説明

コーヒー豆加工品の製造方法

【課題】コーヒー生豆に本来含まれるクロロゲン酸等有用成分を多く含有し、且つ、生豆由来の不快な臭いがなく良好な焙煎香が付与されたコーヒー豆加工品の製造方法の提供。又、該コーヒー豆加工品を原料とするインスタントコーヒー、コーヒー飲料の提供。
【解決手段】コーヒー生豆を微粉砕した後に焙煎するコーヒー豆加工品の製造方法。微粉砕後のコーヒー生豆の平均粒度は2000μm以下が好ましい。コーヒー豆加工品のクロロゲン酸量は12000ppm以上である。このコーヒー豆加工品を用いて公知の方法によりインスタントコーヒー、コーヒー飲料を製造する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の属する技術分野
本発明は、コーヒー豆加工品の製造方法に関する。より詳しくは、コーヒー生豆に本来含有するクロロゲン酸等有用成分の消失が抑制され、且つ、生豆由来の不快な臭いがなく良好な焙煎香が付与されたコーヒー豆加工品の製造方法に関する。また、本発明は、クロロゲン酸等を多く含有し、且つ生豆由来の不快な臭いがなく良好な焙煎香が付与されたコーヒー豆加工品に関する。
【0002】
従来の技術
コーヒー生豆中には、クロロゲン酸、キナ酸、クマル酸、カフェ酸が豊富に含まれている。中でもクロロゲン酸は、インスリン分泌促進作用〔野村英作ら。フェルラ酸及び関連化合物のインスリン分泌促進作用。平成13年度和歌山県工業技術センター「研究報告」17−9(2001)〕や、食後過血糖抑制〔Adidoff M.T., et al. Special clinical report for Russian Ministry of health. Moscou, clinical report 12(1999)〕等の有用機能が報告されており、カフェイン、カルニチン、コリン等と共に大変有用な成分であることが、近年様々な研究により解明されてきた。また、ガンや老化などの誘因となる活性酸素を補足し除去する抗酸化物質としても注目されている。
【0003】
しかし、私たちが普段飲用するコーヒー飲料は、コーヒー生豆に熱量を加える焙煎工程を経た豆を使用して得られたものである。この焙煎工程により、コーヒー生豆特有の土臭い不快な臭いが消失し、代わりに心地良い芳醇な焙煎香が生成する。しかし、その一方で有用成分であるクロロゲン酸は著しく消失することになる〔中林ら、「コーヒー焙煎の化学と技術」 初版(1995)〕。コーヒー生豆に含まれる有用成分を有効活用する技術としては、特開2003−204755や特開2003−204756があるが、コーヒー飲料の製造に用いるには、コーヒー生豆由来の不快な臭いが残存するという問題点があった。
【0004】
一方、コーヒー生豆由来の不快な臭いを消失させる技術としては、特開2003−9767や特開2003−61582など様々な前処理技術が報告されている。前処理が施された全粒或いは粗粉砕のコーヒー生豆に対して焙煎を施すことで香味は改質されるが、生豆由来のクロロゲン酸等有用成分は消失されてしまう。
【0005】
そこで、クロロゲン酸等有用成分の消失抑制と、良好な焙煎香の付与という2つの特徴を両立しうる画期的なコーヒー豆加工品の製造方法、及びそれらの特徴を有するコーヒー豆加工品の提供が強く望まれていた。
【特許文献1】特開2003−204755
【特許文献2】特開2003−204756
【特許文献3】特開2003−9767
【特許文献4】特開2003−61582
【非特許文献1】野村英作ら。フェルラ酸及び関連化合物のインスリン分泌促進作用。平成13年度和歌山県工業技術センター「研究報告」17−9(2001)
【非特許文献2】Adidoff M.T., et al. Special clinical report for Russian Ministry of health. Moscou, clinical report 12(1999)
【非特許文献3】中林ら、「コーヒー焙煎の化学と技術」 初版(1995)
【0006】
発明が解決しようとする課題
本発明は、上記の現状に鑑み、コーヒー生豆に本来含まれるクロロゲン酸等有用成分の消失が抑制され、且つ、コーヒー生豆由来の不快な臭いがなく良好な焙煎香が付与されたコーヒー豆加工品の製造方法、及びクロロゲン酸等を多く含有し、且つ生豆由来の不快な臭いがなく良好な焙煎香が付与されたコーヒー豆加工品を提供することを目的とする。
【0007】
課題を解決するための手段
本発明者はかかる課題を解決するために鋭意研究を行ったところ、コーヒー生豆を微粉砕した後に焙煎することで、コーヒー生豆に本来含まれるクロロゲン酸等の有用成分の消失が抑制され、且つ、コーヒー生豆由来の不快な臭いの無いコーヒー豆加工品を得ることができることを発見し、本発明を完成した。
【0008】
通常、焙煎前のコーヒー生豆は、全粒或いは粗粉砕の状態である。焙煎前に細かく生豆を粉砕してしまうことは、欠源の発生や工程安定性の問題等、製造上好ましくないだけでなく、表面積を大きくすることで焙煎中の香気成分を損なう可能性が高くなると考えられていた。更には、焙煎時にチャフと呼ばれる薄皮を系外に除去しにくくなるため、焙煎後の豆に焦げ臭が付与されてしまい、好ましくないと考えられていた。従って、コーヒー生豆を微粉砕した後に焙煎するという本発明の方法は、これまでの知見に基づけば、極めて意外な発見に基づいている。
【0009】
本発明者らは、コーヒー焙煎豆を液体窒素で凍結した後直ちに剃刀で両断し、断面をデジタルマイクロスコープVH−8000にて観察を行った結果、コーヒー豆における孔の大きさが、豆の表面と内部で差があり、表面近くが比較的大きく、中心近くが小さいことを発見した。この差は、コーヒー生豆では観察されなかった。即ち、通常焙煎に用いられる全粒或いは粗粉砕のコーヒー焙煎豆では、一見、均等に焙煎ができているように見えても、ミクロレベルで観察すると、コーヒー生豆の外部と内部での孔の膨張度合が異なることがわかった。その結果から本発明者らは、豆の表面からはクロロゲン酸の著しい消失があり、中心からはコーヒー生豆由来の不快な香りを感じるのではないかと推察した。つまり、クロロゲン酸の消失を抑制するために加熱量を抑えることは、コーヒー生豆由来の不快な臭いを増大させることになり、逆にコーヒー生豆由来の不快な臭いを抑制するために加熱量を大きくすると、クロロゲン酸の消失を助長することになる。そこで、本発明者らは、コーヒー生豆の全ての孔が等しく加熱されれば、極めて短時間かつムラの無い焙煎が可能となり、クロロゲン酸の消失を抑えつつ良好な焙煎香を付与することができるのではないかと考えた。
【0010】
そこで、実際にデジタルマイクロスコープにおいて観察された孔がおよそ10−100μmであったため、抹茶の製造等で使用されている臼型粉砕機を用いて、生豆を100μm以下の粒子径になるように粉砕した。その後焙煎した豆加工品のクロロゲン酸含量を分析したところ、焙煎前からの消失が少ないことがわかり、さらには焙煎豆を熱水にてドリップ抽出し香味評価を行ったところ、適度な焙煎香が付与されていることがわかり、本発明を完成した。
【0011】
すなわち本発明は、焙煎工程前にコーヒー生豆を微粉砕する工程を含むコーヒー豆加工品の製造方法である。また本発明は、コーヒー生豆を微粉砕する工程と焙煎処理工程の間に微粉砕したコーヒー生豆を乾燥する工程を含む、コーヒー豆加工品の製造方法である。
【0012】
さらに本発明は、焙煎工程前にコーヒー生豆を微粉砕する工程を含むコーヒー豆加工品の製造方法において、微粉砕後のコーヒー生豆の平均粒度が2000μm以下、好ましくは1000μm以下、特に好ましくは100μm以下であるコーヒー豆加工品の製造方法である。
【0013】
さらに本発明は、焙煎工程前にコーヒー生豆を微粉砕する工程を含むコーヒー豆加工品の製造方法により得られるコーヒー豆加工品である。また本発明は、クロロゲン酸量が12000ppm以上または16000ppm以上である前記コーヒー豆加工品である。
【0014】
さらに本発明は、焙煎工程前にコーヒー生豆を微粉砕する工程を含むコーヒー豆加工品の製造方法により得られるコーヒー豆加工品を原料として用いて得られる飲食物、または飲食物用添加剤である。
【0015】
発明の実施の形態
コーヒー豆加工品の製造方法
本発明によれば、微粉砕処理を経た後の焙煎工程でのクロロゲン酸の消失を抑制し、かつ、良好な焙煎香を付与することができることから、そのような特徴の付与が必要なコーヒー豆加工品の製造に用いることができる。
【0016】
本発明の製造方法に用いるコーヒー生豆の品種としては、特に制限がないが、例えばアラビカ種、ロブスタ種、リベリカ種などを用いることができ、特にアラビカ種、ロブスタ種を好適に用いることができる。また、コーヒー生豆の改質を目的に、焙煎前に糖液に予め浸漬させる等の前処理を施したコーヒー生豆に対しても好適に用いることができる。従って、本発明の製造方法は、良好な焙煎香を付与する種々の技術と組み合わせることができる。
【0017】
コーヒー生豆の微粉砕に用いる装置は、所望の粒径に微粉砕できるものであれば特に制限はない。また、粉砕処理が制御できる装置であればよく、縦型や横型、バッチ式や連続式の装置を用いることができる。粉砕方法は、ハンマー型、ローラー型、石臼型等様々あるが、特に限定されない。粉砕粒度は、コーヒー生豆の孔が均一に熱源から受熱できる程度の粒度、具体的には2000μm以下、好ましくは1000μm以下、そして100μm以下が特に好ましい。
【0018】
本発明における焙煎処理とは、コーヒーで一般に言われる焙煎、すなわち、コーヒー生豆に熱源をあてて煎ることをいう。一般に、焙煎による変化は、生豆の細胞壁が熱を受け、徐々に水性成分が蒸発し、組織が収縮するものとされており、生豆は焙煎されることによって初めて黒褐色となり、特有の香りと苦味や酸味を生じて飲用コーヒー豆になる。
【0019】
従って本発明でいうコーヒー豆加工品とは、コーヒー生豆に対して粉砕処理を施した後、上述の焙煎工程を経たものをいう。本発明における焙煎工程では、用いる焙煎機は特に限定されず、通常用いられる焙煎機を使用することができ、例えば一般的な焙煎機である水平(横)ドラム型焙煎機を用いることができる。焙煎度も特に限定されるものではない。焙煎方法も特に限定されず、通常用いられる焙煎方法を使用することができ、例えば加熱方法で分類すると、直下、熱風、遠赤外線、マイクロウェーブなどを用いた方法を使用することができる。さらに、熱風を利用した流動層型焙煎機を用いることで、焙煎と搬送を同時に行える等、様々な焙煎技術と組み合わせることができる。
【0020】
本発明の製造方法における焙煎工程での焙煎度も特に制限はない。焙煎度は、米国方式の8段階の呼称で、ライトロースト、シナモンロースト、ミディアムロースト、ハイロースト、シティーロースト、フルシティロースト、フレンチロースト、イタリアンローストのいずれであってもよい。ただし、クロロゲン酸の消失を抑制効果や、良好な焙煎香という観点から、焙煎度はライトロースト及びシナモンローストが好ましい。
【0021】
本発明の製造方法は、焙煎工程前に微粉砕したコーヒー生豆の乾燥工程を含むことができる。当該乾燥工程を加えることにより、さらにクロロゲン酸の加水分解反応を抑制することができる。乾燥工程は、コーヒー豆の乾燥に適した装置を用い、実施することができる。
【0022】
本発明の製造方法を用いれば、コーヒー豆に含まれるクロロゲン酸の消失を防ぎ、コーヒー豆加工品に良好な焙煎香を付与することができる。また、全粒もしくは粗粉砕のコーヒー生豆を用いた方法において必要とされる、焙煎工程後の粉砕工程は必要ではない点も、本発明の製造方法の利点である。
【0023】
コーヒー豆加工品
本発明のコーヒー豆加工品は、例えば上述のコーヒー豆加工品の製造方法により製造することができる。すなわち、焙煎工程前にコーヒー生豆を微粉砕する工程を含むコーヒー豆加工品の製造方法により製造することができる。
【0024】
本発明のコーヒー豆加工品は、焙煎工程でのクロロゲン酸の消失が少ないためにクロロゲン酸量が多く、クロロゲン酸12000ppm以上、好ましくは16000ppm以上含まれるという特徴を有する。
【0025】
本発明のコーヒー豆加工品は、コーヒー飲料のコーヒー原料の一つとして、コーヒー焙煎豆(レギュラーコーヒー豆)、インスタントコーヒー、液体コーヒーエキスなどと共に用いることができ、コーヒー飲料は常法によりコーヒー飲料製造工場で製造することができる。
【0026】
コーヒー豆加工品を原料として用いて得られる飲食物または飲食物用添加剤
本発明の飲食物または飲食物用添加剤は、本発明のコーヒー豆加工品を用いて製造される。本発明の飲食物用添加剤としては、本発明のコーヒー豆加工品をそのまま用いても良いし、加工品から抽出した液を液剤としても良く、または、この加工品や抽出液を公知の種々の方法で固形化しても良く、その形態は特に問わない。本発明の飲食物の例としては、インスタントコーヒー、コーヒー飲料が挙げられる。
【0027】
例えば、コーヒー飲料缶詰は、本発明におけるコーヒー豆加工品である焙煎豆を用い、「抽出」、「調合」、「ろ過」、「充填」、「巻締」、「殺菌」、「冷却」、および「箱詰め」の工程で製造することができる。また、本発明におけるコーヒー豆加工品である焙煎豆は微細であるために、「抽出」の工程を経ずに「調合」の工程においてそのまま投入することもできる。
【0028】
本発明を実験例及び実施例によってさらに詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらのみに限定されるものではない。
実施例
〔実施例1〕
ブラジル産アラビカ種のコーヒー生豆を原料として、本発明の微粉砕生豆を加工した。具体的には、ウエスト社製の臼型粉砕機「ミクロパウダー KGW−501」を用い、粉砕機の上部の原料ホッパより生豆を供給し、3kg/Hの一定速度で粉砕機に供給した。コーヒー生豆中には水分や油分が含まれ、また、粉砕時に生じる摩擦熱などの影響により、加工に不具合が生じる可能性も考えられたが、冷却水によって臼の温度上昇を抑えながら粉砕することで、非常にスムーズに加工することができた。
【0029】
続いて、得られたコーヒー生豆加工物の粒度分布を測定した。具体的には、生豆粉小さじ2杯を純水100mlに加え十分に攪拌した後、島津製作所社製のレーザー回折式粒度分布計「SALD−2000」を使用し測定した。結果を図1に示す。
【0030】
図1に示すように、ほぼ全てのコーヒー生豆加工物が粒子径10μm以下であることがわかった。
〔実施例2〕
実施例1で得られたコーヒー生豆加工物を焙煎した。具体的には、PROBAT社製の焙煎機BRZ−4へ生豆加工物約200gを投入し、15分焙煎した後取り出した。細かくなることで、ドラムへの焼き付きが心配されたが、問題なく焙煎及び取り出しができた。また、焙煎途中において、通常の焙煎とは異なり、パチパチと音を立てるいわゆる「ハゼ」が殆ど生じなかったのが特徴的であった。この特徴的な現象は、水分の容易な排出により、加水分解そのものが抑制されたことによると考えられる。
【0031】
得られた焙煎後の生豆加工物を熱水にて抽出した。具体的には、焙煎後の生豆加工物5gを100mlの純水に加え十分に攪拌した後、80℃の温水に15分浸した。その後、冷却・遠心分離を経て、抽出液である本加工品抽出液を得た。
【0032】
一方、同じコーヒー生豆を用い、上述の微粉砕加工を行うことなく全粒のまま同条件の焙煎を実施し、その後、本加工品抽出液と同条件で抽出・冷却・遠心分離を実施し、対照品抽出液を得た。
【0033】
さらに、焙煎前の生豆加工物に対しても同条件で抽出・冷却・遠心分離を実施し、未加工品抽出液を得た。
〔実施例3〕
実施例2で得られた本加工品抽出液、対照品抽出液、そして未加工品抽出液の3つの抽出液に対してクロロゲン酸及びカフェインの濃度測定を実施した。具体的には、得られた抽出液を純水にて2倍に希釈した後、島津製作所社製のHPLC「LC10A」を使用し、カラムには野村化学社製の「develosil C30−UG−5」を用いて測定した。
【0034】
結果を図2に示す。
図2に示されるクロロゲン酸の濃度のグラフより、クロロゲン酸の本処理品抽出液のクロロゲン酸含量が、対照品抽出液よりも多く、未加工品抽出液、すなわち焙煎前の生豆加工物とほぼ同等に含まれていることがわかった。一方で、カフェインの含有量のグラフより、3つの抽出液のカフェイン含有量はほぼ一定であることも確認できた。これにより、コーヒー生豆を微粉砕した後に焙煎することで、コーヒー生豆に本来含有するクロロゲン酸等有用成分の消失が抑制されることが示された。
【0035】
〔実施例4〕
さらに、実施例3で用いた3つの抽出液に対して、専門パネラーによる官能評価を行った。評価は、「焙煎香」及び「生豆の不快臭」の2つを、それぞれ専門パネリスト5名の評点法により行い、平均点を算出した。
【0036】
焙煎香の評点は、焙煎香を「感じる」=3点、「やや感じる」=2点、「感じない」=1点の3段階とし、また、生豆の不快臭の評価は、不快臭を「感じる」=3点、「やや感じる」=2点、「感じない」=1点の3段階とした。結果を表1に示す。
【0037】
【表1】

表1からも明らかな通り、本加工品抽出液は適度な焙煎香を感じ、生豆の不快臭は感じないという官能結果となった。従って、コーヒー生豆を微粉砕した後に焙煎することで、コーヒー生豆に本来含有するクロロゲン酸等有用成分の消失が抑制され、且つ、コーヒー生豆由来の不快な臭いの無い、新規なコーヒー焙煎豆が得られることがわかった。
【0038】
また、本加工品抽出液は、対照品抽出液と比較して「キャラメルのよう」、「甘い」、等のコメントが得られた。これは、焙煎前に粉砕することによって、焙煎中に通常とは異なる変化、すなわち、クロロゲン酸の加水分解反応が抑制され、強いては、その反応に起因する褐色色素の生成反応や、他の香気成分生成反応への変化も生じている可能性があることを示唆している。
【0039】
〔実施例5〕
さらに発明者らは、粉砕の度合によるクロロゲン酸の消失度合を調べた。具体的には、まず、粉砕粒度の異なる複数のコーヒー生豆粉砕物を用意し、次いでそれらのコーヒー生豆粉砕物を3つの異なる焙煎度(L30、L24、L18 Lは明度を表わす)まで焙煎し、それぞれのコーヒー焙煎豆を得た。得られた焙煎豆2gを40mlの80℃の熱水にて30分間抽出を行った。得られた抽出液を0.45μmのフィルタにてろ過し、さらに純水にて2倍に希釈した後、HPLCにてクロロゲン酸濃度を測定した。測定には、島津製作所社製のHPLC「LC10A」を使用し、カラムには野村化学社製の「develosil C30−UG−5」を用いて測定した。結果を図3に示す。
【0040】
図3からも明らかなとおり、コーヒー豆の粉砕粒度が小さくなるにつれ、同じ焙煎度であってもクロロゲン酸含量の高い焙煎豆が得られることが分かった。なお、この条件で抽出すれば豆中のクロロゲン酸のほぼ全量が溶出されることになるので、コーヒー豆加工品中に存在するクロロゲン酸の濃度を換算することができる。好ましいクロロゲン酸の含量としては、本実施例の図2から40ml溶液中の濃度が600ppm以上または800ppm以上であることが好ましく、クロロゲン酸量としては0.024g以上または0.032g以上であることが好ましくなり、これらがコーヒー豆加工品量2gに含有されていることから換算すれば、コーヒー豆加工品中の好ましいクロロゲン酸濃度は12000ppm以上または16000ppm以上であることが分かる。
【0041】
発明の効果
本発明によれば、コーヒー生豆に本来含有するクロロゲン酸等有用成分の消失が抑制され、且つ、生豆由来の不快な臭いがなく良好な焙煎香が付与されたコーヒー豆加工品の製造方法、およびクロロゲン酸等を多く含有し、且つ生豆由来の不快な臭いがなく良好な焙煎香が付与されたコーヒー豆加工品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】図1は、粉砕機で処理した後のコーヒー生豆加工物の粒度分布測定結果を示す。
【図2】図2は、加工品抽出液、対照品抽出液、および未加工品抽出液の3つの抽出液中のクロロゲン酸及びカフェインの濃度測定結果を示す。
【図3】図3は、コーヒー生豆の粉砕後の粒度とクロロゲン酸含量の関係を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
焙煎工程前にコーヒー生豆を微粉砕する工程を含む、コーヒー豆加工品の製造方法。
【請求項2】
焙煎工程前に、微粉砕したコーヒー生豆の乾燥工程を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記微粉砕後のコーヒー生豆の平均粒度が2000μm以下である、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記微粉砕後のコーヒー生豆の平均粒度が1000μm以下である、請求項1または2記載の方法。
【請求項5】
前記微粉砕後のコーヒー生豆の平均粒度が100μm以下である、請求項1または2記載の方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項記載の方法により得られるコーヒー豆加工品。
【請求項7】
クロロゲン酸量が12000ppm以上である、請求項6記載のコーヒー豆加工品。
【請求項8】
クロロゲン酸量が16000ppm以上である、請求項6記載のコーヒー豆加工品。
【請求項9】
請求項6ないし8のいずれか一項記載のコーヒー豆加工品を原料として用いて得られる飲食物。
【請求項10】
請求項6ないし8のいずれか一項記載のコーヒー豆加工品を原料として用いて得られる飲食物用添加剤。
【請求項11】
インスタントコーヒーである、請求項9記載の飲食物。
【請求項12】
コーヒー飲料である、請求項9記載の飲食物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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