説明

コートベース紙およびコートベース紙の製造方法

本発明の目的はコートベース紙である。本発明のコートベース紙は1から5層のバリア層を有するセルロース繊維系の顔料コート紙を含む。バリア層は、ポリビニルアルコール、アクリレート系バリアラテックスおよびそれらの混合物からなる群から選択されたバリア性化学物質を含む。本発明の目的はまた、コートベース紙の製造方法である。その製造方法においては、セルロース繊維系の顔料コート紙上に、ウェブに接触しない方法を用いて1から5層のバリア層を塗布する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の目的は、ラベル用のベース紙または剥離紙として特に適するコートベース紙であり、且つバリアすなわち保護層をセルロース繊維系のコート紙に塗布したコートベース紙を製造する方法である。
【背景技術】
【0002】
剥離紙または裏紙としても知られるベース紙は、ラベルラミネートおよび自己接着ラベルの製造に、および増加しつつあるものとして、接着性材料の包装材料にも使用されている。最も一般的には、ベース紙または剥離紙はグラシン型の透明なスーパーカレンダー処理した表面サイズ紙、または通常はカオリンを含有する顔料でブレードコートした紙、たとえばできるだけ不透過性になるようにスーパーカレンダー処理した上質紙である。代表的な既知の先行技術による感圧ラベルのラミネート構造を付録の図1に図解して示した。
【0003】
図1中、ベース紙10には、最も多くの場合シリコーンを含む剥離コート20を塗布してある。感圧性の糊層30がシリコーンを含む剥離コート20に塗布してあり、そしてラベルを形成する表面紙40が接着層30に貼ってある。
【0004】
ベース紙に塗布したシリコーン層は平滑で、孔のないものでなければならない。何故なら、そうであればラベルの表面紙がベース紙の表面から所望のように滑らかに離れるからである。孔のない平滑なシリコーン層を得るためには、ベース紙に孔、皺、塵、または凹凸があってはならない。ベース紙の表面はシリコーンがベース紙内に浸入するのを防止するために十分塞いでおかなければならない。そうすればベース紙もまた触媒によるシリコーンの硬化に化学的影響を及ぼさないであろう。もしベース紙に孔が存在すると、接着剤層からの接着剤がシリコーン層からベース紙にまで浸入して、後続の処理工程でリター・パス及びラベルラミネートのウェブに、亀裂および破損が生じることがある。
【0005】
通常、シリコーンは、ベース紙上に1〜1.25g/mの厚さで塗布されて、約140℃で硬化させられる。シリコーンは高価なので、シリコーンをできるだけ薄い層に塗布するように努める必要があるが、それにも拘わらずもう一方では優れた剥離特性のゆえに、上質紙にしばしば存在する孔、空隙、および表面の凹凸による破損および起こり得る問題が生じるのを予め防止するために、シリコーン層に十分な厚さをもたせて製造するように努めることが必要である。シリコーンの使用を減らし得るために、ベース紙の表面はできるだけ不透過性および平滑であるべきである。
【0006】
刊行物Wochenbl.Papierfabr.122、11号、468〜472頁(1994)で、シリコーンの消費を減らすために、67g/mの坪量を有するさらし紙に、ポリビニルアルコール及びカルボキシメチルセルロース、あるいはポリビニルアルコール及びデンプンを含む表面サイズ剤を塗布したプロセスが提示されている。
【0007】
特開平5−171600には、紙の両面のポリビニルアルコールによるコートと、それに続く加圧水蒸気処理およびカレンダー処理が記載されている。
【0008】
紙の製造において、ポリビニルアルコールは通常コーティングペースト中の保護コロイドとして使用される。特に、ポリビニルアルコールの低分子量グレードは、カオリン含有顔料混合物等を含むコーティングペーストに適している。ポリビニルアルコールはまた、コーティングおよび表面サイズ剤組成物中の主たるまたは補助的な結合剤として、ならびに蛍光増白剤のような添加剤のキャリアとしても用いられる。
【0009】
ポリビニルアルコールをウェブ上で分離した層として乾燥することは困難で、しかもエネルギーを消費することが知られている。皮革状の表面が生じやすく、そこから含まれている水を除くことが難しくて、その結果表面に凹凸が残るからである。
【0010】
上述のことからわかることであるが、明確な必要性が存在するのは、化学パルプで製造されたコート紙に基づき、材料節減が達成でき、しかもラベルラミネートを製造するときに剥離層として薄いシリコーン層のみが必要な、より嵩高くかつ坪量の小さい、不透過性で平滑なベース紙、およびかかるベース紙の製造方法である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は化学パルプをベースとする不透過性コートベース紙である。
【0012】
本発明のさらなる目的は、化学パルプをベースとする不透過性コートベース紙の製造方法である。
【0013】
それに加えて、本発明の目的は、化学パルプをベースとする不透過性コートベース紙をラベルのためのベース紙および剥離紙として使用することである。
【0014】
本発明のベース紙の、その製造方法の、およびそれを使用することの特徴は、特許請求の範囲に記載されている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
先行技術のベース紙で生ずる問題は、セルロース繊維、好ましくは化学パルプをベースとする顔料コートベース紙を、好ましくはポリビニルアルコールを含むバリア層でコートする本発明の解決策を活用することにより、回避できるかまたは著しく小さくできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の解決策においては、1層または数層の薄いバリア層を、好ましくは主として化学パルプによる、特に好ましくは50%を超える化学パルプによるセルロース繊維から製造された顔料コート紙上に塗布する。層の厚さは、ベース紙とコート紙とを秤量するか、または使用した平方メートルとバリア性化学物質の流量(g/s/m/s)とから計算するかによる層の坪量(g/m)の測定によって定義される。好ましくは、紙は当業者に知られている顔料コート上質紙であって、それをコートするために、カオリンまたは炭酸塩を含む顔料ペースト、好ましくはスチレン−ブタジエンラテックス、ポリビニルアルコールおよび当業者に使用されているその他の通常の結合剤からなる群から選択した結合剤を有するカオリンペーストが使用されている顔料コート上質紙である。
【0017】
先行技術によって製造されたコート紙上に、バリア性化学物質を含む水溶液の1から5層、好ましくは1層を、カーテンコート法および噴霧によって実施されるスプレー法からなる群から選択された、ウェブに非接触なそれ自体既知の方法を用いて塗布する。バリア性化学物質は、ポリビニルアルコール、アクリレート系バリアラテックスからなる群から選択する。その例として、Raisio Chemicals (Oy)社のRebarco(登録商標)シリーズ、およびそれらの混合物を挙げることができる。ポリビニルアルコールは、短鎖で、粘度(mPas)および加水分解率(mol%)が3〜98、15〜99の範囲で変化するものを使用することが望ましい。バリア性化学物質は、塗布する溶液が最大で100cP、好ましくは最大で50cPの粘度を有するように、3〜50重量%、好ましくは3〜25重量%、特に好ましくは3〜5重量%の濃度を有する水溶液として塗布する。バリア性化学物質としてアクリレートラテックスを使用するとき、これらのラテックスは、増量剤、顔料、スチレン−ブタジエンラテックスおよびその他通常の結合剤も含んでいてよい。バリア性化学物質はベース紙におけるその量が好ましくは0.5〜3g/mになるように塗布する。バリア層の塗布はオンラインコートで実施することが望ましい。
【0018】
バリア層の塗布後、乾燥は、IRまたは流動床乾燥法のような当業者に知られた方法で、非接触乾燥法を用いて実施する。乾燥後、場合によってはスーパーカレンダー処理を行ってもよい。本発明のバリア層は、すでにそれ自体、スーパーカレンダー処理が必ずしも必要でない程度に不透過性なのである。スプレー塗布およびカーテンコート法において、場合によって、顔料、表面張力調節剤、乾燥剤、発泡抑制剤、および当業者に知られたその他の添加剤をバリア層に加えてもよい。
【0019】
本発明にとっては、バリア層を塗布するためにスプレーまたはカーテンコート法のような非接触法を使用することが重要であって、そのような方法によって、不透過性の均質な表面が得られるのである。これらの方法では、ウェブに接触する部分を有する装置を使用しないので、破損を生じることはない。
【0020】
本発明の方法によって、孔のない、例を見ないほど不透過性の、均質な、しかも平滑な表面を製造できる。その結果として、シリコーンがベース紙内に吸収されることも浸入することもないので、剥離層のために使用するシリコーンの量はおよそ0.7g/mに減らすことができる。シリコーン処理は、従来技術で知られた任意の方法によって、ラベルおよび剥離紙の分野で知られた任意のシリコーンまたはシリコーン・エマルションを用いて実施すればよい。
【0021】
さらに、コーティングペースト中の結合剤量、およびコーティングペーストそのものの量を従来のものに比べて20%までも減らすこともできるので、ベース紙中の繊維材料の量を減らすことができる。このようにして、坪量を軽量化したにも拘わらず従来技術に知られたベース紙と少なくとも同等の良好な品質の、しかもそれらと同程度またはそれらよりもさらに嵩高いベース紙を製造することが可能になる。カレンダー処理は従来より軽くすることができて、軽量化した紙で標準の厚さを達成できる。本発明の解決手法を用いて、材料消費の大幅な削減を達成することも可能である。
【0022】
本発明を次の実施例により、さらに詳細に示すが、しかし、本発明をこれらにより限定することを意図するものではない。
【実施例1】
【0023】
スプレー法を用いてポリビニルアルコールでコートしたコートベース紙の製造
85g/mの坪量および12.5g/mのブレードコートを有する非カレンダー処理紙Simkraft MF Special(登録商標)を、Helicoater装置を使用してスプレーコートによりポリビニルアルコールの薄い層でコートした。試料1はコートしていない対照試料である。試料2においては、10〜98の加水分解率、5%の固形分、64cPの粘度のポリビニルアルコールMowiol(登録商標)、および1g/mの塗布量を使用した。試料3においては、15〜99の加水分解率、5%の固形分、27cPの粘度のポリビニルアルコールMowiol(登録商標)、および1g/mの塗布量を使用し、また試料4においては同じグレードを使用したが、このときは固形分は3%、粘度は18cPおよび塗布量は0.5g/mであった。ベース紙の顔料コートはブレードコートで実施し、続いて乾燥、それからスプレーコートまたはカーテンコートのいずれかを用いてのバリア層コート、乾燥、および場合によりシート状で生産規模のスーパーカレンダーで実施するカレンダー処理を行った。下の表1にカレンダー処理なしの試料の、下の表2にはカレンダー処理を行った試料の結果を示してある。
【0024】
【表1】

【0025】
【表2】

【0026】
インク吸収値は、ポリビニルアルコールを使用したときに、ポリビニルアルコールを有しない試料に比較して著しく低く、油吸収値は、ポリビニルアルコールを使用したときに、それがないものより格別低くなっていた。これらの試験のグレードはカレンダー処理がなくてさえシリコーン処理に使うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアルコール、アクリレート系バリアラテックスおよびそれらの混合物からなる群から選択されたバリア性化学物質を含むバリア層の1乃至5層を有する、セルロース繊維系顔料コート紙を含むことを特徴とするコートベース紙。
【請求項2】
バリア層の数が1であることを特徴とする請求項1に記載のベース紙。
【請求項3】
ベース紙中のバリア性化学物質の量が0.5乃至3重量%であることを特徴とする、請求項1または2に記載のベース紙。
【請求項4】
バリア性化学物質が短鎖を有するポリビニルアルコールであることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のベース紙。
【請求項5】
顔料コート紙が主として化学パルプ系の顔料コート上質紙であることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のベース紙。
【請求項6】
ポリビニルアルコール、アクリレート系バリアラテックスおよびそれらの混合物からなる群から選択されたバリア性化学物質を水溶液として含むバリア層の1乃至5層を、ウェブに接触しない方法を用いて、セルロース繊維系顔料コート紙上に塗布することを特徴とするコートベース紙の製造方法。
【請求項7】
バリア層を1層塗布することを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ウェブに接触しない方法がカーテンコート法またはスプレー法であることを特徴とする、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
バリア性化学物質を3乃至50重量%の濃度を有する水溶液として塗布することを特徴とする、請求項6乃至8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
バリア性化学物質を3乃至25重量%の濃度を有する水溶液として塗布すること、および塗布する溶液が最大で100cPの粘度を有することを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
バリア性化学物質を3乃至5重量%の濃度を有する水溶液として塗布すること、および塗布する溶液が最大で50cPの粘度を有することを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
バリア層の塗布をオンラインコートで実施することを特徴とする、請求項6乃至11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
バリア層の塗布後、非接触乾燥法を用いて乾燥を実施することを特徴とする、請求項6乃至12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のベース紙、または請求項6乃至13のいずれか1項に記載の方法により製造されたベース紙のラベル用のベース紙および剥離紙としての使用。

【公表番号】特表2007−514868(P2007−514868A)
【公表日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−516223(P2006−516223)
【出願日】平成16年5月25日(2004.5.25)
【国際出願番号】PCT/FI2004/000317
【国際公開番号】WO2005/001201
【国際公開日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【出願人】(504161906)
【Fターム(参考)】