説明

コーティング組成物、積層体および強浸透性内容物用包装材料

【課題】本発明は、使用する基材の種類に係わらず、また包装する内容物が強浸透性内容物であってもラミネート強度の低下を伴うことのない良好なラミネート強度を保持できる、コーティング組成物、積層体および強浸透性内容物用包装材料を提供することを目的とする。
【解決手段】カチオン性ポリマーおよびこのカチオン性ポリマーを架橋させる架橋剤、溶媒を必須成分とし、架橋剤を含むカチオン性ポリマー樹脂成分70〜99.9重量%に対し、希土類元素系酸化物ゾルを0.1〜30重量%配合したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用する基材の種類に係わらず、また包装する内容物が強浸透性内容物であってもラミネート強度の低下を伴うことのない良好なラミネート強度を保持できる、コーティング組成物、積層体および強浸透性内容物用包装材料に関する。
【背景技術】
【0002】
食品、医薬品、トイレタリー用品など固体、粉末、液体状内容物を包装する包装材料は、主にポリエステル、ポリアミド、ポリプロピレンなどの各種延伸フィルム基材やアルミニウム箔などの金属箔基材に、ポリエチレンやポリプロピレンなどの熱融着性フィルム(以下シーラントと記載する)をポリウレタン系接着剤などを用いて積層することによって製造される。その層構成は内容物に応じた要求機能を満たす為に設計され、ガスバリア性が必要とされる場合には、各種蒸着フィルム基材層やエチレン−ビニルアルコール共重合体などのガスバリア性に優れる層を設けることによって設計される。
【0003】
しかしながら、包装材料により包装される内容物には、酸性・アルカリ性物質、香料、界面活性剤、高沸点有機溶剤などを含有するものが多くあり、これらの内容物を包装することで、積層体におけるラミネート強度の低下を招いたり剥離が生じることがあった。その原因の一つとして、これらの内容物(以下、強浸透性内容物と記載する)がシーラントを通過し、ラミネートに用いるポリウレタン系接着剤を膨潤・溶解させることで、接着剤の接着機能を低下させるところにあった。この内容は、特にアルミニウム箔や蒸着フィルム基材のようなバリア性基材を用いることで顕著にその傾向が認められ、シーラント層を通過した強浸透性内容物が、バリア基材でトラップされ、ポリウレタン系接着剤に蓄積されることで、上述した接着機能の低下を伴なう。
【0004】
このような状況に対応するため、ラミネート加工に使用される接着剤の改良が種々行われてきている。特許文献1では、アルカリ性の高い内容物に対する耐性を向上させ、さらには各種プラスチックフィルムに対する接着力を向上させた接着剤が提案されている。しかしながら、このような接着剤を用いても、内容物が湿布薬や浴用剤など揮発性物質を含む場合、揮発性物質の強い浸透力によって接着剤が膨潤し、接着機能の低下を伴う傾向が確認されている。
【0005】
特許文献2では、この揮発性物質などを充填しても接着機能の低下を伴わないアルミ包材の提案がされており、熱水変性処理を施したアルミニウム箔を用いることで、上記問題の課題を解決した内容が開示されている。しかしながら、この包材で特徴とされる熱水変性処理を施したアルミニウム箔は、その処理が非常に高付加価値な工程であるため、最終的に仕上がる包材コストが高くなり、湿布薬や浴溶剤のような包材に展開しにくいといった課題を有する。
【0006】
特許文献3では、ポリイソシアネート系コート層をポリエステル、ポリアミド、ポリプロピレンなどの延伸フィルム基材に設けることで、安価でかつ上記強浸透性内容物に対しても接着機能が低下しない包材の提案がされている。しかしながら、コーティング層はアルミニウム箔へ直接塗布をしてもその機能が発現しにくく、プラスチックフィルム基材に対しては良好な方法ではあるが、アルミニウム箔などの金属箔への密着性という点で課題を要する。
【0007】
またアルミニウム箔を用いた方材は、酸やアルカリ以外の内容物として例えば塩化ナトリウム水溶液のような電解液を充填した場合は、シーラント層を通過してアルミニウム箔
を腐蝕させるといった問題を伴う。これらを対処する為に、特に飲料缶分野ではアルミニウム箔内層側にクロメート処理などの化成処理を施すケースが多い。しかしながらその化成処理はクロム(6価)を用いていることから環境側面的には問題を有する材料であり、その機能は絶大であるが、今後このクロメート処理を規制あるいは撤廃される方向に進んでいる。そのような意味で、特許文献4ではノンクロム系化成処理剤の提案がされている。しかしながらこのような処理剤を用いてもクロメートほどの機能を果たせていないのが現状である。
【特許文献1】特開平10−130615号公報
【特許文献2】特開2002−19015号公報
【特許文献3】特開2005−335374号公報
【特許文献4】特開2004−262143号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の技術的背景を考慮してなされたものであって、使用する基材の種類に係わらず、また包装する内容物が強浸透性内容物であってもラミネート強度の低下を伴うことのない良好なラミネート強度を保持できる、コーティング組成物、積層体および強浸透性内容物用包装材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するための解決手段として、請求項1記載の発明は、カチオン性ポリマーおよびこのカチオン性ポリマーを架橋させる架橋剤、溶媒を必須成分とし、架橋剤を含むカチオン性ポリマー樹脂成分70〜99.9重量%に対し、希土類元素系酸化物ゾルを0.1〜30重量%配合したことを特徴とするコーティング組成物である。
【0010】
請求項2記載の発明は、前記カチオン性ポリマーが、ポリエチレンイミン、ポリエチレンイミンとカルボン酸を有するポリマーからなるイオン高分子錯体、アクリル主骨格に1級アミンをグラフトさせた1級アミングラフトアクリル樹脂、ポリアリルアミンあるいはこれらの誘導体、アミノフェノールから選ばれる少なくとも1種以上からなることを特徴とする請求項1記載のコーティング組成物である。
【0011】
請求項3記載の発明は、前記カチオン性ポリマーを架橋させる架橋剤の官能基が、イソシアネート基、グリシジル基、カルボキシル基、オキサゾリン基から選ばれる少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項1または2記載のコーティング組成物である。
【0012】
請求項4記載の発明は、前記希土類元素系酸化物ゾルが、酸化セリウムゾル、酸化イットリウムゾル、酸化ニオブゾル、酸化ランタンゾルのいずれかであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のコーティング組成物である。
【0013】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4記載のいずれか1項に記載のコーティング組成物を、基材上に乾燥状態での厚さが0.01〜10μmの範囲で設けたことを特徴とする積層体である。
【0014】
請求項6記載の発明は、前記基材が、ポリエステル基材、ポリアミド基材、蒸着ポリエステル基材、蒸着ポリアミド基材、ポリプロピレン基材、蒸着ポリプロピレン基材、金属箔基材のいずれかであることを特徴とする積層体である。
【0015】
請求項7記載の発明は、請求項5または6記載の積層体を構成要素として含むことを特徴とする強浸透性内容物用包装材料である。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、使用する基材の種類に係わらず、また包装する内容物が強浸透性内容物であってもラミネート強度の低下を伴うことのない良好なラミネート強度を保持できる、コーティング組成物、積層体および強浸透性内容物用包装材料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態の一例について詳細に説明する。本発明のコーティング組成物のは、カチオン性ポリマーおよびこのカチオン性ポリマーを架橋させる架橋剤、溶媒を必須成分とし、樹脂成分(=カチオン性ポリマー+架橋剤)70〜99.9重量%に対し希土類元素系酸化物ゾルを0.1〜30重量%配合したことを特徴とするものである。
【0018】
また、本発明のコーティング組成物は、ポリエステルやポリアミドやポリプロピレンなどのプラスチック基材、あるいはアルミニウム箔などの金属箔への強浸透性内容物に対する接着機能の低下を防止したものである。
【0019】
まず、プラスチック基材への接着機能を向上させるという点で、カチオン性ポリマーの選定が挙げられる。特にこのカチオン性ポリマーとしてはアミンを含有するポリマーが挙げられ、ポリエチレンイミン、ポリエチレンイミンとカルボン酸を有するポリマーからなるイオン高分子錯体、アクリル主骨格に1級アミンをグラフトさせた1級アミングラフトアクリル樹脂、ポリアリルアミンあるいはこれらの誘導体、アミノフェノールなどが挙げられる。またポリエチレンイミンとイオン高分子錯体を形成するカルボン酸を有するポリマーとしてはポリアクリル酸あるいはそのイオン塩などのポリカルボン酸(塩)、あるいはこれにコモノマーを導入させた共重合体や、カルボキシメチルセルロースあるいはそのイオン塩などのカルボキシル基を有する多糖類が挙げられる。ポリアリルアミンとしては、アリルアミン、アリルアミンアミド硫酸塩、ジアリルアミン、ジメチルアリルアミンなどの単独重合体あるいは共重合体を用いることが可能であり、さらに、これらのアミンはフリーのアミンでも酢酸あるいは塩酸による安定化物でも用いることが可能である。またさらに共重合体成分として、マレイン酸、二酸化イオウなどを用いることも可能である。さらには1級アミンを部分メトキシ化させることで熱架橋性を付与させたタイプも用いることが可能である。アミノフェノールも利用することが可能である。特に好適なのはアリルアミンあるいはその誘導体が挙げられる。
【0020】
一般に、これらカチオン性ポリマーは水溶性であるため、これら単独では強浸透性内容物どころか耐水性に劣る為、架橋構造を形成させる必要がある。このような架橋構造を形成させる為の架橋剤としては、種としてアミンと反応性を有する官能基を有する架橋剤が好ましく、イソシアネート基、グリシジル基、カルボキシル基、オキサゾリン基を有する化合物が挙げられる。イソシアネート基を有する化合物の例としては、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートあるいはその水素添加物、ヘキサメチレンジイソシアネート、4−4'ジフェニルメタンジイソシアネートあるいはその水素添加物、イソホロンジイソシアネートなどのジイソシアネート類、あるいはこれらのイソシアネート類を、トリメチロールプロパンなどの多価アルコールと反応させたアダクト体、水と反応させることで得られたビューレット体、あるいは三量体であるイソシアヌレート体などのポリイソシアネート類、あるいはこれらのポリイソシアネート類をアルコール類、ラクタム類、オキシム類などでブロック化させたブロックポリイソシアネートなどが挙げられる。グリシジル基を有する化合物の例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等のグリコール類とエピクロルヒドリンを作用させたエポキシ化合物、グリセリン、ポリグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の多価アルコール類とエピクロ
ルヒドリンを作用させたエポキシ化合物、フタル酸、テレフタル酸、シュウ酸、アジピン酸等のジカルボン酸とエピクロルヒドリンとを作用させたエポキシ化合物などが挙げられる。カルボキシル基を有する化合物としては、各種脂肪族あるいは芳香族ジカルボン酸などが挙げられ、さらにはポリ(メタ)アクリル酸やポリ(メタ)アクリル酸のアルカリ(土類)金属塩を用いることも可能である。オキサゾリン基を有する化合物は、オキサゾリンユニットを2つ以上有する低分子化合物やあるいはイソプロペニルオキサゾリンのように重合性モノマーを用いる場合には、アクリル系モノマー、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルなどと共重合させたものを用いることが可能である。さらにはシランカップリング剤のように、アミンと官能基を選択的に反応させ、架橋点をシロキサン結合にさせることも可能である。この場合、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアナートプロピルトリエトキシシランが挙げられ、特にカチオン性ポリマーあるいはその共重合物との反応性を考慮するとエポキシシラン、アミノシラン、イソシアネートシランが好適に使われる。これらの架橋剤はカチオン性ポリマー100部に対し1〜20部配合が適切である。また、上述したポリアリルアミンの1級アミンをメトキシカルボニル化させたものは、熱架橋性を有するため、架橋剤の配合は不要である。
【0021】
これらのカチオン性ポリマー(あるいは架橋剤配合物)はプラスチック基材やアルミニウム箔などの金属箔に対する密着性を向上させることは可能である。しかしながらこれだけではアルミニウム箔などの腐蝕を防止することは困難である。そこで、筆者らはアルミニウム箔の腐蝕に関し誠意検討を行った結果、クロメートと同様にアルミニウムの腐蝕防止効果(インヒビター効果)を有し、かつ、環境側面的にも好適な材料として希土類元素系酸化物を用いるに至った。特に酸化セリウム、酸化イットリウム、酸化ニオブ、酸化ランタンなどの材料が有効であることを確認し、これらを上記カチオン系ポリマーに配合する手段として、これらの酸化物を平均粒径20nm以下のゾルとして用いることを見出した。この方法を用いることで、従来上記酸化物のみを形成させる酸化物系化成処理剤では条件的に過酷(高温・長時間など)だったものが、一般的なコーティング方法で上記酸化物皮膜を含むコーティング組成物層を設けることが可能であり、アルミニウム箔などの金属箔腐蝕防止効果を付与させることが可能である。また、カチオン性ポリマー中のアミンはこれら金属の配位子として作用することが期待され、コーティング組成物としての安定性だけでなく、この塗膜の安定性という点でも好適である。これらの希土類元素系酸化物ゾルは、例えば水系、アルコール系、炭化水素系、ケトン系、エステル系、エーテル系など各種溶媒を用いることが可能であり、上述したカチオン性ポリマーの溶媒と合わせた選択が可能であり、樹脂成分(=カチオン性ポリマー+架橋剤)70〜99.9重量%に対し希土類元素系酸化物ゾルを0.1〜30重量%入れることが好ましい。0.1重量%より少ないとアルミへの腐蝕防止効果が不足する。30重量%より多くても構わないが、能力として飽和状態であるため30重量%とする。
【0022】
必要に応じてこれらの化合物には各種添加剤を配合することも可能である。例えばアルミニウム箔に用いる場合には、コーティング組成物としてエッチング機能が必要になる場合がある。そのような点で各種酸あるいあ塩基を加えてもかまわない。コーティング組成物が酸性であれば、各種無機酸、例えば塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、フッ酸などや、酢酸などの有機酸を用いることが可能であり、コーティング組成物が塩基であれば化成ソーダなども用いることが可能である。またこれらに限らず、その他要求品質で必要とされるような機能性添加剤も配合することが可能であり、界面活性剤(レベリング剤など)や紫外線吸収剤や酸化防止剤など配合しても構わず、またこれらに限られるものではない。
【0023】
これらのコーティング組成物を塗工する基材としては、プラスチック基材であればポリエステル、ポリアミド、ポリプロピレンなどの基材が挙げられ、ポリエステル基材であればポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなど、各種二塩基酸とジオールの縮合物が挙げられる。ポリアミド基材であれば、ナイロン6、ナイロン66などの脂肪族ポリアミドから、メタキシリレンジアミンなどの芳香族アミンと二塩基酸の縮合物からなる芳香族ポリアミドも用いることが可能である。またポリ酢酸ビニルあるいはエチレン−酢酸ビニル共重合体の部分あるいは完全けん化物、ポリプロピレンなど各種基材が挙げられ、これらの限られたものではない。これらの基材は延伸/未延伸も問わない。さらにこれらの基材は、アルミ蒸着、シリカ蒸着、アルミナ蒸着を施した基材でも構わなく、さらにはこれらの基材が有するバリア機能を向上させるべく、各種蒸着プライマーやオーバーコートを設けてもかまわない。またこれらの基材は上記コーティング組成物の密着性をさらに向上させるべく、各種表面処理、プライマー処理を施しても構わない。表面処理としてはコロナ処理、フレーム処理、プラズマ処理などが挙げられる。プライマー処理としては上述した架橋剤として用いる剤を、単独でコーティングする手法などが挙げられる。
【0024】
基材として金属箔を用いる場合、アルミニウム系、銅系、ステンレス系、マグネシウム系、ニッケル系の箔を用いることが可能である。一般的な包装用途ではアルミニウム箔が好適に用いられる。アルミニウム箔の場合には上記コーティング組成物の密着性を向上させるという点で脱脂処理を施した方が好ましい。脱脂処理としては、大きくウェットタイプ、ドライタイプが挙げられる。ウェットタイプでは、酸脱脂あるいはアルカリ脱脂などが挙げられ、酸脱脂としては硫酸、硝酸、塩酸、フッ酸などの無機酸を単独あるいはこれらを混合して得られたものを用いる方法などが挙げられ、必要に応じてアルミのエッチング効果を向上させるという点でもFeイオンやCeイオンなどの供給源となる各種金属塩を配合しても構わない。アルカリ脱脂としては水酸化ナトリウムなどの強エッチングタイプが挙げられ、また弱アルカリ系や界面活性剤を配合したものでも構わない。これらの脱脂は浸漬法やスプレー法で行われる。ドライ脱脂は一つの方法としては、アルミの焼鈍工程でその処理時間を長くすることで行う方法が挙げられる。また、フレーム処理やコロナ処理なども挙げられる。さらにはある特定波長の紫外線を照射することにより発生した活性酸素により汚染物質を酸化分解・除去するような脱脂処理も挙げられる。
【0025】
上記処理を施したアルミニウム箔にアンカーコート層あるいはプライマー層を設けるにあたり、0.01〜10μmの範囲で設ける。0.01μmよりも薄いと強浸透性内容物に対する耐性を付与することが困難である。10μmより厚くても構わないが、10μmより厚いのは接着性という点で飽和している。
【0026】
上記プラスチック基材あるいは金属箔にコーティング組成物を設ける方法として、公知の手法が挙げられ、グラビアコーター、グラビアリバースコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、ダイコーター、バーコーター、キスコーター、コンマコーターなどを用いることが可能である。
【0027】
強浸透性内容物用の包装材料に展開する場合は、上述した積層体のコーティング組成物の上にシーラント層を設ける必要がある。シーラント層としては低密度、中密度、高密度のポリエチレン、エチレン−αオレフィン共重合体、ホモ、ブロック、あるいはランダムポリプロピレン、プロピレン−αオレフィン共重合体などのポリオレフィン樹脂が挙げられる。またこれらのポリオレフィン樹脂を無水マレイン酸などでグラフト変成させた酸変成のポリオレフィン樹脂も用いることが可能である。これらを設ける方法としては押出ラミネーションにより直接積層させる方法、事前にインフレーションあるいはキャスト製膜により作成したフィルムを用いて、熱ラミネーションにより積層させる方法が挙げられる
。またこれらのシーラント層は単層ではなく各種機能性を有する樹脂との共押出しでも構わなく、エチレン−酢酸ビニル共重合体の部分あるいは完全けん化物やエチレン−環状オレフィン共重合体やポリメチルペンテンなどの樹脂を介在させた多層フィルムを用いても構わない。またこれらのシーラントフィルムは各種添加剤、例えば、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、粘着付与剤など各種添加剤を配合してもかまわない。
【0028】
図1に、本発明における積層体の構成の一例を示すが、以下に包装材料としての構成のについて説明する。なお、これらの包装材料に限定されるものではない。また、下記略号は以下の材料を表す。PET:2軸延伸ポリエステル基材、PA:2軸延伸ナイロン基材、PP:2軸ポリプロピレン基材、VM:(アルミ、シリカ、アルミナなどの蒸着層)、VMAC:蒸着プライマー層、OC:蒸着オーバーコート層、Al:金属箔層、発:本発明のコーティング組成物層、P:プライマー層、シ:シーラント層、AD:ウレタン系接着剤層
構成例−1:PET(orNy)/AD/Al/発/シ
構成例−2:PET(orNy)/AD/Al/P/発/シ
構成例−3:PET(orNy)/AD/Al/AD/Ny(orPET)/発/シ
構成例−4:PET(orNy)/AD/Al/AD/Ny(orPET)/P/発/シ構成例−5:PET(or Ny)/VM/OC/発/シ(VM⇒アルミナ、シリカ蒸着)
構成例−6:PET(orNy)/VM/OC/P/発/シ(VM⇒アルミナ、シリカ蒸着)
構成例−7:PET(orNy)/VM/OC/ADH/Ny(orPET)/発/シ(VM⇒アルミナ、シリカ蒸着)
構成例−8:PET(orNy)/VM/OC/ADH/Ny(orPET)/P/発/シ(VM⇒アルミナ、シリカ蒸着)
構成例−9:PET(orNyorPP)/VMAC/VM/発/シ(VM⇒アルミ蒸着)
構成例−10:PET(orNyorPP)/VMAC/VM/P/発/シ(VM⇒アルミ蒸着)
以下に、コーティング組成物の調整を含め上記構成例の包装材料の製造方法を説明する。
【0029】
[コーティング組成物の調整]
上述したカチオン系ポリマーを所定固形分濃度になるように溶媒にて希釈し、十分攪拌後に架橋剤を配合する。本コーティング組成物が水性であれば、必要に応じてpH調整を行う。pH調整剤としては酸性側に調整する場合は各種無機酸や有機酸、アルカリ性側に調整する場合はアンモニアあるいは化成ソーダを用いる。この組成物に希土類元素系無機酸化物ゾルを配合する。一般に無機系酸化物ゾルはそのゾルの安定化(凝集・沈降をさせない)ために酸あるいはアルカリで調整を行っている。よって上記pH調整は無機系酸化物ゾルの安定化という点でも行う必要がある。希土類系無機酸化物ゾルを配合したら十分に攪拌を行い、安定化させる。
【0030】
[基材の作成]
上述した構成例のうち、代表的な構成例−1、−2、−3、−4について記載する。これらの構成ではプラスチック基材と金属箔のラミネーションが基本になる。その際にはドライラミネーション、ノンソルベントラミネーション、ウエットラミネーションなどの手法で、ポリエステルポリオールあるいはポリエーテルポリオール、アクリルポリオールを主剤としたポリウレタン系接着剤で積層させる。
【0031】
[コーティング組成物の塗工]
構成例−1、−2、−3、−4にあたる基材はプラスチック基材/接着剤/金属箔、あるいはプラスチック基材/接着剤/金属箔/接着剤/プラスチック基材に相当する。この複合基材に本発明のコーティング組成物を、上述したグラビアコーター、グラビアリバースコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、ダイコーター、バーコーター、キスコーター、コンマコーターを用いて設けることが可能である。本発明のコーティング組成物は、次工程でのシーラントフィルムをインラインでもオフラインでも積層させることが可能であることから、上記コーターを用いて焼き付け硬化させてもかまわない。またプライマーコートを設ける場合も同様な手法を用いることが可能であり、プライマー層を設けてからオフラインあるいは2ヘッドコーターによりインラインでコーティング組成物を設けても構わない。
【0032】
[シーラントフィルムの積層]
上述したように、押出ラミネーション法あるいはインフレーションあるいはキャスト法によりあらかじめ製膜したシーラントフィルムを熱ラミネーションにより貼り合わせることが可能である。この場合、押出しラミネーションの場合は、上述したように事前に各種コーターによりコーティング組成物を設けた複合基材にダイレクトで樹脂を押出しても、樹脂押出し時にインラインでアンカーコート塗工ユニットにおいてコーティング組成物を設けても構わない。また熱ラミネーションも同様な方法が考えられ、オフラインで塗工したコーティング組成物を熱圧着ロールにて熱ラミネーションをする方法や、コーティング組成物を塗工した直後にインラインで熱圧着ロールにて熱ラミネーションする方法が挙げられる。
【実施例】
【0033】
以下に本発明の実施例を示すが、これに限定されるわけではない。
【0034】
[コーティング組成物の調整]
【0035】
<コーティング組成物−1>
溶媒として蒸留水を用い、固形分濃度5wt%に調整した(A−1)「ポリアリルアミン塩酸安定化物」を用いた。
【0036】
<コーティング組成物−2>
溶媒として蒸留水を用い、固形分濃度5wt%に調整した(A−1)「ポリアリルアミン塩酸安定化物」と(B−1)「1,6−ヘキサンジオールのエピクロルヒドリン付加物」からなる組成物を用いた。配合比は(A−1)/(B−1)=90/10(固形分比)である。
【0037】
<コーティング組成物−3>
溶媒として蒸留水を用い、固形分濃度5wt%に調整した(A−1)「ポリアリルアミン塩酸安定化物」と(B−1)「1,6−ヘキサンジオールのエピクロルヒドリン付加物」と(C−1)「酸安定化酸化セリウムゾル」からなる組成物を用いた。配合比は(A−1)/(B−1)/(C−1)=81/9/10(固形分比)である。
【0038】
<コーティング組成物−4>
溶媒として蒸留水を用い、固形分濃度5wt%に調整した(A−1)「ポリアリルアミン塩酸安定化物」と(B−1)「1,6−ヘキサンジオールのエピクロルヒドリン付加物」と(C−1)「酸安定化酸化セリウムゾル」からなる組成物を用いた。配合比は(A−1)/(B−1)/(C−1)=89.95/10/0.05(固形分比)である。
【0039】
<コーティング組成物−5>
溶媒として蒸留水を用い、固形分濃度5wt%に調整した(A−2)「部分メトキシカルボニル化ポリアリルアミンの塩酸安定化物」を用いた。
【0040】
<コーティング組成物−6>
溶媒として蒸留水を用い、固形分濃度5wt%に調整した(A−2)「部分メトキシカルボニル化ポリアリルアミンの塩酸安定化物」と(C−1)「酸安定化酸化セリウムゾル」からなる組成物を用いた。配合比は(A−2)/(C−1)=90/10である。
【0041】
<コーティング組成物−7>
溶媒として蒸留水を用い、固形分濃度5wt%に調整した(A−3)「ポリエチレンイミン」を用いた。
【0042】
<コーティング組成物−8>
溶媒として蒸留水を用い、固形分濃度5wt%に調整した(A−3)「ポリエチレンイミン」と(B−2)「アクリル−イソプロペニルオキサゾリン共重合体」からなる組成物を用いた。配合比は(A−3)/(B−2)=90/10である。
【0043】
<コーティング組成物−9>
溶媒として蒸留水を用い、固形分濃度5wt%に調整した(A−3)「ポリエチレンイミン」と(B−2)「アクリル−イソプロペニルオキサゾリン共重合体」と(C−2)「中〜アルカリ安定化酸化セリウムゾル」からなる組成物を用いた。配合比は(A−1)/(B−1)/(C−1)=81/9/10(固形分比)である。
【0044】
<コーティング組成物−10>
溶媒として酢酸エチルを用い、固形分濃度5wt%に調整した(A−4)「ポリエステルポリオールのヘキサメチレンジシソシアネート伸長物」と(B−3)「キシリレンジイソシアネートアダクト体とイソホロンジシソシアネートアダクト体」からなるポリウレタン系接着剤を用いた。配合比は(A−4)/(B−3)=5/1(固形分比)である。
【0045】
[基材の選定]
以下の基材を用いた。
基本構成:2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(12μm)/アルミニウム箔(7μm)
基材−1〜−2はこの基本構成のアルミニウム箔上にさらに下記記載のフィルムをドライラミネート法により積層させたものである。
・基材−1:2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(12μm)
・基材−2:2軸延伸ナイロンフィルム(15μm)
基材−3はこの基本構成を弱アルカリエッチング処理剤により浸漬処理を施したものである。
・基材−3:弱アルカリ脱脂処理を施した基本構成
【0046】
[包装材料の作成]
コーティング組成物−1〜9に関しては、グラビアコーターによりドライ塗布量0.lμmになるように塗布し、その後、インラインで乾燥・焼き付けを施した。コーティング組成物−10については後述する押出しラミネート機のコーティングユニットでドライ塗布量0.5μmになるように塗工を施した。コーティング組成物を設けた各種基材を押出しラミネート機を用いて熱融着性フィルムを積層させた。押出樹脂は無水マレイン酸により変成された低密度ポリエチレンを用い、加工温度310℃、加工速度80m/min.で20μm厚になるように製膜し、さらにあらかじめインフレーション法により製膜した
エチレン−ヘキセン−1共重合体からなるフィルム40μmをサンドラミネーションの形で製膜した。コーティング組成物−10については押出ラミネートの段階にインラインで設けている。さらにコーティング組成物−1〜9については熱ラミロールによる熱処理を施した。コーティング組成物−10については50℃で4日間エージング処理を行った。最終的な包材構成は下記の通りである。
基材/コーティング組成物/酸変性低密度ポリエチレン(20μm)/エチレン−ヘキセン−1共重合体フィルム(40μm)
【0047】
[評価方法]
上記方法により得られた積層体を、A4に切り取り、その1/2サイズとなる4方シールパウチを作成した。そのパウチの一方の面は、熱融着製フィルム側から基材にキズがつかない状態で事前にクロス状に切りこみを入れている。このようなパウチ形態に下記に示す内容物を充填し、そのパウチを40℃環境下で2週間保管した。
内容物−1:水(液体)
内容物−2:酢酸濃度5wt%の食酢(液体)
内容物−3:20wt%アルコール/香料を含有した濃縮浴用剤(液体)
内容物−4:ハップ剤(シート状固体)
保管終了サンプルは、内容物を取り出し、1)クロス状に切れこみを入れた側はその状態を観察した。2)クロス状に切れこみを入れていない側については、クロスヘッドスピード300mmによるT型剥離(15mm幅)によりそのラミネート強度を評価した。
【0048】
<実施例1>
コーティング組成物−1と基材−1、2、3を用いて、上記で説明した各々を作成し、その各々の積層体を4方パウチに成形して内容物として内容物−1、2、3、4を各々の方パウチ充填し、積層体の初期ラミネート強度および内容物保管後の積層体の浮きや腐食状態、ラミネート強度、剥離状態を評価した。その結果を表1に示す。
【0049】
<実施例2>
コーティング組成物−2を用いた以外は実施例1と同様に評価した。その結果を表2に示す。
【0050】
<実施例3>
コーティング組成物−3を用いた以外は実施例1と同様に評価した。その結果を表3に示す。
【0051】
<実施例4>
コーティング組成物−4を用いた以外は実施例1と同様に評価した。その結果を表4に示す。
【0052】
<実施例5>
コーティング組成物−5を用いた以外は実施例1と同様に評価した。その結果を表5に示す。
【0053】
<実施例6>
コーティング組成物−6を用いた以外は実施例1と同様に評価した。その結果を表6に示す。
【0054】
<実施例7>
コーティング組成物−7を用いた以外は実施例1と同様に評価した。その結果を表7に示す。
【0055】
<実施例8>
コーティング組成物−8を用いた以外は実施例1と同様に評価した。その結果を表8に示す。
【0056】
<実施例9>
コーティング組成物−9を用いた以外は実施例1と同様に評価した。その結果を表9に示す。
【0057】
<実施例10>
コーティング組成物−10を用いた以外は実施例1と同様に評価した。その結果を表10に示す。
【0058】
【表1】

【0059】
【表2】

【0060】
【表3】

【0061】
【表4】

【0062】
【表5】

【0063】
【表6】

【0064】
【表7】

【0065】
【表8】

【0066】
【表9】

【0067】
【表10】

【0068】
表からわかるように、コーティング組成物の配合処方により内容物耐性が大きく異なることが確認される。カチオン性ポリマー自体は水溶性であるため耐水性にも劣る材料であるが、架橋構造を形成することで、本来この材料が持つ強浸透性内容物への耐性を有することが確認される。しかしながら、アルミニウム箔を用いた構成である基材−3を用いた場合は、特に、内容物が食酢のような酸性内容物の場合にはアルミニウム箔が腐蝕にすることにより、そのラミネート強度への影響が認められる、それに希土類元素系酸化物ゾルを配合することにより、アルミニウム箔の耐腐蝕性を付与することが可能であることが確認できる。一方、2液硬化型のウレタン系接着剤では、今回用いた強浸透性内容物に対する耐性を付与させることが困難である結果が得られた。
【0069】
以上のことから、本発明のコーティング組成物は、架橋構造を形成したカチオン性ポリマーでも強浸透性内容物を充填する包装材料に展開することは可能であるが、より幅広い内容物に対応できる点では希土類元素系酸化物ゾルを配合することが非常に効果的であることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明における積層体の構成の一例を示す模式断面図である。
【符号の説明】
【0071】
A:ポリエステル基材層
B:接着剤層
C:アルミニウム箔層
D:コーティング組成物層
E:酸変性樹脂層
F:シーラント層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオン性ポリマーおよびこのカチオン性ポリマーを架橋させる架橋剤、溶媒を必須成分とし、架橋剤を含むカチオン性ポリマー樹脂成分70〜99.9重量%に対し、希土類元素系酸化物ゾルを0.1〜30重量%配合したことを特徴とするコーティング組成物。
【請求項2】
前記カチオン性ポリマーが、ポリエチレンイミン、ポリエチレンイミンとカルボン酸を有するポリマーからなるイオン高分子錯体、アクリル主骨格に1級アミンをグラフトさせた1級アミングラフトアクリル樹脂、ポリアリルアミンあるいはこれらの誘導体、アミノフェノールから選ばれる少なくとも1種以上からなることを特徴とする請求項1記載のコーティング組成物。
【請求項3】
前記カチオン性ポリマーを架橋させる架橋剤の官能基が、イソシアネート基、グリシジル基、カルボキシル基、オキサゾリン基から選ばれる少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項1または2記載のコーティング組成物。
【請求項4】
前記希土類元素系酸化物ゾルが、酸化セリウムゾル、酸化イットリウムゾル、酸化ニオブゾル、酸化ランタンゾルのいずれかであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
【請求項5】
請求項1〜4記載のいずれか1項に記載のコーティング組成物を、基材上に乾燥状態での厚さが0.01〜10μmの範囲で設けたことを特徴とする積層体。
【請求項6】
前記基材が、ポリエステル基材、ポリアミド基材、蒸着ポリエステル基材、蒸着ポリアミド基材、ポリプロピレン基材、蒸着ポリプロピレン基材、金属箔基材のいずれかであることを特徴とする積層体。
【請求項7】
請求項5または6記載の積層体を構成要素として含むことを特徴とする強浸透性内容物用包装材料。

【図1】
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【公開番号】特開2007−246688(P2007−246688A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−72187(P2006−72187)
【出願日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】