説明

コーティング組成物

【課題】硬度、スクラッチ及びマー耐性並びに自己修復特性を有するポリウレタンコーティングシステム及び組成物の提供。
【解決手段】(a)分子あたり平均3個以上のヒドロキシル基、300〜3000ダルトンの範囲の数平均分子量、0℃未満の範囲のTを有する1種以上の天然油由来ポリオールと、(b)1種以上のポリイソシアナートからなるポリウレタン組成物による。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコーティングシステム、コーティング組成物、コーティング層、コーティングされた基体、コーティング組成物を製造する方法、コーティング層を形成する方法、コーティングされた基体を製造する方法、およびコーティングされた基体を修復する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コーティングは典型的には、許容可能な水準の透明性、例えば、クリアコート用途の場合には、硬度、耐衝撃性、環境エッチング耐性、耐候性、スクラッチおよびマー耐性、並びにベースコートおよび/または他の基体への接着性を必要とする。
【0003】
スクラッチおよびマー耐性および/または回復は木材、プラスチックおよび金属基体のためのコーティング市場においてかなり重要である。表面の損傷に対するこのような回復または耐性は、自動車内装および外装、鉄道車両の外装、消費者用電子物品、ディスプレイ、運動用物品、皮革物品、木材家具、木材床材、金属製電化製品などのような用途における多くの仕上げにおける表面の美観を保存するのに有用である。さらに、このような特徴は、腐蝕によって表面が損傷する場合に表面を保護するのに、例えば、トラクター、農場用設備、配管、油中のタンク、ガスおよび化学産業のような軽度から中程度の産業設備における表面の保護に有用である。
【0004】
しかし、環境エッチング耐性および硬度、並びにスクラッチおよびマー耐性を同時に満足させることはコーティング用途には困難であった。例えば、架橋密度を増大させることは結果的に硬度の増大をもたらすことができ、かつそのコーティングを通る低分子の拡散を遅くする。よって、これは酸もしくは溶媒のような環境物質に対する増大したバリア性を提供することができ、そのコーティングの向上した環境エッチング耐性をもたらしうる。しかし、コーティングはもろくなり、かつその表面の引っ掻きおよび損傷(marring)で容易に壊れる場合があり、それにより見た目の悪い損傷をもたらす場合がある。この2つの対立を解決することはこの産業において困難なことであった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
よって、適切な硬度並びにスクラッチおよびマー耐性、並びに自己修復特性を有するポリウレタンコーティング組成物についての必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、コーティングシステム、コーティング組成物、コーティング層、コーティングされた基体、コーティング組成物を製造する方法、コーティング層を形成する方法、コーティングされた基体を製造する方法、およびコーティングされた基体を修復する方法に関する。
ある実施形態においては、本発明は、(a)分子あたり平均3個以上のヒドロキシル基、300〜3000ダルトンの範囲の数平均分子量、0℃未満の範囲のTを有する1種以上の天然油由来ポリオールと、(b)1種以上のポリイソシアナートとを含むコーティングシステムを提供する。
別の実施形態においては、本発明は、(a)分子あたり平均3個以上のヒドロキシル基、300〜3000ダルトンの範囲の数平均分子量、0℃未満の範囲のTを有する1種以上の天然油由来ポリオールと、(b)1種以上のポリイソシアナートとの反応生成物を含むコーティング組成物をさらに提供する。
ある実施形態においては、本発明は、(a)分子あたり平均3個以上のヒドロキシル基、300〜3000ダルトンの範囲の数平均分子量、0℃未満の範囲のTを有する1種以上の天然油由来ポリオールと、(b)1種以上のポリイソシアナートとの反応生成物を含むコーティング組成物から生じる膜を含むコーティング層をさらに提供する。
ある実施形態においては、本発明は基体と前記基体に結合しているコーティング層とを含むコーティングされた基体であって、前記コーティング層が(a)分子あたり平均3個以上のヒドロキシル基、300〜3000ダルトンの範囲の数平均分子量、0℃未満の範囲のTを有する1種以上の天然油由来ポリオールと、(b)1種以上のポリイソシアナートとの反応生成物を含むコーティング組成物から生じる膜を含む、コーティングされた基体をさらに提供する。
ある実施形態においては、本発明は10〜90℃の範囲の温度で自己修復可能な膜を含むコーティング層をさらに提供する。
【0007】
ある実施形態においては、本発明は、(1)分子あたり平均3個以上のヒドロキシル基、300〜3000の範囲の数平均分子量、0℃未満の範囲のTを有する1種以上の天然油由来ポリオールを選択する工程;(2)1種以上のポリイソシアナートを選択する工程;(3)前記1種以上の天然油由来ポリオールと前記1種以上のポリイソシアナートとを接触させる工程;(4)それによりコーティング組成物を製造する工程;を含むコーティング組成物を製造する方法をさらに提供する。
ある実施形態においては、本発明は、(1)(a)分子あたり平均3個以上のヒドロキシル基、300〜3000の範囲の数平均分子量、0℃未満の範囲のTを有する1種以上の天然油由来ポリオールと、(b)1種以上のポリイソシアナートとを含むコーティングシステムを選択する工程;(2)前記1種以上の天然油由来ポリオールと前記1種以上のポリイソシアナートとを接触させる工程;並びに(3)それによりコーティング層を形成する工程;を含むコーティング層を形成する方法をさらに提供する。
ある実施形態においては、本発明は、(1)基体を選択する工程;(2)(a)分子あたり平均3個以上のヒドロキシル基、300〜3000の範囲の数平均分子量、0℃未満の範囲のTを有する1種以上の天然油由来ポリオールと、(b)1種以上のポリイソシアナートとの反応生成物を含むコーティング組成物を選択する工程;(3)前記コーティング組成物を前記基体に適用する工程;(4)それにより前記基体に結合したコーティング層を形成する工程;並びに(5)それによりコーティングされた基体を形成する工程;を含むコーティングされた基体を製造する方法をさらに提供する。
別の実施形態においては、本発明は、コーティング層を修復する方法であって、(1)(a)分子あたり平均3個以上のヒドロキシル基、300〜3000の範囲の数平均分子量、0℃未満の範囲のTを有する1種以上の天然油由来ポリオールと、(b)1種以上のポリイソシアナートとの反応生成物を含むコーティング組成物から生じた膜を含む関連するコーティング層を選択する工程;(2)前記コーティング層を10〜90℃の範囲の温度で熱処理する工程;並びに(3)それにより前記コーティング層を修復する工程;を含む、コーティング層を修復する方法をさらに提供する。
別の実施形態においては、本発明は、コーティングされた基体を修復する方法であって、(1)基体と、(a)分子あたり平均3個以上のヒドロキシル基、300〜3000の範囲の数平均分子量、0℃未満の範囲のTを有する1種以上の天然油由来ポリオールと、(b)1種以上のポリイソシアナートとの反応生成物を含むコーティング組成物から生じた膜を含み、前記基体と結合しているコーティング層とを含むコーティングされた基体を選択する工程;(2)前記コーティング層を10〜90℃の範囲の温度で熱処理する工程;並びに(3)それにより前記コーティングされた基体を修復する工程;を含む、コーティングされた基体を修復する方法をさらに提供する。
【0008】
別の実施形態においては、本発明は、熱処理工程が熱水加熱処理もしくは水蒸気処理で達成されることを除いて上記実施形態のいずれかに従う、コーティングされた基体もしくはコーティング層を修復する方法を提供する。
別の実施形態においては、本発明は、ポリオールが1個以上の末端基を有することを除いて上記実施形態のいずれかに従う、コーティングシステム、コーティング組成物、コーティング層、コーティングされた基体、コーティング組成物を製造する方法、コーティング層を形成する方法、コーティングされた基体を製造する方法、コーティング層を修復する方法、およびコーティングされた基体を修復する方法を提供する。
別の実施形態においては、本発明は、末端基が脂肪族アルキル基、脂肪族ポリエステル基、脂肪族アクリラート基、シロキサン基、フルオロ基、フルオロエーテル基およびこれらの組み合わせからなる群から選択されることを除いて上記実施形態のいずれかに従う、コーティングシステム、コーティング組成物、コーティング層、コーティングされた基体、コーティング組成物を製造する方法、コーティング層を形成する方法、コーティングされた基体を製造する方法、コーティング層を修復する方法、およびコーティングされた基体を修復する方法を提供する。
別の実施形態においては、本発明は、コーティング組成物が1種以上のペンダント基を有することを除いて上記実施形態のいずれかに従う、コーティングシステム、コーティング組成物、コーティング層、コーティングされた基体、コーティング組成物を製造する方法、コーティング層を形成する方法、コーティングされた基体を製造する方法、コーティング層を修復する方法、およびコーティングされた基体を修復する方法を提供する。
別の実施形態においては、本発明は、前記コーティング組成物の骨格上に1以上のグラフト基、例えば、1種以上のグラフト化ポリマーシロキサン基があることを除いて上記実施形態のいずれかに従う、コーティングシステム、コーティング組成物、コーティング層、コーティングされた基体、コーティング組成物を製造する方法、コーティング層を形成する方法、コーティングされた基体を製造する方法、コーティング層を修復する方法、およびコーティングされた基体を修復する方法を提供する。
別の実施形態においては、本発明は、1種以上のペンダント基が脂肪族アルキル基、脂肪族ポリエステル基、脂肪族アクリラート基、シロキサン基、フルオロ基、フルオロエーテルおよびこれらの組み合わせからなる群から選択されることを除いて上記実施形態のいずれかに従う、コーティングシステム、コーティング組成物、コーティング層、コーティングされた基体、コーティング組成物を製造する方法、コーティング層を形成する方法、コーティングされた基体を製造する方法、コーティング層を修復する方法、およびコーティングされた基体を修復する方法を提供する。
【0009】
別の実施形態においては、本発明は、(a)成分がポリエステルポリオール、アクリルポリオールもしくはカルボナートポリオール、およびこれらの組み合わせの1種以上をさらに含むことを除いて上記実施形態のいずれかに従う、コーティングシステム、コーティング組成物、コーティング層、コーティングされた基体、コーティング組成物を製造する方法、コーティング層を形成する方法、コーティングされた基体を製造する方法、コーティング層を修復する方法、およびコーティングされた基体を修復する方法を提供する。
別の実施形態においては、本発明は、1種以上のポリイソシアナートが少なくとも2個の反応性イソシアナート基を有することを除いて上記実施形態のいずれかに従う、コーティングシステム、コーティング組成物、コーティング層、コーティングされた基体、コーティング組成物を製造する方法、コーティング層を形成する方法、コーティングされた基体を製造する方法、コーティング層を修復する方法、およびコーティングされた基体を修復する方法を提供する。
別の実施形態においては、本発明は、コーティング組成物が溶媒、水もしくはこれらの組み合わせの1種以上をさらに含むことを除いて上記実施形態のいずれかに従う、コーティングシステム、コーティング組成物、コーティング層、コーティングされた基体、コーティング組成物を製造する方法、コーティング層を形成する方法、コーティングされた基体を製造する方法、コーティング層を修復する方法、およびコーティングされた基体を修復する方法を提供する。
別の実施形態においては、本発明は、コーティング組成物が、コーティング組成物の重量を基準にして30〜90重量%の固形分量を含むことを除いて上記実施形態のいずれかに従う、コーティングシステム、コーティング組成物、コーティング層、コーティングされた基体、コーティング組成物を製造する方法、コーティング層を形成する方法、コーティングされた基体を製造する方法、コーティング層を修復する方法、およびコーティングされた基体を修復する方法を提供する。
【0010】
別の実施形態においては、本発明は、ポリオールが分子あたり平均3〜9個のヒドロキシル基を有することを除いて上記実施形態のいずれかに従う、コーティングシステム、コーティング組成物、コーティング層、コーティングされた基体、コーティング組成物を製造する方法、コーティング層を形成する方法、コーティングされた基体を製造する方法、コーティング層を修復する方法、およびコーティングされた基体を修復する方法を提供する。
別の実施形態においては、本発明は、ポリオールが分子あたり平均3〜6個のヒドロキシル基を有することを除いて上記実施形態のいずれかに従う、コーティングシステム、コーティング組成物、コーティング層、コーティングされた基体、コーティング組成物を製造する方法、コーティング層を形成する方法、コーティングされた基体を製造する方法、コーティング層を修復する方法、およびコーティングされた基体を修復する方法を提供する。
別の実施形態においては、本発明は、ポリオールが分子あたり平均3〜5個のヒドロキシル基を有することを除いて上記実施形態のいずれかに従う、コーティングシステム、コーティング組成物、コーティング層、コーティングされた基体、コーティング組成物を製造する方法、コーティング層を形成する方法、コーティングされた基体を製造する方法、コーティング層を修復する方法、およびコーティングされた基体を修復する方法を提供する。
別の実施形態においては、本発明は、ポリオールが0℃〜−100℃の範囲のTを有することを除いて上記実施形態のいずれかに従う、コーティングシステム、コーティング組成物、コーティング層、コーティングされた基体、コーティング組成物を製造する方法、コーティング層を形成する方法、コーティングされた基体を製造する方法、コーティング層を修復する方法、およびコーティングされた基体を修復する方法を提供する。
別の実施形態においては、本発明は、ポリオールが0℃〜−70℃の範囲のTを有することを除いて上記実施形態のいずれかに従う、コーティングシステム、コーティング組成物、コーティング層、コーティングされた基体、コーティング組成物を製造する方法、コーティング層を形成する方法、コーティングされた基体を製造する方法、コーティング層を修復する方法、およびコーティングされた基体を修復する方法を提供する。
別の実施形態においては、本発明は、ポリオールが−35℃〜−70℃の範囲のTを有することを除いて上記実施形態のいずれかに従う、コーティングシステム、コーティング組成物、コーティング層、コーティングされた基体、コーティング組成物を製造する方法、コーティング層を形成する方法、コーティングされた基体を製造する方法、コーティング層を修復する方法、およびコーティングされた基体を修復する方法を提供する。
別の実施形態においては、本発明は、ポリオールが300〜3000ダルトンの範囲の数平均分子量を有することを除いて上記実施形態のいずれかに従う、コーティングシステム、コーティング組成物、コーティング層、コーティングされた基体、コーティング組成物を製造する方法、コーティング層を形成する方法、コーティングされた基体を製造する方法、コーティング層を修復する方法、およびコーティングされた基体を修復する方法を提供する。
別の実施形態においては、本発明は、ポリオールが300〜1500ダルトンの範囲の数平均分子量を有することを除いて上記実施形態のいずれかに従う、コーティングシステム、コーティング組成物、コーティング層、コーティングされた基体、コーティング組成物を製造する方法、コーティング層を形成する方法、コーティングされた基体を製造する方法、コーティング層を修復する方法、およびコーティングされた基体を修復する方法を提供する。
【0011】
別の実施形態においては、本発明は、コーティング組成物が1種以上の添加剤、1種以上の充填剤、1種以上の触媒、1種以上の流動助剤、1種以上の接着促進剤、1種以上の顔料、1種以上のUV安定化剤およびこれらの組み合わせをさらに含むことを除いて上記実施形態のいずれかに従う、コーティングシステム、コーティング組成物、コーティング層、コーティングされた基体、コーティング組成物を製造する方法、コーティング層を形成する方法、コーティングされた基体を製造する方法、コーティング層を修復する方法、およびコーティングされた基体を修復する方法を提供する。
別の実施形態においては、本発明は、コーティング組成物が0.8〜1.5の範囲のOH/NCOモル比を含むことを除いて上記実施形態のいずれかに従う、コーティングシステム、コーティング組成物、コーティング層、コーティングされた基体、コーティング組成物を製造する方法、コーティング層を形成する方法、コーティングされた基体を製造する方法、コーティング層を修復する方法、およびコーティングされた基体を修復する方法を提供する。
別の実施形態においては、本発明は、コーティング組成物が0.9〜1.1の範囲のOH/NCOモル比を含むことを除いて上記実施形態のいずれかに従う、コーティングシステム、コーティング組成物、コーティング層、コーティングされた基体、コーティング組成物を製造する方法、コーティング層を形成する方法、コーティングされた基体を製造する方法、コーティング層を修復する方法、およびコーティングされた基体を修復する方法を提供する。
【0012】
別の実施形態においては、本発明は、コーティング層が45℃未満、例えば、−10〜45℃のTを有することを除いて上記実施形態のいずれかに従う、コーティングシステム、コーティング組成物、コーティング層、コーティングされた基体、コーティング組成物を製造する方法、コーティング層を形成する方法、コーティングされた基体を製造する方法、コーティング層を修復する方法、およびコーティングされた基体を修復する方法を提供する。
別の実施形態においては、本発明は、コーティング層が20〜200秒の範囲のペンデュラム硬度を有することを除いて上記実施形態のいずれかに従う、コーティングシステム、コーティング組成物、コーティング層、コーティングされた基体、コーティング組成物を製造する方法、コーティング層を形成する方法、コーティングされた基体を製造する方法、コーティング層を修復する方法、およびコーティングされた基体を修復する方法を提供する。
別の実施形態においては、本発明は、コーティング層が80℃を超える範囲の酸エッチング耐性温度を有することを除いて上記実施形態のいずれかに従う、コーティングシステム、コーティング組成物、コーティング層、コーティングされた基体、コーティング組成物を製造する方法、コーティング層を形成する方法、コーティングされた基体を製造する方法、コーティング層を修復する方法、およびコーティングされた基体を修復する方法を提供する。
別の実施形態においては、本発明は、コーティング層が(本明細書に記載される試験に従って)30〜100パーセント、例えば、30〜90パーセント、または別の場合には30〜75パーセントの範囲の光沢回復率を有することを除いて上記実施形態のいずれかに従う、コーティングシステム、コーティング組成物、コーティング層、コーティングされた基体、コーティング組成物を製造する方法、コーティング層を形成する方法、コーティングされた基体を製造する方法、コーティング層を修復する方法、およびコーティングされた基体を修復する方法を提供する。
別の実施形態においては、本発明は、コーティング層が(本明細書に記載される試験に従って)30〜100パーセント、例えば、30〜90パーセント、または別の場合には30〜75パーセントの範囲の光沢保持率を有することを除いて上記実施形態のいずれかに従う、コーティングシステム、コーティング組成物、コーティング層、コーティングされた基体、コーティング組成物を製造する方法、コーティング層を形成する方法、コーティングされた基体を製造する方法、コーティング層を修復する方法、およびコーティングされた基体を修復する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、増大した硬度および向上した化学物質耐性と共に、向上したスクラッチおよびマー耐性を提供する、増大した架橋密度の非常に可撓性のNOPベースのポリマー鎖と、ペンダント基および/またはグラフト基とを有する本発明のコーティング組成物の形態図である。
【図2】図2は増大した架橋密度を有する従来のコーティング組成物の形態図であり、この増大した架橋密度は増大した硬度および向上した化学物質耐性をもたらすが劣ったスクラッチおよびマー耐性をもたらす。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の例示の目的のために図面において典型的な形態が示されるが、本発明は示されているちょうどその配置および図に限定されないと理解される。
【0015】
本発明の詳細な説明
本発明はコーティングシステム、コーティング組成物、コーティング層、コーティングされた基体、コーティング組成物を製造する方法、コーティング層を形成する方法、コーティングされた基体を製造する方法、およびコーティングされた基体を修復する方法である。
【0016】
本発明に従うコーティングシステムは、(a)分子あたり平均3個以上のヒドロキシル基、300〜3000ダルトンの範囲の平均分子量、0℃未満の範囲のTを有する1種以上の天然油由来ポリオール(NOP)と、(b)1種以上のポリイソシアナートとを含む。
【0017】
本発明に従うコーティング組成物は、(a)分子あたり平均3個以上のヒドロキシル基、300〜3000ダルトンの範囲の分子量、0℃未満の範囲のTを有する1種以上の天然油由来ポリオール(NOP)と、(b)1種以上のポリイソシアナートとの反応生成物である。
【0018】
本発明のコーティング組成物は優れた硬度/環境エッチング耐性を提供し、同時に優れたスクラッチおよびマー耐性、並びに/または回復を生じさせる。この特性のバランスが可能なのは、本発明のコーティング組成物がa)NOPの低いTgに起因する可撓性;b)NOPの脂肪特性に起因する疎水性;およびc)理想的なレベルの反応性ヒドロキシル基でのNOPの置換に起因する高い架橋密度を含む特徴の独特のバランスを提供するからである。
【0019】
天然油由来(ベース)ポリオール
天然油由来(ベース)ポリオールは天然および/または遺伝的に改変された植物種子油および/または動物ソースの脂肪のような再生可能原料資源をベースにするもしくはこれに由来するポリオールである。このような油および/または脂肪は、脂肪酸がグリセロールに結合したトリグリセリドから概してなる。好ましいのは、トリグリセリド中に少なくとも約70パーセントの不飽和脂肪酸を有する植物油である。天然産物は少なくとも約85重量パーセントの不飽和脂肪酸を含む場合がある。好ましい植物油の例には、これに限定されないが、例えば、ヒマシ油、大豆油、オリーブ油、落花生油、菜種油、トウモロコシ油、ゴマ油、綿実油、キャノーラ油、ベニバナ油、亜麻仁油、パーム油、グレープシード油、ブラックキャラウェー油、カボチャ核油、ルリヂサ種子油、ウッド胚芽油、アプリコット核油、ピスタチオ油、アーモンド油、マカダミアナッツ油、アボカド油、サジー油、大麻油、ヘーゼルナッツ油、月見草油、野バラ油、アザミ油、クルミ油、ヒマワリ油、ジャトロファ種子油またはこれらの組み合わせが挙げられる。さらに、藻類のような生命体から得られる油も使用されうる。動物産物の例には、ラード、牛脂、魚油およびこれらの混合物が挙げられる。植物および動物ベースの油/脂肪の組み合わせも使用されうる。
【0020】
天然油ベースポリオールを製造するためにいくつかの化学物質が使用されうる。再生可能な資源のこのような改変には、これに限定されないが、例えば、エポキシ化、ヒドロキシル化、オゾン分解、エステル化、ヒドロホルミル化またはアルコキシル化が挙げられる。このような改変は当該技術分野において一般的に知られている。
【0021】
ある実施形態においては、天然油ベースポリオールは、動物もしくは植物油/脂肪がエステル交換にかけられ、そして構成要素の脂肪酸エステルが回収される多工程プロセスによって得られる。この工程の後に、構成要素の脂肪酸エステル中の炭素炭素二重結合の還元的ヒドロホルモリション(hydroformolytion)が行われて、ヒドロキシメチル基を形成し、次いで、ヒドロキシメチル化脂肪酸エステルと好適な開始剤化合物との反応によってポリエステルもしくはポリエーテル/ポリエステルを形成する。このような多工程プロセスは当該技術分野において一般的に知られており、例えば、国際公開第2004/096882号および第2004/096883号に記載されている。この多工程プロセスは少なくとも疎水性部分を有するポリオールの生産をもたらす。
【0022】
天然油ベースポリオールの生産のための多工程プロセスにおける使用のための開始剤は従来の石油ベースポリオールの生産に使用されるあらゆる開始剤であることができる。この開始剤は、例えば、1,3シクロヘキサンジメタノール;1,4シクロヘキサンジメタノール;ネオペンチルグリコール;1,2−プロピレングリコール;トリメチロールプロパン;ペンタエリスリトール;ソルビトール;スクロース;グリセロール;ジエタノールアミン;アルカンジオール、例えば、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ブタンジオール;1,4−シクロヘキサンジオール;2,5−ヘキサンジオール;エチレングリコール;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール;ビス−3−アミノプロピルメチルアミン;エチレンジアミン;ジエチレントリアミン;9(1)−ヒドロキシメチルオクタデカノール、1,4−ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン;8,8−ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5,2,1,02,6]デセン;ジメロールアルコール(Henkel Corporationから入手可能な36炭素ジオール);水素化ビスフェノール;9,9(10,10)−ビスヒドロキシメチルオクタデカノール;1,2,6−ヘキサントリオールおよびこれらの組み合わせからなる群から選択されうる。別の場合には、開始剤は、グリセロール;エチレングリコール;1,2−プロピレングリコール;トリメチロールプロパン;エチレンジアミン;ペンタエリスリトール;ジエチレントリアミン;ソルビトール;スクロース;または、上記化合物のいずれか中に存在するアルコールもしくはアミン基の少なくとも1つがエチレンオキシド、プロピレンオキシドもしくはこれらの混合物と反応させられている上記化合物のいずれか;並びにこれらの組み合わせからなる群から選択されうる。別の場合には、開始剤はグリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、スクロース、ソルビトール、および/またはこれらの混合物である。
【0023】
ある実施形態においては、開始剤はエチレンオキシドもしくはエチレンオキシドと少なくとも1種の他のアルキレンオキシドとの混合物でアルコキシ化されて、100〜500の分子量を有するアルコキシ化開始剤を生じさせる。
【0024】
少なくとも1種の天然油ベースポリオールの平均ヒドロキシル官能価は3を超えて10までの範囲;3.5〜9の範囲;または別の場合には3.5〜8の範囲;または別の場合には3.5〜7の範囲;または別の場合には3.5〜6の範囲;または別の場合には3.5〜5.5の範囲;または別の場合には3.5〜4.5の範囲である。少なくとも1種の天然油ベースポリオールの平均ヒドロキシル価は約400mgKOH/g未満、好ましくは約100〜約400、より好ましくは約150〜約300である。ある実施形態においては、平均ヒドロキシル価は約250未満である。
【0025】
天然油ベースポリオール中の再生可能原料のレベルは約10〜約100パーセント、通常は約20〜約90パーセントで変動しうる。
【0026】
天然油ベースポリオールはポリオールブレンドの100重量パーセントまでを構成することができる。しかし、ある実施形態においては、天然油ベースポリオールは、ポリオールブレンドの全重量の少なくとも5重量パーセント、少なくとも10重量パーセント、少なくとも25重量パーセント、少なくとも35重量パーセント、少なくとも40重量パーセント、少なくとも50重量パーセント、または少なくとも55重量パーセントを構成しうる。天然油ベースポリオールは一緒にされたポリオールの全重量の40パーセント以上、50重量パーセント以上、60重量パーセント以上、75重量パーセント以上、85重量パーセント以上、90重量パーセント以上、または95重量パーセント以上を構成しうる。2種以上の天然油ベースポリオールの組み合わせが使用されてもよい。
【0027】
25℃で測定される天然油ベースポリオールの粘度は概して約50,000mPa・s未満であり;例えば、25℃で測定される天然油ベースポリオールの粘度は約30,000mPa・s未満であり;または別の場合には、25℃で測定される天然油ベースポリオールの粘度は約25,000mPa・s未満であり;または別の場合には、25℃で測定される天然油ベースポリオールの粘度は約15,000mPa・s未満であり;または別の場合には、25℃で測定される天然油ベースポリオールの粘度は約10,000mPa・s未満であり;または別の場合には、25℃で測定される天然油ベースポリオールの粘度は約5,000mPa・s未満であり;または別の場合には、25℃で測定される天然油ベースポリオールの粘度は約3000mPa・s未満である。
【0028】
天然油ベースポリオールは300〜3000ダルトン、例えば、500〜2000ダルトン;または別の場合には500〜1500ダルトン;または別の場合には800〜1500ダルトンの範囲の数平均分子量を有することができる。
【0029】
NOPは以下のいずれとブレンドされてもよい:脂肪族および芳香族ポリエステルポリオール、例えば、カプロラクトンベースのポリエステルポリオール、ポリエステル/ポリエーテルハイブリッドポリオール、PTMEG−ベースのポリエーテルポリオール;エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、およびこれらの混合物をベースにしたポリエーテルポリオール;ポリカルボナートポリオール;ポリアセタールポリオール、ポリアクリラートポリオール;ポリエステルアミドポリオール;ポリチオエーテルポリオール;ポリオレフィンポリオール、例えば、飽和もしくは不飽和ポリブタジエンポリオール。
【0030】
天然油ベースポリオールは0℃未満;例えば、−20℃未満;または別の場合には−35℃未満;または別の場合には−50℃未満;または別の場合には−55℃未満;または別の場合には−60℃未満;または別の場合には−65℃未満の範囲のガラス転移温度(T)を有することができる。ある実施形態においては、天然油ベースポリオールは−70℃〜−35℃の範囲のガラス転移温度(T)を有することができる。
【0031】
ポリマー鎖の可撓性は配合物に使用されるNOPポリオールのTgによって影響される。この可撓性はコーティングにおける架橋間でのセグメントの高い可動性を助け、これは優れたスクラッチおよびマー回復を助けることができる。
【0032】
天然油ベースポリオールは典型的には疎水性を有する。ポリオール骨格の疎水性はコーティングの固有の環境エッチング耐性に対して重要である。本発明のNOP組成物は水性媒体の侵入を防ぐ飽和炭化水素ポリマー鎖である。よって、本発明のNOPベースコーティングは優れた酸エッチング耐性、耐水性および優れた耐候性を提供する。
【0033】
天然油ベースポリオールは分子あたり平均3個以上のヒドロキシル基を有し、例えば、天然油ベースポリオールは分子あたり平均3〜10個のヒドロキシル基を有し、または別の場合には天然油ベースポリオールは分子あたり平均3〜9個のヒドロキシル基を有し、または別の場合には天然油ベースポリオールは分子あたり平均3〜6個のヒドロキシル基を有し、または別の場合には天然油ベースポリオールは分子あたり平均3〜5個のヒドロキシル基を有し、または別の場合には天然油ベースポリオールは分子あたり平均3〜4個のヒドロキシル基を有し、または別の場合には天然油ベースポリオールは分子あたり平均4〜10個のヒドロキシル基を有し、または別の場合には天然油ベースポリオールは分子あたり平均4〜9個のヒドロキシル基を有し、または別の場合には天然油ベースポリオールは分子あたり平均4〜8個のヒドロキシル基を有し、または別の場合には天然油ベースポリオールは分子あたり平均4〜7個のヒドロキシル基を有し、または別の場合には天然油ベースポリオールは分子あたり平均4〜6個のヒドロキシル基を有し、または別の場合には天然油ベースポリオールは分子あたり平均3〜10個のヒドロキシル基を有し、または別の場合には天然油ベースポリオールは分子あたり平均3〜10個のヒドロキシル基を有する。
【0034】
このようなヒドロキシル基は架橋のための1以上の部位を提供するので、ポリオールの分子あたりのヒドロキシル基の数は重要である。可撓性で疎水性のNOPポリオールに由来する高度に架橋したコーティングは素早い弾性回復(自己修復)を有しうる。NOPベースコーティングの可撓性特性のせいで、軟質NOPセグメントはエネルギーを貯めることができ、かつ1以上の損傷の後でのコーティングの回復を助けることができる。
【0035】
NOPのための原料としての天然油ベースモノマーは、典型的には、(1)サチュラート(saturates)とも称される、ヒドロキシ基を有しない脂肪酸エステル0.01〜2重量パーセント、(2)モノヒドロキシ基を含む脂肪酸エステル1〜90重量パーセント;(3)ジ−ヒドロキシ基を含む脂肪酸エステル5〜95重量パーセント;(4)複数のヒドロキシ基を含む脂肪酸エステル0〜5重量パーセント(ここで、用語「複数の」とは3以上を意味する)を含む。ジヒドロキシ基を含む脂肪族鎖の量を、例えば、30〜95重量パーセントの範囲の量に増大させるために、天然油ベースモノマーはさらなる蒸留にかけられうる。
【0036】
シード油モノマーはCH−A−Hを含み、A1、A2およびA3からなる群から選択されることができ、A1はヒドロキシル基を有しないシード油モノマーのフラクションであり、A2は少なくとも1つのヒドロキシル基を有するシード油モノマーのフラクションであり、およびA3は少なくとも2つのヒドロキシル基を有するシード油モノマーのフラクションである。少量の他のフラクションは3より多いヒドロキシル基を有して存在しうる。しかし、存在する過半量のフラクションは以下の通りであり:
【化1】

式中、m、n、v、r、s、a、b、cは整数であり、mは0〜35であり、nは6〜30であり、vおよびrは0〜35であり、sは6〜30である。
【0037】
シード油モノマーについてはa、b、cは1である。しかし、脂肪酸エステルモノマー由来天然油ポリオールについては、a、b、cは1〜35の範囲であり得る。
【0038】
モノマーの好ましい終端はnおよびsによって特定され、6〜30の範囲であるアルキル基である。当業者のために、第一級ヒドロキシルを含むこのようなモノマーは部分的にさらに反応させられて、シロキサン、フルオロ、フルオロエーテル、アクリラート、および他のアルキル、アルケニル、アリール基のような他の基による鎖末端にこのヒドロキシルのいくつかを終結させ、追加の鎖末端を作成することができる。簡潔さの目的のために、このような鎖終結は一般式RX(式中、Rはアルキル、アルケニル(例えば、ビニル)アリール(例えば、フェニル)、シロキサン、フルオロ、フルオロエーテル、アクリラートおよびこれらの組み合わせの基からのものであり;tは2〜30であり、Xは1以上のヒドロキシル基と反応することができる反応性基であり、−COOH基、グリシジル基、イソシアナート、ハライドなどから選択される)の化合物によって達成されうる。
【0039】
天然油ベースポリオールは分子あたり2個以上の(非反応性)ペンダント基を有し、例えば、天然油ベースポリオールは分子あたり3〜6個のペンダント基を有し、または別の場合には天然油ベースポリオールは分子あたり3〜5個のペンダント基を有し、または別の場合には天然油ベースポリオールは分子あたり3〜4個のペンダント基を有する。本明細書において使用される場合、ペンダント基とは天然油ベースポリオールの骨格から伸びており、かつ反応性基、例えば、1以上のヒドロキシル基を含まないアルキル官能基をいう。本発明のコーティングが一旦生じると、ペンダント基は互いに自由に会合することができるが、そのペンダント基は非反応性である。ペンダント基は自由に動き、図1にさらに示されるように、破壊したポリマー鎖によって典型的に架橋されることができない領域に伸びる。NOPベースコーティング組成物が架橋される場合には、ペンダント基は可動性を維持し、このような自由な可動性は、そのコーティングが硬質である場合でさえ、コーティングの損傷した部分への材料の流動を助けることができる。
【0040】
イソシアナート:
ポリイソシアナート化合物の例には、2,4−トルイレンジイソシアナート、2,6−トルイレンジイソシアナート、m−フェニレンジイソシアナート、p−フェニレンジイソシアナート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアナート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアナート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニレンジイソシアナート、3,3’−ジクロロ−4,4’−ビフェニレンジイソシアナート、1,5−ナフタレンジイソシアナート、1,5−テトラヒドロナフタレンジイソシアナート、テトラメチレンジイソシアナート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアナート、ドデカメチレンジイソシアナート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート、1,3および1,4−ビス(イソシアナトメチル)イソシアナート、キシリレンジイソシアナート、テトラメチルキシリレンジイソシアナート、水素化キシリレンジイソシアナート、リシンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート、これらのダイマー、これらのトリマー、これらのテトラマー、これらのペンタマー、並びにこれらのより高次の異性体および/またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0041】
溶媒
溶媒はあらゆる溶媒であることができ、例えば、溶媒は有機溶媒であることができる。典型的な溶媒には、これに限定されないが、アセタートベースの溶媒、例えば、酢酸ブチル、酢酸エチル;エステルベースの溶媒、例えば、ブチルエステル;ケトンベースの溶媒、例えば、アセトン、メチルエチルケトン;グリコールエーテルベースの溶媒、芳香族ベースの溶媒、例えば、トルエンなどが挙げられる。典型的な溶媒には、これに限定されないが、ジプロピレングリコールジメチルエーテルが挙げられ、これはザダウケミカルカンパニーから商品名PROGLYDE登録商標DMMで市販されており、トリプロピレングリコールジメチルエーテルである。ある実施形態においては、溶媒は水であるか、または水と1種以上の溶媒との混合物である。
【0042】
追加の溶媒には、これに限定されないが、プロピレングリコールメチルエーテルアセタート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセタート、プロピレングリコールジアセタート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールn−ブチルエーテルアセタート、エチレングリコールn−ブチルエーテルアセタートが挙げられる。
【0043】
グラフト官能基
コーティングシステムは1以上のグラフト官能基をさらに含むことができる。1以上のグラフト官能基とは、疎水性官能基、親水性官能基もしくはこの組み合わせを有する骨格に言及し、疎水性官能基はアルキル官能基、シラン官能基、シロキサン官能基、フルオロ官能基、フルオロエーテルおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される官能基に由来し、ならびに親水性官能基はアルコキシル化官能基、エステル官能基、アクリラート官能基およびこれらの組み合わせからなる群から選択される官能基に由来する。グラフト官能基は1以上のヒドロキシ基を必要とするが、ただし、1より多くないヒドロキシ基は末端ヒドロキシ基であり、その結果グラフト官能基は1以上のイソシアナート基と反応することができる。グラフト官能基は具体的なグラフト官能基に応じた任意の分子量を有することができ、例えば、グラフト官能基は100〜10,000ダルトン、例えば、100〜500ダルトンの範囲の分子量を有することができる。
【0044】
簡潔さの目的のために、このようなグラフト化は一般式RYの化合物によって達成されることができ、式中、Rはアルキル、アルケニル(例えば、ビニル)、アリール(例えば、フェニル)シロキサン、フルオロ、フルオロエーテル、アクリラートおよびこれらの組み合わせからなる群から選択され、gは2〜30であり、Yは−OH、−SH、−COOH、−NHR(Rは水素もしくはアルキル基である)をはじめとするイソシアナート反応性官能基である。
【0045】
本発明に有用な好ましいシロキサン化合物は
Y−(CH−O−[(SiO)(CH−R’
によって表されることができ、式中、Yはすでに定義されたとおりであり、pは1〜20の整数であり、qは1〜100の整数であり、並びにR’はアルキル基である。
【0046】
ある実施形態においては、グラフト官能基は1以上のヒドロキシ基を必要とするが、ただし、2より多くないヒドロキシ基は末端ヒドロキシ基であり、または別の場合には、1より多くないヒドロキシ基は末端ヒドロキシ基であり、その結果グラフト官能基は1以上のイソシアナート基と反応することができる。
【0047】
別の実施形態においては、グラフト官能基は
【化2】

であり、
R’−は、アルキル基C1−C12であり、
Y’−は、
【化3】

からなる群から選択される。
式中、mは1〜100の整数である。
【0048】
他の追加の任意成分
追加の任意成分には、これに限定されないが、1種以上の充填剤、1種以上の触媒システム、1種以上の接着促進剤、1種以上の流展剤(flow leveling aid)、1種以上の顔料、1種以上のつや消し剤および2以上のこれらの組み合わせが挙げられうる。
【0049】
本発明のコーティング組成物を製造する方法
場合によって1種以上の他のポリオールとブレンドされている上述のような1種以上のNOPは、場合によっては、1種以上の溶媒に溶解されることができ、そして上述のような1種以上のイソシアナート並びに上述のような1種以上の追加の成分と接触させられ、次いで緊密に混合されて均一な組成物を形成し、それにより本発明のコーティング組成物を製造することができる。
【0050】
別の場合においては、場合によって1種以上の他のポリオールとブレンドされている、上述のような1種以上のNOP、1以上のグラフト官能基は場合によっては、1種以上の溶媒に溶解されることができ、そして上述のような1種以上のイソシアナート並びに上述のような1種以上の追加の成分と接触させられ、次いで緊密に混合されて均一な組成物を形成し、それにより本発明のコーティング組成物を製造することができる。
【0051】
最終使用用途
コーティング組成物は膜層に形成されうる。この膜層は何らかのコーティング方法によって基体上に形成されうる。このようなコーティング方法には、これに限定されないが、噴霧、浸漬、ローリング、印刷、ドローイング、刷毛塗り、浸漬および当業者に一般的に知られている他の何らかの従来技術が挙げられる。コーティング組成物は約5℃を超える範囲の温度で構造体の1以上の表面に適用されうる。
【0052】
本発明に従ってコーティングされた物品は基体;およびこの基体の1以上の表面に結合したコーティング組成物であって、上述のような本発明のコーティング組成物から生じたコーティング組成物を含む。基体の1以上の表面は、本発明の本発明のコーティングシステムの適用の前に、例えば、ベースコートで下塗りもしくはプレコートすることにより処理されうる。基体はあらゆる基体であってよく、例えば、基体は天然もしくは合成物質を含むことができる。典型的な基体には、これに限定されないが、木材、コンクリート、プラスチック、ガラス、金属、皮革およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0053】
本発明のコーティング組成物は膜形成性組成物である。本発明のコーティング組成物から生じた膜は1μm〜500μm;または別の場合には1〜200μm;または別の場合には1〜100μm;または別の場合には20μm〜50μmの範囲の厚みを有することができる。
【0054】
本発明のコーティング組成物から生じ、場合によっては基体と結合している膜は様々な向上した特性、例えば、向上したスクラッチおよびマー耐性、並びに向上したスクラッチおよびマー回復、すなわち自己修復特性を有することができる。
【0055】
例えば、本発明のコーティング組成物から生じ、場合によっては基体と結合している膜は、以下に記載されるスクラッチおよびマー耐性試験に従って測定して、光沢保持率について測定される場合、30パーセントを超えて100パーセント以下の範囲のスクラッチおよびマー耐性を有することができる。
【0056】
例えば、本発明のコーティング組成物から生じ、場合によっては基体と結合している膜は、以下に記載されるスクラッチおよびマー回復試験に従って、30パーセントを超えて100パーセント以下の範囲のスクラッチおよびマー回復率を有することができる。
【0057】
例えば、本発明のコーティング組成物から生じ、場合によっては基体と結合している膜は、以下に記載されるスクラッチ回復試験に従って、30パーセントを超えて100パーセント以下の範囲の促進されたスクラッチおよびマー回復率を有することができる。
【0058】
本発明のコーティング組成物から生じ、場合によっては基体と結合している膜は向上したペンデュラム硬度特性をさらに有することができ、例えば、本発明のコーティング組成物から生じた膜はASTM−D4366に従って20秒〜200秒の範囲のペンデュラム硬度を有することができる。
【0059】
本発明のコーティング組成物から生じ、場合によっては基体と結合している膜は向上した溶媒耐性特性をさらに有することができ、例えば、本発明のコーティング組成物から生じた膜はASTM−D5402に従って測定して、100を超える;例えば、200を超えるMEK往復摩擦による溶媒耐性を有することができる。
【0060】
本発明のコーティング組成物から生じ、場合によっては基体と結合している膜は向上した酸エッチング耐性特性をさらに有することができ、例えば、本発明のコーティング組成物から生じた膜は評定No.1に基づく40℃を超える範囲;または別の場合には評定No.4に基づく80℃を超える範囲の酸エッチング耐性を有することができる。
【0061】
最終用途適用には、これに限定されないが、家具、例えば、テーブル、キャビネット;建築材料、例えば、木製床材、配管;電化製品、例えば、冷蔵庫の取っ手;自動車外装部品および内装部品、並びに消費者用製品、例えば、携帯電話、バッグ、プラスチックケーシングが挙げられる。
【実施例】
【0062】
以下の実施例は本発明を説明するが、本発明の範囲を限定することを意図していない。本発明の実施例は本発明のポリウレタンコーティング組成物が適切な硬度および優れたスクラッチおよびマー耐性を有すると同時に、自己修復特性を示すことを示す。
【0063】
NOPポリオールの合成
天然油ポリオール(NOP)はダイズ油由来の脂肪酸メチルエステル(FAMES)から3つの反応工程で製造された。FAMESはまずアルデヒド中間体にヒドロホルミル化され、次いで第2の工程においてダイズモノマーに水素化される。
【0064】
次いで、得られたモノマーは好適なグリコールでエステル交換される。このプロセスにおいては、ポリオール分子量はモノマーのグリコール開始剤との縮合およびモノマーの自己縮合の双方によって増大する。モノマーの平均官能価およびグリコール開始剤に対するその比率を制御することにより、ポリオール分子量および平均官能価の双方は系統的に制御されうる。さらに、開始剤の構造は所望の性能特性または適合性を達成するように調節されうる。典型的な開始剤は、1,6−ヘキサンジオールおよびUNOXOL商標ジオールのような反応性第一級ヒドロキシル基を含むことができる。UNOXOL商標ジオールは液体環式脂肪族ジオールであり、これは1,3−シクロヘキサンジメタノールと1,4−シクロヘキサンジメタノールとの約50:50混合物であり、これはシスおよびトランス異性体の混合物である。
【0065】
本発明および比較のコーティング組成物の製造
表1に報告されるコーティング組成物配合成分が準備された。触媒(ジブチルスズジラウラート)および溶媒(酢酸n−ブチルおよびエチル3−エトキシプロピオナート)が10分間ポリオール(必要な場合には、溶融させるために少なくとも1時間の間70〜90℃でオーブン中で加熱された)と混合された。次いで、ポリイソシアナート(最初にHDI、次いでIPDI)を添加し、さらに10分間混合した。この配合物を攪拌プレートから取り外し、キャップを取り外し、そしてコーティングを製造する前にこの配合物を5分間脱ガスさせた。
【0066】
コーティングパネル
試験のほとんどについて、コーティングはエポキシコーティングした金属パネル上に製造された。動的機械的分析およびFTIR分析のために自立膜も製造された。基体はドローダウンプラットフォーム上に配置された。大型パネルについてはガラスクリップボードが使用された。スライドガラスおよびテーバー(taber)パネルのために、ガラスプレートが平らなブロック上に配置され、スライドガラスがそのガラスプレートの底に取り付けられ、基体がコーティングされる間にコーティングされた基体が滑らないようにされた。プラスチックトランスファーピペットを用いて基体の頂部にコーティング組成物が適用された(完全なカバレッジを確実にするために大型パネルをコーティングする場合には中央部および下端にも適用された)。4.4milワイヤロッドバー(#44)がパネルの頂部で、クリップ付近に配置され、停止することなくゆっくりとパネル上で引き下ろされた。先端が狭くなった鉗子を用いて、コーティングされたパネルがコーティングプラットフォームから取り外され、プレート上に置かれオーブン内に入れられた。コーティングされた基体は70℃に予熱されたオーブン内に4時間にわたって直接配置された。4時間後、コーティングされた基体はオーブンから取り出され、試験前に室温で最低7日間硬化させられた。
【0067】
発明実施例1
精製されたダイズモノマーと共に、開始剤としてトリメチロールプロパン(TMP)が使用されて、ポリオール(パートA)を得て、パートBとしてイソホロンジイソシアナート(IPDI)およびヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)の混合物を得た。100ppmの触媒(ジブチルスズジラウラート)および溶媒(酢酸n−ブチルおよびエチル3−エトキシプロピオナート)の混合物が使用されて、最終配合物中の65%固形分を得た。
【0068】
発明実施例2
精製ダイズモノマーと共に、開始剤として1,4−シクロヘキサンジメタノール(CHDM)が使用されて、ポリオール(パートA)を得て、パートBとしてイソホロンジイソシアナート(IPDI)およびヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)の混合物を得た。100ppmの触媒(ジブチルスズジラウラート)および溶媒(酢酸n−ブチルおよびエチル3−エトキシプロピオナート)の混合物が使用されて、最終配合物中の65%固形分を得た。
【0069】
比較例1
DC5120ポリオール(パートA)およびDH62(パートB)を用いた市販の自己再仕上げクリアコート。
【0070】
比較例2
市販のアクリルポリオールJoncryl 945がパートAとして使用され、パートBとしてイソホロンジイソシアナート(IPDI)およびヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)の混合物を使用した。100ppmの触媒(ジブチルスズジラウラート)および溶媒(酢酸n−ブチルおよびエチル3−エトキシプロピオナート)の混合物が使用されて、最終配合物中の65%固形分を得た。
【0071】
比較例3
市販のポリエステルポリオールTone310がパートAとして使用され、パートBとしてイソホロンジイソシアナート(IPDI)およびヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)の混合物を使用した。100ppmの触媒(ジブチルスズジラウラート)および溶媒(酢酸n−ブチルおよびエチル3−エトキシプロピオナート)の混合物が使用されて、最終配合物中の65%固形分を得た。
【0072】
比較例4
市販のダイマージオールpripol 2033がパートAとして使用され、パートBとしてイソホロンジイソシアナート(IPDI)およびヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)の混合物を使用した。100ppmの触媒(ジブチルスズジラウラート)および溶媒(酢酸n−ブチルおよびエチル3−エトキシプロピオナート)の混合物が使用されて、最終配合物中の65%固形分を得た。
【0073】
比較例5
パートAとして例4に使用されたポリオールと例5において使用された市販のアクリルとの75/25ブレンド、並びにパートBとしてイソホロンジイソシアナート(IPDI)およびヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)の混合物。100ppmの触媒(ジブチルスズジラウラート)および溶媒(酢酸n−ブチルおよびエチル3−エトキシプロピオナート)の混合物が使用されて、最終配合物中の65%固形分を得た。
【0074】
【表1】

【0075】
発明実施例1〜3および比較例1〜4はその性能特性について試験され、結果は表2に報告される。
【0076】
【表2】

【0077】
水/水蒸気を用いた自己修復についての実施例
発明実施例4〜5および比較例6〜8についての配合成分が表3に報告される。
【0078】
発明実施例4
精製ダイズモノマーと共に、開始剤としてトリメチロールプロパン(TMP)が使用されてポリオール(パートA)を得て、パートBとしてイソホロンジイソシアナート(IPDI)およびヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)の混合物を得た。100ppmの触媒(ジブチルスズジラウラート)および溶媒(酢酸n−ブチルおよびエチル3−エトキシプロピオナート)の混合物が使用されて、最終配合物中の65%固形分を得た。
【0079】
発明実施例5
精製ダイズモノマーと共に、開始剤としてトリメチロールプロパン(TMP)が使用されてポリオール(パートA)を得て、パートBとしてイソホロンジイソシアナート(IPDI)およびヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)の混合物を得た。100ppmの触媒(ジブチルスズジラウラート)および溶媒(酢酸n−ブチルおよびエチル3−エトキシプロピオナート)の混合物が使用されて、最終配合物中の65%固形分を得た。
【0080】
発明実施例6
精製ダイズモノマーと共に、開始剤として1,4−シクロヘキサンジメタノール(CHDM)が使用されてポリオール(パートA)を得て、パートBとしてイソホロンジイソシアナート(IPDI)およびヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)の混合物を得た。100ppmの触媒(ジブチルスズジラウラート)および溶媒(酢酸n−ブチルおよびエチル3−エトキシプロピオナート)の混合物が使用されて、最終配合物中の65%固形分を得た。
【0081】
比較例5
DC2042ポリオール(パートA)およびDX61(パートB)を用いた市販の自己再仕上げクリアコート。
【0082】
比較例6
パートAとして市販のアクリルポリオールJoncryl 945、およびパートBとしてイソホロンジイソシアナート(IPDI)およびヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)の混合物。100ppmの触媒(ジブチルスズジラウラート)および溶媒(酢酸n−ブチルおよびエチル3−エトキシプロピオナート)の混合物が使用されて、最終配合物中の65%固形分を得た。
【0083】
比較例7
パートAとして市販のポリエステルポリオールTone310、およびパートBとしてイソホロンジイソシアナート(IPDI)およびヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)の混合物を使用した。100ppmの触媒(ジブチルスズジラウラート)および溶媒(酢酸n−ブチルおよびエチル3−エトキシプロピオナート)の混合物が使用されて、最終配合物中の65%固形分を得た。
【0084】
【表3】

【0085】
発明実施例4〜6および比較例5〜7はその性能特性について試験され、結果は表4に報告される。修復プロセスは熱水浴によってさらに早められる。
【0086】
【表4】

【0087】
グラフト化システム:
グラフト化システムについての配合成分
以下の配合成分が提供された:天然油ポリオール(NOP、当量重量165、官能価3.7)、モノ−ジカルビノール末端ポリ−ジメチルシロキサン(PDMS、M.W.:1000g/mol)Gelest Inc.,より、ポリイソシアナートトリマー:Desmodur N3600(HDI)およびDesmodur Z4470BA(IPDI)Bayer Material Scienceより、溶媒:溶媒グレードの酢酸n−ブチル(n−BA)およびエチル3−エトキシプロピオナート(EEP)、ジブチルスズジラウラート(DBTDL)。
【0088】
グラフト化システムについての実験手順:
NCO:OH当量比が1.25:1.0に固定された。好適な量のNOP、PDMS、溶媒および触媒が、磁気攪拌バーを備えた1オンスガラスジャーに計り採られた。溶媒はn−BAおよびEEP混合物(50:50重量%)であり、配合物中の固形分量は70%であった。この溶液を室温で10分間混合した。次いで、HDIトリマーおよびIPDIトリマー(50:50重量%)をこの混合物に添加した。次いで、この溶液をさらに10分間混合した。完全に混合した溶液を攪拌プレートから取り外し、コーティングがキャストされる前に、2〜5分間休ませて、溶液中の気泡のほとんどを除去した。コーティングは、5milドローダウンバーを用いることによりe−コートされたスチールパネル上に製造された。e−コートされたパネルはイソプロパノールですすぐことにより前処理され、空気で乾かされた。このコーティングは、粒子による汚染を最小限にしつつ空気の流れを可能にする様に設計された箱の中で硬化させられた。湿潤膜は試験前に少なくとも7日間周囲条件下で乾燥させられた。表5は実施例の配合物を報告する。
【0089】
【表5】

【0090】
非グラフト化発明実施例1およびグラフト化発明実施例1はその性能特性について試験され、結果が表6に報告される。
【0091】
【表6】

【0092】
試験方法
試験方法は以下を含む:
ガラス転移温度:
コーティングの動的機械的分析がRSAIIIを用いて測定された。この試験は緊張配置で実施された。試験のための膜はキャストされ、測定の前に7日間乾燥させられた。膜は0.5インチの幅にダイカットされた。この膜の厚さは0.4〜0.6mmであった。動的実験は1Hzの周波数で、温度に基づいて歪み%を0.01〜0.5%変動させつつ行われた。tanデルタ対温度曲線から、tanデルタが最大となった温度としてガラス転移温度が採用された。
【0093】
摩耗および光沢測定:
まず、パネルの右上隅にラベルがつけられ、次いで、各面上で端からほぼ3.2cmのところに印がつけられ、光沢計の面上の矢印を置く場所を示した。頂部で開始し、そしてパネルのまわりを時計回りに移動することにより当初の光沢を測定した。(BYKガードナーマイクロ−TRI−光沢計、カタログ番号4520;シリアルナンバー982069)。読み取り値は20°および60°で記録された。
【0094】
第1サイクル:
パネルはCS−10Fグラインディングホイール(複数のパネルを摩耗させる場合には、パネルを摩耗させる前および100サイクルごとの後で、ST−11表面調整(refacing)ストーンを用いて25サイクル、ホイールの表面を新しくした)および500gの重りを用いて10サイクル摩耗され、ダストはキムワイプおよび/またはエアガンで除去された。次いで、頂部で開始しそしてパネルの周りを時計回りに動かすことにより光沢が測定された。(BYKガードナーマイクロ−TRI−光沢計、カタログ番号4520;シリアルナンバー982069)。読み取り値は20°および60°で記録された。パネルはコーティングのTg(フリーの膜のDMA分析によってあらかじめ決定されていた)の10℃上でアニールされた。再び、頂部で開始しそしてパネルの周りを時計回りに動かすことにより光沢が測定された。(BYKガードナーマイクロ−TRI−光沢計、カタログ番号4520;シリアルナンバー982069)。読み取り値は20°および60°で記録された。
【0095】
第2サイクル:
パネルはCS−10Fグラインディングホイール(複数のパネルを摩耗させる場合には、パネルを摩耗させる前および100サイクルごとの後で、ST−11表面調整ストーンを用いて25サイクル、ホイールの表面を新しくした)および500gの重りを用いて25サイクル摩耗され、ダストはキムワイプおよび/またはエアガンで除去された。次いで、頂部で開始しそしてパネルの周りを時計回りに動かすことにより光沢が測定された。(BYKガードナーマイクロ−TRI−光沢計、カタログ番号4520;シリアルナンバー982069)。読み取り値は20°および60°で記録された。パネルはコーティングのTg(フリーの膜のDMA分析によってあらかじめ決定されていた)の10℃上でアニールされた。再び、頂部で開始しそしてパネルの周りを時計回りに動かすことにより光沢が測定された。(BYKガードナーマイクロ−TRI−光沢計、カタログ番号4520;シリアルナンバー982069)。読み取り値は20°および60°で記録された。
【0096】
第3サイクル:
パネルはCS−10Fグラインディングホイール(複数のパネルを摩耗させる場合には、パネルを摩耗させる前および100サイクルごとの後で、ST−11表面調整ストーンを用いて25サイクル、ホイールの表面を新しくした)および500gの重りを用いて100サイクル摩耗され、ダストはキムワイプおよび/またはエアガンで除去された。次いで、頂部で開始しそしてパネルの周りを時計回りに動かすことにより光沢が測定された。(BYKガードナーマイクロ−TRI−光沢計、カタログ番号4520;シリアルナンバー982069)。読み取り値は20°および60°で記録された。パネルはコーティングのTg(フリーの膜のDMA分析によってあらかじめ決定されていた)の10℃上でアニールされた。再び、頂部で開始しそしてパネルの周りを時計回りに動かすことにより光沢が測定された。(BYKガードナーマイクロ−TRI−光沢計、カタログ番号4520;シリアルナンバー982069)。読み取り値は20°および60°で記録された。
【0097】
最終高温アニール:
パネルは60℃で1時間オーブン内に配置された。次いで、頂部で開始しそしてパネルの周りを時計回りに動かすことにより光沢が測定された。(BYKガードナーマイクロ−TRI−光沢計、カタログ番号4520;シリアルナンバー982069)。読み取り値は20°および60°で記録された。パネルは90℃で1時間オーブン内に配置された。次いで、頂部で開始しそしてパネルの周りを時計回りに動かすことにより光沢が測定された。(BYKガードナーマイクロ−TRI−光沢計、カタログ番号4520;シリアルナンバー982069)。読み取り値は20°および60°で記録された。
光沢回復率パーセントに基づく修復率は、「(アニール後の光沢−摩耗後の光沢)×100/摩耗前の当初光沢」として計算された。
光沢保持率パーセントは、「アニール後の光沢×100/摩耗前の当初光沢」として計算された。
【0098】
ガラス上のコーティングのスクラッチおよび回復試験が以下の手順に従って行われ、結果は表6に報告される。スクラッチ先端として球圧子(1.6mm直径)が使用された。この試験はUMT−2摩擦計において1cmの距離にわたって0から1kgに増大する負荷を用いる漸進負荷モードにおいて実施された。使用された速度は6mm/分であった。3つのスクラッチがなされ、そのスクラッチのプロファイルが表面形状測定装置を用いて集められた。スクラッチプロセス中の垂直抗力および剪断力が記録された。次いで、コーティングは様々な時間にわたってコーティングのTgより10℃上のオーブン内に配置された。スクラッチの深さの回復率はDekTek表面形状測定装置を用いて示され、回復効率は(H0−H(t))/H0(式中、H0はスクラッチ直後のスクラッチ深さであり、H(t)は時間tにわたるアニーリングの後でのスクラッチ深さである)として示された。この場合使用された時間tは15分であった。
【0099】
コーティングのペンデュラム硬度はKoenigペンデュラム硬度試験機を用いてASTM D4366に従って測定された。
【0100】
溶媒耐性はMEK往復摩擦を使用してASTM D5402によって決定された。
【0101】
コーティングの酸エッチング耐性はBYK−ガードナーからのグラジエントオーブンを使用して測定された。この試験は、パネルの長さに沿って、10%HSO溶液の50μl液滴を、液滴の各ペアの間を0.25インチにして配置することによって行われた。パネルは加熱ロッドに沿ってグラジエントオーブン内に配置された。オーブンは15分間プログラムされ、加熱サイクルが完了した後で、パネルは温かい水道水ですすがれ、ペーパータオルでパッティングすることにより乾燥させられた。最初の重大な欠陥[評定#1](ここで、酸がコーティングを浸蝕する)の温度、およびコーティングの白化もしくは黄変が認められた温度[評定#4]が記録された。記録された温度が高いほど、コーティングの酸エッチング耐性が良好である。
【0102】
熱水浴試験方法:
60℃の水浴
当初の写真および当初光沢測定値がとられた。パネルは各面上3.2cmに印をつけられた。50テーバーサイクル(CS−10Fホイール)(100サイクルごとの後で、ST−11表面調整ストーンを用いて25サイクル、ホイールの表面を新しくした)が行われた。写真および光沢読み取り値が再びとられた。パネルはあらかじめ加熱された60℃の脱イオン(DI)水浴中に5分間配置された。再び、写真および光沢読み取り値がとられた。このプロセスは2回繰り返された。
【0103】
80℃の水浴
当初の写真および当初光沢測定値がとられた。パネルは各面上3.2cmに印をつけられた。50テーバーサイクル(CS−10Fホイール)(100サイクルごとの後で、ST−11表面調整ストーンを用いて25サイクル、ホイールの表面を新しくした)が行われた。写真および光沢読み取り値が再びとられた。パネルはあらかじめ加熱された80℃の脱イオン(DI)水浴中に5分間配置された。再び、写真および光沢読み取り値がとられた。このプロセスは2回繰り返された。
【0104】
本発明はその真意および本質的な特性から逸脱することなく他の形態で具体化されることができ、よって、本発明の範囲を示すものとして、上記明細書よりも特許請求の範囲の参照がなされるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)分子あたり平均3個以上のヒドロキシル基、300〜3000ダルトンの範囲の数平均分子量、0℃未満の範囲のTを有する1種以上の天然油由来ポリオールと、
(b)1種以上のポリイソシアナートと
を含むコーティングシステム。
【請求項2】
(a)分子あたり平均3個以上のヒドロキシル基、300〜3000ダルトンの範囲の数平均分子量、0℃未満の範囲のTを有する1種以上の天然油由来ポリオールと、
(b)1種以上のポリイソシアナートと
の反応生成物を含むコーティング組成物。
【請求項3】
(a)分子あたり平均3個以上のヒドロキシル基、300〜3000ダルトンの範囲の数平均分子量、0℃未満の範囲のTを有する1種以上の天然油由来ポリオールと、
(b)1種以上のポリイソシアナートと
の反応生成物を含むコーティング組成物から生じる膜を含むコーティング層。
【請求項4】
基体と前記基体に結合しているコーティング層とを含むコーティングされた基体であって、
前記コーティング層が
(a)分子あたり平均3個以上のヒドロキシル基、300〜3000ダルトンの範囲の数平均分子量、0℃未満の範囲のTを有する1種以上の天然油由来ポリオールと、
(b)1種以上のポリイソシアナートと
の反応生成物を含むコーティング組成物から生じる膜を含む、
コーティングされた基体。
【請求項5】
10〜90℃の範囲の温度で自己修復可能な膜を含むコーティング層。
【請求項6】
分子あたり平均3個以上のヒドロキシル基、300〜3000の範囲の数平均分子量、0℃未満の範囲のTを有する1種以上の天然油由来ポリオールを選択する工程;
1種以上のポリイソシアナートを選択する工程;
前記1種以上の天然油由来ポリオールと前記1種以上のポリイソシアナートとを接触させる工程;
それによりコーティング組成物を製造する工程;
を含むコーティング組成物を製造する方法。
【請求項7】
(a)分子あたり平均3個以上のヒドロキシル基、300〜3000の範囲の数平均分子量、0℃未満の範囲のTを有する1種以上の天然油由来ポリオールと、
(b)1種以上のポリイソシアナートと
を含むコーティングシステムを選択する工程;
前記1種以上の天然油由来ポリオールと前記1種以上のポリイソシアナートとを接触させる工程;
それによりコーティング層を形成する工程;
を含むコーティング層を形成する方法。
【請求項8】
基体を選択する工程;
(a)分子あたり平均3個以上のヒドロキシル基、300〜3000の範囲の数平均分子量、0℃未満の範囲のTを有する1種以上の天然油由来ポリオールと、
(b)1種以上のポリイソシアナートと
の反応生成物を含むコーティング組成物を選択する工程;
前記コーティング組成物を前記基体に適用する工程;
それにより前記基体に結合したコーティング層を形成する工程;
それによりコーティングされた基体を形成する工程;
を含むコーティングされた基体を製造する方法。
【請求項9】
基体と、
(a)分子あたり平均3個以上のヒドロキシル基、300〜3000の範囲の数平均分子量、0℃未満の範囲のTを有する1種以上の天然油由来ポリオールと、(b)1種以上のポリイソシアナートとの反応生成物を含むコーティング組成物から生じた膜を含み、前記基体と結合しているコーティング層と
を含むコーティングされた基体を選択する工程;
前記コーティング層を10〜90℃の範囲の温度で熱処理する工程;
それにより前記コーティングされた基体を修復する工程;
を含むコーティングされた基体を修復する方法。
【請求項10】
前記熱処理工程が熱水加熱処理もしくは水蒸気で達成される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ポリオールが1個以上の末端基を有する、請求項1〜10のいずれか1項。
【請求項12】
前記末端基が脂肪族アルキル基、脂肪族ポリエステル基、脂肪族アクリラート基、シロキサン基、フルオロ基、フルオロエーテルおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1〜11のいずれか1項。
【請求項13】
前記コーティング組成物が1種以上のペンダント基を有する、請求項1〜12のいずれか1項。
【請求項14】
前記組成物が1種以上のグラフト官能基をさらに含む、請求項1〜13のいずれか1項。
【請求項15】
前記1種以上のグラフト官能基が脂肪族アルキル基、脂肪族ポリエステル基、脂肪族アクリラート基、シロキサン基、フルオロ基、フルオロエーテルおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1〜14のいずれか1項。
【請求項16】
前記(a)成分がポリエステルポリオール、アクリルポリオールもしくはカルボナートポリオール、およびこれらの組み合わせの1種以上をさらに含む、請求項1〜15のいずれか1項。
【請求項17】
1種以上のポリイソシアナートが少なくとも2個の反応性イソシアナート基を有する、請求項1〜16のいずれか1項。
【請求項18】
前記コーティング組成物が溶媒、水もしくはこれらの組み合わせの1種以上をさらに含む、請求項1〜17のいずれか1項。
【請求項19】
前記コーティング組成物が、コーティング組成物の重量を基準にして50〜90重量%の固形分量を含む、請求項1〜18のいずれか1項。
【請求項20】
前記ポリオールが分子あたり平均3〜9個のヒドロキシル基を有する、請求項1〜19のいずれか1項。
【請求項21】
前記ポリオールが分子あたり平均3〜6個のヒドロキシル基を有する、請求項1〜20のいずれか1項。
【請求項22】
前記ポリオールが分子あたり平均3〜5個のヒドロキシル基を有する、請求項1〜21のいずれか1項。
【請求項23】
前記ポリオールが0℃未満から−100℃までの範囲のTを有する、請求項1〜22のいずれか1項。
【請求項24】
前記ポリオールが300〜3000ダルトンの範囲の数平均分子量を有する、請求項1〜23のいずれか1項。
【請求項25】
前記ポリオールが300〜1500ダルトンの範囲の数平均分子量を有する、請求項1〜24のいずれか1項。
【請求項26】
前記コーティング組成物が1種以上の添加剤、1種以上の充填剤、1種以上の触媒、1種以上の流動助剤、1種以上の接着促進剤、1種以上の顔料、1種以上のUV安定化剤およびこれらの組み合わせをさらに含む、請求項1〜25のいずれか1項。
【請求項27】
前記コーティング組成物が0.8〜1.5の範囲のOH/NCOモル比を含む、請求項1〜26のいずれか1項。
【請求項28】
前記コーティング組成物が0.9〜1.1の範囲のOH/NCOモル比を含む、請求項1〜27のいずれか1項。
【請求項29】
前記コーティング層が10〜45℃の範囲のTを有する、請求項1〜28のいずれか1項。
【請求項30】
前記コーティング層が20〜200秒の範囲のペンデュラム硬度を有する、請求項1〜29のいずれか1項。
【請求項31】
前記コーティング層が80℃を超える範囲の酸エッチング耐性温度を有する、請求項1〜34のいずれか1項。
【請求項32】
前記コーティング層が30〜100パーセントの範囲の光沢回復率を有する、請求項1〜31のいずれか1項。
【請求項33】
前記コーティング層が30〜100パーセントの範囲の光沢保持率を有する、請求項1〜32のいずれか1項。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−57154(P2012−57154A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−180118(P2011−180118)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】