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コーティング用組成物およびその使用方法、被膜を有する物品、ならびに被膜の形成方法
説明

コーティング用組成物およびその使用方法、被膜を有する物品、ならびに被膜の形成方法

【課題】 生化学的分析、タンパク質の分離・精製等に用いる各種部品、容器、器具等の表面へのタンパク質等の生体関連物質の吸着を低減することができる低コストのコーティング用組成物、上記コーティング用組成物から形成された被膜を有する物品、ならびに上記コーティング用組成物を用いた被膜の形成方法を提供する。
【解決手段】 本発明のコーティング用組成物は、(A)下記一般式(1)で表されるモノマーA1と、イソシアネート基含有モノマーA2とを含むモノマーから得られた共重合体、(B)イソシアネート基と反応可能な架橋剤、および(C)溶媒を含む。
CH=CRCOOROR ・・・・(1)
(式中、Rは炭素数1〜4のアルキレン基を表し、Rは炭素数1〜4のアルキル基を表し、Rは水素原子またはメチル基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生化学的分析、タンパク質の分離・精製等に用いる各種部品、容器、器具、人工臓器、血液回路、人工心肺回路等の表面への生体関連物質の吸着を低減することができるコーティング用組成物およびその使用方法、上記コーティング用組成物から形成された被膜を有する物品、ならびに上記コーティング用組成物を用いた被膜の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生化学分析、タンパク質の分離・精製、医療具等の分野では、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリウレタン、ナイロン、ポリ塩化ビニル、ガラス、ステンレス、アルミニウム等の素材を用いた、各種反応容器、遠心管、チューブ、シリンジ、ピペット、フィルター、分離用カラム等の種々の部品、容器、器具人工臓器、血液回路、人工心肺回路、注射器、カテーテル、カニューレ等が用いられている。
【0003】
しかしながら、上記のような素材はいずれも、タンパク質等の生体関連物質の吸着が大きいため、生化学分析においては検出感度の低下や再現性の低下を引き起こすことがある。また、タンパク質の分離・精製においては、精製に用いる容器等にタンパク質が吸着することにより、目的とするタンパク質の収率の低下や純度の低下等を引き起こすことがある。
【0004】
これの問題を解決する方法として、ポリオキシエチレン系の非イオン性界面活性剤、性状が明らかな別のタンパク質、糖質、または脂質を分析用溶液に添加する方法が知られている。しかしながら、界面活性剤を添加するとタンパク質が修飾され変性してしまうことがあり、また、タンパク質、糖質、脂質等を多量に添加する必要があるため、分析目的のタンパク質の純度が低下することがある。
【0005】
タンパク質の吸着を防止する別の方法として、ポリメトキシエチルアクリレートを主成分とするポリマーをコーティングする方法が提案されている(特許文献1、2、3)。しかしながら、ポリメトキシエチルメタクリレートを主成分とするポリマーは粘着性が高いために大気中の汚染物が付着しやすく、また、膜強度や耐水性が不十分であり、さらには、タンパク質吸着防止効果が不十分である場合がある。
【0006】
また、タンパク質の吸着防止のコーティング剤として、リン脂質類似構造を有する共重合体が提案されている(特許文献4、5、6)。しかしながら、これらのリン脂質類似構造を有する共重合体は特殊なモノマーを使用するためコストが高く、また、タンパク質吸着防止効果が不十分である。
【特許文献1】特許第2806510号公報
【特許文献2】特開2001−323030号公報
【特許文献3】特開2002−105136号公報
【特許文献4】特開平9−12904号公報
【特許文献5】特開平9−183819号公報
【特許文献6】特開2000−279512号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上述の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、生化学的分析、タンパク質の分離・精製等に用いる各種部品、容器、器具等の表面へのタンパク質等の生体関連物質の吸着を低減することができ、汚染物が付着しにくく、かつ、耐水性および強度に優れた低コストのコーティング用組成物およびその使用方法、上記コーティング用組成物から形成された被膜を有する物品、ならびに上記コーティング用組成物を用いた被膜の形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のコーティング用組成物は、
(A)下記一般式(1)で表されるモノマーA1と、イソシアネート基含有モノマーA2とを含むモノマーから得られた共重合体、
(B)イソシアネート基と反応可能な架橋剤、および
(C)溶媒
を含む。
【0009】
CH=CRCOOROR ・・・・(1)
(式中、Rは炭素数1〜4のアルキレン基を表し、Rは炭素数1〜4のアルキル基を表し、Rは水素原子またはメチル基を表す。)
ここで、前記モノマーA1はメトキシアルキル(メタ)アクリレートであることができる。
【0010】
ここで、前記(B)架橋剤は、ヒドロキシル基および/またはカルボキシル基を2個以上有する有機化合物であることができる。
【0011】
本発明の被膜を有する物品は、上記本発明のコーティング用組成物から形成された被膜を有する。
【0012】
本発明の被膜の形成方法は、上記本発明のコーティング用組成物を物品の表面に接触させた状態で、該表面を加熱する工程を含む。
【0013】
本発明のコーティング用組成物の使用方法は、上記本発明のコーティング用組成物を物品の表面に接触させた状態で、該表面を加熱することにより、該表面に被膜を形成する工程を含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明のコーティング用組成物によれば、リン脂質類似構造を有するモノマーのような特殊で高価なモノマーを使用することなく、生化学的分析、タンパク質の分離・精製等に用いる各種部品、容器、器具等の表面に容易にコーティングすることができ、汚染物が付着しにくく、低コストであり、かつ、強靭で耐水性に優れた低タンパク質吸着性の被膜を形成することができる。
【0015】
本発明の被膜を有する物品によれば、上記本発明のコーティング用組成物から形成された被膜を有するため、タンパク質の吸着性が低く、汚染物が付着しにくく、低コストであり、かつ、強靭で耐水性に優れている。
【0016】
本発明の被膜の形成方法によれば、上記本発明のコーティング用組成物を物品の表面に接触させた状態で、該表面を加熱する工程を含むことにより、汚染物が付着しにくく、低コストであり、かつ、強靭で耐水性に優れた低タンパク質吸着性の被膜を簡便な方法にて形成することができる。
【0017】
本発明のコーティング用組成物の使用方法によれば、上記本発明のコーティング用組成物を物品の表面に接触させた状態で、該表面を加熱することにより、該表面に被膜を形成する工程を含むため、汚染物が付着しにくく、低コストであり、かつ、強靭で耐水性に優れた低タンパク質吸着性の被膜を簡便な方法にて形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明のコーティング用組成物、ならびにコーティング用組成物から形成された被膜について具体的に説明する。
【0019】
1.コーティング用組成物
本発明のコーティング用組成物は、
(A)共重合体、(B)イソシアネート基と反応可能な架橋剤(単に「(B)架橋剤」ともいう)、および(C)溶媒を含む。以下、本発明のコーティング用組成物の各成分について説明する。
【0020】
1−1.(A)共重合体
(A)共重合体は、下記一般式(1)で表されるモノマーA1と、イソシアネート基含有モノマーA2(以下、単に「モノマーA2」ともいう)とを含むモノマーから得られた共重合体である。このイソシアネート基含有モノマーA2は、イソシアネート基を含有し、かつ、モノマーA1と共重合可能である。
【0021】
CH=CRCOOROR ・・・・(1)
(式中、Rは炭素数1〜4のアルキレン基を表し、Rは炭素数1〜4のアルキル基を表し、Rは水素原子またはメチル基を表す。)
【0022】
1−1−1.モノマーA1
モノマーA1としては、メトキシメチルアクリレート、メトキシエチルアクリレート、メトキシプロピルアクリレート、メトキシブチルアクリレート、エトキシメチルアクリレート、エトキシエチルアクリレート、エトキシプロピルアクリレート、エトキシブチルアクリレート、プロポキシメチルアクリレート、プロポキシエチルアクリレート、プロポキシプロピルアクリレート、プロポキシブチルアクリレート、ブトキシメチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、ブトキシプロピルアクリレート、ブトキシブチルアクリレート、メトキシメチルメタクリレート、メトキシエチルメタクリレート、メトキシプロピルメタクリレート、メトキシブチルメタクリレート、エトキシメチルメタクリレート、エトキシエチルメタクリレート、エトキシプロピルメタクリレート、エトキシブチルメタクリレート、プロポキシメチルメタクリレート、プロポキシエチルメタクリレート、プロポキシプロピルメタクリレート、プロポキシブチルメタクリレート、ブトキシメチルメタクリレート、ブトキシエチルメタクリレート、ブトキシプロピルメタクリレート、ブトキシブチルメタクリレートなどを挙げることができ、中でも蛋白質吸着性低減効果の点でメトキシメチルアクリレート、メトキシエチルアクリレート、メトキシプロピルアクリレート、メトキシブチルアクリレート、メトキシメチルメタクリレート、メトキシエチルメタクリレート、メトキシプロピルメタクリレート、メトキシブチルメタクリレート等のメトキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、メトキシエチルアクリレート、メトキシエチルメタクリレートが特に好ましい。
【0023】
(A)共重合体は、上記一般式(1)で表されるモノマーA1がアルコキシアルキル(メタ)アクリレートである場合、タンパク質吸着性の点で、(A)共重合体がアルコキシアルキル(メタ)アクリレートを50重量%以上含有していることがより好ましい。
【0024】
1−1−2.モノマーA2
イソシアネート基(−N=C=O)含有モノマーA2としては、例えば、2−イソシアナートエチルアクリレート、3−イソシアナートプロピルアクリレート、2−イソシアナートエチルメタクリレート、3−イソシアンートプロピルメタクリレートなどが挙げられる。
【0025】
(A)モノマーA1とともに、モノマーA1とイソシアネート基含有モノマーA2を使用して共重合体を形成することにより、(B)架橋剤との反応により、得られる塗膜の強靭性、耐水性が向上し、異物の付着性が低減し、蛋白質の吸着性が低減可能となる。
【0026】
1−1−3.他のモノマー
(A)共重合体は、一般式(1)で表されるモノマーA1およびイソシアネート基含有モノマーA2に加えて、モノマーA1および/またはモノマーA2と共重合可能な他のモノマーをさらに共重合させて得られたものであってもよい。このような他のモノマーとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、グリシジルアクリレート、フルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、フルフリルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、メチルビニルケトン、酢酸ビニルなどを挙げることができる。
【0027】
1−1−4.(A)共重合体の製造方法
(A)共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、およびブロック共重合体のいずれであってもよい。
【0028】
(A)共重合体の製造方法には特別の制限はなく、例えば、ラジカル重合、イオン重合、光重合等の公知の方法を用いることができる。また、(A)共重合体を製造する際の温度や反応時間は、モノマーの種類に応じて適宜設定することができる。
【0029】
1−1−5.(A)共重合体の分子量
(A)共重合体の分子量には特に制限はないが、コーティング時の塗布性、密着性等の観点から、重量平均分子量が2,000〜100,000であるのが好ましい。
【0030】
1−2.(B)イソシアネート基と反応可能な架橋剤
(B)イソシアネート基と反応可能な架橋剤は、(A)共重合体に含まれるイソシアネート基と反応することができる。このイソシアネート基は、モノマーA2由来のイソシアネート基であることができる。
【0031】
また、(B)架橋剤は、ヒドロキシル基および/またはカルボキシル基を2個以上有する有機化合物であることが好ましい。イソシアネート基を有する化合物は一般に、比較的極性が高いものが多い。よって、(B)架橋剤がヒドロキシル基および/またはカルボキシル基を2個以上有する有機化合物であることにより、後述する(C)溶媒への溶解性を高めることができる。これにより、イソシアネート基を有する(A)共重合体のような比較的極性が高い化合物を(C)溶媒に溶解させることができる。
【0032】
(B)イソシアネート基と反応可能な架橋剤としては、具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ヘキシレングリコール、2,5−ジヒドロキシ−1,4−ジオキサン、テトラエチレングリコール、一般式(2)で表されるポリエチレングリコールなどのジオール類、グリセリン、エリスリトール、ペンタエリスリトールなどのポリオール類、単糖類、二糖類、三糖類、オリゴ糖などの糖類、ヒドキシプロピルセルロースなどのセルロース類、シュウ酸、コハク酸、マロン酸、マレイン酸、グルタル酸などの2塩基酸、一般式(3)で表される両末端カルボキシ変性ポリエチレングリコール、カルボキシメチルデキストリン、乳酸、グリコール酸、リンゴ酸、クエン酸などのヒドロキシル基とカルボキシル基を有する化合物などが挙げられる。中でもエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ヘキシレングリコール、2,5−ジヒドロキシ−1,4−ジオキサン、テトラエチレングリコール、一般式(2)で表されるポリエチレングリコールなどのジオール類、グリセリン、エリスリトール、ペンタエリスリトールなどのポリオール類などのポリヒドロキシ化合物が溶媒への溶解度が高く好ましい。
【0033】
HO−(CHCHO)−H ・・・・(2)
(式中、nは1以上の整数を示す。)
11OCO−(CHCHO)−OCOR12 ・・・・(3)
(式中、R11,R12は1価の有機基を示し、nは1以上の整数を示す。)
【0034】
本発明のコーティング用組成物によれば、(B)イソシアネート基と反応可能な架橋剤を含むことにより、得られる塗膜の強靭性、耐水性が向上し、異物の付着性が低減し、蛋白質の吸着性が低減可能となる。
【0035】
1−3.(C)溶媒
(C)溶媒は、(A)共重合体および(B)イソシアネート基と反応可能な架橋剤を溶解および/または分散することができ、かつ架橋反応を阻害しないものであれば特に制限はなく、スプレー塗装、ディップコート、スピンコート、電着塗装等からコーティング方式に応じて適宜選択することができる。
【0036】
(C)溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、iso−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノールなどのアルコール類、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルなどのエチレングリコール誘導体、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのプロピレングリコール誘導体、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、乳酸エチル、γ―ブチロラクトンなどのエステル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド類、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレンなどの芳香族類、ヘキサン、オクタン、シクロヘキサン、ミネラルスピリッツなどの脂肪族溶媒などが挙げられる。ただし、例えば、(C)溶媒として、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、メルカプト基等の活性水素基を有する溶媒を使用するときには、(A)共重合体中のイソシアネート基をブロック剤で保護しておくことが望ましい。
【0037】
1−4.用途
本発明のコーティング用組成物は、生化学分析、タンパク質の分離・精製等の分野で用いられる反応容器、遠心管、チューブ、シリンジ、ピペット、フィルター、分離用カラム等種々の部品、容器、器具、人工臓器、血液回路、人工心肺回路、注射針、カニューレ、カテーテル等のコーティング材料として用いることができる。これらに用いられる素材、たとえば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリウレタン、ナイロン、ポリ塩化ビニル、ガラス、セラミックス、ステンレス、アルミニウム等の素材との濡れ性を改善、塗膜の欠陥を改善する等のために、公知の界面活性剤、消泡剤等の添加剤を含有することも可能である。また、
(B)架橋剤とイソシアナート基との反応を促進するために、公知の硬化触媒を添加することも可能である。このような硬化触媒としては、例えば、有機スズ化合物、有機チタン化合物、有機アルミニウム化合物、有機ジルコニウム化合物等の有機金属化合物、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、イミダゾ−ル等の塩基性物質を挙げることができる。
【0038】
1−5.コーティング用組成物の使用方法(被膜の形成方法)
本発明のコーティング用組成物の使用方法は、上記本発明のコーティング用組成物を物品の表面に接触させた状態で、該表面を加熱することにより、該表面に被膜を形成する工程を含む。また、上記本発明のコーティング用組成物を物品の表面に接触させてから該表面を加熱してもよいし、あるいは、該表面を加熱しながら上記本発明のコーティング用組成物を接触させてもよい。
【0039】
本発明のコーティング用組成物を表面に接触させる方法としては特に限定されないが、例えば、スピンコートによる塗布、スプレーによる噴霧、気化による蒸着、ディッピング、電着塗装が挙げられる。
【0040】
また、上記本発明のコーティング用組成物を接触させた物品の表面を加熱する際の温度および加熱時間は特に限定されず、使用するコーティング用組成物の種類に応じて適宜設定することができる。
【0041】
2.被膜を有する物品
本発明の被膜を有する物品は、上記本発明のコーティング用組成物から得られる。すなわち、この被膜は、上記本発明のコーティング用組成物を物品の表面に接触させた状態で、該表面を加熱することにより、該表面に形成される。
【0042】
本発明の被膜を有する物品としては、生体関連物質と接触する器具類および装置類を挙げることができる。生体関連物質とは、酵素および抗体等のタンパク質、グルタチオン等のペプチド、血小板、赤血球、白血球等の各種血球細胞を含む各種血液由来物質、または各種浮遊細胞等である。生体関連物質と接触する器具および装置としては、特に限定されず、生体適合性が高く生体関連物質の非特異的付着性が低いことが好ましい各種の器具類おとび装置類を挙げることができる。
【0043】
生体関連物質と接触する器具および装置としては、具体的には、例えば、生化学分析、タンパク質の分離・精製等の分野で用いられる反応容器、遠心管、チューブ、シリンジ、ピペット、フィルター、分離用カラム等種々の部品、容器、器具、人工臓器、血液回路、人工心肺回路、注射針、カニューレ、カテーテル等が挙げられる。これらの物品には単独もしくは複数の素材を組み合わせて用いられ、かかる素材としては、たとえば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリウレタン、ナイロン、ポリ塩化ビニル等のプラスチック類、ガラス、セラミックス等の無機材料、鋼鉄、ステンレス、アルミニウム等の金属類を挙げることができる。これら各種素材の表面の性質、状態は多種多様である。本発明のコーティング組成物を用いてこれらの物品の表面に被膜を形成する場合、はじき、剥離等の欠陥が発生しないように、従来公知の前処理、たとえば、洗浄、研磨、ブラスト、脱脂、メッキ、化成処理、コロナ放電処理、プライマー処理等を行なうことも可能である。
【0044】
3.実施例
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0045】
3−1.合成例
3−1−1.(A)共重合体の合成例1
100mlフラスコ中で、2−メトキシエチルアクリレート9.0gおよび2−イソシアナートエチルメタクリレート1.2gをトルエン40gに溶解させ、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル25mgを加えた。次に、反応系の雰囲気を窒素で置換した後、80℃で6時間重合させ、大量のヘキサン中へ注ぎ入れた。上層をデカンテーションで除き、残った粘稠な液状物をトルエン50mlに溶解させ、その溶液を大量のヘキサン中へ注いで再沈澱精製を行なった。同様の再沈澱精製操作をもう一度行なった後、50℃で終夜真空乾燥することにより、無色の粘稠な液状ポリマー1((A)共重合体)9.9gを得た。
【0046】
3−1−2.(A)共重合体の合成例2
200mlフラスコ中で、2−メトキシエチルアクリレート16g、2−イソシアナートエチルアクリレート2.1g、およびメチルメタクリレート1.9をトルエン60gに溶解させ、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル50mgを加えた。次に、反応系の雰囲気を窒素で置換した後、80℃で6時間重合させ、得られた溶液を大量のヘキサン中へ注ぎ入れた。上層をデカンテーションで除き、残った粘稠な液状物をトルエン100mlに溶解させ、その溶液を大量のヘキサン中へ注いで再沈澱精製を行なった。同様の再沈澱精製操作をもう一度行なった後、50℃で終夜真空乾燥することにより、無色の粘稠な液状ポリマー2((A)共重合体)19.3gを得た。
【0047】
3−1−3.比較例のポリマーの合成例(合成例3)
200mlフラスコ中で、2−メトキシエチルアクリレート20gをシクロヘキサノン60gに溶解させ、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル100mgを加えた。次に、反応系の雰囲気を窒素で置換した後、70℃で6時間重合させ、得られた溶液をアセトン100mlで希釈して大量のヘキサン中へ注ぎ入れた。上層をデカンテーションで除き、残った粘稠な液状物をアセトン150mlに溶解させ、その溶液を大量のヘキサン中へ注いで再沈澱精製を行なった。同様の再沈澱精製操作をもう一度行なった後、50℃で終夜真空乾燥することにより、無色の粘稠な液状ポリマー3(比較例)18.3gを得た。
【0048】
3−2.タンパク質非特異吸着性の評価方法
評価用サンプルの塗布面を向かい合わせにし、間にシリコンゴム製Oリング(内径25mm,太さ3.5mm)を挟んで外側から2箇所クリップで留めることより、体積約600μL、サンプル面積約4.9cmの密閉空間を有するサンプルキットを作成した。次に、BSA(ウシ血清アルブミン)をリン酸緩衝溶液に1重量%となるように溶解させ、0.22ミクロンフィルタを用いてろ過することにより、BSA溶液を得た。次いで、27ゲージの注射針2本をサンプルキットのOリングを貫通させて、一方を空気穴とし、他方に1ccの注射器を接続してBSA溶液を600μL注入した。常温で2時間放置後、注射器でBSA溶液を抜き取り、クリップを外してサンプルキットを解体した。解体後の評価用サンプルウェハを1枚ごとに、洗浄液(10mM HEPES pH=7.4/0.005% Tween20)を1mLずつピペットで滴下しては流し、これを5回繰り返すことで洗浄を行った。
【0049】
次に、スピンコーターで回転乾燥させることにより、評価用サンプルウェハ2枚を乾燥させ、その後再度向かい合わせにし、新しいシリコンゴム製Oリングを間に挟んで外側から2箇所クリップで留めることによりサンプルキットを作成した。27ゲージの注射針2本をサンプルキットのOリングを貫通させて、一方を空気穴とし、他方に1ccの注射器を接続して剥離液(2%ドデシル硫酸ナトリウム水溶液)を600μL注入した。常温で10分静置後、シリンジで全量抜き取った。Laemniサンプルバッファー(バイオラッド社製)1mLにジチオスレイトール81mgを溶解させた溶液を調製して、この溶液100μLと、先に抜き取った剥離液100μLとを混合し、99℃で2分間加熱して、SDS−PAGE(ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動)用サンプルとした。SDS−PAGEを行なった後、銀染色を行い、BSAの特徴的なバンドである約66kDa近辺のピーク幅と濃さをデンシトメーターGS−800(バイオラッド社製)で測定し、同一のSDS−PAGEゲルで他のレーンに流した既知の濃度のBSAを標準として、本サンプルのタンパク質吸着量を求め、これをタンパク質非特異吸着性の指標とした。すなわち、タンパク質吸着量が多いほどタンパク質非特異吸着性が高いといえる。
【0050】
3−3.実験例および比較例
3−3−1.実験例1
上記合成例1で得られたポリマー1を10重量部と、プロピレングリコール1重量部と、ジブチル錫ジラウレート0.01重量部とをシクロヘキサノン200重量部に溶解することにより、コーティング用組成物1を得た。これをガラス板にスピンコーターを用いて、300rpmで5秒間、続いて1000rpmで20秒間回転塗布した後、150℃で10分間加熱することにより、塗膜が形成された評価用サンプルを得た。得られた塗膜にはごみ等の異物の付着はみられなかった。また、得られた塗膜を爪でこすったが塗膜剥がれ等の外観変化はなく、強靭な塗膜であった。さらに、このサンプルを25℃の純水中に10時間浸漬したが、膜の剥離や膨潤等の変化はなかった。次に、このサンプルについて、実験例1と同様の方法によりタンパク質非特異吸着性を評価した。
【0051】
3−3−2.実験例2
上記合成例2で得られたポリマー1を10重量部と、プロピレングリコール1.2重量部と、p−トルエンスルホン酸・トリエチルアミン0.01部とをシクロヘキサノン200重量部に溶解することにより、コーティング用組成物2を得た。これをガラス板にスピンコーターを用いて、300rpmで5秒間、続いて1000rpmで20秒間回転塗布した後、150℃で10分間加熱することにより、塗膜が形成された評価用サンプルを得た。得られた塗膜にはごみ等の異物の付着はみられなかった。また、得られた塗膜を爪でこすったが塗膜剥がれ等の外観変化はなく、強靭な塗膜であった。さらに、このサンプルを25℃の純水中に10時間浸漬したが、膜の剥離や膨潤等の変化はなかった。次に、このサンプルについて、上記実験例1と同様の方法によりタンパク質非特異吸着性を評価した。
【0052】
3−3−3.実験例3
上記合成例2で得られたポリマー2を10重量部と、プロピレングリコール1重量部と、ジブチル錫ジラウレート0.01重量部とをシクロヘキサノン200重量部に溶解することにより、コーティング用組成物3を得た。これをガラス板にスピンコーターを用いて、300rpmで5秒間、続いて1000rpmで20秒間回転塗布した後、150℃で10分間加熱することにより、塗膜が形成された評価用サンプルを得た。得られた塗膜にはごみ等の異物の付着はみられなかった。また、得られた塗膜を爪でこすったが塗膜剥がれ等の外観変化はなく、強靭な塗膜であった。さらに、このサンプルを25℃の純水中に10時間浸漬したが、膜の剥離や膨潤等の変化はなかった。次に、このサンプルについて、上記実験例1と同様の方法によりタンパク質非特異吸着性を評価した。
【0053】
3−3−4.比較例1
上記合成例3で得られたポリマー3を10重量部、シクロヘキサノン200重量部に溶解することにより、コーティング用組成物4を得た。これをガラス板にスピンコーターを用いて、300rpmで5秒間、続いて1000rpmで20秒間回転塗布した後、150℃で10分間加熱することにより、塗膜が形成された評価用サンプルを得た。得られた塗膜は粘着性がありごみ等の異物が付着しやすく、爪でこすると簡単に剥離し弱い塗膜であった。また、このサンプルを25℃の純水中に10時間浸漬したが、膜の白化が観察された。次に、このサンプルについて、上記実験例1と同様の方法によりタンパク質非特異吸着性を評価した。
【0054】
3−3−5.実験例4
ポリエチレンシートの表面に対してコロナ放電処理を行なうことにより、ポリエチレンシートの表面を親水化した。次に、上記合成例1で得られたコーティング用組成物1をこのポリエチレンシートの表面にディップコートし、80℃で2時間加熱することにより、塗膜が形成された評価用サンプルを得た。得られた塗膜にはごみ等の異物の付着はみられなかった。また、得られた塗膜を爪でこすったが塗膜剥がれ等の外観変化はなく、強靭な塗膜であった。さらに、このサンプルを25℃の純水中に10時間浸漬したが、膜の剥離、膨潤等の変化はなかった。次に、このサンプルについて、上記実験例1と同様の方法によりタンパク質非特異吸着性を評価した。
【0055】
3−3−6.実験例5
ポリスチレンシート(SUS304板)に、上記実験例1で得られたコーティング用組成物1をディップコートし、50℃で3時間加熱することにより、塗膜が形成された評価用サンプルを得た。得られた塗膜にはごみ等の異物の付着はみられなかった。また、得られた塗膜を爪でこすったが塗膜剥がれ等の外観変化はなく、強靭な塗膜であった。さらに、このサンプルを25℃の純水中に10時間浸漬したが、膜の剥離、膨潤等の変化はなかった。次に、このサンプルについて、上記実験例1と同様の方法によりタンパク質非特異吸着性を評価した。
【0056】
3−3−7.比較例2,3,4
ガラス板(比較例2)、ポリエチレンシート(比較例3)、およびポリスチレンシートであるSUS304板(比較例4)をそれぞれ、被膜を形成せずにそのまま用いて、上記実験例1と同様の方法によりタンパク質非特異吸着性を評価した。
【0057】
実験例1〜5および比較例1〜4により得られた評価結果を表1に示す。
【0058】
【表1】

【0059】
実験例1〜5の結果から、実験例1〜5で形成された被膜によれば、被膜が形成されていない場合(比較例2〜4)と比較して、タンパク質の吸着を大幅に低減することができた。
【0060】
実験例1〜5で形成された被膜は、(A)下記一般式(1)で表されるモノマーA1と、イソシアネート基含有モノマーA2とを含むモノマーから得られた共重合体、(B)イソシアネート基と反応可能な架橋剤、および(C)溶媒を含むコーティング用組成物を塗布した後、加熱して得られる。この被膜によれば、タンパク質非特異吸着性が低く、汚染物が付着しにくく、低コストであり、かつ、強靭で耐水性に優れていることが確認された。
【0061】
これに対して、比較例1の被膜は、モノマーA2を使用しないで重合されたポリマー3を含む組成物から形成されたため、粘着性がありごみ等の異物が付着しやすく、強度および耐水性に劣っていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(1)で表されるモノマーA1と、イソシアネート基含有モノマーA2とを含むモノマーから得られた共重合体、
(B)イソシアネート基と反応可能な架橋剤、および
(C)溶媒
を含む、コーティング用組成物。
CH=CRCOOROR ・・・・(1)
(式中、Rは炭素数1〜4のアルキレン基を表し、Rは炭素数1〜4のアルキル基を表し、Rは水素原子またはメチル基を表す。)
【請求項2】
請求項1において、
前記モノマーA1はメトキシアルキル(メタ)アクリレートである、コーティング用組成物。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記(B)架橋剤は、ヒドロキシル基および/またはカルボキシル基を2個以上有する有機化合物である、コーティング用組成物。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載のコーティング用組成物から形成された被膜を有する物品。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれかに記載のコーティング用組成物を物品の表面に接触させた状態で、該表面を加熱する工程を含む、被膜の形成方法。
【請求項6】
請求項1ないし3のいずれかに記載のコーティング用組成物を物品の表面に接触させた状態で、該表面を加熱することにより、該表面に被膜を形成する工程を含む、コーティング用組成物の使用方法。

【公開番号】特開2006−131823(P2006−131823A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−324931(P2004−324931)
【出願日】平成16年11月9日(2004.11.9)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】