説明

コード入り帯状ゴム部材の製造方法および装置

【課題】補強コード12間における一側帯状ゴム20と他側帯状ゴムとの接着力を効果的に向上させる。
【解決手段】隣接する周方向溝24間のプレスロール23外周にそれぞれ副周方向溝25を形成したので、周方向溝24から突出した補強コード12の残部12bを一側帯状ゴム20に押し込む際、一側帯状ゴム20の一部は流動して副周方向溝25に侵入する。この結果、一側帯状ゴム20が隣接する補強コード12間に深く侵入するようになり、これにより、その後、隣接する補強コード12間に侵入してくる他側帯状ゴムとの圧着界面における接着力が効果的に向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、多数本の整列された補強コードを一側、他側帯状ゴムによって両側から被覆したコード入り帯状ゴム部材の製造方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のコード入り帯状ゴム部材の製造方法および装置としては、例えば以下の特許文献1に記載されているようなものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−237271号公報
【0004】
このものは、未加硫ゴムが間を通過することで下側コーティングゴムを成形する第3、第4ロールと、外周にスチールコードがそれぞれ供給される多数本の環状溝が形成され、該供給されたスチールコードはその一部が環状溝に侵入する一方、残部が環状溝から突出しているプレスロールと、未加硫ゴムが間を通過することで上側コーティングゴムを成形する第1、第2ロールとを備え、前記プレスロールによって下側コーティングゴムの一側面に前記環状溝から突出しているスチールコードの残部を次々に押し込んだ後、前記スチールコードが押し込まれた下側コーティングゴムの一側面に第2ロールにより上側コーティングゴムを供給しながら押付けて、下側コーティングゴムの一側面から突出しているスチールコードの一部を該上側コーティングゴムに押し込むようにしたものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来のコード入り帯状ゴム部材の製造方法および装置にあっては、隣接する環状溝間におけるプレスロールの外周がいずれの軸方向位置においても同一径である円筒面であるため、プレスロールによって環状溝から突出しているスチールコードの残部を下側コーティングゴムに押し込んだとき、該下側コーティングゴムは隣接するスチールコード間を該プレスロールの外周に接触する位置までしか侵入することができない。その後、隣接するスチールコード間に上側コーティングゴムが第2ロールに押されて侵入するが、前述のように下側コーティングゴムはプレスロールの外周までしか侵入できないため、このようなスチールコード間での下、上側コーティングゴム同士の圧着界面における接着力が充分とはいえないことがあるという課題があった。特に、建設車両用タイヤの製造にコード入り帯状ゴム部材を用いる場合には、スチールコード径が大径で、その打ち込み本数も多く、しかも、スチールコードの周囲におけるゴムゲージ(肉厚)が厚いため、前述の課題は顕著となっていた。
【0006】
この発明は、補強コード間における一側、他側帯状ゴムの接着力を効果的に向上させることができるコード入り帯状ゴム部材の製造方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、第1に、プレスロールの外周に形成された多数本の周方向溝にそれぞれ補強コードを供給し、該補強コードの一部を周方向溝内に侵入させる第1工程と、周方向溝から突出している補強コードの残部を該プレスロールによって一側帯状ゴムの一側面に次々と押し込む第2工程と、前記補強コードが押し込まれた一側帯状ゴムの一側面に他側帯状ゴムを供給しながら押付けて、一側帯状ゴムから突出している補強コードの一部を該他側帯状ゴムに押し込む第3工程とを備えたコード入り帯状ゴム部材の製造方法において、隣接する周方向溝間のプレスロール外周にそれぞれ副周方向溝を形成することで、補強コードの残部を一側帯状ゴムに押し込む際、一側帯状ゴムの一部を副周方向溝に侵入させるようにしたコード入り帯状ゴム部材の製造方法により、達成することができる。
【0008】
第2に、未加硫ゴムが間を通過することで一側帯状ゴムを成形する一対の一側カレンダーロールと、外周に補強コードがそれぞれ供給される多数本の周方向溝が形成され、該供給された補強コードはその一部が周方向溝に侵入する一方、残部が周方向溝から突出しているプレスロールと、未加硫ゴムが間を通過することで他側帯状ゴムを成形する一対の他側カレンダーロールとを備え、前記プレスロールによって一側帯状ゴムの一側面に前記周方向溝から突出している補強コードの残部を次々に押し込んだ後、前記補強コードが押し込まれた一側帯状ゴムの一側面に他側帯状ゴムを供給しながら押付けて、一側帯状ゴムから突出している補強コードの一部を該他側帯状ゴムに押し込むようにした帯状ゴム部材の製造装置において、隣接する周方向溝間のプレスロール外周にそれぞれ副周方向溝を形成し、補強コードの残部を一側帯状ゴムに押し込む際、一側帯状ゴムの一部を副周方向溝に侵入させるようにしたコード入り帯状ゴム部材の製造装置により、達成することができる。
【発明の効果】
【0009】
この発明においては、隣接する周方向溝間のプレスロール外周にそれぞれ副周方向溝を形成することで、補強コードの残部を一側帯状ゴムに押し込む際、一側帯状ゴムの一部を副周方向溝に侵入させるようにしたので、一側帯状ゴムが隣接する補強コード間に深く侵入するようになり、この結果、その後、隣接する補強コード間に侵入してきた他側帯状ゴムとの圧着界面における接着力が効果的に向上する。
【0010】
また、請求項2に記載のように構成すれば、副周方向溝に侵入した部位の一側帯状ゴム表面に微細な凹凸が形成されるが、このような凹凸は他側帯状ゴムに喰い込んで投錨効果が発揮されるとともに、両帯状ゴムの圧着面積も増大し、これにより、一側、他側帯状ゴム同士の接着力を強力に向上させることができる。さらに、請求項3に記載のように構成すれば、副周方向溝の内面を確実かつ容易に粗面とすることができる。
【0011】
また、請求項4に記載のように構成すれば、コード入り帯状ゴム部材の表裏面が補強コードのピッチと同一ピッチで波状に変形するため、該コード入り帯状ゴム部材に重ね合わされた他のタイヤ構成部材との間からエアを容易に抜くことができるとともに、補強コードに重なり合った部位におけるゴムゲージ(コード上ゴムゲージ)を適切な厚さまで容易に増大させることができる。さらに、請求項5に記載のように構成すれば、補強コードに重なり合った部位におけるコード入り帯状ゴム部材の表裏面に微細な凹凸が形成され、この結果、該凹凸の投錨効果により他のタイヤ構成部材との接着力が容易に向上するとともに、エア抜きをさらに確実とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の実施形態1を示す概略正面図である。
【図2】プレスロールにより補強コードを一側帯状ゴムに押し込んでいる状態を説明する一部破断平面図である。
【図3】一側、他側カレンダーロールにより補強コードを他側帯状ゴムに押し込んでいる状態を説明する一部破断側面図である。
【図4】図1のI−I矢視断面図である。
【図5】コード入り帯状ゴム部材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明の実施形態1を図面に基づいて説明する。
図1、2において、11はスチールコード、有機繊維コード等からなる同一種類の補強コード12が多数回巻き取られた多数のボビンであり、これらのボビン11は図示していないクリールスタンドに回転可能に支持されている。ここで、前記補強コード12は断面が円形、楕円形、六角形、四角形等のものが知られており、この実施形態では楕円形のものを用いている。そして、これらボビン11から巻出された多数本の補強コード12は該ボビン11より前方に設置されたガイドプレート13に集合された後、コムロール14に供給され、該コムロール14においてこれら補強コード12は水平面上において一定ピッチで平行に並ぶよう整列される。
【0014】
17、18は回転軸線が平行な一対の円柱状を呈する一側カレンダーロールであり、通常、前記一側カレンダーロール17は第3カレンダーロールと、一方、一側カレンダーロール18は第4カレンダーロールと呼ばれている。そして、これら一側カレンダーロール17、18は図示していない駆動機構から回転駆動力を受けることで矢印方向(逆方向)に同一周速度で回転する。ここで、前記一側カレンダーロール17、18間には未加硫ゴム19(バンクゴム)が供給されるが、該未加硫ゴム19は前記一側カレンダーロール17、18の回転により、これら一側カレンダーロール17、18間を通過することで、一定幅で等厚の一側帯状ゴム20が成形される。このようにして成形された一側帯状ゴム20は一側カレンダーロール17の外周に密着しながら該一側カレンダーロール17の回転方向に搬送される。
【0015】
23は前記一側カレンダーロール17の直後に設置され該一側カレンダーロール17に平行に延びる略円柱状のプレスロールであり、このプレスロール23の外周には周方向に連続して延びる多数本(前記補強コード12の本数と同数本)の周方向溝24が形成され、これらの周方向溝24はプレスロール23の軸方向に一定ピッチPだけ離れて配置されている。ここで、前記周方向溝24はその断面が略半円形であり、この結果、これら周方向溝24に前述の補強コード12がそれぞれ供給されると、該補強コード12の一部12a(ここでは断面の略半分)が該周方向溝24内に侵入して該補強コード12は一定ピッチで整列される。このとき、各補強コード12の残部12b(断面の残り略半分)は周方向溝24から半径方向外側に突出している。
【0016】
このように補強コード12の一部12aが周方向溝24内に侵入した状態で、プレスロール23が一側カレンダーロール17に追従してフリー回転、あるいは、図示していないモータにより駆動されて一側カレンダーロール17と逆方向に回転するとともに、該プレスロール23が一側カレンダーロール17(一側帯状ゴム20)に押し付けられると、周方向溝24から突出している補強コード12の残部12bはプレスロール23によって一側帯状ゴム20の一側面20aに次々と押し込まれ、補強コード12の一側が一側帯状ゴム20により被覆される。
【0017】
ここで、隣接する周方向溝24間に位置するプレスロール23の外周は、従来においては、いずれの軸方向位置においても同一径である円筒面であったが、この実施形態においては、隣接する周方向溝24間に位置するプレスロール23の外周23aにそれぞれ、隣接する周方向溝24間の中間点Qに向かうに従い深くなった副周方向溝25を形成している。ここで、前記副周方向溝25は周方向に連続して延びるとともに、その断面形状を円弧状としているが、該副周方向溝25の断面形状は楕円形、三角形等であってもよい。また、この実施形態においては、副周方向溝25を形成することで線状の外周23aしか残っていないが、この発明においては、円筒状をした狭い幅の外周を副周方向溝25の軸方向片側または両側に残すようにしてもよい。
【0018】
このように隣接する周方向溝24間のプレスロール23の外周23aにそれぞれ副周方向溝25を形成すれば、補強コード12の残部12bを一側帯状ゴム20に押し込む際、該一側帯状ゴム20の一部が残部12bに押されて流動しながら副周方向溝25に侵入し、これにより、一側帯状ゴム20が凸形状を呈しながら隣接する補強コード12間に従来より深く、ここでは補強コード12の断面中心より他側まで侵入するようになる。
【0019】
28、29は前記一側カレンダーロール17の上方に設置され、回転軸線が前記一側カレンダーロール17に平行な一対の円柱状を呈する他側カレンダーロールであり、通常、前記他側カレンダーロール28は第1カレンダーロールと、一方、他側カレンダーロール29は第2カレンダーロールと呼ばれている。そして、これら他側カレンダーロール28、29は図示していない駆動機構から回転駆動力を受けることで矢印方向(逆方向)に同一周速度で回転するとともに、他側カレンダーロール29は一側カレンダーロール17に対して逆方向に該一側カレンダーロール17の周速度と同一周速度で回転する。
【0020】
ここで、前記他側カレンダーロール28、29間には未加硫ゴム30(バンクゴム)が供給されるが、該未加硫ゴム30は前記他側カレンダーロール28、29の回転により、これら他側カレンダーロール28、29間を通過することで、前記一側帯状ゴム20と同一幅で同一肉厚の他側帯状ゴム31が成形される。このようにして成形された他側帯状ゴム31は他側カレンダーロール29の外周に密着しながら他側カレンダーロール29と一側カレンダーロール17との間に向かって該他側カレンダーロール29の回転方向に搬送される。
【0021】
その後、他側帯状ゴム31は補強コード12の残部12bが押し込まれた一側帯状ゴム20の一側面20aに供給されながら他側カレンダーロール29によって押し付けられ、これにより、一側帯状ゴム20から突出している補強コード12の一部12aは、図3に示すように他側帯状ゴム31に次々に押し込まれ、補強コード12の他側が他側帯状ゴム31により被覆される。このとき、前述のように一側帯状ゴム20が隣接する補強コード12間に深く侵入しているため、隣接する補強コード12間に侵入してきた他側帯状ゴム31と一側帯状ゴム20とは確実かつ強力に圧着され、これら一側、他側帯状ゴム20、31の圧着界面における接着力が効果的に向上する。
【0022】
このようにして多数本の整列された補強コード12を一側、他側帯状ゴム20、31によって両側から被覆したコード入り帯状ゴム部材(トリート)33が成形されるが、このコード入り帯状ゴム部材33は、その後、カーカスプライ、ベルトプライ等としてタイヤの製造に用いられる。そして、このようなコード入り帯状ゴム部材33は、補強コード12の径が大径で、打ち込み本数も多く、ゴムゲージも厚い建設車両用タイヤの製造に用いる場合に、特に有用である。
【0023】
ここで、前記副周方向溝25の内面は微細な凹凸がほぼ均一に多数形成された粗面、例えば、表面粗さ(中心線平均粗さ)の値が20〜30μmである粗面となっている。この結果、前述のように一側帯状ゴム20が副周方向溝25に侵入すると、該侵入した部位の一側帯状ゴム20の表面は前記副周方向溝25の内面に接触することで粗面が転写され、副周方向溝25の内面と同様の微細凹凸の粗面となる。このように副周方向溝25に侵入した部位の一側帯状ゴム20表面が粗面となると、該粗面の凹凸が他側帯状ゴム31に喰い込んで投錨効果が発揮されるとともに、両帯状ゴム20、31の圧着面積も増大し、これにより、一側、他側帯状ゴム20、31同士の接着力が強力に向上する。
【0024】
ここで、前述した副周方向溝25の内面は、例えば、サンドブラスト、ショットブラストを施したり、多数本の細溝を形成することで粗面とすることもできるが、この実施形態では、エッチング、ラッピング等を用いたなし地加工を施すことで粗面としている。このように粗面をなし地仕上げにより形成するようにすれば、副周方向溝25の内面を確実かつ容易に粗面とすることができる。
【0025】
前述のようにして成形されたコード入り帯状ゴム部材33は、その後、上方に向かって走行するが、この走行の途中において、ここでは他側カレンダーロール29の上方に設置された一対の成形ロール35、36が両側から押し付けられる。ここで、前述の成形ロール35、36は前記他側カレンダーロール29と回転軸線が平行で略円柱状を呈し、コード入り帯状ゴム部材33に接触することで逆方向にフリー回転、あるいは、図示していない駆動モータから回転駆動力を受けて逆方向に回転する。
【0026】
また、前記成形ロール35、36の外周でコード入り帯状ゴム部材33内の補強コード12に対向する位置には周方向に連続して延びる多数本(補強コード12と同数本)の型付け溝37、38がそれぞれ形成され、これらの型付け溝37、38は断面略半円状で、その直径は補強コード12の直径とほぼ同一である。これにより、成形ロール35、36には型付け溝37、38により多数本の周方向に連続して延びる突条39、40が画成される。そして、走行しているコード入り帯状ゴム部材33の全幅に前述した成形ロール35、36が逆方向に回転しながら両側(表裏面側)から押し付けられると、補強コード12間に位置するゴム(一側、他側帯状ゴム20、31の一部)は前記突条39、40が押し込まれることで補強コード12寄りに流動する。
【0027】
この結果、コード入り帯状ゴム部材33の表裏面には成形ロール35、36の波状に屈曲した外周形状が転写されて、図5に示すように補強コード12のピッチと同一ピッチで波状に変形し、この結果、該コード入り帯状ゴム部材33の表裏面に長手方向に延びる多数本の溝43が形成される。ここで、前記コード入り帯状ゴム部材33は、次工程で他の帯状をしたタイヤ構成部材が重ね合わされるが、この重ね合わされた他のタイヤ構成部材との間にエアが存在しても、前記溝43により該エアを容易に抜くことができる。また、前述したゴムの流動により補強コード12に重なり合った部位におけるゴムゲージ(コード上ゴムゲージ)を適切な厚さまで容易に増大させることもできる。しかも、補強コード12間の一側、他側帯状ゴム20、31同士は成形ロール35、36の突条39、40により両側から強力に押し付けられ、圧着界面における接合強度がさらに向上する。
【0028】
ここで、前記型付け溝37、38の内面には周方向に連続して延びる多数本の細溝41、42が形成され、これらの細溝41、42の断面形状は矩形でもよいが、この実施形態では断面形状を三角形としている。そして、このように型付け溝37、38の内面に細溝41、42を形成すると、補強コード12に重なり合う部位におけるコード入り帯状ゴム部材33(ゴム)の表裏面に前記細溝41、42が転写されて微細な凹凸が形成、ここでは長手方向に延びる断面三角形の突条が多数本形成され、この結果、該凹凸による投錨効果により他のタイヤ構成部材との接着力が容易に向上するとともに、エア抜きをさらに確実とすることもできる。
【0029】
次に、前記実施形態1の作用について説明する。
各ボビン11から補強コード12がそれぞれ巻出されると、これら多数本の補強コード12は前方に走行しながらガイドプレート13に集合した後、コムロール14により一定ピッチで平行に並ぶよう整列される。その後、これら補強コード12はプレスロール23の周方向溝24にそれぞれ供給されて整列されるが、このとき、補強コード12の一部12aはプレスロール23の周方向溝24内に侵入する一方、その残部12bは周方向溝24から半径方向外側に突出する。一方、一側カレンダーロール17、18においては、該一側カレンダーロール17、18間に供給された未加硫ゴム19がこれら一側カレンダーロール17、18間を通過することで、一定幅で等厚の一側帯状ゴム20が成形されるが、この一側帯状ゴム20は成形後、一側カレンダーロール17の外周に密着しながら該一側カレンダーロール17の回転方向に搬送される。
【0030】
そして、プレスロール23の回転により補強コード12がプレスロール23と一側カレンダーロール17との間に供給されると、該補強コード12はプレスロール23によって一側カレンダーロール17に密着している一側帯状ゴム20に押し付けらるが、このとき、周方向溝24から突出している補強コード12の残部12bは一側帯状ゴム20に次々に埋め込まれ、該補強コード12の一側が一側帯状ゴム20により被覆される。このとき、隣接する周方向溝24間に位置するプレスロール23の外周23aには副周方向溝25が形成されているので、一側帯状ゴム20の一部が残部12bに押されて流動しながら副周方向溝25に侵入し、一側帯状ゴム20が隣接する補強コード12間に従来より深く侵入する。なお、このとき、補強コード12の一部12aは一側帯状ゴム20から突出している。
【0031】
その後、補強コード12、一側帯状ゴム20は一側カレンダーロール17の回転により一側カレンダーロール17と他側カレンダーロール29との間に向かって搬送される。このとき、他側カレンダーロール28、29においては、該他側カレンダーロール28、29間に供給された未加硫ゴム30がこれら他側カレンダーロール28、29間を通過することで、一定幅で等厚の他側帯状ゴム31が成形されるが、この他側帯状ゴム31は、成形後、他側カレンダーロール29の回転により該他側カレンダーロール29の外周に密着しながら、他側カレンダーロール29と一側カレンダーロール17との間に向かって搬送される。
【0032】
そして、前記他側帯状ゴム31が他側カレンダーロール29と一側カレンダーロール17との間に到達し、該他側帯状ゴム31が一側帯状ゴム20の一側面20aに供給されると、該他側帯状ゴム31は他側カレンダーロール29によって一側帯状ゴム20に押し付けられる。このとき、一側帯状ゴム20から突出している補強コード12の一部12aが他側帯状ゴム31に埋め込まれ、補強コード12の他側が他側帯状ゴム31により被覆される。このとき、一側帯状ゴム20は前述のように隣接する補強コード12間に深く侵入しているため、隣接する補強コード12間に侵入してきた他側帯状ゴム31と該一側帯状ゴム20とは確実かつ強力に圧着され、これら一側、他側帯状ゴム20、31の圧着界面における接着力が効果的に向上する。このようにして多数本の整列された補強コード12は一側、他側帯状ゴム20、31によって両側から被覆されコード入り帯状ゴム部材33が成形される。
【0033】
その後、コード入り帯状ゴム部材33は上方に向かって走行するが、この走行の途中においてコード入り帯状ゴム部材33に対し一対の成形ロール35、36が両側から押し付けられ、補強コード12間に位置するゴムが成形ロール35、36の突条39、40に押されて補強コード12寄りに流動する。この結果、コード入り帯状ゴム部材33の表裏面は成形ロール35、36の波状に屈曲した外周形状が転写されて波状に変形し、該コード入り帯状ゴム部材33の表裏面に長手方向に延びる多数本の溝43が形成される。
【実施例1】
【0034】
次に、本願発明の効果を確認するため、前記実施形態1で説明した実施ゴム部材と、比較ゴム部材を製造した。ここで、比較ゴム部材は、プレスロールとして、隣接する周方向溝間における外周がいずれの軸方向位置においても同一径である円筒面から構成されたものを用い、また、実施形態1で説明した成形ロールを省略した装置で製造した。そして、これら実施、比較ゴム部材を用いて以下のような試験を行ったが、コード引き抜き抗力に関しては、実施ゴム部材が比較ゴム部材より35%向上し、また、補強コード間におけるゴム圧着界面の接着力に関しては、実施ゴム部材が比較ゴム部材より39%向上していた。さらに、製品タイヤにおけるエア入り、コード乱れの発生率は、比較ゴム部材を用いたタイヤでは 0.5%であったが、実施ゴム部材を用いたタイヤでは 0%に低減していた。さらに、コード上ゴムゲージに関しては、実施ゴム部材が比較ゴム部材より25%厚くなっていた。
【産業上の利用可能性】
【0035】
この発明は、多数本の整列された補強コードを一側、他側帯状ゴムによって両側から被覆したコード入り帯状ゴム部材を製造する産業分野に適用できる。
【符号の説明】
【0036】
12…補強コード 12a…一部
12b…残部 17、18…一側カレンダーロール
19…未加硫ゴム 20…一側帯状ゴム
20a…一側面 23…プレスロール
23a…外周 24…周方向溝
25…副周方向溝 28、29…他側カレンダーロール
30…未加硫ゴム 31…他側帯状ゴム
35、36…成形ロール 37、38…型付け溝
41、42…細溝 Q…中間点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレスロールの外周に形成された多数本の周方向溝にそれぞれ補強コードを供給し、該補強コードの一部を周方向溝内に侵入させる第1工程と、周方向溝から突出している補強コードの残部を該プレスロールによって一側帯状ゴムの一側面に次々と押し込む第2工程と、前記補強コードが押し込まれた一側帯状ゴムの一側面に他側帯状ゴムを供給しながら押付けて、一側帯状ゴムから突出している補強コードの一部を該他側帯状ゴムに押し込む第3工程とを備えたコード入り帯状ゴム部材の製造方法において、隣接する周方向溝間のプレスロール外周にそれぞれ副周方向溝を形成することで、補強コードの残部を一側帯状ゴムに押し込む際、一側帯状ゴムの一部を副周方向溝に侵入させるようにしたことを特徴とするコード入り帯状ゴム部材の製造方法。
【請求項2】
前記副周方向溝に侵入した部位の一側帯状ゴムは、内面が粗面である前記副周方向溝に接触することで、表面が粗面に形成された請求項1記載のコード入り帯状ゴム部材の製造方法。
【請求項3】
前記副周方向溝の粗面は、なし地仕上げにより形成するようにした請求項2記載のコード入り帯状ゴム部材の製造方法。
【請求項4】
前記第3工程の後に、コード入り帯状ゴム部材内の補強コードに対向する位置の外周に周方向に延びる型付け溝がそれぞれ形成された一対の成形ロールを逆方向に回転させながらコード入り帯状ゴム部材に両側から押付けることで、補強コード間に位置するゴムを補強コード寄りに流動させる第4工程をさらに設けた請求項1〜3のいずれかに記載のコード入り帯状ゴム部材の製造方法。
【請求項5】
前記型付け溝の内面に周方向に延びる多数本の細溝を形成することで、補強コードに重なり合う部位のゴムに前記細溝を転写するようにした請求項4記載のコード入り帯状ゴム部材の製造方法。
【請求項6】
未加硫ゴムが間を通過することで一側帯状ゴムを成形する一対の一側カレンダーロールと、外周に補強コードがそれぞれ供給される多数本の周方向溝が形成され、該供給された補強コードはその一部が周方向溝に侵入する一方、残部が周方向溝から突出しているプレスロールと、未加硫ゴムが間を通過することで他側帯状ゴムを成形する一対の他側カレンダーロールとを備え、前記プレスロールによって一側帯状ゴムの一側面に前記周方向溝から突出している補強コードの残部を次々に押し込んだ後、前記補強コードが押し込まれた一側帯状ゴムの一側面に他側帯状ゴムを供給しながら押付けて、一側帯状ゴムから突出している補強コードの一部を該他側帯状ゴムに押し込むようにした帯状ゴム部材の製造装置において、隣接する周方向溝間のプレスロール外周にそれぞれ副周方向溝を形成し、補強コードの残部を一側帯状ゴムに押し込む際、一側帯状ゴムの一部を副周方向溝に侵入させるようにしたことを特徴とするコード入り帯状ゴム部材の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−194572(P2011−194572A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−60309(P2010−60309)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】