説明

コーティング組成物

【課題】汚染物質が付着し難く、しかも汚染物質が付着しても簡単な作業でこれを除去することができる良好な防汚皮膜を塗装表面に形成できるコーティング組成物を提供すること。
【解決手段】脂肪族炭化水素系溶剤、石油系溶剤、芳香族系溶剤、及びフッ素系溶剤から選択された1種或いは2種以上の有機溶剤をベースとし、前記ベース中に親有機処理された層状粘土鉱物を含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車などの塗装面に防汚皮膜を形成することができるコーティング組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、塗装面に防汚皮膜を形成することができるコーティング組成物としては、例えばポリテトラフルオロエチレンを主剤とし、これを溶剤に溶解又は膨潤させたものが知られている(特許文献1参照)。このコーティング組成物によれば、該コーティング組成物を塗装表面に塗布したとき、組成物中のポリテトラフルオロエチレンが塗装表面に密着して被膜を形成し、この被膜の持つ低い表面エネルギーによって防汚性が発揮されるようになっていた。
【特許文献1】特開平1−25609号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、このコーティング組成物にあっては、ポリテトラフルオロエチレンによって塗装表面に形成される被膜がマイナスに帯電し易く、これに対して水垢の主成分であるカーボンをはじめ、埃、排気ガス、アスファルトやピッチ、或いは工場排煙といった汚染物質の多くはプラスに帯電し易いことから、ポリテトラフルオロエチレンにより形成された防汚被膜がこれらの汚染物質を引き寄せてしまい、汚染物質を除去することは容易ではあるものの、付着しやすいという不具合があった。
【0004】
本発明は、このような技術的課題に対応すべく、鋭意研究の結果なされたものであり、汚染物質が付着し難く、しかも汚染物質が付着しても簡単な作業でこれを除去することができる良好な防汚皮膜を塗装表面に形成できるコーティング組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、防汚被膜を形成することができるコーティング組成物であって、
脂肪族炭化水素系溶剤、石油系溶剤、芳香族系溶剤、及びフッ素系溶剤から選択された1種或いは2種以上の有機溶剤をベースとし、前記ベース中に親有機処理された層状粘土鉱物を含有することを特徴とするコーティング組成物をその要旨とした。
【0006】
請求項2記載の発明は、親有機処理された層状粘土鉱物が、ベントナイトまたはスメクタイトであることを特徴とする請求項1記載のコーティング組成物をその要旨とした。
【0007】
請求項3記載の発明は、ベース100重量部に対して、親有機処理された層状粘土鉱物が0.01〜10重量部の割合で含有することを特徴とする請求項1又は2に記載のコーティング組成物をその要旨とした。
【0008】
請求項4記載の発明は、塗装表面の汚れを除去すると同時に防汚被膜を形成することができる洗浄コーティング組成物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のコーティング組成物をその要旨とした。
【0009】
請求項5記載の発明は、ベースにさらに艶出し剤、研磨材、水及び界面活性剤を含有することを特徴とする請求項4に記載のコーティング組成物をその要旨とした。
【0010】
請求項6記載の発明は、艶出し剤が、ジメチルシリコーンオイル類及びワックス類から選ばれるいずれか1種若しくは2種以上であることを特徴とする請求項5に記載のコーティング組成物をその要旨とした。
【0011】
請求項7記載の発明は、ベース100重量部に対して、ワックス類が0.1〜20重量部、ジメチルシリコーンオイル類が0.1〜20重量部、研磨材が0.01〜20重量部、水が0〜90重量部の割合で含まれていることを特徴とする請求項5または6に記載のコーティング組成物をその要旨とした。
【0012】
請求項8記載の発明は、請求項1〜7のいずれかに記載のコーティング組成物を使用した車両塗膜用保護剤をその要旨とした。
【0013】
請求項9記載の発明は、請求項1〜7のいずれかに記載のコーティング組成物を使用した建築用保護剤をその要旨とした。
【発明の効果】
【0014】
本発明のコーティング組成物にあっては、これを塗装表面に塗布することにより、該塗装表面には、ベース中に含まれる親有機処理された層状粘土鉱物からなる防汚被膜が形成される。この防汚被膜は、膜表面がプラス電荷を帯びており、水垢の主成分であるカーボンをはじめ、プラスに帯電している多くの汚染物質は、これに反発して付着し難くなり、汚染物質の付着に起因する水垢汚れの発生など塗装の汚れを効果的に抑制することができる。また、たとえ汚染物質が付着しても、水洗いなどの簡易な作業で容易に除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明のコーティング組成物を更に詳しく説明する。本発明の洗浄コーティング組成物(以下、単に組成物という)は、例えば自動車、バスなどの車両、列車などの輸送車両、船舶、飛行機などの塗装、建築物の屋根、外壁、柱、看板などの塗装面に適用されるものである。
【0016】
本発明の組成物は、親有機処理された層状粘土鉱物を含有することで特徴付けられたものであり、該層状粘土鉱物を分散させて均一な防汚皮膜を形成するベースとして、脂肪族炭化水素系溶剤、石油系溶剤、芳香族系溶剤、及びフッ素系溶剤から選択された1種或いは2種以上の有機溶剤を使用している。
【0017】
このような有機溶剤としては、例えばヘキサン、ヘプタン、ノナン、デカン、ウンデカンなどの脂肪族炭化水素系溶剤、ミネラルスピリットなどの石油系溶剤、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤、1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタン、HFE、エチルノナフルオロイソブチルエーテル、エチルノナフルオロブチルエーテル、メチルノナフルオロイソブチルエーテル、メチルノナフルオロイソブチルエーテルなどのフッ素系溶剤が挙げられる。これらの溶剤は単独で用いてもよく、また2種以上併用してもよい。
【0018】
親有機処理された層状粘土鉱物は、塗装表面に良好な防汚性を付与する防汚被膜を形成する成分であり、ベントナイト、スメクタイト、マイカ、及びタルクなどが好適に使用できる。中でもベントナイト及びスメクタイトは、防汚性、取り扱い性などの点からより好ましい。
【0019】
本発明の組成物に使用する層状粘土鉱物は親有機処理されている。親有機化処理方法としては、従来より知られた層表面修飾、端面修飾、或いはそれらの複合処理が挙げられる。また、親有機化処理方法に用いる有機処理材料としては、4級アンモニウムイオンやアルキルトリアルコキシシランが挙げられる。
【0020】
親有機処理された層状粘土鉱物の含有量としては、上記ベース100重量部に対して、0.01〜10重量部が好ましく、より好ましくは0.05〜5重量部である。層状粘土鉱物の含有量が0.05重量部を下回る場合、十分な防汚性を得ることができず、10重量部を超える場合には、塗装表面にキズを付ける等の悪影響を及ぼす恐れがある。
【0021】
本発明の洗浄コーティング組成物は、上記成分に加えさらに、艶出し剤、研磨材、水及び界面活性剤を含有する形態を採ることが出来る。
【0022】
艶出し剤としては、ワックス類やジメチルシリコーンオイル類を用いることができる。使用するワックス類としては、カルバナワックス、キャンデリラワックス、モンタンワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、或いはポリエチレンワックスなどが好ましい。ジメチルシリコーンオイル類としては、ジメチルシリコーンオイルの他に、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイルなどが好ましく、特に粘度が100〜1000cStのものが望ましい。上記ワックス類とジメチルシリコーンオイル類とは、併用することで艶出し性及び作業性をより良好ならしめることができる。好ましい併用例としてはカルバナワックスとジメチルシリコーンオイルの組み合わせを挙げることができる。上記の好適な艶出し剤の組合せの配合量としては、ベース100重量部に対して、ワックス類が0.1〜20重量部、ジメチルシリコーンオイル類が0.1〜20重量部が好ましい。艶出し剤の配合量が0.1重量部を下回ると、十分な艶出し効果が得られず、20重量部を越える場合には拭き取り作業性に悪影響を与える恐れがある。
【0023】
研磨剤としては、アルミナ、シリカ、炭酸カルシウム、カオリン、炭化ケイ素、珪藻土、パーライト、ゼオライト、水酸化アルミニウム、酸化クロム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、酸化セリウムなどを用いることができる。研磨剤の配合量としては、ベース100重量部に対して、研磨材が0.1〜20重量部が好ましい。研磨剤の配合量が0.1重量部を下回ると、洗浄性に悪影響を及ぼし、20重量部を上回る場合には、洗浄面にキズを付ける恐れがあるからである。
【0024】
水の配合量としては、ベース100重量部に対して0〜90重量部の範囲が好ましい。
【0025】
また界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、などの非イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキレンエーテル硫酸塩、スルホ琥珀酸塩などの陰イオン性界面活性剤、第四級アルキルアンモニウム塩等の陽イオン性界面活性剤、或いはアルキルジメチルアミンオキシドなどの両性界面活性剤などを用いることができる。これら界面活性剤の配合量としてはベース100重量部に対して0.1〜5重量部の範囲が好ましい。界面活性剤の配合量が0.1重量部を下回る場合、ベースと水が分離して洗浄性が落ち、5重量部を上回る場合には、拭き取り作業に悪影響を与える可能性がある。
【0026】
本発明の組成物を塗装面に塗布する場合、該組成物をスポンジに含浸させて塗装表面を擦るなどの方法を用いることができる。なお、塗布方法としては、たとえば刷毛塗り、エアゾールスプレーでのコーティングなど、その目的および用途により選択することができる。
【0027】
このようにして組成物を塗装表面に塗布したとき、ベースである有機溶剤が揮発するのに伴い、塗装表面には親有機処理された層状粘土鉱物による防汚被膜が形成される。層状粘土鉱物により形成された防汚被膜は、膜表面がプラス電荷を帯びており、プラスに帯電している水垢汚れの主成分であるカーボンをはじめ多くの汚染物質は、これに反発して付着し難くなり、汚染物質の付着に起因する水垢汚れの発生など塗装の汚れを効果的に抑制することができる。またたとえ汚染物質が付着して水アカ汚れ等が発生しても、水洗いなどの簡易な作業で容易に除去することができる。
【実施例】
【0028】
下記表1に示す実施例1〜3、並びに比較例1及び2にかかる各組成物の組成を示すと共に、実施例1〜3、並びに比較例1〜3にかかる各組成物についての汚れ付着性および汚れ除去性の評価結果を示した。
【0029】
【表1】

防汚性(汚れ除去性)および防汚耐久性(汚れ付着度)の評価
JIS K2396(自動車用つや出しコーティング剤)に規定される白色試験片に、ウレタンスポンジにて各組成物を均一に塗布する。塗布してから10分後に清浄な布を用いて表面を拭取ったものを試験片とする。さらに1日乾燥させたのち、それぞれの試験片をカラーテスターHC1(スガ試験機株式会社製)により、白色度を測定し、その値を初期白色度とする。
【0030】
汚染物質として、カーボンブラックFW−200(ホルベイン工業株式会社製、粒径0.002〜0.028μm)5重量部を水95重量部に均一に分散し、エアスプレー(エア圧0.4〜0.5MPa)で、試験片表面に均一に塗布する。
【0031】
試験片を60℃で1時間乾燥させ、汚染物質を焼き付けた後、室温まで放冷する。放冷後、カラーテスターHC1(スガ試験機株式会社製)により、白色度を測定し、付着時の白色度を測定する。
【0032】
測定後、流水下にて、試験片表面に付着した汚染物質を、ガーゼなど柔らかい布で擦りながら洗浄する。試験片より水分を取り除いた後、カラーテスターHC1(スガ試験機株式会社製)により、白色度を測定し、洗浄後の白色度を測定する。これを1サイクルとする。汚れ除去性および汚れ付着度は上記試験の1サイクル実施時の測定値を評価対象とする。
【0033】
評価基準
汚れ付着度および汚れ除去性は以下の式で求める。
汚れ付着度 = 初期白色度−付着時の白色度
汚れ除去性 = 初期白色度−洗浄後の白色度
【0034】
評価方法
以下の基準に従い、評価した。
汚れ付着度
○:0 ≦ 汚れ付着度 < 10
□:10 ≦ 汚れ付着度 < 20
△:20 ≦ 汚れ付着度 < 30
×:30 ≦ 汚れ付着度
【0035】
汚れ除去性
○:0 ≦ 汚れ除去性 < 1.0
□:1.0 ≦ 汚れ除去性 < 3.0
△:3.0 ≦ 汚れ除去性 < 5.0
×:5.0 ≦ 汚れ除去性
【0036】
尚、表1中の各成分には、以下の市販品を用いた。
有機溶剤:
イソパラフィン系溶剤(沸点166〜200℃)
石油系溶剤(沸点153〜180℃)
フッ素系溶剤(沸点80℃)
【0037】
親有機処理層状粘度鉱物:
ベントナイト、有機材料(第4アンモニウム)
ベントナイト、有機材料(第4アンモニウム及びアルキルトリアルコキシシラン)
【0038】
ポリテトラフルオロエチレン分散液:
固形成分6重量部、平均分子量約8000、分散溶媒(トリクロロフルオロエタン)
固形成分11重量部、平均分子量約4000、分散溶媒(トリクロロフルオロエチレン)
【0039】
フッ素系界面活性剤:
有効成分30重量%、イオン性、非イオン性
【0040】
有機微粉末
疎水性シリカ微粉末、平均粒径約13μm
高密度ポリエチレン微粉末、平均粒径約12μm
【0041】
その他
カルバナワックス(1号グレード)
非イオン界面活性剤(HLB、4)
ジメチルシリコーンオイル(粘度100mm2/S)
【0042】
表1から、比較例1及び2の各組成物にあっては、汚れ付着度及び汚れ除去性について、いずれも□または△であったが、実施例1〜3の各組成物にあっては、各評価項目について、層状粘土鉱物の含有量の少ない実施例2が、汚れ付着度について□の評価であった以外、いずれも○の評価となり、汚れ付着度及び汚れ除去性に優れていることが確認された。
【0043】
尚、本発明の組成物は、上述した実施形態並びに実施例の内容に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内で自由に変更して実施することが出来る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
防汚被膜を形成することができるコーティング組成物であって、
脂肪族炭化水素系溶剤、石油系溶剤、芳香族系溶剤、及びフッ素系溶剤から選択された1種或いは2種以上の有機溶剤をベースとし、前記ベース中に親有機処理された層状粘土鉱物を含有することを特徴とするコーティング組成物。
【請求項2】
親有機処理された層状粘土鉱物が、ベントナイトまたはスメクタイトであることを特徴とする請求項1記載のコーティング組成物。
【請求項3】
ベース100重量部に対して、親有機処理された層状粘土鉱物が0.01〜10重量部の割合で含まれていることを特徴とする請求項1又は2に記載のコーティング組成物。
【請求項4】
塗装表面の汚れを除去すると同時に防汚被膜を形成することができる洗浄コーティング組成物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のコーティング組成物。
【請求項5】
ベースにさらに艶出し剤、研磨材、水及び界面活性剤を含有することを特徴とする請求項4に記載のコーティング組成物。
【請求項6】
艶出し剤が、ジメチルシリコーンオイル類及びワックス類から選ばれるいずれか1種若しくは2種以上であることを特徴とする請求項5に記載のコーティング組成物。
【請求項7】
ベース100重量部に対して、ワックス類が0.1〜20重量部、ジメチルシリコーンオイル類が0.1〜20重量部、研磨材が0.01〜20重量部、水が0〜90重量部の割合で含まれていることを特徴とする請求項5または6に記載のコーティング組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のコーティング組成物を使用した車両塗膜用保護剤。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれかに記載のコーティング組成物を使用した建築用保護剤。

【公開番号】特開2009−13363(P2009−13363A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−179330(P2007−179330)
【出願日】平成19年7月9日(2007.7.9)
【出願人】(000106771)シーシーアイ株式会社 (245)
【Fターム(参考)】