説明

コーナーテープ

【課題】本発明が解決すべき課題は、出隅部の石膏粗面に貼り付けられた場合でも、短時間で平滑性を復元し、かつ石膏ボードへの接着作業の手直しを容易にし、パテ仕上げの手間も短縮できるコーナーテープを提供することである。
【解決手段】本発明は、第一のテープ基材5と、第二のテープ基材4,4’と、粘着層3,3’と、離型層2,2’とがこの順に積層されたコーナーテープ1であって、前記第二のテープ基材4,4’は、テープ基材5の仮想中心線6に対して略対称位置に配置され、第二のテープ基材4の引っ張り弾性率をEとし、単位幅当りの断面二次モーメントをIとし、粘着層3の粘着力をFとした場合、E×I>F×3.9×10−7の関係を満たすようなコーナーテープを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーナーテープに関し、詳しくは内装下地の入隅もしくは出隅に貼り付けて使用されるコーナーテープに関する。
【背景技術】
【0002】
建物の内装の壁面は、石膏ボード等の壁材の表面をパテ等で平坦な表面に仕上げてから壁紙、布地、合成樹脂クロス等を貼着して仕上げているが、2つの壁面がほぼ直角に隣接する隈部(出隅、入隅)等のコーナー部は、角が尖っているためパテによる仕上げが困難であった。
【0003】
コーナー部のパテ仕上げを可能にするために、粘着層と複数の孔を有するコーナーテープが提案されている(特許文献1〜4)。
【0004】
内装壁面の出隅部の石膏ボードにて形成する場合、2枚の石膏ボードを直角に配してなるが、このとき、石膏ボードの切断部断面が出隅部に露出する場合がある。
【0005】
上記石膏ボードの一般的な切断の方法としては、石膏ボードの表裏の紙をカッターナイフ等の鋭利な刃物で切断し、該切断部に衝撃を加えて石膏部分を割ることにより分断する方法をとっている。
【0006】
この場合、上記切断部の石膏部分は衝撃によって割られているため、その石膏面は割れるにまかせた粗面である。
【0007】
このような石膏粗面が上述の出隅部に露出して配置された場合、コーナーテープが石膏粗面の凹凸に密着しすぎ、その結果、石膏粗面の凹凸が、当該石膏粗面上に貼着したコーナーテープ上にも表れてしまう。
【0008】
このような石膏粗面の凹凸がコーナーテープ上にも表れないようにするために、特許文献1では塩化ビニル成形体を、特許文献2ではアルミニウムの板を用いている。
【0009】
しかし、これらのテープの場合、上記の様に厚手の合成樹脂成形体や金属を用いているので、コーナーテープの自重が重くなり、粘着材を用いて出隅部の石膏ボードに貼附している場合、粘着力が弱いと経時で粘着材が剥がれ、コーナーテープの剥がれや脱落する不具合が生じる。
【0010】
また、コーナーテープは石膏ボードとの段差を修正するためにパテ仕上げを行うが、厚みがあついとパテ処理に手間がかかるという不具合もある。
【0011】
さらに、出隅部へのコーナーテープ施工時において、貼り位置がずれたときに直後に剥がして貼り直しをするが、粘着力が強いと石膏ボードの紙をむしってしまい、粘着性がなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2006−83655号
【特許文献2】特開平4−254653
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、出隅部の石膏粗面に配された場合でも、初期には粗面に追随するが、短時間で平滑性を復元するコーナーテープを提供することである。
【0014】
また、従来の半分以下の厚みで、石膏ボードへの接着作業の手直しを容易にし、パテ仕上げの手間も短縮できるコーナーテープを提供することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記のような状況の下、本発明者らは鋭意検討した結果、1つのテープ基材に、別の2つのテープ基材を積層し、さらに2つの粘着層、及び2つの離型層をこの順に積層したコーナーテープにおいて、テープ基材の反発力(テープ基材の剛性)と粘着層の粘着力とが一定の関係を満たす場合、上記従来の課題を解決できることを見出した。本発明は、かかる新規の知見に基づくものである。
【0016】
従って、本発明は以下の項を提供する:
項1.第一のテープ基材5と、第二のテープ基材4,4’と、粘着層3,3’と、離型層2,2’とがこの順に積層されたコーナーテープ1であって、
前記第二のテープ基材4,4’は、第一のテープ基材5の仮想中心線6に対して略対称位置に配置され、
前記第二のテープ基材4の引っ張り弾性率をE(N・m−2)とし、単位幅当りの断面二次モーメントをI(m)とし、粘着層3の粘着力をF(N/m)とした場合、下記の関係を満たすようなコーナーテープ:
E×I>F×3.9×10−7
【0017】
項2.粘着力がステンレス板180°ピール剥離力で測定され、テープ幅25mm当りの当該ピール剥離力の値が16N/25mm以下である、項1に記載のコーナーテープ。
【0018】
項3.粘着力がステンレス板180°ピール剥離力で測定され、テープ幅25mm当りの当該ピール剥離力の値が3.3N/25mm以下である、項2に記載のコーナーテープ。
【0019】
項4.粘着力が石膏切断面180°ピール剥離力で測定され、テープ幅25mm当りの当該ピール剥離力の値が0.28N/25mm以下である、項1〜3のいずれか1項に記載のコーナーテープ。
【0020】
項5.粘着力が石膏切断面180°ピール剥離力で測定され、テープ幅25mm当りの当該ピール剥離力の値が0.12N/25mm以下である、項4に記載のコーナーテープ。
【0021】
項6.第二のテープ基材4の曲げ剛性が2×10−4(N・m2)以上である、項1〜5のいずれか1項に記載のコーナーテープ。
【0022】
項7.第二のテープ基材4の厚さが30μm〜500μmである、項6に記載のコーナーテープ。
【0023】
項8.第二のテープ基材4の幅が5mm〜100mmである、項6に記載のコーナーテープ。
【0024】
項9.第一のテープ基材5が縦糸及び横糸を有し、かつ縦糸または横糸の少なくとも一方の糸密度が35本/25mm以下である、項6〜7のいずれか1項に記載のコーナーテープ。
【発明の効果】
【0025】
本発明のコーナーテープは、石膏粗面等の凹凸を有する面に貼り付けた場合、その直後には、凹凸に沿ってテープが貼り付けられるが、その後短時間で主に凹部に張り付いたテープが剥がれて平滑性を復元する。従って、コーナーテープの表面に更に壁紙を積層した場合、壁紙の平滑性を確保できる。特に外観上問題となりやすい出隅部に用いる際に有効である。また、厚みが従来のコーナーテープの半分以下であるため、パテ処理が容易である。さらに、本発明のコーナーテープは、石膏ボードに貼り、直後に剥がした場合も、石膏ボードの紙をむしることが少ないため、石膏ボードの損傷が小さく、かつコーナーテープの粘着力の低下も少なくて済む。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明のコーナーテープの構成を示す概略図である。
【図2】本発明のコーナーテープの平面図を示す。
【図3】本発明のコーナーテープの正面図を示す。
【図4】本発明のコーナーテープの他の実施形態の正面図を示す。
【図5】石膏粗面の概略図を示す。
【図6】石膏粗面に粘着テープを貼り付けた直後の概略図を示す。
【図7】凹部分等に貼り付いた粘着テープが剥がれた後の石膏粗面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、第一のテープ基材5と、第二のテープ基材4,4’と、粘着層3,3’と、離型層2,2’とがこの順に積層されたコーナーテープ1であって、
前記第二のテープ基材4,4’は、第一のテープ基材5の仮想中心線6に対して略対称位置に配置され、
第二のテープ基材材4の引っ張り弾性率をE(N・m−2)とし、単位幅当りの断面二次モーメントをI(m)とし、粘着層3の粘着力をF(N/m)とした場合、下記式(1)の関係を満たすようなコーナーテープ:
E×I>F×3.9×10−7 (1)
を提供する。
【0028】
本発明のコーナーテープ1は、図1、3に示されるように、第一のテープ基材5と、第二のテープ基材4,4’と、粘着層3,3’と、離型層2,2’とがこの順に積層されたものである。第一のテープ基材5と、第二のテープ基材4,4’は融着、熱圧着などにより一体化してもよく、図4に示すように、第一のテープ基材5と、第二のテープ基材4,4’の間に、各々粘着層7,7’を形成してもよい。
【0029】
第二のテープ基材4,4’
本発明のコーナーテープにおいては、第二のテープ基材4,4’は、第一のテープ基材5の仮想中心線6に対して略対称位置に配置され、仮想中心線6に沿って折り目をつけたときに第二のテープ基材4,4’がコーナーテープの両側の強度を保持するように構成されている。
【0030】
尚、仮想中心線6とは、コーナーテープの長手方向に沿う線であってコーナーテープの両端の幅方向中心を結ぶ線を意味する。仮想中心線6は、第二のテープ基材4,4’とで挟まれた領域Aに含まれる。
【0031】
本発明に係るコーナーテープは、テープ基材4,4’の剛性と石膏粗面に対する粘着剤の粘着力とを調整することで、石膏粗面へ貼附されても、短時間で平滑性を復元するという効果を奏する。
【0032】
ここでの石膏粗面とは、上記方法により石膏ボードを割って得られた面をいい、内装工事現場では、そのまま、あるいはヤスリ等を用いて軽くならした面を含む。(図5)この粗面に粘着テープが貼附され、密着した模式図を図6に示す。
【0033】
粘着テープが粗面にならっているため、この状態で内装の壁紙等を貼り付けると平滑な面が得られず、壁紙に皺やデザインの歪みが生じてしまう。
【0034】
この課題を解決するにために初期には粗面に追随するが、短時間で平滑性を復元することが必要になる(図7)。
ここでいう短時間とは、隅部へコーナーテープを貼附した直後から内装の壁紙を貼り付けるまでの時間をいう。通常、内装の壁紙を貼り付ける工程はコーナーテープの貼附から長くとも翌日には開始されることから、コーナーテープの貼り付け後24時間以内に平滑性を復元することが重要である。
【0035】
課題の解決のために、図7のようにテープ基材のもつ反発力が、石膏粗面に対する粘着力を上回ることが平滑性を復元するために重要である。
【0036】
従って、本発明に用いる第二のテープ基材4,4’は、一定の剛性を有しており、コーナーテープを真っ直ぐに立てて下部を手で支えたときに、先端部分の曲がりが少なく、隅部への貼着が行いやすいものである。当該剛性は、反発力をもたらす。従って、特に、2つの第二のテープ基材4,4’のうち、石膏断面と接するほうを第二のテープ基材4とすると、当該第二のテープ基材4の剛性が重要である。
【0037】
より具体的には、上記反発力とは、一般的には曲げ剛性として知られており、板状であるテープ基材の引っ張り弾性率E(N・m−2)と断面二次モーメントI(m)の積で表す。値が大きいほど曲げにくい、あるいは反発力が大きい:
曲げ剛性=E×I
ここで、断面二次モーメントIは、以下の式で表す:
I=(テープ基材の厚み)×(テープ基材の幅)/12(m
単位幅あたりの断面二次モーメントI=1(m)×(テープ基材の厚み)/12(m)で表す。テープ基材の反発力は、基材の材料特性及び厚みに影響を受ける。本発明においては、上記曲げ剛性をテープ基材の幅で除した単位幅当りの曲げ剛性E×Iが粘着力との関係で前述の式を満たすことが重要である。
【0038】
本発明において、引っ張り弾性率は、JIS−K7161−1994;プラスチック−引張特性の試験方法により測定することができる。
【0039】
第二のテープ基材4の引っ張り弾性率E及び単位幅当りの断面二次モーメントIが、粘着層3の粘着力Fに対し、前述式で表されるような関係を有していることが重要である。
【0040】
また、2つの第二のテープ基材4,4’のうちもう一方の第二のテープ基材4’の引っ張り弾性率E’(N・m−2)及び単位幅当りの断面二次モーメントI’(m)が粘着層3’の粘着力F’(N/m)との関係で、同様に、下記式(1’)
E’×I’>F’×3.9×10−7 (1’)
を満たす場合、2つの第二のテープ基材4,4’のいずれに石膏粗面を貼り付けてもよいためより好ましい。
【0041】
このような第二のテープ基材4,4’の材質としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリメチルメタアクリレート(PMMA)、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアセテート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルブチラール、ポリウレタンなどが挙げられ、好ましくは比較的引っ張り弾性率の高いPETなどのポリエステルである。
【0042】
第二のテープ基材4の引っ張り弾性率としては、例えば、200×106〜3300×106N・m−2等が挙げられる。第二のテープ基材4’としても上記と同じ引っ張り弾性率を有するものを用いることができる。
【0043】
引っ張り弾性率の一般的な値としては、PETが3000×106N・m−2、PBTが2500×106N・m−2、PCが2400×106N・m−2、PPが1200×106N・m−2、PEが1100×106N・m−2、PVCが3100×106N・m−2である。
【0044】
第二のテープ基材4,4’の厚みは、例えば、30μm〜500μm、好ましくは50〜300μm、より好ましくは75〜150μmである。
【0045】
第二のテープ基材4,4’の厚みを上記範囲とすることにより、施工時に大きく垂れることなくコーナーテープとしての自立性を有するため、施工性がよく、かつ当該コーナーテープを巻物で製造したときにトンネリングが発生しにくくなり、その結果、発生箇所への埃の付着及び粘着力の低下を招く不具合が抑制されるため好ましい。
【0046】
第二のテープ基材4の幅は、特に限定されないが、例えば、5mm〜100mm程度が好ましい。
【0047】
第二のテープ基材4,4’とで挟まれた領域Aの幅は、コーナーテープのサイズにもよるが、0.5〜3mm程度が、角の直線性が良いため好ましい。コーナーテープの幅は、特に制限はないが、20〜100mm程度、第二のテープ基材4,4’の幅は各々10〜30mm程度が例示されるがこれらに限定されない。
【0048】
本発明コーナーテープにおいて、第一のテープ基材の厚みと第二のテープ基材4,4’で挟まれた領域Aの幅との比は、特に限定されないが、例えば、第一のテープ基材厚:領域A=1:3〜1:30、好ましくは1:8〜1:20である。前記比がこれらの範囲内にあると、長いコーナーテープの中央に折り目を付けて直立させたときに、先端の曲がり或いは折り目の開きが少なくなり、コーナーエッジがシャープになり作業性及び外観仕上げが向上する。
【0049】
コーナーテープの全厚と前記第二のテープ基材4,4’とで挟まれた領域Aの幅の比は、特に限定されないが、例えば、テープの全厚:領域A=1:2〜1:30であり、好ましくは1:6〜1:20である。前記比がこれらの範囲内にあると、コーナーエッジがシャープになり作業性及び外観仕上げが向上する。特に建物等の入隅部にコーナーテープ貼り付けたときに、コーナーエッジがシャープになり、外観仕上げが向上する。
【0050】
粘着層3,3’
本発明のコーナーテープは、粘着層3,3’により、石膏ボード等の対象物に付着する。
【0051】
本発明においては、石膏粗面に接触する粘着層3の粘着力F(N/m)が、第二のテープ基材4の引っ張り弾性率E及び単位幅当りの断面二次モーメントIとの関係で前述の式(1)を満たすことが重要である。また、さらに粘着層3’の粘着力F’ (N/m)が第二のテープ基材4’の引っ張り弾性率E’(N・m−2)及び単位幅当りの断面二次モーメントI’(m)との関係で前述の式(1’)で示される関係を満たすことがより好ましい。
【0052】
ここで、本発明においては、被着体との剥離力を表すのに通常用いられるステンレス板による180°剥離力を粘着層3,3’の粘着力F,F’とする。
【0053】
粘着層3(必要に応じてさらに粘着層3’)の粘着力が、第二のテープ基材4(必要に応じてさらに第二のテープ基材4’)との関係で、前述の式(1)(式(1’))を満たすような材料を用いることによって、従来の半分以下の厚みのコーナーテープで平滑性を確保でき、また、貼り間違えた場合に一度貼り付けた石膏ボード紙面の表面をほとんどむしり取ること無くコーナーテープを剥がすことができる。従って、石膏ボードへの接着作業の手直しを容易にし、パテ仕上げの手間も短縮できる。
【0054】
具体的には、内装工事では、コーナーテープの上にそのまま壁紙を貼ると段差が生じ、美観的に不都合がある。したがって、コーナーテープと石膏ボード面との段差をなくすために、仕上げ用のパテにより段差部にテーパ上に塗ることで平滑な面を得ている。コーナーテープの厚みが薄ければ仕上げに要するパテの量も少なく、施工時間も短縮される。
【0055】
ここで、粘着層3,3’のステンレス板による180°剥離力としては、例えば、テープ幅25mm当りの剥離力として、16N/25mm以下が好ましく、3.3N/25mm以下がより好ましい。また、粘着層3,3’のステンレス板による180°剥離力は、例えば、0.5N/25mm以上、1N/25mm以上が好ましく、2N/25mm以上がより好ましい。
【0056】
ここで、ステンレス板による180°剥離力は、圧着に用いるローラーとして1kgのものを用い、JIS−Z0237−2000 による180°引き剥がし法以下の方法で測定することができる:
粘着テープを剥がして石膏ボード紙面の紙がむしれてくっついてくるという現象は、紙が材料破壊を起こしていることに他ならない。すなわち、粘着テープの粘着力を石膏ボードに用いられている紙材の材料強度未満にコントロールすれば紙をむしることなく、粘着テープが紙表面から剥離する。粘着テープの粘着力が石膏ボードの紙の材料強度より上回った場合、粘着テープと石膏紙面の剥離試験における剥離力の測定値は、紙の材料強度となり、ほぼ一定の値を示す。
【0057】
また、粘着層3,3’の石膏切断面180°ピール剥離力が測定できる場合、例えば、0.28N/25mm以下が好ましく、0.12N/25mm以下がより好ましい。また、粘着層3,3’の石膏切断面による180°剥離力は、例えば、0.08N/25mm以上が好ましく、0.1N/25mm以上がより好ましい。
【0058】
ここで、石膏切断面による180°剥離力は、以下の方法で測定することができる:
通石膏ボードGB−R 厚み12.5mmを幅50×長さ125mmに切断し、さらに幅方向を二等分するように、石膏ボードの表裏の紙面にカッターナイフで紙に切れ込みを入れ、手で切れ込みに沿って割り、石膏粗面を得る。
得られた石膏粗面に対し、粘着テープを石膏粗面に設置し1kgローラーにて圧着する。
以下引き剥がし試験については、ステンレス板に換えて石膏粗面としたこと以外は上記ステンレス板による180°剥離力の測定方法に準拠して測定した。
得られた値は幅12.5mmに対するものであるので、幅25mmに換算した。
【0059】
粘着層3、に使用される粘着剤としては、その粘着力が、第二のテープ基材4と前述する関係を満たすようなものであれば特に限定されないが、例えば、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤が挙げられ、アクリル系粘着剤が好ましい。粘着層の厚みは、特に限定されないが、10〜300μm、好ましくは30〜100μmを例示できる。
【0060】
粘着層3,3’の厚さは、例えば、20〜70μm程度、好ましくは25〜60μm程度である。
【0061】
本発明においては、施工時の張り直しが容易となるという観点から、初期粘着力が石膏ボードとその表面の紙の接着強度よりも小さいことが好ましい。また、初期粘着力が石膏ボード表面の紙の層間強度よりも小さいことがさらに好ましい。
【0062】
ここで、初期粘着力とは、対象物への貼り付け後 3分後の粘着力を意味し、本発明においては、前述したステンレス板による180°剥離力により評価できる。
【0063】
上記両面テープの粘着面の表裏をクロス基材側を裏と表現すると、表裏で粘着力が同等あるいは表面の粘着力が裏面よりも低いことが望ましい。表裏で粘着力が同等あるいは表面の粘着力が裏面よりも低いと、コーナーテープを石膏ボードに施工する際、ズレを修正するため張り直した場合、両面テープに伴いクロス基材が剥離することが抑えられ、そのコーナー部材を再利用することができるからである。また、表面の粘着力を抑えることにより、石膏ボード紙面に施工し、張り直す際に巻きむしれが抑えられ、この点からもコーナーテープの再利用が可能となる。
【0064】
第一のテープ基材5
本発明のコーナーテープに用いられる第一のテープ基材5は柔軟性の材料であり、コーナーテープ1の剛性は、第二のテープ基材4がその主な役割を担っている。
【0065】
本発明のコーナーテープ1において、第一のテープ基材5は柔軟性を有し、隅部の形状に対する追従性を有する。第一のテープ基材5は、第二のテープ基材4,4’とで挟まれた領域Aに折り目を付けたとき、折り目を保持可能であることが好ましい。このため、コーナーテープ1は、コーナーテープを外径6インチの紙芯に常温で2週間巻き付け、30cmの長さに切断し、重りを載せた部分が水平台に着く重さ(反発性)が50g以下、好ましくは40g以下である。前記重さ(反発性)が50g以下、特に40g以下であれば、製品ロールから引き出し使用する際に一定反りが発生するが反発力が弱いため、コーナーテープを隅部に貼着後浮きなどが発生し、手直しする作業性が大幅に削減される。
【0066】
第一のテープ基材5の厚さは、例えば、70〜180μm程度、好ましくは70〜150μm程度、より好ましくは100〜130μm程度である。
【0067】
本発明において、第一のテープ基材5として、縦糸及び横糸を有し、かつ縦糸または横糸の少なくとも一方の糸密度が35本/25mm以下のものを用いると、パテののりが良くなり、かつパテがはがれ難いので施工しやすいため好ましい。
【0068】
第一のテープ基材5は、非粘着側の表面に凹凸を有し、これによりパテ保持性を有する。しかしながら、この非粘着側表面の凹凸は微細であるので、パテを塗らずに壁紙、クロスなどを直接貼着した場合であっても、壁紙、クロスに該凹凸は反映しない。第一のテープ基材5の非粘着側は、織布又は不織布もしくは紙のような微細な凹凸を有する材料であるか、或いはエンボス加工などにより表面に凹凸を付与することができる。本発明において、第一のテープ基材5は、パテが入り込みアンカー作用を有するような貫通孔はない。第一のテープ基材5の外表面の微細な凹凸もしくは織布ないし不織布における繊維間の微細な孔は、パテとの密着性を高めることはできるが、パテはアンカー性を有するほど内部に入り込むことはないため、パテの使用量を低減できる。
【0069】
第一のテープ基材5は、変形可能であって入隅、出隅への追従性が良好であり、作業性がよい。このような追従性を有するための好ましい実施形態として、特に限定されないが、以下の構成が挙げられる:
・単一の不織布もしくは2種以上の不織布の積層体(即ち、不織布のみからなる)
・単一の織物もしくは2種以上の織物の積層体(即ち、織物のみからなる)
・フィルムと不織布もしくは織物の積層体。フィルム及び不織布もしくは織物は、各々単一の層であってもよく、2種以上のフィルム/ラミネートを積層してもよい。フィルムと不織布もしくは織物を積層する場合、平滑なフィルムがフィルム基材側(内層5a)であり、表面に繊維による凹凸を有する不織布もしくは織物は非粘着部側(外層5b)である。
・単一のフィルムもしくは2種以上のフィルムの積層体(フィルムラミネート)。単一のフィルムの場合、フィルムはエンボス加工などにより、表面に凹凸を付与する。フィルムラミネートの場合、凹凸を有するフィルムが少なくとも一方の外側になるようにラミネートする。
【0070】
2以上のフィルム、不織布、織物のラミネートは圧着、熱融着などにより行うことができる。
【0071】
第一のテープ基材5の非粘着部側表面の凹凸、即ち平均表面粗さRaは、1〜20μm程度、好ましくは2〜10μm程度である。平均表面粗さRaは、JIS B 0601の記載に従って測定することができる。
【0072】
第一のテープ基材5がフィルムもしくはフィルムラミネートの場合、その材質としてポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体などのポリオレフィン樹脂、ポリアミド、などが挙げられ、織物としては、PETなどのポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体などのポリオレフィン樹脂、ナイロン6,ナイロン6,6などのポリアミド、塩化ビニル、ビニロン、レーヨン(スフを含む)、アセテートなどの繊維を織ったものが挙げられる。不織布としては、合成繊維、紙パルプ又はこれらの2種以上の混合素材で構成され、織らずに繊維を接合しているものが挙げられる。合成繊維としては、ポリアミド、ポリビニルアルコール系繊維、PETなどのポリエステル、ポリアクリロニトリルなどのアクリル、 ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニルなどが挙げられる。繊維は、形状保持樹脂の緯糸を使用するのが好ましい。
【0073】
第一のテープ基材は、折り目を付けた後、或いは隅部に貼着した後の戻りを抑制することができる。このようなフィラーとしては、アルミナ、シリカ、酸化チタン、タルク、クレー、炭酸カルシウム、マイカ、ケイ酸塩類、炭酸塩類、ガラス繊維などが挙げられる。
【0074】
第一のテープ基材5は特に、以下の材料が好ましく例示できる。
(i)形状保持樹脂使用クロス(緯糸)とポリエステル(特にPET)(経糸)を用いた織物(ii)上記(i)の不織布ラミネート(アンカー力を向上できる)
(iii) ポリエステル(特にPET)クロス
(iv)ポリオレフィン(ポリエチレン)ヤーンクロス
(v)ソフ(ポリエチレン、ポリプロピレン不織布)
(vi) ポリオレフィン(ポリエチレンもしくはポリプロピレン)フィルム(特に形状保持特性を有するもの)
離型層2,2’
離型層2,2’は、特に限定されないが、例えば、上質紙にポリオレフィン系樹脂をラミネートしたもの、クラフト紙にシリコーン系離型剤を積層したもの、などが好適に用いられる。離型層2の厚さは、特に限定されないが、10μm〜500μm程度を例示することができる。
【0075】
離型層2,2’以外のコーナーテープの全厚は、例えば、200〜400μm程度、好ましくは250〜350μm程度である。
【0076】
ここで、離型層2,2’以外のコーナーテープの全厚は、例えば図3の構成の場合には、第一のテープ基材5、第二のテープ基材4、粘着層3の合計の厚みであり、図4の構成の場合には、第一のテープ基材5、粘着層7,第二のテープ基材4、粘着層3の合計の厚みである。
【0077】
以下に、実施例・比較例に記載の具体的な実施形態を用いて本発明について説明するが、本発明はこれらの特定の実施形態に限定されない。
【実施例】
【0078】
実施例1〜6及び比較例1〜2
コーナーテープに用いる粘着テープを以下の方法により作製した:
テープ基材:ポリエステルフィルム (引っ張り弾性率3000MPa)厚み100μm両面コロナ処理品の片面にアクリル系粘着剤を所定の厚みに塗工した。
【0079】
粘着テープの糊厚みや配合等を調整し、実施例1から6と比較例1および2の粘着力を持つ粘着テープを得た。得られた粘着テープを幅25mm、長さ100mmに切断した。
【0080】
一方、普通石膏ボードGB−R 厚み12.5mmを幅50×長さ125mmに切断し、さらに幅方向を二等分するように、石膏ボードの表裏の紙面にカッターナイフで紙に切れ込みを入れ、手で切れ込みに沿って割り、石膏粗面を得た。得られた石膏粗面に対し上記粘着テープの切断片を貼り付け、粘着テープを石膏粗面に向け手でなぞって圧着した。
【0081】
圧着当初に石膏粗面に付いている粘着テープが粗面から離れるまでの時間を観察した。その結果を表1に示す。
【0082】
【表1】

【0083】
上記表1に記載のように、実施例1〜6の粘着テープは、石膏粗面への貼り付け後、24時間以内という短時間で、凹部分等が粗面から剥がれ、平坦になった。これらの結果から、かかる実施例1〜6の粘着テープを柔軟性の高い第一のテープ基材5に貼り付けて作製したコーナーテープも同様に高い平滑復元性を示すことが明らかである。
【0084】
実施例7及び比較例3〜4
上記テープ基材であるPETフィルム厚み100μm両面コロナ処理品の両面に、表2に示すような粘着力(剥離力)を示すアクリル粘着剤を所定厚み塗工した。得られた両面テープを切断加工し、幅19mmの両面テープを得た。19mmの両面テープを片面にポリエチレンラミネートを施した幅40mm、厚み100μm、長さは任意のクロス基材上に中央に2mmの隙間を設けて2本平行に貼り付け、コーナーテープを製作した(実施例7及び比較例3)。さらに、比較例4に市販の塩化ビニル押し出し成形板を基材に持つ両面テープ付きコーナーテープを用いた(大塚刷毛製造社製「DXクロスコーナーテープ」(幅53mm、厚み0.6mm))。
【0085】
各テープについて、以下の方法により、紙むしりについて検証した:
上記実施例7,比較例3,4にしめす表面粘着力をもつコーナーテープを幅50mm×長さ125mmに切断した厚み12.5mmの普通石膏ボードGB−Rの試験片上に貼り付け、1kgのゴムローラーにて圧着し、直後に180°の引きはがし試験(速度300mm/分)を実施し、上記石膏ボードの紙むしりの有無を観察した。
【0086】
実施例7、比較例4では高さ2mの出隅部のモデルを準備し、そのコーナー部にコーナーテープを施工し、その後コーナーテープと石膏ボードの段差をなくすよう仕上げ用パテを塗った。その際、コーナーテープの長さ1mをパテで仕上げるのに要した時間を計測した。結果を表2に示す。
【0087】
【表2】

【0088】
表2に示すように、実施例7のコーナーテープでは、紙むしれがなかったのに対し、比較例3〜4では紙むしれが生じてしまった。また実施例7のコーナーテープの厚みは、比較例4の厚みの約半分以下であり、1m当りのパテ施工時間を比較例4と比べて著しく短縮することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一のテープ基材5と、第二のテープ基材4,4’と、粘着層3,3’と、離型層2,2’とがこの順に積層されたコーナーテープ1であって、
前記第二のテープ基材4,4’は、第一のテープ基材5の仮想中心線6に対して略対称位置に配置され、
前記第二のテープ基材4の引っ張り弾性率をE(N・m−2)とし、単位幅当りの断面二次モーメントをI(m)とし、粘着層3の粘着力をF(N/m)とした場合、下記の関係を満たすようなコーナーテープ:
E×I>F×3.9×10−7
【請求項2】
粘着力がステンレス板180°ピール剥離力で測定され、テープ幅25mm当りの当該ピール剥離力の値が16N/25mm以下である、請求項1に記載のコーナーテープ。
【請求項3】
粘着力がステンレス板180°ピール剥離力で測定され、テープ幅25mm当りの当該ピール剥離力の値が3.3N/25mm以下である、請求項2に記載のコーナーテープ。
【請求項4】
粘着力が石膏切断面180°ピール剥離力で測定され、テープ幅25mm当りの当該ピール剥離力の値が0.28N/25mm以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のコーナーテープ。
【請求項5】
粘着力が石膏切断面180°ピール剥離力で測定され、テープ幅25mm当りの当該ピール剥離力の値が0.12N/25mm以下である、請求項4に記載のコーナーテープ。
【請求項6】
第二のテープ基材4の曲げ剛性が2×10−4(N・m2)以上である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のコーナーテープ。
【請求項7】
第二のテープ基材4の厚さが30μm〜500μmである、請求項6に記載のコーナーテープ。
【請求項8】
第二のテープ基材4の幅が5mm〜100mmである、請求項6に記載のコーナーテープ。
【請求項9】
第一のテープ基材5が縦糸及び横糸を有し、かつ縦糸または横糸の少なくとも一方の糸密度が35本/25mm以下である、請求項6〜7のいずれか1項に記載のコーナーテープ。

【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−96131(P2013−96131A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239540(P2011−239540)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)