コードのジョイント装置及びジョイント方法
【課題】コードに接着処理が施されているか否かに関わらず接続可能であって、接続部分の径が小さく、且つ、接続部分の強度及び屈曲性が高い、コードのジョイント装置及びその方法を提供する。
【解決手段】コードのジョイント装置1は、熱可塑性樹脂からなる2本のコード30、31をそれぞれ保持するとともに、相対移動可能に構成されている1対の保持部材20、21と、1対の保持部材20、21を相対移動させる保持部材駆動手段9と、1対の保持部材20、21に保持された2本のコード30、31が互いに離間している状態で、2本のコード30、31のそれぞれ一部分を局所的に加熱溶融する加熱手段11とを有する。また、保持部材駆動手段9は、2本のコード30、31の前記一部分が溶融した状態で、1対の保持部材20、21を駆動して2本のコード30、31の前記一部分同士を圧着することにより、両者を融着する。
【解決手段】コードのジョイント装置1は、熱可塑性樹脂からなる2本のコード30、31をそれぞれ保持するとともに、相対移動可能に構成されている1対の保持部材20、21と、1対の保持部材20、21を相対移動させる保持部材駆動手段9と、1対の保持部材20、21に保持された2本のコード30、31が互いに離間している状態で、2本のコード30、31のそれぞれ一部分を局所的に加熱溶融する加熱手段11とを有する。また、保持部材駆動手段9は、2本のコード30、31の前記一部分が溶融した状態で、1対の保持部材20、21を駆動して2本のコード30、31の前記一部分同士を圧着することにより、両者を融着する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂からなる2本コードを接続するコードのジョイント装置及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えばポリエステル繊維やポリアミド繊維等の熱可塑性樹脂繊維からなる複数の素線を縒り合わせた構成のコードが、ベルトの補強材など様々な用途に用いられている。ベルト等のゴム製品に用いられるコードの場合、ゴム材料との接着性を高めるために、コードの表面を樹脂やゴム糊等で被覆する接着処理が施されている場合がある。
【0003】
また、コードは、その端部を、他のコードの端部に接続する場合がある。上述したような接着処理が施されていないコードを接続する場合には、エアスプライサーと呼ばれる公知の装置を用いてコードの端部同士を結節している(例えば、特許文献1参照)。なお、エアスプライサーとは、圧力空気を吹付けてコードの縒りをほぐすと共に、2本のコードの端部の糸同士を絡ませて結節する装置である。
【0004】
一方、接着処理が施されたコードを接続する場合には、エアスプライサーを用いることができないため、コードの端部同士を手結びで繋いでいた。また、このような接着処理が施されたコードの端部同士を接続する方法として、融着による接続がある。この場合、2本のコードの端部同士を接触させた状態で、加熱溶融して融着することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-348420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、2本のコードの端部同士を手結びで接続した場合、結び目部分の径が大きくなるため、ベルト等を製造する際に、この結び目によってコードの並びに乱れが生じる場合があった。また、結び目部分は、引張強度が低いため、張力がかかると破断する場合があった。さらに、結び目部分は、剛性が高く、屈曲性が低いため、コードを繰り返し屈曲させると、結び目部分で破断する場合があった。
【0007】
また、上述したように2本のコードの端部同士を融着する場合、接続部分(融着部分)の径は、結び目に比べて小さく、また、接続部分の強度は、結び目に比べて高くなる。しかしながら、2本のコードの端部同士を接触させた状態で加熱溶融することから、接触面以外の部分も溶融されるため、溶融範囲が大きい。コードは、複数の素線を縒り合わせた構成であり、溶融すると、素線同士が一体化されて剛性が高くなるため、溶融範囲が大きいと、屈曲性が大きく低下してしまう。
【0008】
そこで、本発明は、コードに接着処理が施されているか否かに関わらず接続可能であって、接続部分の径が小さく、且つ、接続部分の強度及び屈曲性が高い、コードのジョイント装置及びその方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0009】
第1の発明のコードのジョイント装置は、熱可塑性樹脂からなる2本のコードをそれぞれ保持するとともに、相対移動可能に構成された1対の保持部材と、前記1対の保持部材を相対移動させる保持部材駆動手段と、前記1対の保持部材に保持された前記2本のコードが互いに離間している状態で、前記2本のコードのそれぞれ一部分を局所的に加熱溶融する加熱手段とを備え、前記保持部材駆動手段は、前記2本のコードの前記一部分が溶融した状態で、前記1対の保持部材を駆動して前記2本のコードの前記一部分同士を圧着することにより、両者を融着することを特徴とする。
【0010】
本発明のコードのジョイント装置により2本のコードを接続する際には、1対の保持部材に保持された2本のコードを互いに離間させた状態で、加熱手段により、1対の保持部材に保持された2本のコードのそれぞれ一部分を局所的に加熱溶融してから、1対の保持部材を保持部材駆動手段により相対移動させて、溶融した2本のコードの前記一部分同士を圧着して融着する。
【0011】
このように、2本のコードを融着により接続しているため、コードの周面同士を融着する場合には、融着部分の径は、コードの径の2倍未満となる。また、コードの端面同士を融着する場合には、融着部分の径はコードの径と同じになる。従って、融着部分の径は、2本のコードの端部同士を結ぶことにより形成される結び目部分の径よりも小さい。
【0012】
また、2本のコードを融着により接続しているため、接続部分(融着部分)の引張強度は、2本のコードの端部同士を手結びで結んだ場合の結節部分(結び目部分)の引張強度に比べて高い。
【0013】
また、2本のコードのそれぞれ一部分のみを局所的に加熱溶融して、この溶融した部分同士を融着している。融着に必要な最小限の領域のみ溶融しているため、2本のコードを接触させた状態で加熱溶融して融着した場合に比べて、溶融する範囲が小さい。そのため、融着部分の屈曲性を、コードの通常の部分の屈曲性に近い値とすることができる。
【0014】
第2の発明のコードのジョイント装置は、前記第1の発明において、前記保持部材駆動手段は、前記1対の保持部材を、これらにそれぞれ保持された前記2本のコードを離接する所定の方向にそれぞれ駆動するものであって、前記加熱手段を、前記1対の保持部材に前記所定の方向に関して挟まれる加熱位置と、前記1対の保持部材によって挟まれない退避位置とにわたって駆動する駆動手段をさらに備え、前記加熱手段は、前記所定の方向における両側部分に、この加熱手段が前記加熱位置にあるときに、前記1対の保持部材によりそれぞれ保持される前記2本のコードが接触する、2つの加熱部を有することを特徴とする。
【0015】
本発明のコードのジョイント装置では、加熱手段を加熱位置に配置した状態で、保持部材駆動手段によって1対の保持部材を所定の方向に駆動して近接させて、加熱手段の両側部分に設けられた2つの加熱部に、1対の保持部材に保持された2本のコードを、それぞれ接触させて加熱溶融する。その後、保持部材駆動手段によって1対の保持部材を一旦離間させるとともに、駆動手段によって加熱手段を退避位置に移動させてから、保持部材駆動手段によって1対の保持部材を再び近接させて、2本のコードの溶融された部分同士を圧着して融着する。
【0016】
この構成によると、保持部材駆動手段は、1対の保持部材にそれぞれ保持された2本のコードの溶融された部分同士を圧着させる手段であると同時に、1対の保持部材に保持された2本のコードを、加熱手段の両側部分に設けられた2つの加熱部に、それぞれ接触させる手段も兼ねている。そのため、コードのジョイント装置の構成を簡易化することができる。
また、保持部材駆動手段と駆動手段は、それぞれ、1対の保持部材と加熱手段とを、一方向にのみ駆動するものであるため、その構成が簡易である。
【0017】
第3の発明のコードのジョイント装置は、前記第2の発明において、前記1対の保持部材は、前記所定の方向に関して対向する部分に、前記2本のコードが並列してそれぞれ保持される融着部保持部を有することを特徴とする。
【0018】
この構成によると、1対の保持部材を近接させると、2本のコードの融着部保持部に保持された部分は、並列した状態で近接するため、2本のコードは、その周面の一部同士が融着される。コードの周面同士を融着するため、融着部分の長さを変更することによって、融着部分の接続強度を容易に調整することができる。
【0019】
第4の発明のコードのジョイント装置は、前記第3の発明において、前記融着部保持部が、前記1対の保持部材の対向する平面にそれぞれ形成された直線状の融着部保持溝であることを特徴とする。この構成によると、コードを保持するための構成が簡易である。
【0020】
第5の発明のコードのジョイント装置は、前記第4の発明において、前記1対の保持部材の前記融着部保持溝の端部に、前記融着部保持溝の延在方向と異なる方向に延在し、前記コードの先端が挿入されて保持される保持穴が形成されていることを特徴とする。
【0021】
この構成によると、保持穴にコードの先端が挿入されて保持されて、コードの先端近傍部は折り曲げられて融着部保持溝に保持される。これにより、コードの融着部保持溝に保持されている部分が融着部保持溝から外れるのを防止できる。
【0022】
第6の発明のコードのジョイント装置は、前記第4又は5の発明において、前記1対の保持部材に、前記融着部保持溝の延在方向と異なる方向に延在し、前記コードの、前記融着部保持溝に保持される部分の近傍部分を保持する保持溝が形成されていることを特徴とする。
【0023】
この構成によると、コードの、融着部保持溝に保持される部分の近傍部分は、折り曲げられて保持溝に保持される。これにより、コードの融着部保持溝に保持されている部分が融着部保持溝から外れるのを防止できる。
【0024】
第7の発明のコードのジョイント装置は、前記第4〜6の何れか発明において、前記融着部保持溝が、同一面に2つ以上並列して形成されており、前記2つ以上の前記融着部保持溝の溝幅及び溝深さが互いに異なることを特徴とする。
【0025】
この構成によると、保持部材には、溝幅及び溝深さの異なる2つ以上の融着部保持溝が形成されているため、保持部材を交換しなくても、異なるサイズのコードを接続することができる。
【0026】
第8の発明のコードのジョイント装置は、前記第3〜6の何れか発明において、加熱溶融時及び圧着時の、前記1対の保持部材の離間距離が調整可能に構成されていることを特徴とする。
【0027】
この構成によると、加熱溶融時及び圧着時の、1対の保持部材の離間距離を調整することにより、コードの材料や使用目的等に応じて、2本のコードの融着部分の径を調整することができる。
【0028】
第9の発明のコードのジョイント装置は、前記第8の発明において、前記コードの前記融着部保持部により保持される部分の延在方向が、前記所定の方向に直交する面に対して傾いており、前記1対の保持部材は、前記コードの前記融着部保持部に保持される部分の延在方向を含む平面上において、前記所定の方向に直交する方向に関する相対的な位置を変更可能に構成されていることを特徴とする。
【0029】
この構成によると、1対の保持部材の、所定の方向に直交する方向に関する相対的な位置を変更することによって、保持部材駆動手段による前記1対の保持部材の駆動距離を変更しなくても、加熱溶融時及び融着時の1対の保持部材の離間距離を変更することができる。
【0030】
第10の発明のコードのジョイント方法は、1対の保持部材に、熱可塑性樹脂からなる2本のコードをそれぞれ保持させる保持工程と、前記1対の保持部材に保持された前記2本のコードが互いに離間している状態で、前記2本のコードのそれぞれ一部分を加熱手段によって局所的に加熱溶融する加熱工程と、前記加熱工程の後、前記1対の保持部材を相対移動させて、前記2本のコードの前記一部分同士を圧着することにより、両者を融着する融着工程とを有することを特徴とする。
【0031】
本発明のコードのジョイント方法により2本のコードを接続する際には、先ず、保持工程において、1対の保持部材に2本のコードをそれぞれ保持させる。次に、加熱工程において、1対の保持部材に保持された2本のコードを互いに離間させた状態で、加熱手段によって1対の保持部材に保持された2本のコードのそれぞれ一部分を局所的に加熱溶融する。その後、融着工程において、1対の保持部材を相対移動させて、溶融した2本のコードの前記一部分同士を圧着して融着する。
【0032】
このように、2本のコードを融着により接続しているため、コードの周面同士を融着する場合には、融着部分の径は、コードの径の2倍未満となる。また、コードの端面同士を融着する場合には、融着部分の径はコードの径と同じになる。従って、融着部分の径は、2本のコードの端部同士を結ぶことにより形成される結び目部分の径よりも小さい。
【0033】
また、2本のコードを融着により接続しているため、接続部分(融着部分)の引張強度は、2本のコードの端部同士を手結びで結んだ場合の結節部分(結び目部分)の引張強度に比べて高い。
【0034】
また、2本のコードのそれぞれ一部分のみを局所的に加熱溶融して、この溶融した部分同士を融着している。融着に必要な最小限の領域のみ溶融しているため、2本のコードを接触させた状態で加熱溶融して融着した場合に比べて、溶融する範囲が小さい。そのため、融着部分の屈曲性を、コードの通常の部分の屈曲性に近い値とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の第1実施形態に係るコードのジョイント装置の平面図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】(a)は保持部材の平面図であって、(b)は保持部材の右側面図である。
【図4】2本のコードをジョイントする工程を示す図である。
【図5】融着工程時の2つの保持部材を示す平面図であって、図1の部分拡大図である。
【図6】2本のコードがジョイントされた状態を示す図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係るコードのジョイント装置に用いられる保持部材を示す図であり、図3に相当する図である。
【図8】本発明の第3実施形態に係るコードのジョイント装置の一部を示す平面図である。
【図9】図8(b)の部分拡大図である。
【図10】図8の状態から保持部材の設置位置を変更した場合の図である。
【図11】第3実施形態の変更形態に係るコードのジョイント装置の一部を示す平面図である。
【図12】第3実施形態の変更形態に係るコードのジョイント装置の一部を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1の実施形態について説明する。
図1及び図2に示すように、本実施形態のコードのジョイント装置1(以下、単にジョイント装置1という)は、2本のコード30、31の端部をそれぞれ保持する2つ(1対)の保持部材20、21と、2つの保持部材20、21がそれぞれ設置される2つのキャリッジ2、3と、2つのキャリッジ2、3が装着されるガイド軸4と、ガイド軸4を回転自在に支持する2つの軸受け5、5と、ガイド軸4を回転駆動するステップモータ(保持部材駆動手段)9と、コード30、31を加熱溶融するためのヒーター11と、ヒーター11を図2中の上下方向に駆動するステップモータ(駆動手段)14とを有する。
なお、以下のジョイント装置1の説明において、図1及び図2中の左右方向を左右方向、図1中の前後方向を前後方向、図2中の上下方向を上下方向と定義して説明する。
【0037】
本実施形態のジョイント装置1によって接続される2本のコード30、31は、例えばポリエステル繊維やポリアミド繊維等の熱可塑性繊維からなる複数の素線を縒り合わせて構成された繊維コードである。コード30、31の径は、例えば0.9〜2.0mmである。
【0038】
このコード30、31には、ゴム材料との接着性を高めるための接着処理が施されていている。接着処理としては、例えば、RFL(レゾルシン・ホルマリン・ラテックス)処理のみ、またはエポキシまたはイソシアネート化合物で前処理した後にRFL処理を施す処理や、RFL処理をした後にゴム糊を付着する処理が挙げられる。なお、コード30、31は、接着処理が施されていない繊維コードであってもよい。
【0039】
ガイド軸4は、左右方向に延在しており、その両端部は、2つの軸受け5、5によってそれぞれ回転自在に支持されている。この2つの軸受け5、5は、支持台15に固定されている。ガイド軸4の略中央部の外周面には、ネジ溝4a、4bが左右方向に並んで形成されている。ネジ溝4a、4bは、螺旋の向きが互いに逆向きに形成されている。
【0040】
ガイド軸4の右側部分には、プーリ6が固定されている。ガイド軸4は、このプーリ6と、ベルト7と、プーリ8とを介してステップモータ9の駆動力が伝達されて回転するようになっている。尚、ステップモータとは、回転数を制御できるモータである。
【0041】
また、ガイド軸4の略中央部には、2つのキャリッジ2、3が取り付けられている。キャリッジ2、3の上面には、それぞれ保持部材20、21が取り外し可能に設置されている。2つのキャリッジ2、3は、それぞれ前後方向に延びて形成されており、キャリッジ2、3の後端部には、左右方向に貫通する雌ネジ孔(図示省略)が形成されている。キャリッジ2、3の雌ネジ孔は、それぞれガイド軸4のネジ溝4a、4bに螺合している。また、キャリッジ2、3の前端部は、左右方向に延びるガイドレール10に、左右方向に移動自在にそれぞれ設置されている。これらの構成により、キャリッジ2、3及びこれらに設置された保持部材20、21は、ステップモータ9の駆動力によりガイド軸4を回転させることによって、ガイド軸4に沿って左右方向に離接するようになっている。
【0042】
保持部材20、21は、例えば、アルミニウム合金等の高熱伝導性を有する金属材料で形成されている。2つの保持部材20、21は、互いに同じ形状であり、鉛直方向の軸を回転軸として180度回転対称に配置されている。詳細には、保持部材20、21は、後述する平坦面22同士が左右方向に関して対向し、且つ、この平坦面22が左右方向に直交する面に平行となる向きに、キャリッジ2、3にそれぞれ設置されている。以下、コード30を保持する保持部材20について説明し、保持部材21についての説明は省略する。
【0043】
図3に示すように、保持部材20は、略半円筒状に形成されており、側面に、平坦状の面22(以下、平坦面22という)と、円弧状の曲面23とを有する。上述したように、平坦面22は、左右方向に直交する面に平行となっている。
【0044】
保持部材20の側面(平坦面22及び曲面23)には、水平方向に延びる溝部24が形成されている。溝部24のうち、平面面22に形成されている部分を保持溝(融着部保持溝)24aとし、曲面23に形成されている部分を保持溝24bとする。溝部24は、延在方向に直交する断面が、円弧状に形成されている。溝部24の溝幅(上下方向長さ)は、コード30(31)の直径よりも若干小さい。
【0045】
保持溝24aは、前後方向に延びる直線状に形成されている。そのため、保持部材20、21の保持溝24aによって保持された部分は、左右方向に並列している。保持溝24aは、平坦面22の後端から前端近傍部まで達している。そのため、保持溝24aの溝深さは、前後方向に関して一定であり、コード30(31)の直径よりも小さく、例えば、コード30(31)の半径程度である。
【0046】
また、保持溝24bは、曲面23の全域に形成されている。保持溝24bは、保持溝24aの後端に接続されており、この接続部分において保持溝24aと保持溝24bとは、ほぼ直交している。保持溝24bの溝深さは、保持溝24aの溝深さと同じく、コード30(31)の半径程度であってもよいが、それ以上であってもよい。
【0047】
保持溝24aの前端部には、左方向に延びる保持穴25が形成されている。保持穴25の径は、コード30(31)の径よりも若干小さい。
【0048】
保持穴25にコード30の先端が挿入されて保持され、コード30の先端近傍部は、折り曲げられて保持溝24aに保持され、さらに、コード30の保持溝24aに保持された部分に隣接する部分は、折り曲げられて保持溝24bの一部に保持されている。
【0049】
図1及び図2に示すように、ヒーター11は、2つの保持部材20、21の間に配置されており、上下方向移動可能となっている。詳細には、ヒーター11は、その下端部が、上下方向に延びるラック12の上端部に固定されている。このラック12には、上下方向に並んだ複数の歯部(図示省略)が形成されており、ヒーター11は、ラック12の歯部に噛合するピニオン13をステップモータ14の駆動力によって回転させることによって、上下方向に移動するようになっている。詳細には、ヒーター11は、2つの保持部材20、21の間に挟まれた位置(加熱位置とする。図2及び図4(b)参照)と、加熱位置より下方の、2つの保持部材20、21に挟まれていない位置(退避位置とする。図4(a)及び(d)参照)とにわたって上下方向に移動可能となっている。
【0050】
ヒーター11は、コード30、31の保持溝24aにそれぞれ保持された部分を加熱溶融するためのものである。ヒーター11は、面状ヒーターであり、その両面に加熱面を有する。ヒーター11は、例えば電熱線等の発熱体の両側に、例えばフェノール樹脂等の耐熱性を有する絶縁体の平板が配置された構成となっている。ヒーター11は、その両面(加熱面)が、左右方向に直交する面に平行になるように配置されている。ヒーター11の幅(前後方向長さ)は、保持溝24aの延在方向(前後方向)の長さとほぼ同じであるが、それ以上であっても、それ以下であってもよい。
【0051】
以下、ジョイント装置1によって、2本のコード30、31の端部同士を接続する手順について説明する。
【0052】
(保持工程)
2つの保持部材20、21に、2本のコード30、31の端部をそれぞれ保持させる。具体的には、まず、コード30、31の先端を保持穴25に挿入して、先端近傍部を保持溝24aに保持穴25側から順に嵌め込んでから、保持溝24bに嵌め込む。この作業は、保持部材20、21をキャリッジ2、3から取り外した状態で行っても、キャリッジ2、3に設置された状態で行ってもよい。また、ヒーター11を退避位置で昇温しておく。
【0053】
(加熱工程)
次に、図4(a)に示すように、ステップモータ14を回転させてヒーター11を上昇させる。同時に、ステップモータ9を回転させて2つの保持部材20、21を近接させる。そして、図4(b)に示すように、加熱位置まで上昇して停止したヒーター11の両面に、コード30、31の、保持溝24aに保持された部分を接触させて、コード30、31の周面の表面近傍のみを局所的に加熱溶融する。
【0054】
加熱温度及び加熱時間は、コード30、31の材料や径にもよるが、加熱温度は例えば350〜390℃であり、加熱時間は例えば0.3〜0.8秒である。
【0055】
(ヒーター退避工程)
加熱後、図4(c)に示すように、ステップモータ9を加熱工程時と逆方向に回転させて、2つの保持部材20、21を僅かに離間させてから、ステップモータ14を加熱工程時と逆方向に回転させて、ヒーター11を下降させる。
【0056】
(融着工程)
その後すぐに、図4(d)及び図5に示すように、ステップモータ9を加熱工程時と同じ方向に回転させて、2つの保持部材20、21を近接させ、コード30、31の保持溝24aに保持された部分同士を圧着して融着する。なお、加熱溶融時及び融着時の、キャリッジ2、3の離間距離は一定であってもよく、調整可能であってもよい。
【0057】
その後、2つの保持部材20、21を離間させて、融着されたコード30、31を保持部材20、21から取り外し、図6に示すように、コード30、31の、保持穴25に挿入されていた先端部分を切断する。
【0058】
融着部分の、コード30、31が並列している方向の径A(以下、単に融着部分の径Aという)は、コード30、31の径の1.3〜1.8倍程度である。また、融着部分の長さWは、保持溝24aの前後方向長さとほぼ同じであり、例えば、10〜25mmである。
【0059】
以上説明したジョイント装置1によると、コード30、31の周面同士を融着して接続しているため、上述したように、融着部分の径Aは、コードの径の2倍以下であり、2本のコードを結ぶことで形成される結び目部分の径よりも小さい。
【0060】
また、コード30、31を融着により接続しているため、接続部分(融着部分)の引張強度は、2本のコードの端部同士を手結びで結んだ場合の結節部分(結び目部分)の引張強度に比べて高い。
【0061】
また、保持溝24aの長さを長くして、融着部分の長さWを長くすることによって、容易に接続強度を高めることができる。また、加熱溶融時及び融着時の、キャリッジ2、3の離間距離を調整することにより、コード30、31の材料や使用目的に応じて、融着部分の径Aを調整することができる。
【0062】
また、上述したように、コード30、31の周面の表面近傍部のみを局所的に加熱溶融して、この溶融した部分同士を融着している。このように、融着に必要な最小限の領域のみ溶融しているため、2本のコードを接触させた状態で加熱溶融して融着した場合に比べて、溶融する範囲が小さくなる。そのため、融着部分の屈曲性を、コードの通常の部分の屈曲性に近い値とすることができる。
【0063】
また、ステップモータ(保持部材駆動手段)9は、保持部材20、21にそれぞれ保持された2本のコード30、31の溶融された部分同士を圧着させる手段であると同時に、保持部材20、21に保持された2本のコード30、31を、ヒーター11の両面にそれぞれ接触させる手段も兼ねている。そのため、ジョイント装置1の構成を簡易化することができる。
また、保持部材20、21とヒーター11は、それぞれ一方向にのみ駆動されるため、これらを駆動するための構成が簡易である。
【0064】
また、保持部材20、21は、溝部24によって、コード30、31を保持しており、コード30、31を保持するための構成が簡易である。
【0065】
また、上述したように、保持穴25にコード30(31)の先端が保持され、コード30(31)の先端近傍部は折り曲げられて保持溝24aに保持されている。また、コード30(31)の保持溝24aに保持された部分に隣接する部分は、折り曲げられて、保持溝24bの一部に保持されている。そのため、コード30(31)の保持溝24aに保持されている部分が、保持溝24aから外れるのを防止できる。
【0066】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。但し、前記第1実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を用いて適宜その説明を省略する。
【0067】
本実施形態のジョイント装置は、2つの保持部材の形状が、前記第1実施形態の2つの保持部材20、21と異なるものの、その他の構成(ヒーター11等)は、前記第1実施形態のジョイント装置1と同じ構成である。
【0068】
本実施形態の2つの保持部材120、121は、互いに同じ形状である。図7に示すように、保持部材120、121の側面(平坦面22及び曲面23)には、2つの溝部124、126が平行に上下方向に並列して形成されている。溝部124は、平坦面22に形成された保持溝124aと、曲面23に形成された保持溝124bとから構成され、溝部126は、平坦面22に形成された保持溝126aと、曲面23に形成された保持溝126bとから構成されている。溝部126の溝幅及び溝深さは、溝部124の溝幅及び溝深さよりも小さい。
【0069】
また、保持溝124a、126aの前端部には、それぞれ保持穴125、127が形成されている。保持穴127の径は、保持穴125の径よりも小さい。
【0070】
本実施形態のジョイント装置101により、2本のコード30、31の端部同士を接続する際には、コード30(31)の径に応じて、溝部124、126の一方にコードを保持させて、前記第1実施形態と同様の手順で2本のコード30、31の端部同士を融着する。なお、加熱時及び融着時の2つのキャリッジ2、3の左右方向の離間距離は、使用する溝部に応じて変更可能となっている。
【0071】
このように、保持部材20、21には、溝幅及び溝深さの異なる2つの保持溝124a、126aが形成されているため、保持部材を交換しなくても、異なるサイズのコードを接続することができる。
【0072】
なお、本実施形態では、保持部材20、21に形成される溝部の数は、2つとしたが、3つ以上であってもよい。
【0073】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。但し、前記第1実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を用いて適宜その説明を省略する。
【0074】
本実施形態のコードのジョイント装置201は、保持部材20、21及びヒーター11の設置方向が、前記第1実施形態と異なっており、また、保持部材20、21のキャリッジ2、3に対する設置位置が、前後方向に関して変更可能となっている。これらの点以外は、前記第1実施形態のジョイント装置1と同様の構成である。
【0075】
図8に示すように、2つの保持部材20、21は、平坦面22が、左右方向に直交する面に対して角度θをなすように、キャリッジ2、3に取り付けられている。従って、保持部材20、21の保持溝24aは、左右方向に直交する面に対して角度θをなす方向に延在している。角度θは、例えば5〜20度である。
【0076】
また、上述したように、2つの保持部材20、21は、キャリッジ2、3に対する設置位置が、前後方向に関して変更可能となっている。詳細は後述するが、2つの保持部材20、21のキャリッジ2、3に対する設置位置を前後方向に関して変更することにより、加熱溶融時及び融着時の保持部材20、21の離間距離を調整可能となっている。図8及び図9に示す保持部材20、21の位置を基準位置とする。即ち、保持部材20、21を左右方向に近接させた場合に、保持溝24a同士が、全域にわたって対向するような保持部材20、21の位置を、基準位置とする。
【0077】
また、図8に示すように、ヒーター11は、その両面(加熱面)が、左右方向に直交する面に対して角度θをなすように配置されている。ヒーター11の幅は、前記第1実施形態と同様に、保持溝24aの延在方向の長さと同じである。ヒーター11は、基準位置にある2つの保持部材20、21を左右方向に近接させたときに、コード30、31のそれぞれ保持溝24aに保持されている部分のほぼ全域が、ヒーター11の両面にそれぞれ接するような位置に配置されている。
【0078】
なお、加熱溶融時及び融着時の2つのキャリッジ2、3の左右方向の離間距離は、それぞれ所定の値に設定されている。
【0079】
図9に示すように、2つの保持部材20、21が基準位置にある場合、コード30、31の保持溝24aに保持された部分のほぼ全域が融着される。つまり、このときの融着部分の長さWは、保持溝24aの延在方向長さとほぼ同じである。
【0080】
また、保持部材20、21のキャリッジ2、3に対する設置位置を、基準位置から前後方向に関して変更する場合について説明する。この場合、2つの保持部材20、21を基準位置から前後逆方向に同じ距離だけ移動させる。これにより、保持部材20の平坦面22とヒーター11との離間距離と、保持部材21の平坦面22とヒーター11との離間距離とが同じになるため、加熱工程時に、保持部材20、21を左右方向に近接させた際、コード30、31をヒーター11の両面に同時に接触させることができる。
【0081】
図10に示すように、保持部材20、21を基準位置(図10中、二点鎖線で表示)から、それぞれ後方向と前方向に同じ距離だけ移動させた場合について説明する。上述したように、加熱溶融時のキャリッジ2、3の離間距離は一定であるため、保持部材20、21が基準位置にある場合に比べて、加熱溶融時の保持部材20、21の離間距離が小さくなる。従って、保持溝24aとヒーター11との離間距離が小さくなり、コード30、31の加熱される範囲は大きくなる。
【0082】
また、融着時のキャリッジ2、3の離間距離は一定であるため、保持部材20、21が基準位置にある場合に比べて、融着時の2つの保持部材20、21の離間距離が小さくなる。従って、融着時の2つの保持部材20、21の保持溝24a同士の離間距離が小さくなるため、融着部分の径Aは小さくなる。また、上述したように、保持部材20、21が基準位置にある場合に比べて、コード30、31の融着部分の長さWは、保持部材20、21が基準位置にある場合に比べて短くなるが、コード30、31の圧着力が増し、また保持部材20、21の表面温度が高くなるため、融着部分の接合強度は維持される。
【0083】
逆に、保持部材20、21を基準位置から、それぞれ前方向と後方向に同じ距離だけ移動させた場合には、保持部材20、21が基準位置にある場合に比べて、融着部分の径Aは大きくなり、また、融着部分の長さWは、保持部材20、21が基準位置にある場合に比べて短くなる。
【0084】
このように、加熱溶融時及び融着時の保持部材20、21の離間距離が一定であっても、保持部材20、21のキャリッジ2、3に対する設置位置を前後方向に関して変更することによって、加熱溶融時及び融着時の保持部材20の離間距離を変更することができる。そのため、コードの材料や使用目的等に応じて、融着部分の径Aを調整することができる。また、融着部分の長さWを、保持部材20、21の寸法と角度θに応じて調整することができる。
【0085】
また、本実施形態では、融着部分の長さWを短くして、接合強度を維持できる特長がある。融着部分の長さWが短くなると、その後、融着したロープは、例えばロープ処理の際に、ガイドロール等に沿ってスムーズに移動することができる。
【0086】
また、ヒーター11の幅が、保持溝24aの延在方向長さと同じであるため、保持部材20の位置を基準位置から変更した場合に、コード30、31の保持溝24aに保持された部分を不要に溶融させることがない。
【0087】
なお、本実施形態では、前記第1実施形態の保持部材20、21を用いているが、前記第2実施形態の保持部材120、121を用いてもよい。
【0088】
また、保持部材20、21の代わりに、図11に示すような保持部材220、221を用いてもよい。保持部材220、221は、平坦面22に形成された保持溝224aの溝深さが、保持穴25に向かって徐々に浅くなるように構成されている。この保持部材220、221を、平坦面22が左右方向に直交する面に平行になるようにキャリッジ2、3に設置する。この場合、本実施形態と同様に、保持部材220、221の前後方向に関する相対的な位置を変更することにより、加熱溶融時及び融着時の保持溝224a同士の離間距離を調整することができ、融着部分の径Aを調整することができる。この構成によると、平坦面22が、保持部材の駆動方向に直交する方向であるため、この平坦面22を基準にして、保持部材20、21をキャリッジ2、3に設置しやすい。
【0089】
また、保持部材20、21の前後方向に関する相対的な位置を変更する代わりに、図12に示すように、平坦面22と左右方向に直交する面とがなす角度θを変更することによって、加熱溶融時及び融着時の保持部材20、21の離間距離を調整して、融着部分の径Aを調整してもよい。
【0090】
以上、本発明の好適な実施形態として、第1実施形態〜第3実施形態を説明したが、上記の実施形態は以下のように変更して実施することができる。
【0091】
上記第1実施形態では、保持溝24aは、前後方向に延びる直線状に形成されているが、例えば、上方又は下方に膨らんだ円弧状に形成されていてもよい。
【0092】
上記実施形態では、保持溝24bは、曲面23の全域に形成されているが、この構成に限定されるものではなく、保持溝24bは、曲面23の後端から、少なくとも曲面23の周長の1/3程度の位置まで形成されていればよい。
【0093】
上記実施形態では、コード30(31)の保持溝24aに保持される部分の両側部分は、それぞれ保持穴25と保持溝25bによって保持されているが、この構成に限定されるものではない。例えば、保持部材に、弾性力によってコードを挟持するクリップのような部材を2つ取り付けて、このクリップに、コード30(31)の保持溝24aに保持される部分の両側部分を保持させてもよい。
【0094】
また、保持穴25と保持溝24bの一方、又は両方は、保持部材20、21に形成されていなくてもよい。但し、この場合、保持溝24aの溝幅を、コード30、31を確実に挟持できる溝幅に設定する必要がある。
【0095】
また、保持部材20、21を、保持溝24aの延在方向が上下方向となるような向きに設置してもよい。また、保持部材20、21を、保持溝24aの延在方向が、上下方向に対して左右方向に傾くような向きに設置してもよい。後者の場合、保持部材20、21の上下方向に関する相対的な位置を変更することによって、加熱溶融時及び融着時の、保持部材20、21の左右方向の離間距離を調整することができ、融着部分の径Aを調整することができる。
【0096】
保持部材20、21を左右方向に駆動する構成は、上記実施形態で述べた構成に限定されるものではなく、例えば、2つの保持部材20、21の左右両側の位置に、左右方向に伸縮する1対の流体圧シリンダを配置して、この1対の流体圧シリンダのシリンダロッドの先端を、保持部材20、21にそれぞれ連結させてもよい。流体圧シリンダとしては、伸縮量の調整可能なものを用いる。
【0097】
2つの保持部材20、21のうち一方が左右方向に移動不能に配置され、他方が左右方向に移動するように構成されていてもよい。但し、この場合、ヒーター11も左右方向に移動させる必要がある。
【0098】
上記実施形態では、ヒーター11は上下方向に駆動され、ヒーター11の退避位置は、加熱位置の下方の位置となっているが、この構成に限定されるものではない。例えば、ヒーター11は前後方向に駆動され、ヒーター11の退避位置は加熱位置の前方の位置であってもよい。但し、この場合、ヒーター11を前方に移動させることができるように、ガイドレール10をキャリッジ2、3の上面に設置するか、または、融着工程時の2つのキャリッジ2、3の間にヒーター11を収容できるように構成する必要がある。ヒーター11を前後方向に駆動する構成としては、前記実施形態と同じくラックとピニオンとモータとを用いてもよいが、流体圧シリンダ等を用いたそれ以外の構成であってもよい。
【0099】
また、ヒーター11を上下方向に移動させる代わりに、2つの保持部材20、21を上下方向に移動させてもよい。軸受け5が固定されている支持台15ごと保持部材20、21を上下方向に移動させてもよいが、キャリッジ2、3に対して保持部材20、21を上下方向に移動させてもよい。
【0100】
上記実施形態のジョイント装置では、コード30、31の周面の一部を加熱溶融して、この溶融された周面同士を接触させて融着しているが、本発明の適用対象は、これに限られるものではなく、コード30、31の端面を加熱溶融して、端面同士を突き合せて融着してもよい。
【実施例】
【0101】
以下、本発明の具体的な実施例について説明する。
実施例1〜5として、RFLの接着処理が施された、表1に示す繊度及び径のポリエステル繊維のコードをそれぞれ2本ずつ用意した。なお、表1中の、例えば実施例2の(1220dTex)×2×3とは、繊度1220dTexの素線を2本縒り合わせたものを、さらに3本縒り合わせて形成されたものであることを示している。
【0102】
【表1】
【0103】
各実施例の2本のコードを、図3に示す構成の保持部材に装着し、上記第1実施形態で述べた手順により、表1に示す加熱温度及び加熱時間でヒーターにより加熱溶融して融着した。各実施例の融着部分の径A及び長さW(図6参照)は、表1に示す値であった。各実施例の融着されたコードについて、破断強力を測定した。その結果も表1に示す。
【0104】
表1に示すように、実施例1〜5とも、融着されたコードの強力は、コードをベルトの心線として使用する場合に必要な強力(10kg以上)を満たしていた。
【符号の説明】
【0105】
1、201 コードのジョイント装置
2、3 キャリッジ
4 ガイド軸
4a、4b ネジ溝
5 軸受け
6 プーリ
7 ベルト
8 プーリ
9 ステップモータ(保持部材駆動手段)
10 ガイドレール
11 ヒーター
12 ラック
13 ピニオン
14 ステップモータ(駆動手段)
20、21 保持部材
22 平坦面
23 曲面
24 溝部
24a 保持溝(融着部保持溝)
24b 保持溝
25 保持穴(穴)
30、31 コード
120、121 保持部材
124 溝
124a 保持溝(融着部保持溝)
124b 保持溝
125 保持穴(穴)
126a 保持溝(融着部保持溝)
126b 保持溝
127 保持穴(穴)
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂からなる2本コードを接続するコードのジョイント装置及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えばポリエステル繊維やポリアミド繊維等の熱可塑性樹脂繊維からなる複数の素線を縒り合わせた構成のコードが、ベルトの補強材など様々な用途に用いられている。ベルト等のゴム製品に用いられるコードの場合、ゴム材料との接着性を高めるために、コードの表面を樹脂やゴム糊等で被覆する接着処理が施されている場合がある。
【0003】
また、コードは、その端部を、他のコードの端部に接続する場合がある。上述したような接着処理が施されていないコードを接続する場合には、エアスプライサーと呼ばれる公知の装置を用いてコードの端部同士を結節している(例えば、特許文献1参照)。なお、エアスプライサーとは、圧力空気を吹付けてコードの縒りをほぐすと共に、2本のコードの端部の糸同士を絡ませて結節する装置である。
【0004】
一方、接着処理が施されたコードを接続する場合には、エアスプライサーを用いることができないため、コードの端部同士を手結びで繋いでいた。また、このような接着処理が施されたコードの端部同士を接続する方法として、融着による接続がある。この場合、2本のコードの端部同士を接触させた状態で、加熱溶融して融着することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-348420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、2本のコードの端部同士を手結びで接続した場合、結び目部分の径が大きくなるため、ベルト等を製造する際に、この結び目によってコードの並びに乱れが生じる場合があった。また、結び目部分は、引張強度が低いため、張力がかかると破断する場合があった。さらに、結び目部分は、剛性が高く、屈曲性が低いため、コードを繰り返し屈曲させると、結び目部分で破断する場合があった。
【0007】
また、上述したように2本のコードの端部同士を融着する場合、接続部分(融着部分)の径は、結び目に比べて小さく、また、接続部分の強度は、結び目に比べて高くなる。しかしながら、2本のコードの端部同士を接触させた状態で加熱溶融することから、接触面以外の部分も溶融されるため、溶融範囲が大きい。コードは、複数の素線を縒り合わせた構成であり、溶融すると、素線同士が一体化されて剛性が高くなるため、溶融範囲が大きいと、屈曲性が大きく低下してしまう。
【0008】
そこで、本発明は、コードに接着処理が施されているか否かに関わらず接続可能であって、接続部分の径が小さく、且つ、接続部分の強度及び屈曲性が高い、コードのジョイント装置及びその方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0009】
第1の発明のコードのジョイント装置は、熱可塑性樹脂からなる2本のコードをそれぞれ保持するとともに、相対移動可能に構成された1対の保持部材と、前記1対の保持部材を相対移動させる保持部材駆動手段と、前記1対の保持部材に保持された前記2本のコードが互いに離間している状態で、前記2本のコードのそれぞれ一部分を局所的に加熱溶融する加熱手段とを備え、前記保持部材駆動手段は、前記2本のコードの前記一部分が溶融した状態で、前記1対の保持部材を駆動して前記2本のコードの前記一部分同士を圧着することにより、両者を融着することを特徴とする。
【0010】
本発明のコードのジョイント装置により2本のコードを接続する際には、1対の保持部材に保持された2本のコードを互いに離間させた状態で、加熱手段により、1対の保持部材に保持された2本のコードのそれぞれ一部分を局所的に加熱溶融してから、1対の保持部材を保持部材駆動手段により相対移動させて、溶融した2本のコードの前記一部分同士を圧着して融着する。
【0011】
このように、2本のコードを融着により接続しているため、コードの周面同士を融着する場合には、融着部分の径は、コードの径の2倍未満となる。また、コードの端面同士を融着する場合には、融着部分の径はコードの径と同じになる。従って、融着部分の径は、2本のコードの端部同士を結ぶことにより形成される結び目部分の径よりも小さい。
【0012】
また、2本のコードを融着により接続しているため、接続部分(融着部分)の引張強度は、2本のコードの端部同士を手結びで結んだ場合の結節部分(結び目部分)の引張強度に比べて高い。
【0013】
また、2本のコードのそれぞれ一部分のみを局所的に加熱溶融して、この溶融した部分同士を融着している。融着に必要な最小限の領域のみ溶融しているため、2本のコードを接触させた状態で加熱溶融して融着した場合に比べて、溶融する範囲が小さい。そのため、融着部分の屈曲性を、コードの通常の部分の屈曲性に近い値とすることができる。
【0014】
第2の発明のコードのジョイント装置は、前記第1の発明において、前記保持部材駆動手段は、前記1対の保持部材を、これらにそれぞれ保持された前記2本のコードを離接する所定の方向にそれぞれ駆動するものであって、前記加熱手段を、前記1対の保持部材に前記所定の方向に関して挟まれる加熱位置と、前記1対の保持部材によって挟まれない退避位置とにわたって駆動する駆動手段をさらに備え、前記加熱手段は、前記所定の方向における両側部分に、この加熱手段が前記加熱位置にあるときに、前記1対の保持部材によりそれぞれ保持される前記2本のコードが接触する、2つの加熱部を有することを特徴とする。
【0015】
本発明のコードのジョイント装置では、加熱手段を加熱位置に配置した状態で、保持部材駆動手段によって1対の保持部材を所定の方向に駆動して近接させて、加熱手段の両側部分に設けられた2つの加熱部に、1対の保持部材に保持された2本のコードを、それぞれ接触させて加熱溶融する。その後、保持部材駆動手段によって1対の保持部材を一旦離間させるとともに、駆動手段によって加熱手段を退避位置に移動させてから、保持部材駆動手段によって1対の保持部材を再び近接させて、2本のコードの溶融された部分同士を圧着して融着する。
【0016】
この構成によると、保持部材駆動手段は、1対の保持部材にそれぞれ保持された2本のコードの溶融された部分同士を圧着させる手段であると同時に、1対の保持部材に保持された2本のコードを、加熱手段の両側部分に設けられた2つの加熱部に、それぞれ接触させる手段も兼ねている。そのため、コードのジョイント装置の構成を簡易化することができる。
また、保持部材駆動手段と駆動手段は、それぞれ、1対の保持部材と加熱手段とを、一方向にのみ駆動するものであるため、その構成が簡易である。
【0017】
第3の発明のコードのジョイント装置は、前記第2の発明において、前記1対の保持部材は、前記所定の方向に関して対向する部分に、前記2本のコードが並列してそれぞれ保持される融着部保持部を有することを特徴とする。
【0018】
この構成によると、1対の保持部材を近接させると、2本のコードの融着部保持部に保持された部分は、並列した状態で近接するため、2本のコードは、その周面の一部同士が融着される。コードの周面同士を融着するため、融着部分の長さを変更することによって、融着部分の接続強度を容易に調整することができる。
【0019】
第4の発明のコードのジョイント装置は、前記第3の発明において、前記融着部保持部が、前記1対の保持部材の対向する平面にそれぞれ形成された直線状の融着部保持溝であることを特徴とする。この構成によると、コードを保持するための構成が簡易である。
【0020】
第5の発明のコードのジョイント装置は、前記第4の発明において、前記1対の保持部材の前記融着部保持溝の端部に、前記融着部保持溝の延在方向と異なる方向に延在し、前記コードの先端が挿入されて保持される保持穴が形成されていることを特徴とする。
【0021】
この構成によると、保持穴にコードの先端が挿入されて保持されて、コードの先端近傍部は折り曲げられて融着部保持溝に保持される。これにより、コードの融着部保持溝に保持されている部分が融着部保持溝から外れるのを防止できる。
【0022】
第6の発明のコードのジョイント装置は、前記第4又は5の発明において、前記1対の保持部材に、前記融着部保持溝の延在方向と異なる方向に延在し、前記コードの、前記融着部保持溝に保持される部分の近傍部分を保持する保持溝が形成されていることを特徴とする。
【0023】
この構成によると、コードの、融着部保持溝に保持される部分の近傍部分は、折り曲げられて保持溝に保持される。これにより、コードの融着部保持溝に保持されている部分が融着部保持溝から外れるのを防止できる。
【0024】
第7の発明のコードのジョイント装置は、前記第4〜6の何れか発明において、前記融着部保持溝が、同一面に2つ以上並列して形成されており、前記2つ以上の前記融着部保持溝の溝幅及び溝深さが互いに異なることを特徴とする。
【0025】
この構成によると、保持部材には、溝幅及び溝深さの異なる2つ以上の融着部保持溝が形成されているため、保持部材を交換しなくても、異なるサイズのコードを接続することができる。
【0026】
第8の発明のコードのジョイント装置は、前記第3〜6の何れか発明において、加熱溶融時及び圧着時の、前記1対の保持部材の離間距離が調整可能に構成されていることを特徴とする。
【0027】
この構成によると、加熱溶融時及び圧着時の、1対の保持部材の離間距離を調整することにより、コードの材料や使用目的等に応じて、2本のコードの融着部分の径を調整することができる。
【0028】
第9の発明のコードのジョイント装置は、前記第8の発明において、前記コードの前記融着部保持部により保持される部分の延在方向が、前記所定の方向に直交する面に対して傾いており、前記1対の保持部材は、前記コードの前記融着部保持部に保持される部分の延在方向を含む平面上において、前記所定の方向に直交する方向に関する相対的な位置を変更可能に構成されていることを特徴とする。
【0029】
この構成によると、1対の保持部材の、所定の方向に直交する方向に関する相対的な位置を変更することによって、保持部材駆動手段による前記1対の保持部材の駆動距離を変更しなくても、加熱溶融時及び融着時の1対の保持部材の離間距離を変更することができる。
【0030】
第10の発明のコードのジョイント方法は、1対の保持部材に、熱可塑性樹脂からなる2本のコードをそれぞれ保持させる保持工程と、前記1対の保持部材に保持された前記2本のコードが互いに離間している状態で、前記2本のコードのそれぞれ一部分を加熱手段によって局所的に加熱溶融する加熱工程と、前記加熱工程の後、前記1対の保持部材を相対移動させて、前記2本のコードの前記一部分同士を圧着することにより、両者を融着する融着工程とを有することを特徴とする。
【0031】
本発明のコードのジョイント方法により2本のコードを接続する際には、先ず、保持工程において、1対の保持部材に2本のコードをそれぞれ保持させる。次に、加熱工程において、1対の保持部材に保持された2本のコードを互いに離間させた状態で、加熱手段によって1対の保持部材に保持された2本のコードのそれぞれ一部分を局所的に加熱溶融する。その後、融着工程において、1対の保持部材を相対移動させて、溶融した2本のコードの前記一部分同士を圧着して融着する。
【0032】
このように、2本のコードを融着により接続しているため、コードの周面同士を融着する場合には、融着部分の径は、コードの径の2倍未満となる。また、コードの端面同士を融着する場合には、融着部分の径はコードの径と同じになる。従って、融着部分の径は、2本のコードの端部同士を結ぶことにより形成される結び目部分の径よりも小さい。
【0033】
また、2本のコードを融着により接続しているため、接続部分(融着部分)の引張強度は、2本のコードの端部同士を手結びで結んだ場合の結節部分(結び目部分)の引張強度に比べて高い。
【0034】
また、2本のコードのそれぞれ一部分のみを局所的に加熱溶融して、この溶融した部分同士を融着している。融着に必要な最小限の領域のみ溶融しているため、2本のコードを接触させた状態で加熱溶融して融着した場合に比べて、溶融する範囲が小さい。そのため、融着部分の屈曲性を、コードの通常の部分の屈曲性に近い値とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の第1実施形態に係るコードのジョイント装置の平面図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】(a)は保持部材の平面図であって、(b)は保持部材の右側面図である。
【図4】2本のコードをジョイントする工程を示す図である。
【図5】融着工程時の2つの保持部材を示す平面図であって、図1の部分拡大図である。
【図6】2本のコードがジョイントされた状態を示す図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係るコードのジョイント装置に用いられる保持部材を示す図であり、図3に相当する図である。
【図8】本発明の第3実施形態に係るコードのジョイント装置の一部を示す平面図である。
【図9】図8(b)の部分拡大図である。
【図10】図8の状態から保持部材の設置位置を変更した場合の図である。
【図11】第3実施形態の変更形態に係るコードのジョイント装置の一部を示す平面図である。
【図12】第3実施形態の変更形態に係るコードのジョイント装置の一部を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1の実施形態について説明する。
図1及び図2に示すように、本実施形態のコードのジョイント装置1(以下、単にジョイント装置1という)は、2本のコード30、31の端部をそれぞれ保持する2つ(1対)の保持部材20、21と、2つの保持部材20、21がそれぞれ設置される2つのキャリッジ2、3と、2つのキャリッジ2、3が装着されるガイド軸4と、ガイド軸4を回転自在に支持する2つの軸受け5、5と、ガイド軸4を回転駆動するステップモータ(保持部材駆動手段)9と、コード30、31を加熱溶融するためのヒーター11と、ヒーター11を図2中の上下方向に駆動するステップモータ(駆動手段)14とを有する。
なお、以下のジョイント装置1の説明において、図1及び図2中の左右方向を左右方向、図1中の前後方向を前後方向、図2中の上下方向を上下方向と定義して説明する。
【0037】
本実施形態のジョイント装置1によって接続される2本のコード30、31は、例えばポリエステル繊維やポリアミド繊維等の熱可塑性繊維からなる複数の素線を縒り合わせて構成された繊維コードである。コード30、31の径は、例えば0.9〜2.0mmである。
【0038】
このコード30、31には、ゴム材料との接着性を高めるための接着処理が施されていている。接着処理としては、例えば、RFL(レゾルシン・ホルマリン・ラテックス)処理のみ、またはエポキシまたはイソシアネート化合物で前処理した後にRFL処理を施す処理や、RFL処理をした後にゴム糊を付着する処理が挙げられる。なお、コード30、31は、接着処理が施されていない繊維コードであってもよい。
【0039】
ガイド軸4は、左右方向に延在しており、その両端部は、2つの軸受け5、5によってそれぞれ回転自在に支持されている。この2つの軸受け5、5は、支持台15に固定されている。ガイド軸4の略中央部の外周面には、ネジ溝4a、4bが左右方向に並んで形成されている。ネジ溝4a、4bは、螺旋の向きが互いに逆向きに形成されている。
【0040】
ガイド軸4の右側部分には、プーリ6が固定されている。ガイド軸4は、このプーリ6と、ベルト7と、プーリ8とを介してステップモータ9の駆動力が伝達されて回転するようになっている。尚、ステップモータとは、回転数を制御できるモータである。
【0041】
また、ガイド軸4の略中央部には、2つのキャリッジ2、3が取り付けられている。キャリッジ2、3の上面には、それぞれ保持部材20、21が取り外し可能に設置されている。2つのキャリッジ2、3は、それぞれ前後方向に延びて形成されており、キャリッジ2、3の後端部には、左右方向に貫通する雌ネジ孔(図示省略)が形成されている。キャリッジ2、3の雌ネジ孔は、それぞれガイド軸4のネジ溝4a、4bに螺合している。また、キャリッジ2、3の前端部は、左右方向に延びるガイドレール10に、左右方向に移動自在にそれぞれ設置されている。これらの構成により、キャリッジ2、3及びこれらに設置された保持部材20、21は、ステップモータ9の駆動力によりガイド軸4を回転させることによって、ガイド軸4に沿って左右方向に離接するようになっている。
【0042】
保持部材20、21は、例えば、アルミニウム合金等の高熱伝導性を有する金属材料で形成されている。2つの保持部材20、21は、互いに同じ形状であり、鉛直方向の軸を回転軸として180度回転対称に配置されている。詳細には、保持部材20、21は、後述する平坦面22同士が左右方向に関して対向し、且つ、この平坦面22が左右方向に直交する面に平行となる向きに、キャリッジ2、3にそれぞれ設置されている。以下、コード30を保持する保持部材20について説明し、保持部材21についての説明は省略する。
【0043】
図3に示すように、保持部材20は、略半円筒状に形成されており、側面に、平坦状の面22(以下、平坦面22という)と、円弧状の曲面23とを有する。上述したように、平坦面22は、左右方向に直交する面に平行となっている。
【0044】
保持部材20の側面(平坦面22及び曲面23)には、水平方向に延びる溝部24が形成されている。溝部24のうち、平面面22に形成されている部分を保持溝(融着部保持溝)24aとし、曲面23に形成されている部分を保持溝24bとする。溝部24は、延在方向に直交する断面が、円弧状に形成されている。溝部24の溝幅(上下方向長さ)は、コード30(31)の直径よりも若干小さい。
【0045】
保持溝24aは、前後方向に延びる直線状に形成されている。そのため、保持部材20、21の保持溝24aによって保持された部分は、左右方向に並列している。保持溝24aは、平坦面22の後端から前端近傍部まで達している。そのため、保持溝24aの溝深さは、前後方向に関して一定であり、コード30(31)の直径よりも小さく、例えば、コード30(31)の半径程度である。
【0046】
また、保持溝24bは、曲面23の全域に形成されている。保持溝24bは、保持溝24aの後端に接続されており、この接続部分において保持溝24aと保持溝24bとは、ほぼ直交している。保持溝24bの溝深さは、保持溝24aの溝深さと同じく、コード30(31)の半径程度であってもよいが、それ以上であってもよい。
【0047】
保持溝24aの前端部には、左方向に延びる保持穴25が形成されている。保持穴25の径は、コード30(31)の径よりも若干小さい。
【0048】
保持穴25にコード30の先端が挿入されて保持され、コード30の先端近傍部は、折り曲げられて保持溝24aに保持され、さらに、コード30の保持溝24aに保持された部分に隣接する部分は、折り曲げられて保持溝24bの一部に保持されている。
【0049】
図1及び図2に示すように、ヒーター11は、2つの保持部材20、21の間に配置されており、上下方向移動可能となっている。詳細には、ヒーター11は、その下端部が、上下方向に延びるラック12の上端部に固定されている。このラック12には、上下方向に並んだ複数の歯部(図示省略)が形成されており、ヒーター11は、ラック12の歯部に噛合するピニオン13をステップモータ14の駆動力によって回転させることによって、上下方向に移動するようになっている。詳細には、ヒーター11は、2つの保持部材20、21の間に挟まれた位置(加熱位置とする。図2及び図4(b)参照)と、加熱位置より下方の、2つの保持部材20、21に挟まれていない位置(退避位置とする。図4(a)及び(d)参照)とにわたって上下方向に移動可能となっている。
【0050】
ヒーター11は、コード30、31の保持溝24aにそれぞれ保持された部分を加熱溶融するためのものである。ヒーター11は、面状ヒーターであり、その両面に加熱面を有する。ヒーター11は、例えば電熱線等の発熱体の両側に、例えばフェノール樹脂等の耐熱性を有する絶縁体の平板が配置された構成となっている。ヒーター11は、その両面(加熱面)が、左右方向に直交する面に平行になるように配置されている。ヒーター11の幅(前後方向長さ)は、保持溝24aの延在方向(前後方向)の長さとほぼ同じであるが、それ以上であっても、それ以下であってもよい。
【0051】
以下、ジョイント装置1によって、2本のコード30、31の端部同士を接続する手順について説明する。
【0052】
(保持工程)
2つの保持部材20、21に、2本のコード30、31の端部をそれぞれ保持させる。具体的には、まず、コード30、31の先端を保持穴25に挿入して、先端近傍部を保持溝24aに保持穴25側から順に嵌め込んでから、保持溝24bに嵌め込む。この作業は、保持部材20、21をキャリッジ2、3から取り外した状態で行っても、キャリッジ2、3に設置された状態で行ってもよい。また、ヒーター11を退避位置で昇温しておく。
【0053】
(加熱工程)
次に、図4(a)に示すように、ステップモータ14を回転させてヒーター11を上昇させる。同時に、ステップモータ9を回転させて2つの保持部材20、21を近接させる。そして、図4(b)に示すように、加熱位置まで上昇して停止したヒーター11の両面に、コード30、31の、保持溝24aに保持された部分を接触させて、コード30、31の周面の表面近傍のみを局所的に加熱溶融する。
【0054】
加熱温度及び加熱時間は、コード30、31の材料や径にもよるが、加熱温度は例えば350〜390℃であり、加熱時間は例えば0.3〜0.8秒である。
【0055】
(ヒーター退避工程)
加熱後、図4(c)に示すように、ステップモータ9を加熱工程時と逆方向に回転させて、2つの保持部材20、21を僅かに離間させてから、ステップモータ14を加熱工程時と逆方向に回転させて、ヒーター11を下降させる。
【0056】
(融着工程)
その後すぐに、図4(d)及び図5に示すように、ステップモータ9を加熱工程時と同じ方向に回転させて、2つの保持部材20、21を近接させ、コード30、31の保持溝24aに保持された部分同士を圧着して融着する。なお、加熱溶融時及び融着時の、キャリッジ2、3の離間距離は一定であってもよく、調整可能であってもよい。
【0057】
その後、2つの保持部材20、21を離間させて、融着されたコード30、31を保持部材20、21から取り外し、図6に示すように、コード30、31の、保持穴25に挿入されていた先端部分を切断する。
【0058】
融着部分の、コード30、31が並列している方向の径A(以下、単に融着部分の径Aという)は、コード30、31の径の1.3〜1.8倍程度である。また、融着部分の長さWは、保持溝24aの前後方向長さとほぼ同じであり、例えば、10〜25mmである。
【0059】
以上説明したジョイント装置1によると、コード30、31の周面同士を融着して接続しているため、上述したように、融着部分の径Aは、コードの径の2倍以下であり、2本のコードを結ぶことで形成される結び目部分の径よりも小さい。
【0060】
また、コード30、31を融着により接続しているため、接続部分(融着部分)の引張強度は、2本のコードの端部同士を手結びで結んだ場合の結節部分(結び目部分)の引張強度に比べて高い。
【0061】
また、保持溝24aの長さを長くして、融着部分の長さWを長くすることによって、容易に接続強度を高めることができる。また、加熱溶融時及び融着時の、キャリッジ2、3の離間距離を調整することにより、コード30、31の材料や使用目的に応じて、融着部分の径Aを調整することができる。
【0062】
また、上述したように、コード30、31の周面の表面近傍部のみを局所的に加熱溶融して、この溶融した部分同士を融着している。このように、融着に必要な最小限の領域のみ溶融しているため、2本のコードを接触させた状態で加熱溶融して融着した場合に比べて、溶融する範囲が小さくなる。そのため、融着部分の屈曲性を、コードの通常の部分の屈曲性に近い値とすることができる。
【0063】
また、ステップモータ(保持部材駆動手段)9は、保持部材20、21にそれぞれ保持された2本のコード30、31の溶融された部分同士を圧着させる手段であると同時に、保持部材20、21に保持された2本のコード30、31を、ヒーター11の両面にそれぞれ接触させる手段も兼ねている。そのため、ジョイント装置1の構成を簡易化することができる。
また、保持部材20、21とヒーター11は、それぞれ一方向にのみ駆動されるため、これらを駆動するための構成が簡易である。
【0064】
また、保持部材20、21は、溝部24によって、コード30、31を保持しており、コード30、31を保持するための構成が簡易である。
【0065】
また、上述したように、保持穴25にコード30(31)の先端が保持され、コード30(31)の先端近傍部は折り曲げられて保持溝24aに保持されている。また、コード30(31)の保持溝24aに保持された部分に隣接する部分は、折り曲げられて、保持溝24bの一部に保持されている。そのため、コード30(31)の保持溝24aに保持されている部分が、保持溝24aから外れるのを防止できる。
【0066】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。但し、前記第1実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を用いて適宜その説明を省略する。
【0067】
本実施形態のジョイント装置は、2つの保持部材の形状が、前記第1実施形態の2つの保持部材20、21と異なるものの、その他の構成(ヒーター11等)は、前記第1実施形態のジョイント装置1と同じ構成である。
【0068】
本実施形態の2つの保持部材120、121は、互いに同じ形状である。図7に示すように、保持部材120、121の側面(平坦面22及び曲面23)には、2つの溝部124、126が平行に上下方向に並列して形成されている。溝部124は、平坦面22に形成された保持溝124aと、曲面23に形成された保持溝124bとから構成され、溝部126は、平坦面22に形成された保持溝126aと、曲面23に形成された保持溝126bとから構成されている。溝部126の溝幅及び溝深さは、溝部124の溝幅及び溝深さよりも小さい。
【0069】
また、保持溝124a、126aの前端部には、それぞれ保持穴125、127が形成されている。保持穴127の径は、保持穴125の径よりも小さい。
【0070】
本実施形態のジョイント装置101により、2本のコード30、31の端部同士を接続する際には、コード30(31)の径に応じて、溝部124、126の一方にコードを保持させて、前記第1実施形態と同様の手順で2本のコード30、31の端部同士を融着する。なお、加熱時及び融着時の2つのキャリッジ2、3の左右方向の離間距離は、使用する溝部に応じて変更可能となっている。
【0071】
このように、保持部材20、21には、溝幅及び溝深さの異なる2つの保持溝124a、126aが形成されているため、保持部材を交換しなくても、異なるサイズのコードを接続することができる。
【0072】
なお、本実施形態では、保持部材20、21に形成される溝部の数は、2つとしたが、3つ以上であってもよい。
【0073】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。但し、前記第1実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を用いて適宜その説明を省略する。
【0074】
本実施形態のコードのジョイント装置201は、保持部材20、21及びヒーター11の設置方向が、前記第1実施形態と異なっており、また、保持部材20、21のキャリッジ2、3に対する設置位置が、前後方向に関して変更可能となっている。これらの点以外は、前記第1実施形態のジョイント装置1と同様の構成である。
【0075】
図8に示すように、2つの保持部材20、21は、平坦面22が、左右方向に直交する面に対して角度θをなすように、キャリッジ2、3に取り付けられている。従って、保持部材20、21の保持溝24aは、左右方向に直交する面に対して角度θをなす方向に延在している。角度θは、例えば5〜20度である。
【0076】
また、上述したように、2つの保持部材20、21は、キャリッジ2、3に対する設置位置が、前後方向に関して変更可能となっている。詳細は後述するが、2つの保持部材20、21のキャリッジ2、3に対する設置位置を前後方向に関して変更することにより、加熱溶融時及び融着時の保持部材20、21の離間距離を調整可能となっている。図8及び図9に示す保持部材20、21の位置を基準位置とする。即ち、保持部材20、21を左右方向に近接させた場合に、保持溝24a同士が、全域にわたって対向するような保持部材20、21の位置を、基準位置とする。
【0077】
また、図8に示すように、ヒーター11は、その両面(加熱面)が、左右方向に直交する面に対して角度θをなすように配置されている。ヒーター11の幅は、前記第1実施形態と同様に、保持溝24aの延在方向の長さと同じである。ヒーター11は、基準位置にある2つの保持部材20、21を左右方向に近接させたときに、コード30、31のそれぞれ保持溝24aに保持されている部分のほぼ全域が、ヒーター11の両面にそれぞれ接するような位置に配置されている。
【0078】
なお、加熱溶融時及び融着時の2つのキャリッジ2、3の左右方向の離間距離は、それぞれ所定の値に設定されている。
【0079】
図9に示すように、2つの保持部材20、21が基準位置にある場合、コード30、31の保持溝24aに保持された部分のほぼ全域が融着される。つまり、このときの融着部分の長さWは、保持溝24aの延在方向長さとほぼ同じである。
【0080】
また、保持部材20、21のキャリッジ2、3に対する設置位置を、基準位置から前後方向に関して変更する場合について説明する。この場合、2つの保持部材20、21を基準位置から前後逆方向に同じ距離だけ移動させる。これにより、保持部材20の平坦面22とヒーター11との離間距離と、保持部材21の平坦面22とヒーター11との離間距離とが同じになるため、加熱工程時に、保持部材20、21を左右方向に近接させた際、コード30、31をヒーター11の両面に同時に接触させることができる。
【0081】
図10に示すように、保持部材20、21を基準位置(図10中、二点鎖線で表示)から、それぞれ後方向と前方向に同じ距離だけ移動させた場合について説明する。上述したように、加熱溶融時のキャリッジ2、3の離間距離は一定であるため、保持部材20、21が基準位置にある場合に比べて、加熱溶融時の保持部材20、21の離間距離が小さくなる。従って、保持溝24aとヒーター11との離間距離が小さくなり、コード30、31の加熱される範囲は大きくなる。
【0082】
また、融着時のキャリッジ2、3の離間距離は一定であるため、保持部材20、21が基準位置にある場合に比べて、融着時の2つの保持部材20、21の離間距離が小さくなる。従って、融着時の2つの保持部材20、21の保持溝24a同士の離間距離が小さくなるため、融着部分の径Aは小さくなる。また、上述したように、保持部材20、21が基準位置にある場合に比べて、コード30、31の融着部分の長さWは、保持部材20、21が基準位置にある場合に比べて短くなるが、コード30、31の圧着力が増し、また保持部材20、21の表面温度が高くなるため、融着部分の接合強度は維持される。
【0083】
逆に、保持部材20、21を基準位置から、それぞれ前方向と後方向に同じ距離だけ移動させた場合には、保持部材20、21が基準位置にある場合に比べて、融着部分の径Aは大きくなり、また、融着部分の長さWは、保持部材20、21が基準位置にある場合に比べて短くなる。
【0084】
このように、加熱溶融時及び融着時の保持部材20、21の離間距離が一定であっても、保持部材20、21のキャリッジ2、3に対する設置位置を前後方向に関して変更することによって、加熱溶融時及び融着時の保持部材20の離間距離を変更することができる。そのため、コードの材料や使用目的等に応じて、融着部分の径Aを調整することができる。また、融着部分の長さWを、保持部材20、21の寸法と角度θに応じて調整することができる。
【0085】
また、本実施形態では、融着部分の長さWを短くして、接合強度を維持できる特長がある。融着部分の長さWが短くなると、その後、融着したロープは、例えばロープ処理の際に、ガイドロール等に沿ってスムーズに移動することができる。
【0086】
また、ヒーター11の幅が、保持溝24aの延在方向長さと同じであるため、保持部材20の位置を基準位置から変更した場合に、コード30、31の保持溝24aに保持された部分を不要に溶融させることがない。
【0087】
なお、本実施形態では、前記第1実施形態の保持部材20、21を用いているが、前記第2実施形態の保持部材120、121を用いてもよい。
【0088】
また、保持部材20、21の代わりに、図11に示すような保持部材220、221を用いてもよい。保持部材220、221は、平坦面22に形成された保持溝224aの溝深さが、保持穴25に向かって徐々に浅くなるように構成されている。この保持部材220、221を、平坦面22が左右方向に直交する面に平行になるようにキャリッジ2、3に設置する。この場合、本実施形態と同様に、保持部材220、221の前後方向に関する相対的な位置を変更することにより、加熱溶融時及び融着時の保持溝224a同士の離間距離を調整することができ、融着部分の径Aを調整することができる。この構成によると、平坦面22が、保持部材の駆動方向に直交する方向であるため、この平坦面22を基準にして、保持部材20、21をキャリッジ2、3に設置しやすい。
【0089】
また、保持部材20、21の前後方向に関する相対的な位置を変更する代わりに、図12に示すように、平坦面22と左右方向に直交する面とがなす角度θを変更することによって、加熱溶融時及び融着時の保持部材20、21の離間距離を調整して、融着部分の径Aを調整してもよい。
【0090】
以上、本発明の好適な実施形態として、第1実施形態〜第3実施形態を説明したが、上記の実施形態は以下のように変更して実施することができる。
【0091】
上記第1実施形態では、保持溝24aは、前後方向に延びる直線状に形成されているが、例えば、上方又は下方に膨らんだ円弧状に形成されていてもよい。
【0092】
上記実施形態では、保持溝24bは、曲面23の全域に形成されているが、この構成に限定されるものではなく、保持溝24bは、曲面23の後端から、少なくとも曲面23の周長の1/3程度の位置まで形成されていればよい。
【0093】
上記実施形態では、コード30(31)の保持溝24aに保持される部分の両側部分は、それぞれ保持穴25と保持溝25bによって保持されているが、この構成に限定されるものではない。例えば、保持部材に、弾性力によってコードを挟持するクリップのような部材を2つ取り付けて、このクリップに、コード30(31)の保持溝24aに保持される部分の両側部分を保持させてもよい。
【0094】
また、保持穴25と保持溝24bの一方、又は両方は、保持部材20、21に形成されていなくてもよい。但し、この場合、保持溝24aの溝幅を、コード30、31を確実に挟持できる溝幅に設定する必要がある。
【0095】
また、保持部材20、21を、保持溝24aの延在方向が上下方向となるような向きに設置してもよい。また、保持部材20、21を、保持溝24aの延在方向が、上下方向に対して左右方向に傾くような向きに設置してもよい。後者の場合、保持部材20、21の上下方向に関する相対的な位置を変更することによって、加熱溶融時及び融着時の、保持部材20、21の左右方向の離間距離を調整することができ、融着部分の径Aを調整することができる。
【0096】
保持部材20、21を左右方向に駆動する構成は、上記実施形態で述べた構成に限定されるものではなく、例えば、2つの保持部材20、21の左右両側の位置に、左右方向に伸縮する1対の流体圧シリンダを配置して、この1対の流体圧シリンダのシリンダロッドの先端を、保持部材20、21にそれぞれ連結させてもよい。流体圧シリンダとしては、伸縮量の調整可能なものを用いる。
【0097】
2つの保持部材20、21のうち一方が左右方向に移動不能に配置され、他方が左右方向に移動するように構成されていてもよい。但し、この場合、ヒーター11も左右方向に移動させる必要がある。
【0098】
上記実施形態では、ヒーター11は上下方向に駆動され、ヒーター11の退避位置は、加熱位置の下方の位置となっているが、この構成に限定されるものではない。例えば、ヒーター11は前後方向に駆動され、ヒーター11の退避位置は加熱位置の前方の位置であってもよい。但し、この場合、ヒーター11を前方に移動させることができるように、ガイドレール10をキャリッジ2、3の上面に設置するか、または、融着工程時の2つのキャリッジ2、3の間にヒーター11を収容できるように構成する必要がある。ヒーター11を前後方向に駆動する構成としては、前記実施形態と同じくラックとピニオンとモータとを用いてもよいが、流体圧シリンダ等を用いたそれ以外の構成であってもよい。
【0099】
また、ヒーター11を上下方向に移動させる代わりに、2つの保持部材20、21を上下方向に移動させてもよい。軸受け5が固定されている支持台15ごと保持部材20、21を上下方向に移動させてもよいが、キャリッジ2、3に対して保持部材20、21を上下方向に移動させてもよい。
【0100】
上記実施形態のジョイント装置では、コード30、31の周面の一部を加熱溶融して、この溶融された周面同士を接触させて融着しているが、本発明の適用対象は、これに限られるものではなく、コード30、31の端面を加熱溶融して、端面同士を突き合せて融着してもよい。
【実施例】
【0101】
以下、本発明の具体的な実施例について説明する。
実施例1〜5として、RFLの接着処理が施された、表1に示す繊度及び径のポリエステル繊維のコードをそれぞれ2本ずつ用意した。なお、表1中の、例えば実施例2の(1220dTex)×2×3とは、繊度1220dTexの素線を2本縒り合わせたものを、さらに3本縒り合わせて形成されたものであることを示している。
【0102】
【表1】
【0103】
各実施例の2本のコードを、図3に示す構成の保持部材に装着し、上記第1実施形態で述べた手順により、表1に示す加熱温度及び加熱時間でヒーターにより加熱溶融して融着した。各実施例の融着部分の径A及び長さW(図6参照)は、表1に示す値であった。各実施例の融着されたコードについて、破断強力を測定した。その結果も表1に示す。
【0104】
表1に示すように、実施例1〜5とも、融着されたコードの強力は、コードをベルトの心線として使用する場合に必要な強力(10kg以上)を満たしていた。
【符号の説明】
【0105】
1、201 コードのジョイント装置
2、3 キャリッジ
4 ガイド軸
4a、4b ネジ溝
5 軸受け
6 プーリ
7 ベルト
8 プーリ
9 ステップモータ(保持部材駆動手段)
10 ガイドレール
11 ヒーター
12 ラック
13 ピニオン
14 ステップモータ(駆動手段)
20、21 保持部材
22 平坦面
23 曲面
24 溝部
24a 保持溝(融着部保持溝)
24b 保持溝
25 保持穴(穴)
30、31 コード
120、121 保持部材
124 溝
124a 保持溝(融着部保持溝)
124b 保持溝
125 保持穴(穴)
126a 保持溝(融着部保持溝)
126b 保持溝
127 保持穴(穴)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂からなる2本のコードをそれぞれ保持するとともに、相対移動可能に構成された1対の保持部材と、
前記1対の保持部材を相対移動させる保持部材駆動手段と、
前記1対の保持部材に保持された前記2本のコードが互いに離間している状態で、前記2本のコードのそれぞれ一部分を局所的に加熱溶融する加熱手段とを備え、
前記保持部材駆動手段は、
前記2本のコードの前記一部分が溶融した状態で、前記1対の保持部材を駆動して前記2本のコードの前記一部分同士を圧着することにより、両者を融着することを特徴とするコードのジョイント装置。
【請求項2】
前記保持部材駆動手段は、前記1対の保持部材を、これらにそれぞれ保持された前記2本のコードを離接する所定の方向にそれぞれ駆動するものであって、
前記加熱手段を、前記1対の保持部材に前記所定の方向に関して挟まれる加熱位置と、前記1対の保持部材によって挟まれない退避位置とにわたって駆動する駆動手段をさらに備え、
前記加熱手段は、
前記所定の方向における両側部分に、この加熱手段が前記加熱位置にあるときに、前記1対の保持部材によりそれぞれ保持される前記2本のコードが接触する、2つの加熱部を有することを特徴とする請求項1に記載のコードのジョイント装置。
【請求項3】
前記1対の保持部材は、前記所定の方向に関して対向する部分に、前記2本のコードが並列してそれぞれ保持される融着部保持部を有することを特徴とする請求項2に記載のコードのジョイント装置。
【請求項4】
前記融着部保持部が、前記1対の保持部材の対向する平面にそれぞれ形成された直線状の融着部保持溝であることを特徴とする請求項3に記載のコードのジョイント装置。
【請求項5】
前記1対の保持部材の前記融着部保持溝の端部に、前記融着部保持溝の延在方向と異なる方向に延在し、前記コードの先端が挿入されて保持される保持穴が形成されていることを特徴とする請求項4に記載のコードのジョイント装置。
【請求項6】
前記1対の保持部材に、前記融着部保持溝の延在方向と異なる方向に延在し、前記コードの、前記融着部保持溝に保持される部分の近傍部分を保持する保持溝が形成されていることを特徴とする請求項4又は5に記載のコードのジョイント装置。
【請求項7】
前記融着部保持溝が、同一面に2つ以上並列して形成されており、
前記2つ以上の前記融着部保持溝の溝幅及び溝深さが互いに異なることを特徴とする請求項4〜6の何れかに記載のコードのジョイント装置。
【請求項8】
加熱溶融時及び圧着時の、前記1対の保持部材の離間距離が調整可能に構成されていることを特徴とする請求項3〜7の何れかに記載のコードのジョイント装置。
【請求項9】
前記コードの前記融着部保持部により保持される部分の延在方向が、前記所定の方向に直交する面に対して傾いており、
前記1対の保持部材は、前記コードの前記融着部保持部に保持される部分の延在方向を含む平面上において、前記所定の方向に直交する方向に関する相対的な位置を変更可能に構成されていることを特徴とする請求項8に記載のコードのジョイント装置。
【請求項10】
1対の保持部材に、熱可塑性樹脂からなる2本のコードをそれぞれ保持させる保持工程と、
前記1対の保持部材に保持された前記2本のコードが互いに離間している状態で、前記2本のコードのそれぞれ一部分を加熱手段によって局所的に加熱溶融する加熱工程と、
前記加熱工程の後、前記1対の保持部材を相対移動させて、前記2本のコードの前記一部分同士を圧着することにより、両者を融着する融着工程と
を有することを特徴とするコードのジョイント方法。
【請求項1】
熱可塑性樹脂からなる2本のコードをそれぞれ保持するとともに、相対移動可能に構成された1対の保持部材と、
前記1対の保持部材を相対移動させる保持部材駆動手段と、
前記1対の保持部材に保持された前記2本のコードが互いに離間している状態で、前記2本のコードのそれぞれ一部分を局所的に加熱溶融する加熱手段とを備え、
前記保持部材駆動手段は、
前記2本のコードの前記一部分が溶融した状態で、前記1対の保持部材を駆動して前記2本のコードの前記一部分同士を圧着することにより、両者を融着することを特徴とするコードのジョイント装置。
【請求項2】
前記保持部材駆動手段は、前記1対の保持部材を、これらにそれぞれ保持された前記2本のコードを離接する所定の方向にそれぞれ駆動するものであって、
前記加熱手段を、前記1対の保持部材に前記所定の方向に関して挟まれる加熱位置と、前記1対の保持部材によって挟まれない退避位置とにわたって駆動する駆動手段をさらに備え、
前記加熱手段は、
前記所定の方向における両側部分に、この加熱手段が前記加熱位置にあるときに、前記1対の保持部材によりそれぞれ保持される前記2本のコードが接触する、2つの加熱部を有することを特徴とする請求項1に記載のコードのジョイント装置。
【請求項3】
前記1対の保持部材は、前記所定の方向に関して対向する部分に、前記2本のコードが並列してそれぞれ保持される融着部保持部を有することを特徴とする請求項2に記載のコードのジョイント装置。
【請求項4】
前記融着部保持部が、前記1対の保持部材の対向する平面にそれぞれ形成された直線状の融着部保持溝であることを特徴とする請求項3に記載のコードのジョイント装置。
【請求項5】
前記1対の保持部材の前記融着部保持溝の端部に、前記融着部保持溝の延在方向と異なる方向に延在し、前記コードの先端が挿入されて保持される保持穴が形成されていることを特徴とする請求項4に記載のコードのジョイント装置。
【請求項6】
前記1対の保持部材に、前記融着部保持溝の延在方向と異なる方向に延在し、前記コードの、前記融着部保持溝に保持される部分の近傍部分を保持する保持溝が形成されていることを特徴とする請求項4又は5に記載のコードのジョイント装置。
【請求項7】
前記融着部保持溝が、同一面に2つ以上並列して形成されており、
前記2つ以上の前記融着部保持溝の溝幅及び溝深さが互いに異なることを特徴とする請求項4〜6の何れかに記載のコードのジョイント装置。
【請求項8】
加熱溶融時及び圧着時の、前記1対の保持部材の離間距離が調整可能に構成されていることを特徴とする請求項3〜7の何れかに記載のコードのジョイント装置。
【請求項9】
前記コードの前記融着部保持部により保持される部分の延在方向が、前記所定の方向に直交する面に対して傾いており、
前記1対の保持部材は、前記コードの前記融着部保持部に保持される部分の延在方向を含む平面上において、前記所定の方向に直交する方向に関する相対的な位置を変更可能に構成されていることを特徴とする請求項8に記載のコードのジョイント装置。
【請求項10】
1対の保持部材に、熱可塑性樹脂からなる2本のコードをそれぞれ保持させる保持工程と、
前記1対の保持部材に保持された前記2本のコードが互いに離間している状態で、前記2本のコードのそれぞれ一部分を加熱手段によって局所的に加熱溶融する加熱工程と、
前記加熱工程の後、前記1対の保持部材を相対移動させて、前記2本のコードの前記一部分同士を圧着することにより、両者を融着する融着工程と
を有することを特徴とするコードのジョイント方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−26742(P2011−26742A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−175056(P2009−175056)
【出願日】平成21年7月28日(2009.7.28)
【出願人】(000006068)三ツ星ベルト株式会社 (730)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月28日(2009.7.28)
【出願人】(000006068)三ツ星ベルト株式会社 (730)
【Fターム(参考)】
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