説明

コーティング用樹脂組成物とそれを用いた反射フィルム。

【課題】熱による撓みが少なく、優れた密着性を有し、LED光源からの強烈かつ持続的な発熱を受けても撓みや黄変等が発生しにくい安価な反射フィルムの提供。
【解決手段】ガラス転移温度が75℃以上110℃未満であってメタクリル酸メチルを60%質量以上含有するモノマー混合物を重合させてなるアクリル系ポリマー(A)と、分子量が600以上のヒドロキシフェニルトリアジン骨格を有する化合物(B)とを含むコーティング用樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED液晶ディスプレイ構成部材として使用することができるコーティング用樹脂組成物及びそれを用いた反射フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイでは液晶セルを照らすバックライトが用いられており、液晶モニターではエッジライト方式のバックライト、液晶テレビでは直下型のバックライトが採用されている。これらのバックライト用反射フィルムとしては、気泡により形成された多孔質の白色フィルムが一般的に用いられている(特許文献1)。近年、光源として冷陰極管ではなく、LEDを使用したバックライトユニットが多くなっている。LEDランプに対応した放熱性に優れた金属薄膜層を基材熱可塑性樹脂に積層した反射フィルムも提案されている(特許文献2)。
【特許文献1】特開平8−262208号公報
【特許文献2】特開2010−85585号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
液晶ディスプレイ光源ユニットに用いられる反射フィルムは一般的にフィルム状の熱可塑性樹脂で形成されているが、光源から最も近いところに設置される部材ため、光源からの熱、湿気や紫外線などによる変形や変色(黄変等)を受けやすいという欠点を有している。これまで市場の主流を占めていた冷陰極管(CCFL)を用いた光源ユニットでは、熱、湿気や紫外線などによる不具合を克服した反射フィルムが用いられていた。消費電力の観点から近年LEDランプを用いた光源ユニットが採用されるようになり。CCFLの場合と異なる課題が出てきた。LEDランプは発光と同時に強く発熱するため、LEDランプ近傍は80℃以上の高温度下に曝され、同時に大気中の湿気にも曝される。このような高温・高湿度が部材に与える影響は、CCFLの場合と比較にならず、CCFLのときに使用が可能であった反射フィルムを用いて設置をしても、反射フィルムが熱変形により部分的に撓んでしまい、その結果、反射特性が低下してしまうという問題が発生している。放熱性という点では優れている金属薄膜層を基材熱可塑性樹脂に積層したタイプの反射フィルムは熱による撓みも改善されてはいるが、金属薄膜層をポリウレタン系接着剤を介して熱可塑性樹脂基材に貼り付けるなどしており、工程的に煩雑なため低コスト化に限界がある。本発明はこれらの不都合に鑑みてなされたものでありLED光源近傍の強烈かつ持続的な熱放射によっても撓みが少なく、優れた密着性を有し、このようなLEDランプの発熱を受けても撓みや黄変等が発生しにくく、長期間にわたり設計どおりの反射率がえられる安価な反射フィルムの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の課題を達成するための解決手段として、本願の第一の発明は、特定のガラス転移温度を有するメタクリル酸メチルを相当量含有するモノマー混合物を重合させてなるアクリル系ポリマー(A)と、特定分子量のヒドロキシフェニルトリアジン骨格を有する化合物(B)とを含むコーティング用樹脂組成物である。
第2の発明は、特定構造のヒドロキシフェニルトリアジン骨格を有する化合物を含むコーティング用樹脂組成物である。
第3の発明は、アクリル系ポリマー(A)の単量体成分が、更にトリアゾール骨格を有するモノマーを特定量含むことを特徴とするコーティング用樹脂組成物である。
第4の発明は、熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも片面に第1乃至第3の発明のコーティング用樹脂組成物から形成した塗布層を有する積層体であることを特徴とする反射フィルムである。
【発明の効果】
【0005】
本発明のコーティング剤およびそれを塗布した反射フィルムを用いると、前記課題を克服した、つまり、光源による熱による撓みが少なく、優れた密着性を有する反射フィルムを得る事が出来るので、そのような特性が要求される液晶ディスプレイのエッジライト方式バックライトのリフレクター、及び直下型方式のバックライトやLEDを搭載したバックライトの反射フィルム、反射特性が要求される太陽電池封止フィルムやバックシートとして使用される。中でもLEDを搭載したバックライトの反射フィルムとして、好適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の一実施例として好ましい実施形態について詳細に説明する。但し、この詳細な説明は本発明をこの形態にのみ限定するものではない。
<本発明のコーティング剤の基本構成>
本発明のコーティング用樹脂組成物は、ガラス転移温度が75℃以上110℃未満であってメタクリル酸メチルを60%質量以上含有するモノマー混合物を重合させてなるアクリル系ポリマー(A)と、分子量が600以上のヒドロキシフェニルトリアジン骨格を有する化合物(B)とを含むことを特徴とする。
【0007】
<アクリル系ポリマー(A)の必須モノマー組成>
アクリル系ポリマー(A)には、すべてのモノマー成分の質量合計を100質量%とすると、メタクリル酸メチルを60質量%以上とすることが好ましい。より好ましくは70質量%以上更に好ましくは80質量%以上とすることが好ましい。60質量%未満であると、後述する特定分子量のヒドロキシフェニルトリアジン骨格を有する化合物(B)との相溶性が低下し、基材との密着性が低下する。また熱による撓みが生じやすくなり反射率が低下するおそれがある。
【0008】
<アクリル系ポリマー(A)の選択しうるモノマー組成について>
メタクリル酸メチル以外のモノマー成分に用いることができるその他の共重合可能なモノマーとしては特に限定されないが、例えば、下記のモノマー等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。(メタ)アクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸等のカルボキシル基を有するモノマー;2−(メタ)アクリロイロキシエチルアシッドホスフェート等の酸性リン酸エステル系モノマー;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシ(メタ)アクリレート(例えば、ダイセル化学工業社製、商品名「プラクセルFM」)等の活性水素をもつ基を有するモノマー;エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル;グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基を有するモノマー。 (メタ)アクリルアミド、N,N’−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、イミド(メタ)アクリレート、ヒンダードアミン系モノマー、例えば、「アデカスタブLA−82」、「アデカスタブLA−87」(いずれも商品名、旭電化工業社製)等の窒素原子を有するモノマー;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の2個以上の重合性二重結合を有するモノマー;塩化ビニル等のハロゲン原子を有するモノマー;スチレン、アルファ−メチルスチレン等の芳香族系モノマー;酢酸ビニル等のビニルエステル;ビニルエーテル。
【0009】
また、本発明のコーティング用樹脂組成物から形成した塗布層を有する積層体の熱撓みを少なくする点から、ベンゾトリアゾール骨格を有するモノマーの使用が好ましい。具体的には、「RUVA93」(商品名、大塚化学社製)が挙げられる。ベンゾトリアゾール骨格を有するモノマーの使用量としては、例えば、すべてのモノマー成分の質量合計を100質量%とすると、0.5質量%以上、30質量%以下とすることが好ましい。より好ましくは1質量%以上20質量%以下とすることが好ましい。更に好ましくは2質量%以上10質量%以下とすることが好ましい。0.5質量%未満であると、熱による撓みが大きくおそれがある。
一方、20質量%を越えると、後述する特定分子量のヒドロキシフェニルトリアジン骨格を有する化合物(B)との相溶性が低下し、塗膜としての透明性や熱による撓みが低下したり、基材との密着性が低下するおそれがある。
【0010】
<アクリル系ポリマー(A)の設計:ガラス転移温度>
アクリル系ポリマー(A)のガラス転移温度は、75℃以上110℃未満である。公知のモノマーガラス転移温度を参考に、この範囲に入るようにモノマーの選択を行う。このように、モノマーを選択してポリマーを重合する事により、本願発明の効果を示すアクリル系ポリマー(A)を製造する事が出来る。但し、ガラス転移温度については、その値が開示されていなかったり、明確でないモノマーもあることから、本発明におけるガラス転移温度は、JIS K7121の規定に基づき、示差走査熱量計(DSC)を用いて、始点法により求めた値とする。
【0011】
<アクリル系ポリマー(A)の重合方法>
アクリル系ポリマー(A)を製造するための重合方法は、特に限定されるものではないが、従来公知の種々の重合方法、例えば、溶液重合法や懸濁重合法等を採用することができる。溶液重合法を採用して単量体組成物を共重合させる場合において用いることができる溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、その他の高沸点の芳香族系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート等のエステル系溶媒;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これら溶媒は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。また、溶媒の使用量は、特に限定されるものではない。溶媒の使用量としては、重合条件やアクリル系ポリマー中のポリマー成分の重量割合等により適宜設定すればよい。さらに、懸濁重合法等を採用して単量体組成物を共重合させる場合には、乳化剤を用いることができる。
【0012】
また、単量体組成物を共重合させる際には、重合開始剤を用いることができる。重合開始剤としては特に限定されず、例えば、2,2’−アゾビス−(2−メチルブチロニトリル)、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド等の通常のラジカル重合開始剤が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、重合開始剤の使用量は、特に限定されるものではないが、 使用量としては、所望する重合体の特性値等から適宜設定すればよいが、例えば、モノマー成分を100質量%とすると、0.01〜50質量%とすることが好ましい。より好ましくは、0.05〜20質量%である。
反応温度は、特に限定されるものではないが、室温〜200℃の範囲が好ましく、40℃〜140℃の範囲がより好ましい。尚、反応時間は、反応温度、或いは、用いる単量体組成物の組成や重合開始剤の種類等に応じて、重合反応が完結するように、適宜設定すればよい。
【0013】
<アクリル系ポリマー(A)の設計:分子量>
上記アクリル系ポリマーを構成するポリマーの重量平均分子量としては、例えば、2000〜100万であることが好ましい。より好ましくは、4000〜30万であり、更に好ましくは、5000〜10万である。例えば、前項で記載されている重合方法、条件を選択する事により好ましい分子量の範囲にすることで、本願発明の効果を示すアクリル系ポリマー(A)を製造する事が出来る。なお、重量平均分子量は、ポリスチレン標準GPCでの測定値である。
【0014】
<組成物中のアクリル系ポリマー(A)の量比>
本発明のコーティング組成物中に含まれる上記アクリル系ポリマー(A)は、本発明のコーティング組成物を構成する樹脂100質量%に60%質量%以上、好ましくは80%以上含まれていることが望ましい。50質量%未満では、後述する特定分子量のヒドロキシフェニルトリアジン骨格を有する化合物(B)との相溶性が低下し、塗膜としての透明性や熱による撓みが低下したり、基材との密着性が低下するおそれがある。
【0015】
<化合物(B)の骨格的特徴>
ヒドロキシフェニルトリアジン骨格を有する化合物(B)は、以下の式 {1}に示される構造を有する。好ましい分子量は600以上で、より好ましくは分子量が700以上である。ヒドロキシフェニルトリアジン骨格とは、トリアジンと、トリアジンに結合した3つのヒドロキシフェニル基とからなる骨格((2−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン骨格)である。ヒドロキシフェニル基における水酸基の水素原子は、トリアジンの窒素原子とともに水素結合を形成し、形成された水素結合は、フェニルトリアジンの発色団としての作用を増大させる。ヒドロキシフェニルトリアジン骨格におけるヒドロキシフェニル基には、アルキル基、アルキルエステル基などの置換基が結合していてもよいが、当該置換基中にアクリルポリマー(A)との架橋点となりうる構造を有さないことが好ましい。
下記一般式 {1};
【0016】
【化1】

【0017】
[上記 {1}におけるR〜Rは、互いに独立して、水素原子、または炭素数1〜18のアルキル基もしくはアルキルエステル基である。尚、アルキルエステル基は式「−CH(−R)C(=O)OR」により示される基であることが好ましく、上記式においてRは水素原子またはメチル基であり、Rは直鎖または分岐を有するアルキル基である。R〜Rがアルキル基である場合、直鎖アルキル基であっても分岐を有するアルキル基であってもよい。]
〜Rは、アクリル系ポリマー(A)との相溶性、熱による撓み性を少なくする点からアルキルエステル基が好ましい。
【0018】
特に好ましいヒドロキシフェニルトリアジン骨格を有する化合物(B)には、例えば、下記 {2}を主成分として含むCGL77MPA(チバスペシャリティケミカルズ製)あるいはCGL777MPAD(チバスペシャリティケミカルズ製)がある。
【0019】
【化2】

【0020】
<組成物中の化合物(B)の量比>
本発明のコーティング用樹脂組成物におけるヒドロキシフェニルトリアジン骨格を有する化合物(B)の含有量は、例えば、アクリルポリマー(A)100部に対して、0.5〜20部である。ヒドロキシフェニルトリアジン骨格を有する化合物(B)の含有量が20部以上になると、アクリルポリマー(A)との相溶性が低下し、基材との密着性が低下する。また熱による撓みが生じやすくなり反射率が低下するおそれがある。一方、ヒドロキシフェニルトリアジン骨格を有する化合物(B)の含有量が0.5部以下になると、また熱による撓みが生じやすくなり反射率が低下するおそれがある。
【0021】
<コーティング組成物の基本構成>
本発明のコーティング用樹脂組成物には、例えば、溶剤や添加剤等を1種又は2種以上含んでいてもよい。このような溶剤としては、上述したのと同様の有機溶剤等が挙げられ、また、添加剤としては、フィルムやコーティング膜等を形成する樹脂組成物に一般に使用される従来公知の添加剤等を用いることができ、例えば、レベリング剤;コロイド状シリカ、アルミナゾル等の無機微粒子、ポリメチルメタクリレート系の有機微粒子、消泡剤、タレ性防止剤、シランカップリング剤、チタン白、カーボンブラック、有機顔料、顔料分散剤;リン系やフェノール系の酸化防止剤;粘性調整剤;紫外線安定剤;金属不活性化剤;過酸化物分解剤;充填剤;難燃剤;補強剤;高分子可塑剤;潤滑剤;防錆剤;蛍光性増白剤;有機及び無機系の紫外線吸収剤、無機系熱線吸収剤;有機・無機防炎剤;有機及び無機系の帯電防止剤;オルソ蟻酸メチルなどの脱水剤等が挙げられる。
【0022】
<コーティング組成物を用いた塗布層の形成方法>
前述の方法で作成することが出来る本発明のコーティング用樹脂組成物は、公知の方法にて塗工し樹脂層を形成する事が可能である。樹脂層は単に基材表面に塗膜を形成したり、他の基材、機能層との間に積層する構成に形成することができる。樹脂層は、その求められる性能により公知の方法で機能を付与しても良く、例えば架橋、未架橋のいずれの方法でも使用可能である。塗膜に耐溶剤性が必要な場合を例に取ると、ポリイソシアネート化合物等の架橋剤を配合して硬化塗膜を形成し、耐溶剤性を付与する事が好ましい。
【0023】
<基材として用いる熱可塑性樹脂フィルム>
本発明の基材として用いる熱可塑性樹脂フィルムは、特に制限はないが可視光線反射率が高ければ高い方が良く、特に内部に気泡及び/又は非相溶の粒子を含有する白色フィルムが好ましく使用される。これらの白色フィルムとしては限定されるものではないが、多孔質の未延伸、あるいは二軸延伸ポリプロピレンフィルム、多孔質の未延伸あるいは延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが例として好ましく用いられる。更に好ましくは耐熱性や反射率の点からポリエチレンナフタレートやとの混合及び/又は共重合した多孔質白色二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムである。白色フィルムの例としては、まず、単層構成の例では、ルミラー(登録商標)E20(東レ(株)製)、SY64(SKC製)などが挙げられ、2層構成の白色フィルムとしては、テトロン(登録商標)フィルムUXZ1(帝人デュポンフィルム(株)製)などが挙げられ、3層構成の白色フィルムとしては、ルミラー(登録商標)E6SL、E6SR、テトロン(登録商標)フィルムUX(帝人デュポンフィルム(株)製)などが挙げられる。
【0024】
基材のフィルムの構成は、使用する用途や要求する特性により適宜選択すれば良く、特に限定されるものではないが、少なくとも1層以上の構成を有する単層及び/又は2層以上の複合フィルムが好ましく、その少なくとも1層以上に気泡及び/又は無機粒子を含有していることが好ましい。単層構成(=1層)の例としては、たとえば単層のA層のみの白色フィルムであり、前記A層に無機粒子及び/又は気泡を含有させた構成のものが挙げられ、その無機粒子の含有率は白色フィルムの全重量に対して2重量%以上であることが好ましく、より好ましくは7重量%以上、最も好ましくは10重量%以上である。また、2層構成の例としては、前記A層に白色フィルムをB層として積層した、A層/B層の2層構成の白色フィルムである。また3層構成の例としては、前記同様に、A層/B層/A層及び/又はA層/B層/C層の3層を積層してなる3層積層構造の白色フィルムであり、各層の内少なくとも1層中に、無機粒子及び/又は気泡を含有させた構成のものが挙げられ、その無機粒子の含有率は、前記同様に、白色フィルムの全重量に対して2重量%以上であることが好ましく、より好ましくは7重量%以上、更に好ましくは30重量%以上である。2層構成や3層構成の場合には、LEDランプの光の入射側に透明フィルムを積層してもよい。また基材の層間にウレタン系ドライネート接着剤を使用して貼合してもよい。
【0025】
<コーティング組成物を用いて塗工した反射フィルム>
本発明のコーティング組成物を用いて塗工した反射フィルムは、塗工後の性能として、加熱温度90℃加熱時間30分、或いは60分で測定した際のフィルム長手方向および幅方向の加熱収縮率がいずれも−0.1%以上0.2%以下であることが好ましい。より好ましくは−0.05〜0.15%以下である。加熱温度90℃加熱時間30分、或いは60分のフィルム長手方向、または幅方向の加熱収縮率が−0.1%以上0.2%以下の範囲を外れると、高温に達した際に、フィルムが撓んだ状態となりやすくなる。特に、LEDを搭載したバックライト用の反射フィルムでは、高温下での使用が多いばかりか、LEDを設置する位置に合わせフィルムの打ち抜き加工を行うことが多いため、フィルムの撓みは位置ズレやバックライトに搭載後のLEDへの接触等を招きやすくなり、フィルムの不具合はバックライトの特性や安全性を損なう恐れがある。
【0026】
前記加熱温度90℃加熱時間30分、或いは60分で測定したフィルム長手方向加熱収縮率とは、一定の大きさのフィルムサンプルを準備し、室温でその長手方向(製造時の押出方向)に一定の長さ(A)を測定し、そのサンプルを90℃に保持した恒温槽中に30分間放置後、或いは60分間放置後、同じ室温まで徐冷した後に、該(A)に相当する部分の長さを測定し、その長さ(B)と初期の長さ(A)から次式 {1}にて算出した数値である。 加熱収縮率(%)={(A−B)/A}×100 {1}
なお、負の数値は高分子フィルムが伸びたことをあらわす。
また、加熱温度90℃加熱時間30分、或いは60分で測定したフィルムの幅方向加熱収縮率とは、高分子フィルムの幅方向(製造時の押出方向に対して直角方向)に高分子フィルムの長手方向と同様にして測定した値をいう。
【実施例】
【0027】
以下にアクリル系ポリマーの合成例、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
<合成例1>
攪拌機、滴下口、温度計、冷却管及び窒素ガス導入口を備えた300mlのフラスコに酢酸エチル100gを仕込み、還流温度まで昇温させた。還流し始めたら、メチルメタクリレート80g、ブチルメタクリレート10g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート10gと開始剤として2,2’−アゾビス−(2−メチルブチロニトリル)1.5gの混合物を2時間かけて連続滴下した。更に4時間加熱後にアクリル系ポリマーの不揮発分が50.0%の溶液を得た。なお、このアクリル系ポリマーを構成する重合体の重量平均分子量は、30000。
【0028】
<ガラス転移温度の測定方法>
アクリル系ポリマーのガラス転移温度は、JIS K7121の規定に準拠して求めた。具体的には、示差走査熱量計(リガク社製、DSC−8230)を用い、窒素ガス雰囲気下、約10mgのサンプルを常温から200℃まで昇温(昇温速度20℃/分)して得られたDSC曲線から、始点法により評価した。リファレンスには、アルファ−アルミナを用いた。
アクリル系ポリマーの合成に用いたモノマー成分の組成及び得られたアクリル系ポリマーの特性値を表1に示す。
【0029】
<合成例2〜4>
合成例2〜4のアクリル系ポリマーの合成に用いるモノマー成分の組成を表1に示すようにした以外は、合成例1と同様の方法でアクリル系ポリマーを得た。得られたアクリル系ポリマーの特性値を表1に示す。
次にアクリル系ポリマーを使用して、以下のコーティング用樹脂組成物を配合した。
【0030】
【表1】

【0031】
<実施例1>
合成例1で得られたアクリル系ポリマー100部に対して、ヒドロキシフェニルトリアジン骨格を有する化合物(分子量958)を主成分とし、分子量773および分子量1142のヒドロキシフェニルトリアジン骨格を有する化合物を副成分とするCGL777MPA(チバスペシャリティケミカルズ製、有効成分80%)5部を容器に入れ、更にトルエンで不揮発分が20%溶液となるまで希釈して、樹脂組成物1を調製した。次に熱可塑性樹脂フィルムとして多孔質の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートで構成された3層構成の熱可塑性樹脂フィルム(東レ(株)製 ルミラー(登録商標)E6SL、厚み25000μm)を準備した。前記樹脂組成物1を、この熱可塑性樹脂フィルムの両面に、メタバー#35を使用して塗布し、120℃、1分間で加熱乾燥して、乾燥後の厚みが各片面10μm、両面総厚み20μmの塗布層を設けて、反射フィルムを得た。
<実施例2〜7、比較例1、2>
樹脂組成物の配合組成が表2に示すようにした以外は、実施例1と同様にして本発明の反射フィルムを得た。
[評価サンプルの評価方法]
{1}密着性
セロハンテープ剥離により評価した。10mm幅のニチバン(株)製セロハンテープCT−405を本発明の樹脂組成物を形成した塗布面に貼り、90°方向に剥離した後の塗膜の残存率を目視にて判定し、以下の評価基準で判定した。
○:残存率100%
△:残存率50%以上100%未満
×:残存率50%未満
{2}加熱収縮率
フィルム の長手方向、幅方向各々を10mm幅×230mm長に切り出し、該長尺方向に200mm間隔のマークを入れ、金尺で正確にマーク間距離を読みとる(αmm)。該サンプルを90℃の熱風オーブンに30分間、或いは60分間エージングした後に該サンプルのマーク間距離を上記の方法で読みとる(βmm)。上記のマーク間距離から次式で加熱収縮率を算出し%で表した。 以下の評価基準で判定した。幅方向加熱収縮率は、高分子フィルムの幅方向(製造時の押出方向に対して直角方向)に高分子フィルムの長手方向と同様にして測定した値をいう。
・加熱収縮率 (%)=[(α−β)/α]×100。
[長手方向]
◎:−0.05%以上0.15%以下
○:−0.1%以上0.2%以下
×:−0.1%より小さい、或いは0.2%より大きい
[横方向]
◎:−0.05%以上0.15%以下
○:−0.1%以上0.2%以下
×:−0.1%より小さい、或いは0.2%より大きい
{3}反射率の保持率
分光式色差計SE−2000型(日本電色工業(株)製)を用い、JIS Z−8722に準じて前記加熱収縮率で評価した長手方向で切り出したサンプルの塗布層面の400〜700nmの範囲の分光反射率を10nm間隔で測定し、その平均値を平均反射率とした。反射率の保持率は、90℃の熱風オーブンに30分間、或いは60分間エージングする前の平均反射率をX、30分間、或いは60分間エージング後の平均反射率をYとし、下記式により求めた。
・反射率の保持率(%) = [(X−Y)/X]×100。
【0032】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明によれば、熱による撓みが少なく、優れた密着性を有し、LEDランプの強烈かつ持続的な発熱を受けても撓みや黄変等が発生しにくい安価な反射フィルムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の反射フィルムの断面模式図の一例である。
【図2】本発明の反射フィルムの断面模式図の一例である。
【符号の説明】
【0035】
1:白色フィルム
2:塗布層
3:ポリウレタン系ドライラミネート接着剤
4;透明PET
5;反射フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス転移温度が75℃以上110℃未満であってメタクリル酸メチルを60%質量以上含有するモノマー混合物を重合させてなるアクリル系ポリマー(A)と、分子量が600以上のヒドロキシフェニルトリアジン骨格を有する化合物(B)とを含むコーティング用樹脂組成物
【請求項2】
前記ヒドロキシフェニルトリアジン骨格を有する化合物(B)が、下記一般式 {1};
【化1】

[上記 {1}におけるR〜Rは、互いに独立して、水素原子、または炭素数1〜18のアルキル基もしくはアルキルエステル基である。尚、アルキルエステル基は式「−CH(−R)C(=O)OR」により示される基であることが好ましく、上記式においてRは水素原子またはメチル基であり、Rは直鎖または分岐を有するアルキル基である。R〜Rがアルキル基である場合、直鎖アルキル基であっても分岐を有するアルキル基であってもよい。]
のヒドロキシフェニルトリアジン骨格を有する化合物である請求項1〜2記載のコーティング用樹脂組成物。
【請求項3】
アクリル系ポリマー(A)の単量体成分が、更にトリアゾール骨格を有するモノマーを1〜20質量%含むものである請求項1〜2に記載のコーティング用樹脂組成物。
【請求項4】
熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも片面に前記請求項1〜3記載のコーティング用樹脂組成物を形成した塗布層を有する積層体であることを特徴とする反射フィルム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−41436(P2012−41436A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−183598(P2010−183598)
【出願日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】