説明

コーティング組成物及び塗装品

【課題】優れた滑落性を有するコーティング層を形成するためのコーティング組成物を提供する。
【解決手段】次の(A)〜(C)成分を含有することを特徴とするコーティング組成物;(A)Si(OR1(R1は炭素数1〜8の炭化水素基)で表される4官能アルコキシシランと、Si(OR23(R2は炭素数1〜8の炭化水素基、Rは炭素数1〜8の炭化水素基またはフェニル基)で表される3官能アルコキシシランとを含有し、且つ前者対後者のモル比が1:1〜1:5の範囲であるシリコーン組成物、またはその部分加水分解縮重合物;(B)下記式(1)又は(2)で示され、重量平均分子量が1000〜9000であり、前記(A)成分の固形分量に対する含有量が0.1〜10質量%の範囲である片末端型の反応性シリコーン;(C)酸または塩基触媒;及び水。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水等の液滴の滑落性が大きいコーティング層を形成するためのコーティング組成物、及びコーティング層を備える塗装品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種基材の表面に撥水性を付与するために、フッ素樹脂やシリコーン樹脂などによるコーティングを施す技術がよく知られている(特許文献1)。
【0003】
しかし、撥水性を有する表面は水をはじく特性を持っていながらも、例えば外装材などの雨水に曝される環境で使用すると、表面に水が流れた跡(雨すじ)が付いてしまい、耐汚染性に優れているとは言えない。撥水性による低付着性を最大限に活かし、幅広く展開していくためには液滴が表面から転がり落ちやすく、表面に残りにくい表面設計、つまり高滑落性の向上が必要である。
【0004】
近年、前記目的を達成するために単純な撥水性の向上や、低表面エネルギー表面を形成するだけでなく、基材の表面に付着した水滴の滑落性(滑水性)に着目した技術も知られてきている。
【0005】
例えば特許文献2では、コーティング組成物中に親水性基(メタンスルホニル基)を有する親水性有機ケイ素化合物と疎水性の有機ケイ素化合物とを混合することにより、コーティング層の表面の滑落性を向上することが開示されている。
【0006】
また、特許文献3では、コーティングによるシリコーン化合物の基材表面への導入量を増加させることにより、コーティング層の表面における水滴の滑落性を向上させることが開示されている。
【0007】
また、特許文献4ではコーティング組成物中に炭化水素ポリマーを含有させることで、コーティング層の表面における水滴の滑落性を向上しようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−152446号公報
【特許文献2】特開2000−8026号公報
【特許文献3】特開2000−144056号公報
【特許文献4】特開2007−291314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1に記載の技術はコーティング層が高い撥水性を示すが滑落性に注目した技術ではなく、滑落性が顕著に高いとは言い難い。
【0010】
また、特許文献2に記載の技術はコーティング層に親水基と疎水基とを付与するものであり、親水基と水との強い相互作用のため、滑落性は充分には向上されないものであった。
【0011】
また、特許文献3に記載の技術では、単純にシリコーン成分を増やしただけでは、滑落性の向上は不充分であった。
【0012】
また、特許文献4に記載の技術では、炭化水素鎖を疎水性基として用いているが、この場合にコーティング層が高い滑落性を発揮するためには、コーティング層の表層で炭化水素鎖を高度に配向させて平滑な膜とする必要があり、実用化は困難である。
【0013】
本発明は上記の点に鑑みて為されたものであり、優れた滑落性を有するコーティング層を形成するためのコーティング組成物及びコーティング層を備える塗装品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第一の発明に係るコーティング組成物は、次の(A)〜(C)成分を含有することを特徴とする;
(A)一般式Si(OR1(R1はそれぞれ独立に炭素数1〜8の炭化水素基を示す)で表される4官能アルコキシシランと、一般式Si(OR23(R2はそれぞれ独立に炭素数1〜8の炭化水素基を示し、Rは炭素数1〜8の炭化水素基またはフェニル基を示す)で表される3官能アルコキシシランとを含有し、且つ前者対後者のモル比が1:1〜1:5の範囲であるシリコーン組成物、またはその部分加水分解縮重合物、
(B)下記式(1)又は(2)で示される構造を有し、重量平均分子量が1000〜9000であり、前記(A)成分の固形分量に対する含有量が0.1〜10質量%の範囲である片末端型の反応性シリコーン、並びに
(C)酸または塩基触媒、及び水。
【0015】
【化1】

【0016】
(式(1)において、Rはメチル基、エチル基又はプロピル基を、Rはメチレン基又はエチレン基を、nは1〜100の整数を示す。式(2)において、Rはそれぞれ独立にメチル基、エチル基又はプロピル基を示し、Rはそれぞれ独立にメチレン基又はエチレン基を示し、nは1〜100の整数を示す。)
第一の発明においては、前記(B)成分の重量平均分子量が、2000〜4000の範囲であってもよい。
【0017】
第一の発明に係るコーティング組成物は、更に次の(D)成分を含有してもよい;
(D)分散粒子径が20nm〜5μmであり、前記(A)成分と前記(B)成分との固形分の合計量に対する含有量が10〜400質量%の範囲である粒子成分。
【0018】
第一の発明においては、前記(D)成分の含有量が、前記(A)成分と前記(B)成分との固形分の合計量に対して25〜150質量%の範囲であってもよい。
【0019】
第二の発明に係る塗装品は、第一の発明に係るコーティング組成物で形成されたコーティング層を備え、前記コーティング層の表面における、20mgの水滴の転落角が20°以下であることを特徴とする。
【0020】
第三の発明に係る塗装品は、第一の発明に係るコーティング組成物で形成されたコーティング層を備え、前記コーティング層の表面における、10mgの水滴の転落角が10°以下であることを特徴とする。
【0021】
第四の発明に係る塗装品は、第一の発明に係るコーティング組成物で形成されたコーティング層を備え、前記コーティング層の表面の最大高さRzが200μm以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、コーティング組成物から、優れた滑落性を有すると共に良好な硬度と耐クラック性とを有するコーティング層を形成することができ、このコーティング層を基材に設けることで、優れた滑落性を有する塗装品を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
コーティング層の滑落性が優れているとは、水等の液滴がコーティング層の表面から転落しやすいことであり、滑落性を向上させるためには少なくとも下記2点が必要である。
(1)コーティング層の表面の水との接触角を大きくして液滴とコーティング層との接触面積を低減する。
(2)液滴とコーティング層との接触面の表面摩擦抵抗を下げる。
【0024】
滑落性の評価方法としては、所定質量の液滴を対象表面に載せ、一定速度で対象表面に傾斜角をつけていった際、液滴と対象表面との接触面の前端、後端ともに動き出したときの角度を測定する手法が一般的である。この動き出す瞬間の角度を転落角(Sliding angle)とよぶ。本発明者らは、液滴がより小さい転落角で滑落すること、並びにより小さい質量の液滴が滑落することを目指して、検討を進めた。
【0025】
本実施形態に係るコーティング組成物は、次の(A)〜(C)成分を含有する。
【0026】
(A)一般式Si(OR1(R1はそれぞれ独立に炭素数1〜8の炭化水素基を示す)で表される4官能アルコキシシランと、一般式Si(OR23(R2はそれぞれ独立に炭素数1〜8の炭化水素基を示し、Rは炭素数1〜8の炭化水素基またはフェニル基を示す)で表される3官能アルコキシシランとを含有し、且つ前者対後者のモル比が1:1〜1:5の範囲であるシリコーン組成物、またはその部分加水分解縮重合物、
(B)上記式(1)又は(2)で示される構造を有し、重量平均分子量が1000〜9000であり、前記(A)成分の固形分量に対する含有量が0.1〜10質量%の範囲である片末端型の反応性シリコーン、並びに
(C)酸または塩基触媒、及び水。
【0027】
前記重量平均分子量はゲル・パーミエイション・クロマトグラフィー(GPC)により、東ソー株式会社製の標準ポリスチレンを用いて測定される値である。
【0028】
このように3官能アルコキシシランと4官能アルコキシシランとを所定の割合で使用すると共に、特定構造の片末端型の反応性シリコーンを所定の割合で使用することで、コーティング層の造膜性と硬度とをバランス良く向上すると共に、このコーティング層の耐クラック性、レベリング性、撥水性を向上することができ、これにより、コーティング層に高い滑落性を付与することができる。
【0029】
前記(B)成分の重量平均分子量が、2000〜4000の範囲であることが好ましい。この場合、コーティング層の耐クラック性、レベリング性、撥水性が特に向上し、このコーティング層の滑落性が更に優れたものとなる。
【0030】
コーティング組成物は、更に次の(D)成分を含有することが好ましい。
【0031】
(D)分散粒子径が20nm〜5μmであり、前記(A)成分と前記(B)成分との固形分の合計量に対する含有量が10〜400質量%の範囲である粒子成分。
【0032】
この場合、コーティング層の硬度を向上すると共に耐クラック性を改善することができる。
【0033】
前記(D)成分の含有量は、更に前記(A)成分と前記(B)成分との固形分の合計量に対して25〜150質量%の範囲であることが好ましい。
【0034】
一実施形態に係る塗装品は、上記コーティング組成物で形成されたコーティング層を備え、前記コーティング層の表面における、20mgの水滴の転落角が20°以下である。或いは、前記コーティング層の表面における、10mgの水滴の転落角が10°以下である。この転落角は、20mgの水滴をコーティング層の表面に水平状態で載せ、このコーティング層の表面を傾斜させた際、水滴とコーティング層との接触面の前端、後端が共に動き出した瞬間の傾斜角度である。これにより、優れた滑落性を有するコーティング層を備える塗装品を得ることができる。
【0035】
別の実施形態に係る塗装品は、上記コーティング組成物で形成されたコーティング層を備え、前記コーティング層の表面の最大高さRz(JIS B0601:2001)が200μm以下である。これにより、優れた滑落性を有するコーティング層を備える塗装品を得ることができる。
【0036】
以下、本実施形態について更に詳しく説明する。
【0037】
コーティング組成物は、次の(A)〜(C)成分を含有する。
【0038】
(A)成分は、コーティング層の樹脂マトリックスを形成する成分であり、4官能アルコキシシランと、3官能アルコキシシランとを含有すると共に前者対後者のモル比が1:1〜1:5の範囲であるシリコーン組成物、またはその部分加水分解縮重合物である。
【0039】
ここで、アルコキシシランは、中心原子であるSiが有するアルコキシ基の数に応じてアルコキシ基を1個有する場合に1官能、4個有するならば4官能と呼ぶ。本実施形態では、3官能と4官能のアルコキシシランを所定の割合で配合することによって、コーティング層の造膜性と硬度のバランスを確保している。
【0040】
4官能アルコキシシランと3官能アルコキシシランとを配合の比率は、前記のとおり前者対後者のモル比が1:1〜1:5の範囲であれば特に制限されない。尚、4官能のアルコキシランの比率が多すぎると、コーティング層の硬度が大きくなりすぎてこのコーティング層にクラックが発生しやすくなる。また、3官能のアルコキシシランの比率が多すぎると、コーティング層の造膜性が悪くなり、表面状態が悪くなりやすい傾向がある。
【0041】
4官能のアルコキシシランは、一般式Si(OR1で表され、テトラアルコキシシランとも呼ばれる。この一般式中のR1はそれぞれ独立に炭素数1〜8の炭化水素基を示し、炭化水素基の水素原子の一部をフッ素原子で置換したフッ素化アルキル基も含まれる。この一般式におけるR1で表される炭化水素基の具体例としては、直鎖状、分岐状または環状のアルキル基、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、i−ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、オクチル基などが挙げられる。また、これらのアルキル基の有する水素原子の一部をフッ素原子で置換したフッ素化アルキル基であってもよい。このような4官能アルコキシシランのうち、特にテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラn−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラn−ブトキシシラン、テトライソブトキシシラン、テトラsec−ブトキシシラン又はテトラt−ブトキシシランが好適に使用される。
【0042】
3官能のアルコキシシランは、一般式Si(OR23で表され、トリアルコキシシランとも呼ばれる。この一般式中のR2はそれぞれ独立に炭素数1〜8の炭化水素基を示し、炭化水素基の水素原子の一部をフッ素原子で置換したフッ素化アルキル基も含まれる。Rは炭素数1〜8の炭化水素基またはフェニル基を示す。
【0043】
この3官能のアルコキシシランの具体例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ペンチルトリメトキシシラン、ペンチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシラン、ベンジルトリメトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のトリアルコキシシラン化合物が挙げられる。
【0044】
これらの4官能アルコキシシラン、及び3官能アルコキシシランの一般式におけるR1、R2、Rは、いずれも特に炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましい。特に、コーティング層の低表面自由エネルギー発現、架橋性、耐薬品性等の面から、R1、R2、Rがメチル基、エチル基のいずれかであることが好ましく、特にR1、R2、Rが全てメチル基であることが好ましい。
【0045】
尚、R1、R2、Rが炭素数4を超えるアルキル基である場合には、均一なコーティング組成物を調製するために要する有機溶剤の量が多くなる場合があり、また加水分解性が低下することでコーティング層でのSiOH基(シラノール基)の生成が緩慢となり、架橋性が悪くなる傾向がある。
【0046】
(A)成分を構成する3官能のアルコキシシラン及び4官能のアルコキシシランは、その全てが単量体であってもよく、またその一部又は全部が部分加水分解縮合物となっていてもよい。(A)成分がアルコキシシランの部分加水分解縮合物を含有する場合には、この部分加水分解縮合物の重量平均分子量は500〜10000の範囲であることが好ましい。
【0047】
このようなアルコキシシランの部分加水分解縮合物としては、例えば4官能のアルコキシシランであるテトラメトキシシランの部分加水分解縮合物であるポリメトキシポリシロキサンとして三菱化学株式会社製「MKCシリケートMS51」、「MKCシリケートMS56」等が挙げられる。
【0048】
(B)成分は、下記式(1)又は(2)で示される構造を有する、水酸基を1又は2個有する片末端型の反応性シリコーンである。
【0049】
下記式(1)において、Rはメチル基、エチル基又はプロピル基を、Rはメチレン基又はエチレン基を、nは1〜100の整数を示す。
【0050】
式(2)において、Rはそれぞれ独立にメチル基、エチル基又はプロピル基を示し、Rはそれぞれ独立にメチレン基又はエチレン基を示し、nは1〜100の整数を示す。
【0051】
【化2】

【0052】
この(B)成分は、コーティング層の耐クラック性、レベリング性、撥水性を向上するために使用される。この(B)成分を使用することによる撥水性の向上は、コーティング層の滑落性の向上に大きく寄与する。
【0053】
この(B)成分の重量平均分子量は1000〜9000の範囲であり、好ましくは2000〜4000の範囲である。
【0054】
ここで、コーティング層に高い滑落性を付与するためには、(B)成分が、シラノールと結合し、表層で固定されるジオール変性片末端型反応性シリコーンオイルや、カルビノール変性片末端型反応性ジオールであることが好ましい。両末端型反応性のオイルや側鎖型反応性シリコーンオイルの場合は反応点が分子内の両端にあるので、硬化過程で樹脂マトリックスの内部に取り込まれてしまい、滑落性が発現しないと考えられる。
【0055】
コーティング組成物中の(B)成分の含有量は、(A)成分の固形分量に対して0.1〜10質量%の範囲内とする。前記含有量が0.1質量%未満ではコーティング層の撥水性向上の効果が小さくなることに伴い高滑落性の発現性が低くなったり、得られなかったりする傾向がある。またこの含有量が10質量%より多くなると、コーティング層の硬度が低くなったり硬化速度が遅くなったりする傾向がある。
【0056】
(C)成分は酸または塩基触媒、及び水であり、(A)成分の加水分解、並びにコーティング組成物中の(A)成分と(B)成分との縮合反応を促進してこのコーティング組成物を硬化させる作用を発揮する。
【0057】
(C)成分の酸または塩基触媒の例としては特に限定されないが、例えば、アルキルチタン酸塩類;オクチル酸錫、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジマレエート等のカルボン酸金属塩類;ジブチルアミン−2−ヘキソエート、ジメチルアミンアセテート、エタノールアミンアセテート等のアミン塩類;酢酸テトラメチルアンモニウム等のカルボン酸第4級アンモニウム塩;テトラエチルペンタミン等のアミン類、N−β−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−アミノエチル−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミン系シランカップリング剤;p−トルエンスルホン酸、フタル酸、塩酸等の酸類;アルミニウムアルコキシド、アルミニウムキレート等のアルミニウム化合物;酢酸リチウム、蟻酸リチウム、蟻酸ナトリウム、リン酸カリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属塩;テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、チタニウムテトラアセチルアセトネート等のチタニウム化合物;メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルモノクロロシラン等のハロゲン化シラン類等が挙げられる。但し、これら以外であっても、(A)成分と(B)成分との縮合反応の促進に有効なものであれば特に制限はない。
【0058】
コーティング組成物中の酸または塩基触媒の含有量は特に制限されないが、例えば(A)成分と(B)成分との固形分の合計量100質量部に対して、好ましくは0.0001〜10質量部の範囲内、より好ましくは0.0005〜8質量部の範囲内、さらに好ましくは0.0007〜5質量部の範囲内とする。酸または塩基触媒の含有量が過少であるとコーティング組成物の硬化性が低下し、またコーティング層の硬度が低下する傾向が生じる。また、この酸または塩基触媒の含有量が過剰であるとコーティング層の耐熱性が低下したり、コーティング層の硬度が高くなりすぎてクラックを生じやすくなるおそれがある。
【0059】
また、水の含有量は、(A)成分と(B)成分の固形分の合計量100質量部に対して5〜45重量部の範囲内が好ましい。水の含有量が過少であると樹脂の反応が不十分となり、コーティング層の硬度が低下する傾向が生じる。また、過剰すぎるとコーティング層の硬度が高くなりすぎクラックを生じやすくなったり、(B)成分が疎水性のため相溶しなくなり、樹脂中に取り込まれなくなったりするおそれがある。
【0060】
コーティング組成物は、上記(A)〜(C)成分に加えて、下記(D)成分を含有してもよい。
【0061】
(D)成分は粒子成分であり、コーティング層の硬度の向上や耐クラック性の改善に効果がある。さらに所定の分散粒子径を有する(D)成分が、所定の配合量でコーティング組成物に配合されると、コーティング層での液滴の滑落性が更に向上する。
(D)成分の材質は特に制限されないが、例えば架橋ポリメタクリル酸メチルビーズ、合成シリカビーズ等のビーズ粒子;シリカ、ジルコニア、チタニアなどの金属酸化物;カーボンブラック、キナクリドン、ナフトールレッド、シアニンブルー、シアニングリーン、ハンザイエロー、フッ素樹脂系顔料、アクリル樹脂系顔料等の有機顔料等の顔料などが挙げられる。
【0062】
また、(D)成分として、水分散性またはアルコール等の非水系の有機溶媒分散性のコロイダルシリカのような、粒子のゾルを使用することもできる。一般にこのような分散ゾルは、固形分としての粒子成分を20〜50質量%含有しており、この値から粒子成分の配合量を決定できる。水分散性の微粒子ゾルを用いる場合、固形分以外の成分として存在する水は上記(C)成分の水として用いることができ、(A)成分の加水分解に用いることができるとともに、コーティング組成物の硬化剤として用いることができる。有機溶媒分散性粒子ゾルにおいて、粒子成分を分散している溶媒の種類は特に制限はされないが、たとえば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール等の低級脂肪族アルコール類;エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル等のエチレングリコール誘導体;ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のジエチレングリコール誘導体;およびジアセトンアルコール等を挙げることができ、これらからなる群より選ばれた1種もしくは2種以上を使用することができる。これらの親水性有機溶媒と併用して、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトオキシムなども用いることができる。
【0063】
(D)成分は、その分散粒子径が20nm〜5μmであることが好ましい。この分散粒子径が5μmより大きくなると、粒径が大きすぎるため粒子がコーティング層から突出し、コーティング層の硬度が低下したり、コーティング層の表面の粗さが大きくなりすぎて滑落性が低下したりする傾向が生じる。分散粒子径が20nmよりも小さくても、そのように分散粒子径が小さいことが、滑落性に悪影響を与えることはない。しかし、特に(D)成分の分散粒子径が20nm〜5μmの範囲にあると、(D)成分を構成する粒子によってコーティング層の表層に連続的なフラクタル形状が付与される。フラクタル形状が付与されることで、コーティング層の表面積が平滑な場合よりも大きくなり、これによりコーティング層での液滴の濡れ弾きが更に生じやすくなる(Wenzel理論)。このWenzel理論による効果と、(B)成分によるコーティング層の滑り性の向上とが、複合的に作用し、コーティング層において更に小さな水滴が低角度(10mgの水滴が10°以下)で滑落するようになる。
【0064】
また、コーティング組成物中の(D)成分の含有量は、(A)成分と(B)成分との固形分の合計量に対して、10〜400質量%の範囲であることが好ましい。この含有量が10質量%以上であると(D)成分によるコーティング層の硬度を向上する作用が発揮される。またこの含有量が400質量%以下であるとコーティング層中の滑落性に寄与しない成分の量が抑制されて高い滑落性が維持され、且つ膜形成に寄与しない成分の量が抑制されてコーティング層の硬度等の物性が良好になる。
【0065】
コーティング組成物中の(D)成分の含有量が、(A)成分と(B)成分との固形分の合計量に対して25〜150質量%の範囲内であることも好ましい。この場合、(B)成分との複合作用が最大となる様な連続的で且つ最適なフラクタル形状が、コーティング層に付与される。これにより、コーティング層において低角度で小さな水滴が転がるだけではなく、10°に傾斜したコーティング層に10mgの水滴が滴下された場合の、水滴の転がる速度が速くなって、例えばその平均転落速度が1.0mm/sec以上となり、小さな水滴が速く転がるようになる。
【0066】
このコーティング組成物は、必要に応じ、レベリング剤、染料、抗菌剤、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤等を、本発明の効果に悪影響を与えない範囲内で含有してもよい。
【0067】
また、コーティング組成物は有機溶媒を含有してもよい。例えばコーティング組成物を各種有機溶媒で希釈することで、コーティング組成物の取り扱い性を向上することができる。また、コーティング組成物の使用時に有機溶媒を添加するようにしてもよい。
【0068】
有機溶媒としては、特に限定はされないが、たとえば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール等の低級脂肪族アルコール類;エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル等のエチレングリコール誘導体;ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のジエチレングリコール誘導体;および、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトオキシム、ジアセトンアルコール等が挙げられる。これらの有機溶剤は一種のみを用い、或いは複数種を併用することができる。有機溶剤の使用量は特に制限されず、必要に応じて希釈割合を適宜決定すればよい。
【0069】
コーティング組成物を各種基材に塗布成膜することで、コーティング層を備える塗装品が得られる。
【0070】
基材としては、無機質基材、セラミックス基材、有機質基材、無機有機複合基材等を使用することができ、材質は特に限定されない。
【0071】
無機質基材としては、例えば金属基材;ガラス基材;ホーロー;水ガラス化粧板、無機質硬化体等の無機質建材;セラミックス等が挙げられる。
【0072】
金属基材としては、各種の金属や合金から形成されたものを用いることができ、例えばアルミニウム、ジュラルミン等アルミニウム合金、銅、亜鉛等の非鉄金属から形成された基材;鉄製の基材;圧延鋼、溶融亜鉛めっき鋼、(圧延)ステンレス鋼、ブリキ等の鋼材から形成された基材などを使用することができる。
【0073】
ガラス基材としては、例えばナトリウムガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、石英ガラス、無アルカリガラス等から形成された基材が挙げられる。
【0074】
前記ホーローとは、金属表面にガラス質のホーローぐすりを焼き付け、被覆したものである。その素地金属としては、たとえば、軟鋼板、鋼板、鋳鉄、アルミニウム等が挙げられるが、特に限定はされない。ホーローぐすりも通常のものを用いればよく、特に限定はされない。
【0075】
前記水ガラス化粧板とは、たとえば、ケイ酸ソーダをスレートなどのセメント基材に塗布し、焼き付けた化粧板などを指す。無機質硬化体としては、特に限定はされないが、たとえば、繊維強化セメント板、窯業系サイディング、木毛セメント板、パルプセメント板、スレート・木毛セメント積層板、石膏ボード製品、粘土瓦、厚形スレート、陶磁器質タイル、建築用コンクリートブロック、テラゾ、プレストレストコンクリートダブルTスラブ、ALCパネル、空洞プレストレストコンクリートパネル、普通煉瓦等の無機材料を硬化、成形させた基材全般を指す。
【0076】
セラミックス基材としては、たとえばアルミナ、ジルコニア、炭化ケイ素、窒化ケイ素等から形成された基材が挙げられる。
【0077】
有機質基材としては、例えばプラスチック、木、木材、紙等が挙げられる。プラスチック基材としては、例えばポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ABS樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性もしくは熱可塑性プラスチック、および、これらのプラスチックをナイロン繊維等の有機繊維で強化した繊維強化プラスチック(FRP)等から形成された基材が挙げられる。
【0078】
無機有機複合基材としては、例えば上記プラスチックをガラス繊維、カーボン繊維等の無機繊維で強化した繊維強化プラスチック(FRP)等から形成された基材が挙げられる。
【0079】
また、基材上に有機系の樹脂組成物で有機物被膜を形成し、これにより得られた塗装基材の前記有機物被膜上に、コーティング層を形成してもよい。塗装基材を構成する有機物被膜としては、特に限定はされないが、たとえば、アクリル系、アルキド系、ポリエステル系、エポキシ系、ウレタン系、アクリルシリコーン系、塩化ゴム系、フェノール系、メラミン系等の有機樹脂を含むコーティング材の硬化被膜等が挙げられる。
【0080】
これらの基材にコーティング組成物を塗布成膜することで基材上にコーティング層を形成し、塗装品を得ることができる。
【0081】
コーティング組成物の塗布方法としては、スプレーコーティング法、ディップコーティング法、フローコーティング法、スピンコーティング法、ロールコーティング法、刷毛塗り、スポンジ塗り等の方法が好適に利用できる。硬化方法としては熱処理、室温放置などにより重合させて行うことができる。
【0082】
この塗装品におけるコーティング層の表面の最大高さRzは、200μm以下であることが好ましい。このようにコーティング層の表面の最大高さRzを低くすることで、コーティング層の表面における水滴の引っ掛かりを抑制することができ、このためコーティング層の表面の滑落性を特に向上することできる。また、このコーティング層の表面を粗化或いは凹凸状に形成する場合であっても、その表面の最大高さが200μm以下であれば、コーティング層の表面の滑落性を高い水準で維持することができる。尚、一般的に、高滑落性を有する表面を実現するためにはその表面に原子レベルでの平滑性が要求され、さらにこの表面の均一性が極めて高いことが要求されるが、本実施形態のような所定の組成のコーティング組成物を用いれば、表面の最大高さRzが200μm以下であれば、優れた滑落性を実現することができる。
【0083】
このコーティング層の表面の最大高さRzの下限値は特に制限されず、この値が小さくなるほど滑落性が高くなるが、前記一般的な無機質基材、セラミックス基材、有機質基材、無機有機複合基材は平滑なものでも少なくとも0.1μm程度の最大高さRzを有するため、実質的には最大高さRzの下限値は0.1μmである。
【0084】
また、塗装品におけるコーティング層に連続的なフラクタル形状を付与されると、コーティング層における水滴の滑落性が更に向上し得る。この場合、例えばコーティング層における10mgの水滴の転落角が10°以下となることも可能である。例えばコーティング組成物中に上記(D)成分のような粒子成分が配合されることで、コーティング層にフラクタル形状が付与される。或いは、下地となる基材にフラクタル形状が付与されることで、コーティング層にフラクタル形状が付与されてもよい。
【0085】
コーティング層の表面を粗化或いは凹凸状にする場合、その方法としては、コーティング組成物中にフィラーを配合する方法、コーティング組成物中に発泡性の成分を配合する方法、コーティング層を形成した後、このコーティング層の表面をエンボスロール等により凹凸状にする方法などが挙げられる。また、基材の塗装が施される面をエンボスロール、プレス加工等によって凹凸状にした後、この面上にコーティング層を形成することもできる。
【0086】
以上のようなコーティング組成物及び塗装品は、たとえば次の用途に適用される。
【0087】
1)撥水性が要求される車両用途
具体的な適用例として、自動車ボディー(有機塗装板)フロントガラス、サイドミラー、サンルーフ、電車等の車両、マスキングフィルム等が挙げられる。
【0088】
2)汚染防止が要求される家庭内用途
具体的な適用例として、浴槽、浴室内壁、便器等が挙げられる。
【0089】
3)表面高耐久性が要求される一般屋外構造物
具体的な適用例として、外壁、雨樋、墓石、テント、各種販売機、その他一般屋外構造物が挙げられる。
【0090】
4)インキやトナーの付着防止が要求される印刷機ロール、電子写真ロール
具体的な適用例は、定着ロール、感光ドラム、ガイドロール、分離爪、SURF、加圧ロール等が挙げられる。
【0091】
5)高耐久性・撥水性が要求される用途。
【0092】
具体的な適用例として、繊維、グレイジング、太陽電池カバー、スポーツ用品等の基材にコーティング層を設けることが挙げられる。
【0093】
上記のような塗装品を得るにあたっては、コーティング組成物を上記各種の材料や物品の表面の少なくとも一部に直接塗布し、硬化成膜することでコーティング層を形成してもよいが、これに限定されず、たとえばコーティング組成物を樹脂フィルムの表面に塗布して硬化成膜し、または、コーティング組成物を金属板に塗布して硬化成膜し、このようにコーティング層が形成された樹脂フィルムや金属板を、上記の各種材料や物品の表面の少なくとも一部に貼着したり巻き付けたりすることで、これらの各種材料や物品にコーティング層を設けてもよい。上記樹脂フィルムの材質としては、たとえば、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂およびそれらの複合樹脂等の樹脂が挙げられるが、特に限定はされない。
【0094】
以上のようにて得られる塗装品は、滑落性に優れたコーティング層を備える。この塗装品においては、コーティング層の滑落性を、20mgの水滴の転落角が20°以下となる程度まで向上することも可能なものである。或いは、コーティング層の滑落性を、10mgの水滴の転落角が10°以下となる程度まで向上することも可能なものである。
【実施例】
【0095】
以下、本発明の実施例を提示することで本発明を更に詳述する。
【0096】
[実施例1]
反応容器中に、メチルポリシリケート(テトラメトキシシランの加水分解重縮合物;コルコート株式会社製、商品名メチルシリケート51;固形分100質量%)を29質量部、メチルトリメトキシシラン(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、品番TSL−8113;固形分100質量%)を17質量部、式(1)に示す構造を有するカルビノール変性片末端型反応性シリコーンオイル(信越シリコーン株式会社製、品番X22−170BX;固形分100質量%;重量平均分子量2800)を0.5質量部、イオン交換水を9質量部、濃度0.1mol/lのHCl水溶液を0.5質量部、メタノールを45質量部投入し、7時間攪拌することで、コーティング組成物を調製した。
【0097】
基材としてSUS304製の試験板(日本テストパネル株式会社製)を用い、この基材に前記コーティング組成物をエアスプレーにて乾燥膜厚が0.5〜2μmになるように塗布し、150℃の温度で10分焼き付けることによって、塗装品を得た。
【0098】
[実施例2]
メチルポリシリケートの使用量を36質量部、メチルトリメトキシシランの使用量を10質量部、式(1)に示す構造を有するカルビノール変性片末端型反応性シリコーンオイルの使用量を0.5質量部、イオン交換水の使用量を9質量部、濃度0.1mol/lのHCl水溶液の使用量を0.5質量部、メタノールの使用量を43質量部とし、それ以外は実施例1と同じ条件で塗装品を得た。
【0099】
[実施例3]
メチルポリシリケートの使用量を25質量部、メチルトリメトキシシランの使用量を22質量部、式(1)に示す構造を有するカルビノール変性片末端型反応性シリコーンオイルの使用量を0.5質量部、イオン交換水の使用量を9質量部、濃度0.1mol/lのHCl水溶液の使用量を0.5質量部、メタノールの使用量を43質量部とし、それ以外は実施例1と同じ条件で塗装品を得た。
【0100】
[実施例4]
メチルポリシリケートの使用量を18質量部、メチルトリメトキシシランの使用量を27質量部、式(1)に示す構造を有するカルビノール変性片末端型反応性シリコーンオイルの使用量を0.5質量部、イオン交換水の使用量を9質量部、濃度0.1mol/lのHCl水溶液の使用量を0.5質量部、メタノールの使用量を43質量部とし、それ以外は実施例1と同じ条件で塗装品を得た。
【0101】
[実施例5]
メチルポリシリケートの使用量を29質量部、メチルトリメトキシシランの使用量を17質量部、式(1)に示す構造を有するカルビノール変性片末端型反応性シリコーンオイルの使用量を0.5質量部、イオン交換水の使用量を9質量部、濃度0.1mol/lのHCl水溶液の使用量を0.007質量部、メタノールの使用量を45質量部とし、それ以外は実施例1と同じ条件で塗装品を得た。
【0102】
[実施例6]
メチルポリシリケートの使用量を28質量部、メチルトリメトキシシランの使用量を16質量部、式(1)に示す構造を有するカルビノール変性片末端型反応性シリコーンオイルの使用量を0.4質量部、イオン交換水の使用量を8質量部、濃度0.1mol/lのHCl水溶液の使用量を5質量部、メタノールの使用量を42質量部とし、それ以外は実施例1と同じ条件で塗装品を得た。
【0103】
[実施例7]
式(1)に示す構造を有するカルビノール変性片末端型反応性シリコーンオイル(信越シリコーン株式会社製、品番X22−170BX;固形分100質量%;重量平均分子量2800)に代えて、式(1)に示す構造を有するカルビノール変性片末端型反応性シリコーンオイル(信越シリコーン株式会社製、品番X22−170DX;固形分100質量%;重量平均分子量5900)を使用し、それ以外は実施例1と同じ条件で塗装品を得た。
【0104】
[実施例8]
メチルポリシリケートの使用量を26.3質量部、メチルトリメトキシシランの使用量を15.7質量部、式(1)に示す構造を有するカルビノール変性片末端型反応性シリコーンオイルの使用量を5質量部、イオン交換水の使用量を8質量部、濃度0.1mol/lのHCl水溶液の使用量を0.5質量部、メタノールの使用量を44質量部とし、それ以外は実施例1と同じ条件で塗装品を得た。
【0105】
[実施例9]
メチルポリシリケートの使用量を29質量部、メチルトリメトキシシランの使用量を17質量部、式(1)に示す構造を有するカルビノール変性片末端型反応性シリコーンオイルの使用量を0.05質量部、イオン交換水の使用量を9質量部、濃度0.1mol/lのHCl水溶液の使用量を0.5質量部、メタノールの使用量を43質量部とし、それ以外は実施例1と同じ条件で塗装品を得た。
【0106】
[実施例10]
メチルポリシリケート(テトラメトキシシランの加水分解重縮合物;コルコート株式会社製、商品名メチルシリケート51;固形分100質量%)に代えて、テトラエトキシシラン(信越シリコーン株式会社製、品番KBE−04;固形分100質量%)を使用し、それ以外は実施例1と同じ条件で塗装品を得た。
【0107】
[実施例11]
メチルトリメトキシシラン(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、品番TSL−8113;固形分100質量%)に代えて、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン株式会社製、品番KBM−503;固形分100質量%)を使用し、それ以外は実施例1と同じ条件で塗装品を得た。
【0108】
[実施例12]
基材に対し塗装前に表面の最大高さRzが200μmとなるように処理を施し、それ以外は実施例1と同じ条件で塗装品を得た。
【0109】
[実施例13]
メチルポリシリケートの使用量を3.5質量部、メチルトリメトキシシランの使用量を2.1質量部、式(1)に示す構造を有するカルビノール変性片末端型反応性シリコーンオイルの使用量を0.3質量部、イオン交換水の使用量を1質量部、濃度0.1mol/lのHCl水溶液の使用量を0.1質量部、メタノールの使用量を70.4質量部とした。また、反応容器中には前記成分と共に、ダイアセトンアルコールを10質量部、シリカゾル(日産化学工業株式会社製、商品名スノーテックス20L;粒子径40〜50nm;固形分20質量%)を12.5質量部投入した。それ以外は実施例1と同じ条件で塗装品を得た。
【0110】
[実施例14]
メチルポリシリケートの使用量を3.5質量部、メチルトリメトキシシランの使用量を2.1質量部、式(1)に示す構造を有するカルビノール変性片末端型反応性シリコーンオイルの使用量を0.3質量部、イオン交換水の使用量を1質量部、濃度0.1mol/lのHCl水溶液の使用量を0.1質量部、メタノールの使用量を70.4質量部とした。また、反応容器中には前記成分と共に、シリカゾル(日産化学工業株式会社製、商品名スノーテックス20L;粒子径40〜50nm;固形分20質量%)を12.5質量部投入した。基材に対し塗装前に表面の最大高さRzが200μmとなるように処理を施した。それ以外は実施例1と同じ条件で塗装品を得た。
【0111】
[実施例15]
メチルポリシリケートの使用量を3.9質量部、メチルトリメトキシシランの使用量を2.3質量部、式(1)に示す構造を有するカルビノール変性片末端型反応性シリコーンオイルの使用量を0.3質量部、イオン交換水の使用量を1質量部、濃度0.1mol/lのHCl水溶液の使用量を0.1質量部、メタノールの使用量を78質量部とした。また、反応容器中には前記成分と共に、ダイアセトンアルコールを10質量部、アクリルビーズ(ガンツ化成製、品番GB−08S;粒径8μm;固形分100質量%)を2.8質量部投入した。それ以外は実施例1と同じ条件で塗装品を得た。
【0112】
[実施例16]
式(1)に示す構造を有するカルビノール変性片末端型反応性シリコーンオイル(信越シリコーン株式会社製、品番X22−170BX;固形分100質量%;重量平均分子量2800)に代えて、式(2)に示す構造を有するジオール変性片末端型反応性シリコーンオイル(信越シリコーン株式会社製、品番X22−176DX;固形分100質量%;重量平均分子量3600)を使用し、それ以外は実施例1と同じ条件で塗装品を得た。
【0113】
[実施例17]
メチルポリシリケートの使用量を6.9質量部、メチルトリメトキシシランの使用量を4質量部、式(1)に示す構造を有するカルビノール変性片末端型反応性シリコーンオイルの使用量を0.6質量部、イオン交換水の使用量を2質量部、濃度0.1mol/lのHCl水溶液の使用量を0.1質量部、メタノールの使用量を75質量部とした。また、反応容器中には前記成分と共に、ダイアセトンアルコールを10質量部、シリカゾル(日産化学工業株式会社製、商品名スノーテックス20L;粒子径40〜50nm;固形分20%)を2.7質量部投入した。それ以外は実施例1と同じ条件で塗装品を得た。尚、テトラエトキシシランとメチルトリメトキシシランのモル比は1:2とした。
【0114】
[実施例18]
メチルポリシリケートの使用量を6.3質量部、メチルトリメトキシシランの使用量を3.8質量部、式(1)に示す構造を有するカルビノール変性片末端型反応性シリコーンオイルの使用量を0.5質量部、イオン交換水の使用量を2質量部、濃度0.1mol/lのHCl水溶液の使用量を0.1質量部、メタノールの使用量を75質量部とした。また、反応容器中には前記成分と共に、ダイアセトンアルコールを10質量部、シリカゾル(日産化学工業株式会社製、商品名スノーテックス20L;粒子径40〜50nm;固形分20%)を5.6質量部投入した。それ以外は実施例1と同じ条件で塗装品を得た。尚、テトラエトキシシランとメチルトリメトキシシランのモル比は1:2とした。
【0115】
[実施例19]
メチルポリシリケートの使用量を1.5質量部、メチルトリメトキシシランの使用量を1質量部、式(1)に示す構造を有するカルビノール変性片末端型反応性シリコーンオイルの使用量を0.1質量部、イオン交換水の使用量を2質量部、濃度0.1mol/lのHCl水溶液の使用量を0.1質量部、メタノールの使用量を75質量部とした。また、反応容器中には前記成分と共に、ダイアセトンアルコールを10質量部、シリカゾル(日産化学工業株式会社製、商品名スノーテックス20L;粒子径40〜50nm;固形分20%)を21.2質量部投入した。それ以外は実施例1と同じ条件で塗装品を得た。尚、テトラエトキシシランとメチルトリメトキシシランのモル比は1:2とした。
【0116】
[実施例20]
メチルポリシリケートの使用量を6.9質量部、メチルトリメトキシシランの使用量を4質量部、式(1)に示す構造を有するカルビノール変性片末端型反応性シリコーンオイルの使用量を0.6質量部、イオン交換水の使用量を2質量部、濃度0.1mol/lのHCl水溶液の使用量を0.1質量部、メタノールの使用量を77質量部とした。また、反応容器中には前記成分と共に、ダイアセトンアルコールを10質量部、シリカゾル(日産化学工業株式会社製、商品名スノーテックス4540M;粒子径450〜500nm;固形分40%)を1.4質量部投入した。それ以外は実施例1と同じ条件で塗装品を得た。尚、テトラエトキシシランとメチルトリメトキシシランのモル比は1:2とした。
【0117】
[実施例21]
メチルポリシリケートの使用量を6.3質量部、メチルトリメトキシシランの使用量を3.8質量部、式(1)に示す構造を有するカルビノール変性片末端型反応性シリコーンオイルの使用量を0.5質量部、イオン交換水の使用量を2質量部、濃度0.1mol/lのHCl水溶液の使用量を0.1質量部、メタノールの使用量を78質量部とした。また、反応容器中には前記成分と共に、ダイアセトンアルコールを10質量部、シリカゾル(日産化学工業株式会社製、商品名スノーテックス4540M;粒子径450〜500nm;固形分40%)を2.8質量部投入した。それ以外は実施例1と同じ条件で塗装品を得た。尚、テトラエトキシシランとメチルトリメトキシシランのモル比は1:2とした。
【0118】
[実施例22]
メチルポリシリケートの使用量を3.5質量部、メチルトリメトキシシランの使用量を2.1質量部、式(1)に示す構造を有するカルビノール変性片末端型反応性シリコーンオイルの使用量を0.3質量部、イオン交換水の使用量を1質量部、濃度0.1mol/lのHCl水溶液の使用量を0.1質量部、メタノールの使用量を77質量部とした。また、反応容器中には前記成分と共に、ダイアセトンアルコールを10質量部、シリカゾル(日産化学工業株式会社製、商品名スノーテックス4540M;粒子径450〜500nm;固形分40%)を6.3質量部投入した。それ以外は実施例1と同じ条件で塗装品を得た。尚、テトラエトキシシランとメチルトリメトキシシランのモル比は1:2とした。
【0119】
[実施例23]
メチルポリシリケートの使用量を1.5質量部、メチルトリメトキシシランの使用量を1質量部、式(1)に示す構造を有するカルビノール変性片末端型反応性シリコーンオイルの使用量を0.1質量部、イオン交換水の使用量を2質量部、濃度0.1mol/lのHCl水溶液の使用量を0.1質量部、メタノールの使用量を85質量部とした。また、反応容器中には前記成分と共に、ダイアセトンアルコールを10質量部、シリカゾル(日産化学工業株式会社製商品名スノーテックス4540M;粒子径450〜500nm;固形分40%)を10.6質量部投入した。それ以外は実施例1と同じ条件で塗装品を得た。尚、テトラエトキシシランとメチルトリメトキシシランのモル比は1:2とした。
【0120】
[実施例24]
メチルポリシリケートの使用量を3.5質量部、メチルトリメトキシシランの使用量を2.1質量部、式(1)に示す構造を有するカルビノール変性片末端型反応性シリコーンオイルの使用量を0.3質量部、イオン交換水の使用量を1質量部、濃度0.1mol/lのHCl水溶液の使用量を0.1質量部、メタノールの使用量を70.4質量部とした。また、反応容器中には前記成分と共に、ダイアセトンアルコールを10質量部、シリカゾル(日産化学工業株式会社製、商品名スノーテックスO;粒子径10〜20nm;固形分20%)を12.5質量部投入した。それ以外は実施例1と同じ条件で塗装品を得た。尚、テトラエトキシシランとメチルトリメトキシシランのモル比は1:2とした。
【0121】
[比較例1]
ジメチルシロキサン基を骨格中に有し、架橋基として水酸基を有するポリオール樹脂(富士化成工業株式会社製、品番ZX−022;固形分45質量%)を50質量部、HDIのブロックイソシアネート(旭化成株式会社製、商品名デュラネートMF−B60X)を15質量部、n−ブタノールを150部混合し、5分間攪拌して、コーティング組成物を得た。
【0122】
基材としてスライドガラス(松浪ガラス製、品番S9111)を用い、この基材に前記コーティング組成物をエアスプレーにて乾燥膜厚が2〜3μmになるように塗布し、25℃の常温下で5分間静置した後、180℃で30分加熱して、塗装品を得た。
【0123】
[比較例2]
メチルポリシリケートの使用量を45質量部、メチルトリメトキシシランの使用量を1.5質量部、式(1)に示す構造を有するカルビノール変性片末端型反応性シリコーンオイルの使用量を0.5質量部、イオン交換水の使用量を9質量部、濃度0.1mol/lのHCl水溶液の使用量を0.5質量部、メタノールの使用量を44質量部とし、それ以外は実施例1と同じ条件で塗装品を得た。
【0124】
[比較例3]
メチルポリシリケートの使用量を40質量部、メチルトリメトキシシランの使用量を5.8質量部、式(1)に示す構造を有するカルビノール変性片末端型反応性シリコーンオイルの使用量を0.5質量部、イオン交換水の使用量を9質量部、濃度0.1mol/lのHCl水溶液の使用量を0.5質量部、メタノールの使用量を44質量部とし、それ以外は実施例1と同じ条件で塗装品を得た。
【0125】
[比較例4]
メチルポリシリケートの使用量を13.5質量部、メチルトリメトキシシランの使用量を33.1質量部、式(1)に示す構造を有するカルビノール変性片末端型反応性シリコーンオイルの使用量を0.5質量部、イオン交換水の使用量を9質量部、濃度0.1mol/lのHCl水溶液の使用量を0.5質量部、メタノールの使用量を44質量部とし、それ以外は実施例1と同じ条件で塗装品を得た。
【0126】
[比較例5]
式(1)に示す構造を有するカルビノール変性片末端型反応性シリコーンオイル(信越シリコーン株式会社製、品番X22−170BX;固形分100質量%;重量平均分子量2800)に代えて、式(2)に示す構造を有するジオール変性片末端型反応性シリコーンオイル(信越シリコーン株式会社製、品番X22−176F;固形分100質量%;重量平均分子量18000)を用い、それ以外は実施例1と同じ条件で塗装品を得た。
【0127】
[比較例6]
メチルポリシリケートの使用量を20質量部、メチルトリメトキシシランの使用量を12質量部、式(1)に示す構造を有するカルビノール変性片末端型反応性シリコーンオイルの使用量を14質量部、イオン交換水の使用量を6質量部、濃度0.1mol/lのHCl水溶液の使用量を0.5質量部、メタノールの使用量を47質量部とし、それ以外は実施例1と同じ条件で塗装品を得た。
【0128】
[比較例7]
メチルポリシリケートの使用量を29質量部、メチルトリメトキシシランの使用量を17質量部、式(1)に示す構造を有するカルビノール変性片末端型反応性シリコーンオイルの使用量を0.01質量部、イオン交換水の使用量を9質量部、濃度0.1mol/lのHCl水溶液の使用量を0.5質量部、メタノールの使用量を45質量部とし、それ以外は実施例1と同じ条件で塗装品を得た。
【0129】
[比較例8]
式(1)に示す構造を有するカルビノール変性片末端型反応性シリコーンオイル(信越シリコーン株式会社製、品番X22−170BX;固形分100質量%;重量平均分子量2800)に代えて、カルビノール変性両末端型反応性シリコーンオイル(信越シリコーン株式会社製、品番X22−160AS;重量平均分子量1000;固形分100質量%)を用い、それ以外は実施例1と同じ条件で塗装品を得た。
【0130】
[比較例9]
式(1)に示す構造を有するカルビノール変性片末端型反応性シリコーンオイル(信越シリコーン株式会社製、品番X22−170BX;固形分100質量%;重量平均分子量2800)に代えて、カルビノール変性側鎖型反応性シリコーンオイル(信越シリコーン株式会社製、品番X22−4039;重量平均分子量3917;固形分100質量%)を用い、それ以外は実施例1と同じ条件で塗装品を得た。
【0131】
[比較例10]
式(1)に示す構造を有するカルビノール変性片末端型反応性シリコーンオイル(信越シリコーン株式会社製、品番X22−170BX;固形分100質量%;重量平均分子量2800)に代えて、メタクリロキシ変性側鎖型反応性シリコーンオイル(信越シリコーン株式会社製、品番X22−2426;重量平均分子量12926;固形分100質量%)を用い、それ以外は実施例1と同じ条件で塗装品を得た。
【0132】
[評価試験]
(滑落性評価)
各実施例及び比較例で得られた塗装品を、その塗装面が上側を向くようにして接触角計(協和界面科学株式会社製、型番CA−VP)に水平に固定し、この塗装品の塗装面の上に10mgの蒸留水を滴下して水滴を形成した。この状態で塗装品の角度を5°ずつ傾斜させていき、水滴が転がり始めたときの塗装品の傾斜角度を測定した。この結果に基づき、滑落性を次のように評価した。
◎:10mgの水滴が10°以下の角度で転がり始める。
【0133】
この◎の評価がされなかった塗装品については、その塗装面が上側を向くようにして接触角計(協和界面科学株式会社製、型番CA−VP)に水平に固定し、この塗装品の塗装面の上に20mgの蒸留水の滴下して水滴を形成した。この状態で塗装品の角度を5°ずつ傾斜させていき、水滴が転がり始めたときの塗装品の傾斜角度を測定した。この結果に基づき、滑落性を次のように評価した。
○:20°以下の角度で水滴が転がり始める。
△:21〜30°の角度で水滴が転がり始める。
×:31°の角度になっても水滴は転がらない。
【0134】
(限界膜厚測定)
各実施例及び比較例で調製されたコーティング組成物を、乾燥膜厚を0.5μm〜2μmの範囲で異ならせてエアスプレーで塗装し、150℃の温度で10分焼き付けることで、膜厚の異なるコーティング層を形成した。このコーティング層を目視で観察してクラックの有無を確認し、次のように評価した。
○:乾燥膜厚2μmでクラックなし。
△:乾燥膜厚0.6〜1.9μmでクラックなし。
×:乾燥膜厚0.5μmでクラックあり。
【0135】
(表面状態観察)
各実施例及び比較例で調製されたコーティング組成物を、乾燥膜厚が1μmとなるようにエアスプレーで塗装し、150℃の温度で10分焼き付けることで、コーティング層を形成した。このコーティング層の表面を目視で観察し、次のように評価した。
○:異常が認められない。
△:表面にブリード物が認められる。
×:表面に凹凸もしくはヨリの発生が認められる。
【0136】
(被膜硬度測定)
各実施例及び比較例で得られた塗装品におけるコーティング層の鉛筆硬度を、JISK5600−5−4に従って測定した。
【0137】
(転落速度測定)
各実施例及び比較例で得られた塗装品のうち、滑落性で◎の評価がされた塗装品について、その塗装面が上側を向くようにして10°に傾斜させた接触角計(協和界面科学株式会社製、型番CA−VP)に固定し、この塗装品の塗装面の上に10mgの蒸留水を滴下して水滴を形成した。この状態での水滴の転落速度を測定し、この結果に基づき、転落速度を次のように評価した。
○:平均転落速度が1.0mm/sec以上である。
△:平均転落速度が0.1〜0.99mm/secである。
×:転落しない。
【0138】
【表1】

【0139】
【表2】

【0140】
尚、比較例2及び4については、コーティング層のクラックの発生及び硬化不十分のため、評価不能となった項目がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の(A)〜(C)成分を含有することを特徴とするコーティング組成物;
(A)一般式Si(OR1(R1はそれぞれ独立に炭素数1〜8の炭化水素基を示す)で表される4官能アルコキシシランと、一般式Si(OR23(R2はそれぞれ独立に炭素数1〜8の炭化水素基を示し、Rは炭素数1〜8の炭化水素基またはフェニル基を示す)で表される3官能アルコキシシランとを含有し、且つ前者対後者のモル比が1:1〜1:5の範囲であるシリコーン組成物、またはその部分加水分解縮重合物、
(B)下記式(1)又は(2)で示される構造を有し、重量平均分子量が1000〜9000であり、前記(A)成分の固形分量に対する含有量が0.1〜10質量%の範囲である片末端型の反応性シリコーン、並びに
(C)酸または塩基触媒、及び水。
【化1】

(式(1)において、Rはメチル基、エチル基又はプロピル基を、Rはメチレン基又はエチレン基を、nは1〜100の整数を示す。式(2)において、Rはそれぞれ独立にメチル基、エチル基又はプロピル基を示し、Rはそれぞれ独立にメチレン基又はエチレン基を示し、nは1〜100の整数を示す。)
【請求項2】
前記(B)成分の重量平均分子量が、2000〜4000の範囲であることを特徴とする請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項3】
次の(D)成分を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載のコーティング組成物;
(D)分散粒子径が20nm〜5μmであり、前記(A)成分と前記(B)成分との固形分の合計量に対する含有量が10〜400質量%の範囲である粒子成分。
【請求項4】
前記(D)成分の含有量が、前記(A)成分と前記(B)成分との固形分の合計量に対して25〜150質量%の範囲であることを特徴とする請求項3に記載のコーティング組成物。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のコーティング組成物で形成されたコーティング層を備え、前記コーティング層の表面における、20mgの水滴の転落角が20°以下であることを特徴とする塗装品。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のコーティング組成物で形成されたコーティング層を備え、前記コーティング層の表面における、10mgの水滴の転落角が10°以下であることを特徴とする塗装品。
【請求項7】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のコーティング組成物で形成されたコーティング層を備え、前記コーティング層の表面の最大高さRzが200μm以下であることを特徴とする塗装品。

【公開番号】特開2011−132486(P2011−132486A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−66454(P2010−66454)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「循環社会構築型光触媒産業創成プロジェクト」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】