説明

コーティング樹脂用添加剤

【課題】 有機溶剤に可溶で、有機溶剤系でコーティング樹脂に添加して良好な帯電防止性のある塗膜を与えることができ、更に塗膜を水洗しても帯電防止効果が低下せず、高湿度下に保管しても白化しないコーティング樹脂用添加剤及びコーティング樹脂組成物の提供。
【解決手段】 (a)式(I)で表される化合物、及び(b)ラジカル重合性を有するアニオン界面活性剤を含有するコーティング樹脂用添加剤、この添加剤及びコーティング樹脂を含有するコーティング樹脂組成物。
【化1】


(式中、RはC4-22のアルキル基、A1はC2-4のアルキレン基、nは1〜30の数、R1、R2、R3はそれぞれ独立に、C1-18のアルキル基又はC1-3のヒドロキシアルキル基を示し、少なくとも1つはC1-3のヒドロキシアルキル基である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティング樹脂用添加剤、並びにコーティング樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
塗装や印刷等の分野でフィルム特性或いは表面特性改善のためコーティング樹脂によるコーティングが行われている。例えば、塗装分野における塗料、印刷分野におけるインキ、更にはバインダーなどにコーティング樹脂が用いられている。
【0003】
しかし、いずれの分野に於いても、コーティングを実施した場合、乾燥後或いは硬化後の被膜は制電効果に乏しく、被膜に帯電を生じ、帯電による種々のトラブルを多く発生させていた。
【0004】
かかる問題を解決するために、特許文献1には、少なくとも1つのポリエチレンオキサイド基を有するアミンを塩基構成体とするスルホン酸塩基含有低分子化合物を含む塗剤を用いて被膜を塗設した帯電防止性に優れた易接着性ポリエステルフィルムが開示されている。しかし、特許文献1に記載のスルホン酸塩基含有低分子化合物は有機溶剤への溶解性が低く、その用途は水系塗剤に限定されている。
【0005】
コーティング樹脂組成物に帯電防止剤の添加を行うとき、乾燥された粉末状の帯電防止剤を添加すると未溶解物が塗工後の塗膜にブツとなって残存し好ましくない。また帯電防止剤を水溶液の形で添加すると、硬化剤との反応に影響を及ぼしたり、場合によっては樹脂分の凝集/凝固を生じ好ましくない。更に、塗膜を水洗すると帯電防止効果が低下し、高湿度下に保管すると白化する等の問題も有する。
【特許文献1】特開平9−141800号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、有機溶剤に可溶で、有機溶剤系でコーティング樹脂に添加して良好な帯電防止性のある塗膜を与えることができ、更に塗膜を水洗しても帯電防止効果が低下せず、高湿度下に保管しても白化しないコーティング樹脂用添加剤及びコーティング樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、(a)式(I)で表される化合物(以下化合物(I)という)、及び(b)ラジカル重合性を有するアニオン界面活性剤を含有するコーティング樹脂用添加剤、この添加剤及びコーティング樹脂を含有するコーティング樹脂組成物を提供する。
【0008】
【化3】

【0009】
(式中、Rは炭素数4〜22のアルキル基又はアルケニル基、A1は炭素数2〜4のアルキレン基、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す1〜30の数であり、n個のA1は同一でも異なっていても良い。R1、R2、R3はそれぞれ独立に、炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基を示し、少なくとも1つは炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基である。)
【発明の効果】
【0010】
本発明のコーティング樹脂用添加剤は、安定した性状の塗膜を得ることができ、更に塗膜を水洗しても帯電防止効果が低下せず、また高湿度下に保管しても白化せず、耐高湿度保管性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
[添加剤]
本発明の添加剤は、(a)成分の化合物(I)と、(b)成分のラジカル重合性を有するアニオン界面活性剤を含有する。
【0012】
化合物(I)において、有機溶剤溶解性の観点から、Rは炭素数4〜22のアルキル基又はアルケニル基を示すが、炭素数8〜22のアルキル基が好ましく、炭素数8〜18のアルキル基がより好ましく、炭素数8〜12のアルキル基が更に好ましい。炭素数8〜12の分岐アルキル基が特に好ましい。帯電防止性及び有機溶剤溶解性の観点から、A1は炭素数2〜4のアルキレン基であり、エチレン基が好ましい。帯電防止性及び有機溶剤溶解性の観点から、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す1〜30の数であり、1〜20の数が好ましく、1〜10の数がより好ましく、1〜5の数が更に好ましい。R1、R2、R3はそれぞれ独立に、炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基を示し、少なくとも1つは炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基であるが、帯電防止性及び有機溶剤溶解性の観点から、R1、R2、R3の全てがヒドロキシエチル基であることが好ましい。
【0013】
化合物(I)は、単独で使用することもできるし、混合して使用することもできる。
【0014】
本発明の化合物(I)の製造方法は特に限定されず、例えば、オキシアルキレン基(アルキレン基の炭素数2〜4)を有するアルコールとクロロスルホン酸を付加反応させたものを、トリエタノールアミン等により中和して得ることができる。
【0015】
本発明の(b)成分は、ラジカル重合性を有するアニオン界面活性剤であれば特に限定されることは無く、式(II)で表される化合物(以下化合物(II)という)が挙げられる。
【0016】
【化4】

【0017】
[式中、R4、R5及びR6はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基、R7は炭素数1〜4のアルキレン基又は置換基として炭素数1〜18のアルキル基を有していても良いアリーレン基、A2は炭素数2〜18のアルキレン基又は−CH2CH(CH2OR8)−(R8は炭素数1〜18のアルキル基又は置換基として炭素数1〜18のアルキル基を有していても良いアリール基)で表される基、mはA2O基の平均付加モル数を示す1〜200の数であり、m個のA2は同一でも異なっていても良い。Mはカチオンを示す。]
【0018】
化合物(II)において、水洗後の帯電防止性及び耐高湿度保管性の観点から、R4及びR5が水素原子で、R6が水素原子又はメチル基、特にメチル基であることが好ましい。R7は水洗後の帯電防止性及び耐高湿度保管性の観点から、炭素数1〜4のアルキレン基又は置換基として炭素数4〜18のアルキル基を有するフェニレン基が好ましく、炭素数1〜4のアルキレン基がより好ましく、炭素数1〜2のアルキレン基が更に好ましく、エチレン基が特に好ましい。A2は、水洗後の帯電防止性及び耐高湿度保管性の観点から、炭素数4〜18のアルキレン基又は−CH2CH(CH2OR8)−(R8は炭素数1〜18のアルキル基又は置換基として炭素数4〜18のアルキル基を有するフェニル基が好ましく、炭素数1〜18、更に4〜18のアルキル基がより好ましい)で表される基と、炭素数2〜3のアルキレン基との混合基が好ましい。炭素数4〜18のアルキレン基としては、直鎖でも分岐鎖でも良く、例えばエチルエチレン、ジメチルエチレン、ブチルエチレン、オクチルエチレン、デシルエチレン、ドデシルエチレン、テトラデシルエチレン、ヘキサデシルエチレン等の基が挙げられる。また−CH2CH(CH2OR8)−で表される基中のR8は、炭素数1〜18のアルキル基が好ましいが、直鎖でも分岐鎖でも良く、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基等が挙げられる。炭素数2〜3のアルキレン基としては、直鎖でも分岐鎖でも良く、例えばエチレン基、プロピレン基等が挙げられ、水洗後の帯電防止性、耐高湿度保管性及び(a)成分との相溶性の観点から、エチレン基が好ましい。mはA2O基の平均付加モル数を示す1〜200の数であるが、水洗後の帯電防止性及び耐高湿度保管性の観点から、1〜150の数が好ましく、1〜100の数がより好ましく、1〜50の数が更に好ましい。
【0019】
Mで示されるカチオンとしては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属イオン、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属イオン、アンモニウムイオン、炭素数1〜18、好ましくは1〜4のアルキル基で置換されたアンモニウムイオン、トリエタノールアミン等の炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基を有するトリアルカノールアミンのアンモニウムイオン等が挙げられるが、(a)成分との相溶性の観点から、アンモニウムイオン、アルキル置換アンモニウムイオン、トリアルカノールアミンのアンモニウムイオンが好ましく、アンモニウムイオン、トリエタノールアミンのアンモニウムイオンがより好ましい。
【0020】
化合物(II)としては、下記式(II−1)〜(II−5)で表される化合物が挙げられ、水洗後の帯電防止性、耐高湿度保管性及び(a)成分との相溶性の観点から、式(II−1)〜(II−3)で表される化合物が好ましく、式(II−1)で表される化合物がより好ましい。
【0021】
【化5】

【0022】
[式中、R4、R5、R6、m及びMは前記の意味を示す。R71は炭素数1〜4のアルキレン基、A21は炭素数2〜4のアルキレン基を示し、m個のA21は同一でも異なっていても良い。]
【0023】
【化6】

【0024】
[式中、R4、R5、R6及びMは前記の意味を示す。R72は炭素数1〜4のアルキレン基、A22は−CH2CH(CH2OR81)−(R81は炭素数1〜18のアルキル基を示す)で表される基、A23は炭素数2〜4のアルキレン基、m1はA23O基の平均付加モル数を示す1〜150の数であり、m1個のA23は同一でも異なっていても良い。]
【0025】
【化7】

【0026】
[式中、R4、R5、R6及びMは前記の意味を示す。R73は炭素数1〜4のアルキレン基、A24は−CH2CH(R9)−(R9は炭素数3〜16のアルキル基を示す)で表される基、A25は炭素数2〜4のアルキレン基、m2はA25O基の平均付加モル数を示す1〜150の数であり、m2個のA25は同一でも異なっていても良い。]
【0027】
【化8】

【0028】
[式中、R4、R5、R6及びMは前記の意味を示す。R74は炭素数1〜4のアルキレン基、A26は−CH2CH(CH2OR82)−(R82は置換基として炭素数1〜18のアルキル基を有していても良いアリール基を示す)で表される基、A27は炭素数2〜4のアルキレン基、m3はA27O基の平均付加モル数を示す1〜150の数であり、m3個のA27は同一でも異なっていても良い。]
【0029】
【化9】

【0030】
[式中、R4、R5、R6、m及びMは前記の意味を示す。R75は置換基として炭素数1〜18のアルキル基を有していても良いアリーレン基、A28は炭素数2〜4のアルキレン基を示し、m個のA28は同一でも異なっていても良い。]
【0031】
上記式(II−1)で表される化合物の中では式(II−1−1)で表される化合物が更に好ましい。
【0032】
【化10】

【0033】
[式中、R4、R5、R6、R71及びMは前記の意味を示す。A29は炭素数4のアルキレン基、A30は炭素数2〜3のアルキレン基を示し、m4はA29O基の平均付加モル数を示す0〜50の数、m5はA30O基の平均付加モル数を示す1〜150の数であり、m4+m5は1〜200の数である。また、m5個のA30は同一でも異なっていても良い。]
【0034】
一般式(II−1−1)において、A30としては、水洗後の帯電防止性、耐高湿度保管性及び(a)成分との相溶性の観点から、エチレン基が好ましい。
【0035】
一般式(II−1−1)において、m4はA29O基の平均付加モル数を示す0〜50の数であるが、水洗後の帯電防止性、耐高湿度保管性及び(a)成分との相溶性の観点から、0〜10の数が好ましい。m5はA30O基の平均付加モル数を示す1〜150の数であるが、水洗後の帯電防止性、耐高湿度保管性及び(a)成分との相溶性の観点から、1〜50の数が好ましく、1〜40の数がより好ましい。
【0036】
本発明において、(b)成分は単独で使用することもできるし、混合して使用することもできる。本発明の(b)成分は、市販品を用いることもできるが、公知の方法により製造することもできる。
【0037】
化合物(II)は、例えば、3−メチル−3−ブテン−1−オール、アリルアルコール等の不飽和アルコールに触媒存在下、アルキレンオキサイド、アルキルグリシジルエーテルあるいはα−オレフィンエポキサイド等の1種又は2種以上を付加してエーテルアルコールを得、これを硫酸化剤により硫酸化し、トリエタノールアミン等の塩基性物質で中和することによって得られる。硫酸化剤としては、クロロスルホン酸、無水硫酸、アミド硫酸が挙げられるが、二重結合基への硫酸基の付加反応、二重結合基の異性化等の副反応を少なくする観点からアミド硫酸の使用が好ましい。
【0038】
本発明のコーティング樹脂用添加剤は、(a)成分と(b)成分との併用により格別顕著な効果が奏される。このような顕著な効果が発現される理由は定かではないが、本発明の(b)成分が、樹脂に取り込まれることにより、樹脂と(a)成分との相溶性がよくなり、(a)成分の樹脂中の分散性が向上する為に、高湿度下での樹脂組成物の白化性を抑え、(b)成分と(a)成分とが相互作用する結果、樹脂組成物の水洗後においても樹脂中に残留し易く、帯電防止効果も低下しにくいものと考えられる。
【0039】
本発明の添加剤は、(a)成分及び(b)成分以外に、(a)成分及び(b)成分の製造における未反応分や、(a)成分以外の有機溶剤溶解性の高い帯電防止剤を含有することができる。このような他の帯電防止剤としては、コーティング樹脂組成物の耐水性を向上させる観点から、ポリオキシアルキレン(アルキレン基の炭素数2〜4で、オキシアルキレン基の平均付加モル数1〜20)アルキル(アルキル基の炭素数8〜22)リン酸カリウム、ジグリセリンと炭素数8〜22の脂肪酸とのエステル及びソルビタンと炭素数8〜22の脂肪酸とのエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種(以下(c)成分という)が好ましい。
【0040】
ポリオキシアルキレンアルキルリン酸カリウムとしては、例えば、式(III)で表される化合物(以下化合物(III)という)が挙げられる。
【0041】
【化11】

【0042】
(式中、R11は式
【0043】
【化12】

【0044】
で表される基を示し、R12は式
【0045】
【化13】

【0046】
で表される基を示す。ここで、R13は炭素数8〜22のアルキル基、A5は炭素数2〜4のアルキレン基、pはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す1〜20の数である。)
化合物(III)において、有機溶剤溶解性及び耐水性の観点から、R13は炭素数8〜22のアルキル基を示すが、炭素数8〜18のアルキル基が好ましく、炭素数8〜12のアルキル基が更に好ましい。A5は炭素数2〜4のアルキレン基であるが、本発明の効果の観点からエチレン基が好ましい。pは、有機溶剤溶解性及び耐水性の観点から、オキシアルキレン基の平均付加モル数を示す1〜20の数であるが、1〜10の数が好ましく、1〜5の数が更に好ましい。
【0047】
ポリオキシアルキレンアルキルリン酸カリウムは、ポリオキシアルキレンアルキルアルコールに、五酸化リンを反応させてポリオキシアルキレンアルキルリン酸とし、水酸化カリウムにより中和して得ることができる。副生するリン酸カリウムを低く抑えるために、ポリオキシアルキレンアルキルアルコールと五酸化リンのモル比は、五酸化リン1モルに対してポリオキシアルキレンアルキルアルコール3.2モルが好ましい。
【0048】
ジグリセリンと炭素数8〜22の脂肪酸とのエステルとしては、有機溶剤溶解性及び耐水性の観点から、ジグリセリン1モルと、炭素数8〜22、中でも8〜18の脂肪酸1〜2モルとのエステルが好ましい。
【0049】
ジグリセリンと炭素数8〜22の脂肪酸とのエステルは、窒素シール下において、約220℃で約4〜5時間、ジグリセリンと炭素数8〜22の脂肪酸とを脱水エステル化反応して得ることができる。ジグリセリン中のジグリセリン(グリセリン2モル縮合体)は有機溶剤溶解性及び耐水性の観点から、50%以上が好ましく、70%以上がより好ましい。
【0050】
また、ソルビタンと炭素数8〜22の脂肪酸とのエステルとしては、有機溶剤溶解性及び耐水性の観点から、ソルビタン1モルと、炭素数8〜22、中でも8〜18の脂肪酸1〜2モルとのエステルが好ましい。ソルビタンと炭素数8〜22の脂肪酸とのエステルは、約230℃で約4〜5時間、ソルビタンと炭素数8〜22の脂肪酸とを脱水エステル化反応して得ることができる。
【0051】
本発明の添加剤中の、(a)成分の含有量は、本発明の目的を達成する観点から、好ましくは10〜80重量%であり、より好ましくは40〜80重量%である。また、(b)成分の含有量は、本発明の目的を達成する観点から、好ましくは10〜80重量%であり、より好ましくは20〜50重量%である。本発明の添加剤中(a)成分と(b)成分の含有割合は、水洗後の帯電防止性及び高湿度保存下での耐白化性の観点から、(a)/(b)(重量比)=80/20〜20/80が好ましく、80/20〜40/60がより好ましく、75/25〜50/50が更に好ましい。
【0052】
また、本発明の添加剤中に(c)成分が含有される場合の(c)成分の含有量は、コーティング樹脂組成物の耐水性の観点から、2〜80重量%が好ましく、4〜75重量%がより好ましい。
【0053】
[コーティング樹脂組成物]
本発明のコーティング樹脂組成物は、本発明の添加剤及びコーティング樹脂を含有する。本発明の添加剤の含有量は、有機溶剤溶解性、水洗後の帯電防止性及び耐高湿度保管性の観点から、コーティング樹脂100重量部に対し、好ましくは0.5〜20重量部、より好ましくは1〜10重量部、更に好ましくは2〜5重量部である。
【0054】
本発明に用いられるコーティング樹脂は、溶剤等で溶液状にして、例えばインキ、塗料、バインダー等として、基材のコーティングに用いるのに好適な樹脂であれば特に限定されないが、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン系樹脂等が挙げられる。また、ジイソシアネート化合物で膜を硬化する熱硬化型や、UV照射により膜を硬化させるUV硬化型等の樹脂が挙げられる。これらのコーティング樹脂の中では、透明性を保持する観点から、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂が好ましい。
【0055】
本発明のコーティング樹脂組成物中の、コーティング樹脂の含有量は、本発明の目的を達成する観点から、好ましくは10〜50重量%であり、より好ましくは15〜40重量%である。
【0056】
本発明のコーティング樹脂組成物は、更に有機溶剤を含有することが好ましい。有機溶剤としては、特に限定されないが、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、アルコール類、ケトン類、エステル類等を用いることができる。これらの中では、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ノルマルヘキサン、酢酸n−ブチル、酢酸n−エチル、イソプロピルアルコールが好ましい。
【0057】
本発明の組成物中の有機溶剤の含有量は、塗工性の観点から、45〜85重量%が好ましく、40〜70重量%が更に好ましい。
【0058】
本発明の添加剤の添加方法に制限は無く、コーティング樹脂を構成するモノマー重合反応前での添加でも、重合後に使用して配合される塗工液組成物に添加しても良好な性能を得ることができる。
【0059】
本発明の組成物は水を含有することができるが、塗膜強度、透明性等の塗膜物性低下を抑制する観点から、コーティング樹脂組成物中の水の含有量は5重量%未満が好ましく、1重量%未満がより好ましく、実質含まないことが好ましい。
【0060】
本発明のコーティング樹脂組成物には、上記成分以外に通常使われるジイソシアネート化合物等の硬化剤、顔料・染料、ガラスビーズ、ポリマービーズ、無機ビーズ等のビーズ類や、炭酸カルシウム、タルク等の無機充填材類、潤滑剤、安定剤、紫外線吸収剤、過酸化物等の重合開始剤などの添加剤を配合できる。
【0061】
本発明のコーティング樹脂組成物は、基材に塗工して種々の機能を発現することができる樹脂組成物であり、例えば、ポリマービーズ、樹脂、有機溶剤を組み合わせたものは、光拡散フィルムとして機能し、粘着性のある樹脂、有機溶剤を組み合わせたものは、粘着フィルムとして機能し、顔料、樹脂、有機溶剤を組み合わせたものは、塗料として機能を発現する。
【0062】
本発明のコーティング樹脂組成物の水洗後の表面固有抵抗値は、水洗後の帯電防止性を維持する観点から好ましくは1×1013Ω以下である。尚、表面固有抵抗値は実施例記載の方法に従って測定することができる。
【実施例】
【0063】
以下の実施例に用いた本発明の添加剤及び比較の添加剤中の各成分をまとめて以下に示す。(a)成分は、あらかじめEDG(ジエチレングリコールモノエチルエーテル)にて脱水・溶媒置換した後、有効分50%に調整したものを用いた。
尚、以下の剤において、POE(n)とは、オキシエチレン基の平均付加モル数nのポリオキシエチレン鎖を示し、POB(n)とは、オキシブチレン基の平均付加モル数nのポリオキシブチレン鎖を示す。
【0064】
<(a)成分>
化合物(a−1):POE(3)ラウリル硫酸トリエタノールアミン塩(50%有効分のEDG溶液)
【0065】
<(b)成分>
化合物(b−1):POB(6)POE(15)3−メチル−3−ブテニルエーテルサルフェートのトリエタノールアミン塩(尚、POB(6)とPOE(15)とはブロック結合している)
化合物(b−2):POE(40)3−メチル−3−ブテニルエーテルサルフェートのアンモニウム塩
化合物(b−3):POB(6)POE(5)3−メチル−3−ブテニルエーテルサルフェートのトリエタノールアミン塩(尚、POB(6)とPOE(5)とはブロック結合している)
【0066】
実施例1〜5及び比較例1〜3
コーティング樹脂として、アクリル系樹脂(大日本インキ化学工業(株)製のアクリディック A−801、固形分濃度50%、溶媒トルエン/酢酸n−ブチル、水酸基価50)、硬化剤としてヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、塗工溶媒としてイソプロピルアルコール、添加剤として、表1に示す組成の添加剤を用い、表1に示す組成のコーティング樹脂組成物を調製した。
【0067】
得られたコーティング樹脂組成物を、100μmPET二軸延伸フィルムに、20μmアプリケータを用い塗布し、乾燥後、50℃乾燥機内にて12時間放置し硬化させた。硬化後の塗膜について、下記方法で塗膜の帯電防止性(水洗前及び水洗後)、耐高湿度保管性を評価した。結果を表1に示す。
【0068】
<帯電防止性の評価法>
硬化後の塗膜について、25℃、相対湿度50%に調整した室内で、A−4329型ハイレジスタンスメータ(横河YP社)により、表面固有抵抗値を測定した。また、この硬化後の塗膜を、流水下で10回表面を手でこすり洗いし、乾燥後、25℃、湿度50%に調整した室内で、同様にA−4329型ハイレジスタンスメータにより、表面固有抵抗値を測定した(これらの表面固有抵抗値が1×1013Ω以下のものが帯電防止効果があるといえる。)。
【0069】
<耐高湿度保管性の評価法>
ガラス製容器(縦10cm、横25cm、深さ25cm)の底に約2cmの厚みで水道水を入れ、容器の内壁に塗工フィルム(上記の100μmPET二軸延伸フィルムに、20μmアプリケータを用い塗布したフィルムを5cm×10cmのサイズにしたもの)を水に接触しない状態で貼りつけ、密閉状態を保ったまま35℃で7日間試験した。容器より取り出したフィルムは風乾後ヘーズメータにより曇りの測定を行った。
【0070】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)式(I)で表される化合物、及び(b)ラジカル重合性を有するアニオン界面活性剤を含有するコーティング樹脂用添加剤。
【化1】

(式中、Rは炭素数4〜22のアルキル基又はアルケニル基、A1は炭素数2〜4のアルキレン基、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す1〜30の数であり、n個のA1は同一でも異なっていても良い。R1、R2、R3はそれぞれ独立に、炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基を示し、少なくとも1つは炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基である。)
【請求項2】
式(I)で表される化合物において、R1、R2及びR3の全てがヒドロキシエチル基である請求項1記載のコーティング樹脂用添加剤。
【請求項3】
(b)成分が、式(II)で表される化合物である請求項1又は2記載のコーティング樹脂用添加剤。
【化2】

[式中、R4、R5及びR6はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基、R7は炭素数1〜4のアルキレン基又は置換基として炭素数1〜18のアルキル基を有していても良いアリーレン基、A2は炭素数2〜18のアルキレン基又は−CH2CH(CH2OR8)−(R8は炭素数1〜18のアルキル基又は置換基として炭素数1〜18のアルキル基を有していても良いアリール基)で表される基、mはA2O基の平均付加モル数を示す1〜200の数であり、m個のA2は同一でも異なっていても良い。Mはカチオンを示す。)
【請求項4】
(a)成分と(b)成分の含有割合が、(a)/(b)(重量比)=80/20〜20/80である請求項1〜3いずれかに記載のコーティング樹脂用添加剤。
【請求項5】
請求項1〜4いずれかに記載の添加剤、及びコーティング樹脂を含有するコーティング樹脂組成物。

【公開番号】特開2009−1612(P2009−1612A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−161396(P2007−161396)
【出願日】平成19年6月19日(2007.6.19)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】