説明

コーティング米及びその製造方法

【課題】品質管理を容易にすることができると共に、白飯としての外観を良好にすることができるコーティング米を得る。
【解決手段】本コーティング米では、白米粒の表面に付着されたコーティング剤が着色料(ビートレッド、図1参照)によって着色されている。このため、このコーティング剤に含まれた栄養成分が白色又は無色であっても、白米粒へのコーティング剤の付着状態を目視などにより容易に確認することができる。したがって、品質管理を容易にすることができる。しかも、このビートレッドは、炊飯時の熱で退色するため、炊飯後の白飯の外観を良好にすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米粒の表面に栄養成分などを付着させたコーティング米及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、洗浄後の精白米粒の表面にビタミン類などの栄養成分を付着させることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、上記栄養成分が白色又は無色の場合、白米粒に付着した程度が分からず、付着むらなどについての品質管理が困難になる。一方、上記栄養成分が有色の場合、付着むらなどについての品質管理は容易になるが、白米粒の表面が着色されてしまうため、炊飯後の白飯の外観が損なわれてしまう。
【特許文献1】特開平10−139675号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は上記事実を考慮し、品質管理を容易にすることができると共に、白飯としての外観を良好にすることができるコーティング米を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1に記載の発明に係るコーティング米は、白色又は無色の成分と炊飯時の熱で退色する着色料とを含有するコーティング剤を白米粒の表面に付着させてなることを特徴としている。
【0005】
請求項1に記載のコーティング米では、白米粒の表面に付着されたコーティング剤が着色料によって着色されている。このため、このコーティング剤に含まれた成分(例えば、栄養剤や健康促進剤など)が白色又は無色であっても、白米粒へのコーティング剤の付着状態を目視などにより容易に確認することができる。したがって、品質管理を容易にすることができる。しかも、この着色料は、炊飯時の熱で退色するため、炊飯後の白飯の外観を良好にすることができる。
【0006】
請求項2に記載の発明に係るコーティング米は、請求項1に記載のコーティング米において、前記着色料は、ビートの根から得られるベタニン及びイソベタニンを主成分とするビートレッドとされることを特徴としている。
【0007】
請求項2に記載のコーティング米では、着色料として、ビートの根から得られるベタニン及びイソベタニンを主成分とするビートレッドが用いられている。このビートレッドは、鮮明な赤色色素であるため、白米粒へのコーティング剤の付着状態を目視などにより良好に確認することができる。また、ビートレッドは、熱に対して不安定で、炊飯時の熱により退色するため、炊飯後の白飯の外観を良好にすることができる。
【0008】
請求項3に記載の発明に係るコーティング米の製造方法は、白色又は無色の成分と炊飯時の熱で退色する着色料とを含有するコーティング剤を製造し、当該コーティング剤を白米粒の表面に付着させることを特徴としている。
【0009】
請求項3に記載のコーティング米の製造方法では、白米粒の表面に付着させるコーティング剤が着色料によって着色されている。このため、このコーティング剤に含まれた成分(例えば、栄養剤や健康促進剤など)が白色又は無色であっても、白米粒へのコーティング剤の付着状態を目視などにより容易に確認することができる。したがって、品質管理を容易にすることができる。しかも、この着色料は、炊飯時の熱で退色するため、炊飯後の白飯の外観を良好にすることができる。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように、本発明に係るコーティング米では、品質管理を容易にすることができると共に、白飯としての外観を良好にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の実施形態に係るコーティング米は、白色又は無色の栄養成分と炊飯時の熱で退色する着色料とを含有するコーティング剤を白米粒の表面に付着させたものであり、主食としての白飯を摂取することで、必要な栄養素をとることができる強化米(付加価値米)である。
【0012】
〔栄養成分〕
栄養成分としては、ビタミン類や乳酸菌などの栄養成分(栄養剤や健康促進剤)のうち、白色又は無色のものが用いられる。例えば、乳酸菌としては、ニホン食品(株)社製のフェカリスEC−12などが用いられる。
【0013】
〔着色料〕
着色料としては、前記栄養成分と異なる色のものが用いられ、本実施形態では、ビートの根から得られるベタニン及びイソベタニンを主成分とするビートレッド(別名:アカビート色素)が用いられる。このビートレッドは、アカザ科ビート(Beta vulgaris LINNE)の赤い根より、搾汁したもの、または室温時、微温時に水、酸性水溶液もしくは含水エタノールで抽出して得られたものであり、その主色素は、ベタイン系のベタニン及びイソベタニンである。なお、図1には、ビートレッドの化学構造が化学式にて示されている。
【0014】
このビートレッドは、FAO/WHO合同食品添加物専門委員会(JECFA)で安全性が評価され、食品への着色料としてEU諸国その他の世界各国で広く使用されている。ビートレッドの性状としては、鮮明な赤色色素で、特にpH4〜7では色調変化が少ないが、pH9以上になると黄変する。アントシアニン系色素と異なり、蛋白含有食品でも色調は変化しない。また、水、希エタノールによく溶け、無水エタノール、アセトン、油脂に不溶。熱に対して不安定で100℃、30分の加熱でほとんど退色する。耐光性はよくないが、アスコルビン酸の添加で安定する。晒し粉、次亜塩素酸ナトリウムにより退色しやすく、鉄・銅イオンにより変色する。
【0015】
〔コーティング剤〕
コーティング剤(被覆剤)は、前記栄養成分に前記着色料(ビートレッド)を添加することで製造される。なお、ビタミン類や乳酸菌などの栄養成分及びビートレッドは、通常、粉末あるいは顆粒状で保存されるが、このような固体のままで両者を混合してもよいが、付着性とその安定性を向上させる観点からは、上記栄養成分及びビートレッドを水等の液体に溶解又は分散させて溶液にすることが好ましい。また、この溶液(コーティング剤)には、白米粒に対する付着性とその安定性を向上させる観点から、バインダーとなる成分を添加してもよい。バインダーとなる成分としては、コーンスターチなどのデンプン類やデキストリンなどの食用糊剤、食用増粘剤など、乾燥後に皮膜を形成しうるものが好ましくい。
【0016】
〔白米粒〕
米粒としては、精米処理後の精白米粒が用いられる。また、米を磨ぐことなくそのままたけるため、水洗いによる流失が少ないという観点からは、精白米を脱糠処理した無洗米を被加工用の白米粒として用いることが好ましい。
【0017】
無洗米とは、米を炊飯する際の水洗作業(いわゆる米を磨ぐ作業)が不要な米である。無洗米の製造方法としては、精白米を研磨して除糠する方法、精白米にでん粉・糖類のような除糠用の粘着性物質を添加後、これらを除去する方法、精白米を極短時間で水中搗精後、脱水・乾燥する方法などが挙げられる。本発明のコーティング米に用いられる白米粒は、上記のいずれの方法で得られたものでもよい。
【0018】
また、白米粒の表面にコーティング剤を付着させる方法には特に制限はなく、白米粒表面に液体状のコーティング剤を噴霧する方法や、液体状のコーティング剤に白米粒を浸漬する方法などの公知のいずれの方法により行われてもよい。
【0019】
以下に、具体的な付着方法の一例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0020】
以下の方法は、上述のコーティング剤のコーディングを均一とするために、コーティング剤の噴霧を、ドラム内で攪拌しながら行う方法である。
【0021】
まず、白色又は無色の栄養成分とビートレッドとを含有するコーティング剤(水溶液)を製造する。また、この方法では、以下に説明するコーティング装置を用いてコーティング剤のコーティングを行う。
【0022】
図2には、本発明の実施形態に係るコーティング米の製造に用いる米粒のコーティング装置の一態様が概略断面図にて示されている。
【0023】
この装置は、コーティングドラム1と振動コンベア式乾燥装置2とを備え、コーティングドラム1は、取付枠3上に取り付けられている。このコーティングドラム1は横筒回転式であり、一端側に供給部4が形成され、他端側に排出部5が形成されている。供給部4側と排出部5側の下部には夫々コロ6、7が設けられている。コーティングドラム1は、コロ6、7により支受されており、いずれか一方のコロ6、7をモーター8で回転させるか、またはベルトで回転させることによりコーティングドラム1が回転される。なお、本態様では、モーター8によってコロ7が回転される。
【0024】
コーティングドラム1の中心には、回転軸9が同心状に挿通されており、回転軸9の一端部には、受動プーリー10が固着されている。受動プーリー10の近傍には、モーター11が設けられており、モーター11の駆動プーリー12と受動プーリー10との間にベルト13が掛け回されている。なお、14、15は、回転軸9を支持する前後の軸受である。
【0025】
回転軸9の外周には、複数個の攪拌体16が所定の間隔を置いて取り付けられている。17は前記供給部4に米粒を供給する供給筒であり、供給筒17の上端部にはホッパー18が設けられている。また、供給筒17の下端部に設けられた供給口19は、供給部4にてコーティングドラム1内に挿入されて開口している。供給部4には、コーティング剤噴霧ノズル20が設けられている。このコーティング剤噴霧ノズル20は、前述の如く予め製造されたコーティング剤をコーティングドラム1内に向けて噴霧する。
【0026】
ここで、この装置では、モーター11が通電されると、駆動プーリー12、ベルト13、受動プーリー10を介して回転軸9が正転されて攪拌体16が正転する。また、モーター8が通電されると、コロ6、7を介してコーティングドラム1が正転する。なお、攪拌体16とコーティングドラム1はともに正転するが、攪拌体16の方がコーティングドラム1より僅かに早く正転する。
【0027】
また、モーター33が通電されると、偏心輪31を解して振動コンベア式乾燥装置2全体が振動する。さらに、ブロアー29及びヒーター30が通電されると、熱風が振動コンベア式乾燥装置2に供給される。なお、振動コンベア式乾燥装置2に供給された熱風は、供給筒26より吹き上がろうとするが、排出口24に設けられた風止弁25によって上記吹き上がりを阻止される。
【0028】
また、供給筒17には、モーター22によって回転される繰出弁21が設けられており、ホッパー18に白米粒が供給されると、白米粒は繰出弁21によって所定量ずつ繰込まれ、供給口19よりコーティングドラム1内に供給される。コーティングドラム1内に供給された白米粒は、前述の如く正転する攪拌体16によって攪拌され、徐々に排出部側へ移動する。このとき、コーティング剤噴霧ノズル20からコーティング剤の適量が噴霧されることで、白米粒の表面にはコーティング剤が均等に付着する。
【0029】
コーティング剤が付着した白米粒は、コーティングドラム1の排出口24より排出されて、振動コンベア式乾燥装置2内に至る。振動コンベア式乾燥装置2内では、偏心輪31の回転によって振動する多孔板28により白米粒が移送されると共に、ブロアー29及びヒーター30によって振動コンベア式乾燥装置2内に供給される熱風により白米粒が乾燥される。そして、乾燥されたコーティング剤付着コーティング米(栄養成分付着米)は、振動コンベア式乾燥装置2の取出口34から排出される。
【0030】
なお、コーティング剤の付着方法は上述のものに限らず、例えば、特開2004−321014号公報に記載のごとき方法や装置を用いて、多層フィルムコーティングを行うこともできる。
【0031】
すなわち、(1)白色又は無色の栄養成分とビートレッドとを含有するコーティング剤(水溶液)を製造する。(2)前記(1)のコーティング剤を、圧縮空気を使用して超微粒子にし、この超微粒子を二流体方式にて空中噴霧して浮遊落下させ、コーティング装置の回転ドラム内を回転移動する白米粒に付着させ、フィルムコーティングする。(3)前記(2)工程と同時に、前記回転ドラム内を回転移動する米粒を、乾燥用送風によって乾燥させる。この(1)〜(3)の工程を複数回繰り返す方法によっても本発明に係るコーティング米を製造することができる。
【0032】
なお、上述の「二流体方式」とは、圧縮空気とコーティング剤(水溶液)を混合し、空気圧力によってコーティング剤を分散させて噴霧する方式を意味する。したがって、白米粒の表面に均一の薄い膜を形成することが可能になる。このコーティング剤の空中噴霧は、複数の噴霧口を利用して行うことにより、コーティング装置の回転ドラム内を回転移動する白米粒に、効率的かつ満遍なくコーティング剤を付着させることができ、好適である。
【0033】
また、コーティング剤のコーティングは、浸漬によっても行うことができる。すなわち、コーティング剤(水溶液)中に、一定時間白米粒を浸漬し、その後、引き出して乾燥することでコーティング剤を白米粒に付着させることも可能である。この場合には、コーティング剤への浸漬中に米粒が膨潤するのを抑制するため、浸漬時間は、短時間、例えば、10秒間〜1分間程度にすることが好ましい。
【0034】
この方法においても、乾燥は、前述した噴霧コーティング方法において用いたのと同様の、振動コンベア式乾燥装置などを用いることが均一付着の観点から好ましい。
【0035】
なお、上記のいずれの方法においても、コーティング剤を付着させた後、乾燥する場合には、熱による白米粒の変質を抑制するため、常温以下の温度で、例えば、常温の流体を吹き付けるなどの方法により乾燥することが好ましい。
【0036】
また、乾燥は、振動コンベア式乾燥装置の他、回転ドラム内を回転移動する白米粒を乾燥用送風によって乾燥させる回転式乾燥装置を用いることができる。
【0037】
このように、振動や回転を行いながら、乾燥する方法をとることで、乾燥時間の短縮、白米粒表面の均一乾燥条件の達成、白米粒同士が付着するブロッキング現象の発生抑制ができるため好ましい。
【実施例】
【0038】
図2に示される米粒のコーティング装置を用いて、コーティング米を製造する。先ず、白色又は無色の栄養成分とビートレッドとを含有するコーティング剤(水溶液)を製造する。また、米粒としては、予め脱糠処理した無洗米を用いる。
【0039】
無洗米を図1の米粒コーティング装置のホッパー18へ供給すると、無洗米(白米粒)はモーター22で回転する繰出弁21で所定量ずつ繰込まれ、供給口19よりコーティングドラム1内に供給され攪拌体16で攪拌される。同時にコーティング剤噴霧ノズル20より前記コーティング剤の適量が噴霧され、無洗米の米粒表面にコーティング剤が付着される。コーティング剤が付着した無洗米は攪拌体16により攪拌されながら徐々に排出部5側に移送され、排出口24より排出されて振動コンベア式乾燥装置2内に至る。振動コンベア式乾燥装置2内では偏心輪31の回転によって振動する多孔板28により無洗米が移送されながら乾燥される。なお、乾燥は、25℃の温風を吹き付けることにより行われる。
【0040】
このようにして得られたコーティング米(栄養成分付着米)では、白米粒の表面に付着されたコーティング剤が着色料(ビートレッド)によって赤色に着色されている。このため、コーティング剤に含まれた栄養成分が白色又は無色であっても、白米粒へのコーティング剤の付着状態を目視などにより良好に確認することができる。したがって、付着むらなどについての品質管理を容易に行うことができる。しかも、ビートレッドは、熱に対して不安定で、炊飯時の熱により退色するため、炊飯後の白飯の外観を良好にすることができる。
【0041】
すなわち、本発明に係るコーティング米は、品質管理上は着色したいが、食する際には白い飯が良いという相反することを、炊飯時の熱で色が消える食品成分(ビートレッド)を用いて解決したものである。しかも、このビートレッドは、食品添加物としての安全性が高いため好適である。
【0042】
なお、上記実施形態では、着色料としてビートレッドを用いた場合について説明したが、本発明はこれに限らず、着色料は、炊飯時の熱で退色するものであればよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】ビートレッドの化学構造を示す化学式である。
【図2】本発明の実施形態に係るコーティング米の製造に用いる米粒のコーティング装置の一態様を示す概略断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
白色又は無色の成分と炊飯時の熱で退色する着色料とを含有するコーティング剤を白米粒の表面に付着させてなるコーティング米。
【請求項2】
前記着色料は、ビートの根から得られるベタニン及びイソベタニンを主成分とするビートレッドとされることを特徴とする請求項1に記載のコーティング米。
【請求項3】
白色又は無色の成分と炊飯時の熱で退色する着色料とを含有するコーティング剤を製造し、当該コーティング剤を白米粒の表面に付着させることを特徴とするコーティング米の製造方法。


【図1】
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【図2】
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