説明

コーティング組成物

エチレン系不飽和加水分解性シラン、エチレン系不飽和ポリオキシアルキレン、エチレン系不飽和フッ素化ポリエーテル、及び反応開始剤を含む反応混合物から調製されるコポリマーを含むコーティング組成物が開示されている。コーティング組成物は、硬化性ゾルゲル分散体もまた含み得る。コーティング組成物を使用して、ハードコートを調製することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コーティング組成物及びそのコーティング組成物から調製したハードコートに関する。
【背景技術】
【0002】
基材表面の特性を変更するために、多種多様なコーティング組成物を使用する。ハードコートは、このようなコーティング組成物の一例である。広範囲の表面を保護するために、ハードコートが使用されてきた。これらのハードコートのいくつかは、光学的に透明であるので、ユーザーはコーティングを通して見ることができる。ハードコートは典型的には、バインダー前駆体樹脂マトリックスの中に分散しているナノメートル寸法の無機酸化物粒子(例えば、シリカ)を含有しており、「セラマー」と呼ばれる場合もある。
【0003】
表面エネルギーを低減して表面インク忌避性及び/又は洗浄容易性を付与するために、フッ素化材料がハードコート中に組み込まれてきた。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
コーティングの調製に有用な組成物が開示されている。組成物は、エチレン系不飽和加水分解性シラン、エチレン系不飽和ポリオキシアルキレン、エチレン系不飽和フッ素化ポリエーテル、及び反応開始剤を含む反応混合物から調製されるコポリマーを含む。いくつかの実施形態では、組成物は硬化性ゾルゲル分散体を更に含む。
【0005】
硬化性ゾルゲル分散体、並びにエチレン系不飽和加水分解性シラン、エチレン系不飽和ポリオキシアルキレン、エチレン系不飽和フッ素化ポリエーテル、及び反応開始剤を含む反応混合物から調製されるコポリマーを含むコーティングも開示されている。いくつかの実施形態では、コーティングは硬化される。
【0006】
基材及び基材の少なくとも1つの表面上に硬化したコーティングを含む物品も開示されているが、ここで、硬化したコーティングは、硬化性ゾルゲル分散体、並びにエチレン系不飽和加水分解性シラン、エチレン系不飽和ポリオキシアルキレン、エチレン系不飽和フッ素化ポリエーテル及び反応開始剤を含む反応混合物から調製されるコポリマーを含む硬化した組成物を含む。
【0007】
基材のコーティング方法も開示されている。この方法は、基材を用意すること、硬化性ゾルゲル分散体、並びにエチレン系不飽和加水分解性シラン、エチレン系不飽和ポリオキシアルキレン、エチレン系不飽和フッ素化ポリエーテル及び反応開始剤を含む反応混合物から調製されるコポリマーを含む硬化性コーティング組成物を用意すること、コーティング組成物を基材の少なくとも一部の上にコーティングすること、並びにコーティングを硬化させることを含む。
【0008】
開示されているコーティングされた基材は、容易に洗浄するための低表面エネルギーを付与するだけでなく、低リント引力をも有する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示は、基材上にコーティングを形成するために使用することができるコーティング組成物を提供する。これらのコーティングは、例えば、光学的透明性、容易な洗浄、リント忌避性、引掻抵抗性、インク抵抗性、防汚性などを含む様々な望ましい特性を有し得る。フッ素化材料をハードコート組成物に添加することによって、それらの表面エネルギーを著しく低減して、インク抵抗性及び/又は防汚性を付与することができるが、リント引力を増大させるという不都合が生じ得る。したがって、低表面エネルギーのハードコートを提供するが、リントを引きつける傾向を増大させないフルオロケミカルコーティングなどのコーティングが必要とされている。本開示のコーティング組成物は、インク抵抗性と耐リンティング性とのバランスを提供する。更に、フッ素化材料をハードコート組成物に添加しても、ハードコートの硬度に実質的な影響を与えない。
【0010】
いくつかの実施形態では、コーティング組成物は、エチレン系不飽和加水分解性シラン、エチレン系不飽和ポリオキシアルキレン、エチレン系不飽和フッ素化ポリエーテル、及び反応開始剤を含む反応混合物から調製されるコポリマーを含む。他の実施形態では、コーティング組成物は、硬化して、例えばハードコートを形成する、硬化性コーティング組成物である。これらの硬化性コーティング組成物は、硬化性ゾルゲル分散体、並びにエチレン系不飽和加水分解性シラン、エチレン系不飽和ポリオキシアルキレン、エチレン系不飽和フッ素化ポリエーテル、及び反応開始剤を含む反応混合物から調製されるコポリマー含んでよい。
【0011】
用語「a」、「an」、及び「the」は、「少なくとも1つの」と同じ意味で用いられ、記載された要素の1つ以上を意味する。
【0012】
用語「エチレン系不飽和」とは、フリーラジカル重合メカニズムにより重合可能な末端炭素−炭素二重結合を含有する反応性基を意味する。エチレン系不飽和基の例としては、例えば、ビニル基及び(メタ)アクリレート基が挙げられる。
【0013】
用語「アルキル」とは、飽和炭化水素であるアルカンのラジカルである一価の基を意味する。アルキルは、直鎖状、分枝状、環状、又はこれらの組み合わせであることができ、典型的には1〜20個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態では、アルキル基は、1〜50個、1〜18個、1〜12個、1〜10個、1〜8個、1〜6個又は1〜4個の炭素原子を含有する。アルキル基の例としては、これらに限定されないが、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、第3ブチル(t−ブチル)、n−ペンチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、及びエチルヘキシルが挙げられる。
【0014】
用語「ヘテロアルキル」とは、ヘテロ原子を含有するアルキル基を意味する。これらのヘテロ原子は、フッ素、塩素、臭素、若しくはヨウ素などのハロゲン、又は窒素、酸素若しくはイオウなどのその他の元素であり得る。ヘテロアルキル基の一例は、−CHCH(OCHCHOCHなどのポリオキシアルキル基である。
【0015】
用語「置換アルキル」とは、炭化水素主鎖に沿って置換基を含有するアルキル基を意味する。これらの置換基は、アルキル基、ヘテロアルキル基又はアリール基であり得る。置換アルキル基の一例は、ベンジル基である。
【0016】
用語「アリール」とは、1〜5個の環(連結又は縮合し得る)を含有するラジカルである芳香族炭素環基を意味する。アリール基は、アルキル基又はヘテロアルキル基によって置換されてよい。アリール基の一例は、フェニル基である。
【0017】
用語「アルキレン」は、アルカンのラジカルである二価の基を指す。アルキレンは、直鎖、分枝状、環状、又はこれらの組み合わせであることができる。アルキレンは、多くの場合、1〜20個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態では、アルキレンは、1〜18個、1〜12個、1〜10個、1〜8個、1〜6個、又は1〜4個の炭素原子を含有する。アルキレンのラジカル中心は、同一炭素原子上に(即ち、アルキリデン)、又は異なる炭素原子上にあることができる。
【0018】
用語「ヘテロアルキレン」とは、チオ、オキシ、又は−NR−(式中、Rはアルキルである)によって接続された、少なくとも2つのアルキレン基を含む、二価の基を指す。ヘテロアルキレンは、直鎖、分枝状、環状、アルキル基によって置換される、又はこれらの組み合わせであってよい。いくつかのヘテロアルキレンは、例えば、
−CHCH(OCHCHOCHCH−のような、ヘテロ原子が酸素であるポリオキシアルキレンである。用語「ポリエーテル」は、用語「ポリオキシアルキレン」と同意語として使用される。
【0019】
用語「アリーレン」とは、炭素環式かつ芳香族である、二価の基を指す。この基は、接続している、縮合している、又はこれらの組み合わせである1〜5個の環を有する。その他の環は、芳香族、非芳香族、又はこれらの組み合わせであることができる。いくつかの実施形態では、アリーレン基は、5個以下の環、4個以下の環、3個以下の環、2個以下の環、又は1個の芳香環を有する。例えば、アリーレン基は、フェニレンであることができる。
【0020】
用語「ヘテロアリーレン」は、炭素環式及び芳香族であり、硫黄、酸素、窒素、又はフッ素、塩素、臭素、若しくはヨウ素などのハロゲンのようなヘテロ原子を含有する、二価の基を指す。
【0021】
用語「アラルキレン」とは、式−R−Ar−(式中、Rはアルキレンであり、Arはアリーレンである)(即ち、アルキレンがアリーレンに結合している)の二価の基を指す。
【0022】
用語「アルコキシ」とは、式−ORの基(式中、Rはアルキル基、アリール基、又は置換アルキル基である)を意味する。
【0023】
用語「(メタ)アクリレート」は、アルコールのモノマー性アクリル又はメタクリルエステルを指す。アクリレートモノマー及びメタクリレートモノマーは、本明細書でまとめて「(メタ)アクリレート」モノマーと呼ばれる。
【0024】
用語「(メタ)アクリレート基」は、一般的構造HC=CHR−C(O)−を意味するが、ここでC(O)は、カルボニル基、即ちC=Oを意味し、RはH(アクリレート基の場合)及びメチル(メタクリレート基の場合)である。
【0025】
別途記載のない限り、「光学的に透明」とは、可視光スペクトル(約400〜約700ナノメートル)の少なくとも一部分にわたって高い光透過性を有し、低いヘイズを呈する、コーティング又は物品を指す。
【0026】
用語「ポリマー」及び「ポリマー材料」とは、1つのモノマーから調製した材料、例えばホモポリマー、又は2つ若しくはそれ以上のモノマーから調製した材料、例えばコポリマー、ターポリマーなど、の両方を意味する。同様に、用語「重合させる」とは、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマーなどであり得る高分子物質の作製プロセスを意味する。用語「共重合体」及び「共重合材料」とは、少なくとも2つのモノマーから調製したポリマー材料を意味する。
【0027】
用語「室温」及び「周囲温度」は、同じ意味で用いられ、20℃〜25℃の範囲の温度を意味する。
【0028】
用語「フッ素化された」とは、アルキル基、アルキレン基又はポリエーテル基と共に使用される場合、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されていることを意味する。用語「高度にフッ素化された」とは、ほぼ全ての水素原子がフッ素原子によって置換されていることを意味する。用語「ペルフルオロ化された」とは、全ての水素原子がフッ素原子によって置換されていることを意味する。例えば、用語「フッ素化ポリエーテル」とは、フッ素原子により置換された少なくとも1つの水素原子を有するオキシアルキレンを意味する。ほぼ全ての水素原子がフッ素原子によって置換された場合、この群は、「高度にフッ素化されたポリエーテル」と呼ばれる。全ての水素原子がフッ素原子によって置換された場合、この群は、「ペルフルオロポリエーテル」と呼ばれる。
【0029】
用語「HFPO−」とは、メチルエステルF(CF(CF)CFO)CF(CF)C(O)OCHの末端基F(CF(CF)CFO)CF(CF)−を意味し、ここで「u」は平均で1〜50であり、これは、米国特許第3,250,808号(Mooreら)に開示されている方法にしたがって、ヘキサフルオロプロペンオキシドのオリゴマー化及び分留による精製により調製することができ、ここで、端点による数の範囲の列挙には、その範囲内に包含される全ての数(例えば、1〜50には、1、1.5、3.33、及び50)が含まれる。
【0030】
用語「加水分解性シラン」とは、構造−SiYの基を含有する構成成分を意味し、ここでY、Y及びYのうちの少なくとも1つが加水分解性であり、即ち、それが水との交換反応を行って、Si−OH部分を形成し、更に反応して、シロキサン結合(Si−O−Si)を形成し得る。加水分解性基の具体的な例としては、メトキシ基、エトキシ基及びプロポキシ基、塩素基、及びアセトキシ基が挙げられる。
【0031】
用語「硬化した」とは、乾燥した(例えば、周囲温度若しくは高温で、水若しくは有機溶媒の蒸発によって)、架橋した、又はそれらの組み合わせを意味する。
【0032】
用語「ハードコート」又は「ハードコート層」とは、表面、例えば物体の外面上に位置している層又はコーティングを意味し、ここで、この層又はコーティングは、物体を摩耗から少なくとも保護するように設計されてきた。
【0033】
本開示のコーティング組成物は、エチレン系不飽和加水分解性シラン、エチレン系不飽和ポリオキシアルキレン、エチレン系不飽和フッ素化ポリエーテル、及び反応開始剤を含む反応混合物から調製されるコポリマーを含む。
【0034】
任意の好適なエチレン系不飽和加水分解性シランを使用して、コーティング組成物を調製してよい。このようなモノマーは、末端エチレン系不飽和基及び末端加水分解性シラン基を含有し、以下の一般式で記述され得る。
X−L−SiY
式1
式中、
Xは、エチレン系不飽和基を含み、
は単一の共有結合又は二価連結基であり、
、Y、及びYのそれぞれは、独立して加水分解性基又はアルキル基であり、Y、Y、及びYのうちの少なくとも1つは加水分解性基である。
【0035】
エチレン系不飽和基の例としては、ビニル基及び(メタ)アクリレート基が挙げられる。(メタ)アクリレート基は、HC=CHR−C(O)−の一般的構造を有するが、ここでC(O)は、カルボニル基、即ちC=Oを意味し、RはH(アクリレート基の場合)及びメチル(メタクリレート基の場合)である。(メタ)アクリレート加水分解性シランが特に有用である。
【0036】
ペルフルオロポリエーテルセグメントとエチレン系不飽和末端基との間の連結基Lとしては、アルキレン、アリーレン、ヘテロアルキレン又はそれらの組み合わせから選択される二価又はそれ以上の基、及びカルボニル、エステル、アミド、スルホンアミド又はそれらの組み合わせから選択される任意の二価基が挙げられる。Lは非置換であるか、あるいは、アルキル、アリール、ハロ、又はそれらの組み合わせで置換されることができる。L基は、通常、30個以下の炭素原子を有する。いくつかの化合物では、L基は、20個以下の炭素原子、10個以下の炭素原子、6個以下の炭素原子、又は4個以下の炭素原子を有する。例えば、Lは、アルキレン、アリール基で置換されているアルキレン、あるいはアリーレン又はアルキルエーテル又はアルキルチオエーテル連結基と組み合わされたアルキレンであることができる。連結基Lの好適な例としては、アルキレン基、特に1〜約20個の炭素原子を有するアルキレン基、アリーレン基、アラルキレン基及びヘテロアルキレン基が挙げられる。特に有用な例としては、アルキレン基エチレン(−CHCH−)、プロピレン(−CHCHCH−)、ブチレン(−CHCHCHCH−)、フェニレン(−C−)などが挙げられる。
【0037】
基Y、Y及びYは、少なくとも1つが加水分解性基であれば、同一でも異なっていてもよい。典型的な加水分解性基としては、例えば、塩素原子、アセトキシ基又はアルコキシ基が挙げられる。加水分解生成物がアルコールであるため、一般に、アルコキシ基が好ましい。有用なアルコキシ基の例としては、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシなどが挙げられる。Y、Y及びYを含み得る典型的な非加水分解性基としては、例えば、アルキル、アリール、又は例えばメチル、エチル、プロピル、フェニル、トリルなどの置換アルキル基が挙げられる。
【0038】
好適なエチレン系不飽和加水分解性シランモノマーの例としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、又はビニルトリエトキシシランなどのビニルシラン;並びに3−(アクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシラン、3−(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシラン、3−(アクリロイルオキシ)プロピルトリエトキシシラン、3−(メタクリロイルオキシ)プロピルトリエトキシシラン、3−(アクリロイルオキシ)プロピルトリプロポキシシラン、3−(メタクリロイルオキシ)プロピルトリプロポキシシラン、{3−(アクリロイルオキシ)プロピル}メチルジメトキシシラン、{3−(メタクリロイルオキシ)プロピル}メチルジメトキシシラン、{3−(アクリロイルオキシ)プロピル}メチルジエトキシシラン、{3−(メタクリロイルオキシ)プロピル}メチルジエトキシシラン、{3−(アクリロイルオキシ)プロピル}メチルジプロポキシシラン、{3−(メタクリロイルオキシ)プロピル}メチルジプロポキシシラン、{4−(アクリロイルオキシ)ブチル}フェニルジメトキシシラン、{4−(メタクリロイルオキシ)ブチル}フェニルジメトキシシラン、{3−(アクリロイルオキシ)プロピル}フェニルジエトキシシラン、{3−(メタクリロイルオキシ)プロピル}フェニルジエトキシシラン、{3−(アクリロイルオキシ)プロピル}フェニルジプロポキシシラン、{3−(メタクリロイルオキシ)プロピル}フェニルジプロポキシシラン、{3−(アクリロイルオキシ)プロピル}ジメチルメトキシシラン、{3−(メタクリロイルオキシ)プロピル}ジメチルメトキシシラン、{3−(アクリロイルオキシ)プロピル}ジメチルエトキシシラン、{3−(メタクリロイルオキシ)プロピル}ジメチルエトキシシラン、{3−(アクリロイルオキシ)プロピル}フェニルメチルメトキシシラン、{3−(メタクリロイルオキシ)プロピル}フェニルメチルメトキシシラン、{3−(アクリロイルオキシ)プロピル}フェニルメチルエトキシシラン、及び{3−(メタクリロイルオキシ)プロピル}フェニルメチルエトキシシランなどの(メタ)アクリレートシランが挙げられる。特に有用なのは、一般にγ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランとして知られている3−(メタクリロキシ)プロピルトリメトキシシラン、又はSILQUEST A−174としてCrompton Corpから市販されている3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレートである。
【0039】
本開示のコポリマー組成物を形成するために使用される反応混合物内に存在しているエチレン系不飽和加水分解性シランモノマーの量は、全モノマー混合物の約1重量%〜約50重量%、又は10重量%〜50重量%、又は更には20重量%〜40重量%であり得る。
【0040】
エチレン系不飽和ポリオキシアルキレンモノマーは、少なくとも1つの末端エチレン系不飽和基及びポリオキシアルキレン鎖を含有する任意の好適なモノマーであってよい。このようなモノマーは、以下の一般式で表され得る。
−((CHCHRO)−L
式2
式中、
は、H、1〜18個の炭素原子を有するアルキル基、又はXであり、
nは、2〜4の範囲であり、
mは、4〜5,000の範囲であり、
は、H又はメチル基であり、
Xは、エチレン系不飽和基を含み、
は、単一の共有結合又はL(即ち前述したような二価連結基)を表し、
は、ヘテロ原子又はLを表す。
【0041】
典型的には、エチレン系不飽和ポリオキシアルキレンモノマーは、少なくとも200g/モル、250g/モル、又は300g/モルの分子量を有する。この分子量は通常、約5,000g/モル以下であり、一般に約3,000g/モル未満である。
【0042】
いくつかの実施形態では、nは1又は2であり、エチレン系不飽和ポリオキシアルキレンモノマーが、ポリオキシエチレンモノマー、ポリオキシプロピレンモノマー又はポリオキシエチレン基とポリオキシプロピレン基との混合物を含有するモノマーとなるように、RはH又はメチル基であり得る。
【0043】
特に好適なモノマーは、ポリオキシアルキレン(メタ)アクリレートである。これらのモノマーは、以下の一般式で表される。
O−((CHCHRO)−C(O)CHR=CH
式3
式中、
は、H又は1個〜18個の炭素原子を有するアルキル基であり、
は、H又はメチル基であり、
Rは、H又はメチル基であり、
nは、1〜3の整数であり、
mは、4〜約5,000の整数である。
【0044】
好適なエチレン系不飽和ポリオキシアルキレンモノマーは、市販の出発材料及び広く知られかつ受け入れられている従来技術で調製してよい。例えば、モノマーは、アクリル酸又はメタクリル酸などの不飽和カルボン酸を等モル量のポリオキシアルキレンのモノアルコールと反応させることによって調製してよい。エステル化反応は一般に、無水条件下でトルエンなどの有機溶媒中にて実施されるが、これは、好ましくは、エステル化反応によって生成される水との共沸混合物を形成する。通常は、アルコールは有機溶媒と混ぜ合わされ、次に不飽和カルボン酸が添加される。反応は、p−トルエンスルホン酸などの酸触媒及び銅粉末などのフリーラジカル阻害物質の存在下で実施される。反応混合物を数時間窒素雰囲気下で還流させ、得られた水を共沸蒸留によって除去する。
【0045】
モノマーを調製するために使用し得る市販のポリオキシアルキレンの例としては、BASF Corp.(ニュージャージー州マウントオリーブ(Mount Olive))から入手可能なPLURONICオキシプロピレン/オキシエチレンコポリマー、及びUnion Carbide Corp.(ウエストバージニア州サウスチャールストン(South Charlston))から入手可能なCARBOWAXポリオキシエチレンが挙げられる。上記処置で使用できるポリオキシエチレンとしては、例えば、CARBOWAX 350、CARBOWAX 550、CARBOWAX 750、CARBOWAX 2000及びCARBOWAX 5000(即ち、それぞれ約350、550、750、2000及び5000グラム/モルの分子量を有するメトキシポリオキシエチレンエタノール)が挙げられる。
【0046】
本開示において有用な市販のモノ−アクリレートポリオキシアルキレンモノマーの例としては、例えば、メトキシポリエチレングリコールモノアクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、アルコキシル化テトラヒドロフルフリルアクリレート、アルコキシル化ラウリルアクリレート、アルコキシル化フェニルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、エトキシル化ノニルフェノールアクリレート、プロポキシル化アリルメタクリレート、エトキシル化ヒドロキシエチルメタクリレート、エトキシル化ノニルフェノールメタクリレート、及びポリプロピレングリコールモノメタクリレートが挙げられる。特に有用なポリオキシアルキレン(メタ)アクリレートモノマーとしては、一般的構造CH=CMeC(O)−(OC−OMeを有するものが挙げられ、式中、mは3を超える整数であり、これは、例えば、CD550、CD551、CD552、CD553としてSartomer Company,Inc.から市販されている。
【0047】
本開示のコポリマー組成物を形成するために使用される反応混合物内に存在しているエチレン系不飽和ポリオキシアルキレンモノマーの量は、全モノマー混合物の約1重量%〜約50重量%、又は10重量%〜50重量%、又は更には20重量%〜40重量%であり得る。
【0048】
エチレン系不飽和フッ素化ポリエーテルモノマーは、末端エチレン系不飽和基及びフッ素化ポリエーテル基を含有する任意の好適なモノマーであってよい。好適なエチレン系不飽和フッ素化ポリエーテルモノマーの例は、次式で表すことができる。
−L−X
式4
式中、
は、フッ素化ポリエーテル基であり、
は、上記のような二価連結基であり、
Xは、エチレン系(ethylnenically)不飽和基である。
【0049】
エチレン系不飽和基の例としては、ビニル基及び(メタ)アクリレート基が挙げられる。(メタ)アクリレートフッ素化ポリエーテルが特に有用である。
【0050】
フッ素化ポリエーテル基Rは、直鎖、分枝状、環状、又はそれらの組み合わせであり得、かつ飽和又は不飽和であり得、それは、部分的フッ素化又は完全フッ素化され、即ち、ペルフルオロポリエーテルであってよい。フッ素化ポリエーテルは、少なくとも4個の連鎖酸素ヘテロ原子を有する。フッ素化ポリエーテル基は、繰り返し単位及び末端単位を含有するものとして記述することができる。代表的フッ素化ポリエーテル基としては、−(C2p)−、−(C2pO)−、−(CB(Z))−、−(CB(Z)O)−、−(CB(Z)C2pO)−、−(C2pCB(Z)O)−、−(CBCB(Z)O)−、又はこれらの組み合わせの群から選択される繰り返し単位を有するようなものが挙げられ、式中、各Bは独立してH原子又はF原子のいずれかであり、ペルフルオロポリエーテルの場合は、各BはF原子である。これらの繰り返し単位において、pは典型的には1〜10の整数である。いくつかの実施形態において、pは1〜8、1〜6、1〜4又は1〜3の整数である。基Zは、アルキル基、フッ素化アルキル基、ペルフルオロアルキル基、ペルフルオロエーテル基、ペルフルオロポリエーテル基、又はペルフルオロアルコキシ基であり、これらの全ては、直鎖、分枝状、又は環状であることができる。Z基は、典型的には12個以下の炭素原子、10個以下の炭素原子、9個以下の炭素原子、4個以下の炭素原子、3個以下の炭素原子、2個以下の炭素原子又は1個以下の炭素原子を有する。いくつかの実施形態において、Z基は、4個以下、3個以下、2個以下、1個以下、又は0の酸素原子を有し得る。これらのフッ素化ポリエーテル構造では、異なる繰り返し単位は鎖に沿って無秩序に分布することが可能である。R末端基は、(C2p+1)−、(C2p+10)−、(GC2pO)−、又は(GC2p)−であることができ、式中、BはH原子又はF原子であり、Gは水素、塩素、又は臭素であり、かつpは、1〜10の整数である。いくつかの実施形態では、末端基はペルフルオロ化されており、pは1〜10、1〜8、1〜6、1〜4又は1〜3の整数である。代表的なR基には、例えばCFO(CO)CF−、CO(CFCFCFO)CFCF−、及びCO(CF(CF)CFO)CF(CF)−が挙げられ、式中、「a」の平均値は0〜50、1〜50、3〜30、3〜15、又は3〜10である。
【0051】
ペルフルオロポリエーテルセグメントとエチレン系不飽和末端基との間の連結基Lとしては、アルキレン、アリーレン、ヘテロアルキレン又はそれらの組み合わせから選択される二価又はそれ以上の基、及びカルボニル、エステル、アミド、スルホンアミド又はそれらの組み合わせから選択される任意の二価基が挙げられる。Lは非置換であるか、あるいは、アルキル、アリール、ハロ、又はそれらの組み合わせで置換されることができる。L基は、通常、30個以下の炭素原子を有する。いくつかの化合物では、L基は、20個以下の炭素原子、10個以下の炭素原子、6個以下の炭素原子、又は4個以下の炭素原子を有する。例えば、Lは、アルキレン、アリール基で置換されているアルキレン、あるいはアリーレン又はアルキルエーテル又はアルキルチオエーテル連結基と組み合わされたアルキレンであることができる。
【0052】
ペルフルオロポリエーテルアクリレート化合物は、米国特許第3,553,179号及び同第3,544,537号、並びに米国特許出願公開第2004/0077775号に記載されているものなど、公知の技法で合成することができる。
【0053】
フッ素化ポリエーテル(メタ)アクリレート化合物は、末端ヒドロキシル基を有するフッ素化ポリエーテル化合物のヒドロキシル基に、(メタ)アクリレート基を導入することによって生成されることができる。いくつかの実施形態では、末端ヒドロキシル基を有するフッ素化ポリエーテル化合物は、高度にフッ素化されていてもよい。このようなヒドロキシル基含有フッ素化ポリエーテル化合物の好適な例としては、例えば、
【0054】
HOCH−CFO−(CFCFO)−(CFO)−CFCHOH;F−(CFCFCFO)−CFCFCHOH;F−(CF(CF)CFO)−CF(CF)CHOH;HOCH−CF(CF)O−(CFCF(CF)O)−O(CF−O−(CF(CF)CFO)−OCF(CF)CHOH;HO(CHCHO)−CH−CFO−(CFCFO)−(CFO)−CFCH(OCHCHOH;CFOCFCFCFOCHFCFC(O)NHCHCHOH;CFCFCFOCHFCFC(O)NHCHCHOH;CFCFCFOCHFCFCHOH;CFCFH−O−(CFCHOH;CF−O−CF−O−CF−CF−O−CF−CHF−CFCHOH;CF−(O−CF−O−CF−CF−O−CHF−CF−CHOH;並びにHOCHCH(OH)CHO−CH−CFO−(CFCFO)−(CFO)−CFCHOCHCH(OH)CHOH(式中、各l、m及びnは、少なくとも整数の1である)が挙げられる。
【0055】
いくつかの実施形態では、ペルフルオロポリエーテル基は、「HFPO−」末端基、即ち、末端基F(CF(CF)CFO)CF(CF)−(メチルエステルF(CF(CF)CFO)CF(CF)C(O)OCH)を含み、式中、uの平均は2〜50、又は更には4〜50である。いくつかの実施形態では、uの平均は少なくとも3又は4である。典型的には、uは8又は10以下である。このような化合物は、一般に一定範囲のuのオリゴマーの分散体又は混合物として存在し、そのためuの平均値は非整数であり得る。一実施形態では、uは平均して約7である。特に有用なフッ素化メタクリレートモノマーは、以下の構造を有する。
F(CF(CF)CFO)CF(CF)−C(O)N(H)CHCHOC(O)CMe=CH
式5
式中、uの平均は約6.84であり、平均分子量は1,344g/モルである。
【0056】
本開示のコポリマー組成物を形成するために使用される反応混合物内に存在しているエチレン系不飽和フッ素化ポリエーテルモノマーの量は、全モノマー混合物の約1重量%〜約50重量%、又は10重量%〜50重量%、又は更には20重量%〜40重量%であり得る。
【0057】
典型的には、少なくとも1つのフリーラジカル反応開始剤が、本開示のコポリマーの調製に利用される。有用なフリーラジカル熱反応開始剤としては、例えばアゾ、ペルオキシド、ペルスルフェート、及びレドックス反応開始剤、並びにこれらの混合物が挙げられる。有用なフリーラジカル光反応開始剤としては、例えばアクリレートポリマーのUV硬化に有用であるものとして既知のものが挙げられる。例えば、E.I.duPont de Nemours & Co.(デラウェア州ウィルミントン)から商標名「VAZO−67」にて市販されているもののようなアゾニトリル反応開始剤などの熱反応開始剤が、特に有用である。
【0058】
反応開始剤は、所望のモノマー重合を達成するような量で添加される。典型的には、反応開始剤は、使用するモノマーの総重量に対して、0.01〜5.0重量部、より典型的には0.015〜2.0重量部の量で使用される。
【0059】
エチレン系不飽和加水分解性シラン、エチレン系不飽和ポリオキシアルキレン、及びエチレン系不飽和フッ素化ポリエーテルモノマーの他に、追加の共重合性エチレン系不飽和モノマーを使用してもよい。このようなモノマーを使用して、形成されるポリマーの特性、例えばガラス転移温度を変更してもよく、又は安価なモノマーとして、最終ポリマーのコストを低減するために使用してもよい。有用なエチレン系不飽和モノマーとしては、例えば、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、n−オクチルアクリレート、イソ−オクチルアクリレート、オクタデシルアクリレート、ビニルアセテート、スチレン、シリコーンアクリレート、2−(N,N,−ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、n−CCHCHOC(O)CH=CH、C13CHCHOC(O)CH=CH、CSONMeCHCHOC(O)CH=CHなどが挙げられる。
【0060】
ペルフルオロポリエーテルポリマーの分子量は、好適な連鎖移動剤を添加することによって制御することができる。連鎖移動剤を使用して、連鎖停止を促進し、ゲル形成を制限することができる。有用な連鎖移動剤としては、例えば、チオール及びポリハロカーボンが挙げられる。市販の連鎖移動剤の例としては、テトラブロモメタン、1−ヘキサンチオール、1−ヘプタンチオール、1−オクタンチオール、1−ノナンチオール、1−デカンチオール、1−ドデカンチオール、1−オクタデシルメルカプタン、1−ペンタデカンチオール、1−ヘキサデシルメルカプタン、第3ノニルメルカプタン、第3ヘキサデシルメルカプタン、第3テトラデシルメルカプタン、1H,1H,2H,2H−ペルフルオロヘキサンチオール及び1H,1H,2H,2H−ペルフルオロドデシル−1−チオールが挙げられる。
【0061】
いくつかの実施形態では、形成したポリマーの末端に加水分解性シランを更に導入するのに有用である、加水分解性シラン基などの反応性基を含有する連鎖移動剤を使用することが望ましい場合がある。加水分解性シラン基を有する連鎖移動剤としては、例えば、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシランなどが挙げられる。連鎖移動剤3−メルカプトプロピルトリメトキシシランが特に好適であり、SILQUEST A−189としてMomentive Performance Materialsから市販されている。
【0062】
連鎖移動剤は更に、ポリオキシアルキレン単位を含有してよい。ポリオキシアルキレン単位を有するメルカプタン連鎖移動剤の調製は、文献に記載された既知の処置、例えば、CHO(CHCHO)−HをHSCHCOHとエステル化してCHO(CHCHO)−C(O)CHSHを形成することによって行うことができる。
【0063】
硬化性コーティング組成物は、硬化性ゾルゲル成分、並びにエチレン系不飽和加水分解性シラン、エチレン系不飽和ポリオキシアルキレン、エチレン系不飽和フッ素化ポリエーテル、及び反応開始剤を含む反応混合物から調製されるコポリマーの混合物から調製できる。いくつかの実施形態では、硬化性コーティング組成物は、過半数部分として硬化性ゾルゲル成分を含有してよい。硬化性コーティング組成物を使用して、硬化性コーティング又は硬化性コーティング層を提供してもよい。これらコーティングは、例えばハードコート又はハードコート層であってよい。
【0064】
硬化性コーティング組成物が、特にハードコート表面層又は下地ハードコート層として使用される場合、典型的には、得られるコーティングに機械的強度及び耐久性を加える表面修飾無機粒子を含有する。その粒子は、典型的には、実質的に球状の形状であり、比較的均一な大きさである。その粒子は、実質的に単分散の粒径分布を有してもよいし、又は実質的に単分散分布のものを2つ以上ブレンドすることにより得られる多モードの分布を有してもよい。その無機酸化物粒子は、典型的には非凝集(実質的に分離性)であるが、それは、凝集が起きると、無機酸化物粒子が沈降したり、ハードコートのゲル化が起きたりする可能性があるからである。無機酸化物粒子は、典型的にはコロイド状であり、約0.001〜約0.2マイクロメートル、約0.05マイクロメートル未満、及び約0.03マイクロメートル未満の平均粒径を有する。これらの範囲の大きさであると、バインダー樹脂の中に無機酸化物粒子を分散させるのが容易となり、所望の表面特性及び光学的透明度を有するセラマーが得られる。無機酸化物粒子の平均粒径は、透過型電子顕微鏡を用いて、所定の直径の無機酸化物粒子の数を数えることによって測定することができる。無機酸化物粒子は、例えばシリカのような単一の酸化物から本質的になるか、又はなっていてもよく、あるいは例えばシリカ及び酸化アルミニウムのような酸化物の組み合わせを含んでよく、あるいは1つのタイプの酸化物のコア(又は金属酸化物以外の材料のコア)に他のタイプの酸化物を析出させたものであることができる。シリカは、一般的な無機粒子である。無機酸化物粒子は、液状媒体の中に無機酸化物粒子のコロイド状分散体を含有するゾルの形態で提供されることが多い。例えば、米国特許第5,648,407号(Goetzら)、同第5,677,050号(Bilkadiら)及び同第6,299,799号(Craigら)に記載されているように、ゾルは、様々な技術を使用し、水性ゾル(水が液体媒体として作用する)、有機ゾル(有機液体がそのように作用する)、及び混合ゾル(液体媒体が水及び有機液体の両方を含有する)などの様々な形態に調製できる。(例えば、非晶質シリカの)水性ゾルを使用することができる。ゾルには一般に、ゾルの総重量を基準にして、少なくとも2重量%、少なくとも10重量%、少なくとも15重量%、少なくとも25重量%、及び多くの場合少なくとも35重量%のコロイド状無機酸化物粒子を含有する。コロイド状の無機オキシド粒子の量は、典型的には50重量%以下である(例えば、45重量%)。無機粒子の表面は、Bilkadiらに記載されるように「アクリレート官能化」することができる。ゾルは、バインダーのpHに適合させることもでき、対イオン又は水溶性化合物(例えば、アルミン酸ナトリウム)を含有することができ、これらは全て米国特許第6,238,798号(Kangら)に記載されている。
【0065】
例えばジルコニア(「ZrO」)、チタニア(「TiO」)、酸化アンチモン、アルミナ、酸化スズなどの様々な高屈折率無機酸化物粒子を、単独で又は組み合わせて使用することができる。混合金属酸化物が使用されてもよい。高屈折率層内で使用するためのジルコニアは、「Nalco OOSSOO8」(の商標名でNalco Chemical Co.から、及び「Buhler zirconia Z−WO sol」)の商標名でBuhler AG(スイス、ウッツヴィル)から、入手可能である。ジルコニアナノ粒子は、米国特許第6,376,590号に記載されているように調製することもできる。
【0066】
ハードコートの無機ナノ粒子は、好ましくは表面処理剤にて処理される。ナノサイズ粒子を表面処理することで、ポリマー樹脂中での安定した分散を提供することができる。好ましくは、粒子が重合性樹脂中に良好に分散されて、実質的に均質な組成物を生じるように、表面処理がナノ粒子を安定化させる。更に、安定化した粒子が硬化中に重合性樹脂と共重合又は反応できるように、ナノ粒子の表面の少なくとも一部分を表面処理剤により修飾することができる。表面修飾無機粒子の導入は、フリーラジカル重合性有機成分への粒子の共有結合をしやすくして、より丈夫でより均質なポリマー/粒子ネットワークを提供する。
【0067】
一般に、表面処理剤には、粒子表面に結合(共有結合、イオン結合、又は、強力な物理吸着による結合)することになる第1の末端部と、粒子の樹脂との相溶性をもたらす、及び/又は硬化中に樹脂と反応する、第2の末端部を有する。表面処理剤の例としては、アルコール、アミン、カルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸、シラン、及びチタネートが挙げられる。好ましいタイプの処理剤は、金属酸化物表面の化学的性質によりある程度決定される。シランがシリカとして、及びその他のシリカ系充填剤として好ましい。ジルコニアのような金属酸化物に対しては、シラン及びカルボン酸が好ましい。表面修飾は、モノマーとの混合に続いて又は混合後のいずれかで行うことができる。シランの場合、樹脂へ組み込む前にシランを粒子又はナノ粒子の表面と反応させるのが好ましい。表面修飾剤の必要量は、粒径、粒子タイプ、修飾剤の分子量、及び修飾剤のタイプなどのいくつかの要素に依存する。一般的には、おおむね単層の修飾剤を粒子の表面に結合させることが好ましい。必要とされる付着手順又は反応条件もまた、使用する表面修飾剤に依存する。シランの場合、酸性又は塩基性の条件にて、高温で約1〜24時間表面処理することが好ましい。カルボン酸のような表面処理剤は、高温及び長時間を必要としない場合がある。
【0068】
本組成物に適している表面処理剤の代表的な実施形態としては、例えば、イソオクチルトリメトキシ−シラン、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)メトキシエトキシエトキシエチルカルバメート、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)メトキシエトキシエトキシエチルカルバメート、3−(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタクリロイルオキシ)プロピルトリエトキシシラン、3−(メタクリロイルオキシ)プロピルメチルジメトキシシラン、3−(アクリロイルオキシプロピル)メチルジメトキシシラン、3−(メタクリロイルオキシ)プロピルジメチルエトキシシラン、3−(メタクリロイルオキシ)プロピルジメチルエトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ビニルメチルジアセトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、ビニルトリ−t−ブトキシシラン、ビニルトリス−イソブトキシシラン、ビニルトリイソプロペノキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、スチリルエチルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、アクリル酸、メタクリル酸、オレイン酸、ステアリン酸、ドデカン酸、2−{2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ}酢酸(MEEAA)、β−カルボキシエチルアクリレート(BCEA)、2−(2−メトキシエトキシ)酢酸、メトキシフェニル酢酸、及びこれらの混合物などの化合物が挙げられる。
【0069】
コロイド状分散体における粒子の表面修飾は、米国特許第6,376,590号に記載されているような様々な既知の方法で達成することができる。
【0070】
開環重合を受ける環式官能基は、一般的に、酸素、イオウ又は窒素のようなヘテロ原子を含有し、好ましくはエポキシドのように酸素を含有する3員環である。
【0071】
表面修飾剤の好適な組み合わせは、重合性樹脂の有機構成成分(例えば、アクリレート、メタクリレート、又はビニル基を有する)と共重合可能である官能基を有する少なくとも1つの表面修飾剤と、分散剤として作用し得るポリエーテルシランのような第2の両親媒性修飾剤と、を含む。第2の修飾剤は、一般に、重合性組成物の有機構成成分と任意に共重合性である、ポリオキシアルキレンを含有する修飾剤である。
【0072】
表面修飾コロイド状ナノ粒子は、実質的に完全に凝縮可能である。非シリカ含有完全凝縮ナノ粒子の結晶化度(単離した金属酸化物粒子として測定した場合)は、典型的には55%超、好ましくは60%超、より好ましくは70%超である。例えば、結晶化度は、約86%まで又はそれ以上の範囲にすることができる。結晶化度は、X線回折法によって割り出すことができる。凝縮結晶性のナノ粒子(例えばジルコニアナノ粒子)は屈折率が高く、非晶質ナノ粒子は典型的には屈折率がより低い。
【0073】
硬化性コーティング組成物を形成するために、エチレン系不飽和加水分解性シラン、エチレン系不飽和ポリオキシアルキレン、エチレン系不飽和フッ素化ポリエーテル、及び反応開始剤を含む反応混合物から調製されるコポリマーと共にブレンドするのに有用な、特に有用なゾルゲルコーティング組成物は、GE Silicones(ニューヨーク州ウォーターフォード)から商標名「SHC1200」にて市販されているシリコーンハードコート組成物である。市販の熱硬化シリコーン系ゾルゲルハードコートのその他の例は、AS4000、AS 4700、SCH4002、SCH5020、及びPHC587である。
【0074】
本開示の硬化性コーティング組成物を使用して、さまざまな異なるコーティングを調製することができる。典型的には、硬化性コーティング組成物は、ハードコート層を形成する。これらのハードコート層は、例えば、光学的透明性、洗浄容易性、リント忌避性、インク抵抗性などを含む種々の望ましい特性を有し得る。ハードコート組成物にフッ素化材料を添加することによって、インク抵抗性の付与を助けることができるが、リントをより引きつけやすくなるという不都合が生じ得る。本開示のコーティング組成物は、インク抵抗性及び耐リンティング性のバランスを提供する。
【0075】
硬化性コーティング組成物は、単一層構造として使用してもよく、又は多層構造の一部として使用してもよい。例えば、追加のハードコート層を硬化性コーティング組成物の真下に適用して、硬化性コーティング組成物が表面層を形成するようにしてもよい。1層のハードコート表面層又は2層のハードコートからなる下層のハードコートの厚さは通常、少なくとも0.5マイクロメートル、好ましくは少なくとも1マイクロメートル、より好ましくは少なくとも2マイクロメートルである。ハードコート層の厚さは一般的に、25マイクロメートル以下である。好ましくは、厚さは3マイクロメートル〜5マイクロメートルの範囲である。2層構造の場合、硬化した表面層は通常、少なくとも約10ナノメートル、好ましくは少なくとも約25ナノメートルの厚さを有する。典型的には、表面層は、約200ナノメートル未満、100ナノメートル未満、又は75ナノメートル未満の厚さを有する。一般に、加工の容易性ゆえに、硬化性コーティング組成物は単一層構造で使用される。
【0076】
硬化性コーティング組成物は、例えば、噴霧、ナイフコーティング、ノッチコーティング、反転ロールコーティング、グラビアコーティング、ディップコーティング、バーコーティング、フラッドコーティング、又はスピンコーティングなどの種々の従来技術によって基材に適用してよい。組成物は、所望のレベルの撥水性、撥油性、防染性、及び防汚性を与えるいかなる厚さに適用されてもよい。一般に、組成物は、約40ナノメートル〜約60ナノメートルの範囲の厚さを有する乾燥硬化層を生じる比較的薄い層として基材に適用されるが、より薄い又は厚い(例えば、100マイクロメートルまで又はそれ以上の厚さを有する)層を使用してもよい。硬化性コーティング組成物を基材上にコーティングした後、典型的には、任意の溶媒が、少なくとも部分的に除去され(例えば、強制空気オーブンを使用して)、次に組成物が少なくとも部分的に硬化して、耐久性コーティングを形成する。典型的には、組成物を加熱して耐久性コーティングに硬化する。
【0077】
本開示の硬化性コーティング組成物を適用するための好適なコーティング方法としては、ディップコーティングが挙げられる。通常、コーティングされる基材は、室温で処理組成物と接触させることができる。あるいは、混合物は、例えば60〜150℃の温度に予熱された基材に適用できる。これは、工業生産の上で特に関心があるもので、例えばセラミックタイルは、生産ラインの終わりで焼成オーブンの直後に処理されることができる。適用後、処理された基材は、室温又は高温、例えば40〜300℃にて、乾燥させるのに十分な時間にわたり、乾燥し硬化することができる。このプロセスは、過剰な材料を除去するための研磨工程も必要とする場合がある。
【0078】
本開示のコーティング組成物及び硬化性コーティング組成物は、さまざまな物品を形成するために、種々の基材に適用し得る。典型的には、本開示の硬化性コーティング組成物は基材に適用されて、比較的耐久性があり、汚染に対してより抵抗性があり、かつ基材表面自体よりも洗浄が容易である保護コーティングを、基材上に付与する。一般に、保護コーティングは比較的薄く、場合によっては、このコーティングの厚さは10マイクロメートル未満、又は更には5マイクロメートル未満であり、コーティング材料は通常、基材表面の外観及び光学特性を実質的に変更しない量で存在する。
【0079】
種々の基材を本開示の硬化性コーティング組成物でコーティングして、物品を形成することができる。好適な基材材料としては、ガラス、ポリマー(熱硬化性又は熱可塑性)、セラミック、石、木材、繊維性基材又は金属が挙げられる。ポリマー基材は、比較的薄いフィルム又は比較的厚いプレート若しくはプラークの形態であってよい。好適なポリマー基材の例としては、例えば、ポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリレート、(例えば、ポリメチルメタクリレート、即ち「PMMA」)、ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、即ち「PP」)、ポリウレタン、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、即ち「PET」)、ポリアミド、ポリイミド、フェノール樹脂、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリルコポリマー、エポキシなどが挙げられる。典型的には、基材は部分的には意図された用途に望ましい光学特性及び機械特性に基づいて選択される。かかる機械特性としては、典型的に、屈曲性、寸法安定性及び衝撃耐性が挙げられる。基材の厚さも、通常、意図された用途次第である。基材とハードコート層との間での接着を改善するために、例えば化学処置、コロナ処置、例えば空気若しくは窒素コロナ、プラズマ、火炎、又は化学放射線によって基材を処理することができる。所望であれば、中間層接着を増大させるため、任意の結合層又はプライマーを基材及び/又はハードコート層に適用することができる。
【0080】
好適なフィルムの1つの部類としては、例えば、多層光学フィルム、再帰反射シート及び輝度向上フィルムなどの微細構造フィルム、(例えば、反射性又は吸収性)偏光フィルム、拡散フィルムなどの光透過性光学フィルム、並びに(例えば、2軸)位相差フィルム及び米国特許出願公開第2004/0184150号に記載されているような補償フィルムが挙げられる。
【0081】
ハードコート又はこのようなハードコートから調製された保護フィルムは、光学ディスプレイ及びディスプレイパネルなどの様々な物品で使用するのに適している。用語「光学ディスプレイ」又は「ディスプレイパネル」とは、これらに限定されないが、液晶ディスプレイ(「LCD」)、プラズマディスプレイ、フロント及びリアプロジェクションディスプレイ、カソード線管(「CRT」)及び標識等のマルチキャラクターマルチラインディスプレイ、並びに発光ダイオード(「LED」)、信号ランプ及びスイッチ等のシングルキャラクター又はバイナリディスプレイを含むいずれかの従来の光学ディスプレイを意味し得る。そのようなディスプレイパネルの曝露表面は、「レンズ」と呼ばれる場合がある。本開示のハードコートは、インクペン、マーカー及びその他のマーキング道具、布巾、紙用品その他により触れられ又は接触されやすい画面を有するディスプレイに特に有用である。
【0082】
本開示の保護コーティングは、様々な携帯型及び非携帯型情報ディスプレイ物品において使用可能である。これらの物品としては、PDA、携帯電話(PDA/携帯電話の組み合わせを含む)、LCDテレビ(ダイレクトライト及びエッジライト)、タッチスクリーン、腕時計、カーナビゲーションシステム、GPS、深度探知機、計算機、電子ブック、CD及びDVDプレイヤー、投影型テレビスクリーン、コンピューターモニター、ノートパソコンディスプレイ、機器計器、機器パネルカバー、標識、例えばグラフィックディスプレイ等が挙げられる。表示面は任意の従来の大きさ及び形状を有することができ、平面又は非平面であることができるが、フラットパネルディスプレイが好ましい。コーティング組成物又はコーティングされたフィルムを、例えばカメラレンズ、眼鏡レンズ、双眼鏡レンズ、鏡、再帰反射シート材、自動車窓ガラス、建築物窓ガラス、電車窓ガラス、ボート窓ガラス、航空機窓ガラス、車両ヘッドライト及びテールライト、ディスプレイケース、道路舗装マーカー(例えば隆起)及び舗装マーキングテープ、オーバーヘッドプロジェクター、ステレオキャビネットドア、ステレオカバー、ウォッチカバー、並びに光学及び光磁気録音ディスク等の様々な他の物品上で同様に使用することが可能である。
【0083】
加えて、本開示の硬化性コーティング組成物は、フィルムではない多種多様な基材で使用することができる。例えば、硬化性コーティング組成物は、金属基材、プラスチック物品、セラミック物品、ガラス物品、又は石材物品に適用して、物品又は基材の表面上に保護層を形成することができる。例としては、例えば、タイル、カウンタートップ、窓、保護フェイスシールド、レンズ、装飾用石材物品などが挙げられる。基材は、所望により、例えば、プライマーを適用することによって、基材とハードコート層との間の接着性を向上させるように処理することができる。
【0084】
本開示の硬化性コーティング組成物は、インク抵抗性(洗浄容易性)及び耐リンティング性などの特性の望ましいバランスを有する。インク忌避性及び耐リンティング性は、様々な方法で測定することができる。耐リンティング性を決定するための特に有用な1つの方法は、実施例の項にあるセルロースヘイズ試験を使用してセルロース表面引力を決定することである。コーティングが、リンティング試験(セルロースヘイズ)試験方法を用いて測定した場合に、約10%未満のセルロース表面引力を有することが望ましい。
【0085】
ハードコートコーティングの特徴付け及び分析に使用できる別の有用な分析技術は、X線光電子分光法(XPS)であり、場合によりESCA(化学分析用電子分光法)としても知られている。XPSは、サンプル表面の最も外側の30〜100オングストロームの元素組成及び化学組成についての定量的測定を提供する。XPS実験では、試験表面は、X線により衝撃を受けて、表面の最も外側の30〜100オングストロームの原子から内殻準位電子を放出する。入射光子ビームのエネルギーが、束縛電子の結合エネルギーのものより大きいか又は等しい場合、光電効果と呼ばれるプロセスにより電子が放出される。次に、電子エネルギー分析器(これにより、結合エネルギー(BE)を決定することができる)を使用して、放出された光電子の運動エネルギー(KE)を測定することができる。この光電子のBEは、BEが生まれる元素(及びその化学状態)に特有である。XPSスペクトルの所与のピークにおける領域は、その元素に対応する原子数に比例している。
【0086】
XPSは、本開示の硬化したコーティングにて実施することができる。理論に束縛されるものではないが、この技術は、フルオロケミカル成分がコーティング表面にて濃縮される傾向があることを示すと考えられている。表面でのこの濃縮(「表面へのブルーミング(blooming to the surface)」と呼ばれることもある)により、比較的少量のフッ素化添加剤がコーティングの表面特性に劇的な影響を与えることができる。更に、下記実施例の項に提示されたデータが示すように、ウレタン系フルオロケミカルポリマー添加剤とは異なり、XPS分析では窒素が全く検出されないか、又はほとんど検出されない。
【実施例】
【0087】
これらの実施例は、単にあくまで例示を目的としたものであり、添付した請求項の範囲を限定することを意味するものではない。本明細書の実施例及びその他の部分におけるすべての部、百分率、比などは、特に注記がない限り重量による。使用した溶媒類及びその他の試薬類は、特に記載のない限り、ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee)のSigma−Aldrich Chemical Companyより入手した。
【0088】
【表1】

【0089】
試験方法
リンティング試験(セルロースヘイズ):
コーティング調製後、室温にて24時間放置して、充電させた。その時間が経過した後、Simco「Viper」静電気中和ガンで洗浄して、全ての埃を除去した。次に、0.35gのα−セルロース(C−8002)(Sigma Chemical Company Company(ミズーリ州セントルイス)から)をコーティング最上部へ直径7cmにて適用した。コーティングされたフィルムを前後に複数回傾斜させて、セルロースが試験領域を均一にコーティングするようにした。次に、余分なセルロースを振り落とし、ASTM D1003にしたがって、セルロースを加えたコーティングのヘイズ値を測定した。測定されたヘイズ(%)は、セルロース表面引力の尺度である。
【0090】
インク忌避性試験及び評価:
この試験は、コーティングのインク忌避性を測定するために使用される。コーティングされたPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムは、実施例にて記載されたようにして調製する。コーティングされた基材の表面に、SHARPIEマーカー(イリノイ州ベルウッド(Bellwood)のSanfordから入手可能)で1本の線を引いた。外観及び黒のSHARPIEマーカーをはじく能力について、サンプルを評価した。
【0091】
【表2】

【0092】
接触角:
水及びヘキサデカンの接触角測定をする前に、コーティングをイソプロピルアルコール中で手による攪拌によって1分間すすいだ。マサチューセッツ州ビルリカ(Billerica)のMillipore Corporationから得られた濾過システムを通して濾過した、受け取ったままの状態の試薬等級のヘキサデカン及び脱イオン水を用い、マサチューセッツ州ビルリカのAST Productsから製品番号VCA−2500XEとして入手可能なビデオ接触角分析計により、測定を行った。報告される値は、液滴の右側及び左側で測定された少なくとも3滴の測定値の平均である。液滴体積は静的測定に関して5マイクロリットルであり、前進及び後退に関して1〜3マイクロリットルであった。ヘキサデカンの場合には、前進接触角及び後退接触角のみを報告しているが、その理由は、静止接触角と前進接触角とがほぼ同じであることが見出されたからである。
【0093】
耐溶剤性試験:
コーティング及び硬化したフィルム上で、直径約0.5インチ(約1.27cm)の溶媒(下記)の液滴をコーティングされた表面に適用した。溶媒が室温で蒸発して乾燥した後、コーティングの外観を目視評価し、記録した。表で、「C」はクリア(コーティング外観に変化なし)を意味する。次に、インク忌避性試験を、SHARPIE Fine Point、Series 30000パーマネントマーカーを使用して、溶媒の乾燥箇所上で実施し、サンプルを上記の尺度にしたがって1〜5で評価した。報告値は、3回の評価の平均である。
【0094】
クリーニングティッシュ耐久性試験
特に記載のない限り、コーティングされたポリカーボネートをSight Savers Pre−moistened Lens Cleaning Tissue(Bausch & Lomb)で前後に100回、洗浄した。次に、洗浄した領域を乾燥させ、SHARPIEマーカーで試験し、インク忌避性試験にしたがって評価した。
【0095】
X線光電子分光法(XPS)
硬化したハードコートコーティングでコーティングされたフィルムのサンプルを試験した。試験に先だってイソプロパノールでサンプルを拭いた。XPSデータは、単色のAL−KX線源を備えるKratos AXIS Ultra DLD分光計を使用して取得した。放出された光電子は、サンプル表面に対して90度の取り出し角で検知された。表面帯電を最小限に抑えるため、低エネルギーの電子フラッドガンを使用した。各データポイントに関して分析された領域は、約700マイクロメートル×300マイクロメートルであった。20eVのパスエネルギーを使用して高解像度C1sスペクトルを得て、285.0eVに設定されたC1s炭化水素ピークに電荷参照された。
【0096】
硬度試験
MTS DCMナノインデンター(Nanoindenter)にて修正を加えずに、全ての被検査物を試験した。コーティングの試験は、上面からプローブしながら行った。全ての実験で、ダイヤモンドのベルコビッチ(Berkovich)プローブを使用した。空間ドリフト設定点は、0.5nm/秒(最大値)に設定した。一定ひずみ速度実験は、0.05/秒にて、200nmの指示深さまで実施した。試験領域は、100倍の倍率でビデオ画面を介して見た際にトップダウンに見えるように配置した。DCMの100倍のビデオ倍率で試験領域を局所的に選定して、試験された領域が、所望のサンプル材料を代表するように、即ち、空隙、介在物、又はくずが確実にないようにする。更に、試験の前に反復プロセスにより顕微鏡の光学軸から圧子軸の整列が確認及び較正され、そこで試験圧痕が溶融石英標準に作られ、XP上のソフトウエアによる誤差修正がなされた。圧子の動的励起周波数及び振幅は、全実験において75hz及び1nmにて一定に保たれた。各サンプルに対して試験を15回実施して、再現性を評価した。異常な試験データは、表面に存在する人為的欠陥として破棄した。
【0097】
調製例P1:SAO−1シランアクリレートオリゴマーアルコールの調製:
【化1】

【0098】
ガラスびんの中に、14.90グラムのSi−Mar、1.56グラムのHSCHCHOH、38.4グラムのエチルアセテート及び0.3グラムの反応開始剤を入れた。溶液を窒素で1分間泡立てた後、密封したびんを70℃の油浴中で、磁気攪拌しながら24時間重合し、固形分30%の透明な溶液を得た。FTIR分析から、CH=CMeC(O)−シグナルは観察されず、完全にオリゴマー化(平均分子量=822)したことが示された。
【0099】
(実施例1):
HFPO−Mar/PEG−Mar/Si−Mar/CTAのモノマー重量比が40/20/40/5であるポリマーを調製した。ガラスびんの中に、HFPO−Mar(4.0グラム)、PEG−Mar(2.0グラム)、Si−Mar(4.0グラム)、CTA(0.5グラム)、反応開始剤(0.235グラム)及び40グラムのエチルアセテートを入れた。混合物を窒素ガスで1分間泡立て、密閉し、70℃の油浴にて24時間加熱した。透明で均質な溶液を得た。FT−IR分析は、アクリレート二重結合の存在となるシグナルが存在していないことを示した。この20%固形分ポリマー溶液を使用して、評価のためのゾルゲルを有するコーティング配合物を調製した。
【0100】
(実施例2):
HFPO−Mar/PEG−Mar/Si−Mar/CTAのモノマー重量比が40/30/30/5であるポリマーを調製した。ガラスびんの中に、HFPO−Mar(4.0グラム)、PEG−Mar(3.0グラム)、Si−Mar(3.0グラム)、CTA(0.5グラム)、反応開始剤(0.235グラム)及び40グラムのエチルアセテートを入れた。混合物を窒素ガスで1分間泡立て、密閉し、70℃の油浴にて24時間加熱した。透明で均質な溶液を得た。FT−IR分析は、アクリレート二重結合の存在となるシグナルが存在していないことを示した。この20%固形分ポリマー溶液を使用して、評価のためのゾルゲルを有するコーティング配合物を調製した。
【0101】
(実施例3):
HFPO−Mar/PEG−Mar/Si−Mar/CTAのモノマー重量比が40/40/20/5であるポリマーを調製した。ガラスびんの中に、HFPO−Mar(4.0グラム)、PEG−Mar(4.0グラム)、Si−Mar(2.0グラム)、CTA(0.5グラム)、反応開始剤(0.235グラム)及び40グラムのエチルアセテートを入れた。混合物を窒素ガスで1分間泡立て、密閉し、70℃の油浴にて24時間加熱した。透明で均質な溶液を得た。FT−IR分析は、アクリレート二重結合の存在となるシグナルが存在していないことを示した。この20%固形分ポリマー溶液を使用して、評価のためのゾルゲルを有するコーティング配合物を調製した。
【0102】
比較例C−1
HFPO−OH/P−Iso/SAO−1/APTMSのモノマー当量比が1/3/1/1のポリマーを調製した。ガラスびんの中に、P−Iso(5.73グラム)、HFPO−OH(13.14グラム)、SAO−1(27.4グラムの30%溶液、8.22グラム固形分)、49.5グラムのEtOAc溶媒及び5滴のDBTDL触媒を入れた。密閉したびんを70℃の油浴に磁気攪拌しながら4時間入れ、次に室温まで冷却した。本混合物へ、2.21グラムのAPTMSを添加し、この混合物を室温で0.5時間反応させ、続いて70℃にて更に4時間反応させた。30%固形分の透明溶液を得たが、これはFTIR分析によれば、未反応−NCOシグナルを示さなかったので、反応が完了したことを示した。
【0103】
比較例C−2
P−Iso/HFPO−OH/APTMSのモノマー当量比が1/0.15/0.85のポリマーを調製した。電磁攪拌棒を装着した丸底フラスコに、6.25グラムのP−Iso、17.69グラムのテトラヒドロフラン(THF)、及び0.00079グラムのDBTDL(総固形分を基準にして50ppm、DBTDLの10%固形分メチルエチルケトン溶液から添加した)を加えた。フラスコを窒素雰囲気下に置き、55℃の油浴内に置いた。本混合物へ、滴下漏斗を介して約10分間かけて、6.45グラムのHFPO−OHを添加した。HFPO−OHを添加完了してから2時間後に、滴下漏斗を介して4.99グラムのAPTMSを反応へと約15分間かけて添加した。APTMSを添加完了してから2時間後に、FTIRは、2265cm−1におけるイソシアネートピークが欠如していることを示した。THFを添加することにより反応を50%固形分に調整し、次に、イソプロパノールを添加することにより30%固形分まで希釈した。
【0104】
比較例C−3
HFPO−Mar/Si−Mar/CTAのモノマー重量比が2/8/0.2であるポリマーを調製した。ガラスびんの中に、HFPO−Mar(2.0グラム)、Si−Mar(8.0グラム)、CAT−1(0.2グラム)、30グラムのMEK溶媒及び0.2グラムの反応開始剤を入れた。窒素気流を混合物中で1分間泡立て、びんを密閉し、70℃の油浴中に置き、24時間攪拌した。
【0105】
実施例4〜8及び比較例C4〜C7
実施例4〜8及び比較例C4〜C7については、コーティング配合物は、下表1に記載されているゾルゲル及びコポリマーを使用して調製した。ゾルゲルは、コポリマー溶液と混合するに先だって13%又は16%固形分までイソプロパノールで希釈した。ゾルゲル対コポリマー比は、各混合物について98.5:1.5であった。配合物は、プライム化PCフィルム又はプライム化PCプラークのいずれか一方の上へコーティングした。PCフィルム及びPCプラークは、プライマーを6番メイヤーロッドで適用することによって、及び10分間室温で乾燥させることによってプライム化した。6番メイヤーロッドを使用して試験用配合物をプライマー基材上にコーティングした。コーティングされた基材を室温で10分間静置させ、次に130℃オーブン内に30分間置いて硬化させた。全コーティングは、光学的に透明に見えた。24時間室温で静置した後、上記リントテスト試験方法を使用して、コーティングされた基材のリント保持率を試験した。平均ヘイズ値(%)を下表1に示す。サンプルのいくつかは、上述の試験方法を使用して測定して接触角を決定したが、データを下表2に示す。サンプルは更に、インク忌避性試験方法にしたがって試験した。それらの結果を下記の表4に示す。上記耐溶剤性試験方法を使用してサンプルの耐溶剤性を試験したが、その結果を下表5に示す。上記クリーニングティッシュ耐久性試験方法を使用してサンプルのクリーニングティッシュ耐久性を試験したが、その結果を下表6に示す。上記のXPS試験方法を使用してサンプルを試験したが、その結果を下表7に示す。
【0106】
【表3】

【0107】
【表4】

【0108】
実施例9〜10及び比較例C8〜C10
実施例9〜10及び比較例C8〜C10については、コーティング配合物は、下表2に記載されているゾルゲル及びコポリマーを使用して調製した。ゾルゲルは、20%固形分にて使用するか、又はコポリマー溶液と混合するに先だって16%固形分までイソプロパノールで希釈した。ゾルゲル対コポリマー比は、各混合物について98:2であった。配合物は、6番メイヤーロッドを使用してPMMAフィルム又はPMMAプラークのいずれか一方の上へコーティングした。コーティングされた基材を室温で10分間静置させ、次に90℃オーブン内に1時間置いて硬化させた。全コーティングは、光学的に透明に見えた。24時間室温で静置した後、上記リントテスト試験方法を使用して、コーティングされた基材のリント保持率を試験した。平均ヘイズ値(%)を下表3に示す。サンプルは更に、インク忌避性試験方法にしたがって試験した。それらの結果を下記の表4に示す。上記耐溶剤性試験方法を使用してサンプルの耐溶剤性を試験したが、その結果を下表5に示す。上記クリーニングティッシュ耐久性試験方法を使用してサンプルのクリーニングティッシュ耐久性を試験したが、その結果を下表6に示す。
【0109】
【表5】

【0110】
【表6】

【0111】
【表7】

【0112】
【表8】

【0113】
【表9】

【0114】
実施例11〜16及び比較例C11〜C14
一連のコーティングされた基材は、下表8に示すコーティング配合物を使用してPCプラーク基材(10×10cm)をディップコーティングすることによって調製した。ポリマー添加剤は、ゾルゲル組成物へ添加する前に、0.5重量%溶液となるまでメタノールで希釈した。コーティングは、基材をプライマー溶液中に毎分90cmの速度で浸漬することによって調製した。基材全体がプライマーに浸漬されると、基材をプライマーから90cm/分の速度で取り出し、室温で10分間、空気乾燥した。次に、乾燥させた基材をゾルゲル(比較例C11)又はゾルゲルに添加剤を加えた溶液(実施例11〜16及び比較例C12〜C14)のいずれか一方の溶液中に、毎分90cmの速度で浸漬させ、毎分19cmの速度で引き上げた。コーティングされたプラークを室温で20分間空気乾燥させ、最後に130℃オーブン内で30分間加熱した。コーティング品質を記録し、上記リントテスト試験方法を使用して、コーティングされた基材のリント保持率を試験した。平均ヘイズ値(%)を下表8に示す。サンプルは、上述の試験方法を使用して測定して接触角を決定したが、データを下表9に示す。
【0115】
【表10】

【0116】
【表11】

【0117】
実施例17〜21及び比較例C15〜C16
一連のコーティングされた基材は、下表10に示すコーティング配合物を使用してガラスマイクロスライド基材をディップコーティングすることによって作製した。比較例16の場合、コーティング配合物として市販のコーティング−1を使用した。ポリマー添加剤は20重量%の溶液として使用し、ゾルゲル組成物は5%固形分又は10%固形分のいずれか一方になるまでメタノールで希釈した。コーティングは、基材をプライマー溶液中にて毎分90cmの速度で浸漬することによって調製した。基材全体がプライマーに浸漬されると、基材をプライマーから90cm/分の速度で取り出し、室温で10分間、空気乾燥した。次に、ゾルゲルに添加剤を加えた溶液中に乾燥させた基材を毎分90cmの速度で浸漬させ、毎分19cmの速度で引き上げた。コーティングされたガラスマイクロスライドを室温で10分間空気乾燥させ、最後に130℃オーブン内で30分間加熱した。上記リントテスト試験方法を使用して、コーティングされた基材のリント保持率を試験した。平均ヘイズ値(%)を下表10に示す。サンプルは、上述の試験方法を使用して測定して接触角を決定したが、データを下表11に示す。
【0118】
【表12】


NA=該当なし
【0119】
【表13】

【0120】
実施例22〜30及び比較例C17〜C20
実施例22〜30及び比較例C17〜C20については、コーティング配合物は、ゾルゲル及び下表12に記載されているコポリマーを使用して調製した。ゾルゲルは、20%固形分にて使用するか、又はコポリマー溶液と混合するに先だって16%固形分までイソプロパノールで希釈した。ゾルゲル対コポリマー比を、表12に示す。配合物は、6番メイヤーロッドを使用してPCプラーク上へコーティングした。コーティングされた基材を室温で10分間静置させ、次に90℃オーブン内に1時間置いて硬化させた。全コーティングは、光学的に透明に見えた。24時間室温で静置した後、上記硬度試験方法を使用してコーティングされた基材の硬度を試験した。
【0121】
【表14】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物であって、
エチレン系不飽和加水分解性シラン、
エチレン系不飽和ポリオキシアルキレン、
エチレン系不飽和フッ素化ポリエーテル、及び
反応開始剤
を含む反応混合物から調製されるコポリマーを含む、組成物。
【請求項2】
前記反応混合物が、連鎖移動剤を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記エチレン系不飽和フッ素化ポリエーテルが、式F(RO)−を含む高度にフッ素化された又はペルフルオロ化されたポリエーテル基を含み、式中、各Rは独立して、直鎖、分枝鎖、環状又は非環式の、高度にフッ素化された又はペルフルオロ化された、1〜6個の炭素原子を有するアルキレン基であり、xが2以上の整数である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記エチレン系不飽和フッ素化ポリエーテルが、式F(CF(CF)CFO)CF(CF)−を含むペルフルオロポリエーテル基を含み、式中、uは3〜50の範囲の数字である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記反応混合物が、追加のエチレン系不飽和モノマーを更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記エチレン系不飽和加水分解性シラン、前記エチレン系不飽和ポリオキシアルキレン、及び前記エチレン系不飽和フッ素化ポリエーテルが、(メタ)アクリレートを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記エチレン系不飽和ポリオキシアルキレンが、式−((CHCHRO)−を含むポリオキシアルキレン基を含み、式中、RはH又は−CHであり、nは1〜3の整数であり、mは3〜約5,000の整数である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記反応開始剤が熱反応開始剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記エチレン系不飽和フッ素化ポリエーテルが、構造F(CF(CF)CFO)CF(CF)−L−O(O)C−CHR=CHを含み、式中、RはH又は−CHであり、uは3〜50の範囲内の数字であり、Lは−(CH−、−C(O)NR(CH−、又は−(CHO(CH−を含む二価連結基であり、式中、RはH又はアルキル基であり、各aは独立して2以上の整数である、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
uが5以上である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
硬化性ゾルゲル分散体を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記硬化性ゾルゲル分散体がシリコーン系ハードコートである、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記硬化性ゾルゲル分散体が、前記組成物中の全固形分に対して前記組成物の90〜99.9重量%で含まれる、請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
コーティングであって、
硬化性ゾルゲル分散体、並びに
エチレン系不飽和加水分解性シラン、
エチレン系不飽和ポリオキシアルキレン、
エチレン系不飽和フッ素化ポリエーテル、及び
反応開始剤
を含む反応混合物から調製されるコポリマーを含む、コーティング。
【請求項15】
前記硬化性ゾルゲル分散体が、前記コーティングの全固形分に対して前記コーティングの90〜99.9重量%で含まれる、請求項14に記載のコーティング。
【請求項16】
前記コーティングが硬化される、請求項14に記載のコーティング。
【請求項17】
前記エチレン系不飽和ポリオキシアルキレンが、式−((CHCHRO)−を含むポリオキシアルキレン基を含み、式中、RはH又は−CHであり、nは1〜3の整数であり、mは3〜約5,000の整数である、請求項14に記載の組成物。
【請求項18】
前記エチレン系不飽和フッ素化ポリエーテルが、構造F(CF(CF)CFO)CF(CF)−L−O(O)C−CHR=CHを含み、式中、RはH又は−CHであり、uは3〜50の範囲内の数字であり、Lは−(CH−、−C(O)NR(CH−、又は−(CHO(CH−を含む二価連結基であり、式中、RはH又はアルキル基であり、各aは独立して2以上の整数である、請求項14に記載の組成物。
【請求項19】
前記表面層がインク忌避性を示す、請求項14に記載の物品。
【請求項20】
前記表面層が、10%未満のセルロース表面引力を示す、請求項19に記載の物品。
【請求項21】
基材、及び
前記基材の少なくとも1つの表面上の硬化したコーティング
を含む物品であって、
前記硬化したコーティングは、
硬化性ゾルゲル分散体、並びに
エチレン系不飽和加水分解性シラン、
エチレン系不飽和ポリオキシアルキレン、
エチレン系不飽和フッ素化ポリエーテル、及び
反応開始剤
を含む反応混合物から調製されるコポリマーを含む硬化した組成物を含む、物品。
【請求項22】
前記基材が、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、セラミック、ガラス、石、木材、繊維、又は金属を含む、請求項21に記載の物品。
【請求項23】
前記基材がプライマーコーティングを更に含む、請求項22に記載の物品。
【請求項24】
前記表面層がインク忌避性を示す、請求項21に記載の物品。
【請求項25】
前記表面層が、10%未満のセルロース表面引力を示す、請求項24に記載の物品。
【請求項26】
基材をコーティングするための方法であって、
基材を用意すること、
硬化性ゾルゲル分散体、並びに
エチレン系不飽和加水分解性シラン、
エチレン系不飽和ポリオキシアルキレン、
エチレン系不飽和フッ素化ポリエーテル、及び
反応開始剤
を含む反応混合物から調製されるコポリマーを含む硬化性コーティング組成物を用意すること、
前記コーティング組成物を前記基材の少なくとも一部の上にコーティングすること、並びに
前記コーティングを硬化させること
を含む、方法。
【請求項27】
前記基材の少なくとも一部の上での前記コーティング組成物のコーティングが、ディップコーティング、ダイコーティング、ナイフコーティング、フラッドコーティング、プリントコーティング、ワイヤロッドコーティング、又はブラシコーティングを含む、請求項26に記載の方法。

【公表番号】特表2012−512944(P2012−512944A)
【公表日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542236(P2011−542236)
【出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【国際出願番号】PCT/US2009/067061
【国際公開番号】WO2010/080288
【国際公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】