説明

コード保持部材

【課題】 収納部に収納された音再生装置等の機器に接続されるコードを衣類等の表面側に引き出し得るようにする。
【解決手段】 携帯用の音再生装置や情報端末装置等の収納部18が設けられ、該収納部18に収納した音再生装置等に接続したコード20を外方へ引き出すようにしたものである。このコード保持部材は、収納部18の表面側あるいは該収納部18の挿通口18aと近接する部位に開設した開口部12と、この開口部12の開口面に配設されて常には閉成状態にあり、コード20を開口部12に挿通させるに際して、該コード20の挿通を許容し得る程度に弾力的に移動あるいは変形自在な閉成部材14とからなる。そして前記開口部12を介して前記コード20を前記収納部18の外方に引き出した際に、前記閉成部材14により該コード20を当該位置で弾力的に保持し得る。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【考案の属する技術分野】
この考案は、コード保持部材に関し、更に詳細には、衣類やバッグ等の収納部に収納した音再生装置や情報端末装置等に接続されるコードを該収納部の外部に引き出すためのコード保持部材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
スキー等をする際に着用する衣類としての防寒用ジャケットには、各種の大きさに寸法設定された収納部としてのポケットが設けられている。この収納部は、該ジャケットの前身頃に複数形成されており、適宜位置の収納部に携帯用の音再生装置や情報端末装置等(以下 音再生装置等と云う)を収納しておき、スキー等をしながら音楽を聴いたりあるいは必要に応じて情報端末装置を使用することが行なわれている。この場合に該収納部の挿通口には所謂スライドファスナーが配設されており、このファスナーを閉成状態とすることで、着用時における雪や雨等の浸入を好適に防止したり、該収納部に収納した物品等が外部に飛散するのを防止するようになっている。
【0003】
またこれらの衣類における該収納部としては、スライドファスナーを備えた挿通口が前身頃の正面側に露出しているタイプと、該挿通口が前身頃の合わせ部分の内側に設けられ、常にはこの合わせ部分によって正面側から被覆された状態にあるタイプとがある。更に該スライドファスナーを設けた収納部が配設されるものとしては、一般的なリュックサックやナップサックあるいはウエスト部分にベルトを巻いて身体に保持する所謂ウエストバック等がある。
【0004】
【考案が解決しようとする課題】
前述した収納部のうち、挿通口が前身頃の正面側に露出しているタイプにおいては、前記音再生装置等の本体に接続端子を介してコードの一端部側を装着しておき、この装置本体を収納部内に収納した後に該挿通口からコードを予め引き出した状態でスライドファスナーのすべり金具(スライドとも云う)を閉成方向に移動させる。これにより収納部内からはコードを引き出した状態にすることができるが、閉成側に移動させたすべり金具が該コードに阻害されるために挿通口を完全に閉成することができない。このためスキー等をしている間に該すべり金具がこのコードに押されて開放する方向に移動し、この僅かに開口した部分から雪や雨等が浸入したり、該コードが務歯(所謂ティース)に対して不用意に摺動することで損傷すると云った難点がある。
【0005】
また該挿通口が衣類の前身頃における合わせ部分の内側に設けられた収納部では、前記タイプの収納部と同様に、その挿通口からコードを予め引き出した後にスライドファスナーのすべり金具を閉成方向に移動させる。この場合にも挿通口は完全に閉成しないが、該合わせ部分によって雪等の浸入を適宜防ぐことができる。しかしながら近年の音再生装置等では、その本体に接続されるコードの途次に音量を調節したりあるいは選曲等をするための操作部を一体的に接続したものが多い。しかるにスキー等をしている間には、例えば音再生装置等が収納部内で転動することにより該コードを収納部内に引込み易くなるために、該操作部が合わせ部分で被覆される位置にまで移動して操作し難くなってしまうと云った点も指摘される。更に前記リュックサックあるいはナップサックやウエストバックに該音再生装置等を収納する場合でも前記衣類と同様の難点が生じ易くなる。
【0006】
【考案の目的】
この考案は、前述した従来技術に内在している前記課題に鑑み、これを好適に解決するべく提案されたものであって、収納部の挿通口とは別の位置に形成され、該収納部に収納された音再生装置等の機器に接続されるコードを衣類等の表面側に引き出し得るようにしたコード保持部材を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前述した課題を解決し、所期の目的を好適に達成するため本考案に係るコード保持部材は、携帯用の音再生装置や情報端末装置等の収納部が設けられ、該収納部に収納した該音再生装置等に接続したコードを外方へ引き出すようにしたものにおいて、 前記収納部の表面側あるいは該収納部の挿通口と近接する部位に開設した開口部と、 前記開口部の開口面に配設されて常には閉成状態にあり、前記コードを該開口部に挿通させるに際して、該コードの挿通を許容し得る程度に弾力的に移動あるいは変形自在な閉成部材とからなり、 前記開口部を介して前記コードを前記収納部の外方に引き出した際に、前記閉成部材により該コードを当該位置で弾力的に保持し得るよう構成したことを特徴とする。
【0008】
【考案の実施の形態】
次に、本考案に係るコード保持部材につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら以下説明する。実施例に係るコード保持部材10は、図1および図2に示すように、スキー等の防寒用ジャケット16における収納部18の表面側に開設された開口部12と、該開口部12の開口面に配設されて常には閉成状態にあり、前記音再生装置等のコード20を該開口部12に挿通させるに際して、該コード20の挿通を許容し得る程度に弾力的に移動あるいは変形自在な閉成部材14とからなっている。
【0009】
閉成部材14は可撓性部材を薄板状に成形した部材であって、横長の長方形状に区画された一部の領域22に一対の第1フラップ24,24および第2フラップ26,26が形成されている。このうち第1フラップ24,24は、図2に示すように、上下方向(短尺方向)の中央部に各上底部24a,24aが隣接する状態で前記開口部12に沿った同一面上に整列する台形状に形成されると共に、第2フラップ26,26は、該第1フラップ24,24の各斜辺24b,24bに整列する角度で三角形状に成形されている。すなわち前記領域22において第1フラップ24,24を成形することにより、必然的に該第2フラップ26,26が隣接する位置に成形されることになる。
【0010】
そして常には、第1フラップ24,24および第2フラップ26,26が同一面上に整列することで、前記収納部18の内側と外側とを空間的に遮断している。
なおこのように第1フラップ24,24を台形状とすることにより、その上底部24aおよび斜辺24bとで形成されるコーナーを鈍角とすることができると共に、第2フラップ26においても、その各斜辺26aで形成される頂点の角度を鈍角とすることできる。従ってコード20を挿通させるに際して手指等での動作を安全かつスムーズに行なうことができるようになっている。また開口部12および各フラップ24,26が形成される区画領域22の形状は、この長方形状に限定されるものではなく、この他に例えば円形や楕円形あるいは多角形状であってもよい。
【0011】
更に前記ジャケット16では、図1に示すように、前身頃の合わせ部分における上端部位にストッパ28が配設されている。このストッパ28は、例えばゴムあるいはウレタン等の弾性部材を短尺な円柱状に成形した部材であって、その外側に位置する周面上の一部に上端部から下端部に掛けて僅少な幅寸法に設定された挿通溝28aが形成されている(図4)。
【0012】
前記コード保持部材10を使用するに際しては、、図3および図4に示すように、例えば前記コード20を予め該コード保持部材10に挿通しておき、その一端部に配設された接続端子31を音再生装置30の接続孔(図示せず)に装着する。そして当該音再生装置30を収納部18内に収納した後に、該コード20の他端部側を収納部18の外側に引き出す。これによりコード20を、収納部18の挿通口18aを通すことなくジャケット16の外側に引き出せるため、該開口部12に配設されたすべり金具(図示せず)を、挿通口18aに縫着したスライドファスナーの閉成端部にまで完全に移動できる。
【0013】
またコード20自体は、コード保持部材10を通過している部位が前記第1フラップ24,24や第2フラップ26,26によって所要圧で保持されるため、引き出し方向などに沿って不用意に移動しないよう構成されている。更に、前記コード保持部材10から収納部18の外側に引き出された部分のコード20は、その延在途次を挿通溝28aを介してストッパ28に掛止することにより、ジャケット16の前後および上下左右方向に沿って不用意に移動しないようになっている。
【0014】
図5は、該収納部18の挿通口18aと近接する部位に前記コード保持部材10を形成したものである。この収納部18は、従来技術で述べた如く、スライドファスナーを備えた前記開口部12がジャケット16の前身頃における合わせ部分16aの内側に設けられ、常には該合わせ部分16aによって正面側から被覆されるものであり、前記コード保持部材10が、該収納部18の挿通口18aと近接する位置の合わせ部分16aに開設されている。
【0015】
使用に際しては、前記と同様に、コード20を予め該コード保持部材10に挿通しておき、その一端部に配設された前記接続端子31を音再生装置30の接続孔に装着する。そして当該音再生装置30を収納部18内に収納した後に、コード20の他端部側を収納部18の外部方向に引張する。このコード20は、図6に示すように、収納部18の挿通口18aを通ることになるが、該挿通口18aから延出した途次がコード保持部材10の第1フラップ24および第2フラップ26によって挟持されるために、不用意な移動が規制されると共に、前記操作部(図示せず)が該各フラップ24,26によって収納部18内へ引き込まれず、常にジャケット16の外側に露出した状態が保持される。
【0016】
図7は、手持品としてのバッグ32に前記コード保持部材10を設けた例を示すものであって、この場合も前述した如く、該バッグ32の表面側に設けられた開口部12と、該開口部12の開口面に配設されて常には閉成状態を保持しており、前記コード20を該開口部12に挿通させるに際して、コード20の挿通を許容し得るよう移動あるいは変形するよう構成された閉成部材14とからなっている。なおバッグ32としてはウエストバックを例に挙げてあるが、該バッグ32自体はこれに限定されるものではなく、これ以外に前記リュックサックやナップサックあるいは旅行バッグ等に設けるようにしてもよい。
【0017】
【考案の効果】
以上説明した如く、本考案に係るコード保持部材は、収納部の表面側あるいは該収納部の挿通口と近接する部位に開口された開口部と、この開口部の開口面に配設されて常には閉成状態にあり、前記コードを該開口部に挿通させるに際して、該コードの挿通を許容し得るよう移動あるいは変形する閉成部材とから構成されている。このため、収納部に収納される音再生装置に接続したコードを該コード保持部材を介して該収納部の外側に引き出し得ると共に、スライドファスナーを構成するすべり金具を閉成する方向に移動させた場合に、これが該コードに阻害されることなく収納部の開口部を閉成することができる。従ってコードが前記務歯に対して不用意に摺動することで損傷すると云ったことが完全に解消される。また開口部に設けたフラップにより、収納部に雪や雨等を浸入し難くすると云った防水性が適宜確保される。更にリュックサックやナップサックあるいはウエストバックの収納部にコード保持部材を設けることで、前記衣類と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案の好適な実施例に係るコード保持部材であって、前身頃における収納部の正面に該コード保持部材を設けた衣類を示す全体正面図である。
【図2】本考案の好適な実施例に係るコード保持部材であって、該コード保持部材を衣類の収納部と共に拡大して示す要部正面図である。
【図3】本考案の好適な実施例に係るコード保持部材であって、音再生装置に接続されたコードを該コード保持部材に挿通して外部に引張した状態を示す要部拡大正面図である。
【図4】本考案の好適な実施例に係るコード保持部材であって、音再生装置に接続されたコードを衣類の合わせ部に配設したストッパに掛止した状態を示す要部正面図である。
【図5】本考案の好適な実施例に係るコード保持部材であって、前身頃における合わせ部に該コード保持部材を設けた衣類を示す全体正面図である。
【図6】本考案の好適な実施例に係るコード保持部材であって、音再生装置に接続されたコードを該コード保持部材に挿通して外部に引張した状態を示す要部正面図である。
【図7】本考案の好適な実施例に係るコード保持部材であって、該コード保持部材をバッグに形成した状態を示す全体斜視図である。
【符号の説明】
12 開口部
14 閉成部材
16 ジャケット
18 収納部
18a 挿通口
20 コード
24 第1フラップ
24a 上底部
24b 斜辺
26 第2フラップ
26a 斜辺
32 バッグ

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 携帯用の音再生装置や情報端末装置等の収納部(18)が設けられ、該収納部(18)に収納した該音再生装置等に接続したコード(20)を外方へ引き出すようにしたものにおいて、前記収納部(18)の表面側あるいは該収納部(18)の挿通口(18a)と近接する部位に開設した開口部(12)と、前記開口部(12)の開口面に配設されて常には閉成状態にあり、前記コード(20)を該開口部(12)に挿通させるに際して、該コード(20)の挿通を許容し得る程度に弾力的に移動あるいは変形自在な閉成部材(14)とからなり、前記開口部(12)を介して前記コード(20)を前記収納部(18)の外方に引き出した際に、前記閉成部材(14)により該コード(20)を当該位置で弾力的に保持し得るよう構成したことを特徴とするコード保持部材。
【請求項2】 前記閉成部材(14)は、台形状に成形されて対向し合う一対の第1フラップ(24,24)と、該第1フラップ(24,24)の各斜辺(24b,24b)に整列する角度で三角形状に成形された第2フラップ(26,26)とからなり、常には、第1フラップ(24,24)がその各上底部(24a,24a)を相互に当接させた状態で前記開口部(12)に沿って同一面上に整列すると共に、第2フラップ(26,26)がその各斜辺(26a,26a)を該第1フラップ(24,24)の各斜辺(24b,24b)に当接させた状態で該開口部(12)に沿って同一面上に整列する請求項1記載のコード保持部材。
【請求項3】 前記開口部(12)は、例えば衣類(16)の収納部(18)に設けられる請求項1記載のコード保持部材。
【請求項4】 前記開口部(12)は、例えばバッグ等の手持品(32)に設けられる請求項1記載のコード保持部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【登録番号】実用新案登録第3084357号(U3084357)
【登録日】平成13年12月19日(2001.12.19)
【発行日】平成14年3月22日(2002.3.22)
【考案の名称】コード保持部材
【国際特許分類】
【評価書の請求】未請求
【出願番号】実願2001−5533(U2001−5533)
【出願日】平成13年8月22日(2001.8.22)
【新規性喪失の例外の表示】実用新案法第11条第1項において準用する特許法第30条第1項適用申請有り
【出願人】(594137960)株式会社ゴールドウイン (19)