説明

コーヒーから誘導される界面活性剤

【課題】コーヒー製品と一緒の使用またはコーヒー製品中に導入されるコーヒーオイルの乳化物の製造において特に有用な界面活性剤、R&Gコーヒーと同等の強い風味および香りを維持した可溶性コーヒーを製造するためのより効率的な改善された方法、および、高い濃度のコーヒーオイルを含有し、調製の際に際に目に見える「油膜」を形成しない改善された可溶性コーヒーの提供。
【解決手段】アルカリ性エステル交換触媒を用いるコーヒー材料と糖のエステル交換生成物を含むことを特徴とするコーヒーから誘導される界面活性剤。アルカリ性エステル交換触媒および糖をコーヒー材料から誘導することによって、コーヒーに由来する材料のみから誘導される界面活性剤を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーヒーから誘導される界面活性剤に関する。より詳細には、本発明は、糖およびコーヒーオイルのエステル交換により調製される、コーヒーから誘導される界面活性剤に関する。コーヒーから誘導される界面活性剤は、コーヒー製品とともに使用されるまたはコーヒー製品中に導入されるコーヒーオイル乳化物の製造において特に有用である。
【背景技術】
【0002】
インスタントコーヒーとも呼ばれる可溶性コーヒーは、より伝統的な焙煎および粉砕されたコーヒー(R&G)の便利な代替物である。しかしながら、多くの場合、インスタントコーヒーは、R&Gの強い風味を迅速な調製の便利さと引き替えにしている。可溶性コーヒーは、典型的には、焙煎および粉砕(R&G)されたコーヒーの抽出および熱加水分解、引き続く分離および抽出物の乾燥によって作製される。多くの場合、可溶性コーヒーは、高度の加工およびそれに付随する損失によって、アンバランスな風味および香りを有する。そのような加工において用いられる高温および高圧は、多くの場合、伝統的R&Gコーヒーに比較してより品質の劣る製品を製造する。
【0003】
可溶性コーヒーの劣悪な特性は、長年の問題点である。特許文献1は、加水分解されたコーヒーオイルおよびコーヒーの香りを含有する乳化物予備濃縮物を提供する(特許文献1参照)。コーヒーオイルは、たとえば、脂肪および油脂において慣用のけん化工程を用いるアルカリ性加水分解を用いて、加水分解される。加水分解された油分は一般的に約300℃よりも高い融点を有する。適切なコーヒーの香りを添加した後に、可溶性コーヒーの粒子(たとえば、インスタントコーヒー)に対して、乳化物予備濃縮物を添加する。ひとたびコーヒー飲料が調製されたならば、「特に、加水分解された油分が高濃度のグリセリドを含有する場合または可溶性コーヒー製品が未加水分解の油分を含有する場合、少量の油分がその表面にあらわれる。しかしながら、表面上の油分の量は充分に許容可能な範囲内であり;たとえば、焙煎および粉砕されたコーヒーの表面にあらわれるものと同等またはそれ以下である。」
【0004】
特許文献2は、カフェイン抽出プロセス中に生のコーヒーをスクロースと接触させることによって、カフェイン抜きコーヒーの風味および香りを改善する方法を提供する(特許文献2参照)。スクロースは、カフェイン抽出中に除去または分解される天然のスクロースを補うものであると報告されている。
【0005】
特許文献3は、コーヒー豆を処理して風味および香りを改善する方法を提供する(特許文献3参照)。この方法の1つの工程は、約4℃から約177℃の温度におけるアルカリ性溶液による部分的に焙煎したコーヒー豆の処理を伴う。該溶液に対して、糖を添加することができる。
【0006】
特許文献4は、コーヒーおよび他の飲料に対して添加することができる、いわゆる溶解剤を提供する(特許文献4参照)。溶解剤は、好ましくは、レシチン、プロピレングリコール、エトキシ化されたモノグリセリドおよびジグリセリドおよびスクロース脂肪酸エステルを含み、マルトデキストリンおよび水と組み合わせられて結合剤溶液を作製する。溶解剤は、通常、約0.2%から約0.33%までの濃度において飲料製品に添加される。
【0007】
【特許文献1】米国特許第5576044号明細書
【特許文献2】米国特許第4044162号明細書
【特許文献3】米国特許第4857351号明細書
【特許文献4】米国特許第6291006号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
R&Gコーヒーと同等の強い風味および香りを維持した可溶性コーヒーを製造するための改善され、かつより効率的な方法を提供する必要が依然として存在する。また、高い濃度のコーヒーオイルを含有し、調製される際に目に見える「油膜」を形成しない改善された可溶性コーヒーを提供する必要が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、コーヒーから誘導される界面活性剤に関する。より詳細には、本発明は、糖およびコーヒーオイルのエステル交換により調製される、コーヒーから誘導される界面活性剤に関する。コーヒーから誘導される界面活性剤は、コーヒー製品とともに使用されるまたはコーヒー製品中に導入されるコーヒーオイルの乳化物の製造において特に有用である。
【0010】
特に好ましい実施形態において、本発明は、コーヒー材料から製造される効率の高い界面活性剤に関し、該界面活性剤は、コーヒー製品(たとえば、インスタントコーヒー)中の乳化物および泡の配合を容易とし、かつ、いわゆる「油膜」の形成を削減しつつ、コーヒー製品中へのコーヒーオイルの組み込みを増大させる。コーヒーから誘導される乳化剤は、コーヒー材料(特に、コーヒーオイル)および糖(たとえば、スクロース)から、糖エステルを形成するエステル交換反応を用いて調製される。1つの実施形態において、コーヒーオイル、非還元糖(たとえば、スクロース)、およびアルカリ性触媒(たとえば、炭酸カリウム)を反応させて、一連の糖モノエステル類を提供する。エステル交換反応の前に還元性基が保護されている限り(たとえば、還元性基のアルキル化による、実施例7参照)において、本発明において、還元性基を有する糖(たとえば、マンノース)を用いることができる。本発明の目的において、「糖」なる用語は、非還元糖および還元糖の両方を含むことを意図する。しかしながら、言及したように、還元糖は、エステル交換反応の前に還元性基を保護することによってあらかじめ修飾されるべきである。
【0011】
一般的に、コーヒーから誘導される界面活性剤を調製するのに用いられる原料は、それら自身がコーヒー材料から誘導されることが好ましい。したがって、たとえば、エステル交換反応に用いられるスクロースは、コーヒー材料から得る(たとえば、生のコーヒーから抽出される)ことができる。生のコーヒーまたは他のコーヒー材料を灰化および水和して、アルカリ性触媒(たとえば、炭酸カリウム)の代りに用いることができるアルカリ性残渣を提供することができる。
【0012】
本発明のコーヒーから誘導される界面活性剤は、インスタント型コーヒー中の高濃度のコーヒーオイルの組み込みを可能とし、および改善された品質、原料費の削減およびインスタント型コーヒーにおける「油膜」の形成の削減を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、コーヒー材料と糖のアルカリに触媒されるエステル交換反応によって、コーヒーから誘導される界面活性剤を提供する。得られるコーヒーから誘導される界面活性剤は、コーヒー飲料(特に可溶性コーヒー飲料)の調製において用いることができるコーヒーオイルの乳化物の調製において特に有用である。インスタント型コーヒーにおいて、得られるコーヒーオイルの乳化物は、コーヒーオイルを添加する他の手段と比較して、油膜を形成しにくい。本発明のコーヒーから誘導される界面活性剤を用いてインスタントコーヒー製品中により多くのコーヒーオイルを組み込むことは、所望されるR&Gコーヒーの強いコーヒー風味および香りをより忠実に模倣する、改善された風味および香りを可能にする。さらに、該界面活性剤がコーヒー材料から調製されるので、コーヒー製品中にコーヒーに由来しない界面活性剤は添加されない。
【0014】
コーヒーから誘導される界面活性剤は、コーヒー材料と糖のアルカリに触媒されるエステル交換反応によって調製される。理論に限定されることを望むものではないが、本発明において製造されるコーヒーから誘導される界面活性剤は、主として、エステル交換反応中に形成される一連の糖モノエステル類である。
【0015】
本発明における使用に適当なコーヒー材料は、たとえば、焙煎および粉砕されたコーヒー、コーヒーオイル、消費済み(すなわち部分的に抽出された)コーヒー粉砕物およびコーヒーオイル、コーヒー水抽出物、コーヒー生豆の抽出物など、およびそれらの混合物を含む。所望される場合、抽出物または他のコーヒー材料を濃縮してもよい。好ましくは、コーヒー材料はコーヒーオイルを含む。
【0016】
本発明において用いられる糖は、単糖類(たとえば、マンノース、グルコース、フルクトース、ガラクトースなど)、および二糖類(たとえば、スクロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、セロビオースなど)ならびにそれらの混合物を含む。非還元糖(たとえば、スクロース、トレハロース)は、エステル交換反応に直接用いることができる。還元性基を有する糖(すなわち、マンノース、グルコース、フルクトース、ガラクトース、ラクトース、マルトースおよびセロビオースのような還元糖)は、エステル交換反応にかける前に、それらの還元性基を保護しなければならない(実施例7参照)。好ましい糖は、焙煎および粉砕されたコーヒー、消費済み(すなわち部分的に抽出された)コーヒー粉砕物、コーヒー水抽出物、コーヒー生豆の抽出物など、およびそれらの混合物のようなコーヒー材料から得られる。コーヒー材料から誘導される糖は、保護前処理または前調整なしにエステル交換反応に用いることができる。なぜなら、それらは主としてスクロースから構成されるからである。糖を誘導することが可能である特に好ましいコーヒー材料は、消費済みコーヒー粉砕物を含む。
【0017】
アルカリ性エステル交換触媒を用いて、所望されるエステル交換生成物を形成する。そのような触媒の例は、K2CO3、KOH、NaOH、Na2CO3、KHCO3、NaHCO3など、およびそれらの混合物を含む。同様に、適当な触媒をコーヒー材料から調製することができる。したがって、たとえば、コーヒー材料を(たとえば、約700℃以上の炉内で)灰化し、エステル交換触媒として使用するための種々のアルカリ性塩を含有する無機残渣を形成することができる。
【0018】
一般的に、エステル交換反応は、適当な溶媒(たとえばジメチルホルムアミドなど)中、約4時間から約10時間(好ましくは約6時間から約8時間)にわたって、約130℃から約170℃(好ましくは約140℃から約160℃)において行われる。慣用の技術(たとえばロータリーエバポレーション)を用いて溶媒を除去することによって、反応混合物から、所望されるコーヒーから誘導される界面活性剤を得ることができる。
【0019】
別の実施形態において、エステル交換反応前または反応中にコーヒー材料を処理して、たとえばコーヒー材料中の遊離脂肪酸の濃度を増大させることができる。したがって、たとえば、コーヒーオイルを約1時間から約4時間にわたって約200℃から約300℃において部分的に加水分解して、遊離脂肪酸の含有量を増大させることができる。アルカリ性エステル交換触媒によるコーヒーオイルの引き続く処理は、エステル交換反応を触媒することに加えて、遊離脂肪酸の含有量をさらに増大させる。遊離脂肪酸は、典型的にはアルカリ性塩として存在する。コーヒーオイルの部分的加水分解などによってコーヒー材料中の遊離脂肪酸の含有量を増加させることは、有益なことには、本発明のエステル交換反応生成物の分散性または機能性を増大させる。
【0020】
本発明の利点および実施形態を、以下の実施例によってさらに説明する。しかしながら、実施例中に記載の具体的材料およびその量、ならびに他の条件および詳細は、発明を不当に制限するものとして解釈するべきではない。特に別の記載がない限り、全ての部、比、およびパーセンテージは、重量による。特許および特許出願公開を含む全ての刊行物は、参照により本明細書の一部をなすものとする。
【実施例】
【0021】
(実施例1)
約10%の溶解した固形分を有する、コーヒー生豆の水性抽出物(4.5リットル)を、リン酸の添加によりpH4.5に調整した。次に、該抽出物をアンバーライトXAD−1180樹脂を含むカラムを通過させ、次に、得られる溶出液をポリアミドPSC−6樹脂を含むカラムを通過させた。得られる溶出液を、2回目として、それらカラムのそれぞれを通過させ、そして収集した。このカラムの組み合わせは、酸、フェノール性化合物およびタンパク質を優先的に除去し、比例してスクロース濃度を増大させると考えられる。水を添加して、それらカラムからのコーヒー抽出物の溶出を完了させ、収集された溶出液に追加した。溶出液を凍結乾燥させ、ついでエタノール(6倍量、80℃において)で抽出した。エタノール抽出物のロータリーエバポレーションは、6gの淡黄色粉末を与えた。トリメチルシリル化に引き続くその粉末のガスクロマトグラフ分析は、スクロースが主たる成分であること、およびスクロースが80%超の濃度で存在することを示した。
【0022】
2CO3(1g)の存在下、極性溶媒(25mLのジメチルホルムアミド)中で、135℃の油浴中で8時間にわたって加熱することにより、消費済み粉砕物コーヒーオイル(6.0g)を前述のスクロース調製物(3.5g)を反応させることによって、スクロース脂肪酸エステルの混合物を製造した。K2CO3を用いて、エステル交換反応を触媒した。K2CO3は界面活性ではなく、かつ化学的に、製造されるスクロース脂肪酸エステル分子の一部とはならない。反応は、ジメチルホルムアミドを除去するロータリーエバポレーションの後に固形化した褐色の塊(10.5g)を与えた。ついで、褐色塊をジエチルエーテルで抽出し、不溶性部分(K2CO3を含有する)を廃棄した。可溶性部分は、ロータリーエバポレーションによるジエチルエーテルの除去の後に、固形化したスクロースエステル反応生成物を与えた。ガスクロマトグラフ(GC)を用いる分析は、コーヒーオイルエステル中に存在する脂肪酸に相当する脂肪酸の形成を確認し、加えてスクロースの後に溶出する一連のピークを確認した。液体クロマトグラフ質量分析(LC−MS)を用いる分析は、これらのピークを一連のスクロースモノエステル類であると同定した。
【0023】
Turraxホモジナイザーを用いて、スクロースモノエステル類を含有する固形化した反応生成物を、等部の水と組み合わせ、次いで等量のコーヒーオイルを添加し、そしてTurraxホモジナイザーを用いて混合物を乳化し、コーヒーオイル乳化物を製造した。湯の表面に対して、得られたコーヒーオイル乳化物の1滴を落とした。その1滴は、目に見える表面油膜を生成することなしに分散した。同等量のコーヒーオイルを湯の表面に添加した際には、油膜が観察された。
【0024】
(実施例2)
商業的な可溶性コーヒーのプロセスから得られる消費済み焙煎コーヒー粉砕物から絞り出されるコーヒーオイル(90g)を、水(10g)とともに、密封Parrボンベ中で2時間にわたって250℃に加熱することによって、蒸気加水分解した。分析は、部分的に加水分解されたオイルの遊離脂肪酸の含有量が、初期の2.1%から、処理後の47.0%に増大したことを示した。部分的に加水分解したコーヒーオイルを実施例4において用いた。
【0025】
(実施例3)
140℃において、K2CO3触媒(4g)の存在下、ジメチルホルムアミド中で6時間にわたって加熱することにより、消費済み粉砕物コーヒーオイル(12.0g)とスクロース(13.7g)を反応させることによって、スクロース脂肪酸エステルの混合物を製造した。K2CO3を用いて、エステル交換反応を触媒した。K2CO3は界面活性ではなく、かつ化学的に、製造されるスクロース脂肪酸エステル分子の一部とはならない。反応は、固形化した褐色の塊(29.5g)を与えた。ガスクロマトグラフ(GC)を用いる分析は、コーヒーオイルエステル中に存在する脂肪酸に相当する脂肪酸の形成を確認し、加えてスクロースの後に溶出する一連のピークを確認した。液体クロマトグラフ質量分析(LC−MS)を用いる分析は、これらのピークを一連のスクロースモノエステル類であると同定した。これらの最適化されていない反応条件下で、約5%のスクロースがスクロースモノエステル類に変換されたと推定された。
【0026】
最初に、Turraxホモジナイザーを用いて、スクロースモノエステル類を含有する固形化した反応生成物を、等部の水と組み合わせ、次いで等量のコーヒーオイルを添加し、そしてTurraxホモジナイザーを用いて混合物を乳化し、コーヒーオイル乳化物を製造した。湯の表面に対して、得られたコーヒーオイル乳化物(50/50)の1滴を落とした。その1滴は、目に見える表面油膜を生成することなしに分散した。
【0027】
比較の目的において、アルカリ性触媒(たとえば、K2CO3)なしに、室温において、ビーカー中でスクロース(13.7g)を消費済み粉砕物コーヒーオイル(12.0g)と組み合わせた。Turraxホモジナイザーを用いて、その混合物を等部の水と組み合わせ、湯の表面に対して、得られた不安定な粗乳化物(50/50)の1滴を落とした。非常に明確な褐色のムラのある油膜が得られた。
【0028】
(実施例4)
消費済み粉砕物コーヒーオイルに代えて部分的に加水分解された消費済み粉砕物コーヒーオイル(実施例2において調製した)を用いて、本質的に実施例3の手順を反復した。反応は、スクロースモノエステル類の混合物を同様に生成した。
【0029】
(実施例5)
コーヒー生豆(50g)を1時間にわたって800℃の炉内で灰化し、アルカリ性カリウム塩を含有する無機残渣(4g)を製造した。非コーヒー源から得られるK2CO3の使用の代替として、その灰(4g)を6時間にわたって140℃において消費済み粉砕物コーヒーオイルと接触させて、遊離脂肪酸を製造した。その灰は、非コーヒー源から得られるK2CO3の代替物として、本発明の界面活性剤組成物を形成するためのエステル交換反応を触媒するのに使用することができる。したがって、この材料を用いて、たとえば、実施例1のK2CO3触媒を代替して、コーヒーから誘導される材料のみから調製される界面活性剤組成物を提供することができる。
【0030】
(実施例6)
Saccharomyces属に由来する酵母を用いる微生物発酵によってコーヒー生豆の水性抽出物からエタノールを製造した。コーヒー材料から誘導される前述のエタノールを用いて、還元性基を含有する糖を「保護」(たとえば、還元性基のアルキル化)することができる。たとえば、前述のエタノールを実施例7に記載されるように用いてコーヒーから誘導される界面活性剤を製造することができる。実施例5のコーヒーから誘導される触媒と組み合わせる場合、コーヒーから誘導される材料のみから調製される界面活性剤組成物を得ることができる。
【0031】
(実施例7)
最初にH+形態のDowexカチオン交換樹脂の存在下、マンノース(1.8g)をエタノール(20g)と反応させ、エチルマンノース(2.1g)の生成を触媒させ、それによって還元性基を保護することによって、エチルマンノース脂肪酸エステルの混合物を製造した。次いで、K2CO3(1g)の存在下、140℃の油浴中で6時間にわたって加熱することにより、エチルマンノース(2g)を消費済み粉砕物コーヒーオイル(3g)と反応させた。K2CO3を用いて、エステル交換反応を触媒した。K2CO3は界面活性ではなく、かつ化学的に、製造されるエチルマンノース脂肪酸エステル分子の一部とはならない。反応は、固形化した褐色の塊(6g)を与えた。ガスクロマトグラフ(GC)を用いる分析は、コーヒーオイルエステル中に存在する脂肪酸に相当する脂肪酸の形成を確認し、加えてマンノースの後に溶出する一連のピークを確認した。LC−MSを用いる分析は、これらのピークを一連のエチルマンノースモノエステル類であると同定した。これらの最適化されていない反応条件下で、約0.5%のマンノースがエチルマンノースモノエステル類に変換されたと推定された。Turraxホモジナイザーを用いて、スクロースモノエステル類を含有する固形化した反応生成物を、等部の水と組み合わせ、湯の表面に対して、得られた乳化物(50/50)の1滴を落とした。その1滴は、目に見える油膜を生成することなしに分散した。
【0032】
比較の目的において、アルカリ性触媒なしに、室温において、ビーカー中でマンノース(1.8g)を消費済み粉砕物コーヒーオイル(3.0g)と組み合わせた。PowerGen 700Dミキサー(Fisher Scientific)を用いて、その混合物を等部の水と組み合わせ、湯の表面に対して、得られた不安定な粗乳化物(50/50)の1滴を落とした。非常に明確な褐色のムラのある油膜が得られた。
【0033】
(実施例8)
慣用の熱加水分解プロセスを用いて、焙煎された消費済みコーヒー粉砕物を高温で水と接触させ、高濃度のマンノースを有する水性コーヒー抽出物を調製した。得られた抽出物を、実施例7におけるマンノースの代替として用いて、コーヒーから誘導される材料のみを用いてマンノースモノエステル類を調製することができた。
【0034】
(実施例9)
実施例3のスクロースモノエステル類を含有する反応生成物(0.16g)を、大豆油(8.0g)、Maxwell House Instant Coffee粉末(2.0g)および水(7.84g)を組み合わせ、PowerGen 700Dミキサー(Fisher Scientific)を用いて剪断して、8μmの平均油滴寸法を有する安定な油中水型(water-in-oil)乳化物を製造した。
【0035】
(実施例10)
12オンスのカップ中で、実施例3のスクロースモノエステル類を含有する反応生成物(1.6g)を、Maxwell House Instant Coffee粉末(2.0g)および水(230g)を組み合わせ、PowerGen 700Dミキサー(Fisher Scientific)を用いて、30秒間にわたって20000rpmにてホイップして、エスプレッソの外観を有する泡だったコーヒー飲料を製造した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ性エステル交換触媒を用いるコーヒー材料と糖のエステル交換生成物を含むことを特徴とするコーヒーから誘導される界面活性剤。
【請求項2】
コーヒー材料は、焙煎および粉砕されたコーヒー、コーヒーオイル、消費済みコーヒー粉砕物、消費済みコーヒーオイル、コーヒー水抽出物、コーヒー生豆の抽出物、およびそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載のコーヒーから誘導される界面活性剤。
【請求項3】
該コーヒー材料がコーヒーオイルであることを特徴とする請求項2に記載のコーヒーから誘導される界面活性剤。
【請求項4】
糖がマンノース、グルコース、フルクトース、ガラクトース、スクロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、セロビオースおよびそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項2に記載のコーヒーから誘導される界面活性剤。
【請求項5】
糖がマンノース、グルコース、フルクトース、ガラクトース、スクロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、セロビオースおよびそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項3に記載のコーヒーから誘導される界面活性剤。
【請求項6】
糖は、焙煎および粉砕されたコーヒー、消費済みコーヒー粉砕物、コーヒー水抽出物、コーヒー生豆の抽出物、およびそれらの混合物からなる群から選択される第2のコーヒー材料から誘導されることを特徴とする請求項2に記載のコーヒーから誘導される界面活性剤。
【請求項7】
糖は、焙煎および粉砕されたコーヒー、消費済みコーヒー粉砕物、コーヒー水抽出物、コーヒー生豆の抽出物、およびそれらの混合物からなる群から選択される第2のコーヒー材料から誘導されることを特徴とする請求項5に記載のコーヒーから誘導される界面活性剤。
【請求項8】
アルカリ性エステル交換触媒は、焙煎および粉砕されたコーヒー、消費済みコーヒー粉砕物、コーヒー水抽出物、コーヒー生豆の抽出物、およびそれらの混合物からなる群から選択される第3のコーヒー材料から誘導され、第3のコーヒー材料は灰化されてアルカリ性無機残渣を与えることを特徴とする請求項2に記載のコーヒーから誘導される界面活性剤。
【請求項9】
アルカリ性エステル交換触媒は、焙煎および粉砕されたコーヒー、消費済みコーヒー粉砕物、コーヒー水抽出物、コーヒー生豆の抽出物、およびそれらの混合物からなる群から選択される第3のコーヒー材料から誘導され、第3のコーヒー材料は灰化されてアルカリ性無機残渣を与えることを特徴とする請求項5に記載のコーヒーから誘導される界面活性剤。
【請求項10】
アルカリ性エステル交換触媒は、焙煎および粉砕されたコーヒー、消費済みコーヒー粉砕物、コーヒー水抽出物、コーヒー生豆の抽出物、およびそれらの混合物からなる群から選択される第3のコーヒー材料から誘導され、第3のコーヒー材料は灰化されてアルカリ性無機残渣を与えることを特徴とする請求項6に記載のコーヒーから誘導される界面活性剤。
【請求項11】
(1) エステル交換反応によってコーヒーから誘導される界面活性剤を含む反応混合物を調製するのに有効な時間および温度にて、アルカリ性エステル交換触媒の存在下、溶媒中において、コーヒー材料および糖を反応させる工程と;
(2) コーヒーから誘導される界面活性剤を含む反応混合物から溶媒を除去して、コーヒーから誘導される界面活性剤を含む固形分残渣を製造する工程と;
(3) コーヒーから誘導される界面活性剤を含む固形分残渣からアルカリ性エステル交換触媒を除去して、コーヒーから誘導される界面活性剤を得る工程と
を含み、
前記糖は単糖類、二糖類またはそれらの混合物であり、
前記糖は非還元性または還元性であり、
前記糖が還元性である場合、前記糖は工程(1)の前に処理され、その還元性基が保護される
ことを特徴とするコーヒーから誘導される界面活性剤を製造するための方法。
【請求項12】
工程(1)は、約4時間から約10時間にわたって、約130℃から約170℃において実施されることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
コーヒー材料は、焙煎および粉砕されたコーヒー、コーヒーオイル、消費済みコーヒー粉砕物、消費済みコーヒーオイル、コーヒー水抽出物、コーヒー生豆の抽出物、およびそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
コーヒー材料は、コーヒーオイルであることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記糖がマンノース、グルコース、フルクトース、ガラクトース、スクロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、セロビオースおよびそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記糖がマンノース、グルコース、フルクトース、ガラクトース、スクロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、セロビオースおよびそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記糖は、焙煎および粉砕されたコーヒー、消費済みコーヒー粉砕物、コーヒー水抽出物、コーヒー生豆の抽出物、およびそれらの混合物からなる群から選択される第2のコーヒー材料から誘導されることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記糖は、焙煎および粉砕されたコーヒー、消費済みコーヒー粉砕物、コーヒー水抽出物、コーヒー生豆の抽出物、およびそれらの混合物からなる群から選択される第2のコーヒー材料から誘導されることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項19】
アルカリ性エステル交換触媒は、焙煎および粉砕されたコーヒー、消費済みコーヒー粉砕物、コーヒー水抽出物、コーヒー生豆の抽出物、およびそれらの混合物からなる群から選択される第3のコーヒー材料から誘導され、第3のコーヒー材料は灰化されてアルカリ性無機残渣を与えることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項20】
アルカリ性エステル交換触媒は、焙煎および粉砕されたコーヒー、消費済みコーヒー粉砕物、コーヒー水抽出物、コーヒー生豆の抽出物、およびそれらの混合物からなる群から選択される第3のコーヒー材料から誘導され、第3のコーヒー材料は灰化されてアルカリ性無機残渣を与えることを特徴とする請求項14に記載の方法。

【公開番号】特開2007−297628(P2007−297628A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−122056(P2007−122056)
【出願日】平成19年5月7日(2007.5.7)
【出願人】(501360131)クラフト・フーヅ・ホールディングス・インコーポレイテッド (49)
【氏名又は名称原語表記】KRAFT FOODS HOLDINGS, INC.
【住所又は居所原語表記】Three Lakes Drive, Northfield, Illinois 60093 United States of America
【Fターム(参考)】