説明

コーティング組成物、その製造法及被覆物品

成分A、B及び適宜Cを含んでなるコーティング組成物。成分Aは1種以上のヒドロキシ末端ポリアリーレートからなる。成分Bは成分Aのヒドロキシ末端基と反応することができる有機種であり、成分Cは触媒又は触媒の混合物である。ヒドロキシ末端ポリアリーレートは溶液重合法によって製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアリーレートを含むコーティング組成物、ポリアリーレートの製造方法並びに本発明のコーティング組成物を用いて製造される被覆物品に関する。
【背景技術】
【0002】
現代の工業及び科学技術では、感受性の種々異なる基材を環境の有害な影響から遮蔽するために有機コーティングが多用される。かかるコーティングの多くは長期的な色不安定性による制約があり、換言すれば、有機コーティングの経時的な黄変にみられる限界がある。コーティング成分のポリマー成分に起因する黄変は、紫外線(UV)の作用によって起こることがある。ポリマー材料に基づく有機コーティングで頻繁にみられるもう一つの問題は、施工後のコーティングの化学薬品や溶媒に対する耐性が低いことである。強靱で、耐薬品性でしかも「耐候性」(すなわち日光その他の環境条件の影響に対して耐性)のコーティングが高く評価され、懸命に探し求められている。
【0003】
一般に、当技術分野で公知の商用コーティング組成物の性能における耐候性と靭性は両立しないことが観察されている。この問題の解決策の一つは、極めて強靱なエポキシとポリエステルを組み合わせて、耐候性の向上したコーティングを得ることである。同様に、良好な耐候性を示すが靭性に劣ることが知られているアクリレートをポリエステル樹脂と組み合わせて靭性が改良されている。また、ポリオキシメチレン樹脂と、靭性や衝撃強さを改良するための様々な添加剤とを含有する組成物も公知である。
【0004】
本発明では、良好な耐候性と耐薬品性が知られているある種のポリアリーレートが、優れた耐擦過性その他の特性を有する新規コーティング組成物の製造に有用であることが判明した。今日に至るまで、ヒドロキシ末端ポリアリーレート単位は界面重合法で製造されている。界面ポリアリーレート合成における近年の進歩にもかかわらず、かかる界面法は成長ポリアリーレート鎖の分子量を制御することができないという限界がある。通例、界面重合法では高分子量ポリアリーレートが得られるが、これはある種のコーティング用途には向かない材料であるおそれがある。
【特許文献1】米国特許第6291589号明細書
【特許文献2】米国特許第6294647号明細書
【特許文献3】米国特許第6306507号明細書
【特許文献4】米国特許第6538065号明細書
【特許文献5】米国特許第6559270号明細書
【特許文献6】米国特許第3460961号明細書
【特許文献7】米国特許第6610409号明細書
【非特許文献1】Journal of Polymer Science,Part A−1,Volume 9,pp.3263−3299,1971
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、広範な用途で様々なタイプの基材への塗工に適した耐擦過性、靭性、耐薬品性及び耐候性を示すコーティング組成物の開発が依然として求められている。また、レゾルシノール連鎖成分を含み、分子量の制御されたポリマーを製造するための合成方法に対するニーズもある。本発明は、上記その他の課題に対処したものであり、それらの極めて効率的な新規解決手段を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一つの態様では、本発明は、以下の成分A、B及び適宜Cを含んでなるコーティング組成物を提供する。
(i)次の式Iの構造単位とさらにフェノール性ヒドロキシル基とを含む1種以上のポリアリーレートを含む成分A
【0007】
【化1】

(式中、Rは各々独立にC〜C12アルキル基であり、nは0〜3である。)、
(ii)成分Aのポリアリーレートのフェノール性ヒドロキシ基と化学的に反応性の1以上の官能基を有する1種以上の「有機種」を含む成分B、及び
(iii)任意成分として、成分Aのポリアリーレートと成分Bの「有機種」との化学反応を促進する1種以上の触媒である成分C。
【0008】
別の態様では、本発明は、式Iの構造単位を含む1種以上のポリアリーレートを含んでなる粉末コーティングを提供する。さらに別の態様では、本発明は、式Iの構造単位を含んでなるポリアリーレートの製造方法を提供する。さらに別の態様では、本発明は、本発明のコーティング組成物から製造されたコーティング層を含む被覆物品を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の好ましい実施形態に関する以下の詳細な説明及びその後の実施例を参照すると本発明がより容易に理解されるであろう。以下の明細書及び特許請求の範囲においては幾つかの用語を参照するが、その意味は以下の通り定義される。
【0010】
単数形態は前後関係から明らかに他の意味を表さない限り複数形態も含む。
【0011】
「任意」又は「適宜」とは、その後に記載されている事象又は状況が起こってもよいし起こらなくてもよいことを意味し、その記載はその事象が起こる場合と起こらない場合とを含む。
【0012】
本明細書で用いる用語「脂肪族基」とは、1以上の原子価を有し、環状ではなくて線状又は枝分れ原子配列からなる基を指す。この配列は窒素、イオウ及び酸素のようなヘテロ原子を含んでいてもよいし、又は主として炭素及び水素から構成されていてもよい。脂肪族基の例としては、メチル、メチレン、エチル、エチレン、ヘキシル、ヘキサメチレン、メトキシ、エトキシ、チオメチル、チオエチルなどがある。
【0013】
本明細書で用いる用語「脂環式基」とは、1以上の原子価を有し、環状であるが芳香族ではなくさらに芳香環を含まない原子配列を含む基をいう。この配列は窒素、イオウ及び酸素のようなヘテロ原子を含んでいてもよいし、又は主として炭素及び水素から構成されていてもよい。脂環式基の例としては、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、2−シクロヘキシルエチ−1−イル、テトラヒドロフラニルなどがある。
【0014】
本明細書で用いる用語「芳香族基」とは、1以上の原子価を有し、1以上の芳香環を含む基をいう。芳香族基の例としては、フェニル、ピリジル、フラニル、チエニル、ナフチル、フェニレン、及びビフェニルがある。この用語は芳香族成分と脂肪族成分の両方を含有する基、例えばベンジル基、フェネチル基又はナフチルメチル基を包含する。また、この用語は、芳香族基と脂環式基を両方とも含む基、例えば4−シクロプロピルフェニル及び1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−イルも包含する。
【0015】
上述の通り、本発明は、成分A、B及び適宜Cを含んでなり、成分Aが式Iの構造単位を有する1種以上のヒドロキシ末端ポリアリーレートからなり、成分Bが成分Aのヒドロキシ末端基と反応することができる有機種であり、成分Cが触媒又は触媒の混合物である、コーティング組成物を提供する。
【0016】
通例、成分Aは、アリーレートポリエステル連鎖成分を含むヒドロキシ末端ポリアリーレートからなる。前記連鎖成分は1種以上のジヒドロキシ置換芳香族炭化水素部分を1種以上の芳香族ジカルボン酸部分と組み合わせて含んでいる。ある実施形態では、ジヒドロキシ置換芳香族炭化水素部分は、一般に本明細書を通してレゾルシノール又はレゾルシノール部分という下記式(II)の構造部分で例示される1,3−ジヒドロキシベンゼン部分から誘導される。式(II)で、Rは1種以上のC1−12アルキル又はハロゲンであり、nは0〜3である。本発明で使用する場合、レゾルシノール又はレゾルシノール部分とは、特に断らない限り、非置換1,3−ジヒドロキシベンゼンと置換1,3−ジヒドロキシベンゼンとの両方を包含するものと了解されたい。コーティング組成物中の式Iの成分Aの濃度はコーティング組成物の約1〜約99重量%である。一実施形態では、成分A中の式IIの構造単位の濃度はコーティング組成物の総重量の約0.01〜約50重量%である。もう1つ別の実施形態では、成分A中の式IIの構造単位の濃度はコーティング組成物の総重量の約0.1〜約20重量%である。さらに別の実施形態では、成分A中の構造単位IIの濃度はコーティング組成物の総重量の約0.1〜約10重量%である。
【0017】
【化2】

適切なジカルボン酸残基としては、イソフタル酸、テレフタル酸、若しくはイソフタル酸とテレフタル酸の混合物を始めとする単環式部分から、又は多環式部分から誘導された芳香族ジカルボン酸残基がある。様々な実施形態では、芳香族ジカルボン酸残基は、通例次の式(III)の構造部分で例示されるイソフタル酸とテレフタル酸の混合物から誘導されたものである。
【0018】
【化3】

従って、ある実施形態では、本発明は、通例式(I)(Rとnは既に定義した通り)の構造部分で例示されるレゾルシノール−アリーレートポリエステル連鎖成分を含むヒドロキシ末端ポリアリーレートを含むコーティング組成物を提供する。
【0019】
成分A中に存在するヒドロキシ末端ポリアリーレートは、ジヒドロキシ置換芳香族炭化水素と芳香族二酸クロライドとの界面反応を始めとする各種の方法で製造できる。かかる界面反応を実施してヒドロキシ末端ポリアリーレートを製造する方法は同時係属中の米国特許出願第120582号並びに米国特許第6306507号及び同第6294647号に開示されている。ヒドロキシ末端ポリアリーレートの界面製造中の反応パラメーターを注意深く制御することによって、かかるポリアリーレートでときに観察されることがある熱安定性が悪いという問題を克服することができる。
【0020】
通例、ヒドロキシ末端ポリアリーレートの分子量制御は達成するのが困難であることが判明している。連鎖停止剤がないと、界面製造されるヒドロキシ末端ポリアリーレートの分子量は化学量論的制御に対して比較的不感受性である。これは特に、ジヒドロキシ置換芳香族化合物及びその塩が界面反応混合物の有機相を形成する溶媒に対して極めて不溶性である場合に当て嵌まる。ポリアリーレートの分子量を制御するための先の試みにより、使用するジヒドロキシ置換芳香族化合物の二酸クロライドに対するモル比を増大することによって、またジヒドロキシ置換芳香族化合物と二酸クロライドの界面反応において存在する水の量を低下することによって、末端封鎖剤を使用することなくヒドロキシ末端ポリアリーレートの分子量を高度に制御することが可能であることが発見された。ヒドロキシ末端ポリアリーレートの分子量が制御できないと、ポリアリーレートオリゴマーと比べてより高分子量のポリアリーレートのより高いガラス転移温度(Tg)及びより低いヒドロキシル末端基濃度に起因して、コーティング配合物の製造におけるヒドロキシ末端ポリアリーレートの有用性が制限される。
【0021】
本発明において、有機反応体に関して本質的に均質な反応媒質中でヒドロキシ末端ポリアリーレートを製造するとそのポリアリーレートの分子量を申し分なく制御することができるということが発見された。従って、一つの態様では、本発明は、1種以上のジヒドロキシ置換芳香族炭化水素部分と1種以上のジカルボン酸部分との反応を有機反応体に関して本質的に均質な条件下で実施するプロセスで殆ど任意の分子量を有するポリアリーレートを製造する方法を提供する。
【0022】
本明細書に開示した新規方法は、広範に変化する構造単位を有する高分子量と低分子量の両方の広範囲のヒドロキシ置換ポリアリーレートを製造するのに使用することができる。「高分子量」とは、そのポリアリーレートが、ポリスチレン(PS)分子量標準を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定して15000g/モルを越える重量平均分子量(Mw)を有することを意味する。「低分子量」とは、そのポリアリーレートが、ポリスチレン(PS)分子量標準を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定して15000g/モル以下の重量平均分子量を有することを意味する。本開示の目的から、用語「ポリアリーレートオリゴマー」と「低分子量ポリアリーレート」とは互換的に使用する。
【0023】
本発明の方法に従ってヒドロキシ末端ポリアリーレートを製造するのに使用する新規方法は、反応混合物中で、1種以上のジヒドロキシ置換芳香族部分、1種以上の有機塩基、及び1種以上のジカルボン酸ジクロライド(便宜上「二酸クロライド」という)を、1種以上の不活性有機溶媒中で接触させることを含む。
【0024】
本発明の一実施形態では、プロセス全体が複数の個別の工程の形態をとる。すなわち、最初の工程では、1種以上の不活性有機溶媒中で1種以上のジヒドロキシ置換芳香族炭化水素部分を1種以上の有機塩基と混合して混合物を形成する。通例、ジヒドロキシ置換芳香族炭化水素部分、有機塩基、及び不活性有機溶媒からなるこの混合物は実質的に均質である。ジヒドロキシ置換芳香族炭化水素部分、有機塩基、及び不活性有機溶媒により形成される混合物に関して、「実質的に均質」とは、ジヒドロキシ置換芳香族炭化水素部分の約50パーセント以上、好ましくは約75パーセント以上、さらにより好ましくは約90パーセント以上が有機溶媒に溶解していることを意味する。
【0025】
ヒドロキシ末端ポリアリーレートを製造するのに適切なジヒドロキシ置換芳香族炭化水素としては、次の式(IV)で表されるものがある。
【0026】
【化4】

式中、Dは二価芳香族基である。幾つかの実施形態では、Dは次の式(V)の構造を有する。
【0027】
【化5】

式中、各Aは独立にフェニレン、ビフェニレン、ナフチレンなどのような芳香族基を表す。Eはメチレン、エチレン、エチリデン、プロピレン、プロピリデン、イソプロピリデン、ブチレン、ブチリデン、イソブチリデン、アミレン、アミリデン、イソアミリデンなどのようなアルキレン又はアルキリデン基であり得る。Eがアルキレン又はアルキリデン基である場合、芳香族結合、第三アミノ結合、エーテル結合、カルボニル結合、含ケイ素結合、又は含イオウ結合(例えば、スルフィド、スルホキシド、スルホンなど)、又は含リン結合(例えば、ホスフィニル、ホスホニルなど)のような、アルキレン又はアルキリデンと異なる部分により連結された2以上のアルキレン又はアルキリデン基からなっていてもよい。加えて、Eは脂環式基(例えば、シクロペンチリデン、シクロヘキシリデン、3,3,5−トリメチルシクロヘキシリデン、メチルシクロヘキシリデン、2−[2.2.1]−ビシクロヘプチリデン、ネオペンチリデン、シクロペンタデシリデン、シクロドデシリデン、アダマンチリデンなど)、含イオウ結合(例えば、スルフィド、スルホキシド又はスルホン)、含リン結合(例えば、ホスフィニル、ホスホニル)、エーテル結合、カルボニル基、第三窒素基、又は含ケイ素結合(例えば、シラン又はシロキシ)であってもよい。Rは各々独立にアルキル、アリール、アラルキル、アルカリール、又はシクロアルキルのような一価炭化水素基である。Yは各々独立にハロゲン(フッ素、臭素、塩素、ヨウ素)のような無機原子、ニトロのような無機基、アルケニル、アリル、若しくは上記Rのような有機基、又はORのようなオキシ基である。文字「m」は0からA上の置換可能な部位の数までの整数を表し、「p」は0からE上の置換可能な部位の数までの整数を表し、「t」は1以上の整数を表し、「s」は0又は1であり、「u」は0を含む整数を表す。
【0028】
Dが上記式(V)で表されるジヒドロキシ置換芳香族炭化水素化合物において、1より多くのY置換基が存在する場合、それらは同じであっても異なっていてもよい。同じことがR置換基にも当てはまる。式(V)で「s」が0であり、「u」が0でない場合、芳香族基Aはアルキリデンその他の橋架けを介在することなく直接結合する。炭化水素残基の2以上の環炭素原子がY及びヒドロキシル基で置換されている場合、芳香族基A上のヒドロキシル基及びYの位置はヒドロキシ基の位置(図Vには示されていないが破線で示されている)に対してオルト、メタ、又はパラ位で変化することができ、それらの配置は隣接、非対称又は対称の関係であることができる。幾つかの特定の実施形態では、パラメーター「t」、「s」、及び「u」は各々1であり、両方の芳香族基Aが非置換フェニレン基であり、Eがイソプロピリデンのようなアルキリデン基である。幾つかの特定の実施形態では、両方の芳香族基Aがp−フェニレンであるが、両方がo−若しくはm−フェニレンであってもよく、又は一方がo−若しくはm−フェニレンであって他方がp−フェニレンであってもよい。
【0029】
式(V)で表されるジヒドロキシ置換芳香族炭化水素の幾つかの具体的な非限定例としては、名称又は式(一般又は個々)によって米国特許第4217438号に開示されているジヒドロキシ置換芳香族炭化水素がある。ジヒドロキシ置換芳香族炭化水素の幾つかの特定の例としては、4,4′−(3,3,5−トリメチルシクロヘキシリデン)ジフェノール、4,4′−ビス(3,5−ジメチル)ジフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,4′−ジヒドロキシジフェニルメタン、ビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−5−ニトロフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,6−ジメチル−3−メトキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−2−クロロフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(一般にビスフェノールAといわれる)、2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−イソプロピルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、3,5,3′,5′−テトラクロロ−4,4′−ジヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルプロパン、2,4′−ジヒドロキシフェニルスルホン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ヒドロキノン、レゾルシノール、及びC1−12アルキル置換レゾルシノールがある。
【0030】
本発明の様々な実施形態で使用する場合、用語「アルキル」は、直鎖状アルキル、枝分れアルキル、アラルキル、シクロアルキル、及びビシクロアルキル基を指すことを意図したものである。様々な実施形態では、直鎖状及び枝分れアルキル基は1〜約12個の炭素原子を含有するものであり、具体的な非限定例として、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、第三−ブチル、ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル及びドデシルがある。様々な実施形態では、シクロアルキル基は3〜約12個の環炭素原子を含有するものである。これらのシクロアルキル基の幾つかの具体的な非限定例としては、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロヘキシル、及びシクロヘプチルがある。様々な実施形態では、アラルキル基は7〜約14個の炭素原子を含有するものであり、これらには、特に限定されないが、ベンジル、フェニルブチル、フェニルプロピル、及びフェニルエチルがある。様々な実施形態では、本発明の様々な実施形態で使用するアリール基は6〜18個の環炭素原子を含有するものである。これらのアリール基の幾つかの具体的な非限定例としては、フェニル、ビフェニル、及びナフチルがある。
【0031】
本発明の一実施形態では、ジヒドロキシ置換芳香族炭化水素は次の式VIのレゾルシノール部分である。
【0032】
【化6】

式中、Rとnは構造IIと同様に定義される。
【0033】
存在する場合、アルキル基は、直鎖又は枝分れアルキル基であるのが好ましく、両方の酸素原子に対して「オルト」位に位置することが最も多いが、他の環位置も考えられる。適切なC1−12アルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、ブチル、イソ−ブチル、t−ブチル、ノニル、及びデシルがあり、メチルが特に好ましい。適切なハロゲン基はブロモ、クロロ、及びフルオロ基である。nの値は0〜3でよく、好ましくは0〜2、より好ましくは0〜1である。好ましいレゾルシノール部分は2−メチルレゾルシノールである。最も好ましいレゾルシノール部分はnが0である非置換レゾルシノール部分である。
【0034】
有機塩基はジヒドロキシ置換芳香族部分を可溶化すると同時にジヒドロキシ置換芳香族部分とジカルボン酸ジクロライドとの重合反応を促進するという両方の機能を果たす。有機塩基はジヒドロキシ置換芳香族部分に対して約0.9〜約10、好ましくは約0.9〜2.5当量に相当する量で存在し得る。適切な有機塩基は第三有機アミンからなる。
【0035】
適切な第三有機アミンはトリエチルアミン、N,N−ジメチル−N−ブチルアミン、N,N−ジイソプロピル−N−エチルアミン、N,N−ジエチル−N−メチルアミン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン及びこれらの混合物で例示される。適切な第三アミンの追加の例としては、N−エチルピロリジンのようなC〜CN−アルキルピロリジン、N−エチルピペリジン、N−メチルピペリジン、及びN−イソプロピルピペリジンのようなC〜CN−アルキルピペリジン、N−メチルモルホリン及びN−イソプロピルモルホリンのようなC〜CN−アルキルモルホリン、C〜CN−アルキルジヒドロインドール、C〜CN−アルキルジヒドロイソインドール、C〜CN−アルキルテトラヒドロキノリン、C〜CN−アルキルテトラヒドロイソキノリン、C〜CN−アルキルベンゾモルホリン、1−アザビシクロ−[3.3.0]−オクタン、キヌクリジン、C〜CN−アルキル−2−アザビシクロ[2.2.1]オクタン、C〜CN−アルキル−2−アザビシクロ[3.3.1]ノナン、並びにC〜CN−アルキル−3−アザビシクロ[3.3.1]ノナン、N,N,N′,N′−テトラエチル−1,6−ヘキサンジアミンのようなN,N,N′,N′−テトラアルキルアルキレンジアミンがある。特に好ましい第三アミンはトリエチルアミン及びN−エチルピペリジンである。
【0036】
また、ジヒドロキシ置換芳香族部分を可溶化すると同時にジヒドロキシ置換芳香族部分とジカルボン酸ジクロライドとの重合反応を促進するために添加し得る追加の作用物質として、第四アンモニウム塩、第四ホスホニウム塩及びこれらの混合物がある。
【0037】
適切な第四アンモニウム塩として、臭化テトラエチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラプロピルアンモニウム、塩化テトラプロピルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム、塩化メチルトリブチルアンモニウム、塩化ベンジルトリブチルアンモニウム、塩化ベンジルトリエチルアンモニウム、塩化ベンジルトリメチルアンモニウム、塩化トリオクチルメチルアンモニウム、塩化セチルジメチルベンジルアンモニウム、臭化オクチルトリエチルアンモニウム、臭化デシルトリエチルアンモニウム、臭化ラウリルトリエチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリエチルアンモニウム、塩化N−ラウリルピリジニウム、臭化N−ラウリルピリジニウム、臭化N−ヘプチルピリジニウム、塩化トリカプリリルアンモニウム(ときにALIQUAT 336といわれることがある)、塩化メチルトリ−C〜C10−アルキル−アンモニウム(ときにADOGEN 464といわれることがある)、並びに米国特許第5821322号に開示されているようなN,N,N′,N′,N′−ペンタアルキル−α,ω−ジアンモニウム塩がある。
【0038】
適切な第四ホスホニウム塩は臭化テトラブチルホスホニウム、塩化ベンジルトリフェニルホスホニウム、臭化トリエチルオクタデシルホスホニウム、臭化テトラフェニルホスホニウム、臭化トリフェニルメチルホスホニウム、臭化トリオクチルエチルホスホニウム、及び臭化セチルトリエチルホスホニウムで例示される。
【0039】
本発明の方法に従ってヒドロキシ末端ポリアリーレートを製造するのに使用される適切な不活性有機溶媒としては、ハロゲン化脂肪族溶媒、ハロゲン化芳香族溶媒、脂肪族ケトン溶媒、脂肪族エステル溶媒、脂肪族エーテル溶媒、芳香族エーテル溶媒、脂肪族アミド溶媒、脂肪族炭化水素溶媒、及び芳香族炭化水素溶媒がある。これらの不活性有機溶媒は単独で使用してもよいし、又は溶媒の混合物として使用してもよい。ハロゲン化脂肪族溶媒はジクロロメタン、クロロホルム、トリクロロエチレン、テトラクロロエタン、1,2−ジクロロエタンなどで例示される。ハロゲン化芳香族溶媒はクロロベンゼン、オルト−ジクロロベンゼン、フルオロベンゼン、クロロトルエン、クロロキシレン、クロロナフタレンなどで例示される。脂肪族ケトン溶媒はアセトン、2−ブタノン、シクロヘキサノン、ジヒドロイソホロン、ジヒドロホロンなどで例示される。脂肪族エステル溶媒は酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピルなどで例示される。脂肪族エーテル溶媒はジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどで例示される。芳香族エーテル溶媒はアニソール、ジフェニルエーテルなどで例示される。脂肪族アミド溶媒はN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリジノンなどで例示される。脂肪族炭化水素溶媒はヘキサン、シクロヘキサン、イソオクタンなどで例示される。芳香族炭化水素溶媒はトルエン、キシレン、エチルベンゼンなどで例示される。殊に好ましい溶媒はジクロロメタンである。
【0040】
本発明に従ってヒドロキシ末端ポリアリーレートを製造するのに使用する方法の第2の工程では、最初の工程で形成された1種以上のジヒドロキシ置換芳香族炭化水素部分、1種以上の有機塩基、及び1種以上の不活性有機溶媒からなる混合物に1種以上のジカルボン酸ジクロライド(二酸クロライド)を添加する。1種以上の二酸クロライドは、混合物中の二酸クロライドのモル量がジヒドロキシ置換芳香族炭化水素部分の総モル量に対して化学量論的に不足するモル量で添加して反応混合物を形成する。
【0041】
通例、添加される二酸クロライドは主として芳香族二酸クロライドであるが、脂肪族二酸クロライドも使用できる。適切な芳香族二酸クロライドは単環式二酸クロライド、例えばイソフタロイルジクロリド、テレフタロイルジクロリド、及びイソフタロイルジクロリドとテレフタロイルジクロリドの混合物で代表される。適切な多環式二酸クロライドとしては、ジフェニルジカルボン酸ジクロライド、ジフェニルエーテルジカルボン酸ジクロライド及びナフタレンジカルボン酸ジクロライドがある。ナフタレン−2,6−ジカルボン酸ジクロライドが好ましい多環式二酸クロライドである。上述の通り、様々な二酸クロライドの混合物、例えば単環式と多環式の芳香族ジカルボン酸ジクロライドの混合物を使用してもよい。一実施形態では、ジカルボン酸ジクロライドはイソフタロイルジクロリドとテレフタロイルジクロリドの混合物からなる。イソフタロイルジクロリドとテレフタロイルジクロリドの混合物の使用は次の式VIIで好都合に表される。
【0042】
【化7】

式VIIは単に、イソフタロイルジクロリドとテレフタロイルジクロリドのいずれか又は両者が存在し得ることを示していることに注意されたい。好ましい実施形態では、ジカルボン酸ジクロライドは、イソフタロイルジクロリド対テレフタロイルジクロリドのモル比が約0.2〜5:1、好ましくは約0.8〜2.5:1のイソフタロイルジクロリドとテレフタロイルジクロリドの混合物からなる。
【0043】
一実施形態では、本発明は、ヒドロキシ置換ポリアリーレートを製造するための新規方法を提供し、ここで、前記ヒドロキシ末端ポリアリーレートは構造IVを有する1種以上のジオールと1種以上の芳香族二酸クロライドから誘導された構造単位を含んでおり、前記ヒドロキシ置換ポリアリーレートはさらに脂肪族ジカルボン酸及び/又は脂肪族ジオールから誘導された構造単位(「連鎖成分」)を含む。脂肪族ジカルボン酸及び/又は脂肪族ジオールから誘導された構造単位は本明細書中で「ソフトブロック」セグメントという。
【0044】
本明細書中で使用する場合、用語ソフトブロックとは、これらの特定のポリマーの幾つかのセグメントが非芳香族モノマー単位から作成されていることを示す。かかる非芳香族モノマー単位は一般に脂肪族であり、ソフトブロック含有ポリマーに柔軟性を付与することが知られている。一実施形態では、ヒドロキシ末端ポリアリーレートは本発明の方法を使用して製造することができ、前記ヒドロキシ末端ポリアリーレートは式(II)、(III)、及び(VIII)で表される構造単位を含む。
【0045】
【化8】

式中、RはC〜C100脂肪族基又はC〜C20脂環式基であり、RとRは各々独立に結合、又は次式の基を表す。
【0046】
【化9】

式中、示した2つの構造のうち最初(左)のものは結合形成のための2つの開放位置を有するカルボニル基を表し、2つの構造のうちの第2(右)のものは結合形成のための2つの開放位置を有するオキシメチレン基を表す。様々な実施形態では、RはC2−20直鎖アルキレン基、C3−10枝分れアルキレン基、C4−10シクロアルキレン基、又はC〜C20ビシクロアルキレン基である。さらに他の実施形態では、RがC3−10直鎖アルキレン又はCシクロアルキレンを表す組成物を提供する。一実施形態では、Rは次の式(IX)の構造単位からなる。
【0047】
【化10】

さらに別の実施形態では、Rは次の式(X)の構造単位からなる。
【0048】
【化11】

ソフトブロック連鎖成分を含有するヒドロキシ末端ポリアリーレートの様々な実施形態では、式(II)中のnは0である。ポリアリーレート鎖中のソフトブロック単位の濃度は、ヒドロキシ末端ポリアリーレートの総重量の約0.01〜約50%、より好ましくは約0.1〜約20%、最も好ましくは約0.1〜約10重量%である。
【0049】
通例、ジカルボン酸ジクロライドを反応混合物に添加したら、その反応混合物を不活性雰囲気下で、反応が完了し、全てのジカルボン酸ジクロライドが反応するまで撹拌する。一実施形態では、窒素ガスを反応器内に導入して不活性雰囲気を提供することができる。
【0050】
通例、溶液重合プロセスの後続の工程で、反応混合物を無機酸、例えば塩酸で奪活する。次に、有機層を水で数回洗浄し、生成物のヒドロキシ末端ポリアリーレートを「逆溶媒」(例えばメタノール)で沈殿させることにより単離してもよいし、又は水蒸気蒸留その他常用の手段により不活性溶媒を除去してもよい。生成物のヒドロキシ末端ポリアリーレートをより信頼性良く特徴付けるためには、通例高温において24時間程度の時間真空下で乾燥した後にNMRのような技術で分析する。
【0051】
上記方法を用いて製造したポリアリーレート生成物はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)及び示差走査熱量測定(DSC)によって特徴付けることができる。分子量はg/モル単位で数平均(M)分子量又は重量平均分子量(Mw)として表し、ポリスチレン(PS)分子量標準を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で決定したものである。分子量は、核磁気共鳴(NMR)によって求めることもできる。本発明の溶液重合法で製造したポリアリーレートの数平均分子量は通例約500〜約55000g/モルである。一実施形態では、本発明のコーティング組成物は、約500〜約5000g/モルの数平均分子量を有するヒドロキシ末端ポリアリーレートを含む。もう1つ別の実施形態では、本発明のコーティング組成物は、約2000〜約5000g/モルの数平均分子量を有するヒドロキシ末端ポリアリーレートを含む。さらに別の実施形態では、本発明のコーティング組成物は、約500〜約2500g/モルの数平均分子量を有するヒドロキシ末端ポリアリーレートを含む。通例、コーティング組成物を作成するのに使用するポリアリーレートオリゴマーのMの好ましい範囲は約500〜約5000g/モルである。
【0052】
ポリアリーレートオリゴマーのガラス転移温度(Tg)は示差走査熱量測定(DSC)で測定したものである。
【0053】
上述の通り、主な態様では、本発明は、成分A、B及び適宜Cを含んでなり、成分Aが式Iの構造単位を有する1種以上のヒドロキシ末端ポリアリーレートからなり、成分Bが成分Aのヒドロキシ末端基と反応することができる有機種であり、成分Cが成分AとBの反応を促進する触媒又は触媒の混合物であるコーティング組成物を提供する。成分Bは同じであっても異なっていてもよい1以上の官能基を有する1種以上の有機種からなり、この官能基は成分Aのポリアリーレートのフェノール性ヒドロキシ基と化学的に反応性である。成分Aのポリアリーレートの末端ヒドロキシ基と反応することができるあらゆる官能基を使用することができるが、成分Bの官能基は通例、イソシアネート、無水物、エポキシド、酸クロライド、カルボン酸、活性化カルボン酸エステル、塩化スルホニル、アミダール及びアミナールからなる群から選択される。一実施形態では、成分Bは1種以上のメラミン型樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂又はこれらの組合せからなる。代わりの実施形態では、成分Bは脂肪族ポリイソシアネートからなる。一実施形態では、成分BはIPDI−トリマー(イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート、商業上VESTANAT T 1890として知られている)からなる。もう1つ別の実施形態では、成分Bはエポキシ樹脂前駆体であるポリグリシジルからなる。一実施形態では、成分BはBPAジグリシジルエーテル(商業上EPON樹脂2002として知られている)からなる。通例、本発明のコーティング組成物中の成分Bの濃度はコーティング組成物の総重量の約1〜約99重量%である。
【0054】
上述の通り、コーティング組成物は、存在する場合成分Aと成分Bとの反応を促進する触媒として、成分Cを含んでいてもよく、すなわち、成分Cの存否は任意である。通例、触媒は第三アミン、第四アンモニウム塩、第四ホスホニウム塩、ルイス酸及びこれらの混合物からなる群から選択される。通例、成分Cは、コーティング組成物の総重量の約0.00001〜約10重量%に相当する量で存在する。一実施形態では、臭化ベンジルトリメチルアンモニウム(BTMAB)を触媒として使用するとよい。
【0055】
本発明のコーティング組成物は1種以上の補助樹脂を含んでいてもよい。用語「補助樹脂」は、この補助樹脂は、通例コーティングの形成に使用される条件下で成分Aのヒドロキシ基と反応することができる官能基を保有していないので成分Bの「有機種」に属する材料の部類に入らないポリマー種を意味して使用される。この補助樹脂は本明細書で定義される高分子量又は低分子量を有し得る。補助樹脂として使用するのに殊に適したポリマーとしては、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンエーテル、付加ポリマーなどがある。ポリエステルは、ポリ(アルキレンアレーンジオエート)、殊にポリ(エチレンテレフタレート)(以後「PET」ということがある)、ポリ(1,4−ブチレンテレフタレート)(以後「PBT」ということがある)、ポリ(トリメチレンテレフタレート)(以後「PTT」ということがある)、ポリ(エチレンナフタレート)(以後「PEN」ということがある)、ポリ(ブチレンナフタレート)(以後「PBN」ということがある)、ポリ(シクロヘキサンジメタルールテレフタレート)、ポリ(シクロヘキサンジメタノール−コ−エチレンテレフタレート)(以後「PETG」ということがある)、及びポリ(1,4−シクロヘキサンジメチル−1,4−シクロヘキサンジカルボキシレート)(以後「PCCD」ということがある)で例示される。ポリ(アルキレンアレーンジオエート)、ポリ(エチレンテレフタレート)及びポリ(1,4−ブチレンテレフタレート)はある種のコーティング用途で殊に好ましい。適切な付加ポリマーとしては、ホモポリマー及びコポリマーがあり、殊にシンジオタクチックポリスチレンを始めとするポリスチレンのようなアルケニル芳香族化合物のホモポリマー、並びにアクリロニトリル及びメタクリロニトリルのようなエチレン性不飽和ニトリル、ブタジエン及びイソプレンのようなジエン、及び/又はアクリル酸エチルのようなアクリルモノマーとアルケニル芳香族化合物とのコポリマーがある。これら後者のコポリマーとしては、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)及びASA(アクリロニトリル−スチレン−アクリル酸アルキル)コポリマーがある。本発明で使用する付加ポリマーとしては、ポリアクリレートホモポリマー及びメタクリレート由来の構造単位を含むポリマーを始めとするコポリマーがある。
【0056】
本明細書に開示したコーティング組成物は、さらに、有機及び無機顔料、染料、衝撃改良剤、UVブロック、ヒンダードアミン光安定剤、脱泡剤、腐食防止剤、表面張力改変剤、難燃剤、有機及び無機充填材、安定剤並びに流動助剤を始めとして業界で認められている添加剤を含んでいてもよい。
【0057】
本明細書に開示したコーティング組成物は幾つかの経路により製造することができる。幾つかの実施形態では、コーティング組成物は有機溶媒基剤又は水基剤を用いて製造することができる。また、コーティング組成物は、実質的に無溶媒の経路で、例えば、粉末コーティングの形態で製造してもよい。
【0058】
式Iのポリアリーレートを含む溶媒基剤のコーティング組成物は溶液塗装とその後の蒸発によって製造できる。溶媒基剤のコーティング配合物は溶媒キャスティング用の適切な溶媒中で調製し溶解することができる。通例、ジメチルアセトアミド及びテトラヒドロフラン又はこれらの混合物が好ましい溶媒である。しかし、アミド(ジメチルホルムアミド、メチルピロリドンなど)、エステル(酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、ケトン(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソ−ブチルケトンなど)、アルコール(メタノール、エタノールなど)、芳香族(トルエン、キシレンなど)、ハロゲン化溶媒(ジクロロメタン、クロロホルムなど)及びこれらの混合物のような他の共溶媒も使用できる。溶媒キャスティング用のコーティング組成物の溶液は基材上へのフィルムキャスティングに先立って十分に混合するべきである。水性コーティング組成物は前記コーティング組成物を水相に分散させたものである。
【0059】
式Iの構造単位をもつ1種以上のポリアリーレートを含む粉末コーティング組成物は、式Iの構造単位をもつポリアリーレートがポリアリーレートオリゴマーであるとき粉末塗装に使用するのに特に有利な物理的性質をもっている。上述の通り、本発明の1つの態様を形成する本明細書に開示した新規合成法を用いると、低分子量オリゴマーから高分子量ポリマーまで殆どあらゆる分子量を有するポリアリーレートを製造することができる。本明細書中で上に詳細に記載したこの新規プロセスを用いて、幾つかの場合には結晶質のポリアリーレートオリゴマーであるポリアリーレートオリゴマーを製造することができる点に注意されたい。この点に関し、ポリアリーレートオリゴマーを含む乾燥粉末コーティング配合物の性能は、ポリアリーレートが結晶形態より非晶質形態であるときに高めることができる。従って、一実施形態では、結晶質ポリアリーレートオリゴマーを、本発明のコーティング組成物に使用するために非晶質形態に変換する。一実施形態では、結晶質を抑制するために、結晶質のポリアリーレートオリゴマーを押出機で溶融押出することにより、非晶質形態のポリアリーレートオリゴマーを生成させる。
【0060】
通例、粉末コーティング組成物の成分をドライブレンド用の粉末に粉砕し、ドライブレンドしてブレンドを生成する。ドライブレンド後、そのブレンドを押し出し、粉砕し、篩にかけて粉末コーティング配合物を製造する。この配合物は、コートしようとする基材上に静電電着してコートされた基材を製造することができる。また、コーティング配合物を「溶媒キャストする」、又は水中分散液として基材に塗布してコートされた基材を製造してもよい。このコートされた基材はその後特定の温度で一定時間硬化させることができ、又はコートされた基材を、温度、時間などのような硬化条件が硬化プロセス中に変化する「硬化プロフィール」における硬化に供することができる。このコーティングが示す特性は硬化条件に依存する。最適の硬化温度及び時間範囲は本明細書に開示した条件を用いて決定することができ、又は、硬化条件は適度な数の異なる硬化条件を選別することによって到達することができる。
【0061】
本明細書に開示したコーティング配合物は、耐擦過性、耐薬品性、硬さ、靭性及び耐候性を始めとして傑出した物理的性質を有する。本明細書に開示したコーティング組成物を用いて製造されたコーティングの耐薬品性、硬さ、靭性及び耐候性は、多くの場合、公知のコーティング配合物を用いて製造されたコーティングより秀でている。一つの態様では、本発明のコーティング組成物から製造されたコーティングは高まった光安定性を示す。すなわち、UV光に曝露されたとき、本コーティングのポリアリーレート成分は光フリース反応を受けて、さらなる光化学反応及び劣化からコーティングを保護するのに役立つヒドロキシベンゾフェノン構造単位を生成する。このヒドロキシベンゾフェノン光生成物は「近UV」範囲のスペクトルの光を効果的に吸収し、その結果高まった光安定性がコーティングに付与される。このようにして、本発明のコーティング組成物を用いて製造したコーティングは、高まったより堅牢な耐候性と増大した靭性を示すコーティングを生成すると考えられる。
【0062】
もう1つ別の実施形態では、本発明は、1種以上の熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマー、セルロース材料、ガラス、セラミック又は金属からなる基材層と、基材上の1以上のコーティング層とを含んでなる被覆物品からなり、ここで、前記コーティング層は本発明のコーティング組成物を用いて製造されたものであり、前記コーティング層は式Iの構造単位を含む。適宜、被覆物品は、さらに、中間層、例えば接着剤中間層を、いずれかの基材層といずれかの熱的に安定なポリマーコーティング層との間に含んでいてもよい。本発明の被覆物品としては、特に限定されないが、基材層とポリアリーレートオリゴマーを含むコーティング層とからなるもの、基材層と、この基材層の両面上のポリアリーレートオリゴマーを含むコーティング層とからなるもの、及び、基材層と、ポリアリーレートオリゴマーを含む1以上のコーティング層と、基材層とコーティング層との間の1以上の中間層とからなるものがある。
【0063】
本発明のコーティング組成物を用いて製造される被覆物品は、通例、傑出した初期光沢、改良された初期着色、耐候性、衝撃強さ、及びその最終用途で遭遇する有機溶媒に対する耐性を有する。
【0064】
本発明の物品中の基材層の材料は付加又は縮合で製造された1種以上の熱可塑性ポリマーであり得る。縮合ポリマーとしては、特に限定されないが、ポリカーボネート、特に芳香族ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルイミド、ポリエステル(以下で定義されるように、コーティング層に使用するもの以外のもの)、及びポリアミドがある。ポリカーボネート及びポリエステルが好ましいことが多い。
【0065】
ポリエステル基材としては、特に限定されないが、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(1,4−ブチレンテレフタレート)、ポリ(トリメチレンテレフタレート)、ポリ(エチレンナフタレート)、ポリ(ブチレンナフタレート)、ポリ(シクロヘキサンジメタルールテレフタレート)、ポリ(シクロヘキサンジメタノール−コ−エチレンテレフタレート)、及びポリ(1,4−シクロヘキサンジメチル−1,4−シクロヘキサンジカルボキシレート)がある。
【0066】
適切な付加ポリマー基材としては、脂肪族オレフィンホモポリマー/コポリマー及び官能化オレフィンポリマー、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(塩化ビニル−コ−塩化ビニリデン)、ポリ(フッ化ビニル)、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルブチラール)、ポリ(アクリロニトリル)、アクリルポリマー、例えば、(メタ)アクリルアミドのポリマー、又はアルキル(メタ)アクリレートのポリマー、例えばポリ(メチルメタクリレート)(「PMMA」)、並びにアルケニル芳香族化合物のポリマー、例えばポリスチレン、例えばシンジオタクチックポリスチレンがある。多くの目的に好ましい付加ポリマーはポリスチレン、殊にいわゆるABS及びASAコポリマーであり、これらはそれぞれブタジエン及びアルキルアクリレートのゴム弾性ベースポリマー上にグラフトした熱可塑性の非ゴム弾性スチレン−アクリロニトリル側鎖を含有し得る。
【0067】
以上のポリマーの任意のブレンドも基材として使用することができる。典型的なブレンドとしては、特に限定されないが、PC/ABS、PC/ASA、PC/PBT、PC/PET、PC/ポリエーテルイミド、PC/ポリスルホン、ポリエステル/ポリエーテルイミド、PMMA/アクリルゴム、ポリフェニレンエーテル−ポリスチレン、ポリフェニレンエーテル−ポリアミド又はポリフェニレンエーテル−ポリエステルからなるものがある。基材層は他の熱可塑性ポリマーを含んでいてもよいが、上記ポリカーボネート及び/又は付加ポリマーがその主要割合を構成するのがより好ましい。
【0068】
本発明の被覆物品中の基材層はまた、1種以上の熱硬化性ポリマーを含んでいてもよい。適切な熱硬化性ポリマー基材としては、特に限定されないが、エポキシ、シアネートエステル、不飽和ポリエステル、ジアリルフタレート、アクリル、アルキド、フェノール−ホルムアルデヒド、ノボラック、レゾール、ビスマレイミド、PMR樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド、尿素ホルムアルデヒド、ベンゾシクロブタン、ヒドロキシメチルフラン、及びイソシアネートから誘導されたものがある。本発明の一実施形態では、熱硬化性ポリマー基材がさらに、特に限定されないが、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテルイミド、又はポリエステルのような1種以上の熱可塑性ポリマーを含む。この熱可塑性ポリマーは、通例、前記熱硬化性ポリマーの硬化前に熱硬化性モノマー混合物と合わせて混合する。
【0069】
本発明の一実施形態では、熱可塑性又は熱硬化性基材層はまた1種以上の充填材及び/又は顔料を含有する。具体的な増量用及び強化用充填材、並びに顔料としては、ケイ酸塩、ゼオライト、二酸化チタン、石粉粉末、ガラス繊維又は球、炭素繊維、カーボンブラック、グラファイト、炭酸カルシウム、タルク、雲母、リトポン、酸化亜鉛、ケイ酸ジルコニウム、酸化鉄、ケイ藻土、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化クロム、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、粉砕石英、カ焼粘土、タルク、カオリン、アスベスト、セルロース、木粉、コルク、木綿及び合成織物繊維、殊に強化用充填材、例えばガラス繊維及び炭素繊維、並びに着色剤、例えば金属フレーク、ガラスフレーク及びビーズ、セラミック粒子、他のポリマー粒子、有機、無機又は有機金属であり得る染料及び顔料がある。もう1つ別の実施形態では、本発明は、シートモールディングコンパウンド(SMC)のような充填材含有熱硬化性基材層を含む被覆物品を包含する。
【0070】
基材層はまた、特に限定されないが、木材、紙、厚紙、ファイバーボード、パーチクルボード、合板、工作用紙、Kraft紙、硝酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、及び類似のセルロース含有材料を始めとする1種以上のセルロース材料からなっていてもよい。また、本発明は、1種以上のセルロース材料と、1種以上の熱硬化性ポリマー(特に接着剤熱硬化性ポリマー)、又は1種以上の熱可塑性ポリマー(特にリサイクル熱可塑性ポリマー、例えばPET又はポリカーボネート)、又は1種以上の熱硬化性ポリマー及び1種以上の熱可塑性ポリマーの混合物とのブレンドを包含する。
【0071】
本発明に包含される被覆物品には、1以上のガラス層を含むものもある。通例、ガラス層は基材層であるが、熱的に安定なポリマーコーティング層がガラス層と基材層との間に挟まれている被覆物品も考えられる。コーティング層とガラス層の種類に応じて、1以上の接着剤中間層をガラス層と熱的に安定なポリマーコーティング層との間に使用することができ有益であろう。この接着剤中間層は透明、不透明又は半透明であり得る。多くの用途に対して、中間層は事実上光学的に透明であり、一般に約60%より大きい透過率と約3%未満の曇り価を有しており、不快な色をもたないのが好ましい。
【0072】
環境に曝露される金属物品は曇り(tarnishing)、腐食、その他の有害な現象を示すことがある。従って、もう1つ別の実施形態では、本発明は、基材層として1以上の金属層を含む被覆物品を包含する。代表的な金属基材としては、環境からの保護を必要とすることがある鋼、アルミニウム、真鍮、銅、その他の金属又は金属含有物品を含むものがある。コーティング層及び金属層の種類に応じて、1以上の接着剤中間層を金属層と熱的に安定なポリマーコーティング層との間に使用することができ有益であろう。
【0073】
本発明の物品は、改良された耐紫外線性及び光沢の維持、並びに耐溶剤性により証される耐候性に加えて、基材層の通常の有益な特性により特徴付けられる。
【0074】
レゾルシノールアリーレートポリエステル連鎖成分を含む熱的に安定なポリマーを含む、作成することができる被覆物品としては、自動車、トラック、軍用車両、及びオートバイの外装及び内装部品、例えば、パネル、クオーターパネル、ロッカーパネル、トリム、フェンダー、ドア、デッキリッド、トランクリッド、フード、ボンネット、ルーフ、バンパー、フェイシア、グリル、ミラーハウジング、ピラーアプリケ、クラッディング、ボディーサイドモールディング、ホイールカバー、ホイールキャップ、ドアハンドル、スポイラー、ウインドーフレーム、ヘッドランプベゼル、ヘッドランプ、テールランプ、テールランプハウジング、テールランプベゼル、ライセンスプレートエンクロージャ、ルーフラック、及びステップ、アウトドア用車両及び装置のエンクロージャ、ハウジング、パネル、及び部品、電気・通信デバイスのエンクロージャ、屋外備品、航空機部品、ボート及び海洋設備、例えば、トリム、エンクロージャ、及びハウジング、船外機ハウジング、水深測定器ハウジング、水上バイク、ジェックスキー、プール、温泉、ホットタブ、階段、ステップカバー、建築及び建設用途、例えば、グレイジング、屋根、窓、床、装飾用窓備品又は処置、写真、絵画、ポスター、及び類似の展示品用の処理済ガラスカバー、壁板、及びドア、保護されたグラフィック、屋外及び室内標識、現金自動預入支払機(ATM)用のエンクロージャ、ハウジング、パネル、及び部品、芝生及び庭園トラクター、芝刈り機、及び工具用のエンクロージャ、ハウジング、パネル、及び部品、例えば、芝生及び庭園工具、窓及びドアトリム、スポーツ設備及び玩具、スノーモービル用のエンクロージャ、ハウジング、パネル、及び部品、レクリエーション車両のパネル及び部品、運動場の設備、プラスチック−木材の組合せから作成された物品、ゴルフコースマーカー、ユーティリティーピットカバー、コンピューターハウジング、デスクトップコンピューターハウジング、ポータブルコンピューターハウジング、ラップトップコンピューターハウジング、携帯コンピューターハウジング、モニターハウジング、プリンターハウジング、キーボード、FAX機ハウジング、複写機ハウジング、電話機ハウジング、携帯電話ハウジング、送信機ハウジング、受信機ハウジング、照明設備、照明器具、ネットワークインターフェースデバイスハウジング、変圧器ハウジング、エアコンディショニングハウジング、公共輸送機関用のクラッディング又は座席、列車、地下鉄、又はバスのクラッディング又は座席、計器ハウジング、アンテナハウジング、衛星放送受信アンテナ用クラッディング、コーテッドヘルメット及び個人用保護具、被覆合成又は天然テキスタイル、コートされた写真用フィルム及び写真用プリント、コートされた塗装物品、コートされた染色物品、コートされた蛍光物品、コートされた発泡物品などの用途がある。本発明は、さらに、前記物品に対する追加の製造作業、例えば、特に限定されないが、成形、絵付け成形、ペイントオーブン内でのベーキング、積層、及び/又は熱成形を包含する。
【実施例】
【0075】
以下の実施例は、本発明の方法をいかに実施し評価するかの詳細な説明を当業者に示すために挙げるものであり、本発明者らがその発明と考えているものの範囲を限定するものではない。特に断らない限り、部とあるのは重量部であり、温度は℃である。
【0076】
分子量はg/モル単位で重量平均(M)分子量として示し、ポリスチレン(PS)分子量標準を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で決定したものである。ポリアリーレートオリゴマーのガラス転移温度(Tg)は示差走査熱量測定(DSC)によって測定した。
【0077】
コーティングの耐薬品性はメチルエチルケトン(MEK)「二重擦過」法によって試験した。硬化後、コートされた基材を室温まで放冷し、15時間以上周囲条件下に維持した後メチルエチルケトン(MEK)二重擦過又は衝撃試験に供した。MEK二重擦過試験(MEK DR)は、周囲条件下で2ポンドのボールペン(ballpein)ハンマーを錘として用いて行った。このハンマーの丸めたヘッドを6層のグレード10のチーズクロスで包み、メチルエチルケトンに浸漬した。次に、ハンマーの丸めたヘッドをコーティング上に載せ、その自身の重量の下でコーティングを横切って手操作で前後に移動させた。各前後のストロークを1回の二重擦過と数えた。基材が露出されるようになったときに、この試験を終わらせ、基材の露出までの二重擦過の回数を記録した。基材が露出されなかった場合は、200回の二重擦過の後試験を終了した。従って、基材を露出させるのに必要であった実際のMEK二重擦過の回数は記録された200の値より高いことがある。
【0078】
衝撃試験は周囲条件下で、Gardner衝撃試験機を用い、ASTM D5420−98aを多少変更して行った。直接衝撃(「DI」)値は、試験部品のコートされた表面に対して圧痕試験を行ったときに記録されたものである。間接衝撃(「II」)値は、基材のコートされてない表面に対して圧痕試験を行ったときに記録されたものである。衝撃測定値を決定するには鋼パネルのみを使用した。
【0079】
実施例1〜13は、本研究に使用したポリアリーレートオリゴマーを調製するのに用いた方法を例示する。これらのポリアリーレートオリゴマーの測定した物理的性質を表1に示す。実施例1〜13で調製したヒドロキシ末端ポリアリーレートオリゴマーは様々な程度の結晶質をもっていた。ヒドロキシ末端ポリアリーレートオリゴマーの結晶質は溶媒含有粉末コーティングの調製の妨害にならなかったが、有効な乾燥粉末コーティングを調製するためには配合の前にヒドロキシ末端ポリアリーレートオリゴマーを非晶質形態に変換する必要があった。詳細は下記に示す。
【0080】
実施例1〜2
実施例1:ヒドロキシ末端ポリアリーレートオリゴマー(レゾルシノール70%過剰)の調製
凝縮器、メカニカルスターラー及び添加漏斗を備えた三首丸底フラスコに、塩化メチレン(60mL)及びレゾルシノール(10.48g、0.0952mol)を加えた。この溶媒とレゾルシノールの不均一な混合物を5〜10分間窒素で脱ガスした後、トリエチルアミン(TEA、33.1mL、0.238mol)を加えた。全てのレゾルシノールが溶解したところで、イソフタロイルクロライドとテレフタロイルクロライドの1:1混合物(合計0.056モル)の35重量%塩化メチレン溶液を、添加漏斗を介して10〜15分間反応混合物を激しく撹拌しながら加えた。反応混合物を窒素下でさらに45〜60分間撹拌した。次いで、反応混合物の見掛けのpHが約pH1〜2の範囲になるまで、混合物を2NのHClで奪活した。有機層を三回水で洗浄し、生成物のヒドロキシ末端ポリアリーレートオリゴマーを水性メタノール(水1部、メタノール5部)中に沈殿させた。塩化メチレン溶液と水性メタノール逆溶媒の体積比は約1対15であった。生成物のヒドロキシ末端ポリエステルオリゴマーを60℃、真空下で2日間乾燥し、GPCとDSCで特性を決定した。実施例2は同じようにして実施した。実施例2は150モルパーセント過剰のレゾルシノールを含んでいた。実施例1と2の物理的データを表1に示す。
【0081】
実施例3 ヒドロキシ末端ポリアリーレートオリゴマー(レゾルシノール200%過剰)の調製
凝縮器、メカニカルスターラー及び添加槽を備えた50ガロンの反応器に塩化メチレン(36L)とレゾルシノール(7928g、72mol)を加えた。得られた不均一な混合物を20分間窒素で脱ガスし、トリエチルアミン(25L、180mol)を加えた。レゾルシノールが完全に溶解したときに、塩化メチレン中にイソフタロイルクロライドとテレフタロイルクロライドの1対1混合物を4872.5g(24mol)含有する35重量%溶液13921gを、反応混合物を激しく撹拌しながら20分間液体ポンプを用いて加えた。次いで、反応混合物を窒素下でさらに45〜60分間撹拌した。次に、この混合物を約76〜約80リットルの2N HClで奪活して、見掛けのpHが約1〜約2の混合物を得た。有機層を三回水で洗浄し、実施例1と2と同様に生成物のヒドロキシ末端ポリエステルオリゴマーを沈殿させた。生成物を50℃、真空下で3日間乾燥し、GPCとDSCで特性を決定した。生成物のヒドロキシ末端ポリエステルオリゴマーの重量平均分子量は、GPCで測定して1790g/モルであった。この物質の重合度をNMRで測定したところ約4(DP=4)であることが分かった。分子量(Mw)1420g/モルのヒドロキシ末端ポリアリーレートオリゴマー(以後、ポリアリーレート1420という)を同じようにして調製した。
【0082】
実施例4〜6
実施例4:テトラエチレングリコール(TEG)ソフトブロックを有するヒドロキシ末端ポリアリーレートオリゴマー(レゾルシノール70%過剰)の調製
テトラエチレングリコール(0.72g、3.6mmol)、トリエチレンアミン(0.62mL)、ジメチルアミノピリジン(DMAP、22.6mg、0.19mmol)及び塩化メチレン(5mL)を20mLの丸底フラスコ(フラスコ1)に加え、窒素で脱ガスした。この溶液に、イソフタロイルクロライドとテレフタロイルクロライドの1対1混合物の35重量%塩化メチレン溶液13.1gを加え、混合物を窒素下で15分間撹拌した。凝縮器、メカニカルスターラー及び添加漏斗を備えた第2の三首丸底フラスコ(フラスコ2)に、塩化メチレン(190mL)とレゾルシノール(31.4g)を仕込んだ。この不均一な混合物を5〜10分間窒素で脱ガスした後、トリエチルアミン(99.3mL)を加えた。レゾルシノールが完全に溶解したところで、フラスコ1中に含まれている溶液をフラスコ2に加えた。その後、イソフタロイルクロライドとテレフタロイルクロライドの1対1混合物の35重量%塩化メチレン溶液74.77gを、10〜15分間添加漏斗を介して加えた。この反応混合物を窒素下でさらに45〜60分間撹拌した後、奪活し、実施例1と2と同様にして生成物を単離した。実施例5と6は同じようにして実施した。実施例4〜6の生成物ヒドロキシ末端ポリエステルオリゴマーのデータをまとめて表1に示す。
【0083】
実施例7〜14
実施例7:酸ソフトブロックを有するヒドロキシ末端ポリアリーレートオリゴマー(レゾルシノール150%過剰)の調製
凝縮器、メカニカルスターラー及び添加漏斗を備えた三首丸底フラスコに、塩化メチレン(400mL)とレゾルシノール(68.9g、0.626mol)を仕込んだ。得られた不均一な混合物を5〜10分間窒素で脱ガスし、トリエチルアミン(218mL)を加えた。レゾルシノールが完全に溶解したところで、50/50イソ/テレフタロイルクロライド(0.225mol、45.7g)とセバコイルクロライド(.025mol、5.98g)の混合物の35重量%塩化メチレン溶液を、10〜15分間添加漏斗を介して加えた。この反応混合物を窒素下でさらに45〜60分間撹拌した。反応混合物を奪活し、生成物のヒドロキシ末端ポリエステルオリゴマーを実施例1と同様に単離した。
【0084】
実施例8〜14で使用した実験手順は実施例7で使用したものと本質的に同じであった。データを表1に示す。
【0085】
【表1】

以下の実施例15〜35では、上記実施例1〜14で合成したポリアリーレートオリゴマー材料を用いた溶媒キャスト粉末コーティング配合物の調製について説明する。
【0086】
実施例15〜35
以下のコーティング配合物を調製し、溶媒キャスティング用に適切な溶媒に溶解させた。通例、ジメチルアセトアミドとテトラヒドロフランを溶媒として使用した。溶媒キャスティング用の粉末コーティングの溶液は、基材上へのフィルムキャスティングの前に実験室用ローラー上に10分以上おいて十分な混合を確保した。
【0087】
これらのコーティングを、2種類の異なる基材、すなわち(i)AL−2024、4×6インチのアルミニウムパネルと、(ii)CRS−1008、B952前処理済4×6インチ鋼パネルに施した。両基材をアセトンで濯ぎ、乾燥した後に塗布した。これらの基材は、Q−PANEL LAB PRODUCTS INC.(アルミニウム)及びACT LABORATORIES INC.(鋼)から得た既成シートである。
【0088】
配合物は、10milのドローダウンフレームを用いて手操作で基材に塗布した。塗布後、コーティングを短時間周囲条件下に放置、乾燥した後所定の温度、時間硬化させた。実施例15〜35の配合物に使用した各成分の重量パーセントを特性データと共に表2に示す。
【0089】
【表2】

【0090】
【表3】

【0091】
【表4】

【0092】
【表5】

【0093】
【表6】

実施例15〜35は、ヒドロキシ末端ポリアリーレートオリゴマーをエポキシ、イソシアネート、アクリレート、ポリエステル、無水物、及びポリフェノール材料と共に使用して調製した粉末コーティングの配合と物理的性質を示す。
【0094】
比較例1は文献に示唆された配合物である。ポリアリーレートオリゴマーEA170を含めて作成した類似の配合物を実施例26〜30に示す。実施例26〜30で調製したコーティングの耐薬品性は比較例1と比べて性能が優れている。
【0095】
ソフトブロック改質ポリアリーレートオリゴマーからコーティング配合物を調製し、試験した。配合を試験結果と共に表3に示す。これらのソフトブロック改質ポリアリーレートオリゴマーは実施例15〜35に既に記載したものと類似の配合物に使用することができる。
【0096】
【表7】

【0097】
【表8】

比較例2〜6
文献に示唆されているコーティング配合物を用いて追加の比較例を実施した。その配合と、かかる配合物から作成されたコーティングに対して行った試験の結果を表4に示す。実施例15〜43に示された配合物はMEK二重擦過試験で一貫してより良好な性能を示すことが観察された。
【0098】
【表9】

実施例44〜47
実施例44〜47では、実施例3で合成したポリアリーレートオリゴマー(EA 170)を用いて乾燥粉末コーティング配合物を調製した。これらの乾燥粉末コーティング配合物は以下のようにして調製した。
【0099】
結晶質ポリアリーレートオリゴマーを非晶質形態に変換した。本明細書に記載したポリアリーレートオリゴマーの製造方法では生成物のポリアリーレートオリゴマーに結晶質が付与され得ることに注意されたい。本発明の乾燥粉末コーティング配合物の最適の性能はポリアリーレートが非晶質形態にあるときに達成される。
【0100】
結晶質を除去するために、ポリアリーレートオリゴマーを16mmのPrism押出機で溶融押出した。この技術を用いてポリアリーレートオリゴマーを溶融させることによって、DSC(示差走査熱量測定)により決定されるように材料から結晶質がうまく除去された。押出の加工処理条件をまとめて表5に示す。
【0101】
【表10】

予備的に押し出して結晶質を除去した非晶質形態のポリアリーレートオリゴマーEA 170を用いて4種の異なる配合物を調製した(実施例44〜47、表7参照)。これら4種のポリアリーレートオリゴマーを含有するクリアコート粉末コーティング配合物は、標準化された中程度の剪断ブレード構成を用いるHenschel Dry Mixerで非晶質ポリアリーレート及びその他の成分をドライブレンドすることによって400gスケールで調製した。このドライブレンドは2500rpmで3分間行った。次に、生成した乾燥粉末を16mmのPrism押出機で溶融混合した。押出条件を表6に示す。その後、この乾燥粉末を、RETSCH振動フィーダーを用いて押出機に供給し、生成物の押出物を巻き取りローラーを介して切り取り、液体窒素を含有するDewarフラスコに集めた。
【0102】
【表11】

次に、押出物を粉砕し、篩にかけて、目的とするポリアリーレート含有クリアコート粉末コーティング配合物を得た。粉砕するには、最初に押出物を、Henschel Dry Mixerを用いて標準剪断ブレード構成により2500rpm、30sec間で粗い粉末に変換した。次に、この粗い粉末を、200ミクロンのリングシーブを用いてRetsch ZM−100ハンマーミルに通した。このハンマーミルはサイクロンを使用して、粉砕プロセス中に生成した「微粉」を取り除く。最後に、この粉末をVORT−SIV振動篩機に装着した140ミクロンの篩に通した。この最終工程で大きい粒子が選別除去された。次いで、この粉末を鋼及びアルミニウムパネル上に静電噴霧し、硬化させて試験コーティングを得た。
【0103】
【表12】

【0104】
【表13】

比較例7〜11は、比較例2〜6で使用したのと同じではあるが乾燥粉末形態の配合物を用いて行った。MEK二重擦過試験値を比較することによって、実施例44〜47の耐薬品性を比較例7〜11と比較した。実施例44〜47の乾燥粉末コーティングは比較例7〜11に対して高まった性能を示した。
【0105】
実施例48〜60:追加の溶液重合研究
実施例48〜60は、本発明の方法を用いたジヒドロキシ置換芳香族化合物と二酸クロライドとの反応に対して含水量の変化が及ぼす影響を検討するために実施した。以下の一般手順を使用した。
【0106】
塩化メチレン、又は塩化メチレンとトリエチルアミン(TEA)の混合物を、塩化メチレンを水で十分に飽和するのに必要とされる量を越える量の脱イオン水と共に震盪した。震盪後、水層と水で飽和した塩化メチレン層とからなる混合物を一晩放置した。次に、塩化メチレン層を分離し、水で飽和した塩化メチレンを用いる例で反応溶媒として使用した。幾つかの実施例においては、所望量の水を、表8に示した量で塩化メチレンとトリエチルアミンの混合物に直接加えた。
【0107】
凝縮器、添加漏斗、及び攪拌機を備えた1リットルの反応器に、200mLの乾燥塩化メチレン、85.2mL(0.61mol)のTEA、及び26.89g(0.24mol)のレゾルシノールを仕込んだ。数分の撹拌後、レゾルシノールは完全に溶解していた。
【0108】
約100mLの合計体積を有する二酸クロライド(DAC)(108.6g、イソフタロイルクロライドとテレフタロイルクロライドの1:1混合物)の塩化メチレン溶液で、約0.20モルの二酸クロライドを含有する溶液を添加漏斗を介して、混合物を激しく撹拌しながら約10分間加えた。二酸クロライドを加えた後、反応混合物を15分間撹拌し、次いで2NのHCl溶液(110mL)を加え、混合物を10分間撹拌した。次いで、有機層から試料を採取し、生成物ポリアリーレートの分子量を確認した。この一般方法を用いて生成したポリアリーレートの物理的データを表8に示す。表8と9で用語「RS」はレゾルシノールを示す。用語「乾燥」塩化メチレンとは、新たに開栓した容器の試薬級溶媒を示す。
【0109】
【表14】

実施例56〜60は、各反応(実施例56を除く)を様々な量の水を含む系で行った以外は実施例48〜55と同様に実施した。各実施例56〜60で使用したレゾルシノール(RS)の量は0.244モルであり、使用したトリエチルアミン(TEA)の量は0.612モルであった。反応条件及び生成物ポリアリーレートに関するデータを表9に示す。
【0110】
【表15】

これらのデータが示しているように、最良の分子量制御は「乾燥」系(比較例56と実施例57〜60との比較)で達成されるが、水の存在はかなりの量の水が存在するまではMとMで測定される反応結果に対して大きな影響を及ぼすことがない。すなわち、本発明の方法に従ってポリアリーレートの調製に使用する塩化メチレンは、使用前に塩化メチレンを乾燥するのに法外の予防策を講じる必要がない。この水で飽和した塩化メチレンを使用できるということは、溶媒流を水と接触させて精製し、その後リサイクルして再利用する製造条件においては殊に有利である。
【0111】
特定の好ましい実施形態について本発明を詳細に説明してきたが、当業者には理解されるように本発明の思想と範囲内で変更及び修正が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分A、B、及び適宜Cを含んでなるコーティング組成物。
(i)次の式Iの構造単位とさらにフェノール性ヒドロキシル基とを含む1種以上のポリアリーレートを含む成分A
【化1】

(式中、Rは各々独立にC〜C12アルキル基であり、nは0〜3である。)、
(ii)成分Aのポリアリーレートのフェノール性ヒドロキシ基と化学的に反応性の1以上の官能基を有する1種以上の「有機種」を含む成分B、及び
(iii)任意成分として、成分Aのポリアリーレートと成分Bの「有機種」との化学反応を促進する1種以上の触媒である成分C。
【請求項2】
成分Bの官能基が、イソシアネート、無水物、エポキシ、酸クロライド、カルボン酸、活性化カルボン酸エステル、塩化スルホニル、アミダール及びアミナールからなる群から選択される、請求項1記載のコーティング組成物。
【請求項3】
成分Bが1種以上のメラミン型樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂又はこれらの組合せを含む、請求項1記載のコーティング組成物。
【請求項4】
さらに補助樹脂を含む、請求項1記載のコーティング組成物。
【請求項5】
成分Aの濃度が当該コーティング組成物の総重量の約1〜約99重量%である、請求項1記載のコーティング組成物。
【請求項6】
成分Bの濃度が当該コーティング組成物の総重量の約99〜約1重量%である、請求項1記載のコーティング組成物。
【請求項7】
成分Cの濃度が当該コーティング組成物の総重量の約0.00001〜約10重量%である、請求項1記載のコーティング組成物。
【請求項8】
成分Aがさらに次の式VIIIの構造単位を含む、請求項1記載のコーティング組成物。
【化2】

式中、RはC〜C100脂肪族基又はC〜C20脂環式基であり、R及びRは各々独立に以下の結合を表す。
【化3】

【請求項9】
前記C〜C100脂肪族基Rが次の式IXの構造単位を含む、請求項8記載のコーティング組成物。
【化4】

【請求項10】
前記C〜C100脂肪族基Rが次の式Xの構造単位を含む、請求項8記載のコーティング組成物。
【化5】

【請求項11】
成分Aの式VIIIの構造単位の濃度が当該コーティング組成物の総重量の約0.01〜約50重量%である、請求項8記載のコーティング組成物。
【請求項12】
前記ポリアリーレートが約2000〜約5000g/モルの数平均分子量を有する、請求項1記載のコーティング組成物。
【請求項13】
前記ポリアリーレートが約500〜約2500g/モルの数平均分子量を有する、請求項1記載のコーティング組成物。
【請求項14】
前記触媒が、第三アミン、第四アンモニウム塩、第四ホスホニウム塩、ルイス酸及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1記載のコーティング組成物。
【請求項15】
さらに1種以上の溶媒を含む、請求項1記載のコーティング組成物。
【請求項16】
前記溶媒が、アミド、エステル、エーテル、ケトン、アルコール、芳香族化合物、ハロゲン化溶媒及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項15記載のコーティング組成物。
【請求項17】
前記溶媒が、ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項16記載のコーティング組成物。
【請求項18】
さらに水を含む、請求項1記載のコーティング組成物。
【請求項19】
前記コーティング組成物が水中分散液である、請求項18記載のコーティング組成物。
【請求項20】
さらに、無機顔料、有機顔料、無機充填材及び有機充填材からなる群から選択される1種以上の添加剤を含む、請求項1記載のコーティング組成物。
【請求項21】
以下の成分A、B及び適宜Cを含んでなる粉末コーティング組成物。
(i)次の式Iの構造単位とさらにフェノール性ヒドロキシル基とを含む1種以上のポリアリーレートを含む成分A
【化6】

(式中、Rは各々独立にC〜C12アルキル基であり、nは0〜3である。)、
(ii)成分Aのポリアリーレートオリゴマーのフェノール性ヒドロキシ基と化学的に反応性の1以上の官能基を有する1種以上の「有機種」を含む成分B、及び
(iii)任意成分として、成分Aのポリアリーレートと成分Bの「有機種」との化学反応を促進する1種以上の触媒である成分C。
【請求項22】
成分Bの官能基が、イソシアネート、無水物、エポキシ、酸クロライド、カルボン酸、活性化カルボン酸エステル、塩化スルホニル、アミダール及びアミナールからなる群から選択される、請求項21記載の粉末コーティング組成物。
【請求項23】
成分Bが1種以上のメラミン型樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂又はこれらの組合せを含む、請求項21記載の粉末コーティング組成物。
【請求項24】
さらに補助樹脂を含む、請求項21記載の粉末コーティング組成物。
【請求項25】
成分Aの濃度が当該粉末コーティング組成物の総重量の約1〜約99重量%である、請求項21記載の粉末コーティング組成物。
【請求項26】
成分Bの濃度が当該粉末コーティング組成物の総重量の約99〜約1重量%である、請求項21記載の粉末コーティング組成物。
【請求項27】
成分Cの濃度が当該粉末コーティング組成物の総重量の約0.0001〜約10重量%である、請求項21記載の粉末コーティング組成物。
【請求項28】
成分Aがさらに次の式VIIIの構造単位を含む、請求項21記載の粉末コーティング組成物。
【化7】

式中、RはC〜C100脂肪族基又はC〜C20脂環式基であり、R及びRは各々独立に以下の結合を表す。
【化8】

【請求項29】
前記C〜C100脂肪族基Rが次の式IXの構造単位を含む、請求項28記載の粉末コーティング組成物。
【化9】

【請求項30】
前記C〜C100脂肪族基Rが次の式Xの構造単位を含む、請求項28記載の粉末コーティング組成物。
【化10】

【請求項31】
成分Aの式VIIIの構造単位の濃度が粉末コーティングの総重量の約0.01〜約50重量%である、請求項28記載の粉末コーティング組成物。
【請求項32】
前記ポリアリーレートが、約2000〜約5000g/モルの数平均分子量を有するポリアリーレートオリゴマーである、請求項21記載の粉末コーティング組成物。
【請求項33】
前記ポリアリーレートが、約500〜約2500g/モルの数平均分子量を有するポリアリーレートオリゴマーである、請求項21記載の粉末コーティング組成物。
【請求項34】
前記ポリアリーレートオリゴマーが非晶質である、請求項32記載の粉末コーティング組成物。
【請求項35】
前記ポリアリーレートオリゴマーが結晶質固体である、請求項32記載の粉末コーティング組成物。
【請求項36】
前記触媒が、第三アミン、第四アンモニウム塩、第四ホスホニウム塩、ルイス酸及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項21記載の粉末コーティング組成物。
【請求項37】
1種以上のジヒドロキシ置換芳香族炭化水素及び1種以上の芳香族ジカルボン酸ジクロライドから誘導された構造単位とさらにフェノール性ヒドロキシ基とを含むポリアリーレートの製造方法であって、
(a)不活性有機溶媒中で1種以上のジヒドロキシ置換芳香族炭化水素部分と1種以上の有機塩基とを混合して混合物を形成する工程であって、ジヒドロキシ置換芳香族炭化水素部分が上記混合物に実質的に可溶性であり、上記ジヒドロキシ置換芳香族炭化水素を上記ジヒドロキシ置換芳香族炭化水素部分のモル量に相当する量で使用する工程、
(b)工程(a)で形成した混合物に、1種以上のジカルボン酸ジクロライドを、混合物中のジカルボン酸ジクロライドのモル量がジヒドロキシ置換芳香族炭化水素部分の総モル量に対して化学量論的に不足するモル量で添加して反応混合物を形成する工程、及び
(c)工程(b)で形成した反応混合物を、ジカルボン酸ジクロライドが実質的にすべて反応するまで撹拌する工程
を含んでなる方法。
【請求項38】
前記ジヒドロキシ置換芳香族炭化水素部分が次の構造Vを含んでなる、請求項37記載の方法。
【化11】

式中、Aは独立に芳香族基であり、Eはアルキレン、アルキリデン、脂環式基、含イオウ結合、含リン結合、エーテル結合、カルボニル基、第三アミノ結合又は含ケイ素結合であり、Rは各々独立に一価炭化水素基であり、Yは各々独立に一価炭化水素基、ハロゲン又はニトロであり、「m」は0からA上の置換可能な部位の数までの整数を表し、「p」は0からE上の置換可能な部位の数までの整数を表し、「t」は1以上の整数を表し、「s」は0又は1であり、「u」は0を含む整数を表す。
【請求項39】
前記ジカルボン酸ジクロライドが、単環式ジカルボン酸ジクロライド及び多環式芳香族ジカルボン酸ジクロライドからなる群から選択される、請求項37記載の方法。
【請求項40】
前記ジカルボン酸ジクロライドが、イソフタロイルジクロリド、テレフタロイルジクロリド、イソフタロイルジクロリドとテレフタロイルジクロリドの混合物、ジフェニルジカルボン酸ジクロライド、ジフェニルエーテルジカルボン酸ジクロライド及びナフタレン−2,6−ジカルボン酸ジクロライドからなる群から選択される、請求項37記載の方法。
【請求項41】
前記有機塩基が1種以上の第三アミンである、請求項37記載の方法。
【請求項42】
前記第三アミンが、トリエチルアミン、ジメチルブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N−エチルピペリジン、N−メチルピペリジン、N−メチルモルホリン、N,N−ジメチルデシルアミン、N,N−ジメチルオクタデシルアミン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン及びジアザビシクロ[2.2.2]オクタンからなる群から選択される、請求項41記載の方法。
【請求項43】
前記有機塩基がジヒドロキシ置換芳香族炭化水素部分に対して約0.9〜約10当量に相当する量で存在する、請求項37記載の方法。
【請求項44】
前記1種以上のジカルボン酸ジクロライドが次の式VIIIの「ソフトブロック」構造単位を含む、請求項37記載の方法。
【化12】

式中、RはC〜C100脂肪族基又はC〜C20脂環式基であり、R及びRは各々独立に以下の結合を表す。
【化13】

【請求項45】
以下の式Iの構造単位とさらにフェノール性ヒドロキシ基とを含むポリアリーレートオリゴマーの製造方法であって、
(a)不活性有機溶媒中で1種以上のレゾルシノール部分及び1種以上の有機塩基を混合して混合物を形成する工程であって、上記レゾルシノール部分が上記混合物に実質的に可溶性であり、上記レゾルシノールを上記レゾルシノール部分のモル量に相当する量で使用する工程、
(b)工程(a)で形成した混合物に、1種以上のジカルボン酸ジクロライドを、混合物中のジカルボン酸ジクロライドのモル量がレゾルシノール部分の総モル量に対して化学量論的に不足するモル量で添加して反応混合物を形成する工程、及び
(c)工程(b)で形成した反応混合物を、ジカルボン酸ジクロライドが実質的にすべて反応するまで撹拌する工程
を含んでなる方法。
【化14】

式中、Rは各々独立にC〜C12アルキル基であり、nは0〜3である。
【請求項46】
前記1種以上のレゾルシノール部分が、非置換レゾルシノール、2−メチルレゾルシノール及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項45記載のポリアリーレートオリゴマーの製造方法。
【請求項47】
前記1種以上のレゾルシノール部分が非置換レゾルシノールである、請求項46記載のポリアリーレートオリゴマーの製造方法。
【請求項48】
前記有機塩基が、レゾルシノール部分に対して約0.9〜約10当量に相当する量で存在する、請求項45記載のポリアリーレートオリゴマーの製造方法。
【請求項49】
前記有機塩基が1種以上の第三アミンを含む、請求項48記載のポリアリーレートオリゴマーの製造方法。
【請求項50】
前記第三アミンが、トリエチルアミン、ジメチルブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N−エチルピペリジン、N−メチルピペリジン、N−メチルモルホリン、N,N−ジメチルデシルアミン、N,N−ジメチルオクタデシルアミン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン及びジアザビシクロ[2.2.2]オクタンからなる群から選択される、請求項49記載のポリアリーレートオリゴマーの製造方法。
【請求項51】
1種以上のジカルボン酸ジクロライドがナフタレン−2,6−ジカルボン酸ジクロライドである、請求項45記載のポリアリーレートオリゴマーの製造方法。
【請求項52】
ジカルボン酸ジクロライドがイソフタロイルジクロリドとテレフタロイルジクロリドの混合物である、請求項45記載のポリアリーレートオリゴマーの製造方法。
【請求項53】
前記混合物が約0.2:1〜約5:1のイソフタロイルジクロリド対テレフタロイルジクロリドのモル比を有する、請求項52記載のポリアリーレートオリゴマーの製造方法。
【請求項54】
イソフタロイルジクロリド対テレフタロイルジクロリドのモル比が約0.8:1〜約2.5:1である、請求項53記載のポリアリーレートオリゴマーの製造方法。
【請求項55】
有機溶媒が、クロロホルム、クロロベンゼン、トルエン、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、ジクロロベンゼン、キシレン、トリメチルベンゼン及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項45記載のポリアリーレートオリゴマーの製造方法。
【請求項56】
前記1種以上のジカルボン酸ジクロライドが次の式VIIIの「ソフトブロック」構造単位を含んでなる、請求項45記載のポリアリーレートオリゴマーの製造方法。
【化15】

式中、RはC〜C100脂肪族基又はC〜C20脂環式基であり、R及びRは各々独立に以下の結合を表す。
【化16】

【請求項57】
式VIIIの「ソフトブロック」構造単位を含む前記ジカルボン酸ジクロライドを、ポリアリーレートオリゴマー生成物中の式VIIIの「ソフトブロック」の濃度が約0.01〜約50重量%となるのに十分な量で使用する、請求項56記載のポリアリーレートオリゴマーの製造方法。
【請求項58】
1種以上の熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマー、セルロース材料、ガラス又は金属を含む基材層と、
基材上の1以上の硬化コーティング層と
を含んでなる被覆物品であって、
上記コーティングが以下の成分A、B及びCの硬化反応生成物を含んでなる被覆物品。
(i)以下の式Iの構造単位とさらにヒドロキシ末端基とを含む1種以上のポリアリーレートオリゴマーを含む成分A
【化17】

(式中、Rは各々独立にC〜C12アルキル基であり、nは0〜3である。)、
(ii)成分Aのポリアリーレートオリゴマーの反応性ヒドロキシ末端基と化学的に反応性の1以上の官能基を有する1種以上の「有機種」を含む成分B、及び
(iii)成分Aのポリアリーレートオリゴマーと成分Bの「有機種」との反応を促進する1種以上の触媒。
【請求項59】
コーティングがさらに補助樹脂を含む、請求項58記載の被覆物品。
【請求項60】
成分Aがさらに次の式VIIIの構造単位を含む、請求項58記載の被覆物品。
【化18】

式中、RはC〜C100脂肪族基又はC〜C20脂環式基であり、R及びRは各々独立に以下の結合を表す。
【化19】


【公表番号】特表2007−507584(P2007−507584A)
【公表日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533843(P2006−533843)
【出願日】平成16年8月6日(2004.8.6)
【国際出願番号】PCT/US2004/025652
【国際公開番号】WO2005/118731
【国際公開日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】