説明

コーティング用組成物、コーティングフィルム、コーティングフィルム製造方法および光記録媒体

【課題】 被コーティング面に凸部や異物が存在する場合であっても、それらを隠蔽して平滑性の高い表面を形成することのできるコーティング用組成物およびコーティングフィルム製造方法、ならびに高い表面平滑性を有するコーティングフィルムおよび光記録媒体を提供する。
【解決手段】 電離放射線硬化性化合物を主成分とするコーティング剤と溶剤とを含有するコーティング用組成物であって、コーティング用組成物におけるコーティング剤の濃度a(重量%)が次の条件下
0<a≦60
において、コーティング剤の濃度aと、コーティング用組成物の表面張力b(dyne/cm)とが、次の関係
b≦(−a/15)+26
を満たすコーティング用組成物を、保護フィルム11の表面に塗布し硬化させてハードコート層12を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティング用組成物、コーティングフィルム、コーティングフィルム製造方法および光記録媒体に関するものであり、特に、平滑性の高い表面を形成することのできるコーティング用組成物およびコーティングフィルム製造方法、ならびに高い表面平滑性を有するコーティングフィルムおよび光記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
次世代光ディスクであるブルーレイディスク(Blu−ray disc)においては、通常の光ディスクと同様に、情報記録層を保護するためにポリカーボネート樹脂からなる保護フィルムが情報記録層に接着されているが、ブルーレイディスクの記録情報は極めて大容量・高密度であり、保護フィルムに僅かな傷が付いただけであっても、情報の読出または書込にエラーが生じるおそれがあるため、現状ではブルーレイディスクはカートリッジに収納されて取り扱われている。
【0003】
しかしながら、ブルーレイディスクのメディアとしてのコンパクト化や、製造コストの低減のためにもカートリッジレスタイプのベアディスクが望まれている。
【0004】
そのために、例えば、図4に示すように、情報記録層用の保護フィルム11にハードコート層12Pを形成することが提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−245672号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ブルーレイディスク等の保護フィルム11は、通常、ポリカーボネート樹脂を溶剤で希釈した溶液をベルト上にキャスト製膜することによって製造されるが、製造される保護フィルム11の表面に凸部10が形成される場合がある。
【0006】
上記のような凸部10を有する保護フィルム11の表面にハードコート層12Pを形成した場合、上記凸部10を核としてハードコート層12P表面に欠点が生じ、信号特性の劣化を招くこととなる。
【0007】
また、ハードコート層12Pを形成するときに保護フィルム11の表面に塵、埃等の異物が付着し、その状態でハードコート層12Pの塗布剤を塗工した場合も、上記と同様の問題が生じる。
【0008】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、被コーティング面に凸部や異物が存在する場合であっても、それらを隠蔽して平滑性の高い表面を形成することのできるコーティング用組成物およびコーティングフィルム製造方法、ならびに高い表面平滑性を有するコーティングフィルムおよび光記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、第1に本発明は、電離放射線硬化性化合物を主成分とするコーティング剤を含有するコーティング用組成物であって、前記コーティング用組成物における前記コーティング剤の濃度a(重量%)が次の条件下
0<a≦60
において、前記コーティング剤の濃度aと、前記コーティング用組成物の表面張力b(dyne/cm)とが、次の関係
b≦(−a/15)+26
を満たすことを特徴とするコーティング用組成物を提供する(請求項1)。
【0010】
上記発明(請求項1)によれば、被コーティング面に凸部や異物が存在する場合であっても、それらを隠蔽して平滑性の高い表面を形成することができる。
【0011】
上記発明(請求項1)において、前記コーティング剤は、ジメチルシロキサン系化合物およびフッ素系化合物から選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましく(請求項2)、ジメチルシロキサン系化合物を含有する場合には、その含有量を0.5〜50重量%とするのが好ましく(請求項3)、フッ素系化合物を含有する場合には、その含有量を0.1〜20重量%とするのが好ましい(請求項4)。
【0012】
上記発明(請求項2〜4)によれば、コーティング用組成物に上記条件を満たす表面張力を付与することが容易となる。
【0013】
第2に本発明は、樹脂フィルムと、前記樹脂フィルムの少なくとも一方の面に、前記コーティング用組成物(請求項1〜4)を塗布し硬化させてなるコート層とを備えたことを特徴とするコーティングフィルムを提供する(請求項5)。
【0014】
上記発明(請求項5)に係るコーティングフィルムにおいては、上記コーティング用組成物を使用してコート層を形成しているため、樹脂フィルムのコート層形成面に凸部や異物が存在する場合であっても、コート層によってそれらを隠蔽することができ、表面平滑性が高いものとなり得る。
【0015】
上記発明(請求項5)において、前記樹脂フィルムのコート層形成面に凸部が存在し、前記凸部の最大高さがh(μm)であるときには、前記コート層の厚さd(μm)が次の条件
d≧h+1
を満たすことが好ましい(請求項6)。
【0016】
上記発明(請求項6)によれば、コート層によって凸部を確実に隠蔽することができるため、非常に高い表面平滑性が得られる。
【0017】
上記発明(請求項5,6)において、前記樹脂フィルムのコート層非形成面には、接着層が設けられていてもよい(請求項7)。
【0018】
上記発明(請求項5〜7)においては、前記樹脂フィルムが、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂およびシクロオレフィン系樹脂のいずれかを主成分とする材料からなってもよく(請求項8)、かかるコーティングフィルムは、光記録媒体の保護層として好適である。
【0019】
第3に本発明は、電離放射線硬化性化合物を主成分とするコーティング剤の濃度を調整して得られたコーティング用組成物を樹脂フィルムの表面に塗布し硬化させてコート層を形成するコーティングフィルムの製造方法であって、前記コーティング用組成物における前記コーティング剤の濃度a(重量%)が次の条件下
0<a≦60
であるときに、前記コーティング剤の濃度aと、前記コーティング用組成物の表面張力b(dyne/cm)とが、次の関係
b≦(−a/15)+26
を満たすように前記コーティング用組成物を調製することを特徴とするコーティングフィルム製造方法を提供する(請求項9)。
【0020】
上記発明(請求項9)によれば、樹脂フィルムのコート層形成面に凸部や異物が存在する場合であっても、コート層によってそれらを隠蔽することができるため、表面平滑性の高いコーティングフィルムを得ることができる。
【0021】
上記発明(請求項9)のおいては、前記樹脂フィルムのコート層形成面に、最大高さがh(μm)である凸部が存在する場合に、前記コート層の厚さd(μm)が次の条件
d≧h+1
を満たすように前記コート層を形成することが好ましい(請求項10)。
【0022】
上記発明(請求項10)によれば、コート層によって凸部を確実に隠蔽し、表面平滑性の非常に高いコーティングフィルムを得ることができる。
【0023】
第4に本発明は、前記コーティングフィルム(請求項5〜8)または前記コーティングフィルム製造方法(請求項9,10)によって得られたコーティングフィルムを備えたことを特徴とする光記録媒体を提供する(請求項11)。
【0024】
上記発明(請求項11)に係る光記録媒体は、上記コート層によって表面平滑性が高いものとなっているため、上記樹脂フィルムの凸部に起因する信号特性の劣化がなく、エラーレートが極めて低いものとなり得る。
【発明の効果】
【0025】
本発明のコーティング用組成物またはコーティングフィルム製造方法によれば、被コーティング面に凸部や異物が存在する場合であっても、それらを隠蔽して平滑性の高い表面を形成することができる。また、本発明のコーティングフィルムおよび光記録媒体は、コート層の被コーティング面に凸部や異物が存在する場合であっても、高い表面平滑性を有するものとなり得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について説明する。
〔コーティング用組成物〕
本実施形態に係るコーティング用組成物は、電離放射線硬化性化合物を主成分とするコーティング剤を含有する。
【0027】
電離放射線硬化性化合物としては、例えば光重合性プレポリマーおよび/または光重合性モノマーを挙げることができる。光重合性プレポリマーには、ラジカル重合型とカチオン重合型とがあり、ラジカル重合型の光重合性プレポリマーとしては、例えばポリエステルアクリレート系、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリオールアクリレート系などが挙げられる。
【0028】
ポリエステルアクリレート系プレポリマーとしては、例えば多価カルボン酸と多価アルコールとの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、あるいは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
【0029】
エポキシアクリレート系プレポリマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応させてエステル化することにより得ることができる。
【0030】
ウレタンアクリレート系プレポリマーは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアネートとの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
【0031】
ポリオールアクリレート系プレポリマーは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
【0032】
カチオン重合型の光重合性プレポリマーとしては、エポキシ系樹脂が通常使用される。このエポキシ系樹脂としては、例えばビスフェノール樹脂やノボラック樹脂などの多価フェノール類をエピクロルヒドリンなどでエポキシ化した化合物、直鎖状オレフィン化合物や環状オレフィン化合物を過酸化物などで酸化して得られた化合物などが挙げられる。
【0033】
以上の光重合性プレポリマーは、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0034】
一方、光重合性モノマーとしては、例えば1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの多官能アクリレートが挙げられる。
【0035】
これらの光重合性モノマーは、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもでき、また、上記光重合性プレポリマーと併用することもできる。
【0036】
コーティング剤は、上記電離放射線硬化性化合物以外にも、所望により光重合開始剤や充填剤、さらには他の電離放射線硬化性化合物を含有してもよい。
【0037】
光重合開始剤としては、ラジカル重合型の光重合性プレポリマーや光重合性モノマーに対しては、例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2(ヒドロキシ−2−プロプル)ケトン、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、4,4'−ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−タ−シャリ−ブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、p−ジメチルアミン安息香酸エステル等のほか、オリゴ{2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン}等の高分子量光重合開始剤などを使用することができる。
【0038】
また、カチオン重合型の光重合性プレポリマーに対しては、例えば芳香族スルホニウムイオン、芳香族オキソスルホニウムイオン、芳香族ヨードニウムイオンなどのオニウムと、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアンチモネート、ヘキサフルオロアルセネートなどの陰イオンとからなる化合物などを使用することができる。
【0039】
上記光重合開始剤は、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。光重合開始剤の配合量は、上記光重合性プレポリマーおよび光重合性モノマーの合計量100重量部に対して、通常0.2〜10重量部である。
【0040】
充填剤としては、例えば、得られるコート層の屈折率の調節やフィルムの硬化強度を高めるために、無機微粒子を使用することができる。このような無機微粒子としては、二酸化ケイ素粒子、二酸化チタン粒子、酸化アルミニウム粒子、酸化錫粒子、炭酸カルシウム粒子、硫酸バリウム粒子、タルク、カオリン、硫酸カルシウム粒子などが挙げられ、その平均粒子径は0.5μm以下であるのが好ましい。また、上記無機微粒子は、コーティング用組成物中での安定性、コート層の強化のために、表面処理されていてもよい。
【0041】
また、得られるコート層の屈折率を高めるために、チタン、アルミニウム、インジウム、亜鉛、錫およびアンチモンから選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物からなる微粒子、例えばTiO、Al、In、ZnO、SnO、Sb、ITO等の微粒子であって、粒子径が100nm以下、好ましくは50nm以下であるものを充填剤として使用することもできる。このような金属酸化物の微粒子は、粒子径が光の波長よりも十分小さいために光の散乱を生じさせず、この金属酸化物微粒子が分散した分散体(コート層)は光学的に均一な物質として振舞う。
【0042】
上記無機微粒子(金属酸化物微粒子)の配合量は、コーティング剤の10〜90重量%であることが好ましい。
【0043】
さらに、得られるコート層の硬度を向上させ、コート層に傷防止性能を付与するために、電離放射線硬化性化合物として、反応性粒子、例えば、特開2000−273272号公報に記載の反応性粒子を使用することもできる。この反応性粒子は、無機酸化物粒子に、分子内に1個以上の重合性不飽和基を有する有機化合物(a)が化学的に結合しているものである。
【0044】
反応性粒子の無機酸化物粒子としては、シリカ、アルミナ、ジルコニア、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ゲルマニウム、酸化インジウム、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化セリウム等の粒子が挙げられ、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0045】
本コーティング用組成物を光学用フィルムや光学製品等のコーティング層(ハードコート層)の形成に使用する場合には、無機酸化物粒子として、光の吸収が少なく、光透過性の高いシリカ粒子を使用するのが好ましい。
【0046】
無機酸化物粒子の平均粒径は、0.001〜2μmであるのが好ましく、特に0.001〜0.2μmであるのが好ましく、さらに0.001〜0.1μmであるのが好ましい。無機酸化物粒子の平均粒径が2μmを超えると、本コーティング用組成物を硬化させて得られるコート層の光透過性が低下したり、当該コート層の表面平滑性が悪くなるおそれがある。
【0047】
無機酸化物粒子の形状は、球状、中空状、多孔質状、棒状、板状、繊維状、不定形状等のいずれであってもよいが、特に球状であるのが好ましい。
【0048】
無機酸化物粒子の比表面積(窒素を用いたBET法による比表面積)は、10〜1000m/gであるのが好ましく、特に100〜500m/gであるのが好ましい。
【0049】
上記無機酸化物粒子に結合している有機化合物(a)が有する重合性不飽和基としては、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、プロペニル基、ブタジエニル基、スチリル基、エチニル基、シンナモイル基、マレエート基、アクリルアミド基等が挙げられる。
【0050】
有機化合物(a)中における重合性不飽和基の個数は、分子内に1個以上であれば特に限定されないが、通常は1〜4個である。
【0051】
有機化合物(a)は、上記重合性不飽和基以外に、式[−X−C(=Y)−NH−](式中、Xは、NH、OまたはSであり、Yは、OまたはSである。)で表される基を含むのが好ましい。また、有機化合物(a)は、分子内にシラノール基を有する化合物、または加水分解によってシラノール基を生成する化合物であるのが好ましい。
【0052】
このような有機化合物(a)の好ましい具体例としては、例えば、下記式(1)で表される化合物が挙げられる。
【0053】
【化1】

【0054】
式(1)中、RおよびRは、水素原子または炭素数1〜8のアルキル基若しくはアリール基であり、RおよびRは同一であってもよいし、異なっていてもよい。このような官能基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基、フェニル基、キシリル基等が挙げられる。
【0055】
式[(RO)3−mSi−]で表される基としては、例えば、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリフェノキシシリル基、メチルジメトキシシリル基、ジメチルメトキシシリル基等が挙げられ、これらの中でも、トリメトキシシリル基またはトリエトキシシリル基等が好ましい。ここで、mは1〜3の整数である。
【0056】
は、炭素数1〜12の脂肪族または芳香族構造を有する2価の有機基であり、鎖状、分岐状または環状の構造を含んでいてもよい。このような有機基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキサメチレン基、シクロヘキシレン基、フェニレン基、キシリレン基、ドデカメチレン基等が挙げられ、これらの中でも、メチレン基、プロピレン基、シクロヘキシレン基、フェニレン基等が好ましい。
【0057】
は、2価の有機基であり、通常、分子量14〜1万、好ましくは、分子量76〜500の2価の有機基の中から選ばれる。2価の有機基としては、例えば、ヘキサメチレン、オクタメチレン、ドデカメチレン等の鎖状ポリアルキレン基;シクロヘキシレン、ノルボルニレン等の脂環式または多環式の2価の有機基;フェニレン、ナフチレン、ビフェニレン、ポリフェニレン等の2価の芳香族基;およびこれらのアルキル基置換体またはアリール基置換体が挙げられる。これら2価の有機基は、炭素および水素原子以外の元素を含む原子団を含んでいてもよく、また、ポリエーテル結合、ポリエステル結合、ポリアミド結合、ポリカーボネート結合、さらには、式[−X−C(=Y)−NH−](式中、Xは、NH、OまたはSを示し、Yは、OまたはSを示す。)で表される基を含んでいてもよい。
【0058】
は、(n+1)価の有機基であり、好ましくは鎖状、分岐状または環状の飽和炭化水素基または不飽和炭化水素基の中から選ばれる。ここで、nは、1〜20の整数であるのが好ましく、特に1〜10の整数であるのが好ましく、さらには1〜5の整数であるのが好ましい。
【0059】
Zは、活性ラジカル種の存在下、分子間架橋反応し得る重合性不飽和基を分子中に有する1価の有機基である。このような有機基としては、例えば、アクリロイル(オキシ)基、メタアクリロイル(オキシ)基、ビニル(オキシ)基、プロペニル(オキシ)基、ブタジエニル(オキシ)基、スチリル(オキシ)基、エチニル(オキシ)基、シンナモイル(オキシ)基、マレエート基、アクリルアミド基、メタアクリルアミド基等が挙げられ、これらの中でも、アクリロイル(オキシ)基およびメタアクリロイル(オキシ)基が好ましい。
【0060】
反応性粒子は、上記無機酸化物粒子と有機化合物(a)とを反応させることにより製造することができる。上記無機酸化物粒子の表面には、有機化合物(a)と反応し得る成分が存在すると考えられており、粉末状の無機酸化物粒子または無機酸化物粒子の溶剤分散ゾルと有機化合物(a)とを、水分の存在下または不存在下で混合し、加熱、攪拌処理することにより、無機酸化物粒子の表面成分と有機化合物(a)とが反応し、反応性粒子が得られる。
【0061】
コーティング剤中における反応性粒子の含有量(固形分)は、5〜80重量%であるのが好ましく、特に10〜70重量%であるのが好ましい。
【0062】
反応性粒子の含有量が5重量%未満では、得られるコート層の硬度が十分でない場合があり、反応性粒子の含有量が90重量%を超えると、コーティング用組成物の硬化性が悪くなる場合がある。
【0063】
本実施形態におけるコーティング剤は、コーティング用組成物が後述する表面張力を有し得るように、ジメチルシロキサン系化合物および/またはフッ素系化合物を含有することが好ましい。
【0064】
ジメチルシロキサン系化合物としては、例えば、メルカプト変性ポリジメチルシロキサン、フェノール変性ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、脂肪酸エステル変性ポリジメチルシロキサン、(メタ)アクリレート変性ポリジメチルシロキサン、ジメチルシロキサン骨格を有するシリコーングラフトアクリル樹脂等が挙げられる。
【0065】
コーティング剤中におけるジメチルシロキサン系化合物の含有量は、0.5〜50重量%であるのが好ましく、特に0.5〜5重量%であるのが好ましい。
【0066】
フッ素系化合物としては、フルオロアルキルカルボン酸塩、フルオロアルキル第四級アンモニウム塩、フルオロアルキルエチレンオキシド付加物等のフルオロアルキル基を有する化合物;ペルフルオロアルキルカルボン酸塩、ペルフルオロアルキル第四級アンモニウム塩、ペルフルオロアルキルエチレンオキシド付加物等のペルフルオロアルキル基を有する化合物;フルオロカーボン基を有する化合物;テトラフルオロエチレン重合体;フッ化ビニリデンとテトラフルオロエチレンの共重合体;フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体;含フッ素(メタ)アクリル酸エステル;含フッ素(メタ)アクリル酸エステルの重合体;含フッ素(メタ)アクリル酸アルキルエステルの重合体;含フッ素(メタ)アクリル酸エステルと他のモノマーの共重合体などが挙げられる。
【0067】
コーティング剤中におけるフッ素系化合物の含有量は、0.5〜20重量%であるのが好ましく、特に0.5〜5重量%であるのが好ましい。
【0068】
本実施形態に係るコーティング用組成物は溶剤を含むことが好ましく、それにより、コーティング剤の濃度とコーティング用組成物の表面張力とが後述する関係を満たし易くなる。本実施形態における溶剤としては、上記コーティング剤中の電離放射線硬化性化合物を溶解することができ、かつコーティング対象物に悪影響を与えないものであれば特に限定されるものではなく、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、イソブタノール、オクタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン等のエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソロブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソロブ)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソロブ)、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類などから適宜選択して使用することができる。
【0069】
本実施形態におけるコーティング剤は、以上の成分の他にも、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、シランカップリング剤、老化防止剤、熱重合禁止剤、着色剤、レベリング剤、界面活性剤、保存安定剤、可塑剤、滑剤、有機系充填剤、フィラー、濡れ性改良剤、塗面改良剤等の各種添加剤を含有してもよい。
【0070】
本実施形態に係るコーティング用組成物は、コーティング用組成物におけるコーティング剤の濃度a(重量%)が次の条件下
0<a≦60
において、コーティング剤の濃度aと、コーティング用組成物の表面張力b(dyne/cm)とが、次の関係
b≦(−a/15)+26
を満たすものである。
【0071】
コーティング剤の濃度aおよびコーティング用組成物の表面張力bが上記関係を満たすことにより、被コーティング面に凸部や異物が存在する場合であっても、それらをコート層によって隠蔽して平滑性の高い表面を形成することができる。なお、上記関係において、b>(−a/15)+26であると、上記効果が劣るだけでなく、コーティング用組成物の加工効率の低下を招くという問題も生じる。
【0072】
以上説明したコーティング用組成物は、所望の基材に対して塗布し、硬化させることにより、基材の表面に表面平滑性の高いコート層、所望によりハードコート層を形成することができる。コーティング対象の基材としては、例えば、プラスチックフィルム、プラスチックシート、プラスチック板等のプラスチック製品の他、金属製品、ガラス製品、石材等が挙げられる。
【0073】
〔コーティングフィルム〕
本実施形態では、コーティングフィルムとして、光ディスクの情報記録層を保護するためのハードコートフィルムを一例に挙げて説明するが、本発明のコーティングフィルムは、かかる用途に限定されるものではない。
【0074】
本実施形態に係るハードコートフィルム1は、図1に示すように、保護フィルム11と、保護フィルム11の一方の面に形成されたハードコート層12とからなる。
【0075】
保護フィルム11は、情報の読出または書込のための光の波長域に対し十分な光透過性を有するとともに、光ディスクを容易に製造するために、剛性や柔軟性が適度にあり、なおかつ、光ディスクの保管のために、温度に対して安定なものであるのが好ましい。このような保護フィルム11としては、ポリカーボネート、シクロオレフィン系ポリマーまたはポリメチルメタクリレートを主成分とする光透過性フィルムが好ましく、特に、後述するハードコート層12との密着性の高いポリカーボネートを主成分とするフィルムが好ましい。なお、シクロオレフィン系ポリマーを主成分とするフィルムを使用する場合には、ハードコート層12との密着性を高めるために、ハードコート層12を形成する面に対して、コロナ放電処理を施すのが好ましい。
【0076】
保護フィルム11の厚さは、光ディスクの種類や光ディスクのその他の構成部位の厚みに応じて決定されるが、通常は25〜300μm程度であり、好ましくは50〜200μm程度である。
【0077】
なお、保護フィルム11は、通常、所望の樹脂を溶剤で希釈した溶液をベルト上にキャスト製膜することによって製造されるが、保護フィルム11の表面には凸部10が形成されることが多く、また、保護フィルム11に付着した異物による凸部10が形成される場合もある。かかる凸部10の高さは、通常0.1〜10μm程度である。
【0078】
ハードコート層12は、前述したコーティング用組成物、好ましくは充填剤を含有するコーティング用組成物を保護フィルム11の表面に塗布し、硬化させることにより形成される。
【0079】
コーティング用組成物の塗布は、常法によって行えばよく、例えば、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法によって行えばよい。コーティング用組成物を塗布したら、塗膜を50〜120℃程度で乾燥させるのが好ましい。
【0080】
コーティング用組成物の硬化は、コーティング用組成物の塗膜に対して電離放射線を照射することによって行うことができる。電離放射線としては、通常、紫外線、電子線等が用いられる。電離放射線の照射量は、電離放射線の種類によって異なるが、例えば紫外線の場合には、光量で100〜500mJ/cm程度が好ましく、電子線の場合には、10〜1000krad程度が好ましい。
【0081】
ハードコート層12の厚さは、上記凸部10の最大高さがh(μm)であるときに、h+1(μm)以上とするのが好ましい。それによって凸部10を確実に隠蔽し、非常に高い表面平滑性を得ることができる。ハードコート層12の厚さの上限は特に限定されるものではないが、得られるハードコートフィルム1の反りを防止するために、20μm以下、特に10μm以下とするのが好ましい。
【0082】
本実施形態に係るハードコートフィルム1は、前述したコーティング用組成物を硬化させてなるハードコート層12を備えているため、保護フィルム11の表面に凸部10が存在する場合であっても、その凸部10が隠蔽されて表面平滑性が高いものとなる。
【0083】
なお、本実施形態に係るハードコートフィルム1は、保護フィルム11とハードコート層12とからなるものであるが、図2に示すハードコートフィルム1’のように、保護フィルム11のハードコート層12の反対面に、接着層23が形成されていてもよいし、さらには接着層23に剥離シート3が積層されていてもよい。
【0084】
接着層23を構成する接着剤の種類としては、光ディスクを構成し得るものであれば特に限定されず、例えば、アクリル系、ポリエステル系、ウレタン系、ゴム系、シリコーン系等の粘着剤または粘接着剤であってもよいし、電離放射線硬化性、熱硬化性、熱可塑性等の接着剤であってもよい。
【0085】
接着剤層23の厚さは、通常5〜100μm程度であり、好ましくは10〜30μm程度である。
【0086】
剥離シート3としては、従来公知のものを使用することができ、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリプロピレンなどの樹脂フィルムをシリコーン系剥離剤等で剥離処理したものを使用することができる。
【0087】
〔光ディスク〕
本実施形態に係る光ディスク2は、図3に示すように、凹凸パターン(ピットまたはグルーブ/ランド)を有する光ディスク基板21と、光ディスク基板21の凹凸面上に形成された情報記録層22と、情報記録層22上に積層された接着層23と、接着層23上に積層された保護フィルム11と、保護フィルム11上に積層されたハードコート層12とからなる。
【0088】
このような光ディスク2は、例えば、次のような方法によって製造することができる。
(1)ハードコートフィルム1の裏面(ハードコート層12が存在しない側の面。以下同じ。)、または光ディスク基板21の凹凸面上に形成した情報記録層22に、電離放射線硬化性接着剤等の接着剤を塗工して、ハードコートフィルム1と情報記録層22とを接着する。
(2)剥離シートを有するアクリル系、ポリエステル系、ウレタン系、ゴム系、シリコーン系等の粘着剤からなる粘着剤層(粘着シート)をハードコートフィルム1の裏面、または光ディスク基板21の凹凸面上に形成した情報記録層22に貼り付け、剥離シートを剥離して露出した粘着剤層を介して、ハードコートフィルム1と情報記録層22とを接着する。
(3)ハードコートフィルム1’の剥離シート3を剥離して接着層23を露出させ、その接着層23と、光ディスク基板21の凹凸面上に形成した情報記録層22とを接着する。
【0089】
本実施形態に係る光ディスク2においては、保護フィルム11のハードコート層12側に存在する凸部10はハードコート層12によって隠蔽され、光ディスク2(ハードコート層12)の表面平滑性は高いものとなっているため、上記凸部10に起因する信号特性の劣化はなく、エラーレートは極めて低いものとなっている。
【0090】
なお、本実施形態に係る光ディスク2は片面1層式のものであるが、片面2層式のものであってもよく、その形態は特に限定されるものではない。
【実施例】
【0091】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0092】
〔実施例1〕
電離放射線硬化性化合物としてウレタンアクリレート系プレポリマー(荒川化学工業社製,商品名「ビームセット575CB」,固形分濃度100重量%,光重合開始剤含有)100重量部と、ジメチルシロキサン系化合物(ビックケミー・ジャパン社製,商品名「BYK−300」,固形分濃度52重量%)5重量部とを混合してこれをコーティング剤とし、さらに溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて、コーティング剤の濃度(a)が15重量%、35重量%、60重量%のコーティング用組成物を調製した。なお、コーティング剤中におけるジメチルシロキサン系化合物の含有量は2.5重量%であった。得られたコーティング用組成物の表面張力を、表面張力計(協和界面科学社製,商品名「CBVP−A」)を使用して測定した(以下同じ)。表面張力の測定結果を表1に示す。
【0093】
上記コーティング用組成物を、最大高さ4.1μmの凸欠点が無数に存在するポリカーボネートフィルム(帝人化成社製,商品名「ピュアエースC110−75」,厚さ:75μm)の凸欠点が存在する面に、乾燥後のコート層の厚さが5.5μmになるようにバーコーターによって塗布し、70℃で1分間乾燥させた後、紫外線を照射(照射条件:照度310mW/cm2,光量300mJ/cm2)して、ハードコート層を有するハードコートフィルム(コーティングフィルム)を作製した。
【0094】
〔実施例2〕
電離放射線硬化性化合物としてウレタンアクリレート系プレポリマー(荒川化学工業社製,商品名「ビームセット575CB」,固形分濃度100重量%,光重合開始剤含有)25重量部および反応性粒子(JSR社製,商品名「デソライトZ7524」,固形分濃度75重量%)100重量部と、ジメチルシロキサン系化合物(ビックケミー・ジャパン社製,商品名「BYK−300」,固形分濃度52重量%)5重量部とを混合してこれをコーティング剤とし、さらに溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて、コーティング剤の濃度(a)が15重量%、35重量%、60重量%のコーティング用組成物を得た。なお、コーティング剤中におけるジメチルシロキサン系化合物の含有量は2.5重量%であった。得られたコーティング用組成物の表面張力を測定した結果を表1に示す。
【0095】
上記コーティング用組成物を使用して、実施例1と同様にしてハードコートフィルム(コーティングフィルム)を作製した。
【0096】
〔実施例3〕
実施例1におけるジメチルシロキサン系化合物5重量部を、フッ素系化合物(大日本インキ化学工業社製,商品名「MEGAFAC F−470」,固形分濃度100重量%)1重量部に変更した以外は実施例1と同様にしてコーティング用組成物を調製した。なお、コーティング剤中におけるフッ素系化合物の含有量は1.0重量%であった。得られたコーティング用組成物の表面張力を測定した結果を表1に示す。
【0097】
上記コーティング用組成物を使用して、実施例1と同様にしてハードコートフィルム(コーティングフィルム)を作製した。
【0098】
〔実施例4〕
実施例1におけるジメチルシロキサン系化合物の量を2.94重量部とし、さらにフッ素系化合物(大日本インキ化学工業社製,商品名「MEGAFAC F−470」,固形分濃度100重量%)0.5重量部を加えた以外は実施例1と同様にしてコーティング用組成物を調製した。なお、コーティング剤中におけるジメチルシロキサン系化合物の含有量は1.5重量%、フッ素系化合物の含有量は0.5重量%であった。得られたコーティング用組成物の表面張力を測定した結果を表1に示す。
【0099】
上記コーティング用組成物を使用して、実施例1と同様にしてハードコートフィルム(コーティングフィルム)を作製した。
【0100】
〔実施例5〕
溶剤をイソブタノールとした以外は実施例1と同様にしてコーティング用組成物を調製した。得られたコーティング用組成物の表面張力を測定した結果を表1に示す。
【0101】
上記コーティング用組成物を使用して、実施例1と同様にしてハードコートフィルム(コーティングフィルム)を作製した。
【0102】
〔実施例6〕
実施例1で得られたコーティング用組成物を乾燥後のコート層の厚さが4.5μmになるように塗布した以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルム(コーティングフィルム)を作製した。
【0103】
〔比較例1〕
ジメチルシロキサン系化合物の量を0.15重量部とした以外は、実施例1と同様にしてコーティング用組成物を調製した。なお、コーティング剤中におけるジメチルシロキサン系化合物の含有量は0.078重量%であった。得られたコーティング用組成物の表面張力を測定した結果を表1に示す。
【0104】
上記コーティング用組成物を使用して、実施例1と同様にしてハードコートフィルム(コーティングフィルム)を作製した。
【0105】
〔比較例2〕
フッ素系化合物の量を0.05重量部とした以外は、実施例3と同様にしてコーティング用組成物を調製した。なお、コーティング剤中におけるフッ素系化合物の含有量は0.05重量%であった。得られたコーティング用組成物の表面張力を測定した結果を表1に示す。
【0106】
上記コーティング用組成物を使用して、実施例1と同様にしてハードコートフィルム(コーティングフィルム)を作製した。
【0107】
〔試験例〕
実施例または比較例にて作製したハードコートフィルムの表面に存在する欠点(ポリカーボネートフィルムの凸部に起因する凸部)の数をカウントし、光ディスクの片面の面積(436cm)あたりに換算して欠点数とした。カウントする欠点は直径100μm以上のものとし、コンフォーカル顕微鏡(レーザーテック社製,HD100D)を使用してカウントした。結果を表1に示す。
【0108】
【表1】

【0109】
表1から明らかなように、直径100μm以上の欠点は、実施例1〜5にて作製したハードコートフィルムでは全く見られず、実施例6にて作製したハードコートフィルムでは極めて少なかった。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明のコーティング用組成物は、所望の基材、特に樹脂フィルムにハードコート層を形成するのに好適であり、本発明のコーティングフィルムは、光学製品、特に光記録媒体の保護フィルムとして好適である。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】本発明の一実施形態に係るハードコートフィルムの断面図である。
【図2】本発明の他の実施形態に係るハードコートフィルムの断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る光ディスクの断面図である。
【図4】従来のハードコートフィルムの断面図である。
【符号の説明】
【0112】
1,1’…ハードコートフィルム(コーティングフィルム)
10…凸部
11…保護フィルム(樹脂フィルム)
12,12P…ハードコート層(コート層)
2…光ディスク
21…光ディスク基板
22…情報記録層
23…接着層
3…剥離シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電離放射線硬化性化合物を主成分とするコーティング剤を含有するコーティング用組成物であって、前記コーティング用組成物における前記コーティング剤の濃度a(重量%)が次の条件下
0<a≦60
において、前記コーティング剤の濃度aと、前記コーティング用組成物の表面張力b(dyne/cm)とが、次の関係
b≦(−a/15)+26
を満たすことを特徴とするコーティング用組成物。
【請求項2】
前記コーティング剤は、ジメチルシロキサン系化合物およびフッ素系化合物から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1に記載のコーティング用組成物。
【請求項3】
前記コーティング剤は、ジメチルシロキサン系化合物を0.5〜50重量%含有することを特徴とする請求項1に記載のコーティング用組成物。
【請求項4】
前記コーティング剤は、フッ素系化合物を0.1〜20重量%含有することを特徴とする請求項1に記載のコーティング用組成物。
【請求項5】
樹脂フィルムと、
前記樹脂フィルムの少なくとも一方の面に、請求項1〜4のいずれかに記載のコーティング用組成物を塗布し硬化させてなるコート層と
を備えたことを特徴とするコーティングフィルム。
【請求項6】
前記樹脂フィルムのコート層形成面には凸部が存在し、前記凸部の最大高さがh(μm)であるときに、前記コート層の厚さd(μm)が次の条件
d≧h+1
を満たすことを特徴とする請求項5に記載のコーティングフィルム。
【請求項7】
前記樹脂フィルムのコート層非形成面には、接着層が設けられていることを特徴とする請求項5または6に記載のコーティングフィルム。
【請求項8】
前記樹脂フィルムが、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂およびシクロオレフィン系樹脂のいずれかを主成分とする材料からなることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載のコーティングフィルム。
【請求項9】
電離放射線硬化性化合物を主成分とするコーティング剤の濃度を調整して得られたコーティング用組成物を樹脂フィルムの表面に塗布し硬化させてコート層を形成するコーティングフィルムの製造方法であって、
前記コーティング用組成物における前記コーティング剤の濃度a(重量%)が次の条件下
0<a≦60
であるときに、前記コーティング剤の濃度aと、前記コーティング用組成物の表面張力b(dyne/cm)とが、次の関係
b≦(−a/15)+26
を満たすように前記コーティング用組成物を調製することを特徴とするコーティングフィルム製造方法。
【請求項10】
前記樹脂フィルムのコート層形成面に、最大高さがh(μm)である凸部が存在する場合に、前記コート層の厚さd(μm)が次の条件
d≧h+1
を満たすように前記コート層を形成することを特徴とする請求項9に記載のコーティングフィルム製造方法。
【請求項11】
請求項5〜8のいずれかに記載のコーティングフィルムまたは請求項9もしくは10に記載のコーティングフィルム製造方法によって得られたコーティングフィルムを備えたことを特徴とする光記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−52260(P2006−52260A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−233427(P2004−233427)
【出願日】平成16年8月10日(2004.8.10)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】