説明

コーティング組成物、コーティング組成物を製造する工程、コートされた物品、およびそのような物品を形成する方法

本発明は、コーティング組成物、コーティング組成物を作製する工程、コートされた物品、およびそのような物品を形成する方法を提供する。本発明によるコーティング組成物は、(a)ベースポリマーを含むコア、(b)極性ポリマー性安定剤を含み、前記コアを少なくとも部分的に取り囲むシェル、および(c)前記シェル中に少なくとも部分的に埋め込まれた1種または複数種の疎水性粒子状充填剤を含む分散体を含む。本発明によるコーティング組成物を作製する工程は、(1)ベースポリマーを選択するステップ;(2)極性ポリマー性安定剤を選択するステップ;(3)1種または複数種の疎水性粒子状充填剤を選択するステップ;(4)前記ベースポリマー、前記極性ポリマー性安定剤、および前記1種または複数種の疎水性粒子状充填剤を溶融ブレンドするステップ;(4)前記溶融ブレンドされたベースポリマー、極性ポリマー性安定剤および1種または複数種の疎水性粒子状充填剤と水とを、場合により中和剤の存在下に接触させるステップ;(5)それにより、(a)前記ベースポリマーを含むコア、(b)前記極性ポリマー性安定剤を含み、前記コアを少なくとも部分的に取り囲むシェル、および(c)前記シェル中に少なくとも部分的に埋め込まれた前記1種または複数種の疎水性粒子状充填剤を含む前記分散体を形成するステップを含む。本発明によるコートされた物品は、セルロース系材料を含む基材、ならびに(a)ベースポリマーを含むコア、(b)極性ポリマー性安定剤を含み、前記コアを少なくとも部分的に取り囲むシェル、および(c)前記シェル中に少なくとも部分的に埋め込まれた1種または複数種の疎水性粒子状充填剤を含み、前記基材の少なくとも1つの表面にある分散体を含む。本発明によるコートされた物品を作製する方法は、(1)セルロース系材料を含む基材を提供するステップ;(2)(a)ベースポリマーを含むコア、(b)極性ポリマー性安定剤を含み、前記コアを少なくとも部分的に取り囲むシェル、および(c)前記シェル中に少なくとも部分的に埋め込まれた1種または複数種の疎水性粒子状充填剤を含む分散体を含むコーティング組成物を提供するステップ;(3)前記コーティング組成物を前記基材の少なくとも1つの表面に適用するステップ;および(4)それにより前記コートされた物品を作製するステップを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、その教示が以下の本明細書全体の中で再掲されたかのように参照により組み込まれる、「コーティング組成物、コーティング組成物を製造する工程、コートされた物品、およびそのような物品を形成する方法」と題する、2008年12月12日出願の米国特許仮出願第61/122,050号の優先権を主張する非仮出願である。
【0002】
本発明は、コーティング組成物、コーティング組成物を作製する工程、コートされた物品、およびそのような物品を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
バリア用途のようなコーティング組成物としてのポリマー材料の使用は一般に知られている。そのようなポリマーのコーティング組成物は、例えば、グリース、油、水および/または蒸気に対するバリアを提供し得る。あるいは、そのようなポリマーのコーティング組成物は、構造を完全にしてかつ強度を向上することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
新規なコーティング組成物の開発における研究努力にも拘わらず、油およびグリース耐性を保持しつつ、吸水性、水蒸気透過特性、および酸素透過速度特性などの改善されたバリア特性を有するコーティング組成物に対する必要性は依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、コーティング組成物、コーティング組成物を作製する工程、コートされた物品、およびそのような物品を形成する方法を提供する。
【0006】
一実施形態において、本発明は、(a)ベースポリマーを含むコア(芯)、(b)極性ポリマー性安定剤を含み、前記コアを少なくとも部分的に取り囲むシェル(外皮)、および(c)前記シェル中に少なくとも部分的に埋め込まれた1種または複数種の疎水性粒子状充填剤を含む分散体を含むコーティング組成物を提供する。
【0007】
代替的実施形態において、本発明は、(1)ベースポリマーを選択するステップ;(2)極性ポリマー性安定剤を選択するステップ;(3)1種または複数種の疎水性粒子状充填剤を選択するステップ;(4)前記ベースポリマー、前記極性ポリマー性安定剤、および前記1種または複数種の疎水性粒子状充填剤を溶融ブレンドするステップ;(4)前記溶融ブレンドされたベースポリマー、極性ポリマー性安定剤および1種または複数種の疎水性粒子状充填剤を、水および場合により中和剤の存在下に溶融混練するステップ;(5)それにより、(a)前記ベースポリマーを含むコア、(b)前記極性ポリマー性安定剤を含み、前記コアを少なくとも部分的に取り囲むシェル、および(c)前記シェル中に少なくとも部分的に埋め込まれた前記1種または複数種の疎水性粒子状充填剤を含む前記分散体を形成するステップを含む、コーティング組成物を作製する工程をさらに提供する。
【0008】
他の代替的実施形態において、本発明は、基材と、前記基材の少なくとも1つの表面上にある、(a)ベースポリマーを含むコア、(b)極性ポリマー性安定剤を含み、前記コアを少なくとも部分的に取り囲むシェル、および(c)前記シェル中に少なくとも部分的に埋め込まれた1種または複数種の疎水性粒子状充填剤を含む分散体を含むコートされた物品をさらに提供する。
【0009】
他の代替的実施形態において、本発明は、(1)セルロース系材料を含む基材を提供するステップ;(2)(a)ベースポリマーを含むコアと、(b)極性ポリマー性安定剤を含み、前記コアを少なくとも部分的に取り囲むシェルと、(c)前記シェル中に少なくとも部分的に埋め込まれた1種または複数種の疎水性粒子状充填剤を含む分散体を含むコーティング組成物を提供するステップ;(3)前記コーティング組成物を前記基材の少なくとも1つの表面に適用するステップ;および(4)それにより前記コートされた物品を作製するステップを含む、コートされた物品を作製する方法をさらに提供する。
【0010】
代替的実施形態において、本発明は、ベースポリマーがエチレン系ポリマー、プロピレン系ポリマー、およびそれらの組合せからなる群から選択される熱可塑性ポリマーである以外は、上記のいずれかの実施形態による、コーティング組成物、それを製造する方法、それから作製されたコートされた物品、およびそのようなコートされた物品を作製する方法を提供する。
【0011】
代替的実施形態において、本発明は、分散体が分散体の固体の総重量に対して0から90重量パーセントのベースポリマーを含む以外は、上記のいずれかの実施形態による、コーティング組成物、それを製造する方法、それから作製されたコートされた物品、およびそのようなコートされた物品を作製する方法を提供する。
【0012】
代替的実施形態において、本発明は、分散体が分散体の固体の総重量に対して10から50重量パーセントの極性ポリマー性安定剤を含む以外は、上記のいずれかの実施形態による、コーティング組成物、それを製造する方法、それから作製されたコートされた物品、およびそのようなコートされた物品を作製する方法を提供する。
【0013】
代替的実施形態において、本発明は、ベースポリマーと極性ポリマー性安定剤とが各々が異なった酸数を有するという条件で同じタイプのポリマー材料である以外は、上記のいずれかの実施形態による、コーティング組成物、それを製造する方法、それから作製されたコートされた物品、およびそのようなコートされた物品を作製する方法を提供する。
【0014】
代替的実施形態において、本発明は、1種または複数種の疎水性粒子状充填剤が、無機物質、有機物質、およびそれらの組合せからなる群から選択される以外は、上記のいずれかの実施形態による、コーティング組成物、それを製造する方法、それから作製されたコートされた物品、およびそのようなコートされた物品を作製する方法を提供する。
【0015】
代替的実施形態において、本発明は、無機物質が、水酸化アルミニウム、アラゴナイト、硫酸バリウム、方解石、硫酸カルシウム、ドロマイト、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、マグネサイト、粉砕炭酸カルシウム、沈殿炭酸カルシウム、酸化チタン(例えば、ルチルおよび/またはアナターゼ)、サチンホワイト、酸化亜鉛、シリカ、アルミナ三水和物、雲母、タルク、粘土、焼成粘土、珪藻土、バテライト、およびそれらの組合せからなる群から選択される以外は、上記のいずれかの実施形態による、コーティング組成物、それを製造する方法、それから作製されたコートされた物品、およびそのようなコートされた物品を作製する方法を提供する。
【0016】
代替的実施形態において、本発明は、1種または複数種の疎水性粒子状充填剤が5nmから1μmの範囲内の粒子サイズ直径を有する以外は、上記のいずれかの実施形態による、コーティング組成物、それを製造する方法、それから作製されたコートされた物品、およびそのようなコートされた物品を作製する方法を提供する。
【0017】
代替的実施形態において、本発明は、1種または複数種の疎水性粒子状充填剤が5nmから500nmの範囲内の粒子サイズ直径を有する以外は、上記のいずれかの実施形態による、コーティング組成物、それを製造する方法、それから作製されたコートされた物品、およびそのようなコートされた物品を作製する方法を提供する。
【0018】
代替的実施形態において、本発明は、1種または複数種の疎水性粒子状充填剤が5nmから200nmの範囲内の粒子サイズ直径を有する以外は、上記のいずれかの実施形態による、コーティング組成物、それを製造する方法、それから作製されたコートされた物品、およびそのようなコートされた物品を作製する方法を提供する。
【0019】
代替的実施形態において、本発明は、分散体が、分散体の固体の総重量に対して1から50重量パーセントの1種または複数種の疎水性粒子状充填剤を含む以外は、上記のいずれかの実施形態による、コーティング組成物、それを製造する方法、それから作製されたコートされた物品、およびそのようなコートされた物品を作製する方法を提供する。
【0020】
代替的実施形態において、本発明は、極性ポリマー性安定剤がエチレン−アクリル酸(EAA)、エチレンメチルメタクリレート(EMMA)、エチレンブチルアクリレート(EBA)、およびそれらの組合せからなる群から選択される以外は、上記のいずれかの実施形態による、コーティング組成物、それを製造する方法、それから作製されたコートされた物品、およびそのようなコートされた物品を作製する方法を提供する。
【0021】
代替的実施形態において、本発明は、極性ポリマー性安定剤が50から90パーセント中和されている以外は、上記のいずれかの実施形態による、コーティング組成物、それを製造する方法、それから作製されたコートされた物品、およびそのようなコートされた物品を作製する方法を提供する。
【0022】
代替的実施形態において、本発明は、極性ポリマー性安定剤が55から85パーセント中和されている以外は、上記のいずれかの実施形態による、コーティング組成物、それを製造する方法、それから作製されたコートされた物品、およびそのようなコートされた物品を作製する方法を提供する。
【0023】
代替的実施形態において、本発明は、分散体が5,000cP未満からの範囲の粘度を有する以外は、上記のいずれかの実施形態による、コーティング組成物、それを製造する方法、それから作製されたコートされた物品、およびそのようなコートされた物品を作製する方法を提供する。
【0024】
代替的実施形態において、本発明は、分散体が500cP未満からの範囲の粘度を有する以外は、上記のいずれかの実施形態による、コーティング組成物、それを製造する方法、それから作製されたコートされた物品、およびそのようなコートされた物品を作製する方法を提供する。
【0025】
代替的実施形態において、本発明は、分散体が100cP未満からの範囲の粘度を有する以外は、上記のいずれかの実施形態による、コーティング組成物、それを製造する方法、それから作製されたコートされた物品、およびそのようなコートされた物品を作製する方法を提供する。
【0026】
代替的実施形態において、本発明は、分散体が50cP未満からの範囲の粘度を有する以外は、上記のいずれかの実施形態による、コーティング組成物、それを製造する方法、それから作製されたコートされた物品、およびそのようなコートされた物品を作製する方法を提供する。
【0027】
代替的実施形態において、本発明は、分散体が8から12の範囲内のpHを有する以外は、上記のいずれかの実施形態による、コーティング組成物、それを製造する方法、それから作製されたコートされた物品、およびそのようなコートされた物品を作製する方法を提供する。
【0028】
代替的実施形態において、本発明は、分散体が8.5から10の範囲内のpHを有する以外は、上記のいずれかの実施形態による、コーティング組成物、それを製造する方法、それから作製されたコートされた物品、およびそのようなコートされた物品を作製する方法を提供する。
【0029】
代替的実施形態において、本発明は、分散体が0.2から2μmの範囲内の平均固体粒子サイズ直径を有する以外は、上記のいずれかの実施形態による、コーティング組成物、それを製造する方法、それから作製されたコートされた物品、およびそのようなコートされた物品を作製する方法を提供する。
【0030】
代替的実施形態において、本発明は、分散体が分散体の総体積に対して40から55体積パーセントの液体媒質を含む以外は、上記のいずれかの実施形態による、コーティング組成物、それを製造する方法、それから作製されたコートされた物品、およびそのようなコートされた物品を作製する方法を提供する。
【0031】
代替的実施形態において、本発明は、液体媒質が水である以外は、上記のいずれかの実施形態による、コーティング組成物、それを製造する方法、それから作製されたコートされた物品、およびそのようなコートされた物品を作製する方法を提供する。
【0032】
代替的実施形態において、本発明は、分散体が、1種または複数種の消泡剤、1種または複数種の湿潤剤、1種または複数種の抗菌剤、1種または複数種の架橋剤、1種または複数種のレオロジー改良剤、1種または複数種の補助安定剤、1種または複数種のアンチブロッキング剤、1種または複数種の着色剤、および1種または複数種の追加の充填剤を含む以外は、上記のいずれかの実施形態による、コーティング組成物、それを製造する方法、それから作製されたコートされた物品、およびそのようなコートされた物品を作製する方法を提供するが、しかしながら、そのような追加成分の添加が本発明のコーティング組成物に悪影響を及ぼさないことが条件である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明はコーティング組成物、コーティング組成物を作製する工程、コートされた物品、およびそのような物品を形成する方法を提供する。
【0034】
本発明によるコーティング組成物は、(a)ベースポリマーを含むコア、(b)極性ポリマー性安定剤を含み、前記コアを少なくとも部分的に取り囲むシェル、および(c)前記シェル中に少なくとも部分的に埋め込まれた1種または複数種の疎水性粒子状充填剤を含む分散体を含む。本発明による分散体は、0.2から2μmの範囲内の平均固体粒子サイズ直径を有する。
【0035】
ベースポリマー
本発明の分散体は、分散体の固体内容物の総重量に対して20から95重量パーセントの1種または複数種のベースポリマーを含む。全ての個々の値および20から95重量パーセントまでの部分範囲は、本明細書に含まれかつ本明細書において開示され;例えば、重量パーセントは、20、25、30、35、40、または45重量パーセントの下限から70、80、90、または95重量パーセントの上限までであり得る。例えば、分散体は、分散体の固体内容物の総重量に対して25から95重量パーセント、または別の場合には35から90重量パーセント、または別の場合には45から80重量パーセントの1種もしくは複数種のベースポリマーを含むことができる。分散体は、少なくとも1種または複数種のベースポリマーを含む。ベースポリマーは、例えば、熱可塑性材料および熱硬化性材料からなる群から選択することができる。1種または複数種のベースポリマーは、1種または複数種のオレフィン系ポリマー、1種または複数種のアクリル系ポリマー、1種または複数種のポリエステル系ポリマー、1種または複数種の固体エポキシポリマー、1種または複数種の熱可塑性ポリウレタンポリマー、1種または複数種のスチレン系ポリマー、およびそれらの組合せを含む。
【0036】
熱可塑性材料の例として、典型的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−3−メチル−1−ブテン、ポリ−3−メチル−1−ペンテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、エチレン−プロピレンコポリマー、エチレン−1−ブテンコポリマー、およびプロピレン−1−ブテンコポリマーにより代表されるような、エチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、および1−ドデセンなどのα−オレフィンのホモポリマーおよびコポリマー(エラストマーを含む);典型的にはエチレン−ブタジエンコポリマーおよびエチレン−エチリデンノルボルネンコポリマーにより代表されるようなα−オレフィンと共役または非共役ジエンとのコポリマー(エラストマーを含む);ならびに、典型的には、エチレン−プロピレン−ブタジエンコポリマー、エチレン−プロピレン−ジシクロペンタジエンコポリマー、エチレン−プロピレン−1,5−ヘキサジエンコポリマー、およびエチレン−プロピレン−エチリデンノルボルネンコポリマーにより代表されるような、2種以上のα−オレフィンと共役または非共役ジエンとのコポリマーなどのポリオレフィン(エラストマーを含む);エチレン−酢酸ビニルコポリマー、エチレン−ビニルアルコールコポリマー、エチレン−塩化ビニルコポリマー、エチレンアクリル酸またはエチレン−(メタ)アクリル酸コポリマー、およびエチレン−(メタ)アクリレートコポリマーなどのエチレン−ビニル化合物コポリマー;ポリスチレン、ABS、アクリロニトリル−スチレンコポリマー、α−メチルスチレン−スチレンコポリマー、スチレンビニルアルコール、スチレンメチルアクリレート、スチレンブチルアクリレート、スチレンブチルメタクリレートなどのスチレンアクリレート、およびスチレンブタジエンおよび架橋スチレンポリマーなどのスチレンのコポリマー(エラストマーを含む);およびスチレン−ブタジエンコポリマーおよびその水和物、およびスチレン−イソプレン−スチレントリブロックコポリマーなどのスチレンブロックコポリマー(エラストマーを含む);ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル−塩化ビニリデンコポリマー、ポリメチルアクリレート、およびポリメチルメタクリレートなどのポリビニル化合物;ナイロン6、ナイロン6,6、およびナイロン12などのポリアミド;ポリエチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレートなどの熱可塑性ポリエステル;ポリカーボネート、およびポリフェニレンオキシド等;ならびに、ポリ−ジシクロペンタジエンポリマーおよび関連ポリマー(コポリマー、ターポリマー)を含むガラス状炭化水素系樹脂;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベルサチン酸ビニル(vinyl versatate)、および酪酸ビニルなどの飽和モノオレフィン;メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、フェニルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、およびブチルメタクリレート等を含むモノカルボン酸のエステルなどのビニルエステル;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、それらの混合物;開環メタセシス重合およびクロスメタセシス重合等により製造される樹脂が挙げられるが、これらに限定されない。これらの樹脂は、単独または2つ以上の組合せのいずれかで使用することができる。
【0037】
ベースポリマーとして適当な(メタ)アクリレートの例として、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレートおよびイソオクチルアクリレート、n−デシルアクリレート、イソデシルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレートならびに2−ヒドロキシエチルアクリレートおよびアクリルアミドが挙げられる。好ましい(メタ)アクリレートは、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、メチルメタクリレートおよびブチルメタクリレートである。他の適当なモノマーには、アクリル系およびメタクリル系エステルモノマー:すなわち、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、デシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、sec−ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、t−ブチルアミノエチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、ジシクロペンテニルメタクリレート、フェニルメタクリレートを含む低級アルキルアクリレートおよびメタクリレートが含まれる。
【0038】
選択される実施形態において、ベースポリマーは、エチレン−αオレフィンコポリマー、およびプロピレン−αオレフィンコポリマーからなる群から選択されるポリオレフィンを含む。特に、選択される実施形態において、ベースポリマーは、1種または複数種の非極性ポリオレフィンを含む。
【0039】
特定の実施形態において、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン、それらのコポリマー、およびそれらのブレンド、ならびにエチレン−プロピレン−ジエンターポリマーを使用することができる。幾つかの実施形態において、好ましいオレフィン性ポリマーには、Elstonに発行された米国特許第3,645,992号に記載された均質ポリマー;Andersonに発行された米国特許第4,076,698号に記載された高密度ポリエチレン(HDPE);不均質に分岐した線状低密度ポリエチレン(LLDPE);不均質に分岐した線状超低密度ポリエチレン(ULDPE);均質に分岐した線状エチレン/α−オレフィンコポリマー;例えば、米国特許第5,272,236号および第5,278,272号に開示された工程により調製することができる均質に分岐した、実質的に線状のエチレン/α−オレフィンポリマー(これらの特許の開示は参照により本明細書に組み込まれる);ならびに低密度ポリエチレン(LDPE)またはエチレン酢酸ビニルポリマー(EVA)などの高圧のフリーラジカル重合によるエチレンポリマーおよびコポリマーが含まれる。
【0040】
一実施形態において、ベースポリマーは、プロピレン系コポリマーまたはインターポリマーである。幾つかの特定の実施形態において、プロピレン/エチレンコポリマーまたはインターポリマーは、実質的にアイソタクチックプロピレン配列を有するものとして特徴づけられる。用語「実質的にアイソタクチックプロピレン配列」および同様な用語は、配列が、13C NMRにより測定して、約0.85を超える、好ましくは約0.90を超える、より好ましくは約0.92を超える、および最も好ましくは約0.93を超えるアイソタクチックトライアッド(mm)を有することを意味する。アイソタクチックトライアッドは、当技術分野において周知であり、例えば、米国特許第5,504,172号およびWO00/01745に記載されており、13C NMRスペクトルにより測定されるコポリマー分子鎖中のトライアッド単位で表したアイソタクチック配列を指す。そのようなプロピレン系コポリマーは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,960,635号および第6,525,157号に、詳細にさらに記載されている。そのようなプロピレン/α−オレフィンコポリマーは、The Dow Chemical Companyから、商品名VERSIFY(商標)で、またはExxonMobil Chemical Companyから、商品名VISTAMAXX(商標)で市販されている。
【0041】
他の特定の実施形態において、ベースポリマーは、エチレン酢酸ビニル(EVA)系ポリマーであってよい。他の実施形態において、ベースポリマーは、エチレン−メチルアクリレート(EMA)系ポリマーであってよい。他の特定の実施形態において、エチレン−αオレフィンコポリマーは、エチレン−ブテン、エチレン−ヘキセン、またはエチレン−オクテンコポリマーまたはインターポリマーであってよい。他の特定の実施形態において、プロピレン−αオレフィンコポリマーは、プロピレン−エチレンもしくはプロピレン−エチレン−ブテンコポリマーまたはインターポリマーであってよい。
【0042】
ある実施形態において、ベースポリマーは、5重量パーセントと20重量パーセントの間のエチレン含有率および0.5から300g/10分の溶融流速(230℃、2.16kg荷重で)を有するプロピレン−エチレンコポリマーまたはインターポリマーであってよい。他の実施形態において、プロピレン−エチレンコポリマーまたはインターポリマーは、9重量パーセントと12重量パーセントの間のエチレン含有率および1から100g/10分の溶融流速(230℃、2.16kg荷重で)を有することができる。
【0043】
他の実施形態において、ベースポリマーは50パーセント未満の結晶度を有することができる。好ましい実施形態において、ベースポリマーの結晶度は5から35パーセントであってよい。より好ましい実施形態において、結晶度は7から20パーセントの範囲にあってよい。
【0044】
ある他の実施形態において、ベースポリマーは、半結晶性ポリマーであり、110℃未満の融点を有し得る。好ましい実施形態において、融点は25から100℃であり得る。より好ましい実施形態において、融点は40℃と85℃との間であり得る。
【0045】
他の選択される実施形態において、オレフィンブロックコポリマー、例えば、米国特許仮出願第11/376,835号に記載されているものなどのエチレンマルチブロックコポリマーを、ベースポリマーとして使用することができる。そのようなオレフィンブロックコポリマーは、エチレン/α−オレフィンインターポリマーであってよく、該インターポリマーは、
(a)M/Mが1.7から3.5であり、少なくとも1つの融点T(摂氏)と密度d(グラム/立方センチメートル)とは、Tとdの数値が:
>−2002.9+4538.5(d)−2422.2(d)
という関係で対応する;または
(b)M/Mが1.7から3.5であり、溶融熱ΔH(J/g)、および最高DSCピークと最高CRYSTAFピークとの間の温度差として定義されるデルタ量ΔT(摂氏)により特徴づけられ、ΔTおよびΔHの数値は以下の関係を有する:
ΔT>−0.1299(ΔH)+62.81 (ゼロを超え130J/gまでのΔHに対して)、
ΔT≧48℃ (130J/gを超えるΔHに対して)、
その際、CRYSTAFピークは少なくとも5パーセントの累積ポリマーを使用して決定され、および5パーセント未満のポリマーが同定可能なCRYSTAFピークを有すれば、そのときCRYSTAF温度は30℃である;または
(c)エチレン/α−オレフィンインターポリマーの圧縮成形フィルムで測定された、300パーセントの変形および1サイクルにおける弾性回復率(パーセント)Reにより特徴づけられ、かつ密度d(グラム/立方センチメートル)を有し、その際、エチレン/α−オレフィンインターポリマーが実質的に架橋相を含まないときに、Reおよびdの数値が以下の関係を満たす:
Re>1481−1629(d);または
(d)TREFを使用して分画するときに40℃と130℃との間で溶出する分子画分を有し、該画分は、同じ温度範囲で溶出する同等のランダムエチレンインターポリマー画分のコモノマーモル含有率より少なくとも5パーセント高いコモノマーモル含有率を有し、前記同等のランダムエチレンインターポリマーは、同じコモノマー(単数または複数)を有し、かつメルトインデックス、密度、およびコモノマーモル含有率(全ポリマーに対して)が前記エチレン/α−オレフィンインターポリマーの対応する値の10パーセント以内にあることを特徴とする;または
(e)25℃における貯蔵弾性率G’(25℃)および100℃における貯蔵弾性率G’(100℃)を有し、G’(25℃)のG’(100℃)に対する比が1:1から9:1の範囲内である。
【0046】
エチレン/α−オレフィンインターポリマーは、
(a)TREFを使用して分画されたときに40℃と130℃との間で溶出する分子画分を有し、該画分は少なくとも0.5および約1までのブロック指数および約1.3を超える分子量分布M/Mを有することを特徴とする;または
(b)ゼロを超えおよび約1.0までの平均ブロック指数および約1.3を超える分子量分布M/Mを有する
こともできる。
【0047】
ある実施形態において、ベースポリマーは、コモノマーまたはグラフトされたモノマーのいずれかとして極性基を有する極性ポリマーを含む。典型的実施形態において、ベースポリマーは、コモノマーまたはグラフトされたモノマーのいずれかとして極性基を有する1種または複数種の極性ポリオレフィンを含む。典型的極性ポリオレフィンとしては、商品名で入手可能なもので、The Dow Chemical Companyから市販されているPRIMACOR(商標)、E.I.DuPont de Nemoursから市販されているNUCREL(商標)、およびExxonMobil Chemical Companyから市販されているESCOR(商標)、ならびに米国特許第4,599,392号、第4,988,781号、および第5,938,437号(これらの各々の全体を参照により本明細書に組み込む)に記載されたものなどのエチレン−アクリル酸(EAA)およびエチレン−メタクリル酸コポリマーが含まれるが、これらに限定されない。他の典型的ベースポリマーとしては、エチレンエチルアクリレート(EEA)コポリマー、エチレンメチルメタクリレート(EMMA)、およびエチレンブチルアクリレート(EBA)が含まれるが、これらに限定されない。
【0048】
一実施形態において、ベースポリマーは、エチレン−アクリル酸(EAA)コポリマー、エチレン−メタクリル酸コポリマー、およびそれらの組合せからなる群から選択される極性ポリオレフィンを含み、安定剤は、エチレン−アクリル酸(EAA)コポリマー、エチレン−メタクリル酸コポリマー、およびそれらの組合せからなる群から選択される極性ポリオレフィンを含む。ただし、ベースポリマーは安定剤よりも低い酸数を有する。
【0049】
ある実施形態において、ベースポリマーは、例えば、エポキシ樹脂を含むことができる。エポキシ樹脂は、1分子当たり1個または複数の隣接するエポキシ基、すなわち、1分子当たり少なくとも1つの1,2−エポキシ基を有する組成物を指す。一般的に、そのような化合物は、少なくとも1つの1,2−エポキシ基を有する、飽和または不飽和脂肪族、脂環式、芳香族またはヘテロ環式化合物である。そのような化合物は、所望であれば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、エーテル基、低級アルキルなどの1個または複数の非干渉置換基で置換することができる。
【0050】
代表的エポキシは、参照により本明細書に組み込まれる1967年にMcGraw−Hill(New York)により出版された、H.E.LeeおよびK.NevilleによるHandbook of Epoxy Resinsおよび米国特許第4,066,628号に記載されている。
【0051】
本発明の実施に使用することができる特に有用な化合物は、以下の式:
【0052】
【化1】

(式中、nは0以上の平均値を有する)
を有するエポキシ樹脂である。
【0053】
本発明において有用なエポキシ樹脂は、例えば、多価フェノールおよび多価アルコールのグリシジルポリエーテルを含むことができる。本発明の例示として、本発明において使用することができる既知のエポキシ樹脂の例には、例えば、ジグリシジルエーテルレソルシノール、カテコール、ヒドロキノン、ビスフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールAP(1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン)、ビスフェノールF、ビスフェノールK、テトラブロモビスフェノールA、フェノール−ホルムアルデヒドノボラック樹脂、アルキル置換フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、フェノール−ヒドロキシベンズアルデヒド樹脂、クレゾール−ヒドロキシベンズアルデヒド樹脂、ジシクロペンタジエン−フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン置換フェノール樹脂、テトラメチルビスフェノール、テトラメチル−テトラブロモビフェノール、テトラメチルトリブロモビフェノール、テトラクロロビスフェノールAおよび任意のそれらの組合せが挙げられる。
【0054】
本発明において特に有用なジエポキシドの例として、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(一般にビスフェノールAと称される)のジグリシジルエーテルおよび2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン(一般にテトラブロモビスフェノールAと称される)のジグリシジルエーテルが挙げられる。任意の2種以上のポリエポキシドの混合物も本発明の実施において使用することができる。
【0055】
本発明の実施において使用することができる他のジエポキシドとして、米国特許第5,246,751号、第5,115,075号、第5,089,588号、第4,480,082号および第4,438,254号(これらの全ては参照により本明細書に組み込まれる)に記載されたものなどの多価フェノールのジグリシジルエーテル、または米国特許第5,171,820号に記載されたものなどのジカルボン酸のジグリシジルエステルが含まれる。他の適当なジエポキシドとしては、例えば、α,ω−ジグリシジルオキシイソプロピリデン−ビスフェノール系エポキシ樹脂(D.E.R.(登録商標)300および600シリーズのエポキシ樹脂として市場で知られる、The Dow Chemical Company(Midland、Michigan)の製品)が含まれる。
【0056】
本発明の実施において使用することができるエポキシ樹脂として、多価フェノールのジグリシジルエーテルと多価フェノールとの反応または多価フェノールとエピクロロヒドリンとの反応のいずれかにより調製されるエポキシ樹脂(「タフィー(taffy)樹脂」としても知られる)も含まれる。
【0057】
典型的エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル;4,4’−スルホニルジフェノール;4,4−オキシジフェノール;4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン;レソルシノール;ヒドロキノン;9,9’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン;4,4’−ジヒドロキシビフェニルまたは4,4’−ジヒドロキシ−α−メチルスチルベンおよびジカルボン酸のジグリシジルエステルが含まれる。
【0058】
本発明の実施において使用することができる他の有用なエポキシド化合物は脂環式エポキシドである。脂環式エポキシドは、例えば以下の一般式:
【0059】
【化2】

(式中、Rは、1個もしくは複数のヘテロ原子(Cl、Br、およびSなどであるが、これらに限定されない)を、または炭素と安定な結合を形成する原子もしくは原子団(Si、PおよびBなどであるが、これらに限定されない)を場合により含む炭化水素基であり、nは1以上である)
により例示されるように、炭素環中の2個の隣接する原子に結合したエポキシの酸素を有する飽和した炭素環からなる。
【0060】
脂環式エポキシドは、モノエポキシド、ジエポキシド、ポリエポキシド、またはこれらの混合物であってよい。例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第3,686,359号に記載された任意の脂環式エポキシドが、本発明において使用され得る。例示として、本発明において使用することができる脂環式エポキシドには、例えば、(3,4−エポキシシクロヘキシル−メチル)−3,4−エポキシ−シクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、ビニルシクロヘキセンモノオキシドおよびそれらの混合物が含まれる。
【0061】
ある実施形態において、ベースポリマーは、熱可塑性ポリウレタンポリマーを含む。そのような熱可塑性ポリウレタンポリマーは一般に知られており、例えば、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2008/057878号に、熱可塑性ポリウレタンポリマーを記載する程度までさらに記載されている。
【0062】
当業者は上記のリストが典型的ベースポリマーの包括的でない目録であることを理解するであろう。本発明の範囲は特許請求の範囲によってのみ限定されることは理解されるであろう。
【0063】
ポリマー性安定剤
分散体は、安定な分散体の形成を助成する少なくとも1種または複数種のポリマー性安定剤(polymeric stabilizing agents)をさらに含む。本発明の分散体は、分散体の固体内容物の総重量に対して10から60重量パーセントの1種または複数種のポリマー性安定剤を含む。10から60重量パーセントまでの全ての個々の値および部分範囲は、本出願に含まれ、および本明細書に記載されている;例えば、重量パーセントは、10、15、17、または20重量パーセントの下限から35、45、50、55、または60重量パーセントの上限までであることができる。例えば、分散体は、分散体の固体内容物の総重量に対して10から55、または別の場合には10から50、または別の場合には15から45、または別の場合には15から35、または別の場合には20から45重量パーセントの1種または複数種のポリマー性安定剤を含むことができる。ある実施形態において、ポリマー性安定剤は、コモノマーまたはグラフトされたモノマーのいずれかとして極性基を有する極性ポリマーであってよい。典型的実施形態において、ポリマー性安定剤は、コモノマーまたはグラフトされたモノマーのいずれかとして極性基を有する1種または複数種の極性ポリオレフィンを含む。典型的ポリマー性安定剤は、エチレン−アクリル酸(EAA)およびエチレン−メタクリル酸コポリマー、例えば商品名で入手可能なもので、The Dow Chemical Companyから市販されているPRIMACOR(商標)、E.I.DuPont de Nemoursから市販されているNUCREL(商標)、および、ExxonMobil Chemical Companyから市販されているESCOR(商標)、ならびに米国特許第4,599,392号、第4,988,781号、および第5,938,437号(これらの各々はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているものなどを含むが、これらに限定されない。他の典型的ポリマー性安定剤としては、エチレンエチルアクリレート(EEA)コポリマー、エチレンメチルメタクリレート(EMMA)、およびエチレンブチルアクリレート(EBA)が含まれるが、これらに限定されない。当業者は、多数の他の有用なポリマーも使用できることを理解するであろう。
【0064】
ポリマーの極性基が本質的に酸性または塩基性であれば、ポリマー性安定剤は、中和剤で部分的にまたは完全に中和して対応する塩を形成することができる。ある実施形態において、EAAなどの安定剤の中和は、モル基準で25から200パーセントであることができ、または別の場合には、モル基準で50から110パーセントであることができ、または別の場合には、モル基準で50から90パーセントであることができ、または別の場合には、モル基準で50から75パーセントであることができる。例えば、EAAについては、中和剤は水酸化アンモニウムまたは水酸化カリウムなどの塩基であることができる。別の場合には、EAAについては、中和剤は、好ましくは、水酸化カリウムなどの塩基であることができる。他の中和剤は、例えば、水酸化リチウムまたは水酸化ナトリウムを含むことができる。他の選択肢において、中和剤は、例えば、モノエタノールアミン、または2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(AMP)など任意のアミンであってよい。当業者は、適当な中和剤の選択は、調合される具体的組成物に依存すること、およびそのような選定は当業者の知識の範囲内であることを理解するであろう。ポリマー性安定剤を中和するために必要な中和剤の量は、本明細書中の上記の適当な塩基性無機粒子を使用することにより減少することができる。
【0065】
本発明の実施に有用なさらなる安定剤は、アニオン性界面活性剤、またはノニオン性界面活性剤を含むことができるが、これらに限定されない。アニオン性界面活性剤の例として、スルホン酸塩、カルボン酸塩、およびリン酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。ノニオン性界面活性剤の例として、エチレンオキシドを含有するブロックコポリマーおよびシリコーン界面活性剤が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の実施に有用なさらなる安定剤は、外来界面活性剤または内在界面活性剤のいずれであってもよい。外来界面活性剤は、分散体調製中に化学的に反応してベースポリマーになることがない界面活性剤である。本発明に有用な外来界面活性剤の例として、ドデシルベンゼンスルホン酸塩およびラウリルスルホン酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。内在界面活性剤は、分散体調製中に化学的に反応してベースポリマーになる界面活性剤である。本発明に有用な内在界面活性剤の例として2,2−ジメチロールプロピオン酸およびその塩が挙げられる。
【0066】
疎水性粒子状充填剤
分散体は、分散体の固体内容物の総重量に対して1から50重量パーセントの1種または複数種の疎水性粒子状充填剤を含む。1から50重量パーセントまでの全ての個々の値および部分範囲は、本出願に含まれかつ本明細書に記載されている。例えば、該重量パーセントは、1、3、5、10重量パーセントの下限から15、25、35、45、または50重量パーセントの上限までであることができる。例えば、分散体は、分散体の固体内容物の総重量に対して1から25、または別の場合には1から35、または別の場合には1から40、または別の場合には1から45重量パーセントの1種または複数種の疎水性粒子状充填剤を含むことができる。そのような疎水性粒子状充填剤としては、無機粒子、有機粒子、およびそれらの組合せが含まれるが、それらに限定されない。疎水性粒子状充填剤は、5nmから500nmの範囲内に平均粒子サイズ直径を有することができる。5nmから500nmまでの全ての個々の値および部分範囲は本出願に含まれかつ本明細書中で開示される、例えば、平均粒子サイズ直径は、5、10、20、30、40、または50nmの下限から100、100、200、250、300、350、400、450、または500nm未満の上限までであることができる。例えば、疎水性粒子状充填剤は、5nmから400nm、または別の場合には、5nmから350nm、または別の場合には5nmから300nm、または別の場合には5nmから250nm、または別の場合には5nmから200nm、または別の場合には5nmから100nm、または別の場合には5nmから100nm未満の範囲内に平均粒子サイズ直径を有することができる。
【0067】
本発明において使用される無機粒子は、異なった性質を有する異なった無機粒子の混合物を含むことができる。本発明において使用される無機粒子は、好ましくは塩基性である。無機粒子は、元来塩基性であるか、または別の選択肢として、処理されて表面に塩基性官能基を得るかのいずれであってもよい。非塩基性無機粒子を使用することが所望であれば、その場合は、非塩基性無機粒子を、表面に塩基性基を示すように処理することが好ましい。そのような処理の例として、無機粒子を少なくとも1種の加水分解性多価金属塩の水溶液と接触させ、続いて中和することが挙げられる。処理は、脂肪酸またはそれらの塩が無機粒子にコートされる前に実施されることが好ましい。本発明において使用される無機粒子としては、水酸化アルミニウム、アラゴナイト、硫酸バリウム、方解石、硫酸カルシウム、ドロマイト、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、マグネサイト、粉砕炭酸カルシウム、沈殿炭酸カルシウム、酸化チタン(例えば、ルチルおよび/またはアナターゼ)、サチンホワイト、酸化亜鉛、シリカ、アルミナ三水和物、雲母、タルク、粘土、焼成粘土、珪藻土、およびバテライトまたは任意のそれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種または複数種の物質が含まれるが、これらに限定されない。粒子が元来塩基性でなければ、それらは任意の適当な方法により処理して塩基性にする必要がある。無機粒子は、好ましくは炭酸カルシウム粒子、より好ましくは沈殿炭酸カルシウムである。別の場合には、疎水性粒子状充填剤は、炭酸カルシウム、例えば、沈殿炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、例えば、石膏、硫酸バリウム、酸化アルミニウム、アルミナ三水和物(ATH)、TiO、ヒュームドシリカ、沈殿シリカ、カーボンブラック、合成層状シリケート、例えば、雲母またはフルオロ雲母、中性層状シリケート、例えば、モンモリロナイト、ヘクトライト、サポナイト、またはバーミキュライト、ナノクレイ、例えば、インターカレーションおよび剥離を改善する改良剤を含有する天然または合成層状シリケート、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、ホウ酸亜鉛、およびタルクからなる群から選択される無機粒子であってよい。
【0068】
典型的有機粒子としては、ポリスチレン系顔料(またはプラスチック顔料、例えば、スチレン、スチレンブタジエンコポリマー)、デンプン系顔料等が含まれるが、これらに限定されない。
【0069】
液体媒質
分散体は、液体媒質をさらに含む。液体媒質は、任意の媒質であってよい。例えば、液体媒質は水であってもよい。本発明の分散体は、分散体の総体積に対して40から70体積パーセントの液体媒質を含む。特定の実施形態において、水の含有率は、分散体の総体積に対して25から65、または別の場合には35から65、または別の場合には40から55体積パーセント、または別の場合には45から55体積パーセントの範囲内にあることができる。分散体の水含有率は、固体内容物(ベースポリマーに安定剤を加えた)が1体積パーセントから74体積パーセントの間にあるように制御できることが好ましい。特定の実施形態において、固体の範囲は10体積パーセントから70体積パーセントの間であってよい。他の特定の実施形態において、固体の範囲は20体積パーセントから60体積パーセントの間である。ある他の実施形態において、固体の範囲は30体積パーセントから55体積パーセントの間である。
【0070】
コーティング組成物のための充填剤
コーティング組成物は、1種または複数種の充填剤をさらに含むことができる。そのような充填剤としては、微粉砕されたガラス、炭酸カルシウム、アルミニウム三水和物、タルク、三酸化アンチモン、フライアッシュ、粘土(例えば、ベントナイトまたはカオリン粘土など)、または他の既知の充填剤などの従来の充填剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0071】
コーティング組成物のための添加剤
コーティング組成物は、添加剤をさらに含むことができる。典型的添加剤としては、湿潤剤、界面活性剤、静電気防止剤、消泡剤、粘着防止剤、架橋剤、ワックス−分散顔料、ワックス、中和剤、増粘剤、相溶化剤、光沢剤、レオロジー改良剤、抗菌剤、抗黴剤、および当業者に知られた他の添加剤が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0072】
適用
本発明によるコーティング組成物は基材に適用することができる。典型的な適当な基材としては、シート、不織材料、織物材料、フィルム、発泡体等が含まれるが、これらに限定されない。そのような基材は、有機系材料、無機材料、およびそれらの組合せを含むことができる。基材は、例えば、セルロース系材料、天然ポリマー系材料、合成ポリマー系材料、金属系材料、無機系材料、およびそれらの組合せを含むことができる。基材は、多孔質、例えば、微細多孔質であってもよい。コーティング組成物は、コーティング組成物を適用するための従来の方法により基材に適用することができる。そのような方法は一般に知られており、噴霧、浸漬、ロール塗布、ブレード塗工、流し塗、フレキソ印刷および輪転グラビアなどのプリント技法、サイズプレス、計量サイズプレス、スクリーンコーティング、ロッドコーティング(rod coating)、それらの組合せ等が含まれるが、これらに限定されない。コーティング組成物は、任意の量で基材に適用することができる。例えば、コーティング組成物は、分散体の乾燥重量に対して、基材の1m当たり0.5gから200gの範囲内、基材の1m当たり0.1gから500gの範囲内、基材の1m当たり0.5gから100gの範囲内、基材の1m当たり0.5gから10gの範囲内のコート重量を有するコートされた基材を製造する量で基材に適用することができる。基材がコーティング組成物でコートされた後、液体媒質を少なくとも部分的に除去することができる。基材に適用された分散体は、従来の乾燥方法により乾燥することができる。そのような従来の乾燥方法としては、風乾、対流オーブン乾燥、熱風乾燥、マイクロ波オーブン乾燥、および/または赤外線オーブン乾燥が含まれるが、これらに限定されない。基材に適用された分散体は、任意の温度で乾燥することができる。例えば、ベースポリマーの融点以上の範囲の温度で乾燥することができる。または別の場合には、ベースポリマーの融点未満の範囲の温度で乾燥することができる。基材に適用された分散体は、60°F(15.5℃)から700°F(371℃)の範囲内の温度で乾燥することができる。60°F(15.5℃)から700°F(371℃)までの全ての個々の値および部分範囲は、本出願に含まれかつ本明細書中で開示される。例えば、基材に適用された分散体は60°F(15.5℃)から500°F(260℃)の範囲内の温度で乾燥することができ、または別の場合には、基材に適用された分散体は、60°F(15.5℃)から450°F(232.2℃)の範囲内の温度で乾燥することができる。基材に適用された分散体の温度は、ベースポリマーの融点温度以上の範囲の温度に約40分未満の間上昇させることができる。約40分未満の全ての個々の値および部分範囲は、本出願に含まれかつ本明細書中で開示される。例えば、基材に適用された分散体の温度は、ベースポリマーの融点以上の範囲の温度に約20分未満の間上昇させることができる。または別の場合に、基材に適用された分散体の温度は、ベースポリマーの融点以上の範囲の温度に約10分未満の間上昇させることができる。または他の選択肢において、基材に適用された分散体の温度は、ベースポリマーの融点以上の範囲の温度に0.1から600秒の範囲内の間上昇させることができる。他の選択肢において、基材に適用された分散体の温度は、ベースポリマーの融点未満の範囲の温度に、40分未満の間上昇させることができる。約40分未満の全ての個々の値および部分範囲は、本出願に含まれかつ本明細書中で開示される。例えば、基材に適用された分散体の温度は、ベースポリマーの融点未満の範囲の温度に約20分未満の間上昇させることができる。または別の場合には、基材に適用された分散体の温度は、ベースポリマーの融点温度未満の範囲の温度に約10分未満の間上昇させることができる。または他の選択肢において、基材に適用された分散体の温度は、ベースポリマーの融点未満の範囲の温度に0.1から600秒の範囲内の期間上昇させることができる。
【0073】
ベースポリマーの融点以上の範囲の温度で基材に適用された分散体を乾燥させると、ベースポリマーの連続相を、その中に分散された安定剤の離散相とともに有するフィルムの形成を助長し、ベースポリマーの連続相はそれによりバリア性をさらに改善する。
【0074】
最終用途適用
本発明によるコーティング組成物は、水バリアコーティング、蒸気バリアコーティング、油およびグリースバリアコーティング、およびそれらの組合せなどのバリアコーティングとして使用することができる。本発明による発明物品は、ペット食品バッグ、冷凍食品バッグなどの食品包装物品を含む。
【0075】
分散体の形成
分散体は、当業者に認められる任意の数の方法により形成することができる。一実施形態においては、1種または複数種のベースポリマー、1種または複数種の極性ポリマー性安定剤、および1種または複数種の疎水性粒子状充填剤を、水の存在下に、および場合により、アンモニア、水酸化カリウム、またはこれら2者の組合せなどの1種または複数種の中和剤の存在下に、押出機中で溶融混練して分散体コンパウンドを形成する。他の実施形態においては、1種または複数種の極性ポリマー性安定剤および1種または複数種の疎水性粒子状充填剤がコンパウンドされ、次にコンパウンドは1種または複数種のベースポリマー、水、および1種または複数種の中和剤の存在下に押出機中で溶融混練される。幾つかの実施形態において、分散体は最初に希釈されて1から3重量パーセントの水を含み、次に、続いてさらに希釈されて約25重量パーセントを超える水を含む。
【0076】
当技術分野において知られる任意の溶融混練手段を使用することができる。幾つかの実施形態において、ニーダー、BANBURY(登録商標)ミキサー、一軸スクリュー押出機、または多軸スクリュー押出機、例えば、二軸スクリュー押出機が使用される。本発明による分散体を製造する工程は、特に限定されない。例えば、押出機、ある実施形態においては二軸スクリュー押出機が、背圧調節器、溶融ポンプ、またはギアポンプに連結されている。典型的実施形態は、塩基貯槽および初水貯槽も備え、それらは各々ポンプを含む。所望の量の塩基および初水は、塩基貯槽および初水貯槽からそれぞれ供給される。任意の適当なポンプを使用することができるが、幾つかの実施形態においては、240バールの圧力で約150cc/分の流量を供給するポンプが使用されて、塩基および初水を押出機に供給する。他の実施形態においては、液体注入ポンプが、200バールで300cc/分または133バールで600cc/分の流量を供給する。幾つかの実施形態において、塩基および初水は予熱器で予熱される。
【0077】
1種または複数種のベースポリマーは、ペレット、粉末、または薄片の形態で、フィーダーから押出機の導入口に供給することができ、そこで樹脂は溶融またはコンパウンドされる。1種または複数種の極性ポリマー性安定剤、および1種または複数種の疎水性粒子状充填剤も、最初に1種または複数種のベースポリマーと同時にフィーダーを通して押出機中に供給される。または別の場合には、1種もしくは複数種の疎水性粒子状充填剤を1種もしくは複数種の極性ポリマー性安定剤中にコンパウンドし、次に1種もしくは複数種のベースポリマーとともにフィーダーを通して押出機中に供給することができる。幾つかの実施形態においては、追加の極性ポリマー性安定剤をさらに計量して押出機中に入れることができる。溶融した樹脂は、次に混合および輸送ゾーンから押出機の乳化ゾーンに送達されて、そこで水貯槽および塩基貯槽から初期量の水および塩基が導入口を通して添加される。幾つかの実施形態において、追加の界面活性剤を付加的にまたは単独で水ストリームに添加することができる。幾つかの実施形態においては、溶融ブレンドされた混合物は、押出機の希釈および冷却ゾーン中で、水貯槽からの追加の水でさらに希釈される。典型的には、分散体は、冷却ゾーンで少なくとも30重量パーセント水に希釈される。それに加えて、希釈された混合物は、所望の希釈レベルに達するまで任意の回数だけ希釈することができる。幾つかの実施形態において、水は、二軸スクリュー押出機中ではなく、溶融物が押出機から排出された後に溶融樹脂を含むストリームに加えられる。この方式においては、押出機中におけるスチーム圧力の増大が排除される。
【実施例】
【0078】
以下の実施例は本発明を例示するが、本発明の範囲を限定することは意図されない。
【0079】
本発明の分散体1−2
本発明の分散体は、以下の手順にしたがって作製された。表Iに示した、1種または複数種のベースポリマー樹脂、1種または複数種のポリマー性安定剤樹脂、および1種または複数種の疎水性粒子状充填剤が選択されて二軸スクリュー押出機中に同時に供給された。AFFINITY 8200のペレットおよびPRIMACOR 5980のペレットを85部のAFFINITYに対して15部のPRIMACOR 5980の比で物理的に混合してしてから、Schenck Mechatron減量固体フィーダー(loss in weight solids feeder)を用いて押出機に加えた。押出機における圧力は、運転中300psiに保った。これらの成分を押出機のコンパウンディングゾーン中で溶融ブレンドして、それにより溶融ブレンドされたコンパウンドを形成した。それに続いて、水および塩基を計量して押出機に入れ、溶融ブレンドされたコンパウンドを塩基の存在下に水と接触させた。さらなる水を計量して押出機に入れ、それにより分散体をさらに希釈した。本発明の分散体に対する調合表を表Iにおいて報告する。押出条件は表IIで報告する。本発明の分散体は、それらの性質について試験して、これらの性質を表IIIに掲載する。本発明の分散体は、セルロース系基材、すなわちStora Enso Oyj.から供給されるおよそ240g/mの坪量を有する厚紙に適用した。本発明のコートされた基材1−2の性質を試験して表IVに報告した。
【0080】
比較分散体は以下の手順にしたがって作製した。表Iに示した、1種または複数種のベースポリマー樹脂、および1種または複数種のポリマー性安定剤樹脂を選択して、二軸スクリュー押出機中に同時に供給した。これらの成分を押出機のコンパウンディングゾーンで溶融ブレンドして、それにより溶融ブレンドされたコンパウンドを形成した。それに続いて、水および塩基を計量して押出機中に入れ、溶融ブレンドされたコンパウンドを塩基の存在下で水と接触させた。さらなる水を計量して押出機に入れて、それにより分散体をさらに希釈した。比較分散体についての調合成分を表Iに報告する。押出条件を表IIに示す。比較分散体をそれらの性質について試験して、これらの性質を表IIIに掲載する。比較分散体をセルロース系基材、すなわち、Stora Enso Oyj.から供給されたおよそ240g/mの坪量を有する厚紙に適用した。比較のコートされた基材1−3の性質を試験して表IVに報告した。
【0081】
【表1】

【0082】
【表2】

【0083】
【表3】

【0084】
【表4】

【0085】
試験方法
試験方法は以下を含む:
Cobb水耐性試験はTappi試験方法T441 om−90により以下の条件でコートされた厚紙について測定した:
−試験期間:2分
−試料サイズ:13cm
−脱イオン水の量:100ml
【0086】
酸素透過速度(OTR)測定は、測定装置(モデルOX−TRANモデル2/21、Mocon,Inc.製)を使用して23℃の温度および50パーセントの相対湿度(RH)で、酸素透過率を測定することにより実施した。この機器内で、各測定ユニットは試料により分離される2つの隔室から構成されている。1つの隔室には担体ガス(窒素)を通じ、他の隔室には試験ガス(酸素)を流す。両方のガスは、所定の温度および相対湿度(RH)を有する。測定が開始された後、酸素がCouloxセンサーに入るに任せる。このセンサーは、酸素に露出されたときに、流入した酸素量に比例する電流を生じる。
【0087】
水蒸気透過速度(WVTR)は、ASTM E96−80ディッシュ試験を使用して測定した。該試験は、湿潤室から試験標本(シート)を通る、脱湿剤を含む乾燥室中への湿分の透過を測定する。
【0088】
3Mキット試験
グリースおよび油のキット試験液体は、表Aに示した処方にしたがって作製する。ヒマシ油(USP規格99〜100パーセント)、トルエン(ACS規格、ガスクロマトグラフィーにより99.5パーセント分)、ヘプタン(試薬規格、99.0パーセントn−ヘプタンを用いて99.9パーセント分)は、VWR Internationalから購入する。
【0089】
【表A】

【0090】
油およびグリース耐性「キット試験」は、TAPPI UM557「紙および厚紙のグリース、油、およびワックスに対する撥油性(キット試験)」にしたがって試料について実施する。キット試験は、コーティングを有する紙または厚紙の撥油性の程度を試験する手順である。
【0091】
キット試験は、以下のようにして実施する。コートされた基材紙の各々5片の代表的試料(5.08cm×5.08cm)をとる。キットの等級数試験試薬を、本開示のコーティング組成物を有するコートされた基材紙の平坦表面上に2.54cmの高さから1滴落とす。15秒後に、過剰のキット等級数試験試薬を清浄なティッシュまたは綿スワブで拭き去る。コートされた基材紙の表面をただちに検査する。
【0092】
コートされた基材紙は、試験表面が未試験のコートされた基材紙と比較して明らかな暗色化を示せば、不合格と指定される。しかし、コートされた基材紙が合格すれば、コートされた基材紙の新しい試料で、キットの次のより高い等級数の試験試薬を用いて不合格のキット等級数の試験試薬が見出されるまで、上記試験を繰り返す。5つの最高合格キット等級数試験試薬の平均を最も近い0.5に丸めて、コートされた基材紙に対するコーティング組成物についての平坦キット等級数として報告する。
【0093】
本発明は、その精神および本質的な特質から逸脱せずに、他の形態で具体化することができる。したがって、参照は、上記の明細書よりむしろ、本発明の範囲の指示として添付した特許請求の範囲に対してなされるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースポリマーを含むコア;
極性ポリマー性安定剤を含み、前記コアを少なくとも部分的に取り囲むシェル;および
前記シェル中に少なくとも部分的に埋め込まれた少なくとも1種または複数種の疎水性粒子状充填剤
を含む分散体を含むコーティング組成物。
【請求項2】
基材及び前記基材の少なくとも1つの表面上にある分散体を含む、コートされた物品であり、
当該分散体は、ベースポリマーを含むコア;極性ポリマー性安定剤を含み、前記コアを少なくとも部分的に取り囲むシェル;および、前記シェル中に少なくとも部分的に埋め込まれた1種または複数種の疎水性粒子状充填剤を含む、
物品。
【請求項3】
コーティング組成物を製造する方法であって、
ベースポリマーを選択するステップ;
極性ポリマー性安定剤を選択するステップ;
1種または複数種の疎水性粒子状充填剤を選択するステップ;
前記ベースポリマー、前記極性ポリマー性安定剤、および前記1種または複数種の疎水性粒子状充填剤を溶融ブレンドするステップ;
前記溶融ブレンドされたベースポリマー、極性ポリマー性安定剤および1種または複数種の疎水性粒子状充填剤を、水の存在下におよび場合により中和剤の存在下に溶融混練するステップ;
それにより、前記ベースポリマーを含むコア;前記極性ポリマー性安定剤を含み、前記コアを少なくとも部分的に取り囲むシェル;および、前記シェル中に少なくとも部分的に埋め込まれた前記1種または複数種の疎水性粒子状充填剤を含む前記分散体を形成するステップ
を含む方法。
【請求項4】
コートされた物品を作製する方法であって、
セルロース系材料を含む基材を提供するステップ;
ベースポリマーを含むコア;極性ポリマー性安定剤を含み、前記コアを少なくとも部分的に取り囲むシェル;および、前記シェル中に少なくとも部分的に埋め込まれた1種または複数種の疎水性粒子状充填剤;を含む分散体を含むコーティング組成物を提供するステップ;
前記コーティング組成物を前記基材の少なくとも1つの表面に塗布するステップ;および
それにより前記コートされた物品を作製するステップ
を含む方法。
【請求項5】
ベースポリマーがエチレン系ポリマー、プロピレン系ポリマー、およびそれらの組合せからなる群から選択される熱可塑性ポリマーである、請求項1から4のいずれかに記載のコーティング組成物、物品、コーティング組成物を製造する方法またはコートされた物品を作製する方法。
【請求項6】
分散体が分散体の固体の総重量に対して20から90重量パーセントのベースポリマーおよび10から50重量パーセントの極性ポリマー性安定剤を含む、請求項1から4のいずれかに記載のコーティング組成物、物品、コーティング組成物を製造する方法またはコートされた物品を作製する方法。
【請求項7】
ベースポリマーと極性ポリマー性安定剤とが、各々異なる酸数(acid number)を有するという条件で、同じタイプのポリマー材料である、請求項1から4のいずれかに記載のコーティング組成物、物品、コーティング組成物を製造する方法またはコートされた物品を作製する方法。
【請求項8】
分散体が分散体の固体の総重量に対して1から50重量パーセントの1種または複数種の疎水性粒子状充填剤を含み、かつ前記1種または複数種の疎水性粒子状充填剤が無機物質、有機物質、およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1から4のいずれかに記載のコーティング組成物、物品、コーティング組成物を製造する方法またはコートされた物品を作製する方法。
【請求項9】
無機物質が、水酸化アルミニウム、アラゴナイト、硫酸バリウム、方解石、硫酸カルシウム、ドロマイト、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、マグネサイト、粉砕炭酸カルシウム、沈殿炭酸カルシウム、酸化チタン(例えば、ルチルおよび/またはアナターゼ)、サチンホワイト、酸化亜鉛、シリカ、アルミナ三水和物、雲母、タルク、粘土、焼成粘土、珪藻土、バテライト、およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1から4のいずれかに記載のコーティング組成物、物品、コーティング組成物を製造する方法またはコートされた物品を作製する方法。
【請求項10】
1種または複数種の疎水性粒子状充填剤が、5nmから1μmの範囲内に粒子サイズ直径を有する、請求項1から4のいずれかに記載のコーティング組成物、物品、コーティング組成物を製造する方法またはコートされた物品を作製する方法。
【請求項11】
極性ポリマー性安定剤が、エチレン−アクリル酸(EAA)、エチレンメチルメタクリレート(EMMA)、エチレンブチルアクリレート(EBA)、およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1から4のいずれかに記載のコーティング組成物、物品、コーティング組成物を製造する方法またはコートされた物品を作製する方法。
【請求項12】
極性ポリマー性安定剤が50から90パーセント中和されている、請求項1から4のいずれかに記載のコーティング組成物、物品、コーティング組成物を製造する方法またはコートされた物品を作製する方法。
【請求項13】
分散体が5,000cP未満からの範囲に粘度を有する、請求項1から4のいずれかに記載のコーティング組成物、物品、コーティング組成物を製造する方法またはコートされた物品を作製する方法。
【請求項14】
分散体が02.から2μmの範囲内に平均固体粒子サイズ分布を有し、かつ分散体が8から12の範囲内にpHを有する、請求項1から4のいずれかに記載のコーティング組成物、物品、コーティング組成物を製造する方法またはコートされた物品を作製する方法。
【請求項15】
分散体が、1種または複数種の消泡剤、1種または複数種の湿潤剤、1種または複数種の抗菌剤、1種または複数種の架橋剤、1種または複数種のレオロジー改良剤、1種または複数種の補助安定剤、1種または複数種のアンチブロッキング剤、1種または複数種の着色剤、および1種または複数種の追加の充填剤を含む、請求項1から4のいずれかに記載のコーティング組成物、物品、コーティング組成物を製造する方法またはコートされた物品を作製する方法。

【公表番号】特表2012−511620(P2012−511620A)
【公表日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−540765(P2011−540765)
【出願日】平成21年11月23日(2009.11.23)
【国際出願番号】PCT/US2009/065445
【国際公開番号】WO2010/068396
【国際公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】