説明

コーティング用樹脂組成物

【課題】透明性のみならず、折り曲げ加工性、耐カール性および保存安定性に優れたコーティング用樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】メチル(メタ)アクリレートを含有するモノマー成分を重合させてなる(メタ)アクリル系重合体、飽和ポリエステルおよび式(I):


〔式中、R1は炭素数1〜22のアルキル基、R2は炭素数2〜4のアルキレン基、Xは式:


(式中、R3、R4およびR5は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜18のアルキル基または炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基を示す)で表わされる基、nは1〜30の整数を示す〕で表わされる安定化剤を含有することを特徴とするコーティング用樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティング用樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、本発明は、透明性、折り曲げ加工性、耐カール性および保存安定性に優れ、例えば、有機溶媒系コーティング用樹脂組成物として好適に使用することができるコーティング用樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者らは、透明性、耐候性および耐汚染性に優れた紫外線吸収層を形成する紫外線吸収性樹脂組成物として、溶剤系界面活性剤と、紫外線吸収性単量体を含む単量体組成物を重合させることによって得られた紫外線吸収性重合体とを含有する紫外線吸収性樹脂組成物を提案している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
前記紫外線吸収性樹脂組成物は、透明性、耐候性および耐汚染性に優れた紫外線吸収層を形成するものであるが、近年、透明性のみならず、折り曲げ加工性、耐カール性および保存安定性に優れたコーティング用樹脂組成物の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−201956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、透明性をはじめ、折り曲げ加工性、耐カール性および保存安定性に優れたコーティング用樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、メチル(メタ)アクリレートを含有するモノマー成分を重合させてなる(メタ)アクリル系重合体、飽和ポリエステルおよび式(I):
【0007】
【化1】

【0008】
〔式中、R1は、炭素数1〜22のアルキル基、R2は、炭素数2〜4のアルキレン基、Xは、式:
【0009】
【化2】

【0010】
(式中、R3、R4およびR5は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜18のアルキル基または炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基を示す)で表わされる基、nは1〜30の整数を示す〕
で表わされる安定化剤を含有することを特徴とするコーティング用樹脂組成物に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のコーティング用樹脂組成物は、透明性のみならず、折り曲げ加工性、耐カール性および保存安定性に優れるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のコーティング用樹脂組成物は、前記したように、メチル(メタ)アクリレートを含有するモノマー成分を重合させてなる(メタ)アクリル系重合体、飽和ポリエステルおよび式(I):
【0013】
【化3】

【0014】
〔式中、R1は、炭素数1〜22のアルキル基、R2は、炭素数2〜4のアルキレン基、Xは、式:
【0015】
【化4】

【0016】
(式中、R3、R4およびR5は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜18のアルキル基または炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基を示す)で表わされる基、nは1〜30の整数を示す〕
で表わされる安定化剤を含有することを特徴とする。
【0017】
本明細書において、「(メタ)アクリル系重合体」は、「アクリル系重合体」および/または「メタクリル系重合体」を意味する。
【0018】
(メタ)アクリル系重合体は、メチル(メタ)アクリレートを含有するモノマー成分を重合させることによって得ることができる。なお、本明細書において、「メチル(メタ)アクリレート」は、「メチルアクリレート」および/または「メチルメタクリレート」を意味する。
【0019】
本発明においては、メチル(メタ)アクリレートを含有するモノマー成分を重合させることによって得られる(メタ)アクリル系重合体が用いられている点に、1つの大きな特徴がある。本発明では前記(メタ)アクリル系重合体が用いられているので、透明性、折り曲げ加工性、耐カール性および保存安定性に優れたコーティング用樹脂組成物が得られる。メチル(メタ)アクリレートのなかでは、本発明のコーティング用樹脂組成物の透明性、折り曲げ加工性、耐カール性および保存安定性を向上させる観点から、メチルメタクリレートが好ましい。
【0020】
モノマー成分におけるメチル(メタ)アクリレートの含有率は、本発明のコーティング用樹脂組成物の透明性、折り曲げ加工性、耐カール性および保存安定性を向上させる観点から、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上である。なお、モノマー成分におけるメチル(メタ)アクリレートの含有率の上限値は100質量%であるが、メチル(メタ)アクリレート以外のモノマーをモノマー成分に用いる場合には、モノマー成分におけるメチル(メタ)アクリレートの含有率は、当該メチル(メタ)アクリレート以外のモノマー成分が有する性質を十分に発現させる観点から、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下である。
【0021】
本発明においては、単量体成分にメチル(メタ)アクリレート以外の(メタ)アクリル系モノマーを用いることができる。
【0022】
メチル(メタ)アクリレート以外の(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、アルキルエステルの炭素数が2以上のアルキル(メタ)アクリレート、アルケニル(メタ)アクリレート、シクロアルキレン(メタ)アクリレート、アリール(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの(メタ)アクリル系モノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0023】
メチル(メタ)アクリレート以外の(メタ)アクリル系モノマーの具体例としては、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの(メタ)アクリル系モノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0024】
メチル(メタ)アクリレート以外の(メタ)アクリル系モノマーのなかでは、本発明のコーティング用樹脂組成物の透明性、折り曲げ加工性、耐カール性および保存安定性を向上させる観点から、アルキルエステルの炭素数が2〜6のアルキルメタクリレートが好ましい。なお、前記「アルキルエステル」は、直鎖または分枝鎖を有するアルキルエステルのほか、環状(シクロ)構造を有するアルキルエステルを意味する。
【0025】
モノマー成分におけるメチル(メタ)アクリレート以外の(メタ)アクリル系モノマーの含有率は、本発明のコーティング用樹脂組成物の透明性、折り曲げ加工性、耐カール性および保存安定性を向上させる観点から、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下、特に好ましくは30質量%以下である。なお、モノマー成分におけるメチル(メタ)アクリレートの含有率の下限値は、0質量%であるが、当該(メタ)アクリル系モノマーが有する性質を発現させる観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。
【0026】
前記モノマー成分には、(メタ)アクリル系重合体に架橋点を導入する観点から、水酸基含有(メタ)アクリル系モノマーが含まれていてもよい。
【0027】
水酸基含有(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのε−カプロラクトン付加物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの(メタ)アクリル系モノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの(メタ)アクリル系モノマーのなかでは、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートは、本発明において好適に用いることができる。
【0028】
モノマー成分における水酸基含有(メタ)アクリル系モノマーの含有率の下限値は、0質量%であるが、(メタ)アクリル系重合体に架橋点を十分に導入する観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上であり、本発明のコーティング用樹脂組成物の透明性、折り曲げ加工性、耐カール性および保存安定性を向上させる観点から、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下である。
【0029】
モノマー成分には、本発明の目的を阻害しない範囲内で、前記モノマー以外のメチル(メタ)アクリレートと共重合可能なモノマーが含まれていてもよい。
【0030】
前記メチル(メタ)アクリレートと共重合可能なモノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、オクチル酸ビニル、モノクロロ酢酸ビニル、アジピン酸ジビニル、メタクリル酸ビニル、クロトン酸ビニル、ソルビン酸ビニル、安息香酸ビニル、ケイヒ酸ビニルなどの脂肪酸ビニルエステル;ビニルトリクロロシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、トリメチルシロキシエチル(メタ)アクリレートなどのケイ素原子含有モノマー;トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、へプタドデカフルオロデシル(メタ)アクリレート、β−(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、トリブロモフェノールのエチレンオキサイド付加(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレートなどのハロゲン含有モノマー;
【0031】
(メタ)アクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート硫酸塩、モルホリンのエチレンオキサイド付加(メタ)アクリレート、N−ビニルピリジン、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルピロール、N−ビニルピロリドン、N−ビニルオキサゾリドン、N−ビニルサクシンイミド、N−ビニルメチルカルバメート、N,N−メチルビニルアセトアミド、2−イソプロペニル−2−オキサゾリンなどの窒素原子含有モノマー;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジ(メタ)アクリロキシプロパンジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス[4−(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル]プロパンジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス[4−(メタクリロキシポリエトキシ)フェニル]プロパンジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどの多官能モノマー;
【0032】
ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソプロピルエーテル、ビニル−n−プロピルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、ビニル−n−ブチルエーテル、ビニル−n−アミルエーテル、ビニルイソアミルエーテル、ビニル−2−エチルヘキシルエーテル、ビニル−n−オクタデシルエーテル、シアノメチルビニルエーテル、2,2−ジメチルアミノエチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、β−ジフルオロメチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、ジビニルエーテル、ジビニルアセタールなどのビニルエーテル;グリシジル(メタ)アクリレート、α−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、α−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有モノマー;スルホエチル(メタ)アクリレート、4−スルホ(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェートなどの酸性官能基含有モノマーなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの(メタ)アクリル系モノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0033】
モノマー成分における前記メチル(メタ)アクリレートと共重合可能なモノマーの含有率は、当該モノマーの種類によって異なるので一概には決定することができないことから、本発明の目的を阻害しない範囲内で、当該モノマーの種類に応じて適宜調整することが好ましい。
【0034】
また、本発明のコーティング用樹脂組成物に紫外線吸収性を付与する場合には、モノマー成分には、本発明の目的を阻害しない範囲内で、例えば、特開2008−201956号公報などに記載の紫外線吸収性単量体が含まれていてもよい。
【0035】
モノマー成分には、本発明のコーティング用樹脂組成物の耐候性、機械的強度、耐薬品性などを向上させるために架橋剤が適量で含まれていてもよい。好適な架橋剤としては、例えば、ポリイソシアネート系架橋剤などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0036】
ポリイソシアネート系架橋剤としては、例えば、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ビュレットポリイソシアネート、イソシアヌレート環含有ポリイソシアネート、アダクトポリイソシアネート、アダクトポリイソシアネート、芳香環含有ポリイソシアネート化合物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのポリイソシアネート系架橋剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0037】
(メタ)アクリル系重合体は、モノマー成分を重合させることによって得ることができる。モノマー成分を重合させる方法としては、例えば、溶液重合法、塊状重合法、水溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの重合方法のなかでは、溶液重合法は、得られる(メタ)アクリル系重合体溶液をそのままの状態で用いるかまたは有機溶媒で希釈させた後、本発明のコーティング用樹脂組成物の原料として用いることができる。
【0038】
モノマー成分を溶液重合させることによって(メタ)アクリル系重合体を調製する場合、有機溶媒が用いられる。有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族系有機溶媒;n−ブチルアルコール、プロピレングリコールメチルエーテル、ダイアセトンアルコール、エチルセロソルブなどのアルコール系有機溶媒;酢酸ブチル、酢酸エチル、セロソルブアセテートなどのエステル系有機溶媒;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系有機溶媒;ジメチルホルムアミドなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの有機溶媒は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。有機溶媒の量は、有機溶媒に溶解させたモノマー成分溶液におけるモノマー成分の濃度、得られる(メタ)アクリル系重合体の分子量などに応じて適宜調整することが好ましい。
【0039】
溶液重合の際に用いられる重合開始剤としては、例えば、2,2'−アゾビス−(2−メチルブチロニトリル)、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイドなどのラジカル重合開始剤などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。重合開始剤の量は、特に限定されないが、モノマー成分100質量部あたり、好ましくは0.01〜30質量部、より好ましくは0.05〜10質量部である。
【0040】
なお、モノマー成分を溶液重合させる際には、例えば、n−ドデシルメルカプタンなどの連鎖移動剤を添加することにより、得られる(メタ)アクリル系重合体の分子量を調整してもよい。
【0041】
モノマー成分の重合反応温度は、特に限定されないが、通常、室温〜200℃の範囲内から適した重合反応温度が選択される。重合反応時間は、モノマー成分の組成や重合開始剤の種類などに応じて重合反応が効率よく完結するように適宜設定することが好ましい。
【0042】
(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量は、本発明のコーティング用樹脂組成物の耐カール性を向上させる観点から、好ましくは5000以上、より好ましくは20000以上であり、本発明のコーティング用樹脂組成物の透明性、折り曲げ加工性および保存安定性を向上させる観点から、好ましくは400000以下、より好ましくは200000以下である。
【0043】
(メタ)アクリル系重合体のガラス転移温度は、本発明のコーティング用樹脂組成物で形成された塗膜の耐ブロッキング性および密着性を向上させる観点から、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上である。(メタ)アクリル系重合体のガラス転移温度は、モノマー組成からフォックス(Fox)の式に基づいて求めることができる。
【0044】
本発明のコーティング用樹脂組成物は、(メタ)アクリル系重合体とともに飽和ポリエステルが用いられている点にも1つの大きな特徴がある。本発明では、このように(メタ)アクリル系重合体とともに飽和ポリエステルが用いられているので、本発明のコーティング用樹脂組成物の透明性、折り曲げ加工性、耐カール性および保存安定性が総合的に格別顕著に向上するという優れた効果が発現される。
【0045】
飽和ポリエステルとしては、例えば、多価アルコールと多価カルボン酸とを縮重合させることによって得られる飽和ポリエステルなどが挙げられる。
【0046】
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレンブリコール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、水素化ビスフェノールA、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,9−ノナンジオール、2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピオン酸、2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピル、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの多価アルコールは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0047】
多価カルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレン−1,4−ジカルボン酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸;アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸;これらのジカルボン酸のジアルキルエステル、ジアリールエステルなどのエステルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの多価カルボン酸は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0048】
飽和ポリエステルの数平均分子量は、本発明のコーティング用樹脂組成物の透明性、折り曲げ加工性、耐カール性および保存安定性を向上させる観点から、好ましくは10000以上、より好ましくは15000以上であり、塗工性を向上させる観点から、好ましくは200000以下、より好ましくは100000以下である。
【0049】
飽和ポリエステルは、例えば、東洋紡績(株)製、バイロン(登録商標)、品番:103、240、500、GK110、GK640、GK880など;東洋紡績(株)製、バイロナール(登録商標)、品番:MD−1100、MD−1200、MD−1220、MD−1245、MD−1500など;日本合成化学工業(株)製、ニチゴーポリエスター(登録商標)、品番:TP−220、TP−235、TP−236、TP−290、TP−249、WR−905、WR−901)など;日立化成工業株)製、エスペル(登録商標)、品番:9940A、9940B、9940D、9940E−37、9940A−37などとして市販されているものを用いてもよい。
【0050】
(メタ)アクリル系重合体100質量部あたりの飽和ポリエステルの量は、本発明のコーティング用樹脂組成物の折り曲げ加工性および耐カール性を向上させる観点から、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、本発明のコーティング用樹脂組成物の透明性および保存安定性を向上させる観点から、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、さらに好ましくは6質量部以下、特に好ましくは5質量部以下である。
【0051】
本発明のコーティング用樹脂組成物は、(メタ)アクリル系重合体および飽和ポリエステルとともに、式(I):
【0052】
【化5】

【0053】
〔式中、R1は、炭素数1〜22のアルキル基、R2は、炭素数2〜4のアルキレン基、Xは式:
【0054】
【化6】

【0055】
(式中、R3、R4およびR5は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜18のアルキル基または炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基を示す)で表わされる基、nは1〜30の整数を示す〕
で表わされる安定化剤が用いられている点にも1つの大きな特徴がある。本発明では、このように(メタ)アクリル系重合体および飽和ポリエステルとともに前記安定化剤が用いられているので、(メタ)アクリル系重合体と飽和ポリエステルとが相溶するため、本発明のコーティング用樹脂組成物の透明性、折り曲げ加工性、耐カール性および保存安定性が同時に格別顕著に向上するという優れた効果が発現される。
【0056】
式(I)で表わされる安定化剤において、R1は、本発明のコーティング用樹脂組成物の透明性、折り曲げ加工性、耐カール性および保存安定性を向上させる観点から、炭素数1〜22のアルキル基であるが、好ましくは8〜22のアルキル基、より好ましくは8〜18のアルキル基、さらに好ましくは8〜12のアルキル基である。
【0057】
2は、本発明のコーティング用樹脂組成物の透明性、折り曲げ加工性、耐カール性および保存安定性を向上させる観点から、炭素数2〜4のアルキレン基であるが、好ましくは炭素数2または3のアルキレン基、すなわちエチレン基またはプロピレン基、より好ましくは炭素数2のアルキレン基、すなわちエチレン基である。
【0058】
Xは、式:
【0059】
【化7】

【0060】
で表わされる基である。式中、R3、R4およびR5は、本発明のコーティング用樹脂組成物の透明性、折り曲げ加工性、耐カール性および保存安定性を向上させる観点から、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜18のアルキル基または炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基であるが、好ましくは水素原子、炭素数1〜12のアルキル基または炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基である。
【0061】
nは、本発明のコーティング用樹脂組成物の透明性、折り曲げ加工性、耐カール性および保存安定性を向上させる観点から、1〜30の整数であるが、好ましくは1〜20の整数、より好ましくは1〜10の整数である。
【0062】
式(I)で表わされる安定化剤の数平均分子量は、本発明のコーティング用樹脂組成物の透明性、折り曲げ加工性および耐カール性を向上させるとともに、耐ブッキング性を向上させる観点から、400以上であることが好ましく、本発明のコーティング用樹脂組成物の透明性、折り曲げ加工性、耐カール性および保存安定性を向上させる観点から、2000以下であることが好ましい。
【0063】
(メタ)アクリル系重合体100質量部あたりの式(I)で表わされる安定化剤の量は、本発明のコーティング用樹脂組成物の透明性および保存安定性を向上させる観点から、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1.0質量部以上であり、本発明のコーティング用樹脂組成物の耐ブッキング性を向上させる観点から、好ましくは6質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。
【0064】
本発明のコーティング用樹脂組成物は、(メタ)アクリル系重合体、飽和ポリエステルおよび安定化剤を混合することによって得られるが、必要により、硬化剤、有機溶媒、添加剤などを含有させてもよい。
【0065】
本発明のコーティング用樹脂組成物は、有機溶媒を含有させた場合には、有機溶媒系のコーティング用樹脂組成物として好適に使用することができる。
【0066】
硬化剤としては、例えば、多官能イソシアネート化合物、メラミン樹脂などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのなかでは、耐候性を向上させる観点から、多官能イソシアネート化合物が好ましい。
【0067】
多官能イソシアネート化合物としては、例えば、イソシアネート基を2個以上有する芳香族ポリイソシアネート、イソシアネート基を2個以上有する脂肪族ポリイソシアネート、イソシアネート基を2個以上有する脂環族ポリイソシアネート、それらの混合物、それらを変性させることによって得られる変性ポリイソシアネートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのなかでは、耐候性を高める観点から、脂肪族ポリイソシアネートおよび脂環族ポリイソシアネートが好ましい。
【0068】
多官能イソシアネート化合物の具体例としては、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート、水添メチレンジフェニルジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂環族ポリイソシアネート、それらの混合物、それらの変性体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。前記変性体としては、ポリオールとの反応生成物であるプレポリマー型変性体、ヌレート変性体、ウレア変性体、カルボジイミド変性体、アロファネート変性体、ビューレット変性体などが挙げられる。
【0069】
硬化剤として多官能イソシアネート化合物を用いる場合、(メタ)アクリル系重合体と多官能イソシアネート化合物との割合は、多官能イソシアネート化合物のNCO基/(メタ)アクリル系重合体のOH基(水酸基)(NCO基/OH基:当量比)は、本発明のコーティング用樹脂組成物の保存安定性を高めるとともに、塗膜の機械的強度を向上させる観点から、好ましくは0.8/1〜1.2/1、より好ましくは0.9/1〜1.15/1、さらに好ましくは0.95/1〜1.1/1である。
【0070】
有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒;n−ブチルアルコール、プロピレングリコールメチルエーテル、ダイアセトンアルコール、エチルセロソルブなどのアルコール系溶媒;酢酸ブチル、酢酸エチル、セロソルブアセテートなどのエステル系溶媒;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒;ジメチルホルムアミドなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。本発明のコーティング用樹脂組成物における有機溶媒の含有率は、本発明のコーティング用樹脂組成物の用途などによって異なるので一概には決定することができないため、本発明のコーティング用樹脂組成物の用途などに応じて本目的が阻害されない範囲内で適宜調整することが好ましいが、通常、塗工性など観点から、30〜80質量%の範囲内から選択することが好ましい。
【0071】
添加剤としては、例えば、顔料や染料などの着色剤;ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、インドール系紫外線吸収剤などの有機系紫外線吸収剤や酸化亜鉛などの無機系紫外線吸収剤などの紫外線吸収剤;立体障害ピペリジン化合物などの添加型紫外線安定剤;レベリング剤;酸化防止剤;タルクなどの充填剤;防錆剤;防黴剤;分散安定化剤;高分子可塑剤;蛍光性増白剤;界面活性剤、リチウム系や有機ホウ素系の帯電防止剤;リン化合物、窒素化合物、ホウ素化合物、ハロゲン系化合物などの難燃剤;増粘剤;消泡剤;コロイダルシリカ、アルミナゾルなどの無機微粒子;(メタ)アクリル系樹脂微粒子などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。添加剤の量は、その添加剤の種類によって異なるので一概には決定することができないため、本発明の目的が阻害されない範囲内で適宜調整することが好ましい。
【0072】
本発明のコーティング用樹脂組成物は、種々の基材に適用することができる。基材を構成する材質としては、例えば、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、トリアセチルセルロース、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、セロファン、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリアセタール、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素樹脂、ABS樹脂、ノリル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂などの樹脂、ガラス、スレート、モルタルなどの無機系材料、鉄、銅、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛などの金属およびそれらの合金などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。本発明のコーティング用樹脂組成物は、これらの基材のなかでも、樹脂基材に好適に使用することができる。なかでも、ポリエステルなどの樹脂からなる基材に対し、優れた基材に対する密着性を発現する。ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどが挙げられる。これらの樹脂からなる基材は、それぞれ単層で構成されていてもよく、複数層が積層された積層構造を有するものであってもよい。樹脂基材の代表例として、樹脂フイルムなどが挙げられる。好適な樹脂フイルムとしては、例えば、ポリエステルフイルムなどが挙げられる。樹脂フイルムの厚さは、その用途などによって異なるので一概には決定することができないので、その用途に応じて適宜決定することが好ましい。
【0073】
本発明のコーティング用樹脂組成物を樹脂フイルムなどの基材に塗工する方法としては、例えば、スプレーコーティング法、刷毛塗り法、カーテンフローコート法、グラビアコート法、ロールコート法、スピンコート法、バーコート法、静電塗装法などをはじめ、基材を本発明の黒色塗料組成物中に浸漬する方法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0074】
本発明のコーティング用樹脂組成物を樹脂フイルムなどの基材に塗工した後、本発明のコーティング用樹脂組成物を硬化させるために加熱を行なうことが好ましい。加熱温度および加熱時間は、本発明のコーティング用樹脂組成物の組成や樹脂フイルムなどの基材の耐熱温度などによって異なるので一概には決定することができないが、通常、好ましくは70〜150℃、より好ましくは80〜130℃である。また、加熱時間は、通常、好ましくは20秒間〜3分間、より好ましくは30秒間〜2分間である。本発明のコーティング用樹脂組成物を硬化させた後は、例えば、30〜60℃程度の温度で0.5〜4日間程度、形成された塗膜を養生させることが好ましい。
【0075】
本発明のコーティング用樹脂組成物を樹脂フイルムなどの基材の表面に塗工し、乾燥させた後の塗膜の厚さは、折り曲げ加工性および耐カール性を高める観点から、好ましくは1μm以上、より好ましくは2μm以上であり、樹脂フイルムなどの基材との密着性を高める観点から、好ましくは30μm以下、より好ましくは20μm以下である。
【0076】
以上のようにして、本発明のコーティング用樹脂組成物をポリエステルフイルムなどの樹脂フイルムに塗工することができる。
【0077】
本発明のコーティング用樹脂組成物は、透明性のみならず、折り曲げ加工性、耐カール性および保存安定性にも優れているので、例えば、各種記録材料、ICカード、ICタグなどをはじめ、薬品や食品などの包装材、太陽電池用バックシート、マーキングフィルム、感光性樹脂板、粘着シート、色素増感型太陽電池、偏光板保護用樹脂フイルム、反射防止用樹脂フイルム、光拡散フイルムなどの光学樹脂フイルム、ガラス飛散防止樹脂フイルム、化粧シート、窓用樹脂フイルムなどの建築材料用樹脂フイルム、表示材料、電飾看板などの屋内外のオーバーレイ用樹脂フイルム、シュリンクフィルムなどの用途に好適に使用することができる。
【実施例】
【0078】
次に本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0079】
調製例1
撹拌機、滴下口、温度計、冷却管および窒素ガス導入口を備えた300mL容のフラスコ内に、酢酸エチル100gを仕込み、還流温度まで昇温させた。還流が開始したらメチルメタクリレート80g、ブチルメタクリレート10g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート10gおよび重合開始剤として2,2’−アゾビス−(2−メチルブチロニトリル)1.5gの混合物を2時間かけてフラスコ内に連続的に滴下し、さらに4時間加熱することにより、(メタ)アクリル系重合体溶液(不揮発分の含有率:50.0質量%)を得た。
【0080】
得られた(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量をゲルパーミエイションクロマトグラフィー〔(株)東ソー製、品番:HLC8120、カラム:TSK−GEL GMHXL−L〕にてポリスチレン換算量で測定したところ、得られた(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量は、30000であった。また、モノマー組成からフォックス(Fox)の式に基づいて求められた(メタ)アクリル系重合体のガラス転移温度は75℃であった。以下、調製例1で得られた(メタ)アクリル系重合体溶液を重合体溶液1ともいう。
【0081】
調製例2
調製例1において、メチルメタクリレート80gの代わりに、メチルメタクリレート60gおよびシクロヘキシルメタクリレート20gを用いたこと以外は、調製例1と同様にして(メタ)アクリル系重合体溶液(不揮発分の含有率:49.9質量%)を得た。
【0082】
得られた(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量を調製例1と同様にして測定したところ、得られた(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量は、28000であった。また、調製例1と同様にして求められた(メタ)アクリル系重合体のガラス転移温度は71℃であった。以下、調製例2で得られた(メタ)アクリル系重合体溶液を重合体溶液2ともいう。
【0083】
調製例3
調製例1において、メチルメタクリレート80gの代わりに、メチルメタクリレート50gおよびシクロヘキシルメタクリレート30gを用いたこと以外は、調製例1と同様にして(メタ)アクリル系重合体溶液(不揮発分の含有率:50.0質量%)を得た。
【0084】
得られた(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量を調製例1と同様にして測定したところ、得られた(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量は、27000であった。また、調製例1と同様にして求められた(メタ)アクリル系重合体のガラス転移温度は69℃であった。以下、調製例3で得られた(メタ)アクリル系重合体溶液を重合体溶液3という。
【0085】
実施例1
調製例1で得られた(メタ)アクリル系重合体溶液(重合体溶液1)100質量部あたり、イソシアネート硬化剤〔住化バイエルウレタン(株)製、商品名:デスモジュール(登録商標)N3200〕7質量部、飽和ポリエステル〔東洋紡績(株)製、商品名:バイロン(登録商標)GK880、数平均分子量:18000〕2.5質量部および安定化剤A〔式:C12H25-O(CH2CH2O)mSO3NH(CH2CH2OH)3、mが1〜8の整数である化合物の混合物〕0.25質量部を容器内に入れ、さらにトルエンで不揮発分の含有率が20質量%となるまで希釈することにより、コーティング用樹脂組成物を得た。
【0086】
なお、飽和ポリエステルの数平均分子量は、(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量の測定と同様に、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー〔(株)東ソー製、品番:HLC8120、カラム:TSK−GEL GMHXL−L〕にてポリスチレン換算量で測定した。
【0087】
実施例2
実施例1において、飽和ポリエステルの量を2.5質量部から1.5質量部に変更し、安定化剤Aの量を0.25質量部から1.5質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてコーティング用樹脂組成物を得た。
【0088】
実施例3
実施例2において、調製例1で得られた(メタ)アクリル系重合体溶液(重合体溶液1)100質量部の代わりに、調製例2で得られた(メタ)アクリル系重合体溶液(重合体溶液2)100質量部を用いたこと以外は、実施例2と同様にしてコーティング用樹脂組成物を得た。
【0089】
実施例4
実施例2において、調製例1で得られた(メタ)アクリル系重合体溶液(重合体溶液1)100質量部の代わりに、調製例3で得られた(メタ)アクリル系重合体溶液(重合体溶液3)100質量部を用いたこと以外は、実施例2と同様にしてコーティング用樹脂組成物を得た。
【0090】
実施例5
実施例2において、安定化剤Aの量を1.5質量部から2.5質量部に変更したこと以外は、実施例2と同様にしてコーティング用樹脂組成物を得た。
【0091】
実施例6
実施例2において、安定化剤Aの量を1.5質量部から3質量部に変更したこと以外は、実施例2と同様にしてコーティング用樹脂組成物を得た。
【0092】
実施例7
実施例1において、安定化剤Aの量を0.25質量部から0.1質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてコーティング用樹脂組成物を得た。
【0093】
実施例8
実施例1において、飽和ポリエステルの量を2.5質量部から4質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてコーティング用樹脂組成物を得た。
【0094】
実施例9
実施例2において、イソシアネート硬化剤を使用しなかったこと以外は、実施例2と同様にしてコーティング用樹脂組成物を得た。
【0095】
比較例1
実施例4において、安定化剤Aを使用しなかったこと以外は、実施例4と同様にしてコーティング用樹脂組成物を得た。
【0096】
比較例2
実施例4において、安定化剤A1.5質量部の代わりに、安定化剤B〔ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルアミン塩、東邦化学工業(株)製、商品名:フォスファノールRS−710M〕1.5質量部を用いたこと以外は、実施例4と同様にしてコーティング用樹脂組成物を得た。
【0097】
比較例3
実施例4において、飽和ポリエステルを使用しなかったこと以外は、実施例4と同様にしてコーティング用樹脂組成物を得た。
【0098】
実験例
各実施例または各比較例で得られたコーティング用樹脂組成物を、基材として片面が易接着化処理が施された厚さ188μmのポリエステルフイルム〔東洋紡績(株)製、品番:A−4100〕にバーコーターで塗布し、100℃で1分間乾燥させた後、40℃で72時間養生させることにより、乾燥後の膜厚が10μmの塗膜が形成された積層体を得た。
【0099】
前記で得られた積層体を用いて、コーティング用樹脂組成物の物性として、透明性、折り曲げ加工性、耐カール性および保存安定性を以下の方法に基づいて調べた。その結果を表1に示す。
【0100】
(1)透明性
JIS K 7105に準拠し、濁度計〔日本電色工業(株)製、品番:NDH300A〕を用いてポリエステルフイルムと塗膜の透明性(ヘイズ)の差を測定し、塗膜の透明性を以下の評価基準に基づいて評価した。
〔透明性の評価基準〕
◎:ヘイズの差が0.5%未満
〇:ヘイズの差が0.5%以上1%未満
△:ヘイズの差が1%以上2%未満
×:ヘイズの差が2%以上
【0101】
(2)折り曲げ加工性
前記で得られた積層体を塗膜が表側となるように180°の角度で折り曲げ、折り曲げ部の白化状態を目視にて観察し、折り曲げ加工性を以下の評価基準に基づいて評価した。
〔折り曲げ加工性の評価基準〕
◎:白化が認められない。
△:白化が僅かに認められる。
×:白化が明らかに認められる。
【0102】
(3)耐カール性
塗膜をポリエステルフイルムに形成した後(塗布した場合には、塗布し、乾燥させた後)、塗布から30分間以内に、得られた積層体を23℃、相対湿度65%の雰囲気中で10cm×3cmの大きさの試験片を切り出し、塗膜面を上向きにして水平台上に試験片を置き、3時間放置し、試験片の4カ所の隅角部と水平台との距離(浮き上がり距離)を測定し、耐カール性を以下の評価基準に基づいて評価した。
〔耐カール性の評価基準〕
◎:4カ所の隅角部の浮き上がり距離の合計が1.5mm未満
〇:4カ所の隅角部の浮き上がり距離の合計が1.5mm以上3mm未満
△:4カ所の隅角部の浮き上がり距離の合計が3mm以上5mm未満
×:4カ所の隅角部の浮き上がり距離の合計が5mm以上
【0103】
(4)保存安定性
各実施例または各比較例で得られたコーティング用樹脂組成物において、イソシアネート硬化剤を含有させずに不揮発分含有率が30質量%のコーティング用樹脂組成物を用いて保存安定性を評価した。例えば、実施例1では、(メタ)アクリル系重合体100質量部、飽和ポリエステル2.5質量部および安定化剤A0.25質量部を容器に入れ、トルエンで不揮発分含有率が30質量%となるまで希釈し、コーティング用樹脂組成物を得た。
【0104】
このようにして得られたコーティング用樹脂組成物を5℃の空気中で30日間静置した後、保存安定性を以下の評価基準に基づいて評価した。
〔保存安定性の評価基準〕
◎:30日以上放置しても沈降物が発生しない。
〇:20日以上30日間未満で沈殿物が発生
△:10日以上20日間未満で沈殿物が発生
×:10日間未満で沈殿物が発生
【0105】
(5)総合評価
上記の折り曲げ加工性、耐カール性および保存安定性の評価結果において、◎の評価を20点、〇の評価を10点、△の評価を0点、×の評価を−10点として各評価項目の点数を合計することにより(最高得点:80点、最低得点:−40点)、コーティング用樹脂組成物の物性を総合評価した。
【0106】
【表1】

【0107】
表1に示された結果から、(メタ)アクリル系重合体および飽和ポリエステルが使用されているが、安定化剤が使用されていない場合の総合評価は−10点であり(比較例1)、飽和ポリエステルが使用されていないが、(メタ)アクリル系重合体および安定化剤が使用されている場合の総合評価は20点であるから(比較例3)、(メタ)アクリル系重合体と飽和ポリエステルと安定化剤とが使用されている場合に予想される総合評価は10点である。
これに対して、(メタ)アクリル系重合体と飽和ポリエステルと安定化剤とを実際に使用した場合には、実施例4にみられるように、総合評価が50点である。
これらのことから、(メタ)アクリル系重合体と飽和ポリエステルと安定化剤とを実際に使用した場合には、予想される効果以上に、折り曲げ加工性、耐カール性および保存安定性が総合的に格段に向上することがわかる。
【0108】
さらに、表1に示された結果から、各実施例によれば、(メタ)アクリル系重合体と飽和ポリエステルとが併用され、安定化剤が用いられているので、透明性のみならず、折り曲げ加工性、耐カール性および保存安定性に総合的に優れたコーティング用樹脂組成物が得られることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明のコーティング用樹脂組成物は、透明性のみならず、折り曲げ加工性、耐カール性および保存安定性にも優れているので、例えば、有機溶媒系コーティング用樹脂組成物として、各種記録材料、ICカード、ICタグなどをはじめ、薬品や食品などの包装材、太陽電池用バックシート、マーキングフィルム、感光性樹脂板、粘着シート、色素増感型太陽電池、偏光板保護用樹脂フイルム、反射防止用樹脂フイルム、光拡散フイルムなどの光学樹脂フイルム、ガラス飛散防止樹脂フイルム、化粧シート、窓用樹脂フイルムなどの建築材料用樹脂フイルム、表示材料、電飾看板などの屋内外のオーバーレイ用樹脂フイルム、シュリンクフィルムなどの用途に使用することが期待されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メチル(メタ)アクリレートを含有するモノマー成分を重合させてなる(メタ)アクリル系重合体、飽和ポリエステルおよび式(I):
【化1】

〔式中、R1は炭素数1〜22のアルキル基、R2は炭素数2〜4のアルキレン基、Xは式:
【化2】

(式中、R3、R4およびR5は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜18のアルキル基または炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基を示す)で表わされる基、nは1〜30の整数を示す〕
で表わされる安定化剤を含有することを特徴とするコーティング用樹脂組成物。

【公開番号】特開2013−6917(P2013−6917A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−139025(P2011−139025)
【出願日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】