説明

コーナー被覆具及びコーナー構造

【課題】入隅若しくは出隅に取り付けられている幅木、見切り材又は回り縁のような壁面造作材及び壁を加工することなく容易に取り付けることができ、しかも壁面造作材の伸縮の悪影響を受けることがないコーナー被覆具及びコーナー構造を提供する。
【解決手段】入隅に取り付けられている2枚の幅木B1,B2の間隙を被覆するコーナー被覆具1は、入隅の壁W1,W2に密着して釘打ちで固定される壁固定部材11と、突出部121を壁固定部材11の突出部111に形成されているスリット112に嵌合することによって壁固定部材11に簡易に取り付けられた状態で幅木B1,B2の間隙を被覆する間隙被覆部材12とを備える。このようなコーナー被覆具1は、幅木B1,B2には直接的に固定されていないため、幅木B1,B2の伸縮の悪影響を受けない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁の隅角に取り付けられている2枚の板状の壁面造作材の間隙を被覆するコーナー被覆具、及びコーナー被覆具を備えるコーナー構造に関する。
【背景技術】
【0002】
幅木(又は回り縁)は、壁の床(又は天井)近傍に接着、釘打ち等で固定されており、このため、壁の隅角には2枚の幅木(又は回り縁)が交差方向に配されている。壁の隅角に取り付けられている2枚の幅木(又は回り縁)の間隙を被覆するために、従来、種々のコーナー被覆具が提案されている(特許文献1〜3参照)。
【0003】
特許文献1に開示されているコーナー被覆具は、横方向の両端部が、両面テープを用いた接着、釘打ち等によって、2枚の幅木(又は回り縁)に固定される。
このようなコーナー被覆具を釘打ちで取り付けた場合、釘の頭部が露出するため、美観が損なわれるという問題がある。また、両面テープを用いた接着で取り付けた場合、釘打ちに比べて取り付けの強度が弱いため、コーナー被覆具が脱落し易いという問題がある。
【0004】
これらの問題を解決するために、特許文献2に開示されているコーナー被覆具には、横方向の両端部内側に嵌合突起が形成されている。このようなコーナー被覆具は、2枚の幅木(又は回り縁)夫々の壁側に形成されている嵌合凹部に嵌合突起を上方(又は下方)から嵌め入れることによって、2枚の幅木(又は回り縁)に固定される。
また、特許文献3に開示されているコーナー被覆具は、2枚の幅木又は回り縁の間隙を被覆する被覆用の部材と、この被覆部材の内側に形成されている取着部材とを有している。このようなコーナー被覆具は、取着部材の被挟持部が2枚の幅木(又は回り縁)と壁との間で挟持されることによって、2枚の幅木(又は回り縁)に固定される。
【0005】
ところで、幅木(又は回り縁)は、一般に木材、木質部材等を用いて形成されており、温度、湿度等の変化に応じて横方向に伸縮することがある。
【特許文献1】実開平5−78794号公報
【特許文献2】特許第3754797号公報
【特許文献3】実用新案登録第3127147号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されているように、両面テープを用いた接着によって、2枚の幅木(又は回り縁)に直接的にコーナー被覆具が固定されている場合、幅木(又は回り縁)の伸縮に応じてコーナー被覆具及び両面テープに不要な外力が加わる。このため、両面テープが剥がれてコーナー被覆具が脱落し易くなる。
一方、特許文献1,2に開示されているように、釘打ち、又は嵌合突起と嵌合凹部との嵌合によって、2枚の幅木(又は回り縁)に直接的にコーナー被覆具が固定されている場合は、幅木(又は回り縁)の伸縮に応じてコーナー被覆具に加わった不要な外力によって、コーナー被覆具が破損することがある。
【0007】
また、特許文献2に開示されているコーナー被覆具を使用するためには、2枚の幅木(又は回り縁)に嵌合凹部を形成する必要があり、幅木(又は回り縁)の加工工程又はコーナー被覆具の取付工程が煩雑である。
更に、特許文献3に開示されているコーナー被覆具を使用するためには、2枚の幅木(又は回り縁)と壁との間に挟持される被挟持部の厚みを吸収するために、壁に凹部を形成する必要があり、コーナー被覆具の取付工程が煩雑である。
ところで、見切り材は、壁の縦方向中央部に固定されており、壁の隅角に取り付けられている2枚の見切り材の間隙を被覆するために、幅木又は回り縁の場合と同様に、コーナー被覆具を用いることが考えられる。
【0008】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、壁固定部材を入隅又は出隅の壁に固定し、間隙被覆部材を壁固定部材に取り付けて、幅木、見切り材又は回り縁のような2枚の壁面造作材の間隙を被覆する構成とすることにより、壁面造作材及び壁を加工することなく容易に取り付けることができ、しかも壁面造作材の伸縮の悪影響を受けることがないコーナー被覆具及びコーナー構造を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、壁固定部材及び間隙被覆部材の一方に形成されている突出部と、他方に形成されている縦長のスリットとが嵌合する構成とすることにより、縦方向の取付位置を容易に調整することができるコーナー被覆具を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、壁固定部材が、壁の形状に沿う入隅用屈曲板状部及び三角柱部と釘打ち又はネジ留め用の入隅用縦長孔とを有することにより、更に容易に取り付けることができるコーナー被覆具を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、壁固定部材が、壁の形状に沿う出隅用屈曲板状部と釘打ち又はネジ留め用の出隅用縦長孔とを有することにより、更に容易に取り付けることができるコーナー被覆具を提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的は、弾性部を、弾性復元力によって壁面造作材の小口面の間に挿入固定し、幅木、見切り材又は回り縁のような2枚の壁面造作材の間隙を被覆部で被覆する構成とすることにより、壁面造作材及び壁を加工することなく容易に取り付けることができ、しかも壁面造作材の伸縮の悪影響を受けることがないコーナー被覆具及びコーナー構造を提供することにある。
【0013】
本発明の更に他の目的は、V字状の弾性部を備えることにより、弾性部を形成する材料を減少させることができるコーナー被覆具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1発明に係るコーナー被覆具は、入隅又は出隅に取り付けられている2枚の板状の壁面造作材の間隙を被覆するコーナー被覆具において、前記入隅又は出隅の壁に固定される壁固定部材と、該壁固定部材に取り付けられ、前記間隙を被覆する間隙被覆部材とを備えることを特徴とする。
【0015】
第2発明に係るコーナー被覆具は、前記壁固定部材及び間隙被覆部材夫々は、互いに対向すべき部分に突出部を有し、前記壁固定部材及び間隙被覆部材夫々の突出部の内、一方には、他方が嵌合される縦長のスリットが形成されており、該スリットが形成されている突出部を補強する補強部を備えることを特徴とする。
【0016】
第3発明に係るコーナー被覆具は、前記壁固定部材は、前記入隅の壁の形状に沿ってL字状に屈曲しており、L字の屈曲部内側に、前記スリットが形成されている突出部及び前記補強部が一体に形成されている入隅用屈曲板状部と、該入隅用屈曲板状部の縦方向一端部に一体に設けられ、2側面が前記壁の形状に対応する三角柱部と、該三角柱部の前記2側面以外の1側面から該1側面に対向する頂点に亘って貫通しており、釘又はビスが挿通される入隅用縦長孔とを有し、前記間隙被覆部材は、前記スリットと嵌合する突出部が一体に形成されていることを特徴とする。
【0017】
第4発明に係るコーナー被覆具は、前記壁固定部材は、前記出隅の壁の形状に沿ってL字状に屈曲しており、L字の屈曲部外側に、前記スリットが形成されている突出部及び前記補強部が一体に形成されている出隅用屈曲板状部と、該出隅用屈曲板状部の屈曲部を貫通しており、釘又はビスが挿通される出隅用縦長孔とを有し、前記間隙被覆部材は、前記スリットと嵌合する突出部が一体に形成されていることを特徴とする。
【0018】
第5発明に係るコーナー被覆具は、入隅又は出隅に取り付けられている2枚の板状の壁面造作材の間隙を被覆するコーナー被覆具において、前記間隙を被覆する被覆部と、前記壁面造作材の小口面の間に挿入され、弾性復元力によって固定される弾性部とを一体に備えることを特徴とする。
【0019】
第6発明に係るコーナー被覆具は、前記弾性部は、一方の壁面造作材に接する接触片と他方の壁面造作材に接する接触片とを有するV字状をなしていることを特徴とする。
【0020】
第7発明に係るコーナー構造は、入隅又は出隅に取り付けられている壁面造作材の間隙をコーナー被覆具が被覆しているコーナー構造において、前記コーナー被覆具は、第1発明乃至第6発明の何れか一つのコーナー被覆具であることを特徴とする。
【0021】
第1発明及び第7発明にあっては、壁固定部材と間隙被覆部材とを備える。即ち、コーナー被覆具が2個の部材で構成されている。
入隅又は出隅に取り付けられている2枚の板状の壁面造作材(具体的には幅木、見切り材又は回り縁)にコーナー被覆具を取り付ける作業者は、釘打ち、ビス留め等の任意の固定方法で壁固定部材を入隅又は出隅の壁に固定し、固定された壁固定部材に間隙被覆部材を取り付けて、この2枚の壁面造作材の間隙を被覆する。このような取付作業は簡易であり、しかも、コーナー被覆具の壁面造作材に対する両面テープによる接着、コーナー被覆具表面側からの釘打ち等が不要である。
【0022】
壁固定部材が直接的に壁に固定されるため、壁固定部材に取り付けられる間隙被覆部材は間接的に壁に固定される。つまり、コーナー被覆部は、入隅又は出隅に取り付けられている2枚の壁面造作材に対して間接的に取り付けられる。
たとえ壁面造作材が伸縮しても、壁面造作材に直接的に取り付けられていない壁固定部材及び間隙被覆部材夫々は、壁面造作材の伸縮によって発生した外力の悪影響を受けて破損することがない。
【0023】
第2発明にあっては、壁に固定されている壁固定部材の突出部に形成されているスリットに対し、間隙被覆部材の突出部を嵌め合わせるか、又は、壁に固定されている壁固定部材の突出部に対し、間隙被覆部材の突出部に形成されているスリットを嵌め合わせることによって、固定された壁固定部材に間隙被覆部材を取り付けて、この2枚の壁面造作材の間隙を被覆する。
【0024】
このスリットは縦長であるため、例えば丸穴に対して丸棒状の突出部を嵌合する場合と比べて、スリットに対して突出部を嵌め入れる位置、角度等の制限が緩い。即ち、このような取付作業は簡易であり、しかも、間隙被覆部材の壁固定部材に対する両面テープによる接着、間隙被覆部材表面側からの釘打ち等が不要である。また、スリットに突出部を嵌合した後で、又は嵌合作業の途中で、縦方向の取付位置の調整が可能である。
【0025】
壁固定部材及び間隙被覆部材夫々は、互いに対向すべき部分に突出部を有している。壁固定部材及び間隙被覆部材夫々の突出部の内、スリットが形成されている突出部は、スリットが形成されていない突出部よりも、不要な変形、損傷等が生じ易いため、少なくともスリットが形成されている突出部を有する部材には、この突出部を補強する補強部が備えられている。
【0026】
ここで、壁固定部材(又は間隙被覆部材)のスリットは、間隙被覆部材(又は壁固定部材)の突出部が嵌合固定されるために十分な深さを有する。
仮に、スリットが形成されている突出部を備えずに、壁固定部材(又は間隙被覆部材)に直にスリットを形成する場合、壁固定部材(又は間隙被覆部材)の厚みは、このスリットの深さよりも更に厚く形成されている必要があり、材料の無駄が生じ、また、壁固定部材(又は間隙被覆部材)が不要に固くなるため取り付けの際に不便である。
【0027】
第3発明にあっては、壁固定部材が、入隅用屈曲板状部と、三角柱部と、入隅用縦長孔とを備える。
入隅用屈曲板状部は、入隅の壁の形状に沿ってL字状に屈曲しており、三角柱部は、2側面が入隅の壁の形状に対応するため、入隅用屈曲板状部のL字の屈曲部外側と三角柱部のこの2側面とを入隅の壁に合わせることによって、壁固定部材の位置決めが容易となる。しかも、この屈曲部外側及び2側面と入隅の壁との間には、大きな空隙が生じないため、壁固定部材の安定性が向上する。
【0028】
三角柱部は、入隅用屈曲板状部の縦方向一端部に設けられている。
また、入隅用縦長孔は、三角柱部の入隅の壁の形状に対応する2側面以外の1側面から、この1側面に対向する頂点に亘って貫通しており、この入隅用縦長孔に釘又はビスが挿通されることによって、三角柱部、延いては壁固定部材が入隅の壁に強固に固定される。この1側面は、入隅に相対する作業者の略真正面に位置し、更に、入隅用縦長孔は、横長孔、丸孔等と比べて、釘又はビスを挿入する縦方向の位置、角度等の制限が緩い。つまり、三角柱部に形成されている入隅用縦長孔を用いての釘打ち作業又はビス留め作業は簡易である。
【0029】
仮に、入隅用縦長孔が入隅用屈曲板状部のL字の屈曲部に形成されている場合、入隅用屈曲板状部のL字の両端部が釘打ち作業又はビス留め作業を阻害する。一方、仮に、入隅用縦長孔が入隅用屈曲板状部のL字の一端部又は両端部に形成されている場合、入隅に相対する作業者が、斜め方向(壁に沿う方向)に釘打ち作業又はビス留め作業を行なう必要があり、作業性が悪化する。
また、仮に、三角柱部の代わりに平板状部を設けてある場合、平板状部と入隅の壁との間に大きな空隙が生じて壁固定部材の安定性が悪化する。更に、平板状部に形成されている入隅用縦長孔に挿通された釘又はネジが、この空隙にて露出する。つまり、三角柱部は、釘又はネジの補強部としての機能も有する。
【0030】
また、入隅用屈曲板状部のL字の屈曲部内側には、スリットが形成されている突出部及び補強部が一体に形成されており、更に、入隅用屈曲板状部の縦方向一端部には、三角柱部が形成されているため、壁固定部材は、例えば射出成型によって容易に形成される。
また、間隙被覆部材には、スリットと嵌合する突出部が一体に形成されているため、位置決めされて入隅の壁に固定された壁固定部材の突出部に形成されているスリットに対し、間隙被覆部材の突出部を嵌め合わせることによって、間隙被覆部材が容易に位置決めされて、壁固定部材に取り付けられる。
【0031】
第4発明にあっては、壁固定部材が、出隅用屈曲板状部と、出隅用縦長孔とを備える。
出隅用屈曲板状部は、出隅の壁の形状に沿ってL字状に屈曲しているため、出隅用屈曲板状部のL字の屈曲部内側を出隅の壁に合わせることによって、壁固定部材の位置決めが容易となる。しかも、この屈曲部内側と出隅の壁との間には、大きな空隙が生じないため、壁固定部材の安定性が向上する。
【0032】
また、出隅用縦長孔は、出隅用屈曲板状部のL字の屈曲部を貫通しており、この出隅用縦長孔に釘又はビスが挿通されることによって、壁固定部材が出隅の壁に強固に固定される。この屈曲部は、出隅に相対する作業者の略真正面に位置し、更に、出隅用縦長孔は、横長孔、丸孔等と比べて、釘又はビスを挿入する縦方向の位置、角度等の制限が緩い。つまり、出隅用屈曲板状部の屈曲部に形成されている出隅用縦長孔を用いての釘打ち作業又はビス留め作業は簡易である。
【0033】
更にまた、出隅用屈曲板状部のL字の屈曲部外側には、スリットが形成されている突出部及び補強部が一体に形成されているため、壁固定部材は、例えば射出成型によって容易に形成される。
また、間隙被覆部材には、スリットと嵌合する突出部が一体に形成されているため、位置決めされて出隅の壁に固定された壁固定部材の突出部に形成されているスリットに対し、間隙被覆部材の突出部を嵌め合わせることによって、間隙被覆部材が容易に位置決めされて、壁固定部材に取り付けられる。
【0034】
第5発明及び第7発明にあっては、被覆部と弾性部とを一体に備える。即ち、コーナー被覆具が1個の部材で構成されている。
入隅又は出隅に取り付けられている2枚の板状の壁面造作材(具体的には幅木、見切り材又は回り縁)にコーナー被覆具を取り付ける作業者は、この2枚の壁面造作材の小口面の間に弾性部を挿入し、この2枚の壁面造作材の間隙を被覆部で被覆する。このような取付作業は簡易である。しかも、コーナー被覆具の壁面造作材に対する両面テープによる接着、コーナー被覆具表面側からの釘打ち等が不要である。
【0035】
弾性部は、弾性復元力によって、2枚の壁面造作材の小口面の間で挟持されるため、弾性部と一体の被覆部も2枚の壁面造作材に対して固定される。つまり、コーナー被覆部は、入隅又は出隅に取り付けられている2枚の壁面造作材に対して確実に取り付けられる。
たとえ壁面造作材が伸縮しても、壁面造作材に直接的に取り付けられていない被覆部は、壁面造作材の伸縮によって発生した外力の悪影響を受けて破損することがない。また、小口面の間で挟持されている弾性部は、この外力に応じて自身が伸縮することによって、この外力の悪影響を受けて破損することがない。
【0036】
第6発明にあっては、弾性部がV字状をなしており、弾性部の一方の接触片が2枚の壁面造作材の一方の小口面に接し、弾性部の他方の接触片が2枚の壁面造作材の他方の小口面に接し、これら2個の接触片が撓んで互いに接離することによって、弾性体として機能する。
【発明の効果】
【0037】
第1発明のコーナー被覆具による場合、壁固定部材を入隅又は出隅の壁に固定し、壁固定部材に取り付けられた間隙被覆部材で、2枚の板状の壁面造作材の間隙を被覆するため、壁面造作材及び壁を加工することなく容易に取り付けることができる。
しかも、壁面造作材に対する両面テープによる接着が不要であるため、コーナー被覆具は脱落し難い。
更に、壁面造作材に対するコーナー被覆具表面側からの釘打ちが不要であるため、取り付けられたコーナー被覆具の美観を向上させることができる。
また、壁固定部材及び間隙被覆部材は、壁面造作材の伸縮によって発生した外力の悪影響をほとんど受けないため、加えられた外力に起因するコーナー被覆具の破損を抑制することができる。
【0038】
第2発明のコーナー被覆具による場合、壁固定部材及び間隙被覆部材の内、一方の突出部に形成されている縦長のスリットに対し、他方の突出部を嵌め合わせることによって間隙被覆部材を壁固定部材に取り付けるため、両面テープを用いた接着、釘打ち等を行なうことなく、縦方向の取付位置を調整しながら容易且つ正確に間隙被覆部材を壁固定部材に取り付けることができる。
また、スリットが形成されている突出部は補強されているため、この突出部の不要な変形、損傷等を抑制することができる。
【0039】
なお、例えばスリットの内面に対して、このスリットに嵌合する突出部を接着してもよい。突出部が接着された場合は、壁固定部材から間隙被覆部材を引き抜く方向に不要な外力が働いた場合でも、間隙被覆部材の脱落を抑制することができる。
【0040】
第3発明のコーナー被覆具による場合、スリットを有する突出部及び補強部が形成されている入隅用屈曲板状部と、入隅用縦長孔が形成されている三角柱部とを壁固定部材が備えているため、入隅の壁に対して壁固定部材を容易に位置決めして、強固に、且つ安定して固定することができる。
また、この壁固定部材に対して、間隙被覆部材を更に容易に取り付けることができる。
【0041】
第4発明のコーナー被覆具による場合、スリットを有する突出部及び補強部が形成されており、更に、出隅用縦長孔が形成されている出隅用屈曲板状部を壁固定部材が備えているため、出隅の壁に対して壁固定部材を容易に位置決めして、強固に、且つ安定して固定することができる。
また、この壁固定部材に対して、間隙被覆部材を更に容易に取り付けることができる。
【0042】
第5発明のコーナー被覆具による場合、弾性部を2枚の板状の壁面造作材の小口面の間に挿入し、2枚の壁面造作材の間隙を被覆部で被覆するため、壁面造作材及び壁を加工することなく容易に取り付けることができる。
しかも、両面テープによる接着が不要であるため、コーナー被覆具は脱落し難い。
更に、コーナー被覆具表面側からの釘打ちが不要であるため、取り付けられたコーナー被覆具の美観を向上させることができる。
【0043】
また、被覆部及び弾性部は、壁面造作材の伸縮によって発生した外力の悪影響をほとんど受けないため、加えられた外力に起因するコーナー被覆具の破損を抑制することができる。
なお、例えば壁面造作材の小口面に被覆部を接着してもよい。被覆部が接着された場合は、壁面造作材の小口面の間からコーナー被覆具を引き抜く方向に不要な外力が働いた場合でも、コーナー被覆具の脱落を抑制することができる。
【0044】
第6発明のコーナー被覆具による場合、弾性部が2個の接触片を有するV字状をなしているため、例えば2枚の壁面造作材の小口面の間を略完全に塞ぐような形状の弾性部に比べて、弾性部を形成する材料を減少させることができる。
また、各接触片は、小口面の間を略完全に塞ぐような形状の弾性部に比べて薄く形成することができるため、例えば合成樹脂のように、合成ゴムと比べて弾性は小さいが硬質な材料で形成しても、各接触片に可撓性を持たせることができる。この結果、弾性部に弾性を持たせつつ、コーナー被覆具の強度を向上させることができる。
【0045】
第7発明のコーナー構造による場合、本発明のコーナー被覆具を用いるため、コーナー構造の施工が容易であり、しかも、美観が向上されており、更に、コーナー被覆具の脱落及び破損が抑制されて、コーナー構造を長寿命にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
以下、本発明を、その実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
【0047】
実施の形態 1.
図1は、本発明の実施の形態1に係るコーナー被覆具が入隅の幅木の間隙を被覆しているコーナー構造の外観を示す斜視図であり、このコーナー被覆具が備える間隙被覆部材の正面側の構成を示す斜視図を含んでいる。
図2及び図3は、このコーナー被覆具が備える壁固定部材の正面側及び背面側の構成を夫々示す斜視図であり、図4は、このコーナー被覆具が備える間隙被覆部材の背面側の構成を示す斜視図である。
更に図5は、このコーナー構造の構成を示す横断面図である。
【0048】
本実施の形態においては、図1及び図5に示すように、室内の2面の壁W1,W2が略直交している入隅に取り付けられている2枚の壁面造作材である幅木B1,B2を例示する。幅木B1は板状の木質部材を用いてなり、床Fに沿って配され、壁W1に釘打ち、接着等で固定されており、幅木B1の小口面は壁W2に対面して離隔配置されている。幅木B1と同様に、幅木B2は壁W2に固定されており、幅木B2の小口面は壁W1に対面して離隔配置されている。
幅木B1,B2夫々の正面には、装飾用の溝D1,D2が横方向に形成してある。
【0049】
図中1はコーナー被覆具であり、コーナー被覆具1は、各合成樹脂製の2個の部材(具体的には壁固定部材11及び間隙被覆部材12)で構成されている。コーナー被覆具1は、壁固定部材11が壁W1,W2に固定され、間隙被覆部材12が壁固定部材11に取り付けられた状態で幅木B1,B2の間隙を被覆することによって、幅木B1,B2の間隙を被覆している。
【0050】
壁固定部材11は、例えば合成樹脂を用いた射出成型によって製造され、図2、図3及び図5に示すように、三角柱部114と入隅用屈曲板状部115とが一体に形成されている。
入隅用屈曲板状部115は、入隅の壁W1,W2の形状に沿って平面視L字状に屈曲しており、L字の屈曲部内側に、突出部111と、平面視三角形状の4枚の板状の補強部113,113,…とが一体に形成されている。
【0051】
突出部111は互いに対面して離隔配置されている各縦長の矩形板状の突出片11a,11bを有し、この突出片11a,11b間に、縦長のスリット112が形成されている。突出片11a,11bの縦長さは入隅用屈曲板状部115の縦長さに略等しく、スリット112には後述する突出部121が嵌合されるため、突出片11a,11bの離隔距離及び突出長さ、即ちスリット112の幅及び深さは、突出部121を嵌合するために必要な値に設計される。
【0052】
補強部113,113,…は、突出片11a,11b夫々の外面と入隅用屈曲板状部115の正面との間に、2枚の補強部113,113が縦方向に離隔配置されて一体に形成されることによって、突出片11a,11b夫々の不要な変形、損傷等を抑制している。この結果、補強部113,113,…は、スリット112が形成されているため変形、損傷等が生じ易い突出部111を補強している。
【0053】
三角柱部114は、2側面が入隅の壁W1,W2の形状に対応し、三角柱部114の一端部が、入隅用屈曲板状部115の縦方向一端部の屈曲部に一体に設けられている。
三角柱部114には、三角柱部114の入隅の壁W1,W2の形状に対応する2側面以外の1側面からこの1側面に対向する頂点に亘って貫通している入隅用縦長孔116が形成されている。入隅用縦長孔116には、図示しない釘(又はビス)が挿通される。
【0054】
間隙被覆部材12は、壁固定部材11を十分に覆い隠せる寸法及び形状を有し、例えば合成樹脂を用いた射出成型によって製造され、図1、図4及び図5に示すように、入隅用水平被覆部124と入隅用鉛直被覆部125とが一体に形成されている。
入隅用水平被覆部124は、入隅に取り付けられている2枚の幅木B1,B2の上端面の形状に対応し、L字状に連続的に形成されている。
【0055】
入隅用鉛直被覆部125は、入隅に取り付けられている2枚の幅木B1,B2の正面の形状に対応し、L字状に屈曲して連続的に形成されている。入隅用鉛直被覆部125の一端部には入隅用水平被覆部124が形成してあり、入隅用鉛直被覆部125の屈曲部外側には、縦長の矩形板状の突出部121と、平面視三角形状の4枚の板状の補強部123,123,…とが一体に形成されている。
【0056】
突出部121は、スリット112に嵌合されるために、壁固定部材11の突出部111に対向すべき部分に配されている。このため、突出部121の縦長さはスリット112の縦長さに略等しく、突出部121の厚みは、スリット112の幅と比べて略等しいか、僅かに長い。また、突出部121は、入隅用鉛直被覆部125の入隅用水平被覆部124形成側端部とは逆側の端部から、縦方向中央部に亘って形成されている。
【0057】
補強部123,123,…は、突出部121の各側面と入隅用鉛直被覆部125の背面との間に、2枚の補強部123,123が縦方向に離隔配置されて一体に形成されることによって、突出部121の不要な変形、損傷等を抑制している。
入隅用鉛直被覆部125の正面には、幅木B1,B2夫々の装飾用の溝D1,D2に対応する装飾用の溝12aが横方向に形成されている。このため、入隅用鉛直被覆部125の背面には、溝D1,D2に嵌入する凸条部12bが突設されている。この凸条部12bは、突出部121と入隅用水平被覆部124との間に配されている。
【0058】
次に、図1〜図5を参照して、入隅に取り付けられている2枚の幅木B1,B2に対してコーナー被覆具1を取り付ける手順を説明する。
コーナー被覆具1を取り付ける作業者は、まず、壁固定部材11を、入隅用屈曲板状部115を下側、三角柱部114を上側にして、入隅の壁W1,W2に相対し、次に、壁固定部材11の背面、即ち入隅用屈曲板状部115の背面(つまりL字の屈曲部の外側)と三角柱部114の前記2側面とを壁W1,W2に沿わせつつ入隅用屈曲板状部115の縦方向一端部(この場合は下端部)を床Fに当接させる。
【0059】
このように、入隅用屈曲板状部115と三角柱部114とを入隅の壁W1,W2及び床Fに合わせることによって、壁固定部材11の位置決めが容易となる。しかも、入隅用屈曲板状部115及び三角柱部114夫々と入隅の壁W1,W2との間に大きな空隙が生じないため、壁固定部材11の安定性が向上する。このとき、入隅用縦長孔116は作業者の略真正面に位置する。
【0060】
以上のようにして壁固定部材11を位置決めしてから、作業者は、三角柱部114の入隅用縦長孔116に図示しない釘を挿通させて、三角柱部114、延いては壁固定部材11を壁W1,W2に釘打ち固定する。ここで、入隅用縦長孔116は、釘を挿入する縦方向の位置、角度等の制限が緩い。しかも、壁固定部材11は、入隅用縦長孔116の両側部に、作業者の手、工具等を阻害するような部分(例えば入隅用屈曲板状部115のL字の両側部のような部分)が存在しない。このため、釘打ち作業は簡易である。
【0061】
次いで、作業者は、間隙被覆部材12を、入隅用水平被覆部124を上側、入隅用鉛直被覆部125を下側にし、更に、間隙被覆部材12の突出部121を、壁固定部材11のスリット112に上方から挿入する。このことによって、突出部121はスリット112に嵌合され、延いては、間隙被覆部材12が壁固定部材11に固定される。また、間隙被覆部材12を壁固定部材11に固定するときに、間隙被覆部材12の正面の溝12aを幅木B1,B2の溝D1,D2に合わせるべく、間隙被覆部材12の背面の凸条部12bを溝D1,D2に嵌合する。このとき、入隅用水平被覆部124は幅木B1,B2の上端面同士の間隙を被覆し、入隅用鉛直被覆部125は幅木B1,B2の正面同士の間隙を被覆して、壁固定部材11は間隙被覆部材12によって覆い隠される。
【0062】
スリット112は縦長であるため、スリット112に対して突出部121を嵌め入れる位置、角度等の制限が緩い。即ち、このような取付作業は簡易である。
また、スリット112に突出部121を嵌合しながら、間隙被覆部材12の縦方向の取付位置の調整が可能であるため、特に、溝12aと溝D1,D2とが合わせ易い。
【0063】
以上のようなコーナー被覆具1は、間隙被覆部材12によって隠されるため使用者から見えない壁固定部材11を壁W1,W2に直接的に釘打ち固定し、使用者から見える間隙被覆部材12を、釘打ち、ネジ留め等によらず、壁固定部材11に対して嵌合固定することによって間接的に壁W1,W2に固定する。このため、コーナー被覆具1は、幅木B1,B2の間隙を確実に被覆しつつ、自身の美観、延いてはコーナー構造の美観を向上し、更に、幅木B1,B2及び/又は壁W1,W2の加工を必要とせず、取付作業が簡易である。
【0064】
また、コーナー被覆具1は、幅木B1,B2に対する接着、釘打ち、ビス留め等が不要であるため、たとえ幅木B1,B2が伸縮しても、コーナー被覆具1の壁固定部材11及び間隙被覆部材12夫々が、幅木B1,B2の伸縮によって発生した外力の悪影響を受けて脱落、破損等を生じることがない。
【0065】
図6は、本発明の実施の形態1に係るコーナー被覆具が入隅の回り縁の間隙を被覆しているコーナー構造の外観を示す斜視図である。
ここでは、室内の2面の壁W1,W2が略直交している入隅に取り付けられている2枚の壁面造作材である回り縁E1,E2を例示する。回り縁E1は板状の木質部材を用いてなり、天井Cに沿って配され、壁W1に釘打ち、接着等で固定されている。回り縁E1と同様に、回り縁E2は壁W2に固定されている。回り縁E1,E2の寸法、配置等は、幅木B1,B2の寸法、配置等に対応している。
【0066】
図中1はコーナー被覆具であり、コーナー被覆具1は、図1に示した状態とは天地を逆転させた状態で、回り縁E1,E2の間隙を被覆している。つまり、幅木B1,B2と回り縁E1,E2とでコーナー被覆具1が共通化されている。
回り縁E1,E2の間隙を被覆すべくコーナー被覆具1を壁W1,W2に取り付ける場合、作業者は、入隅用屈曲板状部115を上側、三角柱部114を下側にして、入隅用縦長孔116を利用し壁固定部材11を壁W1,W2に釘打ち固定する。
【0067】
次いで、作業者は、間隙被覆部材12を、入隅用水平被覆部124を下側、入隅用鉛直被覆部125を上側にし、更に、間隙被覆部材12の突出部121を、壁固定部材11のスリット112に下方から挿入する。このことによって、突出部121はスリット112に嵌合され、延いては、間隙被覆部材12が壁固定部材11に固定される。
【0068】
なお、本実施の形態のコーナー被覆具1は、幅木B1,B2の間隙を被覆する場合と同様にして、入隅に取り付けられている2枚の壁面造作材である見切り材の間隙を被覆することが可能である。ただし、この見切り材は、使用者の目線より低い位置に配されている。使用者の目線より高い位置に配されている2枚の見切り材の間隙を被覆する場合、コーナー被覆具1は、回り縁E1,E2の間隙を被覆する場合と同様にして壁W1,W2に取り付けられる。
【0069】
実施の形態 2.
図7は、本発明の実施の形態2に係るコーナー被覆具が出隅の幅木の間隙を被覆しているコーナー構造の外観を示す斜視図であり、このコーナー被覆具が備える間隙被覆部材の正面側の構成を示す斜視図を含んでいる。
図8及び図9は、このコーナー被覆具が備える壁固定部材の正面側及び背面側の構成を夫々示す斜視図であり、図10は、このコーナー被覆具が備える間隙被覆部材の背面側の構成を示す斜視図である。
更に図11は、このコーナー構造の構成を示す横断面図である。
【0070】
本実施の形態においては、図7及び図11に示すように、室内の2面の壁W3,W4が略直交している出隅に取り付けられている2枚の幅木B3,B4を例示する。幅木B3は板状の木質部材を用いてなり、床Fに沿って配され、壁W3に釘打ち、接着等で固定されており、幅木B3の小口面は壁W4に対面して離隔配置されている。幅木B3と同様に、幅木B4は壁W4に固定されており、幅木B4の小口面は壁W3に対面して離隔配置されている。
幅木B3,B4夫々の正面には、装飾用の溝D3,D4が横方向に形成してある。
【0071】
図中2はコーナー被覆具であり、コーナー被覆具2は、各合成樹脂製の2個の部材(具体的には壁固定部材21及び間隙被覆部材22)で構成されている。コーナー被覆具2は、壁固定部材21が壁W3,W4に固定され、間隙被覆部材22が壁固定部材21に取り付けられた状態で幅木B3,B4の間隙を被覆することによって、幅木B3,B4の間隙を被覆している。
【0072】
壁固定部材21は、例えば合成樹脂を用いた射出成型によって製造され、図8、図9及び図11に示すように、出隅用屈曲板状部214を有する。
出隅用屈曲板状部214は、出隅の壁W3,W4の形状に沿って平面視L字状に屈曲しており、出隅用屈曲板状部214のL字の屈曲部を貫通して、出隅用縦長孔216が形成されている。出隅用縦長孔216には、図示しない釘(又はビス)が挿通される。また、出隅用屈曲板状部214は、L字の屈曲部外側に、突出部211と、平面視三角形状の4枚の板状の補強部213,213,…とが一体に形成されている。
【0073】
ここで、突出部211は出隅用屈曲板状部214の縦方向中央部から一側部に亘って形成され、出隅用縦長孔216は、突出部211と他側部との間に形成されている。
突出部211は互いに対面して離隔配置されている各縦長の矩形板状の突出片21a,21bを有し、この突出片21a,21b間に、縦長のスリット212が形成されている。スリット212には、後述する突出部221が嵌合されるため、突出片21a,21bの離隔距離及び突出長さ、即ちスリット212の幅及び深さは、突出部221を嵌合するために必要な値に設計される。
【0074】
補強部213,213,…は、突出片21a,21b夫々の外面と出隅用屈曲板状部214の背面との間に、2枚の補強部213,213が縦方向に離隔配置されて一体に形成されることによって、突出片21a,21b夫々の不要な変形、損傷等を抑制している。この結果、補強部213,213,…は、スリット212が形成されているため変形、損傷等が生じ易い突出部211を補強している。
【0075】
間隙被覆部材22は、壁固定部材21を十分に覆い隠せる寸法及び形状を有し、例えば合成樹脂を用いた射出成型によって製造され、図7、図10及び図11に示すように、出隅用水平被覆部224と出隅用鉛直被覆部225とが一体に形成されている。
出隅用水平被覆部224は、出隅に取り付けられている2枚の幅木B3,B4の上端面の形状に対応し、L字状に連続的に形成されている。
【0076】
出隅用鉛直被覆部225は、出隅に取り付けられている2枚の幅木B3,B4の正面の形状に対応し、L字状に屈曲して連続的に形成されている。出隅用鉛直被覆部225の一端部には出隅用水平被覆部224が形成してあり、出隅用鉛直被覆部225の屈曲部内側には、縦長の矩形板状の突出部221と、平面視三角形状の4枚の板状の補強部223,223,…とが一体に形成されている。
【0077】
突出部221は、スリット212に嵌合されるために、壁固定部材21の突出部112に対向すべき部分に配されている。このため、突出部221の縦長さはスリット212の縦長さに略等しく、突出部221の厚みは、スリット212の幅と比べて略等しいか、僅かに長い。また、突出部221は、出隅用鉛直被覆部225の出隅用水平被覆部224形成側端部とは逆側の端部から、縦方向中央部に亘って形成されている。
【0078】
補強部223,223,…は、突出部221の各側面と出隅用鉛直被覆部225の背面との間に、2枚の補強部223,223が縦方向に離隔配置されて一体に形成されることによって、突出部221の不要な変形、損傷等を抑制している。
出隅用鉛直被覆部225の正面には、幅木B3,B4夫々の装飾用の溝D3,D4に対応する装飾用の溝22aが横方向に形成されている。このため、出隅用鉛直被覆部225の背面には、溝D3,D4に嵌入する凸条部22bが突設されている。この凸条部22bは、突出部221と出隅用水平被覆部224との間に配されている。
【0079】
次に、図7〜図11を参照して、出隅に取り付けられている2枚の幅木B3,B4に対してコーナー被覆具2を取り付ける手順を説明する。
コーナー被覆具2を取り付ける作業者は、まず、壁固定部材21を、スリット212形成側を下側、出隅用縦長孔216形成側を上側にして、出隅の壁W3,W4に相対し、次に、壁固定部材21の背面、即ち出隅用屈曲板状部214の背面(つまりL字の屈曲部の内側)を壁W3,W4に沿わせつつ出隅用屈曲板状部214の縦方向一端部(この場合は下端部)を床Fに当接させる。
【0080】
このように、出隅用屈曲板状部214を出隅の壁W3,W4及び床Fに合わせることによって、壁固定部材21の位置決めが容易となる。しかも、出隅用屈曲板状部214と出隅の壁W3,W4との間に大きな空隙が生じないため、壁固定部材21の安定性が向上する。このとき、出隅用縦長孔216は作業者の略真正面に位置する。
以上のようにして壁固定部材21を位置決めしてから、作業者は、出隅用縦長孔216に図示しない釘を挿通させて、壁固定部材21を壁W3,W4に釘打ち固定する。ここで、出隅用縦長孔216は、釘を挿入する縦方向の位置、角度等の制限が緩い。このため、釘打ち作業は簡易である。
【0081】
次いで、作業者は、間隙被覆部材22を、出隅用水平被覆部224を上側、出隅用鉛直被覆部225を下側にし、更に、間隙被覆部材22の突出部221を、壁固定部材21のスリット212に上方から挿入する。このことによって、突出部221はスリット212に嵌合され、延いては、間隙被覆部材22が壁固定部材21に固定される。また、間隙被覆部材22を壁固定部材21に固定するときに、間隙被覆部材22の正面の溝22aを幅木B3,B4の溝D3,D4に合わせるべく、間隙被覆部材22の背面の凸条部22bを溝D3,D4に嵌合する。このとき、出隅用水平被覆部224は幅木B3,B4の上端面同士の間隙を被覆し、出隅用鉛直被覆部225は幅木B3,B4の正面同士の間隙を被覆して、壁固定部材21は間隙被覆部材22によって覆い隠される。
【0082】
スリット212は縦長であるため、スリット212に対して突出部221を嵌め入れる位置、角度等の制限が緩い。即ち、このような取付作業は簡易である。
また、スリット212に突出部221を嵌合しながら、間隙被覆部材22の縦方向の取付位置の調整が可能であるため、特に、溝22aと溝D3,D4とが合わせ易い。
その他、実施の形態1に対応する部分には同一符号を付してそれらの説明を省略する。
【0083】
以上のようなコーナー被覆具2は、間隙被覆部材22によって隠されるため使用者から見えない壁固定部材21を壁W3,W4に直接的に釘打ち固定し、使用者から見える間隙被覆部材22を、釘打ち、ネジ留め等によらず、壁固定部材21に対して嵌合固定することによって間接的に壁W3,W4に固定する。このため、コーナー被覆具2は、幅木B3,B4の間隙を確実に被覆しつつ、自身の美観、延いてはコーナー構造の美観を向上し、更に、幅木B3,B4及び/又は壁W3,W4の加工を必要とせず、取付作業が簡易である。
【0084】
また、コーナー被覆具2は、幅木B3,B4に対する接着、釘打ち、ビス留め等が不要であるため、たとえ幅木B3,B4が伸縮しても、コーナー被覆具2の壁固定部材21及び間隙被覆部材22夫々が、幅木B3,B4の伸縮によって発生した外力の悪影響を受けて脱落、破損等を生じることがない。
【0085】
図12は、本発明の実施の形態2に係るコーナー被覆具が出隅の回り縁の間隙を被覆しているコーナー構造の外観を示す斜視図である。
ここでは、室内の2面の壁W3,W4が略直交している出隅に取り付けられている2枚の回り縁E3,E4を例示する。回り縁E3は板状の木質部材を用いてなり、天井Cに沿って配され、壁W3に釘打ち、接着等で固定されている。回り縁E3と同様に、回り縁E4は壁W4に固定されている。回り縁E3,E4の寸法、配置等は、幅木B3,B4の寸法、配置等に対応している。
【0086】
図中2はコーナー被覆具であり、コーナー被覆具2は、図7に示した状態とは天地を逆転させた状態で、回り縁E3,E4の間隙を被覆している。つまり、幅木B3,B4と回り縁E3,E4とでコーナー被覆具2が共通化されている。
回り縁E3,E4の間隙を被覆すべくコーナー被覆具2を壁W3,W4に取り付ける場合、作業者は、スリット212形成側を上側、出隅用縦長孔216形成側を下側にして、出隅用縦長孔216を利用し壁固定部材21を壁W3,W4に釘打ち固定する。
【0087】
次いで、作業者は、間隙被覆部材22を、出隅用水平被覆部224を下側、出隅用鉛直被覆部225を上側にし、更に、間隙被覆部材22の突出部221を、壁固定部材21のスリット212に下方から挿入する。このことによって、突出部221はスリット212に嵌合され、延いては、間隙被覆部材22が壁固定部材21に固定される。
【0088】
なお、本実施の形態のコーナー被覆具2は、幅木B3,B4の間隙を被覆する場合と同様にして、出隅に取り付けられている2枚の見切り材の間隙を被覆することが可能である。ただし、この見切り材は、使用者の目線より低い位置に配されている。使用者の目線より高い位置に配されている2枚の見切り材の間隙を被覆する場合、コーナー被覆具2は、回り縁E3,E4の間隙を被覆する場合と同様にして壁W3,W4に取り付けられる。
【0089】
実施の形態 3.
図13は、本発明の実施の形態3に係るコーナー被覆具が出隅の幅木の間隙を被覆しているコーナー構造の外観を示す斜視図であり、このコーナー被覆具の正面側の構成を示す斜視図を含んでいる。また、図14は、このコーナー被覆具の背面側の構成を示す斜視図である。
更に、図15は、このコーナー被覆具が、幅木が収縮して間隙が拡大してもこの間隙を被覆し続けることを説明する平面図である。
【0090】
本実施の形態においては、図13及び図15に示すように、室内の2面の壁W3,W4が略直交している出隅に取り付けられている2枚の幅木B5,B6を例示する。幅木B5,B6は実施の形態2の幅木B3,B4と略同様であるが、装飾用の溝が形成されていない。
【0091】
図中3はコーナー被覆具であり、コーナー被覆具3は、例えば合成樹脂を用いた射出成型によって製造された1個の部材で構成されており、出隅に取り付けられている2枚の幅木B5,B6の間隙を被覆する。図13〜図15に示すように、コーナー被覆具3は、被覆部31と弾性部32とを一体に備え、壁W3,W4に取り付けられている幅木B5,B6の小口面の間に弾性部32が挿入され、弾性復元力によって固定された状態で、被覆部31が幅木B5,B6の間隙を被覆している。
【0092】
被覆部31は、水平被覆部311と鉛直被覆部312とが一体に形成されている。水平被覆部311は、出隅に取り付けられている2枚の幅木B5,B6の上端面の形状に対応し、L字状に連続的に形成されている。鉛直被覆部312は、出隅に取り付けられている2枚の幅木B5,B6の正面の形状に対応し、L字状に屈曲して連続的に形成されている。また、鉛直被覆部312の縦方向一端部に、水平被覆部311が形成されている。
弾性部32は、鉛直被覆部312の屈曲部内側に突設されており、幅木B5の小口面に接する縦長板状の接触片32aと幅木B6の小口面に接する縦長板状の接触片32bとを有するV字状をなしている。
【0093】
接触片32a,32bは、接触片32a,32b同士が離隔している(即ち接触片32a,32bが開いている)状態が安定した形状であり、接触片32a,32b夫々を撓ませて接触片32a,32b同士を接触させる(即ち接触片32a,32bを閉じる)ことによって、接触片32a,32bの互いに離隔する方向(即ち開放方向)への弾性復元力が生じる。
【0094】
次に、出隅に取り付けられている2枚の幅木B5,B6に対してコーナー被覆具3を取り付ける手順を説明する。
コーナー被覆具3を取り付ける作業者は、まず、水平被覆部311を上側、鉛直被覆部312を下側にした被覆部31を手前側にし、弾性部32を奥側にして、出隅の壁W3,W4に相対する。
【0095】
次に、作業者は、図15(a)に示すように、接触片32a,32bを閉じた状態で、弾性部32を幅木B5,B6の小口面同士の間隙に挿入する。更に、水平被覆部311で幅木B5,B6の上面を覆い、鉛直被覆部312の縦方向一端部(この場合は下端部)を床Fに当接させることによって、コーナー被覆具3が幅木B5,B6の間隙を覆う。このとき、弾性部32が幅木B5,B6の小口面間で固定されるため、コーナー被覆具3は幅木B5,B6に対して固定される。
【0096】
ここで、図15(b)に示すように、幅木B5と幅木B6とが例えば湿度の変化によって収縮を生じて、壁W3,W4に沿い、図中矢符方向に互いに離隔した場合、弾性復元力によって、夫々が幅木B5,B6に接触したまま接触片32a,32bが開く。このとき、弾性部32が幅木B5,B6の小口面間で固定され続けため、コーナー被覆具3は幅木B5,B6に対して固定され続け、脱落することはない。
また、幅木B5,B6の伸縮によって発生した外力は、接触片32a,32bの開閉によって、コーナー被覆具3に対し直接的な悪影響を及ぼさないため、この外力を受けたコーナー被覆具3が破損することはない。
【0097】
その他、実施の形態1,2に対応する部分には同一符号を付してそれらの説明を省略する。
【0098】
以上のようなコーナー被覆具3は、幅木B5,B6の小口面同士の間に弾性部32を挿入し、幅木B5,B6の間隙を被覆部31で被覆することによって、釘打ち、ネジ留め等によらずに幅木B5,B6に固定される。このため、コーナー被覆具3は、幅木B5,B6の間隙を確実に被覆しつつ、自身の美観、延いてはコーナー構造の美観を向上し、更に、幅木B5,B6及び/又は壁W3,W4の加工を必要とせず、取付作業が簡易である。
また、コーナー被覆具3は、幅木B5,B6に対する接着が不要であるため、幅木B3,B4の伸縮によって発生した外力の悪影響を受けて脱落を生じることがない。
【0099】
なお、弾性部32の形状はV字状に限定されるものではない。また、コーナー被覆具3を合成ゴムで形成し、鉛直被覆部312の背面に、幅木B5,B6の小口面同士の離隔距離よりも大きな寸法を有する筒状の弾性部を突設してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本発明の実施の形態1に係るコーナー被覆具が入隅の幅木の間隙を被覆しているコーナー構造の外観を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係るコーナー被覆具が備える壁固定部材の正面側の構成を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係るコーナー被覆具が備える壁固定部材の背面側の構成を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係るコーナー被覆具が備える間隙被覆部材の背面側の構成を示す斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係るコーナー被覆具を備えるコーナー構造の構成を示す横断面図である。
【図6】本発明の実施の形態1に係るコーナー被覆具が入隅の回り縁の間隙を被覆しているコーナー構造の外観を示す斜視図である。
【図7】本発明の実施の形態2に係るコーナー被覆具が出隅の幅木の間隙を被覆しているコーナー構造の外観を示す斜視図である。
【図8】本発明の実施の形態2に係るコーナー被覆具が備える壁固定部材の正面側の構成を示す斜視図である。
【図9】本発明の実施の形態2に係るコーナー被覆具が備える壁固定部材の背面側の構成を示す斜視図である。
【図10】本発明の実施の形態2に係るコーナー被覆具が備える間隙被覆部材の背面側の構成を示す斜視図である。
【図11】本発明の実施の形態2に係るコーナー被覆具を備えるコーナー構造の構成を示す横断面図である。
【図12】本発明の実施の形態2に係るコーナー被覆具が出隅の回り縁の間隙を被覆しているコーナー構造の外観を示す斜視図である。
【図13】本発明の実施の形態3に係るコーナー被覆具が出隅の幅木の間隙を被覆しているコーナー構造の外観を示す斜視図である。
【図14】本発明の実施の形態3に係るコーナー被覆具の背面側の構成を示す斜視図である。
【図15】本発明の実施の形態3に係るコーナー被覆具が、幅木が収縮して間隙が拡大してもこの間隙を被覆し続けることを説明する平面図である。
【符号の説明】
【0101】
1,2,3 コーナー被覆具
11,21 壁固定部材
111,121,211,221 突出部
112,212 スリット
113,123,213,223 補強部
12,22 間隙被覆部材
114 三角柱部
115 入隅用屈曲板状部
116 入隅用縦長孔
214 出隅用屈曲板状部
216 出隅用縦長孔
31 被覆部
32 弾性部
32a,32b 接触片
B1,B2,B3,B4 幅木(壁面造作材)
E1,E2,E3,E4 回り縁(壁面造作材)
W1,W2,W3,W4 壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入隅又は出隅に取り付けられている2枚の板状の壁面造作材の間隙を被覆するコーナー被覆具において、
前記入隅又は出隅の壁に固定される壁固定部材と、
該壁固定部材に取り付けられ、前記間隙を被覆する間隙被覆部材と
を備えることを特徴とするコーナー被覆具。
【請求項2】
前記壁固定部材及び間隙被覆部材夫々は、互いに対向すべき部分に突出部を有し、
前記壁固定部材及び間隙被覆部材夫々の突出部の内、一方には、他方が嵌合される縦長のスリットが形成されており、
該スリットが形成されている突出部を補強する補強部を備えることを特徴とする請求項1に記載のコーナー被覆具。
【請求項3】
前記壁固定部材は、
前記入隅の壁の形状に沿ってL字状に屈曲しており、L字の屈曲部内側に、前記スリットが形成されている突出部及び前記補強部が一体に形成されている入隅用屈曲板状部と、
該入隅用屈曲板状部の縦方向一端部に一体に設けられ、2側面が前記壁の形状に対応する三角柱部と、
該三角柱部の前記2側面以外の1側面から該1側面に対向する頂点に亘って貫通しており、釘又はビスが挿通される入隅用縦長孔と
を有し、
前記間隙被覆部材は、前記スリットと嵌合する突出部が一体に形成されていることを特徴とする請求項2に記載のコーナー被覆具。
【請求項4】
前記壁固定部材は、
前記出隅の壁の形状に沿ってL字状に屈曲しており、L字の屈曲部外側に、前記スリットが形成されている突出部及び前記補強部が一体に形成されている出隅用屈曲板状部と、
該出隅用屈曲板状部の屈曲部を貫通しており、釘又はビスが挿通される出隅用縦長孔と
を有し、
前記間隙被覆部材は、前記スリットと嵌合する突出部が一体に形成されていることを特徴とする請求項2に記載のコーナー被覆具。
【請求項5】
入隅又は出隅に取り付けられている2枚の板状の壁面造作材の間隙を被覆するコーナー被覆具において、
前記間隙を被覆する被覆部と、
前記壁面造作材の小口面の間に挿入され、弾性復元力によって固定される弾性部と
を一体に備えることを特徴とするコーナー被覆具。
【請求項6】
前記弾性部は、一方の壁面造作材に接する接触片と他方の壁面造作材に接する接触片とを有するV字状をなしていることを特徴とする請求項5に記載のコーナー被覆具。
【請求項7】
入隅又は出隅に取り付けられている壁面造作材の間隙をコーナー被覆具が被覆しているコーナー構造において、
前記コーナー被覆具は、請求項1乃至6の何れか一項に記載のコーナー被覆具であることを特徴とするコーナー構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−240468(P2008−240468A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−85581(P2007−85581)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(000000413)永大産業株式会社 (243)