説明

コールドエンドにおけるファウリングを減少せしめるようにした再生式空気予熱器の設計

【課題】ボイラ負荷が変化する下でファウリングを一層抑制することができる空気予熱器。
【解決手段】空気予熱器100は、ボイラ負荷の減少時中に、空気入口130を部分的に制限する空気ダンパ装置162と、煙道ガス入口124を部分的に制限する煙道ガスダンパ装置152とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般には、化石燃料燃焼ボイラと再生式空気予熱器とを有する蒸気発生システムに関する。より詳細には、本発明は、化石燃料燃焼ボイラと、ボイラ運転レベルの変化中におけるファウリングを減少せしめるようにした回転再生式空気予熱器とを有する蒸気発生システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ボイラの燃焼プロセス中に、燃料中の硫黄がSOに酸化される。燃焼プロセスの後、幾らかの量のSOがSOに更に酸化される。典型的には、1〜2%程度の量がSOとなる。適当な温度範囲での酸化鉄、バナジウム及び他の金属の存在が、この酸化を生じせしめる。選択接触還元(SCR)が、また、煙道ガス中のSOの一部分をSOに酸化せしめることが広く知られている。触媒成分(主として、触媒中のバナジウムの量)が酸化の量に0.5%から1.5%以上の範囲の割合でもって影響を与える。もっとも典型的な割合は、約1%である。したがって、硫黄を多く含有する石炭を新規なSCRでもって燃焼せしめるプラントは、SOの放出を多大に増大せしめると見ることができ、これは可視プルーム、局部酸性地表問題及び他の環境問題を生じせしめる。
回転再生式熱交換器は、一般に、大型の化石燃料燃焼ボイラの燃焼室へ供給される冷たい入力空気へ熱い煙道ガスから熱を伝達するために前記ボイラと関連して用いられている。この型式の熱交換器は、典型的に、空気予熱器と称されている。空気予熱器の目的は、化石燃料燃焼ボイラの効率を増大せしめることにある。基本的には、回転再生式空気予熱器は複数の間隔を置いた金属シートを詰め込んだ大きなシリンダから成る。これらの金属シートは、互いに分離され、熱い煙道ガスがシリンダの軸線と平行な各金属シートの表面を横切って流れて、各金属シートの表面を加熱することができるようにしている。加熱されて熱くなった金属シートは、それから、冷たい入力空気流れ中へ回転させられて、入力空気を加熱する。煙道ガスと入力空気とは、通常、正反対の方向で空気予熱器を通して流れる。シリンダの全体はその軸線まわりを連続して回転させられ、その結果、熱い煙道ガス及び冷たい空気は同一の金属板を交互して横切って流れる。
【0003】
化石燃料の燃焼の生成物は、しばしば、三酸化硫黄(SO)及び廃蒸気(HO)の両方を含有し、その結果、排出ガスが空気予熱器において十分な度合いで冷却されたときには、SOが廃蒸気と結合し、液体硫酸(HSO)に凝縮せしめる。これは、例えば空気予熱器の熱交換表面などの表面の温度が硫酸の露点以下であるときに生じる。灰粒子及び硫酸の両方が空気予熱器内の金属表面に堆積したときには、これらの灰粒子及び硫酸は金属表面に固着し、ファウリングと呼ばれている現象を生じさせる。ファウリングは、空気予熱器を通過する空気及びガスの量を制限するので、空気予熱器の効率を低下せしめる。
【0004】
蒸気又は空気の高速噴流が、すす吹きとして知られているプロセスにおいて金属表面に周期的に向けられて、灰/酸付着物を取り除く。このすす吹きは、金属シートから付着物をある程度取り除くが、しかし全部を取り除くものではない。
【0005】
空気予熱器のコールドエンドは、しばしば、煙道ガス中のHSOの露点以下であり、HSOの一部分が熱交換要素の表面に凝縮することを生じせしめる。凝縮した灰及びHSOが堆積すると、これらの灰及びHSOは空気予熱器を通過する流れの圧力降下を生じせしめる。この圧力降下は、燃料の燃焼による灰又は他の固体物質が熱交換要素に時間をかけて堆積するにしたがって大きくなる。もしファウリングが非常に激しくなると、金属シート間の流路がふさがってしまう。その場合には、熱交換表面面積が損失し、ファンは空気予熱器を通して必要量の燃焼用空気を供給することができなくなる。
【0006】
空気予熱器のコールドエンドは、その部分のガスが低温であるという特徴から、高ガス密度及びそれ故低流速を有する。典型的に、コールドエンドにおける流速はホットエンドにおける流速の約60%にすぎない。低ガス流速は、また、ファウリングを一層生じせしめる。
【0007】
他の要因、例えば低ボイラ負荷がファウリングの要因として加えられる。低ボイラ負荷は、ホットエンドにおける最大連続レーティング(MCR)の25%となるような低速度まで速度が落ちることを生じせしめる。
【0008】
現在、燃焼状態が変化する下でファウリングを抑制する空気予熱器が必要とされている。
【発明の概要】
【0009】
簡単に言えば、好適な形の本発明はボイラ負荷が変化する下でファウリングを一層抑制することができる空気予熱器にある。
【0010】
本発明の目的は、コロ―ジョンを一層抑制することができる空気予熱器を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、ボイラ負荷の変化に応じて調節することができる空気予熱器を提供することにある。
【0012】
本発明の更に他の目的は、ボイラ負荷が変化する下で煙道ガス速度を調節することができる空気予熱器を提供することにある。
【0013】
本発明の更に他の目的及び利点は図面及び下記の説明から明らかになるであろう。
【0014】
添付図面を参照することにより、当業者には本発明がより良く理解され、また本発明の種々の目的及び利点が明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】従来の回転再生式空気予熱器の斜視図であって、一部を切断して示している。
【図2】本発明にしたがって構成した回転再生式空気予熱器を有する蒸気発生システムの概略系統図である。
【図3】図2のダンパマニホルドの側面図である。
【図4】図3の線IV-IVに沿うダンパマニホルドの平面図である。
【図5】図3の線V−Vに沿う断面図である。
【図6】図5の区域VIの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
多数の蒸気発生システムは、ボイラ効率を増大するために固定又は回転再生式空気予熱器を利用する。最も多く共通のものは、回転再生式空気予熱器である。この型式の空気予熱器は、熱交換要素を回転させることをと特徴とする。本発明は、固定及び回転のどちらかの型式の再生式空気予熱器を備えているボイラシステムに関する。説明を容易にするために、本発明の構成を回転再生式空気予熱器と関連して説明することにする。
【0017】
図面の図1を参照するに、従来の回転再生式空気予熱器100が示されている。空気予熱器100は、ハウジング114内に回転可能に取り付けられているロータ112を有する。ロータ112は、ロータポスト118からロータ112の外周部にまで半径方向へ延びている多数の仕切板116を包含する。これらの仕切板116はそれらの間に区画室120を画定し、これらの区画室120は熱交換要素バスケットアセンブリ122を収容する。
【0018】
典型的な回転再生式空気予熱器100において、煙道ガス流れ224及び燃焼用空気入口流れ230はロータ112の対向する両端から対向してロータ112内に入り、それから、熱交換要素バスケットアセンブリ122内に収容されている熱交換要素142を対向する方向で通り過ぎる。その結果、冷たい空気の入口130及び冷たくなった煙道ガスの出口126が空気予熱器100の一端にあり、この一端はコールドエンド144と称されている。また、熱い煙道ガスの入口124及び加熱された空気の出口132が空気予熱器100の対向する一端にあり、この対向する一端はホットエンド146と称されている。2つのセクタ板136がロータ112の上面及び下面に隣接してハウジング114を横切って延びている。これらのセクタ板136は、空気予熱器100を空気側セクタ部138と煙道ガス側セクタ部140とに分割する。
【0019】
図1の4つの細い矢印は、ロータ112を通過する煙道ガス流れ224及び空気流れ230の方向を示す。煙道ガス入口124を通して入った煙道ガス流れ224は、煙道ガス側セクタ部140に位置している区画室120内に取り付けられている熱交換要素バスケットアセンブリ122内の熱交換要素142に熱を伝達せしめる。加熱された熱交換要素142は、それから、空気予熱器100の空気側セクタ部138へ回転させられる。熱交換要素バスケットアセンブリ122の蓄積熱は、それから、空気入口130を通して入ってきた空気流れ230に伝達される。冷たくなった煙道ガスの出口流れ226は煙道ガス出口126を通して空気予熱器100を出ると共に、加熱された空気出口流れ232は空気出口132を通して空気予熱器100を出る。
【0020】
上述したように、空気予熱器100のコールドエンド144における多大な酸性ファウリングは空気予熱器100にわたって大きな圧力降下を生じせしめる。煙道ガスにより運ばれた粒子物質は、また、熱交換要素142の表面に時間をかけて堆積し、これらの堆積物の存在が空気予熱器の圧力降下を増大せしめる。この粒子物質は、低流速の局部区域に圧倒的に堆積する傾向がある。
【0021】
したがって、ファウリングは次の2つの問題のためである。
1) 飛散灰及び他の粒子を堆積せしめる酸性凝縮、及び
2) 低ボイラ負荷で遅くなる低速流れの区域
この2つの問題の各々を異なる方法で除去することが試みられている。そのひとつの装置は、煙道ガス入口のみを部分的に封鎖するように機能する。これは、期待はずれの結果となっている。その時は、ファウリングを導く要因のすべてが認識されておらず、処理されていなかった。
【0022】
本発明は、酸性凝縮の問題及び速度に関連するファウリングの問題の両方を処理する。粒子の高速流れは、サンドブラスチングと同様なプロセスで固体物質を侵食せしめる。この侵食の割合は、速度を1よりも大きい数で乗した値に比例する。本発明者の経験では、飛散灰の侵食は流速を3.4乗した値に比例する。
【0023】
したがって、熱交換要素142への堆積物の量を減少させるためにガス側セクタ部における流速を増大せしめることは、有益なことである。空気側セクタ部における流速を増大せしめることは、堆積物の取り除きを評価しうるほど促進するものではない。なぜなら、空気側セクタ部には粒子物質が少量か又はないからである。しかしながら、空気側セクタ部における熱交換表面の量を減少せしめることはガス側セクタ部におけるガス温度を上昇せしめるようにし、その結果、酸性凝縮を少なくし、それ故ファウリングを少なくする。
【0024】
ボイラ内への空気流量は、ボイラの運転レベルと関連させられる。したがって、ボイラの最大連続レーティング(MCR)の60%でのボイラ運転は、MCRの90%での同じボイラの運転よりも少ない燃焼用空気を必要とする。したがって、MCRの60%でのボイラ運転は、MCRの90%での同じボイラの運転よりも少ない煙道ガスを排出する。同じ断面積を通して出る、ほぼ同じ密度の煙道ガスの量が少なければ、この少量の煙道ガスは低速で出る。
【0025】
また、ボイラがMCRの90%ではなくてMCRの60%で運転されるときには、煙道ガスがより低い温度で出ることを生じせしめる。したがって、ボイラ運転レベルはボイラ内へ入る空気流量、ボイラ外へ出る排出煙道ガスの流速及びボイラ外へ出る排出煙道ガスの温度に影響する。
【0026】
次に図2を参照するに、本発明は空気予熱器100への2つの直接の入口、すなわち、煙道ガス入口124及び空気入口130に2つのダンパ装置152,162を包含する。ダンパ装置152,162は、これらのダンパ装置と空気予熱器100との間の漏洩を最少にするために空気予熱器100にできるだけ密接して取り付けられる。コントローラ158は、減少したボイラ負荷状態の運転中にダンパ装置152,162を部分的に閉じるために使用することができる。これは、流れ面積を有効に減少せしめ、したがって流速を増大せしめる。
【0027】
空気予熱器の煙道ガス入口124及び空気入口130の両方への流れを制限することにより、熱伝達のための小さな有効面積が熱交換される熱を少なくするようにする。これは、金属表面の多くの部分が酸露点以上の温度を有するようにさせ、これにより、金属表面のファウリングを減少せしめる。また、ガス側セクタ部における流速が増大され、堆積した付着物の侵食を促進せしめる。
【0028】
更に、もし空気予熱器内へ流れる冷たい空気が酸露点以上の金属温度を維持するために他の熱交換器により加熱される場合において、その後、空気予熱器100の空気側及びガス側の両方の流れを制限することは、前記他の熱交換器で必要とされる熱の量が減少される。これは、総エネルギを節約する。なぜなら、空気側の金属表面の一部分をふさぐことは、冷たい空気を十分な温度にまで加熱するのに必要とされるエネルギ量と比較してわずかな量のエネルギが必要とされるからである。
【0029】
図2は、本発明にしたがって構成した回転再生式空気予熱器を有する蒸気発生システムの概略系統図である。本システムは、熱交換要素バスケットアセンブリ122の面にできるだけ密接するようにして、熱い煙道ガス入口124の内側に設置されている煙道ガスダンパ装置152を包含する。煙道ガスダクト154が、ボイラ148を空気予熱器100に接続している。煙道ガスダンパ装置152の複数のダンパ156(図3)は、煙道ガス入口124の流れ面積を有効に減少せしめるために減少した負荷状態で閉じることができる。これは、熱交換要素142を横切る煙道ガス流れの速度を増大せしめる。これは、また、煙道ガスからの熱伝達のための有効表面面積を減少せしめる。
【0030】
本システムは、空気漏洩をできるだけ最少にするために熱交換要素バスケットアセンブリ122内の熱交換要素142の面にできるだけ密接するようにして、空気予熱器100の冷たい空気入口130の内側に設置されている空気ダンパ装置162を包含する。この空気ダンパ装置162は、空気入口130の流れ面積を有効に減少せしめ、これにより空気予熱器100内へ流れる空気への熱伝達のための有効表面面積を減少せしめるために、減少した負荷状態で部分的に閉じることができる。これは、空気予熱器100のコールドエンド144(図1)の冷却が少なくなることを意味する。
【0031】
煙道ガス側セクタ部140(図1)における流速が増大することにより、煙道ガスによって運ばれている飛散灰が空気予熱器100内の熱交換要素142の表面上の付着物を侵食する。この侵食の割合は、速度を特定の侵食エイジェントで乗した値に比例する。このような飛散灰のための累乗は、3.4である。
【0032】
また、小さな表面面積が煙道ガスから熱を取り出すために用いられているので、コールドエンドへ空気予熱器を通過して流れる煙道ガスは熱く、したがってコールドエンドにおける金属板の大部分はHSO露点以上の温度に維持される。これは、熱交換要素142(図1)へのHSOの凝縮を少なくさせる。
【0033】
コントローラ158、好適には、プレプログラム化したコントロールロッジックを備えているプログラマブルロッジックコントローラ(“PLC”)が、ボイラ148の負荷を監視して、ダンパ装置152,162のダンパブレードの作動を制御する。
【0034】
好適な実施形態において、コントローラ158は、分散コントロールシステム(DCS)160からの信号を受ける。DCS160は、監視したパラメータに基づいて、ボイラ148の運転負荷を決めることができ、そして、ボイラ負荷を表す信号をプログラム化してコントローラ158に送ることができる。コントローラ158は、この信号を受け取ることにより、ボイラ負荷を計算して、ダンパ装置152,162を作動せしめる。
【0035】
次に図1及び図2の両方を参照するに、選択的に、空気予熱器内の種々の位置の温度を監視することができる。もし煙道ガス側セクタ部140内の構体の温度が煙道ガス中の種々の酸の露点以下に低下するときには、液体酸はこれらの構体上に凝縮する。そして、液体酸は堆積して、空気予熱器のファウリングを加速せしめる飛散灰を保持する。通常、煙道ガス出口126は煙道ガス側セクタ部140の最も低い温度を有して、酸凝縮が最も生じやすい。したがって、コントローラ158は、その温度読み取りを受けて、煙道ガス入口124をより以上に閉じて煙道ガスの速度を増大せしめ、これにより煙道ガスにさらされる熱交換要素142の表面面積を減少せしめるかどうかを決定する。このような煙道ガス速度の増大と熱交換面積の減少との組み合わせは、煙道ガスから伝達される熱の量を減少せしめ、空気予熱器100を出る煙道ガス流れ226の温度を上昇せしめる。
【0036】
同様に、空気ダンパ装置162が空気入口130の大部分を閉じると、空気入口流れ230の速度は増大する。空気入口130の大部分を閉じることは、また、空気入口流れ230にさらされる熱交換要素142の表面面積を減少せしめる。これは、空気入口流れ230により吸収される熱を少なくせしめ、再び煙道ガス出口流れ226が空気予熱器を出るときの温度をより高く有するようにする。
【0037】
空気予熱器100を通過する煙道ガスの速度を増大することは、速度を3.4乗した値に基づく割合で空気予熱器内に堆積した付着物を侵食させやすいものである。コントローラ158は、堆積した付着物の侵食を最大にするように煙道ガスダンパ装置152及び空気ダンパ装置162を作動させることができる。しかしながら、これらのダンパ装置は、空気予熱器を出る煙道ガスが最大許容温度を越えることとなるような度合いでは閉じられないようにされる。この最大許容温度は、下流の設備を所望する安全幅(セーフティ マージン)に沿って安全に取り扱うことができる最大温度に基づいて予め決定することができる。
【0038】
次に図3−図6を参照するに、空気ダンパ装置162は、フレーム182と、このフレーム182内に設けられている多数のダンパ156とを包含する。好適には、多数のダンパ156は、ダンパパネル163,164の数にグループ分けされる。各ダンパパネル163,164は、関連するダンパ156に加えて、アクチュエータ166と、このアクチュエータ166をダンパ156の各々に接続する動力伝達装置(ドライブ)168とを包含する。
図3に示されているように、空気ダンパ装置162は煙道ガス入口124(図2)を複数のセクタに分割することができる。ダンパ区域163,164の複数のダンパ156は、煙道ガス入口124内の流れを制御するために設けられている。煙道ガス入口124の他の区域174は、ダンパ装置が設けられていなくて、開口のままとされている。
【0039】
煙道ガスダンパ装置152は、空気ダンパ装置162について説明したと同様な部品を有して、同様な方法で作動する。したがって、上述した説明は、空気入口に代えて煙道ガス入口に適用されるようにして煙道ガスダンパ装置152に等しく適用される。
【0040】
コントローラ158は、煙道ガス入口124(図2)の所定区域内の流れを部分的に制限するためにダンパ区域163,164のアクチュエータ166を作動せしめる。
【0041】
本発明による再生式空気予熱器100は図3−図6に示されている。ダンパ装置152,162のダンパパネル163,164よりも多くの又は少ないダンパパネルを包含することができることを認識すべきである。更に、煙道ガス入口124のより小さい又はより大きい部分を、この部分を通しての流れを制御するダンパ装置を設けないで、開口のままとすることができる。
【0042】
図6は、図5の一部分又は区域VIの拡大図である。この図6は、“開き”位置と“閉じ”位置との間を軸線176まわりに回転可能であるダンパ156を示す。平らなバーシール178が、各ダンパ156の両側に取り付けられている。各バーシール178は、隣接する他のダンパのバーシール179の一部分とオーバーラップして接触し、煙道ガスが2つのダンパ間を流れるのを防止する。フレーム182に最も接近しているダンパのバーシール178は、フレーム82の一部分と接触し、煙道ガスがフレーム182とダンパ156との間を流れるのを防止する。
【0043】
再び図3を参照するに、垂直流れ式の空気予熱器のために、コントローラ158(図2)は、“閉じている”ダンパパネル163のダンパ156を周期的に開くと共に、“開いている”ダンパパネル164のダンパ156を周期的に閉じるようにプログラム化することができ、これにより実質的に一定の流れ面積を維持することができる。このような作動は、“閉じている”ダンパパネル163のダンパ156がこれらのダンパ156の頂部に堆積するかもしれない灰の付着物を放散するようにすることができる。
【0044】
再び図2を参照するに、煙道ガス入口124の流れ面積を制限することは煙道ガス流れの速度を増大せしめ、これにより、煙道ガスにより運ばれている灰がコールドエンドの付着物を侵食せしめる。しかしながら、熱伝達のための面積を減少せしめて煙道ガスの速度を高めることは、通常よりも高い煙道ガス出口温度を生じせしめる。すなわち、煙道ガス入口の一部分を閉じることは、煙道ガスが設置している多数の熱交換要素142(図1)の一部分を通して流れるのを有効に防止し、有効熱伝達表面面積を減少せしめて、空気予熱器を去る煙道ガスの温度を上昇せしめる。
【0045】
更に100%負荷での大きな圧力降下は、高圧空気及びガス用のファン188についてより高い資本費を必要とさせ、また、これらの大きなファン188に必要とされる大きなモータを運転するためにより高い運転費を必要とさせる。ほとんど最悪な石炭のために、プラントデータ測定システムは、すす吹きサイクル間の8時間にわたっての全負荷での圧力降下の増大を示すことができない。観察されているファウリングは、“ポップコーン”の大粒子又は熱い上流表面に形成されて煙道ガスにより除去されて運ばれるスラグによるホットエンドファウリング、又は低速及び低乱流区域における酸性ファウリング及び/又は粒子ファウリングであるコールドエンドファウリングである。
【0046】
しかしながら、低負荷状態では、ガス出口温度はMCR設計点によるガス出口温度よりも常に低い。これは、2つの要因による。すなわち、低ボイラ負荷状態では、空気予熱器100に入る煙道ガスの温度は設計点よりも低い。空気予熱器100は、また、一層効率がよい。なぜなら、煙道ガスの速度を低く、その結果生じる熱伝達効率の減少は存在する表面面積に対しての流量の減少よりも少ない効果を有し、したがって煙道ガス温度の大きな減少を生じせしめる。しばしば、低負荷で生じる低温度は十分に低く、その結果硫酸の凝縮を生じせしめる。幾つかのプラントは、入口空気温度を上昇せしめるために蒸気による空気加熱を用い、したがって出口ガス温度及び熱交換要素の板温度は酸が凝縮するのを除去する。しかしながら、速度の減少によるダストの堆積はこの方法によっては軽減されない。
【0047】
【表1】

【0048】
表1は、本発明による煙道ガス速度を30%負荷状態、70%負荷状態及びMCR中の従来の空気予熱器と比較する。本発明によるダンパ装置152,162は、煙道ガス入口流れ面積を50%減少せしめて、煙道ガス流れの速度の十分な増大を生じせしめるように用いられた。表1に見ることができるように、煙道ガスの入口速度を2倍にすることは、平均煙道ガスの出口速度を3.4乗した比例増大でもって、煙道ガスの出口速度を2倍にする。従来の空気予熱器における0.32の割合と比較して、70%負荷及びMCRにおける平均煙道ガス出口速度を3.4乗した3.54の割合が本発明により達成される。30%負荷レベルでは、従来の空気予熱器における0.04の割合と比較して、本発明による割合は0.43である。追加のダンパ156を閉じることは、30%負荷のケースでは一層高いコールドエンド速度(速度を3.4乗した速度)及びクリーニング効果を提供する。この例の状態は、必ずしも最適な状態ではなく、単に発明の原理を示すものである。
【0049】
代替的な実施形態において、ダンパはギヤドライブ、ベルトドライブ、チェーン機構、ソレノイド又は他の公知の駆動機構によって駆動することができるものである。これらのすべてが、本発明の範囲内にあるものである。
【0050】
以上好適な実施形態を図示し詳述してきたけれども、本発明の精神及び範囲を逸脱することなく、種々の変形及び置換ができるものである。したがって,本発明は例示的な実施形態でもって詳述されているものであって、これらの実施形態によって限定されるものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラからの煙道ガスを受け入れる煙道ガス入口と、煙道ガスを排出する煙道ガス出口と、空気予熱器への空気を受け入れる空気入口と、予熱した空気を前記ボイラへ供給する空気出口とを有し、ボイラ運転レベルが変化する下でのファウリングの減少を行う空気予熱器であって、
a.前記空気入口の開口を調節するようにした空気ダンパ装置であって、前記空気ダンパ装置と前記空気入口との間の空気漏洩を最少にするように前記空気入口に対して気密に取り付けられている空気ダンパ装置と、
b.前記煙道ガス入口の開口を調節するようにした煙道ガスダンパ装置であって、前記煙道ガスダンパ装置と前記煙道ガス入口との間の空気漏洩を最少にするように前記煙道ガス入口に対して気密に取り付けられている煙道ガスダンパ装置と、
c.ファウリングを減少させるために所望する空気速度及び煙道ガス速度を維持するようにボイラ運転レベルが変化する間中に前記空気ダンパ装置及び前記煙道ガスダンパ装置を作動させるように前記空気ダンパ装置に接続されているコントローラと、
を包含している空気予熱器。
【請求項2】
請求項1記載の空気予熱器において、前記コントローラがボイラ運転レベルを読み取る入力を受け、この受けた入力に基づいて前記煙道ガスダンパ装置及び前記空気ダンパ装置の少なくとも一方を相互作用的に制御するようにした空気予熱器。
【請求項3】
請求項1記載の空気予熱器において、前記コントローラが前記煙道ガス出口を出る煙道ガスの温度を読み取る入力を受け、この受けた入力に基づいて前記煙道ガスダンパ装置及び前記空気ダンパ装置の少なくとも一方を相互作用的に制御するようにした空気予熱器。
【請求項4】
請求項1記載の空気予熱器において、前記コントローラが前記煙道ガス出口を出る煙道ガスの速度を読み取る入力を受け、この受けた入力に基づいて前記煙道ガスダンパ装置及び前記空気ダンパ装置の少なくとも一方を相互作用的に制御するようにした空気予熱器。
【請求項5】
請求項1記載の空気予熱器において、前記コントローラが、
a.最大許容煙道ガス出口温度を読み取る入力を受け、
b.煙道ガス出口流れの温度を測定し、及び
c.前記煙道ガス出口流れの測定温度を前記煙道許容煙道ガス出口温度以下に維持しながら、前記空気入口内へ流れる空気の速度を最大にするように前記煙道ガスダンパ装置及び前記空気ダンパ装置の少なくとも一方を制御するようにした空気予熱器。
【請求項6】
請求項1記載の空気予熱器において、前記コントローラが煙道ガス出口速度を読み取る入力を受け、この受けた入力に基づいて前記煙道ガスダンパ装置及び前記空気ダンパ装置の少なくとも一方を相互作用的に制御するようにした空気予熱器。
【請求項7】
請求項1記載の空気予熱器において、前記コントローラが、更に、空気予熱器内の酸性凝縮を減少せしめるように前記煙道ガスダンパ装置及び前記空気ダンパ装置を調節するようにした空気予熱器。
【請求項8】
請求項1記載の空気予熱器において、前記空気ダンパ装置が前記空気入口の少なくとも一部分を調節可能に閉じるようにした複数のダンパを包含している空気予熱器。
【請求項9】
請求項1記載の空気予熱器において、前記煙道ガスダンパ装置が前記煙道ガス入口の少なくとも一部分を調節可能に閉じるようにした複数のダンパを包含している空気予熱器。
【請求項10】
請求項1記載の空気予熱器において、前記ダンパが枢動可能であって、前記ダンパ装置に取り付けた駆動バーにより枢動されるようにした空気予熱器。
【請求項11】
請求項10記載の空気予熱器において、アクチュエータが前記駆動バーを動かして前記ダンパを枢動させるようにした空気予熱器。
【請求項12】
減少したボイラ運転の時間中に空気入口と煙道ガス入口とを有する空気予熱器内におけるファウリングを減少せしめる方法において、
a.前記空気予熱器を出る煙道ガス出口流れの温度を測定する段階と、
b.この測定した煙道ガス出口流れ温度が予め決めた閾値よりも低いかどうかを決定する段階と、
c.前記測定した煙道ガス出口流れ温度が前記予め決めた閾値よりも低いときに、前記煙道ガス出口流れ温度を前記閾値の温度以上に高めるように前記煙道ガス入口及び前記空気入口の少なくとも一方を閉じる量を計算する段階と、
d.前記測定した煙道ガス出口流れ温度が前記予め決めた閾値よりも低いときにおける前記計算した量だけ前記煙道ガス入口及び前記空気入口を閉じて、前記煙道ガス出口流れ温度を高め、これにより酸性凝縮及びファウリングを減少せしめる段階と、
を包含している方法。
【請求項13】
請求項12記載のファウリングを減少せしめる方法において、前記予め決めた閾値の温度が煙道ガス中に存在する酸の凝縮温度に安全幅をプラスした温度である方法。
【請求項14】
減少したボイラ運転の時間中に空気入口と煙道ガス入口とを有する空気予熱器内におけるファウリングを減少せしめる方法において、
a.前記空気予熱器を出る煙道ガス及び空気の少なくとも一方の速度を測定する段階と、
b.この測定した速度と所望する速度との差を決定する段階と、
c.前記測定した速度と前記所望する速度との差を最小にするように前記煙道ガス入口の開口及び前記空気入口の開口の少なくとも一方を調節する量を計算する段階と、
d.この計算した量だけ前記煙道ガス入口及び前記空気入口の開口の少なくとも一方を調節する段階と、
を包含している方法。
【請求項15】
請求項14記載のファウリングを減少せしめる方法において、更に、
a.最大煙道ガス出口流れ温度を受け取る段階と、
b.煙道ガス出口流れ温度を測定する段階と、
c.この測定した煙道ガス出口流れ温度が前記最大煙道ガス出口流れ温度以下であることを保証するように前記調節する段階を制限する段階と、
を包含している方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−2499(P2012−2499A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−132323(P2011−132323)
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【出願人】(503416353)アルストム テクノロジー リミテッド (394)
【氏名又は名称原語表記】ALSTOM Technology Ltd
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 7, CH−5401 Baden, Switzerland
【Fターム(参考)】