コーティング
親水性コーティングを実質的に任意の表面に塗布し、長期にわたって持続する防曇効果を発揮させることができる。コーティングは、親水性ポリマーの分子レベルのブレンドを含む。コーティングは、交互積層法を用いてアセンブルすることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権の主張)
本出願は、2009年6月2日に出願された仮米国特許出願第61/183,312号(その全体が引用により組み込まれている)の優先権を主張する。
【0002】
(連邦政府による委託研究又は開発)
本発明は、全国科学基金によって授与された譲渡番号DMR-0213282の下、政府の支援によってなされた。政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0003】
(技術分野)
本発明は、コーティングに関する。
【背景技術】
【0004】
(背景)
多くの基板は、透明か半透明、又は不透明かにかかわらず、基体表面が周囲空気の露点より冷たい場合、例えば、冷却された表面が湿潤空気に露出される場合、曇るようになる。車両の窓、飛行機のウィンドシールドと窓、食物の包装、菜園用プラスチックシート、温室窓、眼鏡類(眼鏡、サングラス、ゴーグル、フェイスシールド等)、双眼鏡、カメラレンズ、内視鏡レンズ、及び他の光学機器等の透明基板はすべて、曇りの影響を受けやすい。また、プラスチック、セラミックス及び金属の不透明な表面及び/又は反射表面も、これらの表面上で曇り又は結露を起こしやすい。眼鏡及び自動車の窓等の光学的要素の曇りは、妨害となり、また、多くの場合、重大な危険となり得る。多くの種々の型のコーティング及び添加物が、特に光学面の曇りに対処するのに使用されている。この問題に専念した相当な検討にもかかわらず、関心対象の表面に一般に塗布することができる(すなわち、生産条件の広範囲なカスタマイゼーション及び最適化なしで)、効果的で、安価な、長期にわたって持続する防曇コーティング(antifog coating)の必要性が残されている。このため、永続的な防曇能を有して販売されている市販製品は今日、ほとんどない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(概要)
高分子電解質多層は、種々の表面上で容易にアセンブルすることができる。材料、アセンブリ条件及び後処理条件の選択を用いて、最終製品の化学的、構造的及び光学的性質を制御することができる。安定して持続するコーティングは、高分子電解質を含む層ごとにアセンブルされた膜から形成することができる。該コーティングは、持続的な防曇性を表面、特に光学面に提供することができる。
【0006】
親水性コーティングを実質的に任意の表面に塗布し、長期にわたって持続する防曇効果を発揮させることができる。該コーティングには、少なくとも2つの親水性ポリマーの分子レベルのブレンドを含み得る。該コーティングは、別の技術を使用することができるが、例えば、層ごとのアセンブリ工程を用いて作製することができる。層ごとのアセンブリは、水系工程になり、これによって、光学用途に広く使用される多くのプラスチック基板(ポリカーボネート及びポリ(メタクリル酸メチル)等)にダメージを与え得る溶媒及び化学薬品を回避する。コンフォーマルコーティングは、例えば、浸漬、スピン、又はスプレーアセンブリ工程によって塗布することができる。防曇コーティングは、非常に透明であり、種々の条件下で非常に効果的な防曇性を有し得る。該コーティングの持続性は、種々の一般的な架橋法及び表面改質法によって増加させることができる。
【0007】
一態様において、物品には、防曇コーティングでコーティングした表面が含まれ、該コーティングには、第1の親水性ポリマーと第2の親水性ポリマーとが含まれ、該第1の親水性ポリマーと第2の親水性ポリマーが分子的にブレンド(molecularly blend)される。
【0008】
該コーティングには、該第1の親水性ポリマーを含んだ第1の層と、該第2の親水性ポリマーを含んだ第2の層とが含まれ得る。該第1の親水性ポリマーと第2の親水性ポリマーは、混合することができる。該コーティングには、該第1の親水性ポリマーを含んだ複数の第1の層を含む一連の層が含まれ、該複数の第1の層は、該第2の親水性ポリマーを含んだ複数の層と互い違いになり得る。
【0009】
別の態様において、物品には、防曇コーティングでコーティングした表面が含まれ、該コーティングには、第1の親水性ポリマーを含んだ複数の第1の層を含む一連の層が含まれ、該複数の第1の層は、第2の親水性ポリマーを含んだ複数の層と互い違いになり、該第1の親水性ポリマーと該第2の親水性ポリマーが混合される。該第1の層は、該第1の親水性ポリマーから実質的に成り得る。該第2の層は、該第2の親水性ポリマーから実質的に成り得る。
【0010】
別の態様において、防曇コーティングで物品表面をコーティングする方法には、分子的にブレンドされた第1及び第2の親水性ポリマーを含んだ組成物を物品の表面上に堆積することが含まれる。
【0011】
堆積には、該表面と、該第1の親水性ポリマーを含んだ第1の水溶液とを接触させることが含まれ得る。堆積には、該表面と、該第2の親水性ポリマーを含んだ第2の水溶液とを接触させることがさらに含まれ得る。堆積には、該第1の親水性ポリマーを含んだ第1の層を形成することと、該第2の親水性ポリマーを含んだ第2の層を形成することが含まれ得る。堆積には、堆積の際、該第1の親水性ポリマーと該第2の親水性ポリマーが混合するように、該第1の親水性ポリマー及び該第2の親水性ポリマーを選択することが含まれ得る。
【0012】
堆積には、第1の親水性ポリマーを含んだ複数の第1の層を含む一連の層を形成することが含まれ、該複数の第1の層は、第2の親水性ポリマーを含んだ複数の層と互い違いになり得る。
【0013】
堆積には、交互に、該表面と、該第1の親水性ポリマーを含んだ第1の水溶液とを接触させることと、該表面と、該第2の親水性ポリマーを含んだ第2の水溶液とを接触させることが含まれ得る。
【0014】
該表面と該第1の水溶液とを接触させることには、浸漬コーティング、スプレーコーティング、スピンコーティング、又はこれらの組合せが含まれ得る。該表面と該第2の水溶液とを接触させることには、浸漬コーティング、スプレーコーティング、スピンコーティング、又はこれらの組合せが含まれ得る。
【0015】
該方法には、堆積された組成物と化学的架橋試薬とを接触させることがさらに含まれ得る。該方法には、該表面を、該第1の親水性ポリマー及び該第2の親水性ポリマーを熱架橋するのに十分であるが、該物品を変形するには不十分である温度に暴露することがさらに含まれ得る。
【0016】
別の態様において、防曇コーティングで物品表面をコーティングする方法には、交互に、該表面と、該第1の親水性ポリマーを含んだ第1の水溶液とを接触させることと、該表面と、該第2の親水性ポリマーを含んだ第2の水溶液とを接触させることが含まれ得る。
【0017】
該第1の親水性ポリマーには、複数のイオン化基(ionized group)又はイオン性基(ionizable group)が含まれ得る。該第2の親水性ポリマーには、複数のイオン化基又はイオン性基が含まれ得る。該第2の親水性ポリマーには、複数の水素結合性基が含まれ得る。少なくとも1つの該第1及び第2の親水性ポリマーは、第1の複数のイオン化基又はイオン性基と、第2の化学的に独立した複数の水素結合性基とを含む共重合体であり得る。
【0018】
該第1の親水性ポリマーは、キトサン(CHI)、ポリ(アリルアミン)-co-ポリ(エチレンオキシド)共重合体(PAH-g-PEG)、ポリ(L-リジン)-co-(ポリエチレンオキシド) (PLL-g-PEG)、ポリ(四級化-4-ビニルピリジン)-co-ポリ(エチレンオキシド) (QPVP-co-PEG)、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)-co-ポリ(エチレンオキシド) (PDADMA-co-PEG)、ポリ(アリルアミン)-co-ポリアクリルアミド共重合体(PAH-co-PAAM)、ポリ(L-リジン)-co-ポリアクリルアミド(PLL-co-PAAM)、ポリ(四級化-4-ビニルピリジン)-co-ポリアクリルアミド(QPVP-co-PAAM)、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)-co-ポリアクリルアミド(PDADMA-co-PAAM)、ポリ(アリルアミン)-co-ポリアクリルアミド共重合体(PAH-co-PAAM)、及びこれらの組合せからなる群より選択することができる。
【0019】
該第2の親水性ポリマーは、カルボキシメチルセルロース(CMC)、アルギン酸(AA)、ヒアルロン酸(HA)、ヘパリン、ペクチン、ポリ(アクリル酸)-co-ポリ(エチレンオキシド)共重合体(PAA-co-PEG)、ポリ(メタクリル酸)-co-ポリ(エチレンオキシド)共重合体(PMAA-co-PEG)、ポリ(アクリル酸)-co-ポリアクリルアミド共重合体(PAA-co-PAAM)、ポリ(メタクリル酸)-co-ポリアクリルアミド(PMAA-co-PAAM)、カラギーナン(κ, a l, aλ)、フコイダン、フコガラクタン、コンドロイチン、ゲランガム、カラヤガム、トラガカントゴム、ウェランガム(welan gum)、キサンタンゴム、オオバコ種子ガム質、及びこれらの組合せからなる群より選択することができる。
【0020】
該第1の親水性ポリマーは、カルボキシメチルセルロース(CMC)、アルギン酸(AA)、ヒアルロン酸(HA)、ポリ(アクリル酸)-co-ポリ(エチレンオキシド)共重合体(PAA-co-PEG)、ポリ(メタクリル酸)-co-ポリ(エチレンオキシド)共重合体(PMAA-co-PEG)、ポリ(アクリル酸)-co-ポリ(アクリルアミド)共重合体(PAA-co-PAAM)、ポリ(メタクリル酸)-co-ポリ(アクリルアミド) (PMAA-co-PAAM)、及びこれらの組合せからなる群より選択することができる。
【0021】
該第2の親水性ポリマーは、ポリ(エチレンオキシド) (PEG)、ポリアクリルアミド(PAAM)、ポリ(ビニルアルコール) (PVA)、ポリ(ビニルピロリドン) (PVP)、キトサン、キチン、イヌリン、ラミナラン、プルラン、カードラン、スクレログルカン、タラガム、タマリンドガム、グアーガム、マンナン、デキストラン、グリコーゲン、セルロース、及びこれらの組合せからなる群より選択することができる。
【0022】
該第1の親水性ポリマー及び該該第2の親水性ポリマーは、互いに化学的架橋するか、又は互いに熱架橋することができる。該物品は光学部品であり得る;例えば、該物品は眼鏡レンズであり得る。該物品は、透明であり、23℃で100%の湿度に少なくとも60秒間暴露後の相対透過率(Tr)が90%より高い場合がある。該物品は、透明であり、23℃で100%の湿度に少なくとも60秒間暴露後の曇り度(ヘーズ)が1.0%未満の場合がある。
【0023】
1以上の実施態様の詳細を添付図面及び以下の説明に示す。他の特徴、目的及び利点は、説明と図面、及び特許請求の範囲から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、コーティングされた物品の概略図である。
【図2】図2は、二分子層の数の関数としての(CHI/CMC)コーティングの厚さを表すグラフである。
【0025】
【図3】図3は、二分子層の数の関数としての(CHI/PAA-g-PEG)コーティングの厚さを表すグラフである。
【図4】図4は、ガラス基板上の架橋した10の二分子層CHI/CMCコーティングのトポグラフィAFM (topographical AFM)の像である。
【0026】
【図5】図5A〜5Dは、防曇コーティングについての湿度室試験の結果を表す写真である。ポリカーボネート上の架橋した10の二分子層CHI/CMCコーティングを、37℃で80%の湿度に、(A)1秒間;(B)10秒間;(C)20秒間;及び、(D)60秒間暴露させた。基板底部の曇った部位は、コーティングされていない。
【0027】
【図6】図6A及び6Bは、防曇コーティングについての湿度室試験の結果を表す写真である。10の二分子層CHI/PAA-g-PEG (37% PEG)コーティングを、37℃で80%の湿度に、(A)1秒間;及び(B)20秒間暴露させた。基板底部の曇った部位は、コーティングされていない。
【0028】
【図7】図7A及び7Bは、防曇コーティングについての湿度室試験の結果を表す写真である。10の二分子層CHI/PAA-g-PEG (25% PEG)コーティングを、37℃で80%の湿度に、(A)1秒間;及び(B)20秒間暴露させた。
【0029】
【図8】図8A及び8Bは、防曇コーティングについての湿度室試験の結果を表す写真である。CMC単分子層コーティングを、37℃で80%の湿度に、(A)1秒間;及び(B)20秒間暴露させた。
【0030】
【図9】図9A及び9Bは、防曇コーティングについての湿度室試験の結果を表す写真である。PAA-g-PEG (50% PEG)単分子層コーティングを、37℃で80%の湿度に、(A)1秒間;及び(B)20秒間暴露させた。
【0031】
【図10】図10は、一方のレンズ(左側)をCHI/PAA-g-PEG (50% PEG)の10の二分子層コーティングでコーティングし、一方のレンズ(右側)が未処理である、一組の保護眼鏡を表す写真である。該写真は、該眼鏡を1ヶ月間冷蔵庫に置いた(4℃)後に撮影した。
【0032】
【図11】図11は、一方の端部(右側)をCHI/PAA-g-PEG (50% PEG)でコーティングし、他方の端部(左側)にはコーティングをしていない、ガラス基板を表す写真である。該ガラス基板を4℃で2週間冷蔵庫に置いた後に、熱蒸気に直接暴露させた。
【0033】
【図12】図12は、一方の端部(右側)をCHI/PAA-g-PEG (37% PEG)でコーティングし、他方の端部(左側)にはコーティングをしていない、ガラス基板を表す写真である。該ガラス基板を4℃で2週間冷蔵庫に置いた後に、熱蒸気に直接暴露させた。
【0034】
【図13】図13A〜13Cは、鉛筆硬度試験((A) 2H;(B) 4H;、及び(C) 7H)後のCHI/PAA-g-PEG (37% PEG)の15の二分子層コーティングの顕微鏡写真である。
【図14】図14は、4H(下部)及び7H(上部)鉛筆による試験後のEDC/NHS及びグルタルアルデヒドの両方で架橋したCMC/CHIの15.5の二分子層コーティングの光学画像である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
(詳細な説明)
所望の防曇性を有するコーティングは、少なくとも2つの親水性ポリマーの分子レベルのブレンドによって達成することができる。該親水性ポリマーは、例えば、少数が命名された、カルボン酸、アミノ、アルキルエーテル、及びヒドロキシル基等の高濃度の親水性官能基を有し得る。該親水性ポリマーには、1以上の高分子電解質(例えば、ポリカチオン、ポリアニオン、若しくはカチオン性基及びアニオン性基の両方を含むポリマー)、1以上の中性親水性ポリマー(例えば、ポリアルキルエンエーテル、ポリアクリルアミド、多価アルコール)、又は1以上の高分子電解質と1以上の中性親水性ポリマーの組合せが含まれ得る。防曇コーティングは、親水性高分子電解質と中性親水性ポリマー間の水素結合相互作用を有し得る。中性及び荷電性多糖を該防曇コーティングに使用することができる。
【0036】
分子的にブレンドされたポリマーは、ブレンドするか又は組み合わせる場合、分子レベルの混合された構造を有し得る。場合によっては、2つのポリマーはそれぞれ別々に水中で溶解することがあるが、その溶液を単に混合することによって、両者の制御されない沈殿が生じる。これらの制御されない沈殿によって、分子レベルにおいて良好に混合されないことが多い。一方、層ごとのアセンブリによって得ることができる一連のポリマー層は、分子レベルにおいて混合及び浸透される。この連続した該ポリマーは、分子的にブレンドされたということができる。
【0037】
多孔性、テキスチャ及び表面の化学的性質は、表面の湿潤性に影響を及ぼし得る。例えば、米国特許出願公開第2003/0215626号、第2006/0029634号、第2007/0104922号、第2007/0166513号、第2008/0268229号、米国仮特許出願第61/061,806号、及び国際公開公報第2009/009185号(それぞれ、その全体が引用により組み込まれている)を参照のこと。表面の構造及び化学組成によって、該表面は、親水性、疎水性か、あるいは、超親水性若しくは超疎水性の極端であり得る。所望のテキスチャを生み出す一つの方法は、高分子電解質多層によるものである。ポリマー多層(例えば、高分子電解質多層を含む)は、所望の湿潤性及び光学的性質を表面に与えるように、所定の化学的特徴及び構造的特徴を有する表面を提供することができる。
【0038】
親水性表面は水を吸引する。これと比較して、疎水性表面は、水とのエネルギー的に不都合な相互作用を有する。これらの比較的不都合な相互作用によって、近年のワックスが塗られた自動車のボンネット上につく雨水の水滴化及び転がり等の疎水性表面のよく知られている特性が生じる。一般に、非疎水性表面は、疎水性材料で表面をコーティングすることによって疎水性になり得る。表面の疎水度は、例えば、該表面上における少量の水の接触角を決定することによって測定することができる。該接触角は、静止接触角か動的接触角であり得る。動的接触角の測定には、前進接触角若しくは後退接触角の測定、又はこれらの両方が含まれ得る。前進接触角と後退接触角間のわずかな相違(すなわち、低い接触角ヒステリシス)を有する疎水性表面が望ましい。水滴は、高い接触角ヒステリシスを有する表面よりも容易に、低い接触角ヒステリシスを有する表面を横切って移動する。
【0039】
ポリマー多層の層ごとの処理を使用して、膜厚さ及び化学作用に対する分子レベルの制御によって、コンフォーマル薄膜コーティングを作製することができる。荷電性高分子電解質は、層ごとの様式でアセンブルすることができる。換言すると、正及び負に荷電した高分子電解質は、基板上に交互に堆積することができる。場合によっては、静電気的に中性の親水性ポリマーは、高分子電解質の代わりに使用することができる。
【0040】
親水性ポリマーには、複数のイオン化官能基(ionized functional group)又はイオン性官能基(ionizable functional group)が含まれ得る。高分子電解質は、ポリカチオン性又はポリアニオン性であり得る。ポリカチオンは、主鎖(例えば、ポリ(アリルアミン塩酸塩))に結合した複数の正に荷電した官能基を備える該主鎖を有する。ポリアニオンは、スルホン化ポリスチレン(SPS)若しくはポリ(アクリル酸)、又はこれらの塩等の主鎖に結合した複数の負に荷電した官能基を備える該主鎖を有する。高分子電解質の中には、pH等の条件によって、それらの電荷を失うものがある(すなわち、電気的に中性になる)。
【0041】
該イオン化官能基又はイオン性官能基のイオン化状態は、pHに強く依存し得る。例えば、高分子電解質には、-COOH/-COO-等の酸/共役塩基対として、又は、例えば-NH2/-NH3+の塩基/共役酸対として存在し得る官能基が含まれ得る。イオン化官能基又はイオン性官能基のpKaは、例えば、2〜12、3〜11、又は4〜10の範囲であり得る。イオン化官能基の一部は、大部分はpHと無関係に帯電を維持する。例えば、第四級アミン官能基(例えば、-NR3+)は、pHからの比較的少ない影響によって正に荷電することができる。
【0042】
親水性ポリマーには、複数の水素結合(又はH結合)官能基が含まれ得る。一般に、水素結合性官能基は、H結合アクセプタ(例えば、孤立電子対;カルボニル酸素は、H結合アクセプタであることが多い)、又はH結合ドナーのいずれかであり得る。H結合ドナー官能基は通常、水に交換可能な水素原子の存在という特徴がある。例えば、ヒドロキシル基には、水に交換可能な水素原子が含まれ、H結合ドナーとして水素結合に関与することが多い。ヒドロキシル基は、十分な塩基条件下でイオン化されるようになり得る。しかしながら、最も有機的なヒドロキシル基は、ほとんどの水溶液において中性である。例えば、pKaが、2〜12、3〜11、又は4〜10の範囲外である場合、官能基は、水素結合性基と考えることができるが、イオン化官能基又はイオン性官能基と考えることができない。アミノ基等の官能基の中には、水素結合性及びイオン化又はイオン性と考えられるものがある。
【0043】
ポリマーの中には、複数の種々のイオン化若しくはイオン性又は水素結合性官能基が含まれるものがある。かかる例はポリL-リジンであり、これには、複数のアミノ基(イオン化又はイオン性)、及び複数のペプチド結合(H結合及びアクセプタを含む)が含まれ得る。他の例はキトサン、ポリ(β-1,4-D-グルコサミン)であり、これには、複数のヒドロキシル基及び複数のアミノ基が含まれる。また、共重合体には、種々のモノマー単位も含まれ、これらの中には、親水性官能基が含まれるものがあり、また、これらの中には、イオン化官能基又はイオン性官能基が含まれるものがある。これらのイオン化官能基又はイオン性官能基は、カチオン性又はアニオン性であり、あるいは、該共重合体には、カチオン性及びアニオン性モノマー単位の両方が含まれ得る。水素結合性官能基及びイオン化官能基又はイオン性官能基を含む共重合体の幾つかの例には、ポリ(L-リジン)-co-(ポリエチレンオキシド) (PLL-g-PEG)、ポリ(四級化-4-ビニルピリジン)-co-(ポリエチレンオキシド) (QPVP-co-PEG)、ポリ(アクリル酸)-co-ポリ(エチレンオキシド)共重合体(PAA-co-PEG)、及びポリ(アクリル酸)-co-ポリアクリルアミド共重合体(PAA-co-PAAM)が含まれる。該共重合体は、例えば、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体、又は他の共重合体であり得る。
【0044】
該ポリマーを堆積する方法の一つは、適切なpHで、基板と該ポリマーの水溶液を接触させることである。pHは、高分子電解質が部分的に又は弱く荷電されるように、選択することができる。多層は、二分子層の数によって説明することができ、2つの異なったポリマーの連続的な適用から生じた二分子層(例えば、相対して荷電した2つの高分子電解質)が含まれる。例えば、PAH-PAA-PAH-PAA-PAH-PAAの一連の層を有する多層は、3つの二分子層から作製されると言える。
【0045】
図1Aは、基板110の表面上に親水性コーティング150を有する物品100を概略的に示す。コーティング150には、分子的にブレンドされた親水性ポリマーが含まれ得る。親水性ポリマーが、層ごとの工程において該表面上に堆積される場合、生じた層は、高度に浸透するようになってもよい。例えば、第1の層の該親水性ポリマーは、第2の(化学的に独立した)層の親水性ポリマーと混合してもよい。状況によっては、混合及び浸透は、層の境界が不明瞭である程度に生じてもよい。
【0046】
これらの方法は、処理溶液の条件(例えば、pH、イオン強度及び温度)の簡易な調整によって、堆積工程における分子の制御を提供することができる。弱く荷電された高分子電解質の特性は、pHの変化によって正確に制御することができる。例えば、G. Decherの文献:Science 1997, 277, 1232;Mendelsohnらの文献:Langmuir 2000, 16, 5017;Feryらの文献:Langmuir 2001, 17, 3779;Shiratoriらの文献:Macromolecules 2000, 33, 4213;及び、米国特許出願公開第2003/0215626号を参照のこと(それぞれ、その全体が引用により組み込まれている)。この型のコーティングは、これらの高分子電解質多層を構築するために使用される水系交互(LbL)吸着工程を許容し得る表面に塗布することができる。該水系工程は、水溶液が表面と接触するところならどこでも、親水性ポリマーを堆積することができるので、複雑な位相幾何学を有する対象の内面であっても、コーティングすることができる。一般に、親水性ポリマーは、浸漬又はスプレー法等の水溶液を表面に塗布することを許容し得る方法によって表面に塗布することができる。
【0047】
ポリマーの水溶液を使用する安価で簡単な方法を用いて、広帯域反射防止を達成することができる。例えば、米国特許出願公開第2003/0215626号(その全体が引用により組み込まれている)を参照のこと。該方法を用いて、実質的に任意の形状、大きさ又は材質の表面に高効率のコンフォーマル反射防止コーティングを塗布することができる。該方法を用いて、2つ以上の表面に同時に反射防止コーティングを塗布することができ、コーティング性能を低下させ得るピンホール及び欠陥が実質的にないコーティングを生成することができる。多孔性ポリマー材料は反射防止性であり得る。該方法を用いて、ポリマー基板上に反射防止及びアンチグレアコーティングを形成することができる。その簡単かつ汎用性の高い方法により、低コスト、高性能の反射防止及びアンチグレアコーティングとして機能する分子レベルで設計されたコンフォーマル薄膜を形成することができる。該方法は、基板の両側に一度に均一にコーティングして、欠陥及びピンホールのない透明コーティングを生成することができる。該方法を用いて、フラットパネルディスプレイ及び太陽電池を含む高性能ポリマー光学部品を製造することができる。
【0048】
光学部品は、UV光、可視光又はIR光を制御する機能を有し、光の制御されない変更(例えば、吸収、散乱、不十分な焦点、ヘーズ又は他の制御されない影響)は、望ましくない。例えば、レンズ(眼鏡、サングラス、カメラ、双眼鏡、望遠鏡、顕微鏡、眼の保護具において一般に見られるような、例えば、研究室、店で使用する保護眼鏡;フェイスシールド;スポーツ(ラケットボール、スキー)で使用する保護眼鏡)は、光学部品である。光学部品と考えられ得る他の物品には、窓(建物若しくは車両の外側の窓;冷蔵室、ウォークイン冷蔵庫若しくは冷凍装置用等の内側の窓)、あるいは、はっきりと見通す性能が望ましい透明な物品が含まれる。追加例には、ディスプレイスクリーン(テレビスクリーン、コンピューターモニター、デジタル腕時計若しくは携帯電話におけるもののような小さいLCD表示部)、写真フレームにおけるガラス、又はミラーガラスの外側表面が含まれる。
【0049】
ポリマーコーティングは、防曇コーティングであり得る。該防曇コーティングは、表面上の光散乱水滴の凝結を防ぐことができる。表面上の光散乱水滴の形成を防ぐことによって、該コーティングは、透明な表面(例えば、窓又はディスプレイスクリーン)の光学的透明度を維持するのに有用であり得る。場合によって、防曇コーティングも反射防止性であり得る(例えば、米国特許出願公開第2007/0104922号(その全体が引用により組み込まれている)を参照のこと)。防曇コーティングを有する透明な対象の表面は、表面上の水凝結が生じる条件下で、防曇コーティングのない同じ対象と比較した場合に、可視光に対するその透明性を維持する。防曇コーティングの有効性は、例えば、外観検査によって;曇り及び曇りのない条件における相対透過率の測定によって;又は、「曇り度」(材料を通して対象を見る場合に、光が材料の膜又はシートを通過することで散乱すると生じる影響)の測定によって、評価することができる。ASTM D1003-07e1(その全体が引用により組み込まれている)は、透明プラスチックの曇り度又は視感透過率の標準試験法を詳述する。また、EN 167及び168(それらの全体も引用により組み込まれている)も、眼の保護具との関連で、透過率及び透過率の変化を試験する方法を詳述する。
【0050】
ロックイン(lock-in)又は架橋工程は、該コーティングの持続性を促進することができる。例えば、該コーティングを化学的又は熱重合条件に暴露することによって、ロックインを達成することができる。親水性ポリマーは、架橋することができるようになり、これによって、機械的なダメージを受けにくくなる。場合によって、化学的架橋工程には、カルボジイミド試薬によるポリマーコーティングの処理が含まれ得る。カルボジイミドは、カルボン酸塩と高分子電解質のアミン基との架橋の形成を促進することができる。場合によって、化学的架橋工程には、アルデヒド試薬によるポリマーコーティングの処理が含まれ得る。アルデヒド試薬は、グルタルアルデヒド等のジアルデヒドであり得る。該コーティングが、架橋に必要な温度で不安定である基板上に形成される場合(例えば、基板が、架橋に必要な温度で変形するプラスチックである場合等)は、化学的架橋工程が好ましい。架橋工程は、光架橋工程であり得る。光架橋は、感作体(例えば、感光基)及び(UV光、可視光又はIR光等への)露光を利用して、架橋を達成することができる。マスクを使用して、架橋及び非架橋領域のパターンを表面上に形成することができる。架橋は、表面とポリマー間であり得る。ポリマー鎖を架橋するための他の方法が知られている。
【0051】
永続的な防曇コーティングを作製するのに適した親水性ポリマーの部分的な一覧を表1に示す。一般に、表1に一覧化したものからの1以上のポリカチオンの組合せ、及び表1に一覧化したものからの1以上のポリアニオンを、分子的にブレンドすることができる。かかる組合せの一部を以下の実施例で明示する。
【表1】
【0052】
永続的な防曇コーティングを作製するのに適した親水性ポリマーの部分的な一覧を表2に示す。一般に、表2に一覧化したものからの1以上のポリアニオンの組合せ、及び表2に一覧化したものからの1以上の中性ポリマーを、分子的にブレンドすることができる。かかる組合せの一部を以下の実施例で明示する。
【表2】
【実施例】
【0053】
(材料及び化学薬品)
カルボキシメチルセルロース(CMC) (Mw=250,000)、キトサン(CHI)(低分子量)、アルギン酸ナトリウム塩(粘度20,000〜40,000 cps)、及び塩化ナトリウムは、Sigma Aldrich社から入手した。ポリ(アクリル酸) (PAA)(25%水溶液、Mw=90,000)は、Polysciences社(Warrington, PA)から入手した。脱イオン化水をすべての水溶液及び洗浄手順で専ら使用した。スライドガラスは、VWR社から入手した顕微鏡用スライド(VWRマイクロスライドプレミアムプレインCat. 48300-047)3×1インチ及び厚さ1 mmであった。ポリカーボネートスライドは、Teijin Chemical社から入手した。1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)、及びN-ヒドロキシスルホスクシンイミド(NHS)は、Thermo Scientific社から購入した。Irvineらの文献:Biomacromolecules 2, 85 (2001);及び、Mayesらの文献:J. Mem.Sci 298, 136 (2007)(それぞれ、その全体が引用により組み込まれている)の手順によって、ポリ(アクリル酸)-グラフト-ポリ(エチレンオキシド) (PAA-g-PEO)を合成した。
【0054】
ガラス基板上でアセンブルされた多層の厚さの測定を、2μmのスタイラスチップ及び2 mgの針圧を用いて、Tensor P16表面プロフィルメーター(PL)で行った。空気中でNanscope IIIa, Dimension 3000 AFM顕微鏡(Digital Instruments社(Santa Barbara)製)をタッピングモードで使用して、多層のトポグラフィ像を収集した。可変角度分光エリプソメトリー(EL)を使用して、ポリカーボネート基板上のコーティングの厚さ及び屈折率を測定した。接触角の測定を、VCA-2000接触角システム(AST Products社(MA)製)で行なった。メーカーによって提供されたソフトウエア(VCA Optima XE Version 1.90)を使用して、60フレーム/秒で捕らえた動的ビデオファイルから接触角値を算出した。
【0055】
若干改良した欧州標準試験(EN168、その全体が引用により組み込まれている)によって、並びに湿度室及び吸引試験によって、防曇性を評価した。最初の事例では、湿度室中の水の温度、及び該室の湿度をそれぞれ、23℃及び100%に設定した。試料の相対透過率をコーティングの防曇性の基準として評価した。相対透過率を(Tr %) = (Tf /Ti) * 100(防曇条件でのコーティングの透過率が(Tf)であり、非防曇条件での初期透過率が(Ti)である)として記録した。第2の事例では、人工気候室を使用して、種々の環境条件を設定した。超音波給湿システム及び換気システムによって、該室内の湿度を制御した。該室において、種々の時間で、37℃、80%の湿度でスライドの像を記録することによって、防曇コーティングでコーティングしたスライドを評価した。該コーティングの防曇性の迅速な評価において、試料における単純な吸引/呼吸を含む簡便な試験を使用した。
【0056】
鉛筆硬度試験装置、キムワイプ(Kimwipe)試験、及び布‐スポンジ試験によって、コーティングの機械的強度を評価した。キムワイプ試験では、基板上のコーティングを、研究室のキムワイプを10回使用して、手で強く擦った。鉛筆硬度試験では、ASTM D3363(ECCA-T4/1又はISO 15184ともいう;それぞれ、その全体が引用により組み込まれている)によって、ガラス基板上のコーティングを試験した。コーティングされた基板を鉛筆先端の下に水平に置き、鉛筆硬度試験装置を一方の方向に移動した。該鉛筆先端に負荷した力は、750 gの荷重によるものであった。擦られた領域を光学顕微鏡によって評価した。布‐スポンジ試験では、コーティングを最初に水又は石鹸液(International Products Corporation社から入手した2% MICRO-90溶液)で湿らせ、種々の条件下で、布(ANTICON, Lot# 5562)又はセルローススポンジで擦った。最初の試験では、湿らせたコーティングを濡れたスポンジで10回擦った。第2の試験では、湿らせたコーティングを濡れた布で10回擦った。第3の試験では、湿らせたコーティングを乾燥した布で10回擦った。最後の試験は、布‐スポンジ試験のうちで機械的強度の最も正確な試験であると考えられた。
【0057】
親水性防曇コーティングを、単純な層ごとの浸漬又はスプレー法を使用して、ガラス、ポリカーボネート、及びサファイア基板上で調製した。「交互積層」法と呼ばれるこの工程には、該基板を種々のポリマーの溶液に連続して接触させることが含まれる。2つの異なるポリマー溶液を使用する場合、それぞれのサイクルの相補的なポリマーの堆積は、「二分子層」を形成し、これには、ポリマーの分子レベルのブレンドが含まれる。表記(Poly1/Poly2)nは、アセンブルされたコーティングの構造について便利なように記述する。ここで、Poly1及びPoly 2は、アセンブリに使用する特定のポリマーを識別する略語であり、nは、堆積された二分子層の数である。したがって、キトサンとカルボキシメチルセルロース(carboxylmethylcellulose)とを含む10の二分子層コーティングは、(CHI/CMC)10となる。
【0058】
アセンブルされたコーティングを共有結合架橋によって、より機械的に強固にすることができる。例えば、確立したEDC/NHS化学を使用して、又は熱処理(例えば、100℃〜250℃の範囲で(例えば、130℃で))によって、架橋を達成することができる。キトサン/カルボキシメチルセルロース、又はキトサン/ポリ(アクリル酸-ポリエチレンオキシド共重合体)のいずれかから調製したコーティングは、親水性の湿潤性を示した。これらのポリマーの極性基又は極性要素は、極性‐双極子、H結合による水との強い相互作用、又は極性‐極性相互作用を有し得る。その結果、コーティング表面上で凝結する水が、他の水分子よりポリマーと強く相互作用するので、光散乱水滴の成長を抑制することができる。キトサン等の中性ポリマー、又はカルボキシメチルセルロース(carboxylmethylcellulose)、及びポリ(エチレンオキシド)グラフト化ポリ(アクリル酸)共重合体等の合成共重合体は、この効果と、ポリ(アクリル酸) (PAA)及びポリ(アリルアミン) (poly(allyamine)) (PAH)等の顕著に性能が優れた一般に使用される高分子電解質(PE)に特によく適している。CHI、CMC、及びPAA-co-PEGの滴成長の抑制能は、水素結合によるそれらの水との強い相互作用能に関係し得る。例えば、防曇試験において、PAAとCHIから、及びPAHとCMCから調製した多層系は、許容し得る防曇性を発揮しなかった。また、これらの材料のガラス基板上で化学的に固定された多層も、許容し得る防曇性を発揮しなかった。これらのコーティングのすべて(すなわち、CHI/PAA及びCMC/PAA等の中性ポリマー/単純な合成高分子電解質(polyelectrotye))は、湿度室及び吸引試験の両方で失敗した。
【0059】
(実施例1):コーティングアセンブリ
StratoSmart v6.2ソフトウエアによって制御したStratosequence VIスピンディッパー(Nanostrata社製)で、ガラス、サファイア、及びポリカーボネートスライド上のすべてのポリマー/ポリマー系の吸着を行った。ポリマーの浸漬時間は10分であり、その後、ポリマー溶液のpHと同じpHの水中で3回洗浄した。ポリマー浸漬の間に、2分の洗浄1回と1分の洗浄2回を行った。キトサン(CHI)及びカルボキシメチルセルロース(CMC)の濃度は、0.1重量%であった。CHI/ PAA-g-PEOコーティングでは、PAA-g-PEOの濃度は0.07重量%であった。ポリマー溶液及び水のpHは、HCl又はNaOHのいずれかで調整した。
【0060】
ガラス基板上に堆積された二分子層の数の関数として、キトサン/カルボキシメチルセルロース系の厚さ成長を測定した(図2)。10の二分子層コーティングの厚さは約23 nmであった。二分子層の数が20である場合、コーティングの厚さは72 nmに達した。30の二分子層コーティングの厚さは、ガラス基板上において570 nmまで増加した。同様の成長傾向がポリカーボネート基板上でみられた。また、キトサン/PAA-g-PEOコーティングの厚さ成長も測定した(図3)。8及び10の二分子層コーティングの厚さはそれぞれ、200 nm及び300 nmであった。
【0061】
(実施例2):架橋化学
EDC及びNHSに関する従来のカップリング反応を使用して、キトサン及びカルボキシメチルセルロース系を架橋した。pH 4でガラス及びポリカーボネート基板上にアセンブルした10の(CHI/CMC)10コーティングを、400 mM EDC及び100 mM NHSのpH 4.5溶液に15分間浸漬し、次いで、同じpHで洗浄した。
【0062】
(実施例3):防曇試験
ガラス及びポリカーボネート上のコーティングの透過率を23℃、100%の湿度で測定した。架橋した10の二分子層CHI/CMCコーティングは、高い透明度(94%)を示した。基板を湿度室に120秒間置いた後、相対透過率(Tr)は95%であった。この処理後のポリカーボネート上のコーティングの相対透過率(Tr)は、75%であった。
【0063】
ガラス及びポリカーボネート上のキトサン/PAA-g-PEGコーティングの透過率を23℃、100%の湿度で測定した。15の二分子層を有するコーティングは、ガラス上で高い透明度(92%)を示した。基板を湿度室に70秒間置いた後、相対透過率(Tr)は100%であった。ポリカーボネート上のコーティングの相対透過率(Tr)は、99%であった。両方のコーティングの曇り度は0.2%であり、これは、米国特許第5,804,612号(その全体が引用により組み込まれている)に記載のコーティングの曇り度5%よりも非常に良好であった。図4は、ガラス基板上で調製した、架橋した10の二分子層キトサン/カルボキシメチルセルロースコーティングのトポグラフィの像を示す。
【0064】
吸引及び湿度室試験によって、両方のコーティングは、優れた防曇性を示した。第2の湿度室試験を37℃、80%の湿度で行い、1秒、10秒、30秒、2分、3日及び1週後の像を記録した。両方のコーティングは、優れた防曇性を示し、曇りは、1秒から1週でみられなかった。
【0065】
(実施例4):エージング研究
両方の型の防曇コーティングは、1ヶ月間冷蔵庫に置いた(0℃〜4℃)後、優れた、かつ長期にわたる防曇性を示した。この処理後に記録したコーティングの像を図5に示す。空気中に2ヶ月保存後、両方のコーティングを試験した。これらは優れた防曇性を示した。
【0066】
(実施例5):種々の共重合体組成物
キトサン及びPAA-g-PEGのコーティングに対する親水性の影響を見出すために、種々の比のポリ(アクリル酸)及びポリ(エチレンオキシド)によるPAA-g-PEG共重合体を合成し、これらの防曇性を評価した。PAA-g-PEG共重合体中のPEG成分が37 %重量%である場合(図6)、キトサン及びPAA-g-PEGコーティングは、優れた防曇性を示した。該重合体中のPEGの量が25%重量%である場合、キトサン及びPAA-g-PEGコーティングは、良好な防曇性を示さなかった(図7)。図6及び7の像を、1秒及び20秒の間隔で、37℃で80%の湿度の湿度室において同じ試料で記録した。
【0067】
(実施例6)
優れた防曇性は、分子的にブレンドされた親水性ポリマーの臨界的な厚さを要求した。キトサン/CMC多層において、厚さが20 nmより大きい場合、コーティングは、良好な防曇性を有していた。キトサン/PAA-g-PEG多層において、コーティングの厚さが少なくとも10 nmである場合、良好な防曇性が達成された。表面に化学的に結合したカルボキシメチルセルロース又はPAA-g-PEGのみから成る単層コーティングは、防曇性を示さなかった。湿度室(37℃、80%の湿度)に置いてすぐに、かかるコーティングは曇る(図8及び9)。これは、適切な親水性ポリマーの分子的にブレンドされた層が、長期にわたる防曇コーティングを作製するのに必要であることを実証した。
【0068】
(実施例7):保護眼鏡用のコーティング
ポリカーボネート製保護眼鏡の一方のレンズを、キトサン及びPAAg-PEGの10の二分子層でコーティングした。他方のレンズをコーティングしないままにした。次いで、該眼鏡を4℃で1ヶ月間冷蔵庫に置いた。コーティングされた眼鏡を冷蔵庫から取り出し、熱蒸気に暴露後、像を得た。コーティングされたレンズは、優れた防曇性を示したが、コーティングしていないレンズは、蒸気ですぐに曇った(図10参照)。
【0069】
(実施例8):ガラス基板の防曇試験
種々のコーティングでコーティングした2つのガラス基板を、2週間冷蔵庫に置いた後、熱蒸気に直接暴露することによって評価した。図11及び12に示すように、キトサンとPAA-g-PEG (37% PEG)又はキトサンとPAA-g-PEG (50% PEG)のいずれかを含むコーティングは、優れた防曇性を示した。
【0070】
(実施例9):機械的耐久性試験
研究室のキムワイプで積極的に拭くことによって、CHI/CMC及びCHI/PAA-g-PEG (37 % PEG)コーティングの機械的耐久性を検討した。拭いた後、目に見える損傷は、一方のコーティングではみられなかった。両方のコーティングは、防曇性を保持した。この観察は、ナノ粒子のナノ多孔質アレイに基づく防曇コーティング(例えば、米国特許出願公開第2008/0268229号(その全体が引用により組み込まれている)を参照のこと)と対比した。積極的に拭くことによって、表面層の平滑化により、ナノ粒子系コーティングの防曇性を損なった。両方のポリマー系コーティングの優れた機械的強度は、ガラス基板に化学的に結合することでさらに促進された。CHI/CMC及びCHI/PAA-g-PEOでアセンブルされたコーティングの鉛筆硬度試験は、2Hの硬度を示した。熱架橋コーティングは6Hの鉛筆硬度を有し、層間剥離は、光学顕微鏡によってみられなかった。図13A〜13Cは、種々の鉛筆硬度試験でのキトサン及びPAA-g-PEG (37% PEG)の15の二分子層の鉛筆硬度を示す。その硬度は2Hを示した。7H鉛筆で該コーティングに力をかけると、該コーティングの層間剥離が生じた(図13C)。
【0071】
(実施例10):防曇コーティングの機械的強度の促進
コーティング前に、化学的に改質することができる、ガラス及び別のシリカリッチ基板、特定のポリマー基板、並びにサファイア基板を供した。該改質は、コーティングの機械的強度を促進することができる。シリカリッチ基板には、例えば、ガラス、シリカ及び石英等の反応性のシラノール基を有する透明基板が含まれる。コーティングが塗布される前に化学的に改質することができるポリマー基板には、ポリカーボネート及びPMMAが含まれる。基板上に、エポキシシラン化合物(3-グリシドキシプロピル)トリメトキシシランとヒドロキシル基又はシラノール基間に共有結合を形成することによって、基板を化学的に改質した。この改質は、加水分解及び縮合反応によって進行した。次いで、分岐ポリ(エチレンイミン) (PEI)をエポキシ官能化表面に暴露した。PEIの反応性アミノ基は、エポキシ基と反応し、アミノ基を有する改質表面を提供する。
【0072】
ガラス様基板を最初に水中で5分間超音波処理し、120 mTorrで2分間、酸素プラズマ中で清浄化するか、又は80℃で30分間、ピラニア溶液中で加熱した。清浄化した基板を、1% (3-グリシドキシプロピル)トリメトキシシランの無水トルエン溶液と共に直ちに一晩インキュベートし、次いで、純トルエンで洗浄した。トルエンは、クロロホルム及びヘキサン等の別の無水有機溶媒に代えることができる。乾燥した基板を、分岐PEIの0.01 M水溶液(pH=9)中で少なくとも4時間浸漬し、その後、水で洗浄した。次に、CHI/CMCの多層をPEI改質基板上にアセンブルした。次いで、アセンブルされたCHI/CMCの多層を有する基板を、200 mM EDC及び50 mM NHSを含む0.05 M MESバッファー(pH 5)に30分間浸漬し、その後、1×PBSバッファーに20分間浸漬した。次いで、ガラス様基板上のCHI/CMCの架橋した多層を水で洗浄した。このように形成した防曇コーティングは、層間が化学的に結合しただけでなく、官能化基板にも化学的に結合した。
【0073】
次いで、多層をさらに架橋するために、コーティングを2.5%グルタルアルデヒドの水溶液(pH=9)に30℃で45分間浸漬した。その後、基板を水で洗浄した。キムワイプ試験、鉛筆硬度試験、及び布‐スポンジ試験によって、ガラス様又はサファイア基板上に架橋したコーティングを評価した。キムワイプ試験は、目に見える擦り傷はなく、優れた機械的強度を示した。EDC/NHS及びグルタルアルデヒドで架橋した(CMC/CHI)15.5コーティングの鉛筆硬度試験は、4Hの鉛筆硬度を示した(図14)。7Hの鉛筆硬度では、このコーティングは層間剥離を示した。EDC/NHSで架橋したCMC/CHIの12.5の二分子層コーティングは、濡れた布又は濡れたスポンジで擦った後に損傷を示さなかった。しかしながら、乾燥した布で湿潤条件において擦った後に、擦り傷及び/又は層間剥離が生じた。一方、EDC/NHS及びグルタルアルデヒドの両方で架橋した12.5の二分子層コーティングは、湿らせたコーティングを乾燥した布で擦った後に、目に見える損傷を示さなかった。
【0074】
別の実施態様は、次の特許請求の範囲の範囲内である。
【技術分野】
【0001】
(優先権の主張)
本出願は、2009年6月2日に出願された仮米国特許出願第61/183,312号(その全体が引用により組み込まれている)の優先権を主張する。
【0002】
(連邦政府による委託研究又は開発)
本発明は、全国科学基金によって授与された譲渡番号DMR-0213282の下、政府の支援によってなされた。政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0003】
(技術分野)
本発明は、コーティングに関する。
【背景技術】
【0004】
(背景)
多くの基板は、透明か半透明、又は不透明かにかかわらず、基体表面が周囲空気の露点より冷たい場合、例えば、冷却された表面が湿潤空気に露出される場合、曇るようになる。車両の窓、飛行機のウィンドシールドと窓、食物の包装、菜園用プラスチックシート、温室窓、眼鏡類(眼鏡、サングラス、ゴーグル、フェイスシールド等)、双眼鏡、カメラレンズ、内視鏡レンズ、及び他の光学機器等の透明基板はすべて、曇りの影響を受けやすい。また、プラスチック、セラミックス及び金属の不透明な表面及び/又は反射表面も、これらの表面上で曇り又は結露を起こしやすい。眼鏡及び自動車の窓等の光学的要素の曇りは、妨害となり、また、多くの場合、重大な危険となり得る。多くの種々の型のコーティング及び添加物が、特に光学面の曇りに対処するのに使用されている。この問題に専念した相当な検討にもかかわらず、関心対象の表面に一般に塗布することができる(すなわち、生産条件の広範囲なカスタマイゼーション及び最適化なしで)、効果的で、安価な、長期にわたって持続する防曇コーティング(antifog coating)の必要性が残されている。このため、永続的な防曇能を有して販売されている市販製品は今日、ほとんどない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(概要)
高分子電解質多層は、種々の表面上で容易にアセンブルすることができる。材料、アセンブリ条件及び後処理条件の選択を用いて、最終製品の化学的、構造的及び光学的性質を制御することができる。安定して持続するコーティングは、高分子電解質を含む層ごとにアセンブルされた膜から形成することができる。該コーティングは、持続的な防曇性を表面、特に光学面に提供することができる。
【0006】
親水性コーティングを実質的に任意の表面に塗布し、長期にわたって持続する防曇効果を発揮させることができる。該コーティングには、少なくとも2つの親水性ポリマーの分子レベルのブレンドを含み得る。該コーティングは、別の技術を使用することができるが、例えば、層ごとのアセンブリ工程を用いて作製することができる。層ごとのアセンブリは、水系工程になり、これによって、光学用途に広く使用される多くのプラスチック基板(ポリカーボネート及びポリ(メタクリル酸メチル)等)にダメージを与え得る溶媒及び化学薬品を回避する。コンフォーマルコーティングは、例えば、浸漬、スピン、又はスプレーアセンブリ工程によって塗布することができる。防曇コーティングは、非常に透明であり、種々の条件下で非常に効果的な防曇性を有し得る。該コーティングの持続性は、種々の一般的な架橋法及び表面改質法によって増加させることができる。
【0007】
一態様において、物品には、防曇コーティングでコーティングした表面が含まれ、該コーティングには、第1の親水性ポリマーと第2の親水性ポリマーとが含まれ、該第1の親水性ポリマーと第2の親水性ポリマーが分子的にブレンド(molecularly blend)される。
【0008】
該コーティングには、該第1の親水性ポリマーを含んだ第1の層と、該第2の親水性ポリマーを含んだ第2の層とが含まれ得る。該第1の親水性ポリマーと第2の親水性ポリマーは、混合することができる。該コーティングには、該第1の親水性ポリマーを含んだ複数の第1の層を含む一連の層が含まれ、該複数の第1の層は、該第2の親水性ポリマーを含んだ複数の層と互い違いになり得る。
【0009】
別の態様において、物品には、防曇コーティングでコーティングした表面が含まれ、該コーティングには、第1の親水性ポリマーを含んだ複数の第1の層を含む一連の層が含まれ、該複数の第1の層は、第2の親水性ポリマーを含んだ複数の層と互い違いになり、該第1の親水性ポリマーと該第2の親水性ポリマーが混合される。該第1の層は、該第1の親水性ポリマーから実質的に成り得る。該第2の層は、該第2の親水性ポリマーから実質的に成り得る。
【0010】
別の態様において、防曇コーティングで物品表面をコーティングする方法には、分子的にブレンドされた第1及び第2の親水性ポリマーを含んだ組成物を物品の表面上に堆積することが含まれる。
【0011】
堆積には、該表面と、該第1の親水性ポリマーを含んだ第1の水溶液とを接触させることが含まれ得る。堆積には、該表面と、該第2の親水性ポリマーを含んだ第2の水溶液とを接触させることがさらに含まれ得る。堆積には、該第1の親水性ポリマーを含んだ第1の層を形成することと、該第2の親水性ポリマーを含んだ第2の層を形成することが含まれ得る。堆積には、堆積の際、該第1の親水性ポリマーと該第2の親水性ポリマーが混合するように、該第1の親水性ポリマー及び該第2の親水性ポリマーを選択することが含まれ得る。
【0012】
堆積には、第1の親水性ポリマーを含んだ複数の第1の層を含む一連の層を形成することが含まれ、該複数の第1の層は、第2の親水性ポリマーを含んだ複数の層と互い違いになり得る。
【0013】
堆積には、交互に、該表面と、該第1の親水性ポリマーを含んだ第1の水溶液とを接触させることと、該表面と、該第2の親水性ポリマーを含んだ第2の水溶液とを接触させることが含まれ得る。
【0014】
該表面と該第1の水溶液とを接触させることには、浸漬コーティング、スプレーコーティング、スピンコーティング、又はこれらの組合せが含まれ得る。該表面と該第2の水溶液とを接触させることには、浸漬コーティング、スプレーコーティング、スピンコーティング、又はこれらの組合せが含まれ得る。
【0015】
該方法には、堆積された組成物と化学的架橋試薬とを接触させることがさらに含まれ得る。該方法には、該表面を、該第1の親水性ポリマー及び該第2の親水性ポリマーを熱架橋するのに十分であるが、該物品を変形するには不十分である温度に暴露することがさらに含まれ得る。
【0016】
別の態様において、防曇コーティングで物品表面をコーティングする方法には、交互に、該表面と、該第1の親水性ポリマーを含んだ第1の水溶液とを接触させることと、該表面と、該第2の親水性ポリマーを含んだ第2の水溶液とを接触させることが含まれ得る。
【0017】
該第1の親水性ポリマーには、複数のイオン化基(ionized group)又はイオン性基(ionizable group)が含まれ得る。該第2の親水性ポリマーには、複数のイオン化基又はイオン性基が含まれ得る。該第2の親水性ポリマーには、複数の水素結合性基が含まれ得る。少なくとも1つの該第1及び第2の親水性ポリマーは、第1の複数のイオン化基又はイオン性基と、第2の化学的に独立した複数の水素結合性基とを含む共重合体であり得る。
【0018】
該第1の親水性ポリマーは、キトサン(CHI)、ポリ(アリルアミン)-co-ポリ(エチレンオキシド)共重合体(PAH-g-PEG)、ポリ(L-リジン)-co-(ポリエチレンオキシド) (PLL-g-PEG)、ポリ(四級化-4-ビニルピリジン)-co-ポリ(エチレンオキシド) (QPVP-co-PEG)、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)-co-ポリ(エチレンオキシド) (PDADMA-co-PEG)、ポリ(アリルアミン)-co-ポリアクリルアミド共重合体(PAH-co-PAAM)、ポリ(L-リジン)-co-ポリアクリルアミド(PLL-co-PAAM)、ポリ(四級化-4-ビニルピリジン)-co-ポリアクリルアミド(QPVP-co-PAAM)、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)-co-ポリアクリルアミド(PDADMA-co-PAAM)、ポリ(アリルアミン)-co-ポリアクリルアミド共重合体(PAH-co-PAAM)、及びこれらの組合せからなる群より選択することができる。
【0019】
該第2の親水性ポリマーは、カルボキシメチルセルロース(CMC)、アルギン酸(AA)、ヒアルロン酸(HA)、ヘパリン、ペクチン、ポリ(アクリル酸)-co-ポリ(エチレンオキシド)共重合体(PAA-co-PEG)、ポリ(メタクリル酸)-co-ポリ(エチレンオキシド)共重合体(PMAA-co-PEG)、ポリ(アクリル酸)-co-ポリアクリルアミド共重合体(PAA-co-PAAM)、ポリ(メタクリル酸)-co-ポリアクリルアミド(PMAA-co-PAAM)、カラギーナン(κ, a l, aλ)、フコイダン、フコガラクタン、コンドロイチン、ゲランガム、カラヤガム、トラガカントゴム、ウェランガム(welan gum)、キサンタンゴム、オオバコ種子ガム質、及びこれらの組合せからなる群より選択することができる。
【0020】
該第1の親水性ポリマーは、カルボキシメチルセルロース(CMC)、アルギン酸(AA)、ヒアルロン酸(HA)、ポリ(アクリル酸)-co-ポリ(エチレンオキシド)共重合体(PAA-co-PEG)、ポリ(メタクリル酸)-co-ポリ(エチレンオキシド)共重合体(PMAA-co-PEG)、ポリ(アクリル酸)-co-ポリ(アクリルアミド)共重合体(PAA-co-PAAM)、ポリ(メタクリル酸)-co-ポリ(アクリルアミド) (PMAA-co-PAAM)、及びこれらの組合せからなる群より選択することができる。
【0021】
該第2の親水性ポリマーは、ポリ(エチレンオキシド) (PEG)、ポリアクリルアミド(PAAM)、ポリ(ビニルアルコール) (PVA)、ポリ(ビニルピロリドン) (PVP)、キトサン、キチン、イヌリン、ラミナラン、プルラン、カードラン、スクレログルカン、タラガム、タマリンドガム、グアーガム、マンナン、デキストラン、グリコーゲン、セルロース、及びこれらの組合せからなる群より選択することができる。
【0022】
該第1の親水性ポリマー及び該該第2の親水性ポリマーは、互いに化学的架橋するか、又は互いに熱架橋することができる。該物品は光学部品であり得る;例えば、該物品は眼鏡レンズであり得る。該物品は、透明であり、23℃で100%の湿度に少なくとも60秒間暴露後の相対透過率(Tr)が90%より高い場合がある。該物品は、透明であり、23℃で100%の湿度に少なくとも60秒間暴露後の曇り度(ヘーズ)が1.0%未満の場合がある。
【0023】
1以上の実施態様の詳細を添付図面及び以下の説明に示す。他の特徴、目的及び利点は、説明と図面、及び特許請求の範囲から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、コーティングされた物品の概略図である。
【図2】図2は、二分子層の数の関数としての(CHI/CMC)コーティングの厚さを表すグラフである。
【0025】
【図3】図3は、二分子層の数の関数としての(CHI/PAA-g-PEG)コーティングの厚さを表すグラフである。
【図4】図4は、ガラス基板上の架橋した10の二分子層CHI/CMCコーティングのトポグラフィAFM (topographical AFM)の像である。
【0026】
【図5】図5A〜5Dは、防曇コーティングについての湿度室試験の結果を表す写真である。ポリカーボネート上の架橋した10の二分子層CHI/CMCコーティングを、37℃で80%の湿度に、(A)1秒間;(B)10秒間;(C)20秒間;及び、(D)60秒間暴露させた。基板底部の曇った部位は、コーティングされていない。
【0027】
【図6】図6A及び6Bは、防曇コーティングについての湿度室試験の結果を表す写真である。10の二分子層CHI/PAA-g-PEG (37% PEG)コーティングを、37℃で80%の湿度に、(A)1秒間;及び(B)20秒間暴露させた。基板底部の曇った部位は、コーティングされていない。
【0028】
【図7】図7A及び7Bは、防曇コーティングについての湿度室試験の結果を表す写真である。10の二分子層CHI/PAA-g-PEG (25% PEG)コーティングを、37℃で80%の湿度に、(A)1秒間;及び(B)20秒間暴露させた。
【0029】
【図8】図8A及び8Bは、防曇コーティングについての湿度室試験の結果を表す写真である。CMC単分子層コーティングを、37℃で80%の湿度に、(A)1秒間;及び(B)20秒間暴露させた。
【0030】
【図9】図9A及び9Bは、防曇コーティングについての湿度室試験の結果を表す写真である。PAA-g-PEG (50% PEG)単分子層コーティングを、37℃で80%の湿度に、(A)1秒間;及び(B)20秒間暴露させた。
【0031】
【図10】図10は、一方のレンズ(左側)をCHI/PAA-g-PEG (50% PEG)の10の二分子層コーティングでコーティングし、一方のレンズ(右側)が未処理である、一組の保護眼鏡を表す写真である。該写真は、該眼鏡を1ヶ月間冷蔵庫に置いた(4℃)後に撮影した。
【0032】
【図11】図11は、一方の端部(右側)をCHI/PAA-g-PEG (50% PEG)でコーティングし、他方の端部(左側)にはコーティングをしていない、ガラス基板を表す写真である。該ガラス基板を4℃で2週間冷蔵庫に置いた後に、熱蒸気に直接暴露させた。
【0033】
【図12】図12は、一方の端部(右側)をCHI/PAA-g-PEG (37% PEG)でコーティングし、他方の端部(左側)にはコーティングをしていない、ガラス基板を表す写真である。該ガラス基板を4℃で2週間冷蔵庫に置いた後に、熱蒸気に直接暴露させた。
【0034】
【図13】図13A〜13Cは、鉛筆硬度試験((A) 2H;(B) 4H;、及び(C) 7H)後のCHI/PAA-g-PEG (37% PEG)の15の二分子層コーティングの顕微鏡写真である。
【図14】図14は、4H(下部)及び7H(上部)鉛筆による試験後のEDC/NHS及びグルタルアルデヒドの両方で架橋したCMC/CHIの15.5の二分子層コーティングの光学画像である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
(詳細な説明)
所望の防曇性を有するコーティングは、少なくとも2つの親水性ポリマーの分子レベルのブレンドによって達成することができる。該親水性ポリマーは、例えば、少数が命名された、カルボン酸、アミノ、アルキルエーテル、及びヒドロキシル基等の高濃度の親水性官能基を有し得る。該親水性ポリマーには、1以上の高分子電解質(例えば、ポリカチオン、ポリアニオン、若しくはカチオン性基及びアニオン性基の両方を含むポリマー)、1以上の中性親水性ポリマー(例えば、ポリアルキルエンエーテル、ポリアクリルアミド、多価アルコール)、又は1以上の高分子電解質と1以上の中性親水性ポリマーの組合せが含まれ得る。防曇コーティングは、親水性高分子電解質と中性親水性ポリマー間の水素結合相互作用を有し得る。中性及び荷電性多糖を該防曇コーティングに使用することができる。
【0036】
分子的にブレンドされたポリマーは、ブレンドするか又は組み合わせる場合、分子レベルの混合された構造を有し得る。場合によっては、2つのポリマーはそれぞれ別々に水中で溶解することがあるが、その溶液を単に混合することによって、両者の制御されない沈殿が生じる。これらの制御されない沈殿によって、分子レベルにおいて良好に混合されないことが多い。一方、層ごとのアセンブリによって得ることができる一連のポリマー層は、分子レベルにおいて混合及び浸透される。この連続した該ポリマーは、分子的にブレンドされたということができる。
【0037】
多孔性、テキスチャ及び表面の化学的性質は、表面の湿潤性に影響を及ぼし得る。例えば、米国特許出願公開第2003/0215626号、第2006/0029634号、第2007/0104922号、第2007/0166513号、第2008/0268229号、米国仮特許出願第61/061,806号、及び国際公開公報第2009/009185号(それぞれ、その全体が引用により組み込まれている)を参照のこと。表面の構造及び化学組成によって、該表面は、親水性、疎水性か、あるいは、超親水性若しくは超疎水性の極端であり得る。所望のテキスチャを生み出す一つの方法は、高分子電解質多層によるものである。ポリマー多層(例えば、高分子電解質多層を含む)は、所望の湿潤性及び光学的性質を表面に与えるように、所定の化学的特徴及び構造的特徴を有する表面を提供することができる。
【0038】
親水性表面は水を吸引する。これと比較して、疎水性表面は、水とのエネルギー的に不都合な相互作用を有する。これらの比較的不都合な相互作用によって、近年のワックスが塗られた自動車のボンネット上につく雨水の水滴化及び転がり等の疎水性表面のよく知られている特性が生じる。一般に、非疎水性表面は、疎水性材料で表面をコーティングすることによって疎水性になり得る。表面の疎水度は、例えば、該表面上における少量の水の接触角を決定することによって測定することができる。該接触角は、静止接触角か動的接触角であり得る。動的接触角の測定には、前進接触角若しくは後退接触角の測定、又はこれらの両方が含まれ得る。前進接触角と後退接触角間のわずかな相違(すなわち、低い接触角ヒステリシス)を有する疎水性表面が望ましい。水滴は、高い接触角ヒステリシスを有する表面よりも容易に、低い接触角ヒステリシスを有する表面を横切って移動する。
【0039】
ポリマー多層の層ごとの処理を使用して、膜厚さ及び化学作用に対する分子レベルの制御によって、コンフォーマル薄膜コーティングを作製することができる。荷電性高分子電解質は、層ごとの様式でアセンブルすることができる。換言すると、正及び負に荷電した高分子電解質は、基板上に交互に堆積することができる。場合によっては、静電気的に中性の親水性ポリマーは、高分子電解質の代わりに使用することができる。
【0040】
親水性ポリマーには、複数のイオン化官能基(ionized functional group)又はイオン性官能基(ionizable functional group)が含まれ得る。高分子電解質は、ポリカチオン性又はポリアニオン性であり得る。ポリカチオンは、主鎖(例えば、ポリ(アリルアミン塩酸塩))に結合した複数の正に荷電した官能基を備える該主鎖を有する。ポリアニオンは、スルホン化ポリスチレン(SPS)若しくはポリ(アクリル酸)、又はこれらの塩等の主鎖に結合した複数の負に荷電した官能基を備える該主鎖を有する。高分子電解質の中には、pH等の条件によって、それらの電荷を失うものがある(すなわち、電気的に中性になる)。
【0041】
該イオン化官能基又はイオン性官能基のイオン化状態は、pHに強く依存し得る。例えば、高分子電解質には、-COOH/-COO-等の酸/共役塩基対として、又は、例えば-NH2/-NH3+の塩基/共役酸対として存在し得る官能基が含まれ得る。イオン化官能基又はイオン性官能基のpKaは、例えば、2〜12、3〜11、又は4〜10の範囲であり得る。イオン化官能基の一部は、大部分はpHと無関係に帯電を維持する。例えば、第四級アミン官能基(例えば、-NR3+)は、pHからの比較的少ない影響によって正に荷電することができる。
【0042】
親水性ポリマーには、複数の水素結合(又はH結合)官能基が含まれ得る。一般に、水素結合性官能基は、H結合アクセプタ(例えば、孤立電子対;カルボニル酸素は、H結合アクセプタであることが多い)、又はH結合ドナーのいずれかであり得る。H結合ドナー官能基は通常、水に交換可能な水素原子の存在という特徴がある。例えば、ヒドロキシル基には、水に交換可能な水素原子が含まれ、H結合ドナーとして水素結合に関与することが多い。ヒドロキシル基は、十分な塩基条件下でイオン化されるようになり得る。しかしながら、最も有機的なヒドロキシル基は、ほとんどの水溶液において中性である。例えば、pKaが、2〜12、3〜11、又は4〜10の範囲外である場合、官能基は、水素結合性基と考えることができるが、イオン化官能基又はイオン性官能基と考えることができない。アミノ基等の官能基の中には、水素結合性及びイオン化又はイオン性と考えられるものがある。
【0043】
ポリマーの中には、複数の種々のイオン化若しくはイオン性又は水素結合性官能基が含まれるものがある。かかる例はポリL-リジンであり、これには、複数のアミノ基(イオン化又はイオン性)、及び複数のペプチド結合(H結合及びアクセプタを含む)が含まれ得る。他の例はキトサン、ポリ(β-1,4-D-グルコサミン)であり、これには、複数のヒドロキシル基及び複数のアミノ基が含まれる。また、共重合体には、種々のモノマー単位も含まれ、これらの中には、親水性官能基が含まれるものがあり、また、これらの中には、イオン化官能基又はイオン性官能基が含まれるものがある。これらのイオン化官能基又はイオン性官能基は、カチオン性又はアニオン性であり、あるいは、該共重合体には、カチオン性及びアニオン性モノマー単位の両方が含まれ得る。水素結合性官能基及びイオン化官能基又はイオン性官能基を含む共重合体の幾つかの例には、ポリ(L-リジン)-co-(ポリエチレンオキシド) (PLL-g-PEG)、ポリ(四級化-4-ビニルピリジン)-co-(ポリエチレンオキシド) (QPVP-co-PEG)、ポリ(アクリル酸)-co-ポリ(エチレンオキシド)共重合体(PAA-co-PEG)、及びポリ(アクリル酸)-co-ポリアクリルアミド共重合体(PAA-co-PAAM)が含まれる。該共重合体は、例えば、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体、又は他の共重合体であり得る。
【0044】
該ポリマーを堆積する方法の一つは、適切なpHで、基板と該ポリマーの水溶液を接触させることである。pHは、高分子電解質が部分的に又は弱く荷電されるように、選択することができる。多層は、二分子層の数によって説明することができ、2つの異なったポリマーの連続的な適用から生じた二分子層(例えば、相対して荷電した2つの高分子電解質)が含まれる。例えば、PAH-PAA-PAH-PAA-PAH-PAAの一連の層を有する多層は、3つの二分子層から作製されると言える。
【0045】
図1Aは、基板110の表面上に親水性コーティング150を有する物品100を概略的に示す。コーティング150には、分子的にブレンドされた親水性ポリマーが含まれ得る。親水性ポリマーが、層ごとの工程において該表面上に堆積される場合、生じた層は、高度に浸透するようになってもよい。例えば、第1の層の該親水性ポリマーは、第2の(化学的に独立した)層の親水性ポリマーと混合してもよい。状況によっては、混合及び浸透は、層の境界が不明瞭である程度に生じてもよい。
【0046】
これらの方法は、処理溶液の条件(例えば、pH、イオン強度及び温度)の簡易な調整によって、堆積工程における分子の制御を提供することができる。弱く荷電された高分子電解質の特性は、pHの変化によって正確に制御することができる。例えば、G. Decherの文献:Science 1997, 277, 1232;Mendelsohnらの文献:Langmuir 2000, 16, 5017;Feryらの文献:Langmuir 2001, 17, 3779;Shiratoriらの文献:Macromolecules 2000, 33, 4213;及び、米国特許出願公開第2003/0215626号を参照のこと(それぞれ、その全体が引用により組み込まれている)。この型のコーティングは、これらの高分子電解質多層を構築するために使用される水系交互(LbL)吸着工程を許容し得る表面に塗布することができる。該水系工程は、水溶液が表面と接触するところならどこでも、親水性ポリマーを堆積することができるので、複雑な位相幾何学を有する対象の内面であっても、コーティングすることができる。一般に、親水性ポリマーは、浸漬又はスプレー法等の水溶液を表面に塗布することを許容し得る方法によって表面に塗布することができる。
【0047】
ポリマーの水溶液を使用する安価で簡単な方法を用いて、広帯域反射防止を達成することができる。例えば、米国特許出願公開第2003/0215626号(その全体が引用により組み込まれている)を参照のこと。該方法を用いて、実質的に任意の形状、大きさ又は材質の表面に高効率のコンフォーマル反射防止コーティングを塗布することができる。該方法を用いて、2つ以上の表面に同時に反射防止コーティングを塗布することができ、コーティング性能を低下させ得るピンホール及び欠陥が実質的にないコーティングを生成することができる。多孔性ポリマー材料は反射防止性であり得る。該方法を用いて、ポリマー基板上に反射防止及びアンチグレアコーティングを形成することができる。その簡単かつ汎用性の高い方法により、低コスト、高性能の反射防止及びアンチグレアコーティングとして機能する分子レベルで設計されたコンフォーマル薄膜を形成することができる。該方法は、基板の両側に一度に均一にコーティングして、欠陥及びピンホールのない透明コーティングを生成することができる。該方法を用いて、フラットパネルディスプレイ及び太陽電池を含む高性能ポリマー光学部品を製造することができる。
【0048】
光学部品は、UV光、可視光又はIR光を制御する機能を有し、光の制御されない変更(例えば、吸収、散乱、不十分な焦点、ヘーズ又は他の制御されない影響)は、望ましくない。例えば、レンズ(眼鏡、サングラス、カメラ、双眼鏡、望遠鏡、顕微鏡、眼の保護具において一般に見られるような、例えば、研究室、店で使用する保護眼鏡;フェイスシールド;スポーツ(ラケットボール、スキー)で使用する保護眼鏡)は、光学部品である。光学部品と考えられ得る他の物品には、窓(建物若しくは車両の外側の窓;冷蔵室、ウォークイン冷蔵庫若しくは冷凍装置用等の内側の窓)、あるいは、はっきりと見通す性能が望ましい透明な物品が含まれる。追加例には、ディスプレイスクリーン(テレビスクリーン、コンピューターモニター、デジタル腕時計若しくは携帯電話におけるもののような小さいLCD表示部)、写真フレームにおけるガラス、又はミラーガラスの外側表面が含まれる。
【0049】
ポリマーコーティングは、防曇コーティングであり得る。該防曇コーティングは、表面上の光散乱水滴の凝結を防ぐことができる。表面上の光散乱水滴の形成を防ぐことによって、該コーティングは、透明な表面(例えば、窓又はディスプレイスクリーン)の光学的透明度を維持するのに有用であり得る。場合によって、防曇コーティングも反射防止性であり得る(例えば、米国特許出願公開第2007/0104922号(その全体が引用により組み込まれている)を参照のこと)。防曇コーティングを有する透明な対象の表面は、表面上の水凝結が生じる条件下で、防曇コーティングのない同じ対象と比較した場合に、可視光に対するその透明性を維持する。防曇コーティングの有効性は、例えば、外観検査によって;曇り及び曇りのない条件における相対透過率の測定によって;又は、「曇り度」(材料を通して対象を見る場合に、光が材料の膜又はシートを通過することで散乱すると生じる影響)の測定によって、評価することができる。ASTM D1003-07e1(その全体が引用により組み込まれている)は、透明プラスチックの曇り度又は視感透過率の標準試験法を詳述する。また、EN 167及び168(それらの全体も引用により組み込まれている)も、眼の保護具との関連で、透過率及び透過率の変化を試験する方法を詳述する。
【0050】
ロックイン(lock-in)又は架橋工程は、該コーティングの持続性を促進することができる。例えば、該コーティングを化学的又は熱重合条件に暴露することによって、ロックインを達成することができる。親水性ポリマーは、架橋することができるようになり、これによって、機械的なダメージを受けにくくなる。場合によって、化学的架橋工程には、カルボジイミド試薬によるポリマーコーティングの処理が含まれ得る。カルボジイミドは、カルボン酸塩と高分子電解質のアミン基との架橋の形成を促進することができる。場合によって、化学的架橋工程には、アルデヒド試薬によるポリマーコーティングの処理が含まれ得る。アルデヒド試薬は、グルタルアルデヒド等のジアルデヒドであり得る。該コーティングが、架橋に必要な温度で不安定である基板上に形成される場合(例えば、基板が、架橋に必要な温度で変形するプラスチックである場合等)は、化学的架橋工程が好ましい。架橋工程は、光架橋工程であり得る。光架橋は、感作体(例えば、感光基)及び(UV光、可視光又はIR光等への)露光を利用して、架橋を達成することができる。マスクを使用して、架橋及び非架橋領域のパターンを表面上に形成することができる。架橋は、表面とポリマー間であり得る。ポリマー鎖を架橋するための他の方法が知られている。
【0051】
永続的な防曇コーティングを作製するのに適した親水性ポリマーの部分的な一覧を表1に示す。一般に、表1に一覧化したものからの1以上のポリカチオンの組合せ、及び表1に一覧化したものからの1以上のポリアニオンを、分子的にブレンドすることができる。かかる組合せの一部を以下の実施例で明示する。
【表1】
【0052】
永続的な防曇コーティングを作製するのに適した親水性ポリマーの部分的な一覧を表2に示す。一般に、表2に一覧化したものからの1以上のポリアニオンの組合せ、及び表2に一覧化したものからの1以上の中性ポリマーを、分子的にブレンドすることができる。かかる組合せの一部を以下の実施例で明示する。
【表2】
【実施例】
【0053】
(材料及び化学薬品)
カルボキシメチルセルロース(CMC) (Mw=250,000)、キトサン(CHI)(低分子量)、アルギン酸ナトリウム塩(粘度20,000〜40,000 cps)、及び塩化ナトリウムは、Sigma Aldrich社から入手した。ポリ(アクリル酸) (PAA)(25%水溶液、Mw=90,000)は、Polysciences社(Warrington, PA)から入手した。脱イオン化水をすべての水溶液及び洗浄手順で専ら使用した。スライドガラスは、VWR社から入手した顕微鏡用スライド(VWRマイクロスライドプレミアムプレインCat. 48300-047)3×1インチ及び厚さ1 mmであった。ポリカーボネートスライドは、Teijin Chemical社から入手した。1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)、及びN-ヒドロキシスルホスクシンイミド(NHS)は、Thermo Scientific社から購入した。Irvineらの文献:Biomacromolecules 2, 85 (2001);及び、Mayesらの文献:J. Mem.Sci 298, 136 (2007)(それぞれ、その全体が引用により組み込まれている)の手順によって、ポリ(アクリル酸)-グラフト-ポリ(エチレンオキシド) (PAA-g-PEO)を合成した。
【0054】
ガラス基板上でアセンブルされた多層の厚さの測定を、2μmのスタイラスチップ及び2 mgの針圧を用いて、Tensor P16表面プロフィルメーター(PL)で行った。空気中でNanscope IIIa, Dimension 3000 AFM顕微鏡(Digital Instruments社(Santa Barbara)製)をタッピングモードで使用して、多層のトポグラフィ像を収集した。可変角度分光エリプソメトリー(EL)を使用して、ポリカーボネート基板上のコーティングの厚さ及び屈折率を測定した。接触角の測定を、VCA-2000接触角システム(AST Products社(MA)製)で行なった。メーカーによって提供されたソフトウエア(VCA Optima XE Version 1.90)を使用して、60フレーム/秒で捕らえた動的ビデオファイルから接触角値を算出した。
【0055】
若干改良した欧州標準試験(EN168、その全体が引用により組み込まれている)によって、並びに湿度室及び吸引試験によって、防曇性を評価した。最初の事例では、湿度室中の水の温度、及び該室の湿度をそれぞれ、23℃及び100%に設定した。試料の相対透過率をコーティングの防曇性の基準として評価した。相対透過率を(Tr %) = (Tf /Ti) * 100(防曇条件でのコーティングの透過率が(Tf)であり、非防曇条件での初期透過率が(Ti)である)として記録した。第2の事例では、人工気候室を使用して、種々の環境条件を設定した。超音波給湿システム及び換気システムによって、該室内の湿度を制御した。該室において、種々の時間で、37℃、80%の湿度でスライドの像を記録することによって、防曇コーティングでコーティングしたスライドを評価した。該コーティングの防曇性の迅速な評価において、試料における単純な吸引/呼吸を含む簡便な試験を使用した。
【0056】
鉛筆硬度試験装置、キムワイプ(Kimwipe)試験、及び布‐スポンジ試験によって、コーティングの機械的強度を評価した。キムワイプ試験では、基板上のコーティングを、研究室のキムワイプを10回使用して、手で強く擦った。鉛筆硬度試験では、ASTM D3363(ECCA-T4/1又はISO 15184ともいう;それぞれ、その全体が引用により組み込まれている)によって、ガラス基板上のコーティングを試験した。コーティングされた基板を鉛筆先端の下に水平に置き、鉛筆硬度試験装置を一方の方向に移動した。該鉛筆先端に負荷した力は、750 gの荷重によるものであった。擦られた領域を光学顕微鏡によって評価した。布‐スポンジ試験では、コーティングを最初に水又は石鹸液(International Products Corporation社から入手した2% MICRO-90溶液)で湿らせ、種々の条件下で、布(ANTICON, Lot# 5562)又はセルローススポンジで擦った。最初の試験では、湿らせたコーティングを濡れたスポンジで10回擦った。第2の試験では、湿らせたコーティングを濡れた布で10回擦った。第3の試験では、湿らせたコーティングを乾燥した布で10回擦った。最後の試験は、布‐スポンジ試験のうちで機械的強度の最も正確な試験であると考えられた。
【0057】
親水性防曇コーティングを、単純な層ごとの浸漬又はスプレー法を使用して、ガラス、ポリカーボネート、及びサファイア基板上で調製した。「交互積層」法と呼ばれるこの工程には、該基板を種々のポリマーの溶液に連続して接触させることが含まれる。2つの異なるポリマー溶液を使用する場合、それぞれのサイクルの相補的なポリマーの堆積は、「二分子層」を形成し、これには、ポリマーの分子レベルのブレンドが含まれる。表記(Poly1/Poly2)nは、アセンブルされたコーティングの構造について便利なように記述する。ここで、Poly1及びPoly 2は、アセンブリに使用する特定のポリマーを識別する略語であり、nは、堆積された二分子層の数である。したがって、キトサンとカルボキシメチルセルロース(carboxylmethylcellulose)とを含む10の二分子層コーティングは、(CHI/CMC)10となる。
【0058】
アセンブルされたコーティングを共有結合架橋によって、より機械的に強固にすることができる。例えば、確立したEDC/NHS化学を使用して、又は熱処理(例えば、100℃〜250℃の範囲で(例えば、130℃で))によって、架橋を達成することができる。キトサン/カルボキシメチルセルロース、又はキトサン/ポリ(アクリル酸-ポリエチレンオキシド共重合体)のいずれかから調製したコーティングは、親水性の湿潤性を示した。これらのポリマーの極性基又は極性要素は、極性‐双極子、H結合による水との強い相互作用、又は極性‐極性相互作用を有し得る。その結果、コーティング表面上で凝結する水が、他の水分子よりポリマーと強く相互作用するので、光散乱水滴の成長を抑制することができる。キトサン等の中性ポリマー、又はカルボキシメチルセルロース(carboxylmethylcellulose)、及びポリ(エチレンオキシド)グラフト化ポリ(アクリル酸)共重合体等の合成共重合体は、この効果と、ポリ(アクリル酸) (PAA)及びポリ(アリルアミン) (poly(allyamine)) (PAH)等の顕著に性能が優れた一般に使用される高分子電解質(PE)に特によく適している。CHI、CMC、及びPAA-co-PEGの滴成長の抑制能は、水素結合によるそれらの水との強い相互作用能に関係し得る。例えば、防曇試験において、PAAとCHIから、及びPAHとCMCから調製した多層系は、許容し得る防曇性を発揮しなかった。また、これらの材料のガラス基板上で化学的に固定された多層も、許容し得る防曇性を発揮しなかった。これらのコーティングのすべて(すなわち、CHI/PAA及びCMC/PAA等の中性ポリマー/単純な合成高分子電解質(polyelectrotye))は、湿度室及び吸引試験の両方で失敗した。
【0059】
(実施例1):コーティングアセンブリ
StratoSmart v6.2ソフトウエアによって制御したStratosequence VIスピンディッパー(Nanostrata社製)で、ガラス、サファイア、及びポリカーボネートスライド上のすべてのポリマー/ポリマー系の吸着を行った。ポリマーの浸漬時間は10分であり、その後、ポリマー溶液のpHと同じpHの水中で3回洗浄した。ポリマー浸漬の間に、2分の洗浄1回と1分の洗浄2回を行った。キトサン(CHI)及びカルボキシメチルセルロース(CMC)の濃度は、0.1重量%であった。CHI/ PAA-g-PEOコーティングでは、PAA-g-PEOの濃度は0.07重量%であった。ポリマー溶液及び水のpHは、HCl又はNaOHのいずれかで調整した。
【0060】
ガラス基板上に堆積された二分子層の数の関数として、キトサン/カルボキシメチルセルロース系の厚さ成長を測定した(図2)。10の二分子層コーティングの厚さは約23 nmであった。二分子層の数が20である場合、コーティングの厚さは72 nmに達した。30の二分子層コーティングの厚さは、ガラス基板上において570 nmまで増加した。同様の成長傾向がポリカーボネート基板上でみられた。また、キトサン/PAA-g-PEOコーティングの厚さ成長も測定した(図3)。8及び10の二分子層コーティングの厚さはそれぞれ、200 nm及び300 nmであった。
【0061】
(実施例2):架橋化学
EDC及びNHSに関する従来のカップリング反応を使用して、キトサン及びカルボキシメチルセルロース系を架橋した。pH 4でガラス及びポリカーボネート基板上にアセンブルした10の(CHI/CMC)10コーティングを、400 mM EDC及び100 mM NHSのpH 4.5溶液に15分間浸漬し、次いで、同じpHで洗浄した。
【0062】
(実施例3):防曇試験
ガラス及びポリカーボネート上のコーティングの透過率を23℃、100%の湿度で測定した。架橋した10の二分子層CHI/CMCコーティングは、高い透明度(94%)を示した。基板を湿度室に120秒間置いた後、相対透過率(Tr)は95%であった。この処理後のポリカーボネート上のコーティングの相対透過率(Tr)は、75%であった。
【0063】
ガラス及びポリカーボネート上のキトサン/PAA-g-PEGコーティングの透過率を23℃、100%の湿度で測定した。15の二分子層を有するコーティングは、ガラス上で高い透明度(92%)を示した。基板を湿度室に70秒間置いた後、相対透過率(Tr)は100%であった。ポリカーボネート上のコーティングの相対透過率(Tr)は、99%であった。両方のコーティングの曇り度は0.2%であり、これは、米国特許第5,804,612号(その全体が引用により組み込まれている)に記載のコーティングの曇り度5%よりも非常に良好であった。図4は、ガラス基板上で調製した、架橋した10の二分子層キトサン/カルボキシメチルセルロースコーティングのトポグラフィの像を示す。
【0064】
吸引及び湿度室試験によって、両方のコーティングは、優れた防曇性を示した。第2の湿度室試験を37℃、80%の湿度で行い、1秒、10秒、30秒、2分、3日及び1週後の像を記録した。両方のコーティングは、優れた防曇性を示し、曇りは、1秒から1週でみられなかった。
【0065】
(実施例4):エージング研究
両方の型の防曇コーティングは、1ヶ月間冷蔵庫に置いた(0℃〜4℃)後、優れた、かつ長期にわたる防曇性を示した。この処理後に記録したコーティングの像を図5に示す。空気中に2ヶ月保存後、両方のコーティングを試験した。これらは優れた防曇性を示した。
【0066】
(実施例5):種々の共重合体組成物
キトサン及びPAA-g-PEGのコーティングに対する親水性の影響を見出すために、種々の比のポリ(アクリル酸)及びポリ(エチレンオキシド)によるPAA-g-PEG共重合体を合成し、これらの防曇性を評価した。PAA-g-PEG共重合体中のPEG成分が37 %重量%である場合(図6)、キトサン及びPAA-g-PEGコーティングは、優れた防曇性を示した。該重合体中のPEGの量が25%重量%である場合、キトサン及びPAA-g-PEGコーティングは、良好な防曇性を示さなかった(図7)。図6及び7の像を、1秒及び20秒の間隔で、37℃で80%の湿度の湿度室において同じ試料で記録した。
【0067】
(実施例6)
優れた防曇性は、分子的にブレンドされた親水性ポリマーの臨界的な厚さを要求した。キトサン/CMC多層において、厚さが20 nmより大きい場合、コーティングは、良好な防曇性を有していた。キトサン/PAA-g-PEG多層において、コーティングの厚さが少なくとも10 nmである場合、良好な防曇性が達成された。表面に化学的に結合したカルボキシメチルセルロース又はPAA-g-PEGのみから成る単層コーティングは、防曇性を示さなかった。湿度室(37℃、80%の湿度)に置いてすぐに、かかるコーティングは曇る(図8及び9)。これは、適切な親水性ポリマーの分子的にブレンドされた層が、長期にわたる防曇コーティングを作製するのに必要であることを実証した。
【0068】
(実施例7):保護眼鏡用のコーティング
ポリカーボネート製保護眼鏡の一方のレンズを、キトサン及びPAAg-PEGの10の二分子層でコーティングした。他方のレンズをコーティングしないままにした。次いで、該眼鏡を4℃で1ヶ月間冷蔵庫に置いた。コーティングされた眼鏡を冷蔵庫から取り出し、熱蒸気に暴露後、像を得た。コーティングされたレンズは、優れた防曇性を示したが、コーティングしていないレンズは、蒸気ですぐに曇った(図10参照)。
【0069】
(実施例8):ガラス基板の防曇試験
種々のコーティングでコーティングした2つのガラス基板を、2週間冷蔵庫に置いた後、熱蒸気に直接暴露することによって評価した。図11及び12に示すように、キトサンとPAA-g-PEG (37% PEG)又はキトサンとPAA-g-PEG (50% PEG)のいずれかを含むコーティングは、優れた防曇性を示した。
【0070】
(実施例9):機械的耐久性試験
研究室のキムワイプで積極的に拭くことによって、CHI/CMC及びCHI/PAA-g-PEG (37 % PEG)コーティングの機械的耐久性を検討した。拭いた後、目に見える損傷は、一方のコーティングではみられなかった。両方のコーティングは、防曇性を保持した。この観察は、ナノ粒子のナノ多孔質アレイに基づく防曇コーティング(例えば、米国特許出願公開第2008/0268229号(その全体が引用により組み込まれている)を参照のこと)と対比した。積極的に拭くことによって、表面層の平滑化により、ナノ粒子系コーティングの防曇性を損なった。両方のポリマー系コーティングの優れた機械的強度は、ガラス基板に化学的に結合することでさらに促進された。CHI/CMC及びCHI/PAA-g-PEOでアセンブルされたコーティングの鉛筆硬度試験は、2Hの硬度を示した。熱架橋コーティングは6Hの鉛筆硬度を有し、層間剥離は、光学顕微鏡によってみられなかった。図13A〜13Cは、種々の鉛筆硬度試験でのキトサン及びPAA-g-PEG (37% PEG)の15の二分子層の鉛筆硬度を示す。その硬度は2Hを示した。7H鉛筆で該コーティングに力をかけると、該コーティングの層間剥離が生じた(図13C)。
【0071】
(実施例10):防曇コーティングの機械的強度の促進
コーティング前に、化学的に改質することができる、ガラス及び別のシリカリッチ基板、特定のポリマー基板、並びにサファイア基板を供した。該改質は、コーティングの機械的強度を促進することができる。シリカリッチ基板には、例えば、ガラス、シリカ及び石英等の反応性のシラノール基を有する透明基板が含まれる。コーティングが塗布される前に化学的に改質することができるポリマー基板には、ポリカーボネート及びPMMAが含まれる。基板上に、エポキシシラン化合物(3-グリシドキシプロピル)トリメトキシシランとヒドロキシル基又はシラノール基間に共有結合を形成することによって、基板を化学的に改質した。この改質は、加水分解及び縮合反応によって進行した。次いで、分岐ポリ(エチレンイミン) (PEI)をエポキシ官能化表面に暴露した。PEIの反応性アミノ基は、エポキシ基と反応し、アミノ基を有する改質表面を提供する。
【0072】
ガラス様基板を最初に水中で5分間超音波処理し、120 mTorrで2分間、酸素プラズマ中で清浄化するか、又は80℃で30分間、ピラニア溶液中で加熱した。清浄化した基板を、1% (3-グリシドキシプロピル)トリメトキシシランの無水トルエン溶液と共に直ちに一晩インキュベートし、次いで、純トルエンで洗浄した。トルエンは、クロロホルム及びヘキサン等の別の無水有機溶媒に代えることができる。乾燥した基板を、分岐PEIの0.01 M水溶液(pH=9)中で少なくとも4時間浸漬し、その後、水で洗浄した。次に、CHI/CMCの多層をPEI改質基板上にアセンブルした。次いで、アセンブルされたCHI/CMCの多層を有する基板を、200 mM EDC及び50 mM NHSを含む0.05 M MESバッファー(pH 5)に30分間浸漬し、その後、1×PBSバッファーに20分間浸漬した。次いで、ガラス様基板上のCHI/CMCの架橋した多層を水で洗浄した。このように形成した防曇コーティングは、層間が化学的に結合しただけでなく、官能化基板にも化学的に結合した。
【0073】
次いで、多層をさらに架橋するために、コーティングを2.5%グルタルアルデヒドの水溶液(pH=9)に30℃で45分間浸漬した。その後、基板を水で洗浄した。キムワイプ試験、鉛筆硬度試験、及び布‐スポンジ試験によって、ガラス様又はサファイア基板上に架橋したコーティングを評価した。キムワイプ試験は、目に見える擦り傷はなく、優れた機械的強度を示した。EDC/NHS及びグルタルアルデヒドで架橋した(CMC/CHI)15.5コーティングの鉛筆硬度試験は、4Hの鉛筆硬度を示した(図14)。7Hの鉛筆硬度では、このコーティングは層間剥離を示した。EDC/NHSで架橋したCMC/CHIの12.5の二分子層コーティングは、濡れた布又は濡れたスポンジで擦った後に損傷を示さなかった。しかしながら、乾燥した布で湿潤条件において擦った後に、擦り傷及び/又は層間剥離が生じた。一方、EDC/NHS及びグルタルアルデヒドの両方で架橋した12.5の二分子層コーティングは、湿らせたコーティングを乾燥した布で擦った後に、目に見える損傷を示さなかった。
【0074】
別の実施態様は、次の特許請求の範囲の範囲内である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
防曇コーティングでコーティングされた表面を有する物品であり、
該コーティングは、
第1の親水性ポリマー;と、
第2の親水性ポリマー;と、を含み、かつ、
該第1の親水性ポリマー及び第2の親水性ポリマーが、分子的にブレンドされる、
前記物品。
【請求項2】
前記第1の親水性ポリマーには、複数のイオン化基又はイオン性基が含まれる、請求項1記載の物品。
【請求項3】
前記第2の親水性ポリマーには、複数のイオン化基又はイオン性基が含まれる、請求項2記載の物品。
【請求項4】
前記第2の親水性ポリマーには、複数の水素結合性基が含まれる、請求項2記載の物品。
【請求項5】
少なくとも1つの前記第1の親水性ポリマー及び第2の親水性ポリマーが、第1の複数のイオン化基又はイオン性基と、第2の化学的に独立した複数の水素結合性基とを含む共重合体である、請求項1記載の物品。
【請求項6】
前記コーティングには、前記第1の親水性ポリマーを含んだ第1の層と、前記第2の親水性ポリマーを含んだ第2の層とが含まれる、請求項1記載の物品。
【請求項7】
前記第1の親水性ポリマー及び前記第2の親水性ポリマーが、混合される、請求項6記載の物品。
【請求項8】
前記コーティングには、前記第1の親水性ポリマーを含んだ複数の第1の層を含む一連の層が含まれ、該複数の第1の層が、前記第2の親水性ポリマーを含んだ複数の層と互い違いになる、請求項7記載の物品。
【請求項9】
前記第1の親水性ポリマーが、キトサン(CHI)、ポリ(アリルアミン)-co-ポリ(エチレンオキシド)共重合体(PAH-g-PEG)、ポリ(L-リジン)-co-(ポリエチレンオキシド) (PLL-g-PEG)、ポリ(四級化-4-ビニルピリジン)-co-ポリ(エチレンオキシド) (QPVP-co-PEG)、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)-co-ポリ(エチレンオキシド) (PDADMA-co-PEG)、ポリ(アリルアミン)-co-ポリアクリルアミド共重合体(PAH-co-PAAM)、ポリ(L-リジン)-co-ポリアクリルアミド(PLL-co-PAAM)、ポリ(四級化-4-ビニルピリジン)-co-ポリアクリルアミド(QPVP-co-PAAM)、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)-co-ポリアクリルアミド(PDADMA-co-PAAM)、ポリ(アリルアミン)-co-ポリアクリルアミド共重合体(PAH-co-PAAM)、及びこれらの組合せからなる群より選択される、請求項8記載の物品。
【請求項10】
前記第2の親水性ポリマーが、カルボキシメチルセルロース(CMC)、アルギン酸(AA)、ヒアルロン酸(HA)、ヘパリン、ペクチン、ポリ(アクリル酸)-co-ポリ(エチレンオキシド)共重合体(PAA-co-PEG)、ポリ(メタクリル酸)-co-ポリ(エチレンオキシド)共重合体(PMAA-co-PEG)、ポリ(アクリル酸)-co-ポリアクリルアミド共重合体(PAA-co-PAAM)、ポリ(メタクリル酸)-co-ポリアクリルアミド(PMAA-co-PAAM)、カラギーナン(κ, a l, aλ)、フコイダン、フコガラクタン、コンドロイチン、ゲランガム、カラヤガム、トラガカントゴム、ウェランガム、キサンタンゴム、オオバコ種子ガム質、及びこれらの組合せからなる群より選択される、請求項9記載の物品。
【請求項11】
前記第1の親水性ポリマーが、カルボキシメチルセルロース(CMC)、アルギン酸(AA)、ヒアルロン酸(HA)、ポリ(アクリル酸)-co-ポリ(エチレンオキシド)共重合体(PAA-co-PEG)、ポリ(メタクリル酸)-co-ポリ(エチレンオキシド)共重合体(PMAA-co-PEG)、ポリ(アクリル酸)-co-ポリ(アクリルアミド)共重合体(PAA-co-PAAM)、ポリ(メタクリル酸)-co-ポリ(アクリルアミド) (PMAA-co-PAAM)、及びこれらの組合せからなる群より選択される、請求項8記載の物品。
【請求項12】
前記第2の親水性ポリマーが、ポリ(エチレンオキシド) (PEG)、ポリアクリルアミド(PAAM)、ポリ(ビニルアルコール) (PVA)、ポリ(ビニルピロリドン) (PVP)、キトサン、キチン、イヌリン、ラミナラン、プルラン、カードラン、スクレログルカン、タラガム、タマリンドガム、グアーガム、マンナン、デキストラン、グリコーゲン、セルロース、及びこれらの組合せからなる群より選択される、請求項11記載の物品。
【請求項13】
前記第1の親水性ポリマー及び前記第2の親水性ポリマーが、互いに化学的架橋される、請求項1記載の物品。
【請求項14】
前記第1の親水性ポリマー及び前記第2の親水性ポリマーが、互いに熱架橋される、請求項1記載の物品。
【請求項15】
前記物品が光学部品である、請求項1記載の物品。
【請求項16】
前記物品が眼鏡レンズである、請求項1記載の物品。
【請求項17】
前記物品が透明であり、かつ23℃で100%の湿度に少なくとも60秒間暴露後の相対透過率(Tr)が90%より高い、請求項1記載の物品。
【請求項18】
前記物品が透明であり、かつ23℃で100%の湿度に少なくとも60秒間暴露後の曇り度が1.0%未満である、請求項1記載の物品。
【請求項19】
防曇コーティングでコーティングされた表面を有する物品であり、該コーティングには、第1の親水性ポリマーを含んだ複数の第1の層を含む一連の層が含まれ、該複数の第1の層が、第2の親水性ポリマーを含んだ複数の層と互い違いになり、かつ、該第1の親水性ポリマー及び該第2の親水性ポリマーが混合される、前記物品。
【請求項20】
前記第1の層が、前記第1の親水性ポリマーから実質的に成る、請求項19記載の物品。
【請求項21】
前記第2の層が、前記第2の親水性ポリマーから実質的に成る、請求項20記載の物品。
【請求項22】
防曇コーティングで物品の表面をコーティングする方法であり、分子的にブレンドされた第1の親水性ポリマー及び第2の親水性ポリマーを含んだ組成物を物品の表面上に堆積することを含む、前記方法。
【請求項23】
堆積には、前記表面と、前記第1の親水性ポリマーを含んだ第1の水溶液とを接触させることが含まれる、請求項22記載の方法。
【請求項24】
堆積には、前記表面と、前記第2の親水性ポリマーを含んだ第2の水溶液とを接触させることがさらに含まれる、請求項23記載の方法。
【請求項25】
堆積には、前記第1の親水性ポリマーを含む第1の層を形成することと、前記第2の親水性ポリマーを含む第2の層を形成することが含まれる、請求項22記載の方法。
【請求項26】
堆積には、堆積の際、前記第1の親水性ポリマーと前記第2の親水性ポリマーが混合するように、前記第1の親水性ポリマー及び前記第2の親水性ポリマーを選択することが含まれる、請求項25記載の方法。
【請求項27】
堆積には、前記第1の親水性ポリマーを含んだ複数の第1の層を含む一連の層を形成することが含まれ、該複数の第1の層が、前記第2の親水性ポリマーを含んだ複数の層と互い違いになる、請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記第1の親水性ポリマーが、キトサン(CHI)、ポリ(アリルアミン)-co-ポリ(エチレンオキシド)共重合体(PAH-g-PEG)、ポリ(L-リジン)-co-(ポリエチレンオキシド) (PLL-g-PEG)、ポリ(四級化-4-ビニルピリジン)-co-ポリ(エチレンオキシド) (QPVP-co-PEG)、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)-co-ポリ(エチレンオキシド) (PDADMA-co-PEG)、ポリ(アリルアミン)-co-ポリアクリルアミド共重合体(PAH-co-PAAM)、ポリ(L-リジン)-co-ポリアクリルアミド(PLL-co-PAAM)、ポリ(四級化-4-ビニルピリジン)-co-ポリアクリルアミド(QPVP-co-PAAM)、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)-co-ポリアクリルアミド(PDADMA-co-PAAM)、ポリ(アリルアミン)-co-ポリアクリルアミド共重合体(PAH-co-PAAM)、及びこれらの組合せからなる群より選択される、請求項27記載の方法。
【請求項29】
前記第2の親水性ポリマーが、カルボキシメチルセルロース(CMC)、アルギン酸(AA)、ヒアルロン酸(HA)、ヘパリン、ペクチン、ポリ(アクリル酸)-co-ポリ(エチレンオキシド)共重合体(PAA-co-PEG)、ポリ(メタクリル酸)-co-ポリ(エチレンオキシド)共重合体(PMAA-co-PEG)、ポリ(アクリル酸)-co-ポリアクリルアミド共重合体(PAA-co-PAAM)、ポリ(メタクリル酸)-co-ポリアクリルアミド(PMAA-co-PAAM)、カラギーナン(κ, a l, aλ)、フコイダン、フコガラクタン、コンドロイチン、ゲランガム、カラヤガム、トラガカントゴム、ウェランガム、キサンタンゴム、オオバコ種子ガム質、及びこれらの組合せからなる群より選択される、請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記第1の親水性ポリマーが、カルボキシメチルセルロース(CMC)、アルギン酸(AA)、ヒアルロン酸(HA)、ポリ(アクリル酸)-co-ポリ(エチレンオキシド)共重合体(PAA-co-PEG)、ポリ(メタクリル酸)-co-ポリ(エチレンオキシド)共重合体(PMAA-co-PEG)、ポリ(アクリル酸)-co-ポリ(アクリルアミド)共重合体(PAA-co-PAAM)、ポリ(メタクリル酸)-co-ポリ(アクリルアミド) (PMAA-co-PAAM)、及びこれらの組合せからなる群より選択される、請求項27記載の方法。
【請求項31】
前記第2の親水性ポリマーが、ポリ(エチレンオキシド) (PEG)、ポリアクリルアミド(PAAM)、ポリ(ビニルアルコール) (PVA)、ポリ(ビニルピロリドン) (PVP)、キトサン、キチン、イヌリン、ラミナラン、プルラン、カードラン、スクレログルカン、タラガム、タマリンドガム、グアーガム、マンナン、デキストラン、グリコーゲン、セルロース、及びこれらの組合せからなる群より選択される、請求項30記載の方法。
【請求項32】
堆積には、前記表面と、前記第1の親水性ポリマーを含んだ第1の水溶液とを接触させることと、前記表面と、前記第2の親水性ポリマーを含んだ第2の水溶液とを接触させることが含まれる、請求項22記載の方法。
【請求項33】
前記表面と前記第1の水溶液とを接触させることには、浸漬コーティング、スプレーコーティング、スピンコーティング、又はこれらの組合せが含まれる、請求項32記載の方法。
【請求項34】
前記表面と前記第2の水溶液とを接触させることには、浸漬コーティング、スプレーコーティング、スピンコーティング、又はこれらの組合せが含まれる、請求項33記載の方法。
【請求項35】
堆積された組成物と化学的架橋試薬とを接触させることをさらに含む、請求項22記載の方法。
【請求項36】
前記表面を、前記第1の親水性ポリマー及び前記第2の親水性ポリマーを熱架橋するのに十分であるが、前記物品を変形するには不十分である温度に暴露することをさらに含む、請求項22記載の方法。
【請求項37】
前記第1の親水性ポリマーには、複数のイオン化基又はイオン性基が含まれる、請求項22記載の方法。
【請求項38】
前記第2の親水性ポリマーには、複数のイオン化基又はイオン性基が含まれる、請求項37記載の方法。
【請求項39】
前記第2の親水性ポリマーには、複数の水素結合性基が含まれる、請求項37記載の方法。
【請求項40】
少なくとも1つの前記第1の親水性ポリマー及び第2の親水性ポリマーが、第1の複数のイオン化基又はイオン性基と、第2の化学的に独立した複数の水素結合性基とを含む共重合体である、請求項22記載の方法。
【請求項41】
前記物品が光学部品である、請求項22記載の方法。
【請求項42】
前記物品が眼鏡レンズである、請求項22記載の方法。
【請求項43】
防曇コーティングで物品の表面をコーティングする方法であり、交互に、該表面と、第1の親水性ポリマーを含んだ第1の水溶液とを接触させることと、該表面と、第2の親水性ポリマーを含んだ第2の水溶液とを接触させることを含む、前記方法。
【請求項1】
防曇コーティングでコーティングされた表面を有する物品であり、
該コーティングは、
第1の親水性ポリマー;と、
第2の親水性ポリマー;と、を含み、かつ、
該第1の親水性ポリマー及び第2の親水性ポリマーが、分子的にブレンドされる、
前記物品。
【請求項2】
前記第1の親水性ポリマーには、複数のイオン化基又はイオン性基が含まれる、請求項1記載の物品。
【請求項3】
前記第2の親水性ポリマーには、複数のイオン化基又はイオン性基が含まれる、請求項2記載の物品。
【請求項4】
前記第2の親水性ポリマーには、複数の水素結合性基が含まれる、請求項2記載の物品。
【請求項5】
少なくとも1つの前記第1の親水性ポリマー及び第2の親水性ポリマーが、第1の複数のイオン化基又はイオン性基と、第2の化学的に独立した複数の水素結合性基とを含む共重合体である、請求項1記載の物品。
【請求項6】
前記コーティングには、前記第1の親水性ポリマーを含んだ第1の層と、前記第2の親水性ポリマーを含んだ第2の層とが含まれる、請求項1記載の物品。
【請求項7】
前記第1の親水性ポリマー及び前記第2の親水性ポリマーが、混合される、請求項6記載の物品。
【請求項8】
前記コーティングには、前記第1の親水性ポリマーを含んだ複数の第1の層を含む一連の層が含まれ、該複数の第1の層が、前記第2の親水性ポリマーを含んだ複数の層と互い違いになる、請求項7記載の物品。
【請求項9】
前記第1の親水性ポリマーが、キトサン(CHI)、ポリ(アリルアミン)-co-ポリ(エチレンオキシド)共重合体(PAH-g-PEG)、ポリ(L-リジン)-co-(ポリエチレンオキシド) (PLL-g-PEG)、ポリ(四級化-4-ビニルピリジン)-co-ポリ(エチレンオキシド) (QPVP-co-PEG)、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)-co-ポリ(エチレンオキシド) (PDADMA-co-PEG)、ポリ(アリルアミン)-co-ポリアクリルアミド共重合体(PAH-co-PAAM)、ポリ(L-リジン)-co-ポリアクリルアミド(PLL-co-PAAM)、ポリ(四級化-4-ビニルピリジン)-co-ポリアクリルアミド(QPVP-co-PAAM)、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)-co-ポリアクリルアミド(PDADMA-co-PAAM)、ポリ(アリルアミン)-co-ポリアクリルアミド共重合体(PAH-co-PAAM)、及びこれらの組合せからなる群より選択される、請求項8記載の物品。
【請求項10】
前記第2の親水性ポリマーが、カルボキシメチルセルロース(CMC)、アルギン酸(AA)、ヒアルロン酸(HA)、ヘパリン、ペクチン、ポリ(アクリル酸)-co-ポリ(エチレンオキシド)共重合体(PAA-co-PEG)、ポリ(メタクリル酸)-co-ポリ(エチレンオキシド)共重合体(PMAA-co-PEG)、ポリ(アクリル酸)-co-ポリアクリルアミド共重合体(PAA-co-PAAM)、ポリ(メタクリル酸)-co-ポリアクリルアミド(PMAA-co-PAAM)、カラギーナン(κ, a l, aλ)、フコイダン、フコガラクタン、コンドロイチン、ゲランガム、カラヤガム、トラガカントゴム、ウェランガム、キサンタンゴム、オオバコ種子ガム質、及びこれらの組合せからなる群より選択される、請求項9記載の物品。
【請求項11】
前記第1の親水性ポリマーが、カルボキシメチルセルロース(CMC)、アルギン酸(AA)、ヒアルロン酸(HA)、ポリ(アクリル酸)-co-ポリ(エチレンオキシド)共重合体(PAA-co-PEG)、ポリ(メタクリル酸)-co-ポリ(エチレンオキシド)共重合体(PMAA-co-PEG)、ポリ(アクリル酸)-co-ポリ(アクリルアミド)共重合体(PAA-co-PAAM)、ポリ(メタクリル酸)-co-ポリ(アクリルアミド) (PMAA-co-PAAM)、及びこれらの組合せからなる群より選択される、請求項8記載の物品。
【請求項12】
前記第2の親水性ポリマーが、ポリ(エチレンオキシド) (PEG)、ポリアクリルアミド(PAAM)、ポリ(ビニルアルコール) (PVA)、ポリ(ビニルピロリドン) (PVP)、キトサン、キチン、イヌリン、ラミナラン、プルラン、カードラン、スクレログルカン、タラガム、タマリンドガム、グアーガム、マンナン、デキストラン、グリコーゲン、セルロース、及びこれらの組合せからなる群より選択される、請求項11記載の物品。
【請求項13】
前記第1の親水性ポリマー及び前記第2の親水性ポリマーが、互いに化学的架橋される、請求項1記載の物品。
【請求項14】
前記第1の親水性ポリマー及び前記第2の親水性ポリマーが、互いに熱架橋される、請求項1記載の物品。
【請求項15】
前記物品が光学部品である、請求項1記載の物品。
【請求項16】
前記物品が眼鏡レンズである、請求項1記載の物品。
【請求項17】
前記物品が透明であり、かつ23℃で100%の湿度に少なくとも60秒間暴露後の相対透過率(Tr)が90%より高い、請求項1記載の物品。
【請求項18】
前記物品が透明であり、かつ23℃で100%の湿度に少なくとも60秒間暴露後の曇り度が1.0%未満である、請求項1記載の物品。
【請求項19】
防曇コーティングでコーティングされた表面を有する物品であり、該コーティングには、第1の親水性ポリマーを含んだ複数の第1の層を含む一連の層が含まれ、該複数の第1の層が、第2の親水性ポリマーを含んだ複数の層と互い違いになり、かつ、該第1の親水性ポリマー及び該第2の親水性ポリマーが混合される、前記物品。
【請求項20】
前記第1の層が、前記第1の親水性ポリマーから実質的に成る、請求項19記載の物品。
【請求項21】
前記第2の層が、前記第2の親水性ポリマーから実質的に成る、請求項20記載の物品。
【請求項22】
防曇コーティングで物品の表面をコーティングする方法であり、分子的にブレンドされた第1の親水性ポリマー及び第2の親水性ポリマーを含んだ組成物を物品の表面上に堆積することを含む、前記方法。
【請求項23】
堆積には、前記表面と、前記第1の親水性ポリマーを含んだ第1の水溶液とを接触させることが含まれる、請求項22記載の方法。
【請求項24】
堆積には、前記表面と、前記第2の親水性ポリマーを含んだ第2の水溶液とを接触させることがさらに含まれる、請求項23記載の方法。
【請求項25】
堆積には、前記第1の親水性ポリマーを含む第1の層を形成することと、前記第2の親水性ポリマーを含む第2の層を形成することが含まれる、請求項22記載の方法。
【請求項26】
堆積には、堆積の際、前記第1の親水性ポリマーと前記第2の親水性ポリマーが混合するように、前記第1の親水性ポリマー及び前記第2の親水性ポリマーを選択することが含まれる、請求項25記載の方法。
【請求項27】
堆積には、前記第1の親水性ポリマーを含んだ複数の第1の層を含む一連の層を形成することが含まれ、該複数の第1の層が、前記第2の親水性ポリマーを含んだ複数の層と互い違いになる、請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記第1の親水性ポリマーが、キトサン(CHI)、ポリ(アリルアミン)-co-ポリ(エチレンオキシド)共重合体(PAH-g-PEG)、ポリ(L-リジン)-co-(ポリエチレンオキシド) (PLL-g-PEG)、ポリ(四級化-4-ビニルピリジン)-co-ポリ(エチレンオキシド) (QPVP-co-PEG)、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)-co-ポリ(エチレンオキシド) (PDADMA-co-PEG)、ポリ(アリルアミン)-co-ポリアクリルアミド共重合体(PAH-co-PAAM)、ポリ(L-リジン)-co-ポリアクリルアミド(PLL-co-PAAM)、ポリ(四級化-4-ビニルピリジン)-co-ポリアクリルアミド(QPVP-co-PAAM)、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)-co-ポリアクリルアミド(PDADMA-co-PAAM)、ポリ(アリルアミン)-co-ポリアクリルアミド共重合体(PAH-co-PAAM)、及びこれらの組合せからなる群より選択される、請求項27記載の方法。
【請求項29】
前記第2の親水性ポリマーが、カルボキシメチルセルロース(CMC)、アルギン酸(AA)、ヒアルロン酸(HA)、ヘパリン、ペクチン、ポリ(アクリル酸)-co-ポリ(エチレンオキシド)共重合体(PAA-co-PEG)、ポリ(メタクリル酸)-co-ポリ(エチレンオキシド)共重合体(PMAA-co-PEG)、ポリ(アクリル酸)-co-ポリアクリルアミド共重合体(PAA-co-PAAM)、ポリ(メタクリル酸)-co-ポリアクリルアミド(PMAA-co-PAAM)、カラギーナン(κ, a l, aλ)、フコイダン、フコガラクタン、コンドロイチン、ゲランガム、カラヤガム、トラガカントゴム、ウェランガム、キサンタンゴム、オオバコ種子ガム質、及びこれらの組合せからなる群より選択される、請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記第1の親水性ポリマーが、カルボキシメチルセルロース(CMC)、アルギン酸(AA)、ヒアルロン酸(HA)、ポリ(アクリル酸)-co-ポリ(エチレンオキシド)共重合体(PAA-co-PEG)、ポリ(メタクリル酸)-co-ポリ(エチレンオキシド)共重合体(PMAA-co-PEG)、ポリ(アクリル酸)-co-ポリ(アクリルアミド)共重合体(PAA-co-PAAM)、ポリ(メタクリル酸)-co-ポリ(アクリルアミド) (PMAA-co-PAAM)、及びこれらの組合せからなる群より選択される、請求項27記載の方法。
【請求項31】
前記第2の親水性ポリマーが、ポリ(エチレンオキシド) (PEG)、ポリアクリルアミド(PAAM)、ポリ(ビニルアルコール) (PVA)、ポリ(ビニルピロリドン) (PVP)、キトサン、キチン、イヌリン、ラミナラン、プルラン、カードラン、スクレログルカン、タラガム、タマリンドガム、グアーガム、マンナン、デキストラン、グリコーゲン、セルロース、及びこれらの組合せからなる群より選択される、請求項30記載の方法。
【請求項32】
堆積には、前記表面と、前記第1の親水性ポリマーを含んだ第1の水溶液とを接触させることと、前記表面と、前記第2の親水性ポリマーを含んだ第2の水溶液とを接触させることが含まれる、請求項22記載の方法。
【請求項33】
前記表面と前記第1の水溶液とを接触させることには、浸漬コーティング、スプレーコーティング、スピンコーティング、又はこれらの組合せが含まれる、請求項32記載の方法。
【請求項34】
前記表面と前記第2の水溶液とを接触させることには、浸漬コーティング、スプレーコーティング、スピンコーティング、又はこれらの組合せが含まれる、請求項33記載の方法。
【請求項35】
堆積された組成物と化学的架橋試薬とを接触させることをさらに含む、請求項22記載の方法。
【請求項36】
前記表面を、前記第1の親水性ポリマー及び前記第2の親水性ポリマーを熱架橋するのに十分であるが、前記物品を変形するには不十分である温度に暴露することをさらに含む、請求項22記載の方法。
【請求項37】
前記第1の親水性ポリマーには、複数のイオン化基又はイオン性基が含まれる、請求項22記載の方法。
【請求項38】
前記第2の親水性ポリマーには、複数のイオン化基又はイオン性基が含まれる、請求項37記載の方法。
【請求項39】
前記第2の親水性ポリマーには、複数の水素結合性基が含まれる、請求項37記載の方法。
【請求項40】
少なくとも1つの前記第1の親水性ポリマー及び第2の親水性ポリマーが、第1の複数のイオン化基又はイオン性基と、第2の化学的に独立した複数の水素結合性基とを含む共重合体である、請求項22記載の方法。
【請求項41】
前記物品が光学部品である、請求項22記載の方法。
【請求項42】
前記物品が眼鏡レンズである、請求項22記載の方法。
【請求項43】
防曇コーティングで物品の表面をコーティングする方法であり、交互に、該表面と、第1の親水性ポリマーを含んだ第1の水溶液とを接触させることと、該表面と、第2の親水性ポリマーを含んだ第2の水溶液とを接触させることを含む、前記方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2012−528718(P2012−528718A)
【公表日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−514086(P2012−514086)
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【国際出願番号】PCT/US2010/037083
【国際公開番号】WO2010/141594
【国際公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(596060697)マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー (233)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【国際出願番号】PCT/US2010/037083
【国際公開番号】WO2010/141594
【国際公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(596060697)マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー (233)
【Fターム(参考)】
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