説明

コーティング組成物

(I)少なくとも1種の熱硬化性樹脂組成物及び(II)少なくとも1種の硬化剤を含む硬化性樹脂組成物であって、粉体コーティングは、高いガラス転移温度と低い吸水率との組み合わせを含む釣り合いのとれた特性を有する、硬化性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照の記述
本願は、引用により本明細書に援用する2009年12月2日に出願された米国特許出願第61/265,806号の利益を主張する。
発明の背景
発明の分野
本発明は熱硬化性コーティング組成物に関し、より詳しくは、本発明は粉体コーティング用の熱硬化性組成物及び当該熱硬化性組成物から作製された粉体コーティングに関する。
【背景技術】
【0002】
良好な耐熱特性を有する熱硬化性樹脂、例えばエポキシ樹脂(エポキシ類)などは、多くの用途、例えば液体コーティング、粉体コーティング、及びキャスティングなどに望ましい。芳香族ジフェノールのグリシジルエーテルは、一般的に使用されているエポキシ樹脂の1つの部類であり、市販されているものが多く存在する。これらのアリールグリシジルエーテルについての3つの望ましい特性は、高いガラス転移温度(ジシアンジアミドにより硬化させた場合に、動的機械的熱分析により190℃よりも高いTg)、低いモノマー粘度(150℃で200mPa・s未満)、及び高いエポキシ当量(EEW)である。本発明のエポキシ類は120mPa・s程度の低い粘度を示し、ジシアンジアミド硬化熱硬化物は202℃以下のTg及び190グラム/当量(g/eq)よりも高いEEWを有する。
【0003】
コーティングが高温に曝される用途、例えば、コーティングが熱いオイルを輸送するために使用されるスチール管を被覆する用途に対しては、高いTgが必要とされる。コーティングの特性は、Tgの温度を超える温度で急激に劣化する。低粘度樹脂は、欠陥、例えばピンホールなどがない滑らかなコーティングを作製するのを容易にする。また、低粘度コーティングの場合に、基材の複雑な微細構造の濡れが良好であるため、密着性は通常良好である。最後に、高いEEWを有するエポキシ樹脂は、骨格中のヒドロキシルの濃度が比較的低い熱硬化物を与える。ヒドロキシルは、典型的には、エポキシ樹脂の、例えばジシアンジアミド(多官能性アミン)などにより硬化反応の間に形成される。熱硬化物におけるヒドロキシル濃度と吸水率との間には、直接的な関係がある。高い吸水率はコーティングにおいて望ましくない。なぜなら、腐食速度は通常高く、湿潤環境中での寿命は短くなるからである。
【0004】
これらの特性を個別に達成する多くのアリールグリシジルエーテルが存在するが、全ての特性を同時に満たすアリールグリシジルエーテルは存在しない。特性のこのバランスを達成することは困難である。例えば、高いTgを得るための1つの一般的な方法は、高度に官能性のポリフェノール類、特にエポキシノボラックとして知られているフェノールホルムアルデヒドノボラックを使用することである。しかしながら、約200mPa・s未満の粘度を有するかかるノボラックの例は高いTgを達成することができない。例えば、D.E.N.(登録商標)438(ザ・ダウ・ケミカル・カンパニー(The Dow Chemical Company)の登録商標)(業界標準のエポキシノボラック)は200mPa・s未満の粘度を有するが、ジシアンジアミド硬化熱硬化樹脂のTgは173℃に過ぎない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、高いTg(>190℃)、低いモノマー粘度(150℃で<150mPa・s)及び高いEEW(>190g/eq)を含む釣り合いがとれた特性を有する二官能性樹脂から誘導される、コーティングに有用な新規な熱硬化性樹脂を開発することがコーティング業界で依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、コーティング業界の上記問題に対する解決法を提供する。本発明は、(I)少なくとも1種の熱硬化性樹脂組成物及び(II)少なくとも1種の硬化剤を含むコーティング用硬化性樹脂組成物に関する。この組成物は、必要に応じて、触媒、共触媒、成分(I)とは異なるさらなる熱硬化性樹脂、充填剤、顔料、流動助剤(flow aid)、及び他の改質剤を含んでもよく、コーティングはエポキシ樹脂から誘導され、コーティングは、高いガラス転移温度(ジシアンジアミドにより硬化した場合に>190℃)、低いモノマー粘度(150℃で<150mPa・s)及び高いEEW(>190g/eq)の組み合わせを含む釣り合いがとれた望ましい特性を示す。
【0007】
本発明の別の実施態様は、上記の硬化性組成物の製造方法に関する。
【0008】
本発明のさらに別の実施態様は、粉体コーティング、すなわち上記の硬化性樹脂組成物から製造された熱硬化生成物(硬化樹脂生成物)に関する。
【0009】
本発明によれば、本明細書に開示する本発明の粉体コーティングに有用な硬化性樹脂組成物(本明細書において、熱硬化性組成物又は硬化性組成物ともいう)は、(I)少なくとも1種の熱硬化性樹脂組成物及び(II)少なくとも1種の硬化剤を含む。この組成物は、必要に応じて、触媒、共触媒、成分(I)とは異なるさらなる熱硬化性樹脂、充填剤、顔料、流動助剤、及び他の改質剤を含んでもよく、コーティングは、高いガラス転移温度と低い吸水率を併せ持つ。
【0010】
用語「硬化性(curable)」は、組成物が、当該組成物を硬化した又は熱硬化した状態又は様態にする条件に付すことができることを意味する。
【0011】
用語「硬化した(cured)」又は「熱硬化した(thermoset)」は、L. R. Whittingtonによって、Whittington's Dictionary of Plastics (1968)の第239頁に、次のように定義されている:「完成品としてそれらの最終状態で、実質的に不融性で不溶性である樹脂又はプラスチックコンパウンド。熱硬化性樹脂は、それらの製造又は加工中のある段階でしばしば液体であり、これらは、熱、触媒又は幾つかの他の化学的手段により硬化される。完全に硬化された後、熱硬化物を、熱により再軟化させることができない。通常、熱可塑性である幾つかのプラスチックは、他の材料との架橋によって熱硬化性にすることができる。」
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の非限定的な実施態様として、本発明の熱硬化性組成物の熱硬化性樹脂組成物(成分(I))は、例えば、以下から選択できる。
【0013】
(1)ジヒドロキシジフェニル−シクロアルカン化合物から製造される式I:
【0014】
【化1】

【0015】
(式中、Rは水素又はメチル基であり、R及びRは互いに独立に、それぞれ、水素原子、ハロゲン、置換若しくは非置換アルキル基、置換若しくは非置換アリール基又は置換若しくは非置換アラルキル基、ニトリル基、ニトロ基、置換若しくは非置換アルコキシ基を表し、XはCH、CH(R)又はC(R)(R)であり、mは8〜20の整数であり、R及びRは互いに独立に、それぞれ、水素原子、ハロゲン、置換若しくは非置換アルキル基、置換若しくは非置換アリール基又は置換若しくは非置換アラルキル基を表し、nは0〜約10の値を有する整数である。)
により表されるエポキシ樹脂。
【0016】
上記の式Iにおいて、R〜Rについての置換若しくは非置換アルキル基、置換若しくは非置換アリール基又は置換若しくは非置換アラルキル基、及びR及びRについての置換又は非置換アルコキシ基としては、例えばC〜Cアルキル若しくはアルキルオキシ基、C〜C10アリール基又はC〜C12アラルキル基が挙げられる。
【0017】
典型的には、製造されたままでは、式Iのエポキシ樹脂は、処理条件に応じて調節することのできる様々な値を取り得るnを有するオリゴマーの混合物である。低い溶融粘度が望ましい場合に、n=0である最短の構成員が優勢(>70質量%)である混合物を与えるように条件が選ばれる。
【0018】
(2)式IIで表されるアドバンスト(advanced)エポキシ樹脂組成物、例えば1又は2種以上のビフェノール類と化学量論的に過剰の1又は2種以上の式Iで表されるエポキシ樹脂とを反応させることにより製造されたものなど:
【0019】
【化2】

【0020】
(式中、R、R、R、R、R、X及びmは、式Iにおいて定義した通りであり、yは1〜約20の値を有する整数であり、pは1〜約20の値を有する整数であり、Qはヒドロカルビレン部分であり、各Zは、O、S、−NR(式中、Rはヒドロカルビル部分である)からなる群から独立に選択される。)
【0021】
本明細書において、「ヒドロカルビレン部分」とは、炭化水素から2個の水素原子を除くことにより形成される任意の二価の基を意味する。さらに詳しくは、ヒドロカルビレン部分は、非置換若しくは置換アルキル、非置換若しくは置換シクロアルキル、非置換若しくは置換ポリシクロアルキル、非置換若しくは置換アルケニル、非置換若しくは置換シクロアルケニル、非置換若しくは置換ジ若しくはポリシクロアルケニル、又は非置換若しくは置換芳香族環からなる群から選択された二価の部分である。本明細書において、「ヒドロカルビル部分」とは、一価の基、さらに詳しくは、非置換若しくは置換アルキル、非置換若しくは置換シクロアルキル、非置換若しくは置換ポリシクロアルキル、非置換若しくは置換アルケニル、非置換若しくは置換シクロアルケニル、非置換若しくは置換ジ若しくはポリシクロアルケニル、又は非置換若しくは置換芳香族環からなる群から選択された任意の一価の部分を意味する。
【0022】
式IIのエポキシ樹脂は、(a)式Iで示されるジヒドロキシジフェニル−シクロアルカン化合物の1又は2種以上のエポキシ樹脂と、(b)1分子当たり平均で1個より多くの反応性水素原子を有する1又は2種以上の適切な化合物(ここで、反応性水素原子は上記エポキシ樹脂中のエポキシド基と反応性である)とから製造されるアドバンストエポキシ樹脂生成物である。アドバンスメント(advancement)反応において使用されるエポキシ樹脂としては、さらに、(c)成分(a)と異なる、当該技術分野で知られている任意の1又は2種以上のエポキシ樹脂、例えば、ジヒドロキシ芳香族化合物のジグリシジルエーテルなどが挙げられる。上記のアドバンストエポキシ樹脂生成物の製造は公知の方法を使用して実施できる。
【0023】
1分子当たり平均で1個より多くの反応性水素原子を有する化合物の例としては、ジヒドロキシ芳香族化合物、ジチオール化合物、ジスルホンアミド化合物、ジアミド化合物若しくはジカルボン酸化合物、あるいは1個の第一級アミン若しくはアミド基、2個の第二級アミン基、1個の第二級アミン基と1個のフェノール性ヒドロキシ基、1個の第二級アミン基と1個のカルボン酸基又は1個のフェノール性ヒドロキシ基と1個のカルボン酸基を含有する化合物、並びにこれらの任意の組合せが挙げられる。
【0024】
1分子当たり平均で1個より多くの反応性水素原子を有する化合物とエポキシ樹脂との比は、反応性水素原子の当量/エポキシ樹脂中のエポキシド基の当量で、一般的に約0.01:1〜約0.95:1、好ましくは約0.05:1〜約0.8:1、より好ましくは約0.10:1〜約0.5:1である。
【0025】
アドバンスメント反応は、溶媒の存在下又は非存在下で、熱及び混合の適用により実施できる。アドバンスメント反応は、大気圧で、大気圧よりも高い圧力で、又は大気圧よりも低い圧力で、約20℃〜約260℃、好ましくは約80℃〜約240℃、さらに好ましくは約100℃〜約200℃の温度で行うことができる。
【0026】
アドバンスメント反応を完了するのに要する時間は、例えば、使用される温度、1分子当り1個より多くの反応性水素原子を有する化合物の化学構造、及び使用されるエポキシ樹脂の化学構造などの因子に依存する。より高い温度ほどより短い反応時間を必要とし、より低い温度ほどより長い反応時間を必要とするであろう。
【0027】
一般的に、アドバンスメント反応完了のための時間は、約5分間〜約24時間、好ましくは約30分間〜約8時間、より好ましくは約30分間〜約4時間に及びうる。
【0028】
アドバンスメント反応において、触媒を添加してもよい。当該触媒の例としては、ホスフィン類、第四級アンモニウム化合物、ホスホニウム化合物、第三級アミン及びこれらの混合物が挙げられる。当該触媒は、エポキシ樹脂の総質量に基づいて、約0.01〜約3、好ましくは約0.03〜約1.5、より好ましくは約0.05〜約1.5質量%の量で使用できる。
【0029】
本発明において使用できる樹脂化合物を得るためのアドバンストエポキシ樹脂生成物を製造する際に有用であるアドバンスメント反応に関する他の詳細は、米国特許第5,736,620号明細書及びHenry Lee及びKris NevilleによるHandbook of Epoxy Resins(引用により本明細書に援用する)に記載されている。
【0030】
芳香族ジ及びポリヒドロキシル含有化合物の例としては、シクロオクタノン、シクロデカノン、シクロドデカノン、シクロペンタデカノン、シクロオクタデカノン、シクロエイコサノン及びこれらの混合物と、フェノール、ヒドロキノン、レゾルシノール、カテコール、2,4−ジメチルレゾルシノール、4−クロロレゾルシノール、テトラメチルヒドロキノン、ビスフェノールA(4,4’−イソプロピリデンジフェノール)、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’−チオジフェノール、4,4’−スルホニルジフェノール、2,2’−スルホニルジフェノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニルオキシド、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、4,4’−ビス(4(4−ヒドロキシフェノキシ)−フェニルスルホン)ジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルジスルフィド、3,3’,3,5’−テトラクロロ−4,4’−イソプロピリデンジフェノール、3,3’,3,5’−テトラブロモ−4,4’−イソプロピリデンジフェノール、3,3’−ジメトキシ−4,4’−イソプロピリデンジフェノール、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−α−メチルスチルベン、4,4’−ジヒドロキシベンズアニリド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)テレフタラート、N,N’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)テレフタルアミド、ビス(4’−ヒドロキシビフェニル)テレフタラート、4,4’−ジヒドロキシフェニルベンゾアート、ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−1,4−ベンゼンジイミン、1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、フロログルシノール、ピロガロール、2,2’,5,5’−テトラヒドロキシジフェニルスルホン、トリス(ヒドロキシフェニル)メタン、ジシクロペンタジエンジフェノール、トリシクロペンタジエンジフェノール、及びこれらの任意の組合せとの反応から誘導されたジヒドロキシジフェニル−シクロアルカンが挙げられる。
【0031】
ジ−及びポリカルボン酸の例としては、4,4’−ジカルボキシジフェニルメタン、テレフタル酸、イソフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,6−ヘキサンジカルボン酸、1,4−ブタンジカルボン酸、ジシクロペンタジエンジカルボン酸、トリス(カルボキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−カルボキシフェニル)シクロヘキサン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジカルボキシジフェニル、4,4’−ジカルボキシ−α−メチルスチルベン、1,4−ビス(4−カルボキシフェニル)−trans−シクロヘキサン、1,1’−ビス(4−カルボキシフェニル)シクロヘキサン、1,3−ジカルボキシ−4−メチルベンゼン、1,3−ジカルボキシ−4−メトキシベンゼン、1,3−ジカルボキシ−4−ブロモベンゼン、4,4’−ベンズアニリドジカルボン酸、4,4’−フェニルベンゾアートジカルボン酸、4,4’−スチルベンジカルボン酸、及びこれらの任意の組合せが挙げられる。
【0032】
ジ−及びポリメルカプタンの例としては、1,3−ベンゼンジチオール、1,4−ベンゼンジチオール、4,4’−ジメルカプトジフェニルメタン、4,4’−ジメルカプトジフェニルオキシド、4,4’−ジメルカプト−α−メチルスチルベン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジメルカプトジフェニル、1,4−シクロヘキサンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、2,2’−ジメルカプトジエチルエーテル、1,2−ジメルカプトプロパン、ビス(2−メルカプトエチル)スルフィド、トリス(メルカプトフェニル)メタン、1,1−ビス(4−メルカプトフェニル)シクロヘキサン、及びこれらの任意の組合せが挙げられる。
【0033】
ジ−及びポリアミンの例としては、1,2−ジアミノベンゼン、1,3−ジアミノベンゼン、1,4−ジアミノベンゼン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、2,2’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルオキシド、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジアミノジフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニル、4,4’−ジアミノ−α−メチルスチルベン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、4,4’−ジアミノスチルベン、1,4−ビス(4−アミノフェニル)−trans−シクロヘキサン、1,1’−ビス(4−アミノフェニル)シクロヘキサン、トリス(アミノフェニル)メタン、1,4−シクロヘキサンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、ピペラジン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、1−(2−アミノエチル)ピペラジン、ビス(アミノプロピル)エーテル、ビス(アミノプロピル)スルフィド、ビス(アミノメチル)ノルボルナン、2,2’−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、及びこれらの任意の組合せが挙げられる。
【0034】
第一級モノアミンの例としては、アニリン、4−クロロアニリン、4−メチルアニリン、4−メトキシアニリン、4−シアノアニリン、2,6−ジメチルアニリン、4−アミノジフェニルオキシド、4−アミノジフェニルメタン、4−アミノジフェニルスルフィド、4−アミノベンゾフェノン、4−アミノジフェニル、4−アミノスチルベン、4−アミノ−α−メチルスチルベン、メチルアミン、4−アミノ−4’−ニトロスチルベン、n−ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、アミノノルボルナン、及びこれらの任意の組合せが挙げられる。
【0035】
スルホンアミド類の例としては、フェニルスルホンアミド、4−メトキシフェニルスルホンアミド、4−クロロフェニルスルホンアミド、4−ブロモフェニルスルホンアミド、4−メチルスルホンアミド、4−シアノスルホンアミド、4−スルホンアミドジフェニルオキシド、4−スルホンアミドジフェニルメタン、4−スルホンアミドベンゾフェノン、4−スルホニルアミドジフェニル、4−スルホンアミドスチルベン、4−スルホンアミド−α−メチルスチルベン、2,6−ジメチルフェニルスルホンアミド、及びこれらの任意の組合せが挙げられる。
【0036】
アミノフェノール類の例としては、o−アミノフェノール、m−アミノフェノール、p−アミノフェノール、2−メトキシ−4−ヒドロキシアニリン、3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシアニリン、2,6−ジブロモ−4−ヒドロキシアニリン、5−ブチル−4−ヒドロキシアニリン、3−フェニル−4−ヒドロキシアニリン、4−(1−(3−アミノフェニル)−1−メチルエチル)フェノール、4−(1−(4−アミノフェニル)エチル)フェノール、4−(4−アミノフェノキシ)フェノール、4−((4−アミノフェニル)チオ)フェノール、(4−アミノフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)メタノン、4−((4−アミノフェニル)スルホニル)フェノール、4−(1−(4−アミノ−3,5−ジブロモフェニル)−1−メチルエチル)−2,6−ジブロモフェノール、N−メチル−p−アミノフェノール、4−アミノ−4’−ヒドロキシ−α−メチルスチルベン、4−ヒドロキシ−4’−アミノ−α−メチルスチルベン、3,5−ジメチル−4−ヒドロキシアニリン、及びこれらの任意の組合せが挙げられる。
【0037】
アミノカルボン酸の例としては、2−アミノ安息香酸、3−アミノ安息香酸、4−アミノ安息香酸、2−メトキシ−4−アミノ安息香酸、3−シクロヘキシル−4−アミノ安息香酸、2,6−ジブロモ−4−アミノ安息香酸、5−ブチル−4−アミノ安息香酸、3−フェニル−4−アミノ安息香酸、4−(1−(3−アミノフェニル)−1−メチルエチル)安息香酸、4−(1−(4−アミノフェニル)エチル)安息香酸、4−(4−アミノフェノキシ)安息香酸、4−((4−アミノフェニル)チオ)安息香酸、(4−アミノフェニル)(4−カルボキシフェニル)メタノン、4−((4−アミノフェニル)スルホニル)安息香酸、4−(1−(4−アミノ−3,5−ジブロモフェニル)−1−メチルエチル)−2,6−ジブロモ安息香酸、N−メチル−4−アミノ安息香酸、4−アミノ−4’−カルボキシ−α−メチルスチルベン、4−カルボキシ−4’−アミノ−α−メチルスチルベン、グリシン、N−メチルグリシン、4−アミノシクロヘキサンカルボン酸、4−アミノヘキサン酸、4−ピペリジンカルボン酸、5−アミノフタル酸、3,5−ジメチル−4−アミノ安息香酸、及びこれらの任意の組合せが挙げられる。
【0038】
スルファニルアミド類の例としては、o−スルファニルアミド、m−スルファニルアミド、p−スルファニルアミド、2−メトキシ−4−アミノ安息香酸、3−メチル−4−スルホンアミド−1−アミノベンゼン、5−メチル−3−スルホンアミド−1−アミノベンゼン、3−フェニル−4−スルホンアミド−1−アミノベンゼン、4−(1−(3−スルホンアミドフェニル)−1−メチルエチル)アニリン、4−(1−(4−スルホンアミドフェニル)エチル)アニリン、4−(4−スルホンアミドフェノキシ)アニリン、4−((4−スルホンアミドフェニル)チオ)アニリン、(4−スルホンアミドフェニル)(4−アミノフェニル)メタノン、4−((4−スルホンアミドフェニル)スルホニル)アニリン、4−(1−(4−スルホンアミド−3,5−ジブロモフェニル)−1−メチルエチル)−2,6−ジブロモアニリン、4−スルホンアミド−1−N−メチルアミノベンゼン、4−アミノ−4’−スルホンアミド−α−メチルスチルベン、4−スルホンアミド−4’−アミノ−α−メチルスチルベン、2,6−ジメチル−4−スルホンアミド−1−アミノベンゼン、及びこれらの任意の組合せが挙げられる。
【0039】
(3)1又は2種以上のビスフェノールと化学量論的不足量の1又は2種以上の式Iのエポキシ樹脂とを反応させることによって製造される、式IIIで表されるアドバンスト活性水素含有樹脂組成物:
【0040】
【化3】

【0041】
(式中、R、R、R、R、R、X、Z、p及びmは、式Iにおいて定義した通りであり、yは0〜約20の値を有する整数であり、Qはヒドロカルビレン部分であり、ZはZ−Hである。)
【0042】
用語「ヒドロカルビレン部分」及び「ヒドロカルビル部分」は、先に定義した通りに使用される。
【0043】
本発明の熱硬化性組成物の成分(I)として機能し得る上記の熱硬化性樹脂組成物のいずれも、Metral他により本件特許出願と同日付けで出願された同時係属の米国特許出願第61/265,799号明細書(引用により本明細書に援用する)に記載されている熱硬化性樹脂組成物のいずれを含んでもよい。成分(I)の製造方法も、上記の同時係属の米国特許出願第61/265,799号明細書に記載されている。
【0044】
一般的に、本発明の粉体コーティング組成物は、熱硬化性成分(I)を、当該粉体コーティング組成物の総質量に基づいて約20質量%〜約98質量%、好ましくは約30質量5〜約96質量%、より好ましくは約50質量%〜約96質量%の量で含むことができる。
【0045】
成分(I)は、例えば適切な比で、硬化剤(成分(II))を成分(I)と混合すること、及び成分(I)と成分(II)の混合物を含む熱硬化性組成物を硬化条件に付すことなどを含む、従来の熱硬化性樹脂、例えばエポキシ樹脂など、を硬化する技術分野の当業者により使用されている周知の方法に従って、硬化させることができる。
【0046】
熱硬化性組成物において有用な硬化剤(curing agent)(成分(II))(硬化剤(hardening agent)又は架橋剤(cross-linking agent)ともいう)は、例えば当該技術分野でよく知られている硬化剤、例えば、酸無水物、カルボン酸、アミン化合物、フェノール系化合物ポリオール、又はこれらの混合物(これらに限定されない)などから選択することができる。
【0047】
本発明において有用な硬化剤の例としては、エポキシ樹脂をベースとする組成物を硬化させるために有用であることが知られている硬化剤のいずれも挙げられる。かかる材料としては、例えばポリアミン、ポリアミド、ポリアミノアミド、ポリフェノール、ポリマーチオール、ポリカルボン酸及び酸無水物、ポリオール、並びにこれらの任意の組合せなどが挙げられる。硬化剤の他の具体例としては、ジシアンジアミド、フェノールノボラック、ビスフェノール−Aノボラック、ジシクロペンタジエンのフェノールノボラック、スチレン−無水マレイン酸(SMA)コポリマー、及びこれらの任意の組合せが挙げられる。硬化剤の好ましい例としては、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ビスフェノールA、ジシアンジアミド、及びこれらの任意の組合せが挙げられる。
【0048】
ジシアンジアミド(dicy)は、本発明において有用な硬化剤の一つの好ましい態様であろう。dicyは、その硬化特性を活性化するために比較的高い温度を必要とするために遅延硬化を与えるという利点を有し、そのためdicyを熱硬化性樹脂に添加して室温(約25℃)で貯蔵することができる。さらに、dicyを使用する樹脂組成物の硬化プロファイルを、触媒、例えば2−メチルイミダゾール(2−MI)などを使用して都合良く変更することができる。
【0049】
一般的に、本発明の熱硬化性樹脂組成物中に存在する硬化剤(成分(II))の濃度は、最終使用用途に依存して変えることができる。例えば、使用される硬化剤の量は、幾つかの態様において、質量基準で、熱硬化性樹脂100部当たり約0.1部〜約150部で変えることができる。他の実施態様において、硬化剤は、質量基準で、熱硬化性樹脂100部当たり約5〜約95部の範囲内の量で使用でき、さらに他の態様において、硬化剤は、質量基準で、熱硬化性樹脂100部当たり約10〜約90部の範囲内の量で使用できる。
【0050】
本発明の別の態様において、成分(I)は、例えば、上記のように、成分(I)を、別の熱硬化性樹脂成分(III)と、適切な比で混合し、そして成分(I)と成分(II)の混合物を含む熱硬化性組成物を硬化条件に付すことを含む、従来のエポキシ樹脂を硬化させる技術分野における当業者により使用されている周知の方法に従って硬化させることができる。この態様において、硬化剤(II)は、特に、成分(III)が、硬化剤を使用せずに熱硬化性樹脂と反応できる反応性官能基を含む場合に任意であることができる。この任意の硬化剤は、上記の硬化剤(II)のいずれであってもよい。
【0051】
粉体コーティング組成物に有用なその他の熱硬化性樹脂成分(III)は、例えば、エポキシ樹脂、イソシアネート樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、フェノール系樹脂、ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂及びこれらの混合物から選択される少なくとも1種の熱硬化性樹脂成分を含んでもよい。好ましくは、熱硬化性樹脂組成物中に、成分(I)とは異なるエポキシ樹脂が、成分(III)として使用される。
【0052】
本発明において使用するのに適している成分(I)とは異なるその他の熱硬化性樹脂の例としては、エポキシ化ビスフェノールA;エポキシ化フェノール系ノボラック、例えばエポキシ化フェノールノボラック、ビスフェノールAノボラック、又はエポキシ化ビスフェノールジシクロペンタジエンノボラック;エポキシ化臭素含有ビスフェノールA若しくは臭素化ビスフェノールAノボラック;エポキシ化リン含有ビスフェノールA;又はこれらの任意の組合せが挙げられる。
【0053】
その他の熱硬化性樹脂(成分(III))が、熱硬化性組成物中に、一般的に約0質量%(wt%)〜約80wt%、好ましくは約0wt%〜約50wt%、より好ましくは約0wt%〜約40wt%の濃度で存在してよい。
【0054】
一つの好ましい態様において、本発明において成分(III)として有用なその他の熱硬化性樹脂としては、少なくとも1種のエポキシ樹脂が挙げられる。本明細書において用語「エポキシ樹脂」は、1分子当たり1又は2個以上のビシナルエポキシ基、即ち、1分子当たり少なくとも1個の1,2−エポキシ基を有する化合物を意味する。一般的に、エポキシ樹脂化合物は、少なくとも1個の1,2−エポキシ基を有する飽和又は不飽和の脂肪族、脂環式、芳香族又は複素環式化合物であることができる。かかる化合物は、必要に応じて、1又は2個以上の非妨害(non-interfering)置換基、例えばハロゲン原子、脂肪族又は脂環式ヒドロキシ基、エーテル基、低級アルキルなどにより置換されていてもよい。エポキシ樹脂化合物は、モノマー、オリゴマー又はポリマーであってもよく、即ち、エポキシ樹脂は、モノエポキシド、ジエポキシド、多官能性エポキシ樹脂、ポリエポキシド、アドバンストエポキシ樹脂又はこれらの混合物から選択することができる。本発明において有用なエポキシ樹脂の広範な列挙は、Lee, H.及びNeville, K., "Handbook of Epoxy Resins", McGraw-Hill Book Company, New York, 1967年, 第2章、第257-307頁(引用により本明細書に援用する)に見られる。
【0055】
本発明において有用なエポキシ樹脂は様々であるが、従来の又は市販のエポキシ樹脂を含むことができ、単独で、又は2若しくは3種以上の組合せで使用できる。本明細書に開示した組成物を得るためにエポキシ樹脂を選択する際に、最終製品の特性のみならず、樹脂組成物の加工に影響を与え得る粘度及び他の特性が考慮されるべきである。
【0056】
当業者に知られている特に好適なエポキシ樹脂は、多官能性アルコール、フェノール類、脂環式カルボン酸、芳香族アミン又はアミノフェノール類と、エピクロロヒドリンとの反応生成物に基づく。幾つかの非限定的な態様としては、例えばビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、及びパラ−アミノフェノールのトリグリシジルエーテルが挙げられる。当業者に知られている他の好適なエポキシ樹脂としては、エピクロロヒドリンとo−クレゾールとの反応生成物及びエピクロロヒドリンとフェノールノボラックとの反応生成物が挙げられる。上記の各種エポキシ樹脂の2又は3種以上の混合物を使用することも可能である。
【0057】
熱硬化性組成物の製造のために本発明において有用なエポキシ樹脂である成分(III)は、市販の製品から選択できる。例えばザ・ダウ・ケミカル・カンパニーから入手可能なD.E.R.(登録商標)331、D.E.R.(登録商標)332、D.E.R.(登録商標)334、D.E.R.(登録商標)580、D.E.N.(登録商標)431、D.E.N.(登録商標)438、D.E.R.(登録商標)736又はD.E.R.(登録商標)732を使用できる。本発明の例示として、本発明のエポキシ樹脂成分は、175〜185のエポキシド当量、9.5Pa・sの粘度及び1.16g/ccの密度を有する液体エポキシ樹脂D.E.R.(登録商標)383(DGEBPA)であることができる。エポキシ樹脂成分として使用できる他の市販のエポキシ樹脂は、D.E.R.(登録商標)330、D.E.R.(登録商標)354又はD.E.R.(登録商標)332であることができる。D.E.R.はザ・ダウ・ケミカル・カンパニーの登録商標である。
【0058】
本発明において有用な他の好適なエポキシ樹脂は、例えば米国特許第3,018,262号明細書、米国特許第7,163,973号明細書、米国特許第6,887,574号明細書、米国特許第6,632,893号明細書、米国特許第6,242,083号明細書、米国特許第7,037,958号明細書、米国特許第6,572,971号明細書、米国特許第6,153,719号明細書、米国特許第5,405,688号明細書、PCT公開第WO2006/052727号、米国特許出願公開第20060293172号明細書及び米国特許出願公開第20050171237号明細書に開示されており、これらのそれぞれは、引用により本明細書に援用する。
【0059】
本発明において有用なエポキシ樹脂のEEWは、一般的に約100g/eq〜約20,000g/eq、より好ましくは約150〜約5000g/eqである。本明細書において、用語「エポキシド当量」は、分子中に存在するエポキシド基の平均数によって割った、g/eq単位でのエポキシド部分の数平均分子量を指す。本発明において有用なジエポキシドの例は約100g/eq〜約4000g/eqのEEWを有するエポキシ樹脂である。
【0060】
成分(III)の少なくとも1種の熱硬化性樹脂として有用な他のエポキシ樹脂としては、エポキシ化フェノールノボラック、臭素含有エポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂、及びこれらの組合せが挙げられる。
【0061】
本発明において有用なエポキシ樹脂のより具体的な態様としては、例えばエポキシ化ビスフェノールAノボラック、エポキシ化フェノールジシクロペンタジエンノボラック、エポキシ化臭素含有ビスフェノールAノボラック、又はこれらの任意の組合せが挙げられる。
【0062】
一般的に、一態様において、成分(III)は、硬化性組成物中に、当該組成物の総質量に基づいて、約0wt%〜約80質量%、好ましくは約0wt%〜約60wt%、より好ましくは約0wt%〜約50wt%の量で存在する。
【0063】
本発明の組成物は、必要に応じて充填剤を含む。充填剤のタイプ及び量は、他の成分のタイプ及び量に応じて変わり得る。本発明において使用される充填剤としては、例えば、シリカ、タルク、アルミナ、石英、雲母、難燃剤、金属粉末、及びこれらの任意の組合せが挙げられる。難燃剤充填剤の例としては、三水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ホスフィナイト、例えばアルミニウムホスフィナイト若しくは亜鉛ホスフィナイト、又はベーマイトが挙げられる。
【0064】
一般的に、熱硬化性樹脂中に存在しうる充填剤の量は、熱硬化性樹脂の総質量に基づいて、約0質量%〜約95質量%、好ましくは約2質量%〜約90質量%、より好ましくは約5質量%〜約85質量%、さらに好ましくは約10質量%〜約80質量%、最も好ましくは約15質量%〜約75質量%の量である。
【0065】
無機充填剤は、一般的に、粒子状であり、約1mm未満、好ましくは約100ミクロン未満、より好ましくは約50ミクロン未満、最も好ましくは約10ミクロン未満で、約2nmよりも大きい、好ましくは約10nmよりも大きい、さらに好ましくは約20nmよりも大きい、最も好ましくは約50nmよりも大きい平均粒子寸法を有する。
【0066】
本発明の熱硬化性粉体コーティング組成物は、さらに、1又は2種以上の任意の追加成分、例えば触媒又は溶媒を含んでもよい。
【0067】
本発明の熱硬化性組成物において有用な任意成分としては、少なくとも1種の触媒が挙げられる。本発明において使用される触媒は、少なくとも1種の熱硬化性樹脂の、単独重合などの重合に適するものであることができる。代わりに、本発明において使用される触媒は、少なくとも1種の熱硬化性樹脂と少なくとも1種の硬化剤との間の反応に適するものであることができる。
【0068】
本発明の熱硬化性組成物において任意成分として有用な触媒は、この目的のために使用される当該技術分野でよく知られているいずれの触媒であってもよい。例えば、触媒としては、アミン、ホスフィン、複素環式窒素、アンモニウム、ホスホニウム、スルホニウム部分、これらの置換誘導体及びこれらの任意の組合せを含む化合物が挙げられる。本発明において有用な触媒の幾つかの非限定的な例としては、例えばエチルトリフェニルホスホニウムクロリド;ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド;米国特許第4,925,901号明細書(引用により本明細書に援用する)に記載されている複素環式窒素含有触媒;イミダゾール類;トリエチルアミン;及びこれらの任意の組合せが挙げられる。
【0069】
本発明において有用な触媒の選択は限定されず、エポキシ系に対して一般的に使用されている触媒を使用できる。また、触媒の添加は任意であり、調製される系に依存する。触媒が使用される場合、触媒の好ましい例としては、第三級アミン、イミダゾール類、有機ホスフィン及び酸塩が挙げられる。
【0070】
最も好ましい触媒としては、第三級アミン、例えばトリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、2−メチルイミダゾール、ベンジルジメチルアミン、これらの混合物などが挙げられる。特に好ましいものは、アルキル置換イミダゾール類、2,5−クロロ−4−エチルイミダゾール及びフェニル置換イミダゾール類、並びにこれらの任意の混合物である。
【0071】
本発明に好適な触媒のさらに好ましい態様としては、例えば2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク−7−エン(DBU)、イミダゾール誘導体、例えば2−メチルイミダゾール−エポキシ樹脂付加物、例えば、EPON(登録商標)P101(Hexion Specialty Chemicalsから入手可能)、及びこれらの任意の組合せなどが挙げられる。
【0072】
一般的に、本発明の熱硬化性樹脂組成物中に存在する触媒の濃度は、最終使用用途に依存して変えることができる。使用される触媒の量は、幾つかの態様において、質量基準で、熱硬化性樹脂100部当たり、約0.1部から約20部まで変えることができる。他の態様において、触媒は、質量基準で、熱硬化性樹脂100部当たり、約1〜約15部の範囲内の量で使用することができ、さらに他の態様において、触媒は、質量基準で、熱硬化性樹脂100部当たり、約2〜約10部の範囲内の量で使用することができる。所与の系に対して使用される触媒の特定量は、所望の特性の最適値を明らかにするための単純な範囲を見出す実験により実験的に決定することができる。
【0073】
本発明の熱硬化性粉体コーティング組成物に有用な溶媒の例としては、グリコールエーテル類、例えばザ・ダウ・ケミカル・カンパニーからDowanol(登録商標)Pシリーズとして市販されているものなど、又はケトン類、例えばアセトン又はメチルエチルケトン(MEK)が挙げられる。
【0074】
一般的に、本発明の熱硬化性粉体コーティング組成物は、当該組成物の総質量に基づいて、約0wt%〜約20wt%、好ましくは約0wt%〜約10wt%、より好ましくは約0wt%〜約5wt%の量の溶媒成分を含んでもよい。
【0075】
本発明の熱硬化性組成物において有用な任意成分としては、少なくとも1種の連鎖延長剤が挙げられる。本発明の組成物において添加剤として有用な連鎖延長剤の例としては、ジヒドロキシジフェニルシクロアルカン、例えばビスフェノールシクロドデカノン、ビスフェノールAなど;ジシアンジアミド;フェノールノボラック、例えばビスフェノールAノボラック若しくはフェノールジシクロペンタジエンノボラックなど;臭素含有ビスフェノールA、例えばテトラブロモビスフェノールA(TBBA)など;臭素含有ビスフェノールAノボラック;リン含有ビスフェノールAノボラック;又はこれらの任意の組合せが挙げられる。
【0076】
一般的に、この組成物において使用されるさらなる任意の硬化剤(curing agent)(硬化剤(hardener)又は連鎖延長剤)は、組成物の総質量に基づいて、約0wt%〜約50wt%、好ましくは約0wt%〜約30wt%、より好ましくは約0wt%〜約20wt%の量で存在することができる。
【0077】
本発明の熱硬化性組成物は、熱硬化性樹脂系、例えばエポキシ樹脂系で従来見られる任意の添加剤及び充填剤を含んでもよい。本発明の粉体コーティング組成物は、必要に応じて、それらの意図する用途に有用である他の添加剤を含んでもよい。例えば、添加剤としては、安定剤、界面活性剤及び流れ調整剤、充填剤、顔料及び艶消し剤が挙げられる。本発明において有用な添加剤のより具体的な例としては、BaSO、TiO、Modaflow(登録商標)、Acronal 4F(登録商標)、Byk 361(登録商標)(流れ調整剤として)、及び脱気剤としてベンゾインが挙げられる。熱硬化性樹脂組成物に使用される添加剤のタイプ及び量は、熱硬化性樹脂組成物の意図する用途に依存する。
【0078】
例えば本発明の組成物において有用な任意添加剤としては、シリカ、ガラス、タルク、金属粉末、二酸化チタン、湿潤剤、顔料、着色剤、離型剤、強化剤、カップリング剤、脱気剤、難燃剤(例えば無機難燃剤、ハロゲン系難燃剤及び非ハロゲン系難燃剤、例えばリン含有材料)、イオンスカベンジャー、紫外線(UV)安定剤、柔軟剤、粘着付与剤、安定剤、界面活性剤、流れ調整剤、充填剤、顔料又は染料、光沢調整剤、酸化防止剤、艶消し剤、硬化開始剤、硬化抑制剤、熱可塑性樹脂、加工助剤、UVブロッキング化合物、蛍光化合物、UV安定剤、不活性充填剤、繊維状強化材、酸化防止剤、熱可塑性樹脂粒子などの耐衝撃性改良剤、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。添加剤及び充填剤としては、なかでも、ヒュームドシリカ、骨材、例えばガラスビーズ、ポリテトラフルオロエチレン、ポリオール樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール系樹脂、グラファイト、二硫化モリブデン、研磨性顔料、粘度降下剤、窒化ホウ素、雲母、核生成剤及び安定剤が挙げられる。充填剤及び改良剤は、熱硬化性樹脂組成物に添加される前に、水分を追い出すために予熱されてもよい。さらに、これらの任意添加剤は、硬化の前及び/又は後に、組成物の特性に影響を及ぼすことができ、組成物及び所望の硬化生成物を配合する場合に考慮されるべきである。上記のリストは例示であることを意図し、限定を意図していない。本発明の配合物に対して好ましい添加剤は、当業者が最適化できるであろう。
【0079】
好ましくは、本発明において使用される添加剤としては、触媒、共触媒、促進剤、並びに任意に他の用途特異的な添加剤、例えば難燃剤、湿潤剤、脱泡剤、接着促進剤、充填剤、顔料、染料、安定剤、UV吸収剤及び強化剤が挙げられる。当該技術分野で知られているように、他の熱硬化性モノマー、例えば他のエポキシド類、シアネート類、マレイミド類、トリアジン類及びベンゾオキサジン類並びに他のオリゴマー又はポリマー、例えばポリ(フェニレンオキシド)などを添加することが可能である。
【0080】
上記のさらなる添加剤の濃度は、全組成物の質量に基づいて、一般的に約0wt%〜約50wt%、好ましくは約0.01wt%〜約20wt%、より好ましくは約0.05wt%〜約15wt%、最も好ましくは約0.1wt%〜約10wt%である。約0.01wt%未満では、添加剤は、得られる熱硬化生成物に、さらなる顕著な利点を与えず、約20wt%を超えると、これらの添加物によってもたらされる特性改良は比較的に一定のままである。
【0081】
幾つかの態様において、硬化性組成物は、約0.1〜約50体積%の任意の添加物を含んでよい。他の態様において、硬化性組成物は、約0.1〜約5体積%の任意の添加剤を含んでよく、さらに他の態様において、約0.5〜約2.5体積%の任意の添加剤を含んでよい。
【0082】
一般的に、硬化性組成物は、上記成分を、硬化性組成物を形成するのに望ましい量で段階的に又は同時に混合することにより形成できる。本発明の配合物又は組成物の構成成分を混合して本発明の硬化性組成物を提供することができ、本発明の最終的な硬化性配合物を従来の加工条件の下で硬化させて熱硬化物を形成することができる。
【0083】
粉体コーティング組成物を製造するためのよく知られている方法のいずれも使用できる。例えば、本発明の粉体コーティング組成物の構成成分は、典型的には、グラインダーで予めブレンド又は磨砕され、グラインダーから出る磨砕粉末混合物は、次に押出機に供給される。
【0084】
押出機において、粉末混合物は、低温で加熱され、溶融して半液状になる。このプロセスの間、溶融混合物の構成成分は十分にかつ均一に分散される。押出機の速い動作及び押出機内での比較的低い温度のために、本発明の粉体コーティング組成物の構成成分は実質的な化学反応を受けない。押出機から出る本発明の粉体コーティング組成物の得られる溶融押出物は、次に、押出機からフレーカー上に送られ、フレーカーにより組成物のフレークがミル/分級機に供給され、所望の粒子サイズを有する粉体コーティング用の最終生成物が得られる。最終的な粉体コーティング生成物は、次に、生成物への水分の侵入を防止するために、包装装置を使用して密閉容器内に包装される。
【0085】
例えばプレブレンディングステーション又はグラインダー、フレーカー、ミル/分級機、及び包装装置などの本発明の粉体コーティング組成物を製造するための装置は、全て当該技術分野で知られている装置である。
【0086】
本発明の粉体コーティング組成物は、様々な方法によって、物品の基材に適用できる。例えば、一実施態様において、粉体コーティング組成物は、(1)当該組成物の適切な硬化温度に基材を加熱すること、及び(2)周知の手段、例えば静電スプレー又は流動床などにより粉体コーティング組成物を適用することによって、基材に適用することができる。別の実施態様において、エポキシ粉体コーティング組成物は、(1)エポキシ粉体コーティング組成物を基材に適用すること(例えば静電適用法により)、及び(2)粉末及び基材を、粉末が流動し硬化する温度に加熱することによって、冷たい基材に適用することができる。
【0087】
幾つかの実施態様において、粉体コーティングは、熱硬化性樹脂組成物を基材に適用し、次に硬化性の熱硬化性樹脂組成物を硬化させることにより形成できる。
【0088】
本明細書に開示する熱硬化性樹脂組成物の硬化は、使用された熱硬化性樹脂、使用された硬化剤、及び触媒(使用された場合)に依存して、通常、少なくとも約30℃で約250℃以下の温度、数分間乃至数時間の時間を必要とする。別の実施態様において、硬化は少なくとも100℃の温度で、数分間乃至数時間の時間で起こりうる。後処理を使用してもよく、かかる後処理は、通常、約100℃〜200℃の温度である。
【0089】
例えば、熱硬化性組成物の硬化反応は、一般的に約20℃〜約250℃、好ましくは約50℃〜約200℃、より好ましくは約50℃〜約150℃の温度で実施できる。熱硬化性樹脂組成物を硬化させる時間は、数分間乃至数時間の範囲であり得る所定の時間であることができ、一般的に、反応時間は、約1分間よりも長く約24時間未満、好ましくは約5分間〜約6時間、より好ましくは約10時間〜約2時間である。熱硬化性樹脂の硬化条件は、使用された成分、組成物に添加されたいずれの任意成分、例えば、触媒(使用された場合)に依存することもある。他の実施態様において、硬化は、第1の温度で起こり、続いて第2の温度又は後処理で起こってよく、かかる後処理は、通常、100℃よりも高い温度、好ましくは約100℃〜200℃の温度である。
【0090】
熱硬化樹脂は、上記のとおりの本発明の硬化性の熱硬化性樹脂組成物を硬化させることにより形成できる。本発明の得られる熱硬化樹脂は、充填剤及び/又は他の添加剤を含む熱硬化物又は熱硬化ネットワーク構造物を構成することができる。本明細書において使用される用語「熱硬化物」又は「熱硬化ネットワーク構造物」は、完全に硬化及び架橋した熱硬化性樹脂の構造物を指す。
【0091】
本発明の得られる粉体コーティングは、優れた熱−機械特性、例えば高い熱安定性を維持しながら良好な靱性及び機械的強度を示す。
【0092】
従来のフェノール系硬化剤(curing agent)及び/又は硬化剤(hardener)及び/又は連鎖延長剤と比較した場合、本発明のジヒドロキシジフェニルシクロアルカン化合物は、本発明の熱硬化樹脂に、幾つかの改良された特性を与えることが本発明において見出された。例えば従来の熱硬化樹脂と比較して、本発明のジヒドロキシジフェニル−シクロアルカン化合物を含む本発明の熱硬化樹脂は、それの他の特性、例えば高い温度安定性及び高い架橋密度を維持しながら、下記の改良された特性を有する:
(1)低い架橋密度を有する二官能性樹脂に基づく改良された機械的特性、例えば改良された靱性、従って比較的強靱である;
(2)改良された熱特性、例えばジシアンジアミドにより硬化した場合、約150℃よりも高い、好ましくは約170℃よりも高い、さらに好ましくは約190℃よりも高い、より高いガラス転移温度;
(3)より高い耐湿特性(高い防湿性、又は換言すると低い吸水率);
(4)より低い誘電定数/誘電正接(Dk/Df)特性;及び
(5)約150mPa・s未満、好ましくは約120mPa・s未満の低い粘度を示すエポキシ樹脂をベースにすること。
【0093】
本発明をいずれか一つの理論に限定するわけではないが、ジヒドロキシジフェニル−シクロアルカン構造中のビスフェノール基の間へのアルキル環の付加が、立体障害によってビスフェノール基の回転を減少させることができ、その結果として、ジヒドロキシジフェニル−シクロアルカン化合物構造の存在が、アルキル環を持たないビスフェノール誘導体を含む従来の樹脂と比較して、ホスト樹脂のガラス転移温度(Tg)を上昇させると理論化される。
【0094】
本発明のジヒドロキシジフェニル−シクロアルカン化合物を含むホスト樹脂のガラス転移温度の上昇は、硬化剤、樹脂及び樹脂を硬化させる際に使用される触媒のタイプ、並びに硬化条件などの因子に依存して、一般的に、約10℃〜約100℃又はそれ以上の範囲内にある。ジヒドロキシジフェニル−シクロアルカン化合物を含むホスト樹脂のヤング率も、アルキル環を持たないビスフェノール誘導体を含む樹脂と比較してより低いことも見出された。従って、本発明の組成物は、より高いTgを示す。ジヒドロキシジフェニル−シクロアルカン化合物中のビスフェノール基の間へのアルキル環の付加が、より高い立体障害のために架橋密度を低下させ、従って、熱硬化性樹脂、例えばエポキシ樹脂に改良された靱性を与えると理論化される。
【実施例】
【0095】
以下の実施例及び比較例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
以下の実施例において使用する種々の用語及び名称を、ここで下記のように説明する:D.E.R.(登録商標)330は、ザ・ダウ・ケミカル・カンパニーから入手可能な177g/eq〜189g/eqのエポキシ当量(EEW)を有する、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルであり;Dowanol(登録商標)PMは、ザ・ダウ・ケミカル・カンパニーにより供給された、プロピレングリコールメチルエーテルを含む溶媒であり;Plenco 13943は、Plastics Engineering Co.から入手可能な、フェノールノボラックエポキシ樹脂であり;「Al触媒」は、Alfa Aesarから入手可能な、エチルトリフェニルホスホニウム酸アセテートから製造された触媒であり;EPON(登録商標)P101は、Hexion Chemicalから入手可能な触媒であり;「dicy」は、ジシアンジアミドを表し;「DSC」は示差走査熱量測定を表し;「EEW」はエポキシ当量を表し;「HEW」はヒドロキシル当量を表し;「2−MI」は、2−メチル−イミダゾールを表し;XZ92747は、Kolon Chemical(韓国)からKBE F4113として市販されている約21質量%のビスフェノールA含有量を有するビスフェノールAノボラック硬化剤であり;XZ92755は、Kolon Chemical(韓国)から市販されている約17質量%のより低いビスフェノールA含有量を有する、KBE F4127をベースとするビスフェノールAノボラック硬化剤であり;Herinol KBE F4127は、Kolon Chemical(韓国)から市販されている約17質量%のより低いビスフェノールA含有量を有するKBE F4127をベースとするビスフェノールAノボラック硬化剤である。
【0096】
以下の標準的な分析装置及び方法を実施例で使用した。
エポキシ当量(EEW)は、氷酢酸中で、テトラエチルアンモニウムブロミドの存在下、0.1M過塩素酸による、エポキシ樹脂サンプル(約0.4mg)の比色滴定によって測定した。ASTM D1652方法に従って、指示薬としてクリスタルバイオレットを使用した。
ガラス転移温度(Tg)を、示差走査熱量測定(DSC)により、20℃/分の加熱勾配で50℃から220℃まで測定した。
温度の関数としての機械的特性を動的機械的分析(DMA)により測定した。
樹脂溶液の反応性は、樹脂溶液のサンプルを170℃のホットプレートの表面上に置くことによって求めた。樹脂溶液の反応性の測定値は、170℃でゲル化するのに必要とした秒単位での経過時間(「ゲル時間」)として報告する。
軟化点は、Mettler FP80により室温(約25℃)から200℃まで3℃/分の加熱勾配で決定した。
分解温度Tdを測定するために熱質量分析(TGA)を使用した。TGAは、TA Instruments製の熱質量分析計TGA2950(これに自動サンプリングデバイスを取り付け、パーソナルコンピュータに接続した)を使用することにより実施した。TGA分析計を窒素雰囲気下で運転した。分解温度Tdは、10℃/分の加熱勾配で50℃から700℃まで、IPC−TM−650−2.3.40に従って測定した。Tdは、パーセント損失質量(特に言及しない限り、即ち、1%、2%、5%又は10%の損失質量)で決定した。典型的な実験誤差は±1℃であった。
【0097】
実施例1
ビスフェノールシクロドデカノンとD.E.R.(登録商標)330とのアドバンスメント反応
ビスフェノールシクロドデカノンの66.8グラム(g)サンプル(189.8ミリモル)を500mLガラス反応器内で133.1gのD.E.R.(登録商標)330(371.8ミリモル)中に140℃で溶解させて混合物を形成した。この混合物を80℃まで冷却し、次に100mgのAl触媒溶液(メタノール中70%固形分)をこの混合物に加え、ビスフェノールシクロドデカノンとD.E.R.(登録商標)330との反応を開始させた。アドバンスメント反応を150℃で実施して、アドバンスト樹脂Aを形成させた。1時間後、アドバンスト樹脂Aを滴定により特性評価した。滴定から得られたアドバンスト樹脂AのEEWは520g/eq(EEW理論=551g/eq)であった。アドバンスト樹脂AのTgを10℃/分の加熱勾配でDSCにより測定した。Tgは54℃であった。
【0098】
比較例A
ビスフェノールAの52.5gサンプル(230.3ミリモル)を500mLガラス反応器内で147.4gのD.E.R.(登録商標)330(411.7ミリモル)中に140℃で溶解させた。この混合物を80℃まで冷却し、次に100mgのAl触媒溶液(メタノール中70%固形分)をこの混合物に添加し、ビスフェノールAとD.E.R.(登録商標)330とのアドバンスメント反応を開始させた。この反応を150℃で実施して、比較用アドバンスト樹脂Aを形成させた。1時間後、比較用アドバンスト樹脂Aを滴定により特性評価した。滴定から得られた比較用アドバンスト樹脂AのEEWは569g/eq(EEW理論=552g/eq)であった。比較用アドバンスト樹脂AのTgを10℃/分の加熱勾配でDSCにより測定した。Tgは49℃であった。
アドバンストビスフェノールシクロドデカノン樹脂(実施例1)は、アドバンストビスフェノールA樹脂(比較例A)よりも高い樹脂Tgを有する。樹脂についてのより高いTgは、樹脂の貯蔵安定性のために有利であろう。
【0099】
実施例2
ビスフェノールシクロドデカノンとD.E.R.(登録商標)330とのアドバンスト樹脂の硬化
上記実施例1から得られたアドバンスト樹脂A(EEW=520g/eq)の20.0gのサンプルを0.48gのdicy及び0.25gのEPON(登録商標)P101と混合した。この混合物を200℃で2時間硬化させて硬化樹脂Aを形成させた。硬化樹脂AのTgをDSCにより10℃/分の加熱勾配で測定した。硬化樹脂AのTgは141℃であった。
【0100】
比較例B
上記比較例Aから得られたアドバンスト樹脂B(EEW=569g/eq)の20.0gサンプルを0.45gのdicy(当量14g/eq)及び0.26gのEPON P101と混合した。
この混合物を200℃で2時間硬化させて硬化樹脂Bを形成させた。硬化樹脂BのTgを、DSCによって10℃/分の加熱勾配で測定した。硬化樹脂BのTgは115℃であった。
実施例2及び比較例Bの硬化樹脂は、硬化樹脂A(アドバンストビスフェノールシクロドデカノン樹脂、実施例2)及び硬化樹脂B(アドバンストビスフェノールA樹脂、比較例B)について、同様のEEWで、Tgを示した。ビスフェノールシクロドデカノンの使用によって、硬化樹脂Aが、硬化樹脂Bに対して26℃のTgの増加を示した。
【0101】
実施例3 フェノールノボラックによるビスフェノールシクロドデカノンのジグリシジルエーテルの硬化
ビスフェノールシクロドデカノンのジグリシジルエーテル(15.0g)とフェノールノボラック(5.3g、Plenco 13943(登録商標))との混合物を混合して均質にし、160℃で一緒に溶融させた。混合物を80℃に冷却後、2−MIの溶液(Dowanol(登録商標)PM中20%w/w、50mg)を加えた。混合物をアルミニウムパン(直径60mm)に注ぎ入れ、200℃に2時間加熱して硬化させた。この注型品からDMA分析のための11×55×3mmの大きさのサンプルを機械加工した。DMA結果は後述する。
【0102】
比較例C
D.E.R.(登録商標)330(15.0g)とフェノールノボラック(8.38g、Plenco 13943(登録商標))との混合物を160℃で一緒に溶融させた。混合物を80℃に冷却後、2−MIの溶液(Dowanol(登録商標)PM中20%w/w、50mg)を加えた。混合物をアルミニウムパン(直径60mm)に注ぎ入れ、200℃に2時間加熱して硬化させた。この注型品からDMA分析のための11×55×3mmの大きさのサンプルを機械加工した。DMA結果は後述する。
2種の樹脂(樹脂C及び比較用樹脂C)の靱性をDMAにより測定した。樹脂Cを含んでなる実施例2の硬化樹脂は、実施例1における手順を使用して製造されたアドバンストビスフェノールシクロドデカノン樹脂である。樹脂Cを、実施例2における手順を使用してPlenco 13943により硬化させた。この硬化樹脂を本明細書において「硬化樹脂C」(実施例3)として参照する。
比較用樹脂Cは、従来のビスフェノールA、DER 330である。比較用樹脂Cを、比較例Bの手順を使用してPlenco 13943により硬化させた[本明細書において、「比較用硬化樹脂C」(比較例C)]。
硬化樹脂C及び比較用硬化樹脂Cは、約130℃の同様のガラス転移温度(Tg)を有していた。上記の2種の樹脂の靱性は、それらの樹脂が同様のガラス転移温度(Tg)を有するため、比較できる。
【0103】
靱性は、ヤング率(E’)の低下により定義できる。上記の2種の樹脂は、約130℃でのガラス転移の結果として、より低い剛性(弾性率低下)を得る。硬化樹脂Cのヤング率(E’)は、130℃でのTgの前の約5×10Paから130℃でのTgの後の約3×10Paまで低下する。
ゴムモジュラス範囲(Tgが130℃に達した後)内の硬化樹脂Cのヤング率(E’)は、同じゴムモジュラス範囲内の比較用硬化樹脂Cのものよりも低いヤング率(E’)(改良された靱性)を有する。従って、硬化樹脂Cは、ビスフェノールシクロドデカノンを使用することによって、従来のビスフェノールAを使用した比較用硬化樹脂Cよりも改良された靱性を有する。
本発明の実施例の結果は、ジヒドロキシジフェニル−シクロアルカン化合物のジグリシジルエーテルを含んでなるエポキシ樹脂が、従来のエポキシ樹脂、例えばビスフェノールAをベースとした高い樹脂ガラス転移温度(樹脂Tg)を有することを示している(実施例1及び比較例Aを参照)。本発明の硬化したエポキシ樹脂は、従来のビスフェノールAをベースとしたエポキシ樹脂を含んでなるエポキシ樹脂よりも高い硬化後ガラス転移温度(硬化後Tg)を示す(実施例2及び比較例Bを参照)。本発明の硬化したエポキシ樹脂は、また、フェノール系硬化剤により硬化された従来のエポキシ樹脂と比較して、改良された機械的特性、例えば靱性を有し、従って、本発明のエポキシ樹脂は、改良された耐衝撃性を有する(実施例3及び比較例Cを参照)。
【0104】
実施例4 eCDONの合成
サーモスタット制御加熱マントルを取り付けた2リットル三口丸底ガラス反応器に、シクロドデカノンのビスフェノール(約176g、1.0ヒドロキシル当量)、エピクロロヒドリン(約694g、7.5モル)及びイソプロパノール(約373g、使用したエピクロロヒドリンの35質量%)を入れた。この反応器に、さらに、凝縮器(−15℃に維持)、温度計、クライゼンアダプター、オーバーヘッド窒素入口(1LPMのNを使用)及び撹拌機アセンブリー(Teflon(登録商標)パドル、ガラスシャフト、可変速モーター)を取り付けた。50℃で溶解させた後、サイドアーム付きベント式添加漏斗から水酸化ナトリウムの溶液(水中20%、180g)を20〜30分間かけて加えた。撹拌を開始して、エピクロロヒドリン及びイソプロパノール中のシクロドデカノンのビスフェノールのスラリーを得た。この反応の間、温度を50℃に維持した。20分間の後反応の後、撹拌を停止し、水性層を有機層から除去した。
【0105】
有機層の加熱及び撹拌を50℃まで再開した。第二部の水酸化ナトリウム(水中20%、80g)の滴下添加を、温度を50℃に維持しながら、20分間かけて完了した。20分間の後反応の後、撹拌を停止し、水性層を有機層生成物から除去した。次に、有機層について7のpHが達成されるまで、3〜4個の部分(それぞれ250ミリリットル)の脱イオン水により、有機層を洗浄した。
【0106】
75℃の油浴温度を使用する有機層の回転蒸発を使用して、揮発性物質の大半を除去した。125℃で2〜3時間(16ミリバール)の更なるロータリー蒸発によって、約225〜235gの透明な無色液体が得られ、これは、室温(約25℃)で脆い固形物に固化した。得られた樹脂は、ビスフェノールシクロドデカノンのジグリシジルエーテル(ここでは「eCDON」)であり、下記の特性を有していた。
【0107】
【表1】

【0108】
実施例5 eCDONを使用する粉体組成物の調製
上記実施例4で調製されたeCDON(EEW 236g/eq)の20gのサンプル、1.06gのdicy(当量14g/モル)及び0.35gのEPON(登録商標)P101を15℃で10秒間混合して微粉末にした。この粉末を、次に200℃で30分間かけて硬化させた。得られた熱硬化物のガラス転移温度(Tg)を、10℃/分の熱勾配で50℃から300℃まで記録した。得られた熱硬化物のTgは約198℃であった。
【0109】
比較例E 従来のエポキシ樹脂を使用する粉体組成物の調製
D.E.R.(登録商標)330(EEW 179g/eq)(ビスフェノールAジグリシジルエーテル材料、ザ・ダウ・ケミカル・カンパニーから市販)の20gのサンプル、1.4gのdicy(当量14g/eq)及び0.35gのEPON(登録商標)P101を120℃で混合し、180℃で20分間混合した。得られた生成物を150℃で10秒間混合して微粉末にし、この微粉末を次に200℃で30分間かけて硬化させた。得られた生成物のTgを10℃/分の熱勾配で50℃から300℃まで記録した。得られた熱硬化物のTgは約143℃であった。
上記実施例5及び比較例Eに示されているように、ビスフェノールシクロドデカノンのアドバンストジグリシジルエーテルの使用(実施例1)は、ビスフェノールAジグリシジルエーテル材料の使用(比較例E)と比較して、それぞれ198℃及び143℃のTgを有する熱硬化生成物を与えた。ビスフェノールシクロドデカノンのジグリシジルエーテルの使用によって、得られる熱硬化生成物のTgが55℃上昇した。
【0110】
実施例6 dicyによるeCDONの硬化
eCDONのサンプル(4.62g)、dicy(0.34g)及び2−フェニルイミダゾール(0.038g)を、極低温粉砕により混合した。この方法は、両端がねじ切りされたステンレススチールシリンダーに固形物を加え、金属球を加え、内容物を液体窒素中で冷却し、この集成体を10分間振盪することを含む。このシリンダーを窒素パージされたバッグの中に入れ、室温に温めた。粉末の一部をアルミニウムパンに入れ、真空オーブン内で190℃で90分間加熱すると、透明な注型品が形成された。DSCにより202℃のTgが観測された。この注型品を4個の部分に切り分け、それぞれを秤量し、全部をスチームオートクレーブ内に121℃で90分間置いた。各部分の質量増分を百分率で表し、4つの値を平均して2.3質量%の値が得られた。
【0111】
比較例F dicyによるD.E.R.(登録商標)331の硬化
D.E.R.(登録商標)331(ビスフェノールAジグリシジルエーテル、4.51g)、dicy(0.44g)及び2−フェニルイミダゾール(0.05g)を使用して、実施例6に記載された実験を繰り返した。DSCにより139℃のTgが観測され、吸水率は3.9質量%であった。
上記の実施例6及び比較例Fに示されているように、ビスフェノールシクロドデカノンのジグリシジルエーテルの使用(実施例6)は、ビスフェノールA材料のジグリシジルエーテルの使用(比較例F)と比較して、それぞれ、202℃及び139℃のTgと、2.3質量%及び3.9質量%の吸水率を有する熱硬化生成物を与えた。ビスフェノールシクロドデカノンのジグリシジルエーテルの使用によって、得られる熱硬化生成物のTgが63℃上昇し、吸水率が41%減少した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(I)少なくとも1種の熱硬化性樹脂組成物及び(II)少なくとも1種の硬化剤を含む硬化性粉体コーティング樹脂組成物であって、粉体コーティングが硬化した場合に、得られる硬化生成物が、約150℃を超える高いガラス転移温度(ジシアンジアミドにより硬化した場合)と3.9%未満の吸水率との組み合わせを含む釣り合いのとれた特性を有する、硬化性粉体コーティング樹脂組成物。
【請求項2】
前記熱硬化性樹脂組成物が、下記一般式I:
【化1】

(式中、Rは水素又はメチル基であり、R及びRは互いに独立に、それぞれ、水素原子、ハロゲン、置換若しくは非置換アルキル基、置換若しくは非置換アリール基又は置換若しくは非置換アラルキル基、ニトリル基、ニトロ基、置換若しくは非置換アルコキシ基を表し、XはCH、CH(R)又はC(R)(R)であり、mは8〜20の整数であり、R及びRは互いに独立に、それぞれ、水素原子、ハロゲン、置換若しくは非置換アルキル基、置換若しくは非置換アリール基又は置換若しくは非置換アラルキル基を表し、nは0〜約10の値を有する整数である。)
により表されるエポキシ樹脂を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記熱硬化性樹脂組成物が、下記一般式II:
【化2】

(式中、R、R、R、R、R、X及びmは、式Iにおいて定義した通りであり、yは1〜約20の値を有する整数であり、pは1〜約20の値を有する整数であり、Qはヒドロカルビレン部分であり、各Zは、O、S、−NR(式中、Rはヒドロカルビル部分である)からなる群から独立に選択される。)
により表されるアドバンストエポキシ樹脂組成物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記熱硬化性樹脂組成物が、下記一般式III:
【化3】

(式中、R、R、R、R、R、X、Z、m及びpは、式IIにおいて定義した通りであり、yは0〜約20の値を有する整数であり、Qはヒドロカルビレン部分であり、ZはZ−Hである。)
により表されるアドバンストヒドロキシル官能性樹脂組成物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
成分(I)と異なる少なくとも1種の熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂、イソシアネート樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、フェノール系樹脂、ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル樹脂、及びこれらの混合物から選択される樹脂を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
成分(I)と異なる少なくとも1種の熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
少なくとも1種の熱硬化性の成分(I)の濃度が、前記組成物の総質量に基づいて当該熱硬化性樹脂が約10質量%〜約99質量%であるというものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
さらに、(V)触媒及び(VI)溶媒のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
成分(I)の少なくとも1種の熱硬化性樹脂が、ジヒドロキシジフェニル−シクロアルカン化合物のジグリシジルエーテルを含み、前記ジヒドロキシジフェニル−シクロアルカン化合物が、下記一般式IV:
【化4】

(式中、R及びRは互いに独立に、それぞれ、水素原子、ハロゲン、置換若しくは非置換アルキル基、置換若しくは非置換アリール基又は置換若しくは非置換アラルキル基を表し、XはCH、CH(R)又はC(R)(R)であり、mは8〜20の整数であり、R及びRは互いに独立に、それぞれ、水素原子、ハロゲン、置換若しくは非置換アルキル基、置換若しくは非置換アリール基又は置換若しくは非置換アラルキル基を表す。)
により表されるジヒドロキシジフェニル−シクロアルカン化合物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記ジヒドロキシジフェニル−シクロアルカン化合物が、約C8〜約C20の炭素原子を含むシクロアルカン化合物から製造されたものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記シクロアルカン化合物が、シクロオクタノン、シクロデカノン、シクロドデカノン、シクロペンタデカノン、シクロオクタデカノン、シクロエイコサノン、及びそれらの混合物を含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
シクロアルカン化合物がビスフェノールシクロドデカノンを含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
成分(I)が前記組成物の総質量を基準として約20質量%〜約98質量%を構成し、成分(II)が前記組成物の総質量を基準として約2質量%〜約50質量%を構成する、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物が約300〜約10000原子質量単位(g/モル)の分子量を有する、請求項1〜13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
請求項1に記載の組成物から製造された粉体コーティング。

【公表番号】特表2013−512989(P2013−512989A)
【公表日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−542035(P2012−542035)
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【国際出願番号】PCT/US2010/056105
【国際公開番号】WO2011/068645
【国際公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】