説明

コーヒー粕を用いた成形材

【課題】効果的な消臭作用に加えて、効果的な抗菌性を発揮することができるコーヒー粕を用いた成形材を提供すること。
【解決手段】少なくとも、乾燥させたコーヒー粕の粉末と、抗菌性を有する抗菌部材の粉末と、タルク粉末と、ポリオレフィン系樹脂及び/又は生分解性樹脂とを、混合して加熱溶融し成形したコーヒー粕を用いた成形材である。抗菌部材の粉末として、粉末状のゼオライトに竹エキスを含浸して乾燥させた竹エキス含浸ゼオライト粉末を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーヒー粕を用いた成形材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、コーヒー豆を焙煎・粉砕し、熱水にてコーヒーを抽出した後に、残渣としてコーヒー粕(有機性廃棄物)が生じる。このコーヒー粕は家庭、清涼飲料製造会社、コーヒーショップなどから大量に廃棄される。コーヒー粕は含水率が高く、65%程度であり、また多孔質の形状を有しており、pHは弱酸性のためアンモニアの吸着に役立ち、悪臭防止効果を発揮する。
【0003】
そして従来、このコーヒー粕を廃棄することなく有効に再利用するため、コーヒー粕を合成樹脂に混合してなる各種成形品が提案されている。この成形品は、その表面にコーヒー粕が露出するため、悪臭防止機能を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−48303号公報
【特許文献2】特開2002−52562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、コーヒー粕を合成樹脂に混合するだけでは、消臭効果は発揮するが、例えば食器や飲料用容器などに求められる抗菌性の向上は図れない。
【0006】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものでありその目的は、効果的な消臭作用に加えて、効果的な抗菌性を発揮することができるコーヒー粕を用いた成形材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願請求項1に記載の発明は、少なくとも、乾燥させたコーヒー粕の粉末と、抗菌性を有する抗菌部材の粉末と、タルク粉末と、ポリオレフィン系樹脂及び/又は生分解性樹脂とを、混合して加熱溶融し成形したことを特徴とするコーヒー粕を用いた成形材にある。
【0008】
本願請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のコーヒー粕を用いた成形材において、前記抗菌部材の粉末は、粉末状のゼオライトに竹エキスを含浸して乾燥させた竹エキス含浸ゼオライト粉末であることを特徴とするコーヒー粕を用いた成形材にある。
【0009】
本願請求項3に記載の発明は、請求項1に記載のコーヒー粕を用いた成形材において、前記抗菌部材の粉末は、前記コーヒー粕の粉末に竹エキスを含浸して乾燥させた竹エキス含浸コーヒー粕の粉末が兼用することを特徴とするコーヒー粕を用いた成形材にある。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、コーヒー粕による消臭効果と、抗菌部材による抗菌効果と、タルクによる剛性向上及び耐熱性向上効果とを、何れも成形材に持たせることができる。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、濃縮することで竹自体よりも抗菌効果の高くなった竹エキスを、多数の微細孔を有する粉末状のゼオライトの前記微細孔に含浸させて乾燥しているので、ゼオライトに付着した竹エキスの表面積を非常に大きくすることができ、効果的に抗菌作用を発揮させることができる。つまりコーヒー粕による消臭作用と、竹エキス含浸ゼオライト粉末による高い抗菌作用とを同時に発揮させることができる。なお竹エキスは、空気中のエチレンガスを効果的に吸着するエチレンガス吸着作用も有するので、この成形材を食品容器等に用いれば、食品等の鮮度保持効果も得ることができる。
またこの成形材を廃棄したような場合でも、コーヒー粕の粉末は微生物などによって分解して土中に親和し、ゼオライト粉末やタルク粉末は元々土の一種であって土に帰り、樹脂として生分解性樹脂を用いた場合はこれも微生物によって分解し、ポリオレフィン系樹脂は残るがその量は少なくてしかもコーヒー粕の粉末やゼオライト粉末やタルク粉末が間に入り込んでいるので風雨、太陽光などの自然の物理化学的作用によって結局ポリオレフィン系樹脂も分解されて土のように小さな粒になってしまう。また焼却しても合成樹脂成分が少ないので発熱カロリーが低くて焼却炉を傷めることも少なく、焼却時に黒いすすや有害ガスが発生せず、自然環境の保全にも寄与できる。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、コーヒー粕の粉末に竹エキスを含浸させることで、コーヒー粕の粉末に抗菌部材としての機能を併せ持たせることができる。即ち濃縮することで竹自体よりも抗菌効果の高くなった竹エキスを多数の微細孔を有する粉末状のコーヒー粕の前記微細孔に含浸させて乾燥しているので、コーヒー粕に付着した竹エキスの表面積を非常に大きくすることができ、効果的に抗菌作用を発揮させることができる。つまりコーヒー粕の粉末自体による消臭作用と、表面積の非常に大きい竹エキスによる高い抗菌作用とを同時に発揮させることができる。
またこの発明によれば、コーヒー粕に抗菌部材の機能を併せ持たせたので、その分コーヒー粕の配合量を増加することができ、コーヒー粕の再利用をより促進させることができる。
またこの成形材を廃棄したような場合でも、コーヒー粕の粉末は微生物などによって分解して土中に親和し、タルク粉末は元々土の一種であって土に帰り、樹脂として生分解性樹脂を用いた場合はこれも微生物によって分解し、ポリオレフィン系樹脂は残るがその量は少なくてしかもコーヒー粕の粉末やタルク粉末が間に入り込んでいるので風雨、太陽光などの自然の物理化学的作用によって結局ポリオレフィン系樹脂も分解されて土のように小さな粒になってしまう。また焼却しても合成樹脂成分が少ないので発熱カロリーが低くて焼却炉を傷めることも少なく、焼却時に黒いすすや有害ガスが発生せず、自然環境の保全にも寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】成形材の製造工程フロー図である。
【図2】成形材の製造装置を示す概略構成図である。
【図3】他の成形材の製造工程フロー図である。
【図4】他の成形材の製造工程フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
〔第1実施形態〕
第1実施形態に係る成形材は、乾燥させたコーヒー粕の粉末と、粉末状のゼオライトに竹エキスを含浸して乾燥させた竹エキス含浸ゼオライト粉末(抗菌性を有する抗菌部材の粉末)と、タルク粉末と、ポリオレフィン系樹脂及び/又は生分解性樹脂とを混合して加熱溶融し成形することで構成される。
【0015】
コーヒー粕は粉末状であり、コーヒー豆を焙煎・粉砕し熱水にてコーヒーを抽出した後に残渣として残ったコーヒー粕を乾燥させたものである。この実施形態では、コーヒーショップで生じたコーヒー粕を使用している。前述のようにコーヒー粕は含水率が高く、65%以上あるので、これを予め十分乾燥させておく必要がある。またコーヒー粕はほぼ99%が有機物でその多くが炭素成分であり、多孔質の形状を有しており、pHは弱酸性のためアンモニアの吸着に役立ち、悪臭防止効果を発揮する。つまりコーヒー粕をいったん乾燥させてから使用すると、水分や悪臭物質が急速に吸着される。
【0016】
ゼオライトは、主にアルミニウム(Al)とケイ素(Si)から構成される結晶(ケイ素とアルミニウムが酸素(O)を介して結合した構造)である。ゼオライトの結晶中には多数の極めて小さい穴(微細孔)があり、この微細孔によって分子を吸着したり、その内部で分子を化学反応させることができる。ゼオライトには天然ゼオライトと人工ゼオライトがあり、何れを用いても良いが、以下の各実施例では人工ゼオライトを用いている。
【0017】
竹エキスは、例えば孟宗竹等の竹をチップ化し、乾留抽出(加熱+減圧、例えば200℃で20mmHgの減圧下で抽出)する事で精製されたエキスである。竹エキスには、竹の中の抗菌物質やエチレンガス吸着物質が抽出されており、竹の粉末以上にこれら物質が濃縮されている。
【0018】
タルク(Talc)は、滑石という鉱石を微粉砕した無機粉末で、白色及び灰色をした滑らかでしかも脂肪感に富んだ素材である。タルクは含水珪酸マグネシウム[Mg3Si410(OH)2]で、SiO2約60%、MgO約30%と結晶水4.8%が主成分である。物理的な性質としては、真比重2.7〜2.8、無機鉱物中、最も硬度が低く(モース硬度1)耐熱性に優れ、しかも化学的に安定した物質である。
【0019】
ポリオレフィン系樹脂は、エチレン、プロピレンなどのオレフィン類の単独重合体、または異種ポリオレフィンとの共重合体の総称であり、例えばポリエチレン、ポリプロピレンなどがその代表的なものである。以下の実施例ではポリプロピレンを用いる。
【0020】
生分解性樹脂は、微生物或いはその他の生物の代謝作用によって分解可能なポリマーのことであり、例えば天然高分子系、微生物生産ポリエステル、脂肪族ポリエステル、ポリ乳酸等、又はこれらの混合物をいう。
【0021】
なお各材料の配合割合は、コーヒー粕の粉末20−50重量%、竹エキス含浸ゼオライト粉末3−15重量%、タルク粉末5−20重量%、ポリオレフィン系樹脂及び/又は生分解性樹脂30−50重量%が好ましい。
【0022】
(第1実施例)
図1は上記第1実施形態を用いて製造される第1実施例に係る成形材の製造工程フロー図である。また図2は第1実施例に係る成形材の製造装置を示す概略構成図である。
【0023】
成形材を製造するには、まずコーヒーショップや缶コーヒー製造工場などから廃棄されたコーヒー粕を入庫しその乾燥を行う(ステップ1)。入庫したコーヒー粕には前述のように大量の水分が含まれているので、十分な乾燥を行う必要がある。即ちまず入庫したコーヒー粕を80℃の電気乾燥炉に投入して静止状態で一昼夜乾燥し、次にこの乾燥したコーヒー粕をさらに容器に入れてスクリューで攪拌しながら80℃〜120℃の雰囲気内で3〜4時間、十分に乾燥する。
【0024】
一方、粉末状のゼオライトを竹エキスに浸漬することでゼオライトに竹エキスを含浸した後、このゼオライト粉末を竹エキスから取り出す(ステップ2)。次にこのゼオライト粉末を乾燥することで竹エキス含浸ゼオライト粉末を得る(ステップ3)。
【0025】
次に前記コーヒー粕の粉末35重量%と、竹エキス含浸ゼオライト粉末7重量%と、タルク粉末10.5重量%と、酸化カルシウム等の添加材7.5重量%と、ポリプロピレン40重量%とを図2に示す攪拌混合機10に投入し(ステップ4)、攪拌部材11によって混合攪拌する(ステップ5)。
【0026】
次に混合攪拌機10によって混合された混合物を加熱押出し機20に導入して螺旋状の突条23を設けたスクリュー25をシリンダ21内で回転することで混練しながらヒータ27で加熱溶融し(ステップ6)、ノズルから吐き出してペレット状に成形し、この成形品(ペレット)30を外部に取り出す(ステップ7)。以上のようにして製造された成形品(ペレット)30は、別に行われる成形加工において、金型などを用いて所望の形状に成形される。
【0027】
以上のようにして製造される成形品は、コーヒー粕の粉末による消臭効果と、竹エキス含浸ゼオライト粉末による抗菌効果と、タルク粉末による剛性向上及び耐熱性向上効果とを、何れも併せ持つことができる。
【0028】
特に竹エキス含浸ゼオライト粉末によれば、濃縮することで竹自体よりも抗菌効果の高くなった竹エキスを多数の微細孔を有する粉末状のゼオライトの前記微細孔に含浸させて乾燥しているので、ゼオライトに付着した竹エキスの表面積を非常に大きくすることができ、効果的に抗菌作用を発揮させることができる。つまりコーヒー粕による消臭作用と、竹エキス含浸ゼオライト粉末による高い抗菌作用と、タルクによる剛性向上及び耐熱性向上効果とを同時に発揮させることができる。なお竹エキスは、効果的に空気中のエチレンガスを吸着するエチレンガス吸着作用も有するので、ゼオライトに付着した表面積の非常に大きい竹エキスによって、効果的にエチレンガス吸着作用を発揮させることができる。つまり、農産物(特に野菜,果物等)等は、発酵によってエチレンガスを発生し、放出されたエチレンガスによってさらに発酵が進むことが知られているが、この成形材を用いて成形される容器や発泡シート等に農作物等を収納すれば、前記竹成分によってエチレンガスが吸着されることで、エチレンガスによる農産物等の腐敗速度を遅らせ、同時に竹成分による抗菌効果によって腐敗菌の活動を減少させ、これらのことから農産物等の新鮮さを長く保持することができる。
【0029】
またこの成形材を廃棄したような場合でも、コーヒー粕の粉末は微生物などによって分解して土中に親和し、ゼオライト粉末やタルク粉末は元々土の一種であって土に帰り、ポリプロピレンは残るがその量は少なくてしかもコーヒー粕の粉末やゼオライト粉末やタルク粉末が間に入り込んでいるので風雨、太陽光などの自然の物理化学的作用によって結局ポリプロピレンも分解されて土のように小さな粒になってしまう。また焼却しても合成樹脂成分が少ないので発熱カロリーが低くて焼却炉を傷めることも少なく、焼却時に黒いすすや有害ガスが発生せず、自然環境の保全にも寄与できる。
【0030】
〔第2実施形態〕
第2実施形態に係る成形材は、コーヒー粕の粉末に竹エキスを含浸して乾燥させた竹エキス含浸コーヒー粕の粉末と、タルク粉末と、ポリオレフィン系樹脂及び/又は生分解性樹脂(この例ではポリプロピレン)とを混合して加熱溶融し成形することで構成される。即ち上記第1実施形態と相違する点は、コーヒー粕の粉末として竹エキス含浸コーヒー粕の粉末を用いた点と、竹エキス含浸ゼオライト粉末を省略した点とである。
【0031】
なお各材料の配合割合は、竹エキス含浸コーヒー粕の粉末20−50重量%、タルク粉末5−20重量%、ポリオレフィン系樹脂及び/又は生分解性樹脂30−50重量%が好ましい。
【0032】
(第2実施例)
図3は上記第2実施形態を用いて製造される第2実施例に係る成形材の製造工程フロー図である。なお成形材の製造装置としては上記図2に示す製造装置を使用する。
【0033】
成形材を製造するには、コーヒーショップや缶コーヒー製造工場などから廃棄されたコーヒー粕を入庫しその乾燥を行う(ステップ1)。入庫したコーヒー粕には前述のように大量の水分が含まれているので、十分な乾燥を行う必要がある。即ちまず入庫したコーヒー粕を80℃の電気乾燥炉に投入して静止状態で一昼夜乾燥し、次にこの乾燥したコーヒー粕をさらに容器に入れてスクリューで攪拌しながら80℃〜120℃の雰囲気内で3〜4時間、十分に乾燥する。
【0034】
次に、十分乾燥したコーヒー粕の粉末を竹エキスに浸漬することでコーヒー粕の粉末に竹エキスを含浸した後、このコーヒー粕の粉末を竹エキスから取り出す(ステップ2)。次にこのコーヒー粕の粉末を乾燥することで竹エキス含浸コーヒー粕の粉末を得る(ステップ3)。
【0035】
次に前記竹エキス含浸コーヒー粕の粉末42重量%と、タルク粉末10.5重量%と、酸化カルシウム等の添加材7.5重量%と、ポリプロピレン40重量%とを図2に示す攪拌混合機10に投入し(ステップ4)、攪拌部材11によって混合攪拌する(ステップ5)。
【0036】
次に混合攪拌機10によって混合された混合物を加熱押出し機20に導入して螺旋状の突条23を設けたスクリュー25をシリンダ21内で回転することで混練しながらヒータ27で加熱溶融し(ステップ6)、ノズルから吐き出してペレット状に成形し、この成形品(ペレット)30を外部に取り出す(ステップ7)。以上のようにして製造された成形品(ペレット)30は、別に行われる成形加工において、金型などを用いて所望の形状に成形される。
【0037】
以上のようにして製造される成形品は、竹エキス含浸コーヒー粕の粉末による消臭効果及び抗菌効果及びエチレンガス吸着効果と、タルク粉末による剛性向上及び耐熱性向上効果とを、何れも併せ持つことができる。
【0038】
特に竹エキス含浸コーヒー粕の粉末によれば、コーヒー粕の粉末に竹エキスを含浸させることで、コーヒー粕の粉末に抗菌部材としての機能を併せ持たせることができる。即ち濃縮することで竹自体よりも抗菌効果及びエチレンガス吸着効果の高くなった竹エキスを多数の微細孔を有する粉末状のコーヒー粕の前記微細孔に含浸させて乾燥しているので、コーヒー粕の粉末に付着した竹エキスの表面積を非常に大きくすることができ、効果的に抗菌作用及びエチレンガス吸着効果を発揮させることができる。つまりコーヒー粕自体による消臭作用と、表面積の非常に大きい竹エキスによる高い抗菌作用及びエチレンガス吸着作用とを同時に発揮させることができる。
【0039】
またコーヒー粕の粉末に抗菌部材の機能を併せ持たせたので、その分コーヒー粕の粉末の配合量を増加することができ、コーヒー粕の再利用をより促進させることができる。
【0040】
またこの成形材を廃棄したような場合でも、コーヒー粕の粉末は微生物などによって分解して土中に親和し、ポリプロピレンは残るがその量は少なくてしかもコーヒー粕の粉末やタルク粉末が間に入り込んでいるので風雨、太陽光などの自然の物理化学的作用によって結局ポリプロピレンも分解されて土のように小さな粒になってしまう。また焼却しても合成樹脂成分が少ないので発熱カロリーが低くて焼却炉を傷めることも少なく、焼却時に黒いすすや有害ガスが発生せず、自然環境の保全にも寄与できる。
【0041】
〔第3実施形態〕
第3実施形態に係る成形材は、乾燥させたコーヒー粕の粉末と、焼成ドロマイト粉末(抗菌部材の粉末)と、タルク粉末と、ポリオレフィン系樹脂及び/又は生分解性樹脂(この例ではポリプロピレン)とを混合して加熱溶融し成形したことで構成される。即ち上記各実施形態と相違する点は、竹エキスを用いず、その代りに抗菌部材として焼成ドロマイト粉末を使用した点である。
【0042】
ここでドロマイトとは、別名、白雲石または苦灰石と呼ばれる、カルシウムとマグネシウムの複合炭酸塩CaMg(CO32またはこれを主成分とする岩石をいう。またこのドロマイトを加熱すると700〜800℃でMgCO3分が分解してCO2を放出し、炭酸カルシウム(CaCO3)と酸化マグネシウム(MgO)の焼成物(以下単に焼成ドロマイトAともいう)となり、さらに900〜950℃でCaCO3が分解してCO2を放出し、酸化カルシウム(CaO)と酸化マグネシウム(MgO)の焼成物(以下単に焼成ドロマイトBともいう)となる特性を有している。よって、この実施形態で用いられる焼成ドロマイトとは、酸化マグネシウムと炭酸カルシウムを主成分とする焼成ドロマイトAと、酸化マグネシウムと酸化カルシウムを主成分とする焼成ドロマイトBの少なくとも一方を含むものをいう。焼成ドロマイトは、高い抗菌性と、焼却した際のダイオキシン類の発生を抑制する機能を有している。
【0043】
なお各材料の配合割合は、コーヒー粕の粉末20−50重量%、ドロマイト粉末3−15重量%、タルク粉末5−20重量%、ポリオレフィン系樹脂及び/又は生分解性樹脂30−50重量%が好ましい。
【0044】
(第3実施例)
図4は上記第3実施形態を用いて製造される第3実施例に係る成形材の製造工程フロー図である。なお成形材の製造装置としては上記図2に示す製造装置を使用する。
【0045】
成形材を製造するには、コーヒーショップや缶コーヒー製造工場などから廃棄されたコーヒー粕を入庫し、上記各例と同様にその十分な乾燥を行う(ステップ1)。
【0046】
次に、十分乾燥したコーヒー粕の粉末35重量%と、ドロマイトの粉末7重量%と、タルク粉末10.5重量%と、酸化カルシウム等の添加材7.5重量%と、ポリプロピレン40重量%とを図2に示す攪拌混合機10に投入し(ステップ2)、攪拌部材11によって混合攪拌する(ステップ3)。
【0047】
次に混合攪拌機10によって混合された混合物を加熱押出し機20に導入して螺旋状の突状23を設けたスクリュー25をシリンダ21内で回転することで混練しながらヒータ27で加熱溶融し(ステップ4)、ノズルから吐き出してペレット状に成形し、この成形品(ペレット)30を外部に取り出す(ステップ5)。以上のようにして製造された成形品(ペレット)30は、別に行われる成形加工において、金型などを用いて所望の形状に成形される。
【0048】
以上のようにして製造される成形品は、コーヒー粕の粉末による消臭効果と、ドロマイト粉末による抗菌効果と、タルク粉末による剛性向上及び耐熱性向上効果とを、何れも併せ持つことができる。
【0049】
またこの成形材を廃棄したような場合でも、コーヒー粕の粉末は微生物などによって分解して土中に親和し、またポリプロピレンは残るがその量は少なくてしかもコーヒー粕の粉末やドロマイト粉末やタルク粉末が間に入り込んでいるので風雨、太陽光などの自然の物理化学的作用によって結局ポリプロピレンも分解されて土のように小さな粒になってしまう。また焼却しても合成樹脂成分が少ないので発熱カロリーが低くて焼却炉を傷めることも少なく、焼却時に黒いすすや有害ガスが発生せず、自然環境の保全にも寄与できる。
【0050】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。例えば、上記成形材はこれを発泡させても良い。発泡させれば、竹エキスを含浸させたゼオライト粉末やコーヒー粕の粉末の露出表面積を非常に広くでき、竹成分による効果を非常に大きくすることができる。また上記例では加熱押出し機20から押し出した混合溶融物をペレット状の成形材とし、その後別の成形機にこのペレットを投入して所望の成形品を成形したが、前記加熱押出し機20から押し出した混合溶融物を直接成形しても良いし、直接発泡させても良い。
【符号の説明】
【0051】
10 混合攪拌機
20 加熱押出し機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、乾燥させたコーヒー粕の粉末と、
抗菌性を有する抗菌部材の粉末と、
タルク粉末と、
ポリオレフィン系樹脂及び/又は生分解性樹脂とを、混合して加熱溶融し成形したことを特徴とするコーヒー粕を用いた成形材。
【請求項2】
請求項1に記載のコーヒー粕を用いた成形材において、
前記抗菌部材の粉末は、粉末状のゼオライトに竹エキスを含浸して乾燥させた竹エキス含浸ゼオライト粉末であることを特徴とするコーヒー粕を用いた成形材。
【請求項3】
請求項1に記載のコーヒー粕を用いた成形材において、
前記抗菌部材の粉末は、前記コーヒー粕の粉末に竹エキスを含浸して乾燥させた竹エキス含浸コーヒー粕の粉末が兼用することを特徴とするコーヒー粕を用いた成形材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−224665(P2012−224665A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−90880(P2011−90880)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(597114041)株式会社ユニオン産業 (4)
【Fターム(参考)】