説明

コーティング用組成物および該組成物を用いた海水用除菌膜の形成方法

【課題】成分として有害物を含まず、塗膜から極微量の銀錯イオン以外の溶出はなく、海水中の有害な細菌類や微生物を長期間安定的に無害化することができるコーティング用組成物を提供する。
【解決手段】(a)チオ硫酸銀を銀換算で2〜6重量部、(b)コロイド状の、白金および/またはパラジウムを固形分換算で0.002〜0.01重量部、(c)担体を15〜40重量部、(d)結合剤を固形分換算で15〜30重量部、ならびに(e)水〔ただし、(a)+(b)+(c)+(d)+(e)=100重量部〕を主成分とするコーティング用組成物、このコーティング用組成物を、海水槽の内面に塗布し、常温下で乾燥・硬化して海水用除菌膜を形成する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶用バラストタンクなどの海水槽に塗布するコーティング用組成物に関する。
また、本発明は、このコーティング用組成物を船舶用バラストタンクなどの海水槽の内面にコートして常温下で、乾燥・硬化させると、形成されたコーティング膜から出る極微量の銀錯イオンが海水中の塩化物イオンと結合することなく、海水中の細菌、特に病原菌を滅菌および抑藻することによって、地域の異なる海へのバラスト水の移動による生態系への影響を除去することができるバラスト水の除菌方法、および藻類の繁殖を抑える海水用除菌膜の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、海域の異なる海中水生物の移動を引き起こす船舶バラスト水については、船舶からのバラスト水の排出による海洋生態系(特に細菌)への影響が問題になっている。
バラストタンクには安心かつ安全で耐久性を有する除菌性塗料が求められているが、その解決策は見つかっておらず、早急に解決策が望まれている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、以上のような問題点の解決策の一つとして提案されるものであり、成分として有害物を含まず、塗膜からも極微量の銀錯イオン以外の溶出はなく、海水中の有害な細菌類や微生物を長期間安定的に無害化することができ、さらに海洋の浄化にも貢献することができ、しかも水性で作業性が良く、コストも安価であるコーティング用組成物および該組成物を用いた海水用除菌膜の形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、(a)チオ硫酸銀を銀換算で2〜6重量部、(b)コロイド状の、白金および/またはパラジウムを固形分換算で0.002〜0.01重量部、(c)担体を15〜40重量部、(d)結合剤を固形分換算で15〜30重量部、ならびに(e)水〔ただし、(a)+(b)+(c)+(d)+(e)=100重量部〕を主成分とするコーティング用組成物に関する。
ここで、上記(c)担体が、シリカゲル、アルミノシリカゲル、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、ゼオライトおよびケイソウ土からなる群より選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。
また、上記(d)結合剤が、合成樹脂エマルジョン、水溶性合成樹脂、合成ゴムエマルジョンまたはこれらと水性シリケートの混合物からなる群より選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。
次に、本発明は、上記記載のコーティング用組成物をバラストタンクなどの海水槽の内面に塗布し、常温下で乾燥・硬化することを特徴とする海水用除菌膜の形成方法に関する。
【発明の効果】
【0005】
本発明のコーティング用組成物を、バラストタンク内にコーティングして常温下で短時間硬化させると、バラスト水が無菌化され、バラストタンク内の水を海水中に放出する際、生態系に害を及ぼさず、赤潮などを引き起こすことがない。本発明のコーティング用組成物は、塗膜から銀錯イオン以外の溶出がないため、その性能が長期間持続するとともに、他の海洋生物や人や動物に対し無害かつ海洋を汚染しないものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明は、(a)チオ硫酸銀を銀換算で2〜6重量部、(b)コロイド状の、白金および/またはパラジウムを固形分換算で0.02〜0.01重量部、(c)担体を15〜40重量部、(d)結合剤を固形分換算で15〜30重量部、ならびに(e)水〔ただし、(a)+(b)+(c)+(d)+(e)=100重量部〕を主成分とするコーティング用組成物である。
本発明のコーティング用組成物について、各成分別に以下に説明する。
【0007】
(a)チオ硫酸銀
(a)チオ硫酸銀は、通常、水溶液として用いられ、該水溶液は次のいずれかの方法で作成される。
(1)硝酸銀の溶液にチオ硫酸ソーダの水溶液を加えると白色の沈殿ができる。さらに、チオ硫酸ソーダを加えていくと、沈殿が溶解し、チオ硫酸銀水溶液ができる。
(2)硫酸銀の水溶液にチオ硫酸ソーダ水溶液を混合して作成する。
(3)硝酸銀の溶液に苛性ソーダの水溶液を加えると黒褐色の沈殿ができる。この上澄液を除去した後、チオ硫酸ソーダ水溶液を加え、沈殿を溶解させて作成する。
該水溶液におけるチオ硫酸銀濃度は、好ましくは5〜18重量%、さらに好ましくは8〜16重量%である。
【0008】
上記(1)〜(3)のいずれの作成法でもチオ硫酸ソーダの含量が増すに従い、水に対する溶解度が大きくなる。本発明では、長期間使用するため、Na・3Ag・2HO、Na・Ag・2HOの錯塩が適する。
(a)チオ硫酸銀は、銀錯イオンが0.1〜3ppm海水中に溶出して、海水と反応することなく細菌類の表面に吸着し、これを死滅させることにより除菌作用を発揮するものである。
【0009】
本発明において(a)チオ硫酸銀は、(a)〜(e)成分の合計100重量部中に、銀換算で2〜6重量部、好ましくは、3〜5重量部である。(a)チオ硫酸銀が2重量部未満では銀錯イオンの溶出量が少なすぎたり、一方、6重量部を超えると銀錯イオンの溶出量が増えすぎたり、(c)、(d)成分が不足し、好ましくない。
【0010】
(b)コロイド状の、白金および/またはパラジウム
銀錯イオンは、海水中においては、淡水中と比較してその滅菌力は大幅に低下する。本発明のコーティング用組成物の塗膜に、化学抵抗力が大きく、触媒能および化学的活性度の高い(b)コロイド状の、白金および/またはパラジウムが存在すると、海水中における滅菌力の低下を抑えるとともにその性能を安定持続させることが可能である。さらに、高価な銀の使用量を減少させることができる。
【0011】
(b)コロイド状の、白金および/またはパラジウムとは、平均粒径が20nm以下、好ましくは3〜10nmの粒子が分散媒中に分散しているものをいう。分散媒としては、通常、水が用いられる。また、分散白金、パラジウム粒子の濃度は、通常、0.01〜0.05重量%程度である。
【0012】
本発明において(b)コロイド状の、白金および/またはパラジウムは、(a)〜(e)成分の合計100重量部中に、固形分換算で0.002〜0.01重量部、好ましくは、0.004〜0.008重量部である。(b)成分が0.002重量部未満では、性能の発現が困難であったり、一方、0.01重量部を超えると、コストが上昇したりして、好ましくない。
【0013】
(c)担体
(c)担体は(a)成分を担持する大きな表面積を有する材料として使用される。
本発明に用いられる(c)担体は、シリカゲル、アルミノシリカゲル、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、ゼオライトおよびケイソウ土からなる群より選ばれた少なくとも1種であり、中でも銀錯イオンの溶出量制御の面からシリカゲル、アルミノシリカゲル、ゼオライトが好ましい。(c)担体は1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0014】
(c)担体の平均粒径は1〜8μmが好ましく、さらに好ましくは3〜5μmである。担体の形状は、粒状でも、繊維状でも、どのようなものでもよく、粒状の場合、平均粒径は、好ましくは0.5〜8μm、さらに好ましくは1〜6μmである。
【0015】
本発明において(c)担体は、(a)〜(e)成分の合計100重量部中に、15〜40重量部、好ましくは、20〜30重量部である。(c)担体が15重量部未満では、(a)成分の溶出量が増えすぎたり、塗膜が薄すぎたりし、一方、40重量部を超えると(a)成分の溶出量が少なすぎたり、塗膜強度が低下したりして、好ましくない。
【0016】
(d)結合剤
(d)結合剤は、塗膜の形成と、本発明のコーティング用組成物の塗膜を基材に定着させるために使用される。また、(d)結合剤は、銀錯イオンの溶出をコントロールするため、その使用量が重要となる。
【0017】
本発明における(d)結合剤は、合成樹脂エマルジョン、水溶性合成樹脂、合成ゴムエマルジョンまたはこれらと水性シリケートの混合物からなる群から選ばれた少なくとも1種であり、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
合成樹脂エマルジョン:
(d)結合剤として用いられる合成樹脂エマルジョンとしては、アクリル樹脂、アルキド樹脂、アミノ樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素樹脂、ポリイソシアネート、ポリエステル樹脂、アクリル変性ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン・アクリル樹脂などの少なくとも1種が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの合成樹脂は、硬化すると、透明または半透明の膜を形成し、本発明においては、塗膜の形成と、塗膜を基材に定着させるために使用されるものである。
以上の合成樹脂エマルジョンは、1種単独で使用することも、あるいは2種以上を混合して用いることもできる。
【0019】
水溶性合成樹脂:
(d)結合剤として用いられる水溶性合成樹脂としては、水溶性ウレタン樹脂、水溶性エポキシ樹脂、水溶性ポリブタジエン樹脂、水溶性メラミン樹脂、水溶性アクリル樹脂、水溶性アルキド樹脂、水溶性ポリブタジエンなどを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0020】
合成ゴムエマルジョン:
(d)結合剤として用いられる合成ゴムエマルジョンとしては、SBR、IR、NBRなどがあり、塗膜の割れ防止に効果がある。
【0021】
水性シリケート:
(d)結合剤として用いられる水性シリケートとしては、アミンシリケート、リチウムシリケートなどがあり、合成樹脂エマルジョンや合成ゴムエマルジョンに混入することにより、塗膜強度が向上する。
【0022】
合成樹脂エマルジョン、水溶性合成樹脂、または合成ゴムエマルジョンと水性シリケートの混合物の場合、混合物中における水性シリケートの割合は、結合剤(固形分換算)中に、固形分換算で、好ましくは10〜40重量%である。
【0023】
本発明において(d)結合剤は、(a)〜(e)成分の合計100重量部中に、固形分換算で15〜30重量部、好ましくは、18〜25重量部である。(d)結合剤が15重量部未満では、密着不良になったり、(a)〜(c)成分が溶出したりし、一方、30重量部を超えると(a)成分の溶出量が不足したりして、好ましくない。
【0024】
(e)水
本発明において、(e)水は、分散媒として、また粘度調節のために使用され、水道水、蒸留水、イオン交換水などが使用可能である。
(e)水には、(a)成分が水溶液で用いられる際の水や、(b)成分の分散媒、(d)成分の合成樹脂エマルジョン、水溶性合成樹脂、合成ゴムエマルジョンおよび水性シリケートに含まれる水も包含される。
本発明において(e)成分は、(a)+(b)+(c)+(d)+(e)=100重量部となるように添加する。
【0025】
本発明のコーティング用組成物には、そのほか必要に応じて界面活性剤、無機・有機顔料、コロイド状無機物、分散剤、硬化剤、その他の添加剤などを含むことができる。また、本発明のコーティング用組成物の固形分濃度は、35〜70重量%が好ましく、さらに好ましくは45〜55重量%である。
【0026】
本発明のコーティング用組成物の調製方法としては、まず(a)成分に(b)成分および(e)成分を加え、さらに(d)成分を加えて混合攪拌する。これに(c)成分を加えて高速攪拌して均一な分散液を作成する。
本発明のコーティング用組成物のバラストタンクなどの海水槽への塗布方法はロール、スプレー、刷毛などを用いて行う。乾燥方法は、常温で12〜36時間乾燥させる。
【0027】
乾燥後の塗布量は、40〜120g/mであることが好ましく、さらに60〜80g/mであることが好ましい。40g/m未満では、性能が均一に発現し難く、一方、120g/mを超えると、亀裂が入ったり、剥離したりして好ましくない。
【実施例】
【0028】
以下、実施例を挙げ、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、特許請求の範囲を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。表1に、実施例に使用する本発明のコーティング用組成物(A−1)の配合割合を示す。
【0029】
(a)−1:チオ硫酸銀(銀分15%、日板研究所製)
(b)−1:コロイド状白金(白金分0.2%、日板研究所製)
(c)−1:シリカゲル(平均粒径:3μm)
(c)−2:ケイ酸アルミニウム(平均粒径:2μm)
(d)−1:アクリル樹脂エマルジョン(固形分48%)
(d)−2:スチレン−ブタジエンゴムエマルジョン(固形分40%)
(e)−1:水
(f)−1:分散剤(ノニオン系界面活性剤、日本油脂製)




【0030】
【表1】

【0031】
実施例1
バラストタンクの容量が約1,000m=海水1,000tとすると、その天井を除く内面積は約500mになり、これを1L容器=海水1L(1,000cm)に換算すると、内面積は約500cmになる。
接水面積上は500cmであるが、塗布面の状態が汚れなどで100%効果が発揮できないケースを考慮し、有効面積を1/5とする。かつ、安全率を10として海水量に相当する塗布面積の1/10とする。(1/10の一の塗布面積でも、効き目があるように)
従って、海水量10Lでは、10×(500cm×1/5×1/10)=100cmとなる。
このことから、10cm×10cm(面積:100cm=0.01m)の鉄板を作り、両面をエポキシ塗料で防錆加工した後、片面に本発明のコーティング用組成物(A−1)をm換算で120g塗布し、常温下で24時間乾燥させてテストピース(T−1)を2枚作成した。
次に、10 L容器4個を用意し、これに海水を約10 Lずつ入れた後、テストピース(T−1)を1枚ずつ2個の容器に入れ、これを試験体とした。他の2個(テストピースを入れないもの)の容器を対照とした。この試験体1個および対照1個にそれぞれ大腸菌(4.6×10個)を添加し、24,48,72,96時間後の1 mL当りの生菌数を調べた。
この結果を表2に示す。
【0032】
【表2】

【0033】
実施例2
大腸菌と同様の手法で、試験体1個および対照1個にそれぞれ黄色ブドウ球菌(3.2×10)を添加し、実施例1と同様に黄色ブドウ球菌についても試験をした。この試験結果を表3に示す。
【0034】
【表3】

【0035】
実施例3
海生の植物プランクトン藻類のうち、よく知られている赤潮プランクトン(ヘテロシグマ)に対する本発明のコーティング用組成物の殺藻効果について調べた。
上記の実施例1では海水量と塗装面積の関係は100cm/10L=10cm/Lであったが、3cm×3cmの紙片に本塗料を片面のみに塗ったものを使用し、かつガラス製の容器0.5L用および1L用にプランクトン培養の人工海水を使用したので、9cm/0.5L=18cm/Lおよび9cm/Lとなる。この試験要領を次に示す。
【0036】
イ)試験生物
Heterosigma akashiwo
ロ)試験紙片
対照区:7日間滅菌ろ過海水に浸漬したあと乾燥させた無塗装の紙片(コントロールピース)
試験区:7日間滅菌ろ過海水に浸漬し、可溶物(Ag)をある程度除去した後乾燥させたSSA系セラミックコーティング剤塗装紙片(テストピース)
*コントロールピースおよびテストピースのサイズ:3cm×3cm
ハ)対照区および試験区
対照区および試験区の培養容量とコントロールピースおよびテストピースの枚数は、表4の通りとする。
【0037】
【表4】

【0038】
ニ)試験方法
1.前処理としてコントロールピースとテストピースをそれぞれ1,000mLの滅菌ろ過海水に7日間浸漬した後、取り出して乾燥させておく。
2.大量培養されたHeterosigma akashiwoの計数を行い、培養液で希釈して対照区および試験区<A>、<B>のH.akashiwoの細胞密度をそれぞれ10,000細胞/mL前後とし、上記の培養容量(表4)にて試験を開始する。
3.対照区に前処理済みのコントロールピースを1枚、試験区<A>、<B>に前処理済みのテストピースをそれぞれ1枚ずつ投入する。
4.対照区および試験区<A>、<B>をインキュベーター内の蛍光灯を4本点灯したまま20℃で培養する。
5.培養開始から1時間後、6時間後、24時間後、72時間後に対照区および試験区<A>、<B>の遊泳しているH.akashiwoと遊泳せず計数板上に静止しているH.akashiwoの計数を行う。このとき、遊泳しているH.akashiwoを生細胞、動かず計数板上に静止しているH.akashiwoを死細胞として表す。H.akashiwoの計数は枠付界線入りスライドガラス(長さ:5cm、幅:2cm、深さ:1mmの枠付きで、枠内に1mm×1mmのマスが1,000マスあるスライドガラス)に試料1mLを入れて20マス分に確認されるH.akashiwoの生細胞と死細胞を、実体顕微鏡を用いて観察し計数を行い、1mLあたりの細胞数に換算する。コントロールピースおよびテストピース投入前(0時間)と投入後(1,6,24,72時間後)のH.akashiwoの細胞数(生細胞数・死細胞数)と全細胞(生細胞と死細胞の合計)において生細胞が占める割合を表5に示す。
【0039】
【表5】

*生細胞:遊泳しているH.akashiwo
死細胞:遊泳せずに計数板上に静止しているH.akashiwo
【0040】
コントロールピースおよびテストピース投入前(0時間)と投入後(1,6,24,72時間後)のH.akashiwoの細胞数(生細胞数・死細胞数)と全細胞(生細胞と死細胞の合計)において生細胞が占める割合について表5−1〜5−3に示した。
対照区ではコントロールピースを投入して72時間後に生細胞(遊泳している細胞)が増加していた(表5−1)。コントロールピースを投入する前と投入して72時間後の全細胞における生細胞の占める割合を比較すると、投入してから72時間後のほうが若干低い値を示した。(表5−1)。
試験区<A>ではテストピースを投入して6時間後には生細胞が31.9%、24時間後には1.2%確認され、72時間後には全く生細胞が確認されなかった(表5−2)。
試験区<B>では、テストピースを投入して6時間後には生細胞が31.2%、24時間後には11.4%、72時間後には45.6%確認された(表5−3)。
【0041】
実施例3の試験結果より、本発明のコーティング用組成物は海水中で優れた除藻効果および抑藻効果を示すことが明らかである。
【0042】
実施例4
海生の動物プランクトン甲殻類のうち、アルテミア・サリーナに対する本発明のコーティング用組成物の影響について調べた。
本発明のコーティング用組成物の影響を強くするため、海水量と塗装面積の関係は次の通りとした。試験の要領は、実施例3とほぼ同じである。
試験区1.(3cm×3cm)×3枚/30mL=900cm/L
試験区2. 1枚/100mL=90cm/L
試験区3. 1枚/300mL=30cm/L
対照区1. 0枚/30mL=0cm/L
対照区2. 0枚/100mL=0cm/L
対照区3. 0枚/300mL=0cm/L
結果を図1に示す。
【0043】
実施例4の結果より、本発明のコーティング用組成物は、海水中で動物性プランクトン甲殻類の孵化および生存に対して害を与えないことが明らかである。
【0044】
これらの試験結果より、本発明のコーティング用組成物は、海水中で優れた除菌効果を示すことが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明のコーティング用組成物は、バラストタンクなどの海水槽の内面にコーティングし、常温で硬化させると、他の海洋生物や人や動物に対し無害であると共に、優れた除菌効果および抑藻効果を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明のコーティング用組成物が海水中の動物性プランクトン甲殻類の孵化および生存に与える影響を調べた図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)チオ硫酸銀を銀換算で2〜6重量部、
(b)コロイド状の、白金および/またはパラジウムを固形分換算で0.002〜0.01重量部、
(c)担体を15〜40重量部、
(d)結合剤を固形分換算で15〜30重量部、ならびに
(e)水〔ただし、(a)+(b)+(c)+(d)+(e)=100重量部〕
を主成分とするコーティング用組成物。
【請求項2】
(c)担体が、シリカゲル、アルミノシリカゲル、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、ゼオライトおよびケイソウ土からなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項1記載のコーティング用組成物。
【請求項3】
(d)結合剤が、合成樹脂エマルジョン、水溶性合成樹脂、合成ゴムエマルジョンまたはこれらと水性シリケートの混合物からなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項1または2記載のコーティング用組成物。
【請求項4】
請求項1〜3いずれかに記載のコーティング用組成物を、海水槽の内面に塗布し、常温下で乾燥・硬化することを特徴とする海水用除菌膜の形成方法。


【図1】
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【公開番号】特開2007−23222(P2007−23222A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−210350(P2005−210350)
【出願日】平成17年7月20日(2005.7.20)
【出願人】(592250540)株式会社大島造船所 (32)
【Fターム(参考)】