキシシラン、トリフルオロプロピルメチルジエトキシシラン、トリフルオロプロピルエチルジメトキシシラン、トリフルオロプロピルエチルジエトキシシラン、ナノフルオロブチルエチルトリクロロシラン、ナノフルオロブチルエチルトリメトキシシラン、ナノフルオロブチルエチルトリエトキシシラン、ナノフルオロブチルエチルトリプロポキシシラン、ナノフルオロブチルエチルトリイソプロポキシシラン、ナノフルオロブチルエチルトリアセトキシシラン、ナノフルオロブチルエチルトリメトキシエトキシシラン、ナノフルオロブチルエチルメチルジメトキシシラン、ナノフルオロブチルエチルメチルジエトキシシラン、ナノフルオロブチルエチルエチルジメトキシシラン、ナノフルオロブチルエチルエチルジエトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリクロロシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリプロポキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリイソプロポキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリアセトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシエトキシシラン、トリデカフルオロオクチルメチルジメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルメチルジエトキシシラン、トリデカフルオロオクチルエチルジメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルエチルジエトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリクロロシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリエトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリプロポキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリイソプロポキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリブトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリアセトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシエトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルメチルジメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルメチルジエトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルエチルジメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルエチルジエトキシシランなどの2官能性および3官能性シラン化合物などが挙げられる。これらの内、コーティング膜の表面硬度と塗布性の観点からは、1分子当たりのフッ素原子が3個以内の化合物が好ましく用いられる。耐薬品性や防汚性の観点からは、1分子当たりのフッ素原子が13個以上の化合物が好ましく用いることができる。また、被塗布物や塗布方法により上記一般式(1)で表される化合物を2種類以上使用することも好ましく行うことができる。これらは同時に共重合しても良く、別々に重合したものを後で混ぜ合わせて使用することも適宜行われる。
【0021】
上記一般式(2)で表されるシラン化合物としては、メチルトリクロロシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシエトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクタデシルトリクロロシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、フェニルトリクロロシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリアセトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、 N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、β−シアノエチルトリエトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、クロロメチルトリメトキシシラン、クロロメチルトリエトキシシラン、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリエトキシシラン、α−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、α−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、β−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、β−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、α−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、α−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリフェノキシシラン、α−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、α−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、β−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、β−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、δ−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、δ−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリメトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリプロポキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリブトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリフェノキシシラン、γ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、γ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリエトキシシラン、δ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)ブチルトリメトキシシラン、δ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)ブチルトリエトキシシラン、3−(N,N−ジグリシジル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、シアノエチルトリクロロシラン、シアノプロピルトリクロロシラン、シアノプロピルトリメトキシシラン、ジメチルジクロロシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、メチルビニルジエトキシシラン、グリシドキシメチルメチルジメトキシシラン、グリシドキシメチルメチルジエトキシシラン、α−グリシドキシエチルメチルジメトキシシラン、α−グリシドキシエチルメチルジエトキシシラン、β−グリシドキシエチルメチルジメトキシシラン、β−グリシドキシエチルメチルジエトキシシラン、α−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、α−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジブトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジフェノキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルビニルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルビニルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルフェニルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルフェニルジエトキシシラン、ジエチルジクロロシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジフェニルジクロロシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、オクタデシルメチルジメトキシシラン、オクタデシルメチルジメトキシシラン、オクタデシルメチルジエトキシシランなどが挙げられる。
【0022】
以上のシラン化合物は、一種のみならず二種以上を併用することも何ら問題ではない。また、かかるポリシロキサン架橋においては、他のシラン化合物との併用により、容易に表面硬度を高めることが可能な点から、4官能性シラン、具体的にはテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラアセトキシシランなども好ましく用いられる。
【0023】
また、本発明では、パーフルオロ基を有する化合物およびシリカ微粒子には両者が反応せしめるための反応性基を有していることが望ましく、シリカ微粒子の分散安定性をより向上することができる。
【0024】
これらシラン化合物の加水分解反応に利用される酸触媒としては、蟻酸、蓚酸、塩酸、硫酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、リン酸、ポリリン酸、多価カルボン酸あるいはその無水物、イオン交換樹脂などの酸触媒が挙げられる。特に、コーティング被膜の硬度を向上する観点から、蟻酸、酢酸を触媒とすることが好ましい。
【0025】
酸触媒の添加量は、使用される全シラン化合物含量に対して、好ましくは0.05質量%〜10質量%、さらに好ましくは0.1質量%〜5質量%である。酸触媒の量が0.05質量%を下回ると、加水分解反応が十分進行しないことがあり、10質量%を越えると、加水分解反応が暴走する恐れがある。
【0026】
また、一方のシラン化合物を加水分解したシラノール反応溶液中の残存酸を利用し、他方残りのシラン化合物と水を混合して任意の反応条件で加水分解させることも、二つ以上の異なる加水分解性の違いを利用し、効率的に合成を行う点で何ら問題ない。
【0027】
加水分解および重縮合反応時に利用される溶剤は、有機溶剤が好ましく、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、ジアセトンアルコール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、3―メチル―3―メトキシ―1―ブタノールなどのアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、ジエチルエーテルなどのエーテル類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトンなどのケトン類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド類;エチルアセテート、エチルセロソルブアセテート、3―メチル―3―メトキシ―1―ブタノールアセテートなどのアセテート類;トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサンなどの芳香族あるいは脂肪族炭化水素のほか、γ―ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシドなどを挙げることができる。
【0028】
ポリシロキサン化合物合成時使用される溶剤の量は、全シラン化合物含量に対して、50質量%〜500質量%の範囲で添加することが好ましく、特に好ましくは、80質量%〜200質量%の範囲である。50質量%を下回ると、反応が暴走し、ゲル化する場合がある。一方、500質量%を越えると、加水分解が進行しない場合がある。
【0029】
また、加水分解に用いられる水としては、蒸留水など精製していることが好ましい。水の量は任意に選択可能であるが、シラン1モルに対して1.0〜4.0モルの範囲で用いるのが好ましい。
【0030】
本発明のコーティング材料を製造するに際しては、加水分解反応を、前記(B)および(C)のシリカ微粒子を、溶剤中、酸触媒および水を添加して、前記(A)のパーフルオロ基を有するポリシロキサンと同時に行うことが、得られた塗料の分散安定性をより向上できることから好ましい。加水分解重縮合反応の条件としては、室温〜55℃で加水分解し、シラノール化合物を得た後、そのまま、反応液を、還流下で1〜100時間行うのが好ましい。また、異なるシラノール化合物をそれぞれ任意の温度で重縮合後に、さらに混合し任意の条件で共重合を行うことも、異なる重合性の違いを利用し、効率的に合成を行う上で何ら問題はない。そのほかポリシロキサンの重合度を上げるために、再加熱もしくは塩基触媒の添加を行なうことも可能である。また、保存安定性を考慮し、縮合反応後に溶剤を用いて任意の固形分濃度に希釈してもよい。
【0031】
本発明で用いられる(A)のパーフルオロ基を有するポリシロキサンにおいて、上記一般式(1)と一般式(2)をあらかじめ共重合しておくことも何ら問題なく行うことができる。共重合体の比率としては、上記一般式(1)で表されるシラン化合物1モルに対して、一般式(2)で表されるシラン化合物の総モル量を好ましくは0.1〜100モル、さらに好ましくは1〜10モル用いるのが好ましい。
【0032】
一方、本発明のパーフルオロ基を有するポリシロキサン以外の樹脂を併用することも、得られた塗料の用途や加工条件により選択することができる。例えば、アクリル樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、尿素樹脂、アリル樹脂、マレイミド樹脂、ホスファゼン樹脂などが挙げられ、場合により、光重合性の組成物を併用することも好ましく行うことができる。
【0033】
光重合性反応基を有するポリマーとしては、不飽和二重結合を反応性基とするポリマーであり、公知のラジカル重合反応を利用することによって一旦フェノール性水酸基またはカルボキシル基を含有するポリマーを重合し、エポキシ基含有(メタ)アクリレートを付加することによって得る方法、または、一旦、エポキシ基含有ポリマーを重合し、フェノール性水酸基またはカルボキシル基含有(メタ)アクリレートを付加する方法によって得ることができる。また、シリカ系微粒子の分散安定性の観点から、反応基を有するシリカ系微粒子を一旦、光重合性基を有する反応性ポリマーと混合後、本発明の共重合体を添加することによって、本発明のコーティング材を得ることができる。
【0034】
本発明のフェノール性水酸基またはカルボキシル基を有するポリマー、あるいは、エポキシ基含有ポリマーは、これらの基を有するラジカル重合性モノマーの単独重合体ポリマーおよび/または該ラジカル重合性モノマーとそれ以外の他のラジカル重合性モノマーの共重合体ポリマーとしては、ラジカル重合開始剤を用いて、公知の方法で重合することにより得られる。
【0035】
フェノール性水酸基またはカルボキシル基を有するラジカル重合性モノマーとしては、例えば、o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレンおよびp−ヒドロキシスチレン、ならびにこれらのアルキル、アルコキシ、ハロゲン、ハロアルキル、ニトロ、シアノ、アミド、エステル、カルボキシ置換体;ビニルヒドロキノン、5−ビニルピロガロール、6−ビニルピロガロール、1−ビニルフロログリシノール等のポリヒドロキシビニルフェノール類;o−ビニル安息香酸、m−ビニル安息香酸、およびp−ビニル安息香酸、ならびにこれらのアルキル、アルコキシ、ハロゲン、ニトロ、シアノ、アミド、エステル置換体、メタクリル酸およびアクリル酸、ならびにこれらのα−位のハロアルキル、アルコキシ、ハロゲン、ニトロ、シアノ置換体;マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、無水フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸および1,4−シクロヘキセンジカルボン酸等の二価の不飽和カルボン酸、ならびにこれらのメチル、エチル、プロピル、i−プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、ter−ブチル、フェニル、o−、m−、p−トルイルハ−フエステルおよびハ−フアミドを好ましいものとして挙げることができる。これらのうち、o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレンおよびp−ヒドロキシスチレン、ならびに、アクリル酸、メタアクリル酸が好ましく用いられる。これらは1種または2種以上一緒に用いることができる。
【0036】
エポキシ基を有するラジカル重合性モノマーとしては、例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタアクリレート等が挙げられる。
【0037】
また、上記その他のラジカル重合性モノマーとしては、例えばスチレン、およびスチレンのα−位、o−位、m−位、またはp−位のアルキル、アルコキシ、ハロゲン、ハロアルキル、ニトロ、シアノ、アミド、エステル置換体;ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のジオレフィン類;メタクリル酸またはアクリル酸のメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、ter−ブチル、ペンチル、ネオペンチル、イソアミルヘキシル、シクロヘキシル、アダマンチル、アリル、プロパギル、フェニル、ナフチル、アントラセニル、アントラキノニル、ピペロニル、サリチル、シクロヘキシル、ベンジル、フェネシル、クレシル、1,1,1−トリフルオロエチル、パ−フルオロエチル、パーフルオロ−n−プロピル、パーフルオロ−i−プロピル、トリフェニルメチル、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル(当該技術分野の慣用名として「ジシクロペンタニル」といわれている。)、クミル、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル、3−(N,N−ジメチルアミノ)エチル、フリル、フルフリルの各エステル化物、メタクリル酸またはアクリル酸のアニリド、アミド、またはN,N−ジメチル、N,N−ジエチル、N,N−ジプロピル、N,N−ジイソプロピル、アントラニルアミド、アクリロニトリル、アクロレイン、メタクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、弗化ビニル、弗化ビニリデン、N−ビニルピロリドン、ビニルピリジン、酢酸ビニル、N−フェニルマレインイミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)マレインイミド、N−メタクリロイルフタルイミド、N−アクリロイルフタルイミド、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等を用いることができる。これらのうち、低屈折率を考慮した場合、メタクリル酸、またはアクリル酸の1,1,1−トリフルオロエチル、パ−フルオロエチル、パーフルオロ−n−プロピル、パーフルオロ−i−プロピルの各エステル化合物が好ましい。
【0038】
また、本発明の共重合体の接着性を考慮した場合、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等が好ましい。これらは1種または2種以上併用することができる。
【0039】
フェノール性水酸基または、カルボキシル基を有するラジカル重合性モノマーと、エポキシ基を有するラジカル重合性モノマーおよび、それ以外の他のラジカル重合性モノマーの共重合体を用いる場合、ラジカル重合性モノマーの好ましい共重合の割合は、ラジカル重合性モノマーとの合計量に対して、フェノール性水酸基または、カルボキシル基を有するラジカル重合性モノマーは、好ましくは5〜50質量%、特に好ましくは5〜40質量%である。また、エポキシ基を有するラジカル重合性モノマーは、好ましくは5〜50質量%、特に好ましくは5〜40質量%である。
【0040】
また、これらの組成物中には硬化を促進させる目的、或いは硬化を容易ならしめる目的から、各種の硬化剤、三次元架橋剤を添加することもできる。これらの具体例としては窒素含有有機物、シリコーン樹脂硬化剤、各種金属アルコレート、各種金属キレート化合物、イソシアネート化合物およびその重合体、メラミン樹脂、多官能アクリル樹脂、尿素樹脂などがあり、これらを一種類、ないし2種類以上添加しても良い。
【0041】
本発明のコーティング材料に光重合性を併用する場合の重合性反応基を有するポリマーの添加量は、マトリックス樹脂組成物の含量に対して、好ましくは2質量%〜20質量%、さらに好ましくは5質量%〜15質量%である。2質量%を下回ると、光重合が起こらない場合があり、40質量%を越えると、混合したポリシロキサンとの分離現象を生じ平滑なコーティング膜が得られなくなることがある。
【0042】
本発明で用いられるシリカ系微粒子は、ポリシロキサンの重合性に応じて、反応性基を選択することができる。熱重合性を高めた場合の反応性基として、シラノール基等を表面に持つ粒子を用いることが好ましい。また、光重合性を高めた場合は、メタクリル基、アクリル基、メルカプト基等のシランカップリング剤を含有する表面改質剤で処理し、粒子表面を修飾したものを使用することが好ましい。また、必要に応じて粒子表面を修飾処理して用いることも可能である。
【0043】
本発明で用いる(B)平均粒子径40〜100nmの内部に空隙を有するシリカ微粒子としては、コア−シェル構造を有する中空シリカとシリカ微粒子表面および内部に細孔を有するシリカ微粒子が挙げられる。これらシリカ微粒子のうちでも、コーティング材料の安定性の点で、コア−シェル構造を有する中空シリカ微粒子が好ましく用いられる。中空シリカ微粒子は、粒子自体の屈折率は、1.20〜1.40であるため、導入によりコーティング膜の屈折率を低下させる効果が大きい。かかる屈折率の低下を効率よく行うためには、平均粒子径40nm〜100nmのシリカ系微粒子を使用することが必要である。平均粒子径の好ましい範囲は40nm〜60nmである。平均粒子径が40nm未満であると屈折率の低下が充分ではなく、100nmより大きいと膜が白くなったり表面の凹凸が大きくなることがある。
【0044】
ここで、コア−シェル構造とは、球形状に置いては中心部と外周部が異なる組成でなることをいい、内部の小さな球形を覆うようにして外殻部分が形成されている状態をいう。内部は固体に限らず気体や液体の場合もコアと呼び、外殻部分をシェルと呼ぶ。
【0045】
本発明で用いる(C)平均粒子径5〜30nmの多孔質シリカ微粒子は、空隙率が20〜90%の範囲であることが好ましく、空隙率が30〜70%の範囲であることがより好ましい。空隙率が20%未満であると屈折率を低下させる効果が少なく、90%を越えるとマトリックス樹脂との混合が難しくなるため好ましくない。また、表面の細孔径はマトリックス樹脂がシリカ微粒子内部に入り込まないように、10nm以下であることが好ましい。多孔質シリカ微粒子は、粒子自体の屈折率は、1.35以下であるため、導入により、コーティング膜の屈折率を低下させる効果が大きい。導入には粒子の二次凝集をふせぐ目的でシランカップリング剤を含有する表面改質剤で処理し、粒子表面を修飾したものを用いることも可能である。平均粒子径が5nm未満であると内部細孔が少なく空隙率20%以上を維持できなくなり、30nmを越えると(B)内部に空隙を有するシリカ微粒子との混合が難しくなるため好ましくない。平均粒子径の好ましい範囲は15〜30nmである。
【0046】
本発明において、(B)平均粒子径40〜100nmの内部に空隙を有するシリカ微粒子と、(C)平均粒子径が5〜30nmの多孔質シリカ微粒子とをコーティング材料中に導入すると、このコーティング材料から得られるコーティング被膜の屈折率を1.365以下にすることができるだけでなく、コーティング被膜の硬度を高めることができる。それぞれのシリカ系微粒子導入量は、コーティング材料中の無機微粒子およびマトリックス樹脂成分の固形分に対して、好ましくは20質量%〜70質量%、さらに好ましくは30質量%〜60質量%である。導入量が20質量%を下回ると、粒子の空隙による屈折率低下効果が少なく、屈折率が、1.365以下とはならない。また、70重量%を越えると、層内部に収まらない余剰粒子による凹凸のため、透明被膜の硬度が低下することや、場所によって、屈折率が不均一になることがある。
【0047】
(B)のシリカ微粒子と(C)のシリカ微粒子の混合割合は、(B)/(C)重量比で0.7以上が好ましく、0.9以上がより好ましい。0.7未満では多孔質シリカの低屈折率性が維持できなくなり、コーティング被膜の屈折率が大きくなってしまう。
【0048】
本発明のコーティング材料は、さらに硬化を容易ならしめる各種の(D)硬化剤あるいは三次元架橋剤を含有しても良い。(D)硬化剤の具体例としては、窒素含有有機物、シリコーン樹脂硬化剤、各種金属アルコレート、各種金属キレート化合物、イソシアネート化合物およびその重合体、メラミン樹脂、多官能アクリル樹脂、尿素樹脂などがあり、これらを一種類、ないし2種類以上含有しても良い。なかでも、硬化剤の安定性、得られた塗布膜の加工性などから金属キレート化合物が好ましく用いられる。用いられる金属キレート化合物としてはチタニウムキレート化合物、ジルコニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物および、マグネシウムキレート化合物が挙げられる。中でもアルミニウムキレート化合物が低屈折率性、安定性の点で好ましい。キレート化合物は、金属アルコキシドにキレート化剤を反応させることにより容易に得ることができる。キレート化剤の例としては、アセチルアセトン、ベンゾイルアセトン、ジベンゾイルメタンなどのβ−ジケトン;アセト酢酸エチル、ベンゾイル酢酸エチルなどのβ−ケト酸エステルなどを挙げることができる。金属キレート化合物の好ましい具体的な例としては、モノエトキシ−、モノn−プロポキシ−、モノi−プロポキシ−、モノn−ブトキシ−、モノs−ブトキシ−、モノt−ブトキシトリスアセチルアセテートチタン、ジエトキシ−、ジn−プロポキシ−、ジi−プロポキシ−、ジn−ブトキシ−、ジs−ブトキシ−、ジt−ブトキシビスアセチルアセテートチタン、トリエトキシ−、トリn−プロポキシ−、トリi−プロポキシ−、トリn−ブトキシ−、トリs−ブトキシ−、トリt−ブトキシモノアセチルアセテートチタン、モノエトキシ−、モノn−プロポキシ−、モノi−プロポキシ−、モノn−ブトキシ−、モノs−ブトキシ−、モノt−ブトキシトリスエチルアセトアセテートチタン、ジエトキシ−、ジn−プロポキシ−、ジi−プロポキシ−、ジn−ブトキシ−、ジs−ブトキシ−、ジt−ブトキシビスエチルアセトアセテートチタン、トリエトキシ−、トリn−プロポキシ−、トリi−プロポキシ−、トリn−ブトキシ−、トリs−ブトキシ−、トリt−ブトキシモノエチルアセトアセテートチタン、モノエトキシ−、モノn−プロポキシ−、モノi−プロポキシ−、モノn−ブトキシ−、モノs−ブトキシ−、モノt−ブトキシトリスアセチルアセテートジルコニウム、ジエトキシ−、ジn−プロポキシ−、ジi−プロポキシ−、ジn−ブトキシ−、ジs−ブトキシ−、ジt−ブトキシビスアセチルアセテートジルコニウム、トリエトキシ−、トリn−プロポキシ−、トリi−プロポキシ−、トリn−ブトキシ−、トリs−ブトキシ−、トリt−ブトキシモノアセチルアセテートジルコニウム、モノエトキシ−、モノn−プロポキシ−、モノi−プロポキシ−、モノn−ブトキシ−、モノs−ブトキシ−、モノt−ブトキシトリスエチルアセトアセテートジルコニウム、ジエトキシ−、ジn−プロポキシ−、ジi−プロポキシ−、ジn−ブトキシ−、ジs−ブトキシ−、ジt−ブトキシビスエチルアセトアセテートジルコニウム、トリエトキシ−、トリn−プロポキシ−、トリi−プロポキシ−、トリn−ブトキシ−、トリs−ブトキシ−、トリt−ブトキシモノエチルアセトアセテートジルコニウム、モノエトキシ−、モノn−プロポキシ−、モノi−プロポキシ−、モノn−ブトキシ−、モノs−ブトキシ−、モノt−ブトキシビスアセチルアセテートアルミニウム、ジエトキシ−、ジn−プロポキシ−、ジi−プロポキシ−、ジn−ブトキシ−、ジs−ブトキシ−、ジt−ブトキシモノアセチルアセテートアルミニウム、モノエトキシ−、モノn−プロポキシ−、モノi−プロポキシ−、モノn−ブトキシ−、モノs−ブトキシ−、モノt−ブトキシビスエチルアセトアセテートアルミニウム、ジエトキシ−、ジn−プロポキシ−、ジi−プロポキシ−、ジn−ブトキシ−、ジs−ブトキシ−、ジt−ブトキシモノエチルアセトアセテートアルミニウム、モノエトキシモノアセチルアセテートマグネシウム、モノエトキシモノエチルアセトアセテートマグネシウム、アセチルアセトネートチタン、エチルアセトアセテートチタン、アセチルアセトネートジルコニウム、アセテートジルコニウム、エチルアセテートジルコニウム、アセチルアセトネートアルミニウム、エチルアセトアセテートアルミニウム、モノアセチルアセテートビスエチルアセテートアルミニウム、ビスアセチルアセテートモノエチルアセトアセテートアルミニウム、アセチルアセトネートマグネシウム、エチルアセトアセテートマグネシウム、アセチルアセトネート鉄、アセチルアセトネートスズ等の金属キレート、アルキルアセトアセテート化合物が挙げられる。保存安定性、入手容易さを考慮すると、アセチルアセトネートアルミニウム、エチルアセトアセテートアルミニウム、モノアセチルアセテートビスエチルアセテートアルミニウム、が好ましい。
【0049】
これら(D)硬化剤の含有量は、パーフルオロ基を有する化合物およびシリカ微粒子の全量100重量部に対して、好ましくは0.1重量部〜10重量部であり、特に好ましくは、1重量部〜6重量部である。
【0050】
上記コーティング材料を透明基材の少なくとも一方の表面に低屈折率層として積層し、被膜を形成することにより、本発明の光学物品が得られる。
【0051】
本発明のコーティング材料から被膜を形成する方法としては、マイクログラビアコーティング、スピンコーティング、ディップコーティング、カーテンフローコーティング、ロールコーティング、スプレーコーティング、流し塗り法などを用いてコーティングする方法などがあるが、反射防止性の均一性、すなわち反射光色のムラ防止の観点からは、マイクログラビアコーティングがとくに好適に用いられる。この様な方法を用いて基材上に塗布し、場合に応じて加熱、乾燥、硬化させる。加熱、乾燥方法としては適用されている基材、および被膜成分によって決定されるべきであるが、通常は室温以上、300℃以下の温度で、通常は0.5分間から240分間の処理を行い、塗布時におけるフロー性向上のためには各種の界面活性剤が使用できる。とくにフロー性に加えて、反射防止膜の汚れ防止を同時にさらに向上させ得る点からフッ素系界面活性剤の添加が好ましい。
【0052】
また、光重合性材料を用いる場合、塗膜の形成後、加熱、乾燥、硬化と同時、および/または加熱、乾燥、硬化後に可視領域よりも波長の短い紫外線を照射することで、膜形成してもよい。この場合には、紫外線照射は表層の硬化反応のみならず、下層に積層されたコーティング膜の残存反応性基にも作用するため、本発明のコーティング材料との密着性向上や耐薬品性向上に効果がある。特に下層のコーティング膜が紫外線硬化型の場合において高い効果が得られる。
【0053】
本発明のコーティング材料を透明基材上に直接塗布、硬化させてコーティング被膜を形成させてもよいのだが、このコーティング被膜を低屈折率層として用いる場合には、反射防止性をより高めるという目的のため、低屈折率層より0.05〜0.55屈折率の高い高屈折率層を設けてなる基材上にコーティング被膜を設けるのが好ましい。高屈折率の屈折率としては1.5〜2.0が好ましく、屈折率1.55〜1.75がさらに好ましい。1.5より小さいと反射防止性の点で不十分であり、2.0より大きいと低屈折率層の効果が十分発揮されない。さらには高屈折率性能に加えて、表面硬度をより高め、屈強性、耐擦傷性を付与するようなハードコート性能を同時に兼ね備えた層であることが、塗工回数を減らし、より安価な物品を提供できる観点からはより好ましい。
【0054】
また、一般にフッ素含有有機ポリシロキサン系被膜は帯電しやすく、ほこりなどが付きやすいという問題がある。かかる問題を解決するために、上記高屈折率層の材料としては、フッ素含有有機ポリシロキサン系被膜との密着性、アフターキュアリング性などの点から、紫外線硬化性を有する組成物が好ましく用いられると共に、ITO、ATO、ZnO、SnO、Sbに代表される金属酸化物微粒子を含有するものや、或いは有機物からなる導電性ポリマーを含有するものが望ましい。
【0055】
有機物からなる導電性ポリマーとしては、例えばポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリ(3−アルキル)チオフェン、ポリピロール、ポリイソチアナフタレン、ポリエチレンジオキシチオフェン、ポリ(2,5−ジアルコキシ)パラフェニレンビニレン、ポリパラフェニレン、ポリヘプタジイン、ポリ(3−ヘキシル)チオフェンおよびポリアニリンなどが挙げられる。
【0056】
かかる紫外線硬化性を有する好ましい樹脂成分としては、分子内に(メタ)アクリロイル基を少なくとも2つ以上含む多官能性(メタ)アクリル化合物を挙げることができる。これら化合物の具体例としては、モノ−、ジ−、またはトリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、モノ−、ジ−、またはトリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ−、またはトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ−、またはトリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンジ−、トリ−またはテトラ−(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール、ジ−またはトリ−(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ−(メタ)アクリレート、ソルビトールジ−、トリ−、テトラ−、またはヘプタ(メタ)アクリレートなどの脂肪族系多官能(メタ)アクリレート化合物、さらにはビスフェノールA−、またはビスフェノールF−エチレンオキシド付加物、またはジ−(メタ)アクリレートなどの芳香環含有多官能(メタ)アクリレート化合物も好ましく用いられる。さらには分子中に重合性不飽和基とアルコキシシラン基とを有する化合物などを添加することも可能である。
【0057】
また、上記の高屈折率層中には、さらなる高屈折率化、帯電防止化を目的に、各種金属酸化物の併用も好ましく用いられる。好ましく用いられる金属酸化物としては、粒子径が5nm〜100nmのジルコニウム、インジウム、アンチモン、亜鉛、スズ、セリウムおよびチタンよりなる群から選ばれる金属酸化物およびこれらの複合酸化物が挙げられる。なかでもインジウムとスズからなる複合酸化物(ITO)、またはスズとアンチモンからなる複合酸化物(ATO)が高屈折率化に加えて導電性が付与可能であり、帯電防止性を与えることができる点から好ましく用いられる。とくに帯電防止の観点からは、その表面抵抗が1×1010Ω/□以下、さらに好ましくは1×10Ω/□以下であることが好ましい。
【0058】
さらに、高屈折率層が設けられる場合において、その高屈折率層の膜厚は反射防止効果、およびハードコート膜性能を兼ねる観点から、0.5μm〜10μm程度、さらには1〜6μmの膜厚みがとくに好ましい。
【0059】
本発明においては、近赤外線吸収化合物や染料を含有させた層として、透明基材にコーティングしたり、または貼り合わせて、各種ディスプレイに用いることができる。一般に近赤外線吸収化合物は熱に対して不安定であり、例えば透明基材に配合して、成形する場合には加熱によって変質するおそれがある。ハードコート剤や接着剤層に含有させて用いることが好ましい。
【0060】
例えば、通常良く用いられる方法としては、近赤外線吸収化合物や染料を含有させた層(NIR層)を積層した透明成形体をあらかじめ用意しておき、本発明のコーティング材料からなる低屈折率層を有した透明成形体に粘着剤層を介して貼り合わせる方法が実施されている。コーティングや貼り合わせによるコスト上昇を低減するためには、低屈折率層を有した透明基材の低屈折率層を積層していない表面に設けられた粘着剤層をNIR層として用いることが好ましい。その他、NIR層の積層方法としては、例えば、低屈折率層(LR)/高屈折率層(HR)/透明基材/NIR層、LR/HR/NIR層/透明基材、LR/HR−NIR層/透明基材、LR/HR/透明基材/貼り合わせ粘着層/透明基材/NIR層等の方法を挙げることができる。
【0061】
近赤外線吸収化合物としては、アントラキノン化合物、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、金属酸化物系微粉末、イモニウム系化合物、ジイモニウム系化合物、アミニウム塩系化合物、チオウレア化合物、ビスチオウレア化合物、四角酸系化合物、金属錯体化合物が挙げられる。より具体的には、シアニン色素、メロシアニン色素、(チオ)ピリリウム色素、ナフトラクタム色素、ペンタセン色素、オキシインドリジン色素、キノイド色素、アミニウム色素、ジインモニウム色素、インドアニリン色素、ニッケルチオ錯体色素などである。
【0062】
さらに、染料を近赤外線吸収化合物と同じ層または別の層に添加して用いることができる。染料は各ディスプレイの発光3原色の吸収が少ないものを選択することが好ましい。特にPDP用光学フィルターには、ネオン光といわれている595nm付近の波長をカットすることにより、赤の色純度向上と色再現性を向上できる。本発明で用いられる染料としては、シアニン系化合物、オキソノール系化合物、トリフェニルメタン系化合物、ジフェニルメタン系化合物、キサンテン系化合物、チアジン系化合物などが用いられる。また各種の染料を用いることでニュートラルグレー化することによりコントラストの向上ができる。発光3原色の吸収が少ない染料として、例えば、スクアリリウム系、シアニン系、アゾ系、アゾメチン系、オキソノール系、ベンジリデン系、キサンテン系、メトロシアニン系などが挙げられる。
【0063】
かくして得られる本発明の光学物品は、表面硬度が高くて耐擦傷性に優れ、しかも低屈折率の表面を有していることから、反射防止膜、反射防止フィルム、反射防止板、光学フィルター、光学レンズ、ディスプレイ等の光学物品、より具体的には、例えばCRT、LCD、PDP、EL、FEDなど各種ディスプレイの前面板やリアプロジェクション用スクリーン等の光学分野に有用である。
【実施例】
【0064】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれによって制限されるものではない。
【0065】
各実施例・比較例で得られた光学物品をサンプルとし、各サンプルの特性測定方法および性能評価方法については以下に示す。
【0066】
[屈折率の測定]
シリコンウエハ上に作製した膜厚1.5μmのコーティング被膜について、プリズムカプラー(Metricon(株)製)を用いて、20℃での633nm(He−Neレーザー使用)における膜面に対して垂直方向の屈折率を測定した。
【0067】
[光線反射率の測定]
日立計測器サービス(株)の分光光度計3410を用いて測定を行った。サンプルは♯320〜400の耐水サンドペーパーでコーティング被膜面とは反対側の面に均一に傷をつけ、黒色塗料(黒マジックインキ(登録商標)液)を塗布して、コーティング被膜面とは反対側の面からの反射を完全になくして、測定する表面を積分球に押し当てて測定した。入射角度は10゜であり、検査波長領域は380nm〜800nmで行った。光線反射率は極小値で表した。
【0068】
[硬度評価]
#0000のスチールウールを用いて各サンプルのコーティング被膜面に250gf/cmの荷重をかけ、10往復したときの傷の本数を観察し下記基準にて評価した。耐スクラッチ性は3、4、5級であれば良好である。
5級:傷なし
4級:傷1〜5本
3級:傷6〜10本
2級:傷11本以上
1級:全面傷。
【0069】
[指紋拭き取り性(耐防汚性の評価)]
額に指を2秒間押し当てて、その指を各サンプルのコーティング被膜面に5秒間押し当てることにより指紋を付着させた後、付着した指紋をキムワイプ(クレシア社製ワイパーS−200)を八つ折りにしたものを用いて押し当て、10回転させて拭き取り、その除去性を目視により評価した。評価は、ほとんど跡が目立たず、かつ容易に拭き取れたものを「○」、若干跡が残り、かつ拭き取りにくいものを「△」、著しく跡が残っており、全く拭き取れないものを「×」とした。
【0070】
[表面抵抗値の測定]
三菱油化(株)製のHIRESTAを用いて、室温雰囲気にて表面抵抗値の測定を行った。
【0071】
[シリカ微粒子の平均粒子径の測定]
原料の場合は、(株)堀場製作所製の動的光散乱式粒度分布測定装置LB−500を用いて測定を行った。ただし、空隙を有すること、溶媒との屈折率が近いことから実際の屈折率を現していないことがある。その場合、コーティング膜の断面を透過電子顕微鏡で観察し、得られた像から代表的な(最も多い)粒子の直径を測定することにより求めた。
【0072】
(実施例1)
[高屈折率層]
透明基材としてPETフィルム(厚さ100μm、易接着層付き、東レ(株)製)を用いた。この上に固形分濃度が30%であるAS−41(大日精化株式会社製)をメタリングバーを用いたハンドコーティングにより、12番手のメタリングバーを用いて、A4サイズの透明基材に3ccの塗布液を垂らし、気泡が入らぬよう気をつけながら、メタリングバーをひいて塗布した。
【0073】
[高屈折率層の硬化方法]
上記方法により塗布した後、すぐに温度を80℃にしたオーブンに入れて、1分間の熱処理を行った。その後高圧水銀灯1灯(120W)を備えた、コンベアー式UV照射装置に、5m/minの速度で紫外線照射処理(紫外線に換算した場合約300mJ/cm)を行った。こうして高屈折率層被膜付き基材を得た。乾燥、硬化後の膜厚みは約3μmであった。表面抵抗値は1.1×10Ω/□を示した。
【0074】
[低屈折率層]
得られた高屈折率層被膜付き基材に、下記コーティング材料からなる低屈折率層を設けた。
【0075】
[コーティング材料の調製方法]
フラスコにトリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン(東芝シリコーン社製)4.15gとイソプロピルアルコール19gを入れ、2.0規定に調製した蟻酸水溶液1.03gを約10分間かけて滴下しながら攪拌した。滴下終了後50〜55℃に温度調節して2時間攪拌した。次に、メチルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製)3.89gとプロピレングリコールモノエチルエーテル26.6gを加えた後、精製水1.54gを20〜25℃で約10分間かけて滴下・混合した。引きつづき60℃に加熱して2時間攪拌・反応を行った。次に、室温まで冷却した後、イソプロピルアルコール10.4gを加えて濃度調整して、共重合体溶液(A)を得た。
【0076】
次に、フラスコにメチルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製)53.16g、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製) 38.31gを入れ、プロピレングリコールモノエチルエーテル 100gを溶媒として投入した後、イソプロピルアルコール分散型中空シリカゾル(触媒化成化学工業社製,固形分20.5質量%、粒径約50nm)を104.53g、多孔質シリカゾル(大阪住友セメント社製、シリカゾル、粒径約25nm、空隙率約40%、固形分10%)を214.29g添加した。その後温度を約20℃に設定し、撹拌ばねで約270rpmの回転数で撹拌させながら1.0規定に調製した蟻酸水溶液 30.66gを約20分かけて添加し、引きつづきオイルバスを用いて反応溶液の温度を60℃に設定し3時間攪拌して反応を終了し、室温まで冷却してポリシロキサンと反応させたシリカ微粒子溶液を得た。
【0077】
前記共重合体(A)とシリカ微粒子溶液を混ぜ合わせ、さらにメチルアルコール363.3g、イソプロピルアルコール2058g、プロピレングリコールモノエチルエーテル 600gを加えて、ついでトリスアセチルアセトネートアルミニウム4.0g添加、攪拌溶解してコーティング材料とした。
【0078】
このコーティング材料中の(A)パーフルオロ基を有する化合物/(B)シリカ微粒子/(C)多孔質シリカ微粒子の割合は55重量部/22.5重量部/22.5重量部であり、これらの合計100重量部に対する硬化剤の割合は4重量部であった。
【0079】
[コーティング材料塗布方法]
調製したコーティング材料を用い、上記高屈折率層被膜付き基材に6番手のメタリングバーを用いてハンドコーティングにより1.5ccの塗布液を垂らし、気泡が入らぬように気をつけながら、塗布した。膜厚みは約100nmであった。
【0080】
[コーティング被膜の硬化方法]
コーティング材料を塗布後、すぐに温度を130℃にしたオーブンに入れて2分間、加熱処理を行った。その後高圧水銀灯一灯(120w)を備えた、コンベアー式紫外線照射装置に、5m/minの速度で紫外線照射(紫外線強度に換算した場合約300mJ/cm)を行った。得られた硬化膜の厚みは約100nmであった。
【0081】
こうして基材に高屈折率層、低屈折率層(コーティング材料)をこの順に設けた光学物品を得た。得られた光学物品について、屈折率、光線反射率測定、硬度評価、指紋拭き取り性評価を行った。結果を表1に示した。
【0082】
(実施例2)
上記[コーティング材料の調製方法]において、メチルトリメトキシシラン40.6g、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン29.3gg、中空シリカゾル134.7g、多孔質シリカゾル276.2g、1.0規定に調製した蟻酸水溶液 23.4gに変更した以外は、実施例1と同様に実験した。
なお、このコーティング材料中の(A)パーフルオロ基を有する化合物/(B)シリカ微粒子/(C)多孔質シリカ微粒子の割合は42重量部/29重量部/29重量部であり、これらの合計100重量部に対する硬化剤の割合は4重量部であった。
結果を表1に示した。全評価において良好な値を示した。
【0083】
(実施例3)
上記[コーティング材料の調製方法]において、メチルトリメトキシシラン48.3g、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン34.8g、中空シリカゾル116.1g、多孔質シリカゾル238.1g、1.0規定に調製した蟻酸水溶液 34.06gに変更した以外は、実施例1と同様に実験した。
なお、このコーティング材料中の(A)パーフルオロ基を有する化合物/(B)シリカ微粒子/(C)多孔質シリカ微粒子の割合は50重量部/25重量部/25重量部であり、これらの合計100重量部に対する硬化剤の割合は4重量部であった。
結果を表1に示した。全評価において良好な値を示した。
【0084】
(比較例1)
上記[コーティング材料の調製方法]において、メチルトリメトキシシラン48.3g、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン34.8g、中空シリカゾル0g、多孔質シリカゾル0gにし、空隙および多孔質でないシリカゾル(触媒化成化学工業製OSCAL、平均粒径13nm、固形分30%)166.7gに変更した以外は、実施例1と同様に実験した。
なお、このコーティング材料中の(A)パーフルオロ基を有する化合物/(B)シリカ微粒子/(C)多孔質シリカ微粒子の割合は50重量部/0重量部/0重量部であり、空隙および多孔質でないシリカ50重量部である。これらの合計100重量部に対する硬化剤の割合は4重量部であった。
結果を表1に示した。屈折率が1.45を示し不良であった。
【0085】
(比較例2)
上記[コーティング材料の調製方法]において、メチルトリメトキシシラン57.96g、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン41.76g、1.0規定に調製した蟻酸水溶液33.34g、中空シリカゾル0g、多孔質シリカゾル381gに変更した以外は、実施例1と同様に実験した。
なお、このコーティング材料中の(A)パーフルオロ基を有する化合物/(B)シリカ微粒子/(C)多孔質シリカ微粒子の割合は60重量部/0重量部/40重量部であり、これらの合計100重量部に対する硬化剤の割合は4重量部であった。
結果を表1に示した。屈折率が1.42を示し不良であった。
【0086】
(比較例3)
上記[コーティング材料の調製方法]において、メチルトリメトキシシラン57.96g、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン41.76g、1.0規定に調製した蟻酸水溶液 33.34g、中空シリカゾル186.5g、多孔質シリカゾル0gに変更した以外は、実施例1と同様に実験した。
なお、このコーティング材料中の(A)パーフルオロ基を有する化合物/(B)シリカ微粒子/(C)多孔質シリカ微粒子の割合は60重量部/40重量部/0重量部であり、これらの合計100重量部に対する硬化剤の割合は4重量部であった。
結果を表1に示した。屈折率が1.366を示し不良であった。
【0087】
(比較例4)
上記[コーティング材料の調製方法]において、中空シリカゾル0g、多孔質シリカゾル428.6gに変更した以外は、実施例1と同様に実験した。
なお、このコーティング材料中の(A)パーフルオロ基を有する化合物/(B)シリカ微粒子/(C)多孔質シリカ微粒子の割合は55重量部/0重量部/45重量部であり、これらの合計100重量部に対する硬化剤の割合は4重量部であった。
結果を表1に示した。屈折率が1.424を示し不良であった。
【0088】
(比較例5)
上記[コーティング材料の調製方法]において、 メチルトリメトキシシラン40.6g、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン29.3g、中空シリカゾル269.5g、多孔質シリカゾル0g、1.0規定に調製した蟻酸水溶液23.4gに変更した以外は、実施例1と同様に実験した。
なお、このコーティング材料中の(A)パーフルオロ基を有する化合物/(B)シリカ微粒子/(C)多孔質シリカ微粒子の割合は42部/58重量部/0重量部であり、これらの合計100重量部に対する硬化剤の割合は4重量部であった。
結果を表1に示した。コーティング膜が白化し、屈折率および反射率の評価ができ無い状態であり、不良であった。
【0089】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明のコーティング材料によれば、表面硬度が高くて耐擦傷性に優れ、しかも低屈折率の被膜を形成することができるため、基材上にこの被膜を形成してなる光学物品は、反射防止膜、反射防止フィルム、反射防止板、光学フィルター、光学レンズ、ディスプレイ等の光学物品、より具体的には、例えばCRT、LCD、PDP、EL、FEDなど各種ディスプレイの前面板やリアプロジェクション用スクリーン等の光学分野に極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)パーフルオロ基を有する化合物、(B)平均粒子径が40〜100nmの内部に空隙を有するシリカ微粒子、および(C)平均粒子径が5〜30nmの多孔質シリカ微粒子、を含んでなり、コーティング後に得られる被膜の屈折率が1.365以下であるコーティング材料。
【請求項2】
前記(A)パーフルオロ基を有する化合物が、下記一般式(1)および(2)で表される有機ケイ素化合物および/またはその加水分解物および/またはその縮合物から得られるポリシロキサンである請求項1に記載のコーティング材料。
−Si(R3−a ・・・(1)
(式中、Rは炭素数3〜12のフッ素を有する有機基、Rは炭素数1〜4の炭化水素基、Xは加水分解性基であり、aは0または1である。)
b−SiRcY4−(b+c)・・(2)
(式中、R、Rは各々アルキル基、アルケニル基、アリール基、またはエポキシ基、グリシドキシ基、アミノ基、メタクリルオキシ基、あるいはシアノ基を有する炭化水素基、Yは加水分解性基であり、bおよびcは0または1であり、(b+c)は1または2である。)
【請求項3】
前記(B)シリカ微粒子が、コア−シェル構造を有する中空シリカである請求項1または2記載のコーティング材料。
【請求項4】
前記(C)多孔質シリカ微粒子の空隙率が20〜90%である請求項1〜3のいずれか1項に記載のコーティング材料。
【請求項5】
さらに(D)アルミニウムキレート化合物を含有する硬化触媒を含んでなる請求項1〜4のいずれか1項に記載のコーティング材料。
【請求項6】
前記(A)パーフルオロ基を有する化合物の一部または全部が加水分解された状態で、前記(B)シリカ微粒子および/または(C)多孔質シリカ微粒子を混合して、それぞれのシラノール基の一部を縮合せしめる塗液調合工程を有する請求項1〜5のいずれか1項に記載のコーティング材料の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のコーティング材料を透明基材の少なくとも一方の表面に低屈折率層として積層した光学物品。
【請求項8】
少なくとも一方の表面に、屈折率が1.5〜2.0であり、かつ表面抵抗が1×1010Ω/□以下の高屈折率層を設けた被膜付き透明基材の該高屈折率層面に、請求項1〜5のいずれか1項に記載のコーティング材料を積層した反射防止性を有する光学物品。

【公開番号】特開2007−182511(P2007−182511A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−2168(P2006−2168)
【出願日】平成18年1月10日(2006.1.10)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】