説明

コーティング組成物及びエネルギー変換用部材

【課題】透明性が高く、しかも形成直後から高い親水性を示し、その高い親水性を長期間維持できる塗膜を高温で焼き付けることなく形成できる水系のコーティング組成物を提供する。
【解決手段】(A1)粒子径が1nm〜400nmのコロイダルシリカと、(A2)粒子径が1nm〜200nmの光触媒と、(B)粒子径が10nm〜800nmの重合体エマルジョン粒子とを含み、(B)成分は、(b1)加水分解性珪素化合物と、(b2)特定の官能基を有するビニル単量体と、(b3)乳化剤と、(b4)水とを含む重合原液中で、(b1)成分及び(b2)成分を重合して得られるものであり、(B)成分の含有量に対する(A1)成分と(A2)成分との総含有量の質量比が60/100〜480/100、上記総含有量に対する(A1)成分の含有量の質量比が85/100〜99/100であるコーティング組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティング組成物、エネルギー変換用部材、リフレクター装置及び太陽熱発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、世界的な温暖化現象により環境に対する意識が高まり、炭酸ガス等の温暖化ガスを発生しない新しいエネルギーシステムが関心を集めている。太陽電池発電や風力発電等の環境に優しい再生可能なエネルギーは、炭酸ガス等の温暖化を誘発するといわれているガスを排出しないため、クリーンなエネルギーとして研究開発が盛んに行われている。なかでも、安全性や扱いやすさに優れることから、特に太陽電池や太陽熱発電が注目を浴びている。
【0003】
代表的な太陽熱発電方式としては、集中方式(中央タワー式)、分散方式(パラボリックトラフ)、ディッシュ/スターリング方式の3種類がある。集中方式(中央タワー式)及び分散方式(パラボリックトラフ)は数百MW領域の出力が期待でき、従来の発電技術と組み合わせて、ハイブリッド化することも可能である。また、ディッシュ/スターリング方式は、出力領域が5〜50kWであるため、発展途上国において単独で使用する場合に適している。
【0004】
いずれの方式においても太陽光を反射鏡によって一部分に集光し、その集光熱から熱電変換により電気エネルギーを得るので、損失なく光を集光する効率性が重要となる。効率性に影響を及ぼす要因として、反射鏡の汚れによる反射率の低下が特に問題になっている。また、同様に、ガラスや耐候性樹脂フィルムなどからなる保護カバーによって受光面が保護されている太陽電池では、当該保護カバーが長期間の使用中に煤塵で汚れるため、光透過率が低下する結果、太陽電池のエネルギー変換効率が低下するという類似の問題がある。
【0005】
表面の汚れを防止する技術として、例えば特許文献1には、防汚の対象となる基材の表面に形成されたアナターゼ型酸化チタン含有層上に、アンモニア水に溶解させたタングステン酸と蒸留水を加えたコーティング液を塗布し、700℃で焼き付け処理を施して酸化タングステンからなる表面層を形成する技術が開示されている。このようにして得られた部材では、光触媒機能を有するアナターゼ型酸化チタン含有層によって、表面層に付着した有機物が分解されて表面が親水性を呈すると共に、酸化タングステンからなる表面層により表面の親水性が維持される。これにより、部材表面に付着した凝集水や水滴が表面一面に広がりやすくなることから、表面の曇りを防止することができる。特許文献2には、反射鏡の最表面に、透明な塗料中に粒子径が100nm以下の酸化チタン微粒子を10〜20%添加して得られる透明な光触媒層を形成し、長期間汚れ防止することで反射率の維持する技術が開示されている。特許文献3には、親水性表面を備えた複合材であって、基材と、基材の表面に接合され、TiO2、ZnO、SnO2、SrTiO3、WO3、Bi23、Fe23からなる群から選ばれた光触媒性半導体材料とシリカとを含む光触媒性被膜とを備え、記被膜の表面は光触媒性半導体材料の光励起に応じて親水性を呈することを特徴とする複合材が開示されている。また、特許文献4、5には環境負荷の少ない水系有機無機複合組成物により防汚染性を発現する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−114545号公報
【特許文献2】特開昭63−5301号公報
【特許文献3】特許公報第2756474号公報
【特許文献4】特開2009−19072号公報
【特許文献5】国際公開第2007−069596号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、透明性が高く、しかも形成直後から高い親水性を示し、その高い親水性を長期間維持できる塗膜と共に、高温で焼き付けることなくその塗膜を形成できる水系材料という観点から、特許文献1〜5に記載のものは、いずれも改良の余地があった。
本発明は上記事情にかんがみてなされたものであり、透明性が高く、しかも形成直後から高い親水性を示し、その高い親水性を長期間維持できる塗膜を、高温で焼き付けることなく形成できる水系のコーティング組成物、エネルギー変換装置用部材、リフレクター装置及び太陽熱発電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1](A1)成分:粒子径が1nm〜400nmのコロイダルシリカと、(A2)成分:粒子径が1nm〜200nmの光触媒と、(B)成分:粒子径が10nm〜800nmの重合体エマルジョン粒子と、を含むコーティング組成物であって、
前記(B)成分は、(b1)成分:加水分解性珪素化合物と、(b2)成分:水酸基、カルボキシル基、アミド基、アミノ基及びエーテル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有するビニル単量体と、(b3)成分:乳化剤と、(b4)成分:水と、を含む重合原液中で、前記(b1)成分及び前記(b2)成分を重合して得られる重合体エマルジョン粒子であり、
前記(B)成分の含有量に対する前記(A1)成分と前記(A2)成分との総含有量の質量比が60/100〜480/100であって、前記総含有量に対する前記(A1)成分の含有量の質量比が85/100〜99/100であるコーティング組成物。
[2]前記(B)成分の含有量に対する前記(b2)成分の含有量の質量比が0.1/1〜0.5/1である、[1]記載のコーティング組成物。
[3]前記(A1)成分の含有量に対する前記(b2)成分の含有量の質量比が0.1/1〜1/1である、[1]又は[2]に記載のコーティング組成物。
[4]前記(B)成分が、コア層と、当該コア層を被覆する1層又は2層以上のシェル層とを備えるコア/シェル構造を有する、[1]〜[3]のいずれか一つに記載のコーティング組成物。
[5]前記コア層において、前記(b1)成分の含有量に対する前記(b2)成分の含有量の質量比が0.01/1〜1/1であり、前記シェル層の最外層において、前記(b1)成分の含有量に対する前記(b2)成分の含有量の質量比が0.1/1〜5/1である、[4]に記載のコーティング組成物。
[6]前記(B)成分が、前記コア層を形成するシード粒子を含む前記重合原液中で、前記(b1)成分及び前記(b2)成分を重合して得られる重合体エマルジョン粒子であり、前記シード粒子が、前記(b1)成分、前記(b2)成分及び(b5)前記(b2)成分と共重合可能な他のビニル単量体からなる群より選ばれる少なくとも1種以上の成分を重合して得られる粒子である、[4]又は[5]に記載のコーティング組成物。
[7]前記(b2)成分が、2級及び/又は3級アミド基を有するビニル単量体である、[1]〜[6]のいずれか一つに記載のコーティング組成物。
[8](C)成分:下記一般式(1)、(2)及び(3)で表される化合物からなる群より選ばれる1種以上の加水分解性珪素化合物を更に含み、前記(A1)成分の含有量に対する前記(C)成分の含有量の質量比が1/100〜100/100である、[1]〜[7]のいずれか一つに記載のコーティング組成物。
1nSiX4-n (1)
(式中、R1は、水素原子、あるいは、ハロゲン基、ヒドロキシ基、メルカプト基、アミノ基、(メタ)アクリロイル基又はエポキシ基を有していてもよい、炭素数1〜10のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基若しくはアリール基を示す。Xは、加水分解性基を示し、nは0〜3の整数である。)
3Si−R2n−SiX3 (2)
(式中、Xは加水分解性基を示し、R2は炭素数1〜6のアルキレン基又はフェニレン基を示す。nは0又は1である。)
3−(O−Si(OR32n−OR3 (3)
(式中、R3は炭素数1〜6のアルキル基を示す。nは2〜8の整数である。)
[9]前記(B)成分の粒子径が10〜100nmである、[1]〜[8]のいずれか一つに記載のコーティング組成物。
[10]基材と、その基材上に[1]〜[9]のいずれか一項に記載のコーティング組成物を塗布し、100℃以下で乾燥させて得られる塗膜と、を備えるエネルギー変換装置用部材であって、前記塗膜の屈折率が1.3〜1.5であるエネルギー変換装置用部材。
[11]前記塗膜のヘイズ値が10%以下である、[10]記載のエネルギー変換装置用部材。
[12]前記塗膜を太陽電池の保護部材として備える、[10]又は[11]に記載のエネルギー変換装置用部材。
[13]前記塗膜を光反射鏡の保護部材として備える、[10]又は[11]に記載のエネルギー変換装置用部材。
[14][13]に記載のエネルギー変換装置用部材と、当該エネルギー変換装置用部材を前記塗膜とは反対側から支持する支持体と、を備えるリフレクター装置。
[15]太陽光を集光する[14]に記載のリフレクター装置と、集光した太陽光の熱を電気エネルギーに変換する装置と、を備える太陽熱発電システム。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、透明性が高く、しかも形成直後から高い親水性を示し、その高い親水性を長期間維持できる塗膜を高温で焼き付けることなく形成できる水系のコーティング組成物、エネルギー変換装置用部材、リフレクター装置及び太陽熱発電システムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と略記することがある。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の本実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。また、本明細書における「(メタ)アクリル」とは「アクリル」及びそれに対応する「メタクリル」を意味し、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」及びそれに対応する「メタクリレート」を意味し、「(メタ)アクリロイル」とは「アクリロイル」及びそれに対応する「メタクリロイル」を意味する。
【0011】
本実施形態のコーティング組成物は、(A1)成分:粒子径が1nm〜400nmのコロイダルシリカと、(A2)成分:粒子径が1nm〜200nmの酸化チタンゾルと、(B))成分:粒子径が10nm〜800nmの重合体エマルジョン粒子とを含むコーティング組成物であって、(B)成分は、(b1)成分:加水分解性珪素化合物と、(b2)成分:水酸基、カルボキシル基、アミド基、アミノ基及びエーテル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有するビニル単量体と、(b3)成分:乳化剤と、(b4)成分:水とを含む重合原液中で、(b1)成分及び(b2)成分を重合して得られる重合体エマルジョン粒子であり、(B)成分の含有量に対する(A1)成分と(A2)成分との総含有量の質量比((A1+A2)/B)が60/100〜480/100であって、上記総含有量に対する(A1)成分の含有量の質量比(A1/(A1+A2))が85/100〜99/100である。
【0012】
また、本実施形態のエネルギー変換装置用部材は、基材と、その基材上に上記コーティング組成物を塗布し100℃以下で乾燥させて得られる塗膜とを備え、塗膜の屈折率が1.3〜1.5である。
【0013】
(A1)成分は、(B)成分と相互作用することにより、(B)成分の硬化剤として作用すると考えられる。当該相互作用としては、例えば、(A1)成分が一般に有する水酸基と、(B)成分が有する水酸基、カルボキシル基、アミド基、アミノ基及びエーテル基との水素結合、(A1)成分が一般に有する水酸基と、(B)成分を構成する(b1)成分の重合生成物との縮合(化学結合)等を例示することができる。
また、(A1)成分が、(B)成分と相互作用しながら(B)成分の粒子間に連続相を形成して存在することが好ましい。この結果、塗膜の最表面には必ず親水性の高いシリカ粒子が存在することになるため、光の照射に無関係に塗膜形成直後から高い親水性が得られると共に、透明性、耐候性がより向上し得る。
【0014】
本実施形態に係る(A1)成分であるコロイダルシリカは、ゾル−ゲル法で調製して使用することができ、市販品を利用することもできる。コロイダルシリカをゾル−ゲル法で調製する場合、Werner Stober et al;J.Colloid and Interface Sci.,26,62−69(1968)、Rickey D.Badley et al;Lang muir 6,792−801(1990)、色材協会誌,61[9]488−493(1988)などに記載の方法を参照して調製することができる。コロイダルシリカは、二酸化ケイ素を基本単位とするシリカの水又は水溶性溶媒の分散体であり、その粒子径(数平均粒子径)は1nm〜400nmであることが必要であり、好ましくは、1nm〜200nm、より好ましくは5nm〜50nmである。粒子径が1nm以上であれば、コーティング組成物の貯蔵安定性が良好であり、200nm以下であると、塗膜の透明性が良好となる。上記範囲の粒子径を有するコロイダルシリカは、水性分散液の状態で、酸性及び塩基性のいずれであっても用いることができ、共に混合する(B)成分の水性分散体の安定領域に応じて、そのpHを適宜選択することができる。
【0015】
水を分散媒体とする酸性のコロイダルシリカとしては、例えば市販品として日産化学工業(株)製のスノーテックス(商標)−O、スノーテックスOS、スノーテックス−OL、旭電化工業(株)製のアデライト(商標)AT−20Q、クラリアントジャパン(株)製のクレボゾール(商標)20H12、クレボゾール30CAL25などが挙げられる。
塩基性のコロイダルシリカとしては、例えば、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン又はアミンの添加で安定化したシリカが挙げられ、より具体的には、市販品として日産化学工業(株)製のスノーテックス−20、スノーテックス−30、スノーテックス−C、スノーテックス−C30、スノーテックス−CM40、スノーテックス−N、スノーテックス−N30、スノーテックス−K、スノーテックス−XL、スノーテックス−YL、スノーテックス−ZL、スノーテックスPS−M、スノーテックスPS−Lなど、旭電化工業(株)製のアデライトAT−20、アデライトAT−30、アデライトAT−20N、アデライトAT−30N、アデライトAT−20A、アデライトAT−30A、アデライトAT−40、アデライトAT−50など、クラリアントジャパン(株)製のクレボゾール30R9、クレボゾール30R50、クレボゾール50R50など、デュポン社製のルドックス(商標)HS−40、ルドックスHS−30、ルドックスLS、ルドックスSM−30などが挙げられる。
水溶性溶剤を分散媒体とするコロイダルシリカとしては、市販品として例えば、日産化学工業(株)製のMA−ST−M(粒子径が20〜25nmのメタノール分散タイプ)、IPA−ST(粒子径が10〜15nmのイソプロピルアルコール分散タイプ)、EG−ST(粒子径が10〜15nmのエチレングリコール分散タイプ)、EG−ST−ZL(粒子径が70〜100nmのエチレングリコール分散タイプ)、NPC−ST(粒子径が10〜 15nmのエチレングリコールモノプロピルエーテール分散タイプ)などが挙げられる。
【0016】
これらコロイダルシリカは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。コロイダルシリカは、少量成分として、アルミナ、アルミン酸ナトリウムなどを含んでいてもよい。また、コロイダルシリカには、安定剤として無機塩基(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニアなど)や有機塩基(テトラメチルアンモニウムなど)が共存してもよい。
【0017】
本実施形態に係る(A2)成分である光触媒は、光照射により光触媒活性及び/又は親水性を発現する化合物である。光触媒として具体的には、例えば、TiO2、ZnO、SrTiO3、BaTiO3、BaTiO4、BaTi49、K2NbO3、Nb25、Fe23、Ta25、K3Ta3Si23、WO3、SnO2、Bi23、BiVO4、NiO、Cu2O、RuO2、CeO2、さらにはTi、Nb、Ta及びVからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を有する層状酸化物(例えば特開昭62−74452号公報、特開平2−172535号公報、特開平7−24329号公報、特開平8−89799号公報、特開平8−89800号公報、特開平8−89804号公報、特開平8−198061号公報、特開平9−248465号公報、特開平10−99694号公報、特開平10−244165号公報等参照)を挙げることができる。これらの光触媒の中でもTiO2(酸化チタン)、ZrO2(酸化ジルコニウム)は無害であり、化学的安定性にも優れるため好ましい。酸化チタンとして、アナターゼ型、ルチル型、ブルッカイト型のいずれも使用できる。
【0018】
(A2)成分を用いる際の形態としては、例えば、粉体、分散液、ゾルが挙げられる。ここでいう「分散液」及び「ゾル」とは、(A2)成分が水及び/又は親水性有機溶媒中に0.01〜80質量%、好ましくは0.1〜50質量%の濃度で、1次粒子及び/又は2次粒子として分散された状態を意味する。
【0019】
上記分散液又はゾル中に観察される(A2)成分の粒子径は数平均粒子径(1次粒子と2次粒子との混合物であってもよく、1次粒子及び2次粒子のいずれか一方のみであってもよい。)を意味し、1nm〜200nmであり、好ましくは1nm〜100nm、より好ましくは3nm〜80nm、更に好ましくは5nm〜50nmである。(A2)成分の数平均粒子径は、得られるコーティング組成物を用いて形成される塗膜の光学特性等に寄与し得る。特に、その数平均粒子径を100nm以下とすることは、得られる塗膜の透明性を大きく向上させ得る。なお、本実施形態における数平均粒子径(以下、単に「粒子径」と略記することがある。)は、後述する実施例の方法に準じて測定される値である。
【0020】
本実施形態のコーティング組成物における(A1)成分及び(A2)成分の含有量は、上述のとおり、(A1)/((A1)+(A2))の質量比で85/100〜99/100であり、好ましくは88/100〜99/100、より好ましくは93/100〜99/100である。(A2)成分は(A1)成分よりも屈折率が高く、比較的二次凝集を生じやすいため、(A1)/((A1)+(A2))を88/100以上にすることにより、塗膜の透明性を高くし、ヘイズ値を抑えて反射率を高めることができる。また、(A1)成分は(A2)成分と屈折率が大きく異なるものの、(A1)/((A1)+(A2))を88/100以上にすることにより、塗膜の屈折率の変化を抑制し塗膜設計を容易に可能とする。一方、(A1)/((A1)+(A2))を99/100以下にすることにより、コロイダルシリカによる親水性の長期維持性能を高く維持し、親水性の低下を防止できることを本発明者らは見い出した。この原因について詳細には明らかになっていないが、ごく僅かな量の光触媒がコロイダルシリカの親水性維持性能に寄与していることを示唆している。従来の光触媒技術では、光触媒の1種である酸化チタンとシリカとを共存させて使用する場合、シリカの量が多いと光照射後の親水性向上速度が速くなることが報告されているが、実用上の防汚染性を発現させるためには比較的多量の酸化チタンが必要になると考えられる。
【0021】
なお、本実施形態において「親水性」とは、測定対象物の表面に対する水(23℃)の接触角が、好ましくは60゜以下、より好ましくは30゜以下、更に好ましくは20゜以下になることを意味する。
【0022】
(A1)及び(A2)成分以外に本実施形態のコーティング組成物に含まれる金属酸化物として、必要に応じて、帯電防止性能等を発現する観点から、導電性を有する金属酸化物を用いることができる。このような導電性を有する金属酸化物としては、例えば、錫をドープした酸化インジウム(ITO)、アンチモンをドープした酸化錫(ATO)、酸化スズ、酸化亜鉛が挙げられる。また、(B)成分との相互作用の観点から、例えば、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化鉛、酸化鉄、珪酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化ニオブ、酸化セリウムを併用することもできる。
【0023】
(B)成分の重合体エマルジョン粒子は、(b1)成分:加水分解性珪素化合物と、(b2)成分:水酸基、カルボキシル基、アミド基、アミノ基及びエーテル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有するビニル単量体と、(b3)成分:乳化剤と、(b4)成分:水とを含む重合原液中で、(b1)成分及び(b2)成分を重合して得られる重合体エマルジョン粒子である。このようにして得られる(B)成分としては、(b1)成分に由来する水酸基と(b2)成分の重合生成物とが、水素結合等により複合化されたものを用いることが好適である。
【0024】
(b1)成分としては、下記一般式(4)で表される化合物やその縮合生成物、シランカップリング剤を例示することができる。
SiWxy (4)
ここで、式中、Wは炭素数1〜20のアルコキシ基、水酸基、炭素数1〜20のアセトキシ基、ハロゲン原子、水素原子、炭素数1〜20のオキシム基、エノキシ基、アミノキシ基及びアミド基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を示す。Rは、直鎖状又は分岐状の炭素数が1〜30個のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、及び置換されていないか又は炭素数1〜20のアルキル基若しくは炭素数1〜20のアルコキシ基若しくはハロゲン原子で置換されている炭素数6〜20のアリール基からなる群より選ばれる少なくとも1種の炭化水素基を示す。xは1以上4以下の整数であり、yは0以上3以下の整数である。また、x+y=4である。
なお、シランカップリング剤とは、ビニル重合性基、エポキシ基、アミノ基、メタクリル基、メルカプト基、イソシアネート基等の有機物と反応性を有する官能基が分子内に存在するシラン誘導体を意味する。
【0025】
上記式(4)で表される化合物の具体例としては、例えばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン等のテトラアルコキシシラン類;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ペンチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘプチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフロロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフロロプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−ヒドロキシエチルトリメトキシシラン、2−ヒドロキシエチルトリエトキシシラン、2−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、2−ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアナートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナートプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリ−n−プロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリイソプロポキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のトリアルコキシシラン類;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジエトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジイソプロピルジエトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジエトキシシラン、ジ−n−ペンチルジメトキシシラン、ジ−n−ペンチルジエトキシシラン、ジ−n−ヘキシルジメトキシシラン、ジ−n−ヘキシルジエトキシシラン、ジ−n−ヘプチルジメトキシシラン、ジ−n−ヘプチルジエトキシシラン、ジ−n−オクチルジメトキシシラン、ジ−n−オクチルジエトキシシラン、ジ−n−シクロヘキシルジメトキシシラン、ジ−n−シクロヘキシルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン等のジアルコキシシラン類;トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン等のモノアルコキシシラン類が挙げることができる。また、これらは、1種を単独で又は2種以上を混合して用いられる。
【0026】
また、(b1)成分として、フェニル基を有する珪素アルコキシド(例えばフェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン等)を用いることができる。フェニル基を有する珪素アルコキシドを用いた場合、水及び乳化剤の存在下における重合安定性が良好となり好適である。
【0027】
さらに、(b1)成分は、チオール基を有するシランカップリング剤や、下記(b1−1)成分、すなわち、(b1−1)成分:ビニル重合性基を有する加水分解性珪素化合物を含んでもよい。これらを(b1)成分として用いた場合、得られる塗膜の長期防汚染性が良好となり好適である。
【0028】
上記チオール基を有するシランカップリング剤としては、例えば、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシランが挙げられる。
また、(b1−1)成分としては、例えば、3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリn−プロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、2−トリメトキシシリルエチルビニルエーテル等のビニル重合性基を有するシランカップリング剤が挙げられる。
これらシランカップリング剤は、後述する(b2)成分との共重合又は連鎖移動反応により化学結合を生成し得る。このため、ビニル重合性基やチオール基を有するシランカップリング剤を上述した(b1)成分と混合若しくは複合化させて用いた場合、(b1)成分の重合生成物と後述する(b2)成分の重合生成物とを化学結合により複合化し得る。
なお、(b1−1)成分における「ビニル重合性基」としては、例えば、ビニル基、アリル基が挙げられ、中でも3−(メタ)アクリルオキシプロピル基が好ましい。
【0029】
また、(b1)成分は、下記(b1−2)成分、すなわち、(b1−2)成分:環状シロキサンオリゴマーを含んでいてもよい。当該(b1−2)成分を用いた場合、得られる塗膜の柔軟性がより良好となり好適である。
【0030】
環状シロキサンオリゴマーとしては、下記一般式(5)で表される化合物を例示することができる。
(R’2SiO)m (5)
ここで、式中、R’は、水素原子、直鎖状又は分岐状の炭素数が1〜30個のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、及び置換されていないか又は炭素数1〜20のアルキル基若しくは炭素数1〜20のアルコキシ基若しくはハロゲン原子で置換されている炭素数6〜20のアリール基からなる群より選ばれる少なくとも1種を示す。mは整数であり、2≦m≦20である。
中でも、反応性等の点からオクタメチルシクロテトラシロキサン等の環状ジメチルシロキサンオリゴマーが好ましい。
【0031】
なお、(b1)成分として縮合生成物が用いられる場合、当該縮合生成物のポリスチレン換算重量平均分子量(GPC法による)は、好ましくは200〜5000、より好ましくは300〜1000である。
【0032】
本実施形態のコーティング組成物において、(B)成分の含有量に対する(b1)成分の含有量の質量比((b1)/(B))は、重合安定性の観点から、好ましくは0.01/100〜80/100、より好ましくは0.1/100〜70/100である。
【0033】
(B)成分の含有量に対する(b1−1)成分の含有量の質量比((b1−1)/(B))は、重合安定性の観点から、好ましくは0.01/100〜20/100、より好ましくは0.5/100〜10/100である。
(b2)成分の含有量に対する(b1−1)成分の含有量の質量比((b1−1)/(b2))は、重合安定性の観点から、好ましくは0.1/100〜100/100、より好ましくは0.5/100〜50/100である。
【0034】
(B)成分の含有量に対する(b1−2)成分の含有量の質量比((b1−2)/(B))(質量比)は、親水性の観点から、好ましくは0.01/100〜20/100、より好ましくは0.5/100〜5/100である。
(b2)成分の含有量に対する(b1−2)成分の含有量の質量比((b1−2)/(b2))は、重合安定性の観点から、好ましくは0.5/100〜50/100、より好ましくは1.0/100〜20/100である。
【0035】
(b2)成分として挙げられる水酸基含有ビニル単量体の具体例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート若しくは4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートのような各種のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;2−ヒドロキシエチルビニルエーテル若しくは4−ヒドロキシブチルビニルエーテルのような各種の水酸基含有ビニルエーテル類;2−ヒドロキシエチルアリルエーテルのような各種の水酸基含有アリルエーテル類;ポリエチレングリコールに代表される種々のポリエーテルポリオールと、(メタ)アクリル酸に代表される種々の不飽和カルボン酸とから得られるポリオキシアルキレングリコールのモノエステル類;上述の各種の水酸基含有単量体類とε−カプロラクトンに代表される種々のラクトン類との付加物;グリシジル(メタ)アクリレートに代表される種々のエポキシ基含有不飽和単量体と酢酸に代表される種々の酸類との付加物;(メタ)アクリル酸に代表される種々の不飽和カルボン酸類と「カーデュラ E」(オランダ国シェル社製の商品名)に代表されるα−オレフィンのエポキサイド以外の種々のモノエポキシ化合物との付加物が挙げられる。
【0036】
(b2)成分として挙げられるカルボキシル基含有ビニル単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸、2−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸若しくはフマル酸のような各種の不飽和カルボン酸類;イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノ−n−ブチル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノ−n−ブチル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノ−n−ブチルのような不飽和ジカルボン酸類と飽和1価アルコール類とのモノエステル類(ハーフエステル類);アジピン酸モノビニル若しくはコハク酸モノビニルのような各種の飽和ジカルボン酸のモノビニルエステル類;無水コハク酸、無水グルタル酸、無水フタル酸若しくは無水トリメリット酸のような各種の飽和ポリカルボン酸の無水物類と上述の各種の水酸基含有ビニル系単量体類との付加反応生成物;上述の各種のカルボキシル基含有単量体類とラクトン類とを付加反応して得られる単量体類が挙げられる。
【0037】
(b2)成分として挙げられるアミノ基含有ビニル単量体の具体例としては、2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−ジ−n−プロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、3−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、4−ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート若しくはN−[2−(メタ)アクリロイルオキシ]エチルモルホリンのような各種の3級アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル類;ビニルピリジン、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルキノリンのような各種の3級アミノ基含有芳香族ビニル系単量体類;N−(2−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、N−(2−ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、N−(2−ジ−n−プロピルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、N−(3−ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリルアミド、N−(4−ジメチルアミノ)ブチル(メタ)アクリルアミド若しくはN−[2−(メタ)アクリルアミド]エチルモルホリンのような各種の3級アミノ基含有(メタ)アクリルアミド類;N−(2−ジメチルアミノ)エチルクロトン酸アミド、N−(2−ジエチルアミノ)エチルクロトン酸アミド、N−(2−ジ−n−プロピルアミノ)エチルクロトン酸アミド、N−(3−ジメチルアミノ)プロピルクロトン酸アミド若しくはN−(4−ジメチルアミノ)ブチルクロトン酸アミドのような各種の3級アミノ基含有クロトン酸アミド類;2−ジメチルアミノエチルビニルエーテル、2−ジエチルアミノエチルビニルエーテル、3−ジメチルアミノプロピルビニルエーテル若しくは4−ジメチルアミノブチルビニルエーテルのような各種の3級アミノ基含有ビニルエーテル類が挙げられる。
【0038】
(b2)成分として挙げられるエーテル基含有ビニル単量体の具体例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン高級脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロック共重合体のような各種のポリエーテル鎖を側鎖に有するビニルエーテル類、アリルエーテル類又は(メタ)アクリル酸エステル類のビニル単量体類が挙げられる。より具体的には、ブレンマーPE−90、PE−200、PE−350、PME−100、PME−200、PME−400、AE−350(以上、日本油脂(株)製商品名)、MA−30、MA−50、MA−100、MA−150、RA−1120、RA−2614、RMA−564、RMA−568、RMA−1114、MPG130−MA(以上、日本乳化剤(株)製商品名)が挙げられる。ここで、ポリオキシエチレン鎖のオキシエチレン単位の数は2〜30が好ましい。2未満では、塗膜の柔軟性が不十分となる傾向にあり、30を超えると、塗膜が軟らかくなり、耐ブロッキング性に劣る傾向にある。
【0039】
(b2)成分として挙げられるアミド基含有ビニル単量体の具体例としては、例えば、N−アルキル又はN−アルキレン置換(メタ)アクリルアミドを例示することができる。より具体的には、例えばN−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−メチル−N−エチルアクリルアミド、N−メチル−N−エチルメタクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−n−プロピルアクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、N−n−プロピルメタクリルアミド、N−メチル−N−n−プロピルアクリルアミド、N−メチル−N−イソプロピルアクリルアミド、N−アクリロイルピロリジン、N−メタクリロイルピロリジン、N−アクリロイルピペリジン、N−メタクリロイルピペリジン、N−アクリロイルヘキサヒドロアゼピン、N−アクリロイルモルホリン、N−メタクリロイルモルホリン、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、N,N’−メチレンビスメタクリルアミド、N−ビニルアセトアミド、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドが挙げられる。
前記(b2)成分としては、他成分との水素結合性をより向上させる観点から、2級及び/又は3級アミド基を有するビニル単量体を用いることが好ましい。特に水素結合力の観点から3級アミド基を有するビニル単量体が好ましい。
【0040】
(b2)成分としては、他成分との水素結合性をより向上させる観点から、2級及び/又は3級アミド基を有するビニル単量体を用いることが好ましい。
【0041】
本実施形態のコーティング組成物において、(B)成分の含有量に対する(b2)成分の含有量の質量比((b2)/(B))は、重合安定性の観点から、好ましくは0.1/1〜0.5/1、より好ましく0.2/1〜0.4/1である。
また、(A1)成分の含有量に対する(b2)成分の含有量の質量比((b2)/(A1))は、(A1)成分との水素結合性や配合安定性の観点から、好ましくは0.1/1〜1/1、より好ましくは0.2/1〜0.7/1である。
【0042】
(b3)成分としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルスルホン酸、アルキルスルホコハク酸、ポリオキシエチレンアルキル硫酸、ポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテルスルホン酸等の酸性乳化剤、酸性乳化剤のアルカリ金属(Li、Na、K等)塩、酸性乳化剤のアンモニウム塩、脂肪酸石鹸等のアニオン性界面活性剤;アルキルトリメチルアンモニウムブロミド、アルキルピリジニウムブロミド、イミダゾリニウムラウレート等の四級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩型のカチオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル等のノニオン型界面活性剤が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0043】
(b3)成分としては、得られる(B)成分の水分散安定性を向上させる観点、及び、得られる塗膜の長期防汚染性を向上させる観点から、ラジカル重合性の二重結合を有する反応性乳化剤を用いることが好ましい。
上記反応性乳化剤としてより具体的には、スルホン酸基又はスルホネート基を有するビニル単量体、硫酸エステル基を有するビニル単量体、及びそれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、ポリオキシエチレン等のノニオン基を有するビニル単量体、並びに、4級アンモニウム塩を有するビニル単量体が挙げられる。
【0044】
上記スルホン酸基又はスルホネート基を有するビニル単量体としては、例えば、ラジカル重合性の二重結合を有し、かつスルホン酸基のアンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩のような置換基により一部が置換された、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜4のアルキルエーテル基、炭素数2〜4のポリアルキルエーテル基、フェニル基、ナフチル基、及びコハク酸基からなる群より選ばれる置換基を有する化合物;スルホン酸基のアンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩のような置換基が結合しているビニル基を有するビニルスルホネート化合物が挙げられる。
【0045】
硫酸エステル基を有するビニル単量体としては、例えば、ラジカル重合性の二重結合を有し、かつ硫酸エステル基のアンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩のような置換基により一部が置換された、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜4のアルキルエーテル基、炭素数2〜4のポリアルキルエーテル基、フェニル基、及びナフチル基からなる群より選ばれる置換基を有する化合物が挙げられる。
【0046】
上記スルホン酸基のアンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩のような置換基により一部が置換されたコハク酸基を有する化合物の具体例としては、アリルスルホコハク酸塩が挙げられる。より詳しくは、例えば、エレミノールJS−2(商品名)(三洋化成(株)製)、ラテムルS−120、S−180A又はS−180(商品名)(花王(株)製)等が挙げられる。
【0047】
上記スルホン酸基のアンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩のような置換基により一部が置換された、炭素数2〜4のアルキルエーテル基又は炭素数2〜4のポリアルキルエーテル基を有する化合物の具体例としては、例えばアクアロンHS−10又はKH−1025(商品名)(第一工業製薬(株)製)、アデカリアソープSE−1025N又はSR−1025(商品名)(旭電化工業(株)製)が挙げられる。
【0048】
ノニオン基を有するビニル単量体として具体的には、例えば、α−〔1−〔(アリルオキシ)メチル〕−2−(ノニルフェノキシ)エチル〕−ω−ヒドロキシポリオキシエチレン(商品名:アデカリアソープNE−20、NE−30、NE−40等、旭電化工業(株)製)、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル(商品名:アクアロンRN−10、RN−20、RN−30、RN−50等、第一製薬工業(株)製)が挙げられ。
【0049】
(b3)成分の使用量は、重合安定性の観点から、(B)成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以下、より好ましくは0.001〜5質量部である。
【0050】
(B)成分は上述の(b1)〜(b3)の各成分、及び(b4)成分(すなわち水)を含む重合原液中で、(b1)成分及び(b2)成分を重合して得られる重合体エマルジョン粒子である。(b4)成分の使用量は、重合安定性の観点から、重合原液中の含有率として好ましくは30〜99.9質量%である。
【0051】
重合原液には、(b1)〜(b4)成分に加え、更に種々の成分を混合することができる。まず、重合原液には、下記(b5)成分、すなわち(b5)成分:(b2)成分と共重合可能な他のビニル単量体を混合することができる。このような(b5)成分を用いることは、生成する重合生成物の特性(ガラス転移温度、分子量、水素結合力、極性、分散安定性、耐候性、(b1)成分である加水分解性珪素化合物の重合生成物との相溶性等)を制御する観点から好適である。
【0052】
(b5)成分としては、例えば、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル類の他、エポキシ基含有ビニル単量体、カルボニル基含有ビニル単量体、アニオン型ビニル単量体のような官能基を含有する単量体が挙げられる。
【0053】
(b5)成分が全ビニル単量体中に占める割合としては、好ましくは0.001〜30質量%であり、より好ましくは0.05〜10質量%の範囲である。(b5)成分をこの範囲で用いることは、ガラス転移温度、分子量、水素結合力、極性、分散安定性、耐候性、(b1)成分である加水分解性珪素化合物の重合生成物との相溶性等を制御する観点から好適である。
【0054】
また、重合原液には、連鎖移動剤を混合することができる。そのような連鎖移動剤としては、例えば、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタンのようなアルキルメルカプタン類;ベンジルメルカプタン、ドデシルベンジルメルカプタンのような芳香族メルカプタン類;チオリンゴ酸のようなチオカルボン酸又はそれらの塩若しくはそれらのアルキルエステル類、又はポリチオール類、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド、ジ(メチレントリメチロールプロパン)キサントゲンジスルフィド及びチオグリコール、α−メチルスチレンのダイマー等のアリル化合物が挙げられる。
【0055】
これら連鎖移動剤の使用量は、全ビニル単量体の合計量100質量部に対して、好ましくは0.001〜30質量部、より好ましくは0.05〜10質量部である。連鎖移動剤をこの範囲で用いることは、重合安定性の観点から好適である。
【0056】
さらに、重合原液には分散安定剤を混合することができる。そのような分散安定剤としては、例えば、ポリカルボン酸及びスルホン酸塩からなる群より選ばれる各種の水溶性オリゴマー類、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、澱粉、マレイン化ポリブタジエン、マレイン化アルキッド樹脂、ポリアクリル酸(塩)、ポリアクリルアミド、水溶性又は水分散性アクリル樹脂などの合成又は天然の水溶性又は水分散性の各種の水溶性高分子物質が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0057】
これらの分散安定剤の使用量は、(B)成分の重合体エマルジョン粒子100質量部に対して、好ましくは10質量部以下であり、より好ましくは0.001〜5質量部である。
【0058】
上述の重合原液の重合は、重合触媒の存在下で実施するのが好ましい。(b1)成分の重合触媒としては、例えば、塩酸、フッ酸等のハロゲン化水素類、酢酸、トリクロル酢酸、トリフルオロ酢酸、乳酸等のカルボン酸類、硫酸、p−トルエンスルホン酸等のスルホン酸類、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルスルホン酸、アルキルスルホコハク酸、ポリオキシエチレンアルキル硫酸、ポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテルスルホン酸等の酸性乳化剤類、酸性又は弱酸性の無機塩、フタル酸、リン酸、硝酸のような酸性化合物類;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート、酢酸ナトリウム、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルアミン、ジアザビシクロウンデセン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、エタノールアミン類、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)−アミノプロピルトリメトキシシランのような塩基性化合物類;ジブチル錫オクチレート、ジブチル錫ジラウレートのような錫化合物が挙げられる。中でも、(b1)成分である加水分解性珪素化合物の重合触媒としては、重合触媒のみならず乳化剤としての作用を有する酸性乳化剤類、特に炭素数が5〜30のアルキルベンゼンスルホン酸(ドデシルベンゼンスルホン酸等)が好ましい。
【0059】
(b2)成分の重合触媒としては、熱又は還元性物質などによってラジカル分解してビニル単量体の付加重合を起こさせるラジカル重合触媒が好適である。そのようなラジカル重合触媒として、例えば、水溶性又は油溶性の過硫酸塩、過酸化物、アゾビス化合物が挙げられ、これらが好ましい。より具体的には、ラジカル重合触媒として、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、t−ブチルヒドロパーオキシド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2−ジアミノプロパン)ヒドロクロリド、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)が挙げられる。
【0060】
なお、重合触媒の使用量としては、全ビニル単量体100質量部に対して、好ましくは0.001〜5質量部である。なお、重合速度の促進、及び70℃以下での低温の重合を望む場合、例えば重亜硫酸ナトリウム、塩化第一鉄、アスコルビン酸塩、ロンガリット等の還元剤をラジカル重合触媒と組み合わせて用いると有利である。
本実施形態において、(b1)成分の重合と、(b2)成分の重合とは、別々に実施することも可能であるが、同時に実施すると水素結合等によるミクロな有機・無機複合化が達成できるので好ましい。
【0061】
(B)成分を得る方法として、乳化剤がミセルを形成するのに十分な量の水の存在下に(b1)成分と(b2)成分とを重合する、いわゆる乳化重合が適している。
乳化重合の方法としては、例えば、(b1)成分及び(b2)成分、更には必要に応じて(b3)成分をそのまま、又は乳化した状態で、一括若しくは分割して、又は連続的に反応容器中に滴下し、重合触媒の存在下、好ましくは大気圧から必要により10MPaまでの圧力下で、約30〜150℃の反応温度で重合させる方法が挙げられる。ただし、必要に応じて、これ以上の圧力で、又はこれ以下の温度条件で重合してもよい。
【0062】
なお、重合原液の配合について、重合安定性の観点から、最終固形分量が0.1〜70質量%、好ましくは1〜55質量%の範囲になるように(b1)〜(b4)の各成分を配合するのが好ましい。
さらに、乳化重合を行うに際して、得られる(B)成分の粒子径を適度に成長又は制御する観点から、シード重合法を用いることが好ましい。シード重合法とは、予め水相中にエマルジョン粒子(シード粒子)を存在させて重合させる方法である。シード重合法を行う際の重合系中のpHとしては、好ましくは1.0〜10.0、より好ましくは1.0〜6.0である。そのpHは、リン酸二ナトリウム、ボラックス、炭酸水素ナトリウム、アンモニアなどのpH緩衝剤を用いて調節することが可能である。
【0063】
なお、(B)成分を得る方法として、(b1)成分を重合させるのに必要な(b3)成分及び(b4)成分の存在下、(b1)成分及び(b2)成分を、必要により溶剤存在下で重合した後、重合生成物がエマルジョンとなるまで水を添加する手法も適用できる。
【0064】
(B)成分は、それが含まれるコーティング組成物を用いて形成される塗膜の基材密着性を向上させる観点から、コア層と、当該コア層を被覆する1層又は2層以上のシェル層とを備えたコア/シェル構造を有することが好ましい。当該コア/シェル構造を形成する方法としては、乳化重合を多段で行う、多段乳化重合が非常に有用である。
【0065】
多段乳化重合は、具体的には、例えば第1段階として、(b3)成分及び(b4)成分の存在下、(b1)成分、(b2)成分及び(b5)成分からなる群より選ばれる少なくとも1種以上の成分を重合してシード粒子を形成し、第2段階として、当該シード粒子の存在下、(b1)成分及び(b2)成分、並びに必要に応じて(b5)成分を含む重合原液を添加して重合する(2段重合法)。3段以上の多段乳化重合を実施する場合、例えば第3段階として、さらに(b1)成分及び(b2)成分、並びに必要に応じて(b5)成分を含む重合原液を添加して重合することができる。このような方法は、重合安定性の観点からも好適である。
【0066】
2段重合法を採用する場合、上記第1段階において用いられる重合原液中の固形分質量(M1)と上記第2段階において添加される重合原液中の固形分質量(M2)との質量比((M1)/(M2))は、重合安定性の観点から、好ましくは9/1〜1/9、より好ましくは8/2〜2/8である。
【0067】
また、上記コア/シェル構造として、重合安定性の観点から、シード粒子の粒径分布(体積平均粒子径/数平均粒子径)が大きく変化することなく、上記第2段階の重合によって粒子径が増大した構造を有することが好ましい。なお、体積平均粒子径は、数平均粒子径と同様に測定し得る。
【0068】
本実施形態に係る重合体エマルジョン粒子(B)は、上記コア層において、(b1)成分の含有量に対する(b2)成分の含有量の質量比((b2)/(b1))が、0.01/1〜1/1であると好ましい。また、シェル層の最外層において、(b1)成分の含有量に対する(b2)成分の含有量の質量比((b2)/(b1))が、0.1/1〜5/1であることが好ましい。コア層において、(b2)/(b1)が0.01/1よりも小さいと重合安定性が不十分となる傾向にあり、1/1よりも大きいと耐久性や柔軟性が十分になり難くなる。また、シェル層の最外層において、(b2)/(b1)が0.1/1よりも小さい場合、(A)成分との相互作用が小さくなり、5/1よりも大きいと相互作用が強すぎて十分な安定性が得難くなる傾向にある。
【0069】
コア/シェル構造は、例えば、透過型電子顕微鏡等による形態観察や粘弾性測定による解析等により観察することができる。
【0070】
コア/シェル構造のコア層のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは0℃以下である。この場合、得られるコーティング組成物は、その塗膜の物性として、室温における柔軟性に優れるので、割れ等が生じ難い太陽電池用の保護部材を形成することが可能となり、好ましい。なお、本実施形態において、Tgは示差走査熱量測定装置(DSC)にて測定することができる。
【0071】
(B)成分の粒子径(数平均粒子径)は、10nm〜800nmである。(B)成分の粒子径をこのような範囲に調整し、粒子径が1nm〜400nmの(A1)成分と組み合わせて組成物を形成することにより、耐候性、防汚染性が良好となる。また、得られる塗膜の透明性向上の観点から、(B)成分の粒子径は10nm〜100nmであると好適である。
本実施形態のコーティング組成物において、(B)成分の含有量に対する(A1)成分と(A2)成分との総含有量の質量比((A1)+(A2)/(B))は60/100〜480/100であり、好ましくは110/100〜350/100、より好ましくは150/100〜300/100である。((A1)+(A2))/(B)をこの範囲で配合したコーティング組成物は、透明性、及び塗装直後の親水性に優れた塗膜を実現し得るため好ましい。また、そのような防汚染性が長期に亘り持続する傾向となるため好ましい。
【0072】
(A1)成分の表面積(SA1)と(B)成分の表面積(SB)との比((SA1)/(SB))は、好ましくは0.001〜1000の範囲である。なお、各成分の表面積は、(A1)成分及び(B)成分の各々の粒子径、各々の質量、及び各々の比重から、粒子の形状を真球と仮定して算出することができる。
【0073】
本実施形態のコーティング組成物には、上記各成分に加えて、その用途及び使用方法などに応じて、通常、塗料や成型用樹脂に添加配合される添加剤成分、例えば、光安定剤、紫外線吸収剤、増粘剤、レベリング剤、チクソ化剤、消泡剤、凍結安定剤、艶消し剤、架橋反応触媒、顔料、硬化触媒、架橋剤、充填剤、皮張り防止剤、分散剤、湿潤剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、レオロジーコントロール剤、成膜助剤、防錆剤、染料、可塑剤、潤滑剤、還元剤、防腐剤、防黴剤、消臭剤、黄変防止剤、静電防止剤又は帯電調整剤等をそれぞれの目的に応じて選択したり、組み合わせたりして配合することができる。
【0074】
光安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン系光安定剤が好ましく用いられる。中でも、分子内にラジカル重合性の二重結合を有するラジカル重合性光安定剤が好ましい。紫外線吸収剤としては、例えば有機系紫外線吸収剤を挙げることができる。このような有機系紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤が挙げられる。中でも、分子内にラジカル重合性の二重結合を有するラジカル重合性紫外線吸収剤を用いることが好ましい。また、紫外線吸収能の高いベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤が好ましい。
【0075】
なお、光安定剤は、有機系紫外線吸収剤と併用することが好ましい。両者を併用することは、得られるコーティング組成物の耐候性向上に寄与し得る。また、これらの有機系紫外線吸収剤や、光安定剤、各種添加剤成分は、(A1)成分、(A2)成分及び(B)成分と単に配合することも可能であるし、(B)成分を合成する際に共存させることも可能である。
【0076】
本実施形態のコーティング組成物は、塗膜の強度及び防汚性を向上させる目的で、(C)成分として加水分解性珪素化合物を更に含むと好ましい。(C)成分として用いられる加水分解性珪素含有化合物としては、下記一般式(1)で表される加水分解性珪素含有化合物(c1)、下記一般式(2)で表される加水分解性珪素含有化合物(c2)を用いることができる。
1nSiX4-n (1)
ここで、式中、R1は水素原子、あるいは、ハロゲン基、ヒドロキシ基、メルカプト基、アミノ基、(メタ)アクリロイル基又はエポキシ基を有していてもよい、炭素数1〜10のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基若しくはアリール基を示す。Xは、加水分解性基を示し、nは0〜3の整数である。ここで、加水分解性基は加水分解により水酸基が生じる基であり、例えば、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、アミノ基、フェノキシ基、オキシム基が挙げられる。
3Si−R2n−SiX3 (2)
ここで、式中、Xは加水分解性基を示し、R2は炭素数1〜6のアルキレン基又はフェニレン基を示す。また、nは0又は1である。
【0077】
加水分解性珪素化合物(c1)及び(c2)として具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ(n−プロポキシ)シラン、テトラ(i−プロポキシ)シラン、テトラ(n−ブトキシ)シラン、テトラ(i−ブトキシ)シラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメトキシシラン、ジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ビス(トリメトキシシリル)メタン、ビス(トリエトキシシリル)メタン、ビス(トリフェノキシシリル)メタン、ビス(トリメトキシシリル)エタン、ビス(トリエトキシシリル)エタン、ビス(トリフェノキシシリル)エタン、1,3−ビス(トリメトキシシリル)プロパン、1,3−ビス(トリエトキシシリル)プロパン、1,3−ビス(トリフェノキシシリル)プロパン、1,4−ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、テトラアセトキシシラン、テトラキス(トリクロロアセトキシ)シラン、テトラキス(トリフルオロアセトキシ)シラン、トリアセトキシシラン、トリス(トリクロロアセトキシ)シラン、トリス(トリフルオロアセトキシ)シラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルトリス(トリクロロアセトキシ)シラン、テトラクロロシラン、テトラブロモシラン、テトラフルオロシラン、トリクロロシラン、トリブロモシラン、トリフルオロシラン、メチルトリクロロシラン、メチルトリブロモシラン、メチルトリフルオロシラン、テトラキス(メチルエチルケトキシム)シラン、トリス(メチルエチルケトキシム)シラン、メチルトリス(メチルエチルケトキシム)シラン、フェニルトリス(メチルエチルケトキシム)シラン、ビス(メチルエチルケトキシム)シラン、メチルビス(メチルエチルケトキシム)シラン、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザン、ビス(ジメチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(ジエチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(ジメチルアミノ)メチルシラン、ビス(ジエチルアミノ)メチルシランが挙げられる。
【0078】
また、下記一般式(3)で表される加水分解性珪素化合物(c3)も好適に用いることができる。その具体例としては、テトラメトキシシランの部分加水分解縮合物(例えば、多摩化学工業(株)製の商品名「Mシリケート51」、コルコート(株)製の商品名「MSI51」、三菱化学(株)製の「MS51」、同「MS56」)、テトエトキシシランの部分加水分解縮合物(多摩化学工業(株)製の商品名「シリケート35」、同「シリケート45」、コルコート(株)製の商品名「ESI40」、同「ESI48」)、テトラメトキシシランとテトラエトキシシランとの共部分加水分解縮合物(多摩化学工業(株)製の商品名「FR−3」、コルコート(株)製の商品名「EMSi48」)が挙げられる。
3−(O−Si(OR32n−OR3 (3)
ここで、式中、R3は炭素数1〜6のアルキル基を示す。nは2〜8の整数である。
【0079】
(C)成分である上記加水分解性珪素化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0080】
また、本実施形態のコーティング組成物において、(A1)成分の含有量に対する(C)成分の含有量の質量比((C)/(A1))は、好ましくは0.2/100〜300/100であり、より好ましくは1/100〜100/100である。(C)/(A1)が0.2/100よりも小さいと高温条件下での接触角の低下が不十分となる傾向にあり、(C)/(A1)が300/100を超えると塗膜が脆くなる傾向にある。
【0081】
本実施形態のコーティング組成物は、特に限定されるものではないが、水及び必要に応じて別の溶媒に溶解及び/又は分散させた状態として調製することができる。
【0082】
本実施形態で使用される基材としては、例えば、その材料がガラスや樹脂であるものが好ましく用いられる。透明性、耐候性、軽量化の観点から、基材を構成する材料が、ガラス、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、環状オレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂及びエチレン−フルオロエチレン共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種の材料、又はそれらの複合材料であると好ましい。アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、エチレン−フルオロエチレン共重合体には、耐候性を付与する目的で耐候剤等を更に練り込んでもよい。
【0083】
本実施形態に係る塗膜が太陽熱発電用の反射鏡の保護部材として用いられる場合、例えば、基材である反射鏡として、ガラス、セラミック及びプラスチック(樹脂)などの基板上に金属メッキ又は金属コーティング(例えば蒸着によるコーティング)を施したり、上記基板と金属板又は金属箔とを透明な接着剤により貼り合わせたりすることで形成された反射層を備える、太陽光の反射機能を有する平面状又は曲面状の反射基材を用いることができる。また、用いる基板及び/又は反射層の種類に応じて、その基板及び/又は反射層を保護する目的で、反射基材は、透明層を基板及び/又は反射層に積層して備えるものであってもよい。透明層の素材としては、例えば、ガラス、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、エチレン−フルオロエチレン共重合体が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0084】
透明層の膜厚は50μm〜10mmであると好ましく、材質、必要な力学的強度及び透明性の観点から、その膜厚を選択してもよい。また、透明層の形成方法として、透明層の材料がガラスの場合、例えばフローティング成形法等の公知のガラスの成形方法が用いられ、透明層が樹脂の場合、例えば、溶融キャスト法、押出しシーティング法等の公知の樹脂の成形方法が用いられる。なお、本実施形態において、「透明」とは、ASTM D−1003に準拠して測定されたHaze(ヘイズ)値として10%以下であることを意味する。
【0085】
また、本実施形態のエネルギー変換装置用部材は、例えば、水等の溶媒などに分散させた上記コーティング組成物(単に「水分散体」と略記することがある。)を基材上に塗布し乾燥することで形成される。ここで、水分散体の固形分濃度は、好ましくは0.01〜60質量%、より好ましくは1〜40質量%である。また、水分散体の粘度は、20℃において好ましくは0.1〜100000mPa・s、より好ましくは1〜10000mPa・sである。さらに、コーティング組成物の基材への塗布方法としては、例えばスプレー吹き付け法、フローコーティング法、ロールコート法、バーコート法、刷毛塗り法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、スクリーン印刷法、キャスティング法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法が挙げられる。なお、基材と塗膜とを積層して備える本実施形態のエネルギー変換装置用部材は、例えば、塗膜を基材上で乾燥した後、所望により好ましくは100℃以下での熱処理や紫外線照射等を行って得ることも可能である。
【0086】
このようにして得られた本実施形態のエネルギー変換装置用部材に備えられる塗膜は、上記(A1)成分、(A2)成分及び(B)成分、並びに必要に応じて、上記(C)成分、及び固形分として残存し得る上記添加剤成分を含むものである。
【0087】
塗膜の厚さは、好ましくは0.05〜100μm、より好ましくは0.1〜10μmである。透明性の観点から、100μm以下の厚さであることが好ましく、耐候性、防汚染性等の機能をより有効に発現するためには0.05μm以上の厚さであることが好ましい。
【0088】
塗膜の屈折率は1.3〜1.5であることが好ましい。反射率を重視する光反射鏡の保護部材として用いる場合、塗膜の屈折率は1.45〜1.5が好ましく、光線透過率を重視する透明な部材に応用する場合、その屈折率は1.3〜1.45であることが好ましい。本実施形態では、(A1)成分と(A2)成分との屈折率は大きく異なるため、(A1)成分の含有量が高い組成において、屈折率を上記範囲に制御するには、(A2)成分の粒子径や添加量を少なくすることはもちろんであるが、(A2)成分を塗膜中になるべく均一に分散させることも有用である。
【0089】
本実施形態において「塗膜」は、必ずしも連続膜である必要はなく、不連続膜、島状分散膜等の態様であってもよい。
【0090】
本実施形態のコーティング組成物は、上述のようにして塗膜とすることにより、太陽電池の保護部材、光反射鏡の保護部材等のエネルギー変換装置用部材に備えられる機能膜として好適に用いることができる。塗膜のヘイズ値は、10%以下であることが好ましい。ヘイズ値が10%以下であれば、エネルギー変換装置用部材に備えられる機能膜としてより有用である。なお、ここでいう「ヘイズ値」は、下記実施例に記載の方法に準じて測定される。
【0091】
塗膜を光反射鏡の保護部材として用いた場合、本実施形態のリフレクター装置は、該部材と、当該エネルギー変換装置用部材を塗膜とは反対側から支持する支持体とを備える。該リフレクター装置は、リフレクター装置により集光した太陽光を熱源とし、これを電気エネルギーに変換する装置を備える太陽熱発電システムに好適に用いることができる。すなわち、本実施形態の太陽熱発電システムは、太陽光を集光する上記リフレクター装置と、集光した太陽光の熱を電気エネルギーに変換する装置とを備える。これら本実施形態のリフレクター装置及び太陽熱発電システムは、上記構成を備える他はその態様に特に制限はなく、上記構成以外の構成が従来知られているものであってもよい。
【0092】
本実施形態によると、透明性が高く、しかも塗装直後から高い親水性を示し、その高い親水性を長期間維持できる塗膜と共に、高温で焼き付けることなくその塗膜を形成できる水系のコーティング組成物、及びそのコーティング組成物から得られる塗膜を備えるエネルギー変換装置用部材、そのエネルギー変換装置用部材を備えたリフレクター装置及びそのリフレクター装置を備えた太陽熱発電システムを提供することができる。
【実施例】
【0093】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、各種物性は下記の方法で評価した。
【0094】
1.数平均粒子径
試料中の固形分含有量が1〜20質量%となるよう適宜溶媒を加えて希釈し、湿式粒度分析計(日本国日機装製マイクロトラックUPA−9230)を用いて、試料に含まれる粒子の数平均粒子径を測定した。
【0095】
2.初期接触角
塗膜の表面に脱イオン水の水滴を載せ、23℃で1分間放置した後、接触角測定装置(日本国協和界面科学製、CA−X150型接触角計)を用いて、その水滴の接触角を測定した。
【0096】
3.初期ヘイズ
濁度計(日本国日本電色工業製、商品名「NDH2000」)を用い、JIS−K7105に準じて、基材と塗膜との積層体であるエネルギー変換装置用部材及び塗膜のヘイズ値を測定した(初期ヘイズ値)。
【0097】
4.膜厚及び屈折率
膜厚計(大塚電子製、商品名「FE−3000」)を用い、基材上に積層された塗膜の膜厚及び屈折率(波長:633nm)を測定した。
【0098】
5.塗膜外観
塗膜の外観をマイクロスコープ(キーエンス社製)により100倍の倍率で観察した。その結果を以下のように評価した。
○:微小クラックがほとんどない。
△:微小クラックが多い。
×:成膜できない。
【0099】
6.加熱静置後の接触角
基材上に積層された塗膜を70℃で10日間静置した後、その塗膜の表面に脱イオン水の水滴を載せ、23℃で1分間放置した後、接触角測定装置(日本国協和界面科学製、CA−X150型接触角計)を用いて、その水滴の接触角を測定した。
【0100】
7.耐候性試験後の接触角
基材上に積層された塗膜に対して、キセノンウエザメータ(スガ試験製、サイクル条件:キセノンランプ照度60W/m2、BPT63℃、50%RH、102分間、降雨、30℃、95%RH、18分間)で2500時間耐光性試験を実施した。次いで、塗膜の表面に脱イオン水の水滴を載せ、23℃で1分間放置した後、接触角測定装置(日本国協和界面科学製、CA−X150型接触角計)を用いて、その水滴の接触角を測定した。
【0101】
[製造例1]
<重合体エマルジョン粒子(B−1)水分散体の合成>
還流冷却器、滴下槽、温度計及び撹拌装置を有する反応容器に、イオン交換水1600g、ドデシルベンゼンスルホン酸6gを投入した後、撹拌下で温度を80℃に加温した。これに、ジメチルジメトキシシラン185gとフェニルトリメトキシシラン117gとの混合液を反応容器中の温度を80℃に保った状態で約2時間かけて滴下し、その後、反応容器中の温度を80℃に維持した状態で約1時間撹拌を続行した。次にアクリル酸ブチル86g、フェニルトリメトキシシラン133g及び3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン1.3gの混合液と、ジエチルアクリルアミド137g、アクリル酸3g、反応性乳化剤(商品名「アデカリアソープSR−1025」、旭電化(株)製、固形分25%水溶液)13g、過硫酸アンモニウムの2質量%水溶液40g及びイオン交換水1900gの混合液とを、反応容器中の温度を80℃に保った状態で約2時間かけて同時に滴下した。さらに、反応容器中の温度を80℃に維持した状態で約2時間撹拌を続行した後、液を室温まで冷却し、100メッシュの金網で濾過した後、イオン交換水で液中の固形分を10.0質量%に調整し、(B)成分である数平均粒子径70nmの重合体エマルジョン粒子の水分散体を得た。
【0102】
(実施例1〜3)
コロイダルシリカ(日産化学工業(株)製、商品名「スノーテックス−OS」((A1)成分)を水で希釈して、固形分10質量%の分散液(粒子の数平均粒子径8nm)に調整した。そこに、光触媒(石原産業(株)製、商品名「TSK−5」、数平均粒子径10nm、シリカ被覆酸化チタンヒドロゾル)((A2)成分)と製造例1で合成した重合体エマルジョン粒子の水分散体とを表1に示す組成で配合し、コーティング組成物を得た。得られたコーティング組成物を膜厚250nmになるように白板ガラス(厚み2mm、6×6cm角)上にスピンコートにて塗布した後、70℃で30分間乾燥させて、基材である白板ガラスと、その上に設けられた塗膜とを備えるエネルギー変換装置用部材を得た。
【0103】
(実施例4〜5)
更に(C)成分として、テトラエトキシシラン(信越化学社製、商品名「KBE−04」)を配合し、(A2)成分を光触媒(石原産業(株)製、商品名「MPT−422」、数平均粒子径30nm、酸化チタンヒドロゾル)に代えて表1に示す組成になるように配合した以外は実施例1と同様にして、コーティング組成物を得た。そのコーティング組成物を用いた以外は実施例1と同様にして、エネルギー変換装置用部材を得た。
【0104】
(比較例1)
表1記載の組成になるように配合した以外は実施例1と同様にして、コーティング組成物を得た。そのコーティング組成物を用いた以外は実施例1と同様にして、エネルギー変換装置用部材を得た。
【0105】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明のコーティング組成物を用いた塗膜は、透明性が良好で、塗装直後から高い親水性を示し、その高い親水性を長期間維持でき、その塗膜を基材上に形成する際に焼き付け不要であるため、太陽光の透過性、集光性が良好な太陽電池用保護部材、太陽熱発電用光反射鏡等として用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A1)成分:粒子径が1nm〜400nmのコロイダルシリカと、(A2)成分:粒子径が1nm〜200nmの光触媒と、(B)成分:粒子径が10nm〜800nmの重合体エマルジョン粒子と、を含むコーティング組成物であって、
前記(B)成分は、(b1)成分:加水分解性珪素化合物と、(b2)成分:水酸基、カルボキシル基、アミド基、アミノ基及びエーテル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有するビニル単量体と、(b3)成分:乳化剤と、(b4)成分:水と、を含む重合原液中で、前記(b1)成分及び前記(b2)成分を重合して得られる重合体エマルジョン粒子であり、
前記(B)成分の含有量に対する前記(A1)成分と前記(A2)成分との総含有量の質量比が60/100〜480/100であって、前記総含有量に対する前記(A1)成分の含有量の質量比が85/100〜99/100であるコーティング組成物。
【請求項2】
前記(B)成分の含有量に対する前記(b2)成分の含有量の質量比が0.1/1〜0.5/1である、請求項1記載のコーティング組成物。
【請求項3】
前記(A1)成分の含有量に対する前記(b2)成分の含有量の質量比が0.1/1〜1/1である、請求項1又は2に記載のコーティング組成物。
【請求項4】
前記(B)成分が、コア層と、当該コア層を被覆する1層又は2層以上のシェル層とを備えるコア/シェル構造を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項5】
前記コア層において、前記(b1)成分の含有量に対する前記(b2)成分の含有量の質量比が0.01/1〜1/1であり、前記シェル層の最外層において、前記(b1)成分の含有量に対する前記(b2)成分の含有量の質量比が0.1/1〜5/1である、請求項4に記載のコーティング組成物。
【請求項6】
前記(B)成分が、前記コア層を形成するシード粒子を含む前記重合原液中で、前記(b1)成分及び前記(b2)成分を重合して得られる重合体エマルジョン粒子であり、前記シード粒子が、前記(b1)成分、前記(b2)成分及び(b5)前記(b2)成分と共重合可能な他のビニル単量体からなる群より選ばれる少なくとも1種以上の成分を重合して得られる粒子である、請求項4又は5に記載のコーティング組成物。
【請求項7】
前記(b2)成分が、2級及び/又は3級アミド基を有するビニル単量体である、請求項1〜6のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項8】
(C)成分:下記一般式(1)、(2)及び(3)で表される化合物からなる群より選ばれる1種以上の加水分解性珪素化合物を更に含み、前記(A1)成分の含有量に対する前記(C)成分の含有量の質量比が1/100〜100/100である、請求項1〜7のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
1nSiX4-n (1)
(式中、R1は、水素原子、あるいは、ハロゲン基、ヒドロキシ基、メルカプト基、アミノ基、(メタ)アクリロイル基又はエポキシ基を有していてもよい、炭素数1〜10のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基若しくはアリール基を示す。Xは、加水分解性基を示し、nは0〜3の整数である。)
3Si−R2n−SiX3 (2)
(式中、Xは加水分解性基を示し、R2は炭素数1〜6のアルキレン基又はフェニレン基を示す。nは0又は1である。)
3−(O−Si(OR32n−OR3 (3)
(式中、R3は炭素数1〜6のアルキル基を示す。nは2〜8の整数である。)
【請求項9】
前記(B)成分の粒子径が10〜100nmである、請求項1〜8のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項10】
基材と、その基材上に請求項1〜9のいずれか一項に記載のコーティング組成物を塗布し、100℃以下で乾燥させて得られる塗膜と、を備えるエネルギー変換装置用部材であって、前記塗膜の屈折率が1.3〜1.5であるエネルギー変換装置用部材。
【請求項11】
前記塗膜のヘイズ値が10%以下である、請求項10記載のエネルギー変換装置用部材。
【請求項12】
前記塗膜を太陽電池の保護部材として備える、請求項10又は11に記載のエネルギー変換装置用部材。
【請求項13】
前記塗膜を光反射鏡の保護部材として備える、請求項10又は11に記載のエネルギー変換装置用部材。
【請求項14】
請求項13に記載のエネルギー変換装置用部材と、当該エネルギー変換装置用部材を前記塗膜とは反対側から支持する支持体と、を備えるリフレクター装置。
【請求項15】
太陽光を集光する請求項14に記載のリフレクター装置と、集光した太陽光の熱を電気エネルギーに変換する装置と、を備える太陽熱発電システム。

【公開番号】特開2011−111558(P2011−111558A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−270369(P2009−270369)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(309002329)旭化成イーマテリアルズ株式会社 (771)
【Fターム(参考)】