説明

コーティング組成物、プラスチックレンズ

【課題】導電性と充分な透明性とを有するコーティング層を実現することができるコーティング組成物を提供する。
【解決手段】下記の(イ)成分、(ロ)成分の各成分を含むコーティング組成物を構成する。
(イ)成分:アクリル樹脂又はウレタン樹脂、(ロ)成分:導電性ポリマー

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電防止性コーティング用のコーティング組成物に係わる。また、このコーティング組成物により基材上にプライマーコート層を形成したプラスチックレンズに係わる。
【背景技術】
【0002】
レンズ等の光学部品には、その基材の材料として、通常、ガラスやプラスチック等の絶縁材料が用いられている。
【0003】
これらの基材の材料は、絶縁材料であるために、表面が帯電することがある。
特に、布や樹脂性スポンジ等の他の絶縁材で光学部品の表面を拭くと、帯電しやすくなる。基材が帯電した状態では、表面にほこり等が付着しやすい。
【0004】
帯電を抑制・防止するには、基材の絶縁材料に対して、導電材料を含むコーティング層を形成することが有効である。
【0005】
一例として、基材上に形成する反射防止膜中にITO膜を導入することにより、所定の表面抵抗を得て、帯電を抑制することが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0006】
また、他の例として、特許文献2には、ポリチオフェン等の導電性ポリマーと、コロイド状粒子と、ハードコート層用の結合剤となるエポキシシランとを含むコーティング組成物を使用して、帯電防止性と耐摩耗性とを有するコーティング層を実現することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6852406号明細書
【特許文献2】特表2010−528123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記特許文献1に記載された方法では、反射防止膜中に導入するITO膜を、真空蒸着により形成している。
しかしながら、蒸着によりITO膜を形成するため、製造コストが高くなる。
また、反射防止膜中に導入するので、反射防止膜を設けない光学部品には適用できない、という問題がある。
【0009】
前記特許文献2に記載された方法では、ハードコート層にポリチオフェン等の導電性ポリマーを含有させるので、耐摩耗性を有するハードコート層に導電性を付与することができる。
しかしながら、ハードコート層は、耐摩耗性を得るためにある程度以上厚く形成する必要があることから、充分な導電性を付与するには、ハードコート層の厚さに応じて導電性ポリマーの添加量を多くする必要がある。そして、ハードコート層への導電性ポリマーの添加量を多くすると、導電性ポリマーに由来するブツが塗膜に生じる、透明性が悪くなる、等の問題を生じる。
【0010】
上述した問題の解決のために、本発明においては、導電性と透明性とを有するコーティング層を実現することができるコーティング組成物を提供するものである。
また、このコーティング組成物から成るコーティング層が形成され、帯電防止性と耐擦傷性とを有するプラスチックレンズを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のコーティング組成物は、下記の(イ)成分、(ロ)成分の各成分を含むものである。
(イ)成分
アクリル樹脂又はウレタン樹脂
(ロ)成分
導電性ポリマー
【0012】
前記本発明のコーティング組成物において、(ロ)成分の導電性ポリマーがポリチオフェン又はポリピロールである構成とすることができる。
前記本発明のコーティング組成物において、(ロ)成分のコーティング組成物中の含有量(質量%)が0.5%〜60%である構成とすることができる。
【0013】
本発明のプラスチックレンズは、プラスチックからなる基材と、この基材上に形成され、下記の(イ)成分、(ロ)成分の各成分を含むコーティング組成物から成る、プライマーコート層と、このプライマーコート層の上に形成されたハードコート層とを有するものである。
(イ)成分
アクリル樹脂又はウレタン樹脂
(ロ)成分
導電性ポリマー
【0014】
前記本発明のコーティング組成物及び前記本発明のプラスチックレンズにおいて、コーティング組成物が、(ハ)成分として、珪素、アルミニウム、スズ、ジルコニウム、チタンから選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物の微粒子をさらに含む構成とすることができる。
【0015】
上述の本発明のコーティング組成物によれば、アクリル樹脂又はウレタン樹脂と、導電性ポリマーとを含有しているので、蒸着やスパッタ等の方法を使用しなくても、ディッピングや塗布等の方法により、導電性と透明性を有するコーティング層を、容易に安い製造コストで形成することが可能になる。
上述の本発明のプラスチックレンズによれば、基材上に本発明のコーティング組成物から成るプライマーコート層を形成するので、このプライマーコート層により導電性を付与することができる。また、プライマーコート層の上のハードコート層により、プライマーコート層を保護することが可能になる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のコーティング組成物を使用することにより、ディッピング等によって、導電性と透明性とを有するコーティング層を、容易に安い製造コストで形成することができる。
これにより、導電性と透明性とを有するコーティング層を含む、プラスチックレンズ等の光学部品を大量生産することが可能である。
【0017】
本発明のプラスチックレンズによれば、下層のプライマーコート層に導電性を付与して、帯電防止性を実現することができる。そして、プライマーコート層上のハードコート層によりプライマーコート層を保護し、耐擦傷性を実現することができる。
また、プライマーコート層単層に導電性ポリマーを添加した場合に透明性が悪くなったとしても、導電性を有するプライマーコート層の上にハードコート層を別途設けることによって、外部散乱を低減して透明性を改善することができる。
従って、本発明のプラスチックレンズにより、帯電防止性と耐擦傷性とを有するプラスチックレンズを実現することができる。
そして、ハードコート層の下のプライマーコート層に導電性ポリマーを添加しているので、導電性ポリマーの含有量が比較的少なくても、充分な導電性を付与することが可能になり、導電性ポリマーの含有量を少なくして、透明性を改善することができる。
【0018】
さらに、プライマーコート層が(ハ)成分として酸化物を含むコーティング組成物から成る構成としたときには、酸化物によってプライマーコート層の屈折率を調整して、プライマーコート層の屈折率を基材やハードコート層の屈折率に近づけて、干渉縞を低減することができる。そして、(ハ)成分の酸化物の材料の選択により、1.5〜1.7の屈折率に対応することが可能になる。
この(ハ)成分と、(ロ)成分の導電性ポリマーとの組み合わせにより、各種の基材に対応することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、発明を実施するための最良の形態について説明する。
まず、本発明の概要について説明する。
【0020】
本発明のコーティング組成物は、下記の(イ)成分、(ロ)成分の各成分を含むものである。
(イ)成分
アクリル樹脂又はウレタン樹脂
(ロ)成分
導電性ポリマー
【0021】
(イ)成分としては、プライマーコート層用のコーティング剤に用いられる、アクリル樹脂もしくはウレタン樹脂を使用する。
【0022】
(ロ)成分の導電性ポリマーとしては、公知の各種の導電性ポリマーを使用することができる。
例えば、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリエチレンイミン、ポリセノフェン、ポリアリルアミン等の導電性ポリマーが挙げられる。
特に、ポリチオフェン又はポリピロールが好適である。
【0023】
コーティング組成物中の(ロ)成分の導電性ポリマーの含有量(質量%)は、好ましくは、0.5%〜60%の範囲内であり、さらに好ましくは0.5%〜50%の範囲である。
0.5%よりも含有量が少ないと、形成されるコーティング層において充分な導電性が得られなくなる。
60%よりも含有量が多いと、形成されるコーティング層の透明性を維持できない。
【0024】
(ロ)成分の導電性ポリマーには、コーティング組成物をコーティング剤として使用する際の溶媒の種類、形成するコーティング層の厚さ、等に応じて、適切な粒径のものを使用することが好ましい。
例えば、粒径が5nm〜100nmの範囲内のものを使用する。
【0025】
本発明のプラスチックレンズは、プラスチックからなる基材と、この基材上に形成され、下記の(イ)成分、(ロ)成分の各成分を含むコーティング組成物から成る、プライマーコート層と、このプライマーコート層の上に形成されたハードコート層とを有する。
(イ)成分
アクリル樹脂又はウレタン樹脂
(ロ)成分
導電性ポリマー
【0026】
本発明のプラスチックレンズを構成する基材のプラスチックとしては、メチルメタクリレートと一種以上の他のモノマーとの共重合体、ジエチレングリコールビスアリルカーボネートと一種以上の他のモノマーとの共重合体、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、不飽和ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、ポリチオウレタン、エン−チオール反応を利用したスルフィド樹脂、硫黄を含むビニル重合体等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0027】
本発明のプラスチックレンズを構成するプライマーコート層は、(イ)成分と(ロ)成分とを含むコーティング組成物、即ち、前記本発明のコーティング組成物から成る。従って、このプライマーコート層は、前記本発明のコーティング組成物を基材上に塗布して、形成することができる。
【0028】
プライマーコート層の上に形成するハードコート層の材料としては、特に限定されず、公知の有機ケイ素化合物及び金属酸化物コロイド粒子よりなるコーティング組成物を使用することができる。
【0029】
本発明のプラスチックレンズにおいて、ハードコート層の上に反射防止膜を形成してもよい。
また、表面に撥水層や保護層等を形成してもよい。
さらに、基材のプライマーコート層とは反対の側にもハードコート層を形成してもよい。
【0030】
反射防止膜の材料としては、特に限定されず、公知の無機酸化物や有機物よりなる単層、多層膜を使用することができる。
【0031】
本発明のコーティング組成物及び本発明のプラスチックレンズにおいて、コーティング組成物が、(ハ)成分として、珪素、アルミニウム、スズ、ジルコニウム、チタンから選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物の微粒子をさらに含む構成としてもよい。
(ハ)成分の酸化物としては、酸化珪素(SiO)、酸化アルミニウム、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化チタンを使用することができる。また、珪素、アルミニウム、スズ、ジルコニウム、チタンから選ばれる少なくとも1種の元素を含む、2種以上の元素の酸化物(例えば、各元素の酸化物の混合物や、2種の元素を含む複合酸化物)を使用することも可能である。
【0032】
本発明のプラスチックレンズは、例えば、以下に説明するようにして、製造することができる。
まず、(イ)成分、(ロ)成分を含有するコーティング組成物を作製する。この際に、必要に応じて、(ハ)成分やその他の成分をコーティング組成物に含有させる。
そして、このコーティング組成物を含むコーティング液を、基材の上面に、例えばスピンコートにより塗布して、さらに硬化させることにより、プライマーコート層を形成する。
次に、ハードコート層用のコーティング液を作製する。そして、このコーティング液を、プライマーコート層の上に、例えばスピンコートにより塗布して、さらに硬化させることにより、ハードコート層を形成する。特に、ハードコート層を基材の両面に塗布する場合には、ディッピング法が好適である。
【0033】
さらに、反射防止膜を形成する場合には、ハードコート層の上に反射防止膜を形成する。
反射防止膜に無機材料を使用する場合には、蒸着法等により反射防止膜を形成する。
反射防止膜に有機材料を使用する場合には、反射防止膜用のコーティング液を塗布して、硬化させることにより、反射防止膜を形成する。
【0034】
本発明のコーティング組成物は、前述した(イ)成分と、(ロ)成分とを含有していることにより、ディッピング等によって、容易に導電性を有するコーティング層を形成することができる。
これにより、導電性と透明性とを有するコーティング層を含む、プラスチックレンズ等の光学部品を大量生産することが可能である。
【0035】
本発明のプラスチックレンズは、前述した(イ)成分と、(ロ)成分とを含有するコーティング組成物から成るプライマーコート層が基材のプラスチック上に形成され、さらにプライマーコート層上にハードコート層が形成されているので、下層のプライマーコート層に導電性を付与して、ハードコート層によりプライマーコート層を保護することができる。
また、プライマーコート層単層に導電性ポリマーを添加した場合に透明性が悪くなったとしても、導電性を有するプライマーコート層の上にハードコート層を別途設けることによって、外部散乱を低減して透明性を改善することができる。
従って、本発明のプラスチックレンズにより、帯電防止性と耐擦傷性とを有するプラスチックレンズを実現することができる。
【0036】
そして、本発明のプラスチックレンズでは、ハードコート層の下のプライマーコート層に導電性ポリマーを添加しているので、プライマーコート層はハードコート層よりも薄く形成することから、導電性ポリマーの含有量が比較的少なくても、充分な導電性を付与することが可能になる。
このため、ハードコート層に導電性ポリマーを添加している場合(前記特許文献2等)と比較して、導電性ポリマーの含有量を少なくして、導電性ポリマーを含む層の透明性を向上することができる。
【0037】
さらに、プライマーコート層が(ハ)成分として酸化物を含むコーティング組成物から成る構成としたときには、酸化物によってプライマーコート層の屈折率を調整して、プライマーコート層の屈折率を基材やハードコート層の屈折率に近づけて、干渉縞を低減することができる。そして、(ハ)成分の酸化物の材料の選択により、1.5〜1.7の屈折率に対応することが可能になる。
この(ハ)成分と、(ロ)成分の導電性ポリマーとの組み合わせにより、各種の基材に対応することが可能になる。
なお、屈折率の調整が不要な場合には、コーティング組成物が(ハ)成分を含んでいなくても構わない。
【0038】
さらに、本発明のプラスチックレンズでは、ハードコート層の上に、反射防止層や撥水層を形成することが可能である。
また、ハードコート層よりも上層に形成する層の種類により、様々な機能を付与することができる。
【実施例】
【0039】
以下、実施例を用いてより具体的に本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0040】
(実施例1)
純水30質量部、メタノール128質量部からなる溶媒に、信越ポリマー製セプルジーダAS-D06(粒径約70nm)13質量部を添加して、室温で30分撹拌した。
次に、この混合物に、ADEKA製水分散ポリウレタンHUX-232を11質量部添加して、10分撹拌した。
その後、この混合物に、東レダウ・コーニング製界面活性剤Y-7006を500ppm添加して、さらに48時間撹拌し続けることにより、プライマー液Aを調整した。
【0041】
次に、HOYA製ポリカーボネートレンズを、水で洗浄した後に、プライマー液Aに室温下で浸漬させて、引き上げ速度250mm/分で引き上げた。
その後、100℃で20分間熱硬化を行った。
次に、風冷した後に、HOYA製ハードコート剤(シリカゾル分散液)をディピング処理した。そして、80℃で20分間熱硬化を行った後に、さらに120℃で2時間熱硬化を行って、サンプルAを得た。
【0042】
(実施例2)
実施例1のADEKA製水分散ポリウレタンHUX-232を8質量部添加して、10分撹拌した後に、新たに日産化学製サンコロイドHX-405MHを2質量部添加して、30分撹拌したこと以外は、実施例1と同様の方法により、プライマー液Bを調整した。
次に、実施例1と同様にして、ポリカーボネートレンズにプライマー液Bとハードコート剤とを順次塗布した後に熱硬化を行って、サンプルBを得た。
【0043】
(実施例3)
純水42質量部、メタノール115質量部からなる溶媒を使用し、実施例2のAS-D06の代わりに、DaeHa ManTech製ELコートTA2560 A-Pack(粒径約10nm)14質量部を使用し、HUX-232の代わりに、同社製アクリル樹脂分散液ELコート TA2560 B-Pack13質量部を添加する以外は、実施例2と同様の方法により、プライマー液Cを調整した。
次に、実施例2と同様にして、ポリカーボネートレンズにプライマー液Cとハードコート剤とを順次塗布した後に熱硬化を行って、サンプルCを得た。
【0044】
(実施例4)
純水75質量部、メタノール120質量部からなる溶媒を使用し、実施例3のDaeHa ManTech製ELコート TA2560 A-Packの添加量を105質量部にして、TA2560 B-Packの添加量を2.5質量部にして、さらにHX-405MHの添加量を0.4質量部とした以外は、実施例3と同様の方法により、プライマー液Dを調整した。
次に、実施例3と同様にして、ポリカーボネートレンズにプライマー液Dとハードコート剤とを順次塗布した後に熱硬化を行って、サンプルDを得た。
【0045】
(実施例5)
実施例4のDaeHa ManTech製ELコート TA2560 B-Packの添加量を1.5質量部にして、さらにHX-405MHの添加量を0.2質量部とした以外は、実施例4と同様の方法により、プライマー液Eを調整した。
次に、実施例4と同様にして、ポリカーボネートレンズにプライマー液Eとハードコート剤とを順次塗布した後に熱硬化を行って、サンプルEを得た。
【0046】
(比較例1)
実施例1のAS-D06の代わりに、信越ポリマー製セプルジーダPE-S03(粒径約300nm)6質量部を使用した以外は、実施例1と同様の手順でサンプルFを作製した。
【0047】
(比較例2)
HOYA製ハードコート剤(シリカゾル分散液)100質量部に信越ポリマー製セプルジーダAS-D06を15質量部添加し、室温で24時間撹拌して、ハードコート剤Aを得た。
HOYA製ポリカーボネートレンズを水洗浄後、HOYA製プライマー液に室温下で浸漬し、引き上げ速度250mm/分で引き上げた後、100℃で20分間熱硬化を行った。
次に、風冷した後に、ハードコート剤Aにてディピング処理し、80℃で20分間熱硬化を行った後に、120℃で2時間さらに熱硬化を行い、サンプルGを得た。
【0048】
(比較例3)
AS-D06の添加量を4質量部とした以外は、比較例2と同様の手順でサンプルHを作製した。
【0049】
(比較例4)
実施例3のELコート TA2560 A-Packの添加量を3質量部とした以外は、実施例3と同様の手順でサンプルIを作製した。
【0050】
(比較例5)
実施例4のELコート TA2560 B-Packの添加量を0.7質量部として、HX-405MHの添加量を0.1質量部とした以外は、実施例4と同様の手順でサンプルJを作製した。
【0051】
(評価方法)
実施例及び比較例の各例において、コーティング剤及びプラスチックレンズのサンプルの特性の評価を行った。
【0052】
(コーティング剤との相溶性)
まず、実施例及び比較例の各例において、サンプルを作製する際に、導電性ポリマーとコーティング剤との相溶性を調べた。
【0053】
<物性の測定>
また、実施例及び比較例のプラスチックレンズの各サンプルについて、以下に説明する試験方法により、諸物性を測定した。
【0054】
(1)成膜時の外観
各サンプルについて、暗室内蛍光灯下において、外観の目視判定を行った。
【0055】
(2)表面抵抗
表面抵抗を、絶縁抵抗計(三菱化学製 ハイレスタUP MCP-HT450)にて測定した。
【0056】
(3)耐擦傷性試験
プラスチックレンズの表面に、スチールウール(規格#0000、日本スチールウール社製)にて1kgf/cmでプラスチック表面を擦って、傷のつき難さを目視にて判定した。判定基準は以下の通りとした。
◎.強く擦っても殆ど傷がつかない
○.強く擦るとうっすらと傷がつく
×.プラスチック基板と同等の傷がつく
【0057】
(4)密着性試験(クロスハッチ試験)
1mm間隔で100目クロスカットし、粘着テープ(ニチバン株式会社製セロテープ(登録商標))を強く貼り付け急速に剥がし、硬化被膜の剥離の有無を調べた。判定基準は以下の通りとした。
◎.剥離なし
○.100目中剥離が10目未満
×.100目中剥離が10目以上
【0058】
コーティング剤の固形分中の導電性ポリマーの固形分の含有比率(質量%)と、上述した各評価の結果を、まとめて表1に示す。
【0059】
【表1】

【0060】
表1より、実施例1〜実施例5の場合、表面抵抗が充分に低く、密着性及び耐擦傷性も良好な結果が得られた。2種類の導電性ポリマー、プライマーコート層の2種類の樹脂、酸化物(サンコロイドHX-405MH)の有無に関わらず、良好な結果が得られた。
比較例1の場合、相溶性が充分ではなく、良好な成膜ができなかったことから、導電性ポリマーの粒径は300nmでは大きすぎると考えられる。
比較例2の結果から、ハードコート層に導電性ポリマーを含有させた場合には、クモリを生じることがわかる。
また、比較例2では、密着性や耐擦傷性が充分ではなかった。これは、ハードコート層に含有させた場合に、コート層の表面の凹凸が大きくなるためと考えられる。
比較例3では、ハードコート層に含有させた導電性ポリマーの量が少ないので、クモリは生じておらず、密着性及び耐擦傷性も良好であったが、表面抵抗が非常に高くなった。
比較例4では、クモリは生じておらず、密着性及び耐擦傷性も良好であったが、プライマーコート層に含有させた導電性ポリマーの量が少ないので、表面抵抗が非常に高くなった。
比較例5では、プライマーコート層に含有させた導電性ポリマーの量が多いので、表面抵抗は低いが、充分な密着性が得られなかった。
また、比較例4及び比較例5は、前述した導電性ポリマーの含有量(質量%)の好ましい範囲0.5%〜60%の範囲外であるため、この範囲内である実施例よりも特性が劣っている。
【0061】
本発明は、上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲でその他様々な構成が取り得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(イ)成分、(ロ)成分の各成分を含むことを特徴とするコーティング組成物。
(イ)成分
アクリル樹脂又はウレタン樹脂
(ロ)成分
導電性ポリマー
【請求項2】
前記(ロ)成分の前記導電性ポリマーが、ポリチオフェン又はポリピロールであることを特徴とする請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項3】
前記(ロ)成分のコーティング組成物中の含有量(質量%)が0.5%〜60%であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のコーティング組成物。
【請求項4】
前記コーティング組成物において、さらに下記の(ハ)成分を含むことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
(ハ)成分
珪素、アルミニウム、スズ、ジルコニウム、チタンから選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物の微粒子
【請求項5】
プラスチックからなる基材と、
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のコーティング組成物から成る、プライマーコート層と、
前記プライマーコート層の上に形成されたハードコート層とを有する
ことを特徴とするプラスチックレンズ。

【公開番号】特開2012−177014(P2012−177014A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−39844(P2011−39844)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】