説明

コーヒー風味増強剤の製造方法

【課題】低コストでかつ本格的なコーヒーの風味を楽しめるコーヒー風味増強剤の製造方法および該製造方法で得られるコーヒー風味増強剤、ならびに前記コーヒー風味増強剤を用いて、コーヒーの風味が楽しめる飲食品を提供すること。
【解決手段】エタノール濃度が10%(v/v)以上のエタノール水溶液でコーヒーの生豆抽出エキスを得る工程、及び前記生豆抽出エキスと焙煎後のコーヒー抽出物とを混合して180℃〜250℃で加熱する工程を含むことを特徴とするコーヒー風味増強剤の製造方法により、上記課題が解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーヒー風味増強剤の製造方法、コーヒー風味増強剤、ならびに当該コーヒー風味増強剤を含む飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
コーヒーは、嗜好飲料として多くの人々に愛好され、また、コーヒーを配合した様々な種類の飲食品が知られている。コーヒー飲料は、製品内容量100g中にコーヒー生豆使用量2.5g以上5g未満のものをいい、1g以上2.5g未満のものをコーヒー入り清涼飲料とされ(「コーヒー飲料などの表示に関する公正競争規約」による)、その他少量のコーヒーを用いてコーヒー風味を特徴とする食品や飲料(飲食品)が広く製造販売されている。
これらのコーヒー飲料等では、それぞれの製品に応じてコーヒー風味を引き立たすために、製品に応じたコーヒー風味付けが必要となる。
【0003】
コーヒー風味を付与するための原料として使用される、コーヒー抽出物などのコーヒー製品としては、コーヒー生豆を焙煎することで好ましい香気を醸し出し、その後コーヒー焙煎物を粉砕し、それを抽出して得た液(抽出液)を噴霧乾燥、凍結乾燥により水分を除去して粉末状に加工したインスタントコーヒー、同様にして得られる抽出液を真空蒸発濃縮、凍結濃縮、膜濃縮等により濃縮したコーヒーエキス、焙煎したコーヒー豆から抽出した香気成分を含んだ香料などがある。
【0004】
このようなコーヒー製品に関しては、風味の向上を目的とするインスタントコーヒーの製造方法(特許文献1、2、3)、コーヒーエキスの処理方法(特許文献4、5、6)、あるいは自然な香りを付与するために添加できる、コーヒー豆からの香気成分の抽出方法(特許文献7、8、9、10)等が提案されている。
しかし、インスタントコーヒーやコーヒーエキスは乾燥や濃縮等の製造工程が加わるため、高価であり、広く食される飲食品への添加量をあまり増やせないという問題点がある。 また、焙煎したコーヒー豆からの香気成分の抽出や回収は、まず抽出装置や香気回収装置が高価であり、かつコーヒーの香り成分自体が、熱で揮発拡散したり、分解されたりするので、満足のいく香りを回収することが難しいという問題点がある。
【0005】
また、コーヒー豆は、焙煎の工程を行って初めて、コーヒー特有の香りや味を保有し、抽出することが出来るものであって、生豆自体は青臭く、焙煎後のコーヒーの香りのような好ましい風味とはかけ離れたものである。また、生豆の抽出エキスも同様に所望の焙煎後のコーヒー風味とはかけ離れたものである。
【0006】
コーヒーの生豆抽出物を使用した提案としては、コーヒーの生豆あるいは浅炒りの豆から、水あるいは有機溶媒で抽出し、単糖や二糖類と反応させ、コーヒーカラメルを生成する方法(特許文献11)があるが、糖類を原料とするカラメルは、本来のコーヒーの風味とは異質な苦味や甘味があり、またコーヒー本来の自然な香気に乏しく、自ずから風味は決まったものしか製造できないので、製品に応じたコーヒーの風味付けを工夫することもできない等の欠点がある。
【0007】
また、コーヒー豆の粉砕物により風味を添加する方法として、コーヒー生豆を平均粒度が100μm以下になるように微粉砕し、乾燥させ、焙煎したものを使用する方法(特許文献12)がある。しかし、飲料や舐めて食す食品、例えばハードキャンディの場合はキャンディ内部に含まれる粒子の大きさが、少なくとも10μm以下でないとざらつきを感じてしまうため、コーヒーの生豆であると焙煎したものであるとを問わず、その粉砕物の大きさが10μmを超えるものを含む加工品を使用することは好ましくない。また、実際のところ、油脂分の多い外殻を含む生豆を10μm以下の大きさに微粉砕することは困難であるため、使用できる食品が限られ、汎用性が乏しいという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−120185号公報
【特許文献2】特開2003−180251号公報
【特許文献3】特開平5−219890号公報
【特許文献4】特開2007−117080号公報
【特許文献5】特開2007−116981号公報
【特許文献6】特開2009−296954号公報
【特許文献7】特開昭61−88853号公報
【特許文献8】特開昭47−19067号公報
【特許文献9】特公昭50−29027号公報
【特許文献10】特開2003−33137号公報
【特許文献11】特開2009―219488号公報
【特許文献12】特開2007−68498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、低コストでかつ本格的なコーヒーの風味を楽しめるコーヒー風味増強剤の製造方法および該製造方法で得られるコーヒー風味増強剤を提供することを目的とする。
また、本発明は、前記コーヒー風味増強剤を用いて、コーヒーの風味が楽しめる飲食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは本格的なコーヒーの風味を味わえるコーヒー風味が増強されたノンシュガーハードキャンディの提案をしている(特願2010−018236号)。この提案では、キャンディ生地にエタノール水溶液で抽出されるコーヒーの生豆抽出エキス、焙煎後のコーヒー抽出物、及びアルギニン、シトルリン、オルニチン、シスチンから選ばれる少なくとも1種のアミノ酸を添加し、140℃〜200℃で加熱濃縮することで、コーヒー風味が増強されたノンシュガーハードキャンディの作製に成功している。この提案では、確かにコーヒー風味の増強に関して、香りの点で顕著な効果があり、全体としてコーヒー風味が増強されているが、コーヒー本来が持つ苦味やコク味といった呈味を十分に引き出せているとまではいえず、改良の余地があった。
【0011】
そこで、本発明者らは、上記課題解決のため鋭意研究を行った結果、コーヒーの生豆抽出エキスと、焙煎後のコーヒー抽出物とを、180℃〜250℃で加熱することで、本格的なコーヒーの風味を味わえ、かつ呈味が優れたコーヒー風味増強剤が得られるという事実を見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明の要旨は、
〔1〕エタノール濃度が10%(v/v)以上のエタノール水溶液でコーヒーの生豆抽出エキスを得る工程、及び前記生豆抽出エキスと焙煎後のコーヒー抽出物とを混合して180℃〜250℃で加熱する工程を含むことを特徴とするコーヒー風味増強剤の製造方法、
〔2〕上記〔1〕に記載の製造方法により製造されるコーヒー風味増強剤、
〔3〕上記〔2〕に記載のコーヒー風味増強剤を含む飲食品、
に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明のコーヒー風味増強剤は、焙煎後のコーヒー抽出物にコーヒーの生豆抽出エキスを加えることにより、コーヒーの風味が増強される。これは、コーヒーの生豆抽出エキスが、焙煎後のコーヒー抽出物、つまりインスタントコーヒーやコーヒーエキス、あるいはコーヒー抽出物を含む香料などと一緒に加熱することにより初めて、コーヒー由来の香りだけでなく、苦味、コク味などの呈味が新たに醸し出されたり、顕著に増強されたりする性質を有していることによるものである。
生豆抽出エキスそのものを単独で加熱しても焙煎後のコーヒー風味は得られないことから、この性質は特徴的なものであるといえる。この特別な性質と顕著な効果により、生豆抽出エキスを原料として使用すると、原料として使用するコーヒー製品、例えばインスタントコーヒーなどの使用量を低減させることが可能となり、原料調達やコスト低減などの製造上の効率化にも寄与できることが期待できる。このように、本発明は、コーヒー風味を有する飲食品の風味改良に加えて、その製造の効率化をも図り得るという顕著な効果を奏するものである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本発明のコーヒー風味増強剤の製造方法は、エタノール濃度が10%(v/v)以上のエタノール水溶液でコーヒーの生豆抽出エキスを得る工程、及び前記コーヒーの生豆抽出エキスと焙煎後のコーヒー抽出物とを180℃〜250℃で加熱する工程を含むことを特徴としている。
【0015】
1)コーヒーの生豆抽出エキス
(抽出原料)
本発明のコーヒーの生豆抽出エキスで使用するコーヒー豆の種類に関しては、特に限定されない。アラビカ種、ロブスタ種、リベリカ種など、種々のものを使用することができる。また、原産国もブラジル、コロンビア、メキシコ、エチオピア、グァテマラ、インドネシア、コスタリカ、ケニア、タンザニアなど幅広い産地のものを使用することができる。
【0016】
本発明では、前述のコーヒー豆の生豆としては、ホール状のまま、若しくは粉砕物、又はそれらの混合物を用いることができる。コーヒー豆の生豆を粉砕する方法としては、特に制限はなく、ワンダーブレンダー、ミキサーなどの公知の粉砕装置を用いて行うことができる。
【0017】
(抽出工程)
本発明において用いるコーヒーの生豆抽出エキスは、コーヒーの果肉から取り出した種子であるコーヒー豆の生豆を、エタノール濃度が10%(v/v)以上のエタノール水溶液で抽出して得られたものである。エタノール濃度が10%(v/v)未満の濃度の場合、コーヒーの風味を損なうようなナッツ臭が生成されやすく、また、生豆特有の生臭い香りが残存しやすい。尚、風味増強効果の点から、エタノール濃度としては30%(v/v)以上が好ましい。また、本発明では、エタノール濃度が上記範囲であれば良いが、抽出効率低下による風味の低下が発生する場合があるため、エタノールの濃度が60%(v/v)以下であるのが良い場合がある。尚、上記コーヒーの生豆抽出エキスは、例えば、下記のような方法にて得ることができる。
【0018】
前記のエタノール水溶液でコーヒーの生豆抽出エキスを得る工程において使用するコーヒー豆の生豆としては、前述の通り、ホール状、あるいは粉砕物であるのとを問わず、抽出処理を効果的に行うことができるように、適宜選択すれば良い。また、コーヒー生豆とエタノール水溶液の接触のさせ方としては、特に限定はなく、コーヒー生豆に対してエタノール水溶液を噴霧したり、コーヒー生豆をエタノール水溶液に浸漬したりすること、その他の公知の方法により行うことができる。
【0019】
コーヒーの生豆抽出エキスを得るための抽出条件は、70℃以下で行うことが風味増強効果の面から好ましい。70℃より高温である場合は、風味増強効果が弱まる傾向にある。抽出時間に特に制限はないが、10時間以上、コーヒー生豆や生豆粉砕物をエタノール濃度が10%(v/v)以上のエタノール水溶液と接触させると良い。また、接触方法として浸漬を行う場合は、静置または攪拌し、抽出することができる。その後、メッシュ、フィルタープレス、遠心濾過などの濾過工程で生豆残渣を取り除き、コーヒーの生豆抽出エキスを得ることができる。
【0020】
該生豆抽出エキスは、そのままでも、濃縮しても使用できる。また、濃縮する際の方法としては、減圧濃縮、凍結乾燥等、種々の公知の方法にて適宜行うことができるが、加熱濃縮する場合は、加温しすぎないように注意が必要である。具体的には、概ね70℃未満、1〜3時間程度で行うと良い。コーヒー生豆の使用量に対するエタノール水溶液の量に特に限定はなく、作業効率や風味増強効果から適切な量比で実施すればよい。
【0021】
2)焙煎後のコーヒー抽出物
(原料)
本発明において用いる焙煎後のコーヒー抽出物とは、焙煎したコーヒー豆、あるいはコーヒー生豆の粉砕物(微粉砕、粗粉砕、いずれでもよい)を焙煎したものを用いて得られるコーヒー抽出物を意味する。このような抽出物としては、焙煎したコーヒー豆を粉砕し、公知の方法にて抽出した抽出液を噴霧乾燥、凍結乾燥により水分を除去して粉末状にしたもの(例えば、インスタントコーヒーなど)、前記抽出液を真空蒸発濃縮、凍結濃縮、膜濃縮等により濃縮したもの(例えば、濃縮されたコーヒーエキスなど)、焙煎したコーヒー豆から公知の方法にて香気成分を抽出したもの(例えば、香気成分を含んだ香料製剤)などが挙げられる。また、コーヒー生豆の粉砕物を焙煎した後、前記と同様にして、粉末状にしたもの、濃縮したものを得てもよいし、コーヒー豆の粉砕物を焙煎したものから公知の方法にて香気成分を抽出したものでもよい。更に、通常のドリップ抽出されたコーヒー溶液そのものであってもよい。また、豆の種類や原産国も特に指定されず、コーヒーの生豆抽出エキスの場合と同様、アラビカ種、ロブスタ種、リベリカ種など、種々のものを使用することができ、ブラジル、コロンビア、メキシコ、エチオピア、グァテマラ、インドネシア、コスタリカ、ケニア、タンザニアなど幅広い産地のものを使用することができる。
【0022】
(焙煎度合)
また、焙煎度合いとしてはライト・ロースト(浅煎り)、シナモン・ロースト(浅煎り)、ミディアム・ロースト(中煎り)、ハイ・ロースト(中煎り)、シティ・ロースト(中煎り)、フルシティ・ロースト(深煎り)、フレンチ・ロースト(深煎り)、イタリアン・ロースト(深煎り)などが挙げられるが、その焙煎程度については特に限定されるものではない。
【0023】
3)コーヒー風味増強剤
(原料)
前記工程において得られたコーヒーの生豆抽出エキスと焙煎後のコーヒー抽出物とを混合し、コーヒー風味増強剤のベースを調整する。コーヒーの生豆抽出エキスの添加量としては特に限定はなく、目的とする風味を十分に得られる適切な量を添加すればよいが、焙煎後のコーヒー抽出物(固形分)100重量部に対して、コーヒーの生豆抽出エキス(固形分)が概ね1〜5重量部であると良い。
【0024】
(加熱工程)
前記のように調整したコーヒー風味増強剤のベースを加熱する。加熱方法としては、バッチ・トンネル式のオーブンや鉄板式の焼成機等の適当な加熱手段により加熱することができ、特に限定されるものではない。加熱温度は、コーヒー風味、中でも苦味、コク味などの呈味を増強する面から、180℃〜250℃であり、好ましくは200℃〜240℃、さらに好ましくは210℃〜230℃である。加熱時間は、加熱温度によっても異なるが、目的とするコーヒー風味、中でも苦味、コク味などの呈味を十分に得られる適切な時間を設定すればよく、概ね5分〜20分であることが望ましい。
【0025】
加熱の際、温度が250℃より高くなる、あるいは加熱時間が長過ぎると、炭化が進み、焦げによる異臭が発生しやすく、180℃未満、あるいは加熱時間が短過ぎると、所望のコーヒー風味、中でも苦味とコク味が得られず、呈味が不十分となる。
【0026】
(コーヒー風味増強剤の用途・用法)
上記工程によって得られるコーヒー風味増強剤は、コーヒー独特の香りに加えて、苦味、コク味などの呈味を増強する目的で使用され、飲料としてのコーヒーやコーヒー入り清涼飲料に対してその添加量は、好ましくは1〜5重量%であるが、これに限定されるものではなく、また、コーヒー以外の各種飲料やパン、ケーキ、菓子、デザート類などの各種食品においても、その商品の特徴を強調でき、その添加量は、好ましくは1〜5重量%であるが、これに限定されるものではない。
また、焙煎後のコーヒー抽出物として、インスタントコーヒーを用いた場合には、得られたコーヒー風味増強剤を水や温水に溶解させてコーヒー飲料とすることができる。
【0027】
当該コーヒー風味増強剤はそのままで使用したり、適当な賦形剤で賦形したり、液状、粉末状、顆粒状、細粒状等いずれの形態でも使用できる。
【0028】
尚、当該コーヒー風味増強剤の各種飲食物への添加方法は、その原材料に添加したり、その製造工程中で添加したり、調理中に添加したり、喫食時に添加するなど、その添加時期・方法等は問わない。
【0029】
次に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0030】
(1)コーヒーの生豆抽出エキスの作製例
ブラジルのサントス原産のコーヒー豆を、大阪ケミカル社のワンダーブレンダーで微粉砕し、その粉砕物200gに対して1000mlの50%(v/v)エタノール溶液を加えて、コーヒー生豆をエタノール水溶液に浸漬し、静置して、室温で16時間攪拌抽出を行った。その後、さらしで大まかな生豆の粕を取り除き、遠心分離を3500rpm、5分の条件で行い、上澄みを回収し、コーヒーの生豆抽出エキス(固形分5%)を得た。
【0031】
(2)コーヒー風味増強剤の作製例
インスタントコーヒー(ネスレ社CAFELIA SD-R ソリュブルコーヒー)100g、(1)で作製したコーヒーの生豆抽出エキス50ml(固形分2.5g)を混合し、バッチ式のオーブンにて210℃、10分の条件で加熱し、コーヒー風味増強剤を得た。表1にコーヒー風味増強剤の製造条件を示す。
【0032】
(3)コーヒー風味を有する飲食品の作製例
〈コーヒー飲料〉
(実施例1)
(2)で作製したコーヒー風味増強剤1gを99gの水(100℃)に溶解させ、コーヒー飲料を得た。このようにして得られたコーヒー飲料は、優れた香り・呈味があり、コーヒー本来の風味が増強されたものとなっていた。
【0033】
(実施例2)
コーヒー風味増強剤の製造条件を表1に示すように変更し、それ以外は実施例1と同様にしてコーヒー飲料を得た。このようにして得られたコーヒー飲料は、優れた香り・呈味があり、コーヒー本来の風味が増強されたものとなっていた。
【0034】
〈ハードキャンディ〉
(実施例3)
コーヒー風味増強剤の製造条件を表1に示すように変更し、それ以外は(2)と同様にしてコーヒー風味増強剤を得た。
次に、還元麦芽糖水飴1000g、前記コーヒー風味増強剤20gを混合溶解し、真空釜にて大気圧に対して−300mmHg(−40.0kPa)、160℃の条件下で加熱濃縮し、金属製のキャンディ型により成型し、水分値1.5重量%のノンシュガーハードキャンディを得た。このようにして得られたキャンディは、優れた香り・呈味があり、コーヒー本来の風味が増強されたものとなっていた。
【0035】
(実施例4)
コーヒー風味増強剤の製造条件を表1に示すように変更し、それ以外は実施例3と同様にしてノンシュガーハードキャンディを得た。このようにして得られたキャンディは、優れた香り・呈味があり、コーヒー本来の風味が増強されたものとなっていた。
【0036】
〈クッキー〉
(実施例5)
コーヒー風味増強剤の製造条件を表1に示すように変更し、それ以外は(2)と同様にしてコーヒー風味増強剤を得た。
次に、バター100g、砂糖100g、小麦粉(薄力粉)200g、卵1個、ベーキングパウダー2g、バニラエッセンス適量を用いて調製した生地に、前記コーヒー風味増強剤10gを添加し、バッチ式のオーブンで160℃、20分焼き上げた。このようにして得られたクッキーは、程よい苦味があり、コーヒー本来の風味が増強されたものとなっていた。
【0037】
(実施例6)
コーヒー風味増強剤の製造条件を表1に示すように変更し、それ以外は実施例5と同様にしてコーヒー風味のクッキーを得た。このようにして得られたクッキーは、程よい苦味があり、コーヒー本来の風味が増強されたものとなっていた。
【0038】
〈ゼリー〉
(実施例7)
コーヒー風味増強剤の製造条件を表1に示すように変更し、それ以外は(2)と同様にしてコーヒー風味増強剤を得た。
次に、砂糖250g、ゼラチン10g、前記コーヒー風味増強剤12gを混合し、これに50℃の温湯728gを添加混合し、粉体物を完全に溶解させ、40℃まで冷却した後、ゼリー容器に充填し、コーヒーゼリーを得た。このようにして得られたゼリーは、淹れたてのコーヒーのような優れた香りがあり、コク味も感じられる、コーヒー本来の風味が増強されたものとなっていた。
【0039】
(実施例8)
コーヒー風味増強剤の製造条件を表1に示すように変更し、それ以外は実施例7と同様にしてコーヒーゼリーを得た。このようにして得られたゼリーは、淹れたてのコーヒーのような優れた香りがあり、コク味や苦味も感じられる、コーヒー本来の風味が増強されたものとなっていた。
【0040】
〈コーヒー飲料〉
(比較例1、2)
コーヒー風味増強剤の製造条件を表2に示すように変更し、それ以外は実施例1と同様にしてコーヒー飲料を得た。比較例1、2で得られたコーヒー飲料は、実施例1と比べ、コーヒー由来の香り・苦味・コク味がいずれも弱く、また、比較例2は、コーヒーの生豆抽出エキス特有の生臭さが感じられるものとなっていた。
【0041】
〈ハードキャンディ〉
(比較例3、4、5)
コーヒー風味増強剤の製造条件を表2に示すように変更し、それ以外は実施例3と同様にして水分値1.5重量%のノンシュガーハードキャンディを得た。比較例3、4で得られたキャンディは、実施例3と比べ、コーヒー由来の香り・コク味が弱く、また、比較例5で得られたキャンディは、焦げによる異臭が感じられるものとなっていた。
【0042】
〈クッキー〉
(比較例6、7)
コーヒー風味増強剤の製造条件を表2に示すように変更し、それ以外は実施例5と同様にしてコーヒー風味のクッキーを得た。比較例6、7で得られたクッキーは、実施例5と比べ、コーヒー由来の香り・苦味・コク味のいずれもが弱いものとなっていた。
【0043】
〈ゼリー〉
(比較例8、9、10)
コーヒー風味増強剤の製造条件を表2に示すように変更し、それ以外は実施例7と同様にしてコーヒーゼリーを得た。比較例8、9、10で得られたゼリーは、実施例7と比べ、コーヒーの香り・コク味が弱いものとなっていた。
【0044】
〈コーヒー飲料〉
(比較例11)
コーヒーの生豆抽出エキス作製にあたり使用するエタノール溶液の濃度を5%(v/v)に変更し、それ以外は実施例1と同様にしてコーヒー飲料を得た。比較例11で得られたコーヒー飲料は、コーヒーの風味を損なうようなナッツ臭が感じられ、また、生豆特有の生臭い香りが残存していた。
【0045】
(比較例12)
(1)で作製したコーヒーの生豆抽出エキス20mL(固形分1.0g)をバッチ式のオーブンにて210℃、10分の条件で加熱したものを、99gの水(100℃)に溶解させ、コーヒー飲料を得た。比較例12で得られたコーヒー飲料は、コーヒーの香りが弱く、ナッツ臭が感じられ、また、生豆特有の生臭い香りが残存しており、苦味・コク味などの呈味が感じられないものであった。
【0046】
(比較例13)
(1)で作製したコーヒーの生豆抽出エキス2mL(固形分0.1g)とインスタントコーヒー0.9gを別々にバッチ式のオーブンにて210℃、10分の条件で加熱したものを、99gの水(100℃)に溶解させ、コーヒー飲料を得た。このようにして得られたコーヒー飲料は、実施例1と比べ、コーヒー由来の香り・苦味・コク味のいずれもが弱いものとなった。
【0047】
実施例1〜8及び比較例1〜13で得られた飲食品に関して、食品開発に携わる10人のパネラーによって、香り、苦味、コク味について、官能評価を行った。香り、苦味、コク味のそれぞれに関して、コーヒー風味の飲食品として優良なものを5、良いものを4、平凡なものを3、やや劣るものを2、劣るものを1とし、パネラー10人の平均値を四捨五入した結果を表1、及び表2に示す。尚、評価項目のうち2つ以上について、評価結果が4以上であって、評価結果が2以下のものを含まないものが、コーヒー風味が増強されたものとする。
【0048】
【表1】

【0049】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エタノール濃度が10%(v/v)以上のエタノール水溶液でコーヒーの生豆抽出エキスを得る工程、及び前記生豆抽出エキスと焙煎後のコーヒー抽出物とを混合して180℃〜250℃で加熱する工程を含むことを特徴とするコーヒー風味増強剤の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の製造方法により製造されるコーヒー風味増強剤。
【請求項3】
請求項2に記載のコーヒー風味増強剤を含む飲食品。

【公開番号】特開2012−110301(P2012−110301A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−264160(P2010−264160)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(390020189)ユーハ味覚糖株式会社 (242)
【Fターム(参考)】